JP6273083B2 - 変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物 - Google Patents

変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物

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Description

本発明は、変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物に関する。
シーリング材は、建築物等において各種部材間の接合部や隙間を充填し、水密性・気密性等を確保する目的で幅広く使用されている。代表的な建築物用のシーリング材として、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材等の1液型または2液型のものが挙げられる。
建築用のシーリング材は、アクリル電着塗装面、フッ素系塗装面等の難接着性の塗装面に対して接着性を示すことが要求される。また被着体とシーリング材との間の接着性を向上させるためにプライマー組成物が用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系素材に対して良好な接着性を有し、さらに変成シリコーン系シーリング材との接着性も良好なプライマー組成物が記載されている。
また、特許文献2には、様々な種類のシーリング材に対して使用可能であり、難接着性の建築部材、特にアクリル電着系建築部材に対して優れた接着性を発揮するプライマー組成物が記載されている。
特開2004−210894号公報 特開2002−309182号公報
しかしながら、近年では高層ビルなどでの建築用のアルミサッシ等では耐久性を重視した超耐候性アクリル電着塗装が施されるようになり、より接着性が高いプライマー組成物が必要になっている。
また、アクリル電着塗装したアルミサッシ等は、フロートガラス、熱線反射ガラス、熱線吸収ガラス等の各種のガラスと併用されることも多く、これらのいずれとも接着するプライマー組成物が必要になっている。
また、難接着性の塗装面を有する熱伸縮の大きい外壁パネルや笠木などの被着体では、シーリング材の接着が発現する前にシーリング材のゴム弾性が発現した場合にシーリング材が剥離するという虞があるため、初期の接着発現の速いプライマー組成物が必要になっている。
本発明は、前記問題に鑑み、初期の接着発現が速く難接着性の塗装面に対して優れた接着性を有する変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物を提供することを目的とする。
本発明は、次に示す(1)〜(6)である。
(1) 塩素化重合体(A)と、
前記塩素化重合体(A)100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下のポリイソシアネート化合物(B)と、
エポキシ基またはウレイド基を有するシランカップリング剤(C)と、
触媒(D)と、
溶剤(E)と、
を含むことを特徴とする変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
(2) 前記シランカップリング剤(C)の含有量が、前記塩素化重合体(A)100質量部に対して5質量部以上100質量部以下である上記(1)に記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
(3) 前記ポリイソシアネート化合物(B)が、イソシアネート化合物と数平均分子量が50以上500以下のジオールとの反応物である上記(1)又は(2)に記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
(4) 前記触媒(D)が、錫系触媒またはアミン系触媒の何れか一方または両方である上記(1)から(3)の何れか1つに記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
(5) 前記シランカップリング剤(C)の珪素に結合している官能基が、ジメトキシ基またはトリメトキシ基である上記(1)から(4)の何れか1つに記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
(6) アクリル電着塗装面又はフッ素系塗装面とシーリング材との接着に用いられる上記(1)から(5)の何れか1つに記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
本発明によれば、初期の接着発現が速く難接着性の塗装面に対して優れた接着性を有することができる。
図1は、剥離試験の様子を示す斜視図である。
以下、この発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
本実施形態に係る変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物(以下、「本実施形態の組成物」という。)は、塩素化重合体(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)と、エポキシ基またはウレイド基を有するシランカップリング剤(C)と、触媒(D)と、溶剤(E)とを含む。
<塩素化重合体(A)>
本実施形態の組成物に含まれる塩素化重合体(A)は、塩素化された重合体であれば特に限定されないが、好ましくは、例えば、イソプレン系合成ゴムの塩素化物、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン・プロピレン共重合体、塩素化ポリブタジエン、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリブタジエン・スチレン共重合体、クロロスルフォン化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン・酢酸ビニル共重合体等から好適に選択される。また、塩素化重合体(A)は、上記例示した塩素化重合体を2種以上併用してもよい。
塩素化重合体(A)の塩素化率は、5質量%以上70質量%以下が好ましく、10質量%以上70質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下が特に好ましい。塩素化率が40質量%以上70質量%以下であると、接着性と作業性との両面において優れた性質を示す。なお、塩素化率は蛍光X線分析により測定した値である。
塩素化重合体(A)の数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、1万〜100万程度であるのが好ましく、特に2万〜50万程度であれば適度な強度と安定性を有し、接着の安定性の観点から好ましい。更に、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、同一分子量における粘度が低くなるという点で範囲が狭いほど好ましい。
<ポリイソシアネート化合物(B)>
