JP6273645B2 - 地盤の液状化防止構造 - Google Patents

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本発明は、既設構造物下の砂質地盤等の地盤の液状化を防止するための地盤の液状化防止構造に関する。
飽和状態にある砂質地盤等の地盤(以下、液状化層という)では、地震動等による衝撃で地盤中の土砂粒子間の水(間隙水)の圧力が急激に上昇することにより土砂粒子間の均衡が崩れ、土砂が液体の如き挙動を示す現象、即ち、地盤の液状化現象が問題視されている。
従来、液状化が懸念される地盤には、防災上の観点から、予め地盤の液状化を防止する対策を講じる必要があり、その液状化対策としては、液状化層を遮水壁で囲み、その遮水壁内の地下水をポンプで汲み上げて液状化層の地下水位を下げ、液状化層の飽和度を下げることにより地盤の液状化を防止するようにした地下水位低下による液状化防止構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
この地下水位低下による液状化防止構造には、下端にウェルポイントを備えた集水管を液状化層に埋め込み、この集水管を通して地上に設置されたポンプによって地下水を汲み上げるウェルポイント工法によるものと、液状化層に集水井を形成し、その集水井の底に揚水ポンプを設置し、この揚水ポンプにより地下水を地上に排出するディープウェル工法によるものとが知られている。
また、他の液状化対策としては、液状化層1に通水性を有する複数のドレーン材2,2...を埋め込み、このドレーン材2,2...に地震動等の衝撃により生じた過剰間隙水を流入させることにより、間隙水圧の上昇を抑制するようにした間隙水圧抑制による液状化防止構造が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
この間隙水圧抑制による液状化防止構造では、液状化層1上に家屋やビル等の既設構造物3が存在する場合、既設構造物3下の液状化層1に鉛直方向に向けて直接ドレーン材2,2...を埋め込むことができないので、図2に示すように、複数のドレーン材2,2...を既設構造物3の周囲の地表より液状化層1中に斜めに向けて埋め込むようにしている。
特開平04−371608号公報 特開平09−189025号公報
しかしながら、上述の如き従来の地下水位低下による液状化防止構造では、ディープウェル工法によるものの場合、集水井の設置等に費用が嵩むとともに、集水井の底部に揚水ポンプを設置するため、揚水ポンプのメンテナンスが困難であるという問題があった。
また、ウェルポイント工法によるものの場合には、地上に設置されたポンプにより負圧を作用させることができる深度に限界がある為、地下水位を地表より一定の深さ(約4〜7m)までしか下げることができず、その一定深さ(約4〜7m)よりも深い位置に亘って液状化層が存在する場合には適用できないという問題があった。
一方、間隙水圧抑制による液状化防止構造では、液状化層上に既設構造物が存在する場合、既設構造物を避けてその周囲の地表から斜めに向けてドレーン材を既設構造物下に埋め込むため、既設構造物3直下の液状化層上層部には、図2中の一点鎖線で囲まれた部分4のように、ドレーン材2までの距離が大きくドレーン材2を通して過剰間隙水を消散できずに間隙水圧の上昇を抑制できない部分が生じるという問題があった。
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、ビルや家屋等の既設構造物下の地盤全体に好適に液状化対策を施すことができ、且つ、構成設備の管理も容易な地盤の液状化防止構造の提供を目的としてなされたものである。
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、既設構造物下の地盤の液状化を防止するための地盤の液状化防止構造において、前記既設構造物下の液状化層を囲む遮水壁と、該遮水壁内の液状化層上層部に埋め込まれた集水管と、地上に設置され、前記集水管を通して前記液状化層上層部の地下水を汲み上げるポンプと、前記既設構造物周囲の地表から前記既設構造物下の液状化層底部に向けて埋め込まれた複数のドレーン材とを備え、地下水の汲み上げによって地下水位を前記液状化層上層部下まで下げるとともに、前記液状化層下層部の過剰間隙水が前記ドレーン材に流入し、前記液状化層下層部の間隙水圧の上昇が抑制されるようにした地盤の液状化防止構造にある。
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記ドレーン材は、前記液状化層上層部に埋め込まれる管状の排水管部と、前記液状化層下層部に埋め込まれる通水性を有する間隙水誘導部とを連続して備えたことにある。