本実施形態の組成物に含まれるポリイソシアネート化合物(B)は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。ポリイソシアネート化合物(B)は、イソシアネート化合物とジオールとの反応物であることが好ましい。
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物(以下、「ポリイソシアネート化合物」という。)として、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態においては、難接着性塗装面に対する初期接着性および耐温水接着性がより良好となる理由から、上記ポリイソシアネート化合物がイソシアネート基を3個以上有していることが好ましい。イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートの何れか一方または両方と、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物との組み合わせで用いることが好ましい。また、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェートと、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物との組み合わせで用いることも好ましい。これらを組み合わせて用いることにより難接着性塗装面に対する初期接着性および耐温水接着性を向上できる。
上記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物を三量化して得られる、ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を好適に用いることができる。上記ジイソシアネート化合物として、具体的には、例えば、上記で例示した芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、TDIとHDIの混合物を反応させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物であるのが、難接着性塗装面に対する初期接着性および耐温水接着性がより良好となり十分な接着性が得られるという理由から好ましい。
上記ポリイソシアネート化合物の市販品として、例えば、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート(ディスモジュールRFE、バイエル社製)、HDIとTDIの混合物を反応させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物(ディスモジュールHL、バイエル社製)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(スミジュール44V−10、住化バイエルウレタン株式会社製)等を好適に用いることができる。
(ジオール)
ジオールとしては、水酸基を2個以上有する化合物(以下「ポリオール化合物」という)であれば特に限定されない。具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、(1,3−または1,4−)ブタンジオール、(1,5−)ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、(1,6−)ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトールなどの低分子量ポリオール;ソルビトールなどの糖類;ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィン系ポリオール;アジペート系ポリオール;ラクトン系ポリオール;等が挙げられる。このようなポリオール化合物は、それぞれ1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、難接着性塗装面に対する初期接着性および耐温水接着性がより良好となる理由から、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が好ましい。
上記ポリオール化合物(ジオール)の数平均分子量は、50以上500以下であることが好ましい。
ポリイソシアネート化合物(B)は、上述したイソシアネート化合物とジオール(ポリオール化合物)とを反応させることによって得られるものである。
ポリイソシアネート化合物(B)は、イソシアネート化合物と数平均分子量が50以上500以下のジオールとの反応物であることが好ましい。
ポリイソシアネート化合物(B)は公知の作製方法により得ることができる。ポリイソシアネート化合物(B)を作製する際のポリイソシアネート化合物とジオール(ポリオール化合物)との配合量は、インデックス(イソシアネート基のモル数/ヒドロキシ基のモル数)が、3以上10以下であるのが好ましい。
ポリイソシアネート化合物(B)の含有量は、上記塩素化重合体(A)(バインダー樹脂)100質量部に対して20質量部以上500質量部以下であるのが好ましく、50質量部以上300質量部以下がさらに好ましく、80質量部以上250質量部以下が特に好ましい。ポリイソシアネート化合物(B)の含有量がこの範囲であると、難接着性塗装面に対する初期接着性および耐温水接着性がより良好となり十分な接着性が得られる。
<シランカップリング剤(C)>
本実施形態の組成物に含まれるシランカップリング剤(C)としては、例えば、エポキシ基、ウレイド基(アミノ基)、アミノ基、メルカプト基、(ポリ)スルフィド基、ビニル基、メタクリロキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、ハロゲンおよびシクロプロピル基からなる群より選択される少なくとも1つの有機官能基を持つシランカップリング剤(C)が挙げられる。本実施形態の組成物に含まれるシランカップリング剤(C)は、分子内にエポキシ基又はウレイド基(アミノ基)を有するものが好ましい。
具体的には、例えば、下記式(1)で示されるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、下記式(2)で示されるγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、下記式(3)で示されるγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、下記式(4)で示されるβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;
Figure 0006273083
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物;下記式(5)で示されるγ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、下記式(6)で示される3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シラン化合物;
Figure 0006273083
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン化合物;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等の(ポリ)スルフィド基含有シラン化合物;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シラン化合物;γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ基含有シラン化合物;
β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン化合物;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートエチルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートエチルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートエチルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン化合物;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(メチルジメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(メチルジエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン基含有シラン化合物;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン化合物;メチルシリルエステル等のシリルエステル;オルソケイ酸エステル等のシラン化合物等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を混合または反応して用いてもよい。
上記のシランカップリング剤(C)のなかでも、上記式(1)〜(6)で示した、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが、特に難接着性塗装面への接着性を向上させる効果に優れることから好適に挙げられる。
本実施形態の組成物は、各種の難接着性塗装部材に対する接着性に優れるという点で、エポキシ基含有シラン化合物、ウレイド基含有シラン化合物およびアミノ基含有シラン化合物が好適に用いられる。なかでも、エポキシ基含有シラン化合物又はウレイド基含有シラン化合物がより好ましい。また、エポキシ基含有シラン化合物は、脂環式より脂肪族系がより好ましい。
また、本実施形態の組成物は、エポキシ基又はウレイド基を有するシランカップリング剤(C)を含むことにより、難接着性塗装面への初期の接着発現を促進することができるため、温度変位や層間変位の大きい難接着性塗装面の被着体(例えば、外壁パネル、笠木など)に対して接着性を向上させることができる。これにより、早期にシーリング材の物性(ゴム弾性)が発現した場合でもシーリング材の剥離を抑制することができる。
また、上記シランカップリング剤(C)の珪素に結合している官能基がメトキシ基の場合、エトキシ基よりも反応性が早くなるため、シランカップリング剤(C)の珪素に結合している官能基はエトキシ基よりもメトキシ基であるのが好ましい。
また、上記シランカップリング剤(C)の珪素に結合している官能基は、ジメトキシ基またはトリメトキシ基であるのがより好ましい。官能基がメトキシ基の場合、変成シリコーン系シーラントとの接着性を向上させることができる。また、官能基がメトキシ基の場合、初期の接着発現を促進することができることから、温度変位や層間変位の大きい難接着性塗装面の被着体に対する接着性を向上させることができるため、早期にシーリング材の物性(ゴム弾性)が発現した場合でもシーリング材の剥離を抑制することができる。
上記シランカップリング剤(C)は、市販品を用いてもよく、製造してもよい。製造条件は特に限定されず、公知の方法、条件で行うことができる。
シランカップリング剤(C)は、上記塩素化重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下含有されるのが好ましい。この範囲であれば、硬化物の物性に悪影響を及ぼすことなく、プライマー組成物の難接着性塗装面に対する接着性を向上させることができる。また、シランカップリング剤(C)の含有量が、上記塩素化重合体(A)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上100質量部以下であることにより、プライマー組成物の難接着性塗装面に対する初期の接着発現を促進することができ、初期耐熱接着性が良好となる。
本実施形態の組成物は、エポキシ基又はウレイド基を有するシランカップリング剤(C)を含有するので、ウレタン系焼付塗装板、フッ素系塗装板、陽極酸化アルミ板、アクリル電着塗装板などの難接着性塗装面、および変成シリコーン系シーリング材に対する接着性を向上させることができる。
<触媒(D)>
本実施形態の組成物は、触媒(D)を含む。触媒(D)を含有することにより接着発現が速くなり難接着性塗装面に対しても十分な接着性が得られる。本実施形態の組成物に含有される触媒(D)としては、硬化性樹脂と反応可能なものであれば特に制限されない。本実施形態の組成物では、触媒(D)を塩素化重合体(A)の硬化剤として用いることができる。
本実施形態の組成物に含まれる触媒(D)としては、接着促進効果が優れている点で、金属系触媒、錫系触媒、アミン系触媒などが挙げられる。
金属系触媒、錫系触媒、アミン系触媒としては、有機金属化合物、第3級アミン類、第3級アミン類とカルボン酸等の塩類などが挙げられる。具体的には、有機金属化合物としては、例えば、オクタン酸錫、オクチル酸錫、ブタン酸錫、ナフテン酸錫、カプリル酸錫、オレイン酸錫等の2価の有機錫化合物;ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ジオレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジフェニル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物;ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等の各種金属のキレート化合物;テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;その他、オクチル酸鉛やオクチル酸ジルコニウム等のマンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、鉛、ビスマス等の錫以外の各種金属と、オクチル酸、ステアリン酸、ナフテン酸等の各種有機酸との金属有機酸塩などが挙げられる。