本発明に係る地盤の液状化防止構造は、上述したように、既設構造物下の地盤の液状化を防止するための地盤の液状化防止構造において、前記既設構造物下の液状化層を囲む遮水壁と、該遮水壁内の液状化層上層部に埋め込まれた集水管と、地上に設置され、前記集水管を通して前記液状化層上層部の地下水を汲み上げるポンプと、前記既設構造物周囲の地表から前記既設構造物下の液状化層底部に向けて埋め込まれた複数のドレーン材とを備え、地下水の汲み上げによって地下水位を前記液状化層上層部下まで下げるとともに、前記液状化層下層部の過剰間隙水が前記ドレーン材に流入し、前記液状化層下層部の間隙水圧の上昇が抑制されるようにしたことより、間隙水圧抑制による液状化防止効果が期待できない既設構造物直下部分を地下水位低下による液状化防止効果で補い、ポンプによる負圧の作用限界深度により地下水位低下による液状化防止効果が期待できない限界深度より深い部分をドレーン材による間隙水圧抑制による液状化防止効果で補うことで、深さ7m以上に亘る液状化層の液状化対策に対応でき、且つ、ポンプを地上に設置するのでメンテナンスが容易で管理コストの低減を図ることができる。
また、本発明においては、地下水位の低下を液状化層上層部下の所定の深さまでに限定することで、地下水位低下に伴う地盤沈下の影響を抑えることができる。
更に、本発明において、前記ドレーン材は、前記液状化層上層部に埋め込まれる管状の排水管部と、前記液状化層下層部に埋め込まれる通水性を有する間隙水誘導部とを連続して備えたことにより、ドレーン材に液状化層下層部から流入した過剰間隙水が液状化層上層部へ逆流せず、地下水位低下による液状化層上層部の液状化防止効果を好適に維持することができる。
本発明に係る地盤の液状化防止構造の概略を示す縦断面図である。 従来の間隙水圧抑制による液状化防止構造の一例を示す縦断面図である。
次に、本発明に係る地盤の液状化防止構造の実施態様を図1に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号10はビル等の既設構造物、符号11は地盤の液状化層、符号12は自然地下水位である。また、本実施例において液状化層11とは、含水した砂質地盤等のように飽和状態にあって液状化現象の発生が懸念される層をいう。
この地盤の液状化防止構造は、既設構造物10下の液状化層11を囲む遮水壁13と、遮水壁13内の液状化層上層部11aに鉛直方向に向けて埋め込まれた複数の集水管14,14と、集水管14,14を通して地下水を汲み上げるポンプ15と、既設構造物10下の液状化層11に斜めに向けて埋め込まれた複数のドレーン材16,16...とを備え、地下水の汲み上げによって遮水壁13内の地下水位17を液状化層上層部11a下まで下げるとともに、ドレーン材16,16...を通して液状化層下層部11bの過剰間隙水を消散させるようにしている。
この既設構造物10下の地盤は、7m以上の深さに亘って砂質地盤等からなる液状化層11が存在し、本発明に係る地盤の液状化防止構造では、その液状化層11を地表から所望の深さ(4〜7m)までの液状化層上層部11aと、その所望の深さより下層の液状化層下層部11bとに分割し、液状化層上層部11aはウェルポイントを用いた地下水位低下工法で、液状化層下層部11bはドレーン材を用いた間隙水圧抑制工法でそれぞれ液状化を防止するようになっている。
液状化層上層部11aは、地上に設置されたポンプ15により負圧を作用させることができる限界深度に基づいて設定され、ポンプ15により集水管14,14を通して地下水を汲み上げることにより、液状化層上層部11a下、即ち、液状化層上層層部11aと液状化層下層部11bとの境界線11cの下まで地下水位17を下げられるようになっている。
遮水壁13は、液状化層11の底より深い位置まで埋め込まれた壁体が液状化層11を囲むように連続した形状に形成され、壁内外の地盤間で水の流通が遮断されている。
壁体の態様は、特に限定されないが、例えば、液状化層11の底より深く打ち込まれた鋼矢板や鋼管矢板等の矢板を互いに連結し、各矢板間の継手部を止水材で止水することにより構築してもよく、プレキャストコンクリート又は現場打ちによるコンクリート構造であってもよい。
各集水管14,14は、下端に集水機能を有するウェルポイント18を備え、地表部に配置された水平排水管19に接続されている。
各集水管14は、ウェルポイント18が地表より所望の深さ(4〜7m)に位置するように液状化層上層部11aに埋め込まれ、水平排水管19を介して地上に設置された真空ポンプ等のポンプ15に接続され、ウェルポイント18より集水された地下水をポンプ15により地上に汲み上げ、液状化層11の地下水位17を液状化層上層部11a下まで下げるようになっている。
各ドレーン材16,16...は、液状化層11に埋め込まれた際に下端が液状化層下層部11bの底まで至る長さの筒状に形成され、液状化層上層部11aに埋め込まれる管状の排水管部20と、液状化層下層部11bに埋め込まれる通水性を有する間隙水誘導部21とを備え、排水管部20と間隙水誘導部21とが長手方向に連続した一の筒状を成している。
間隙水誘導部21は、例えば、ドレーン材16,16...を構成する管体の下半部に管内外で貫通する多数の通水孔22,22...を備えることにより形成され、通水孔22,22...を通して液状化層下層部11bより過剰間隙水がドレーン材16,16...内に流入できるようになっている。
各ドレーン材16,16...は、互いに所望の間隔を置いて既設構造物10の周囲の地表から斜めに向けて液状化層11に埋め込まれ、その上端が地表部に敷設された砕石等からなる排水層23に連結され、液状化層下層部11bにおいては、過剰間隙水が間隙水誘導部21よりドレーン材16に流入し、各ドレーン材16,16...に流入した過剰間隙水が排水層23を通して排水されるようになっている。
尚、既設構造物10下に埋め込まれた各ドレーン材16,16...は、既設構造物10下の液状化層底部に向けて埋め込まれ、深い位置ほどドレーン材16,16間距離が狭まるように配置されている。
このように構成された地盤の液状化防止構造では、ポンプ15により連続的又は間欠的に既設構造物10下の液状化層11の地下水が汲み上げられることで、液状化層上層部11a下まで地下水位17が下げられ、液状化層上層部11aを飽和度の低い、初期有効応力が増大した液状化し難い状態にしている。
一方、液状化層11の地下水位17より下の層、即ち、液状化層下層部11bでは、地震動等による衝撃で間隙水の圧力が急激に上昇しようとすると、過剰間隙水が間隙水誘導部21よりドレーン材16,16...内に流入して好適に消散するので間隙水圧が抑制されて地盤の液状化が防止されるようになっている。
よって、この液状化防止構造では、既設構造物10下の液状化層11を液状化層上層部11aと液状化層下層部11bとに分割し、液状化層上層部11aに地下水位低下による液状化防止策が適用され、液状化層下層部11bに間隙水圧抑制による液状化防止策が適用されることによって、ドレーン材16,16までの距離が大きく、間隙水圧抑制による液状化防止効果が期待できない既設構造物10直下部分を地下水位17低下による液状化防止効果で補い、ポンプ15による負圧の作用限界深度により地下水位低下による液状化防止効果が期待できない限界深度より深い部分をドレーン材16,16...による間隙水圧抑制による液状化防止効果で補うことにより、液状化層上層部11aと下層部11bとで液状化防止効果が互いに補完される。
また、この地盤の液状化防止構造では、地下水位低下による液状化防止を液状化層上層部11aに限定したことで、有効上載圧の増加を抑え、地盤の圧密沈下への影響が少なくなっている。更には、地下水を汲み上げるポンプを地上に設置するので、構成設備のメンテナンスが容易である。
更には、ドレーン材16,16...を、液状化層上層部11aに埋め込まれる部分を管状の排水管部20とし、液状化層下層部11bに埋め込まれる部分を通水性を有する間隙水誘導部21とすることによって、地震動等の衝撃によってドレーン材16,16...に流入した過剰間隙水が液状化層上層部11aに流入せずに地表部に排水されるので、地下水位17低下による液状化防止効果を妨げることなく、既設構造物10下の地盤全体で高い液状化防止効果を発揮することができる。
尚、ドレーン材の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、間隙水誘導部を芯材の外周に透水性のフィルタを有するプラスチックドレーン材により構成してもよく、ドレーン材の全長に亘って通水性を有する構造としてもよい。
10 既設構造物
11 液状化層
12 自然地下水位
13 遮水壁
14 集水管
15 ポンプ
16 ドレーン材
17 地下水位
18 ウェルポイント
19 水平排水管
20 排水管部
21 間隙水誘導部
22 通水孔
23 排水層

Claims (2)

  1. 既設構造物下の地盤の液状化を防止するための地盤の液状化防止構造において、
    前記既設構造物下の液状化層を囲む遮水壁と、該遮水壁内の液状化層上層部に埋め込まれた集水管と、地上に設置され、前記集水管を通して前記液状化層上層部の地下水を汲み上げるポンプと、前記既設構造物周囲の地表から前記既設構造物下の液状化層底部に向けて埋め込まれた複数のドレーン材とを備え、
    前記地下水の汲み上げによって地下水位を前記液状化層上層部下まで下げるとともに、前記液状化層下層部の過剰間隙水が前記ドレーン材に流入し、前記液状化層下層部の間隙水圧の上昇が抑制されるようにしたことを特徴としてなる地盤の液状化防止構造。
  2. 前記ドレーン材は、前記液状化層上層部に埋め込まれる管状の排水管部と、前記液状化層下層部に埋め込まれる通水性を有する間隙水誘導部とを連続して備えた請求項1に記載の地盤の液状化防止構造。
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