アミン類としては、例えば、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミンのような第1級アミン;ジブチルアミンのような第2級アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、キシリレンジアミンのようなポリアミン;トリエチレンジアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンのような環状アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのようなアミノアルコール化合物;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのようなアミノフェノール化合物等のアミン化合物およびそのカルボン酸塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセタートのような第4級アンモニウム塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量アミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物等が挙げられる。また、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の第3級アミン類、或いはこれらのアミン類とカルボン酸等の塩類などが挙げられる。これらの触媒は、それぞれ1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、微量で大きな触媒能を有するという観点から、錫系触媒、アミン系触媒が好ましい。錫系触媒とアミン系触媒は何れか一方又は両方を用いてもよい。錫系触媒としては、2価又は4価のどちらか一方を用いてもよいし、両方を併用して用いることもできる。アミン系触媒としては、第3級アミン類を用いるのが好ましい。
本実施形態においては、触媒(D)を用いることにより、シーリング材との接着反応速度を速めるとともに、接着反応の進行を促進して接着に到る作業時間の短縮を図ることができる。上記触媒(D)の含有量は、塩素化重合体(A)100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.01質量部以上2質量部以下がより好ましい。
<溶剤(E)>
本実施形態の組成物は、溶剤(E)を含む。溶剤(E)としては、塩素化重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、シランカップリング剤(C)および触媒(D)に対して不活性であれば従来公知の各種の溶剤を用いることができる。溶剤(E)としては、特に制限はなく、有機溶剤、水溶性溶媒等、広く公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系;テトラクロロメタン、メチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系;メタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール系;ミネラルスピリッツ等のガソリンから灯油留分に至る石油系;その他に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上を併用して使用してもよい。
なかでも、接着速度がより良好になるという理由から、メチルエチルケトン、酢酸エチルが好ましい。なお、上記溶剤は、十分に乾燥または脱水してから用いるのが好ましい。本実施形態の組成物中における溶剤(E)の含有量は、組成物の用途、目的等に応じて、適宜、その含有量を変化させることができる。
上記溶剤(E)の含有量は、本実施形態の組成物の全質量(合計質量)の60質量%以上95質量%以下であることが好ましい。溶剤(E)の含有量がこの範囲であれば、良好な塗布性を得ることができる。
また、本実施形態の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、安定剤、分散剤、充填剤等が挙げられる。
顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれでも両方でもよい。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等を用いることができる。
染料は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、樹脂成形品が黒色である場合には、黒色染料、黄色染料、赤色染料、青色染料、褐色染料が挙げられる。
老化防止剤として、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤として、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤として、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
難燃剤として、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤として、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
安定剤として、例えば、脂肪酸シリルエステル、脂肪酸アミドトリメチルシリル化合物等が挙げられる。
分散剤は、固体を微細な粒子にして液中に分散させる物質をいい、ヘキサメタリン酸ナトリウム、縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウム、界面活性剤等が挙げられる。
充填剤として、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
上記の各種の添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
本実施形態の組成物を製造する方法は特に限定されないが、例えば、上記各成分を減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、ボールミル、万能かくはん機、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて充分に混練し、均一に分散させる等により混合する方法が挙げられる。
このように、本実施形態の組成物は、塩素化重合体(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)と、エポキシ基またはウレイド基を有するシランカップリング剤(C)と、触媒(D)と、溶剤(E)とを含むことを特徴とする変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物である。よって、変成シリコーン系シーリング材との接着性や難接着性の塗装面に対する初期接着性、耐温水接着性および初期耐熱接着性を向上させることができる。また、エポキシ基またはウレイド基を有するシランカップリング剤(C)を含むことによって、初期の接着発現を促進することができ、難接着性の塗装面に対する接着性を向上させることがきる。従って、難接着性の塗装面に対して優れた接着性を有することができる。
本実施形態の組成物の用途は特に限定されないが、本実施形態の組成物は、以上のような優れた特性を有することから、建築用、土木用、コンクリート用、木材用、金属用、ガラス用、プラスチック用等のシーリング材等の用途に好適に用いられる。なかでも、本実施形態の組成物は、初期の接着発現を促進することができるため、例えば、温度変位や層間変位の大きい難接着性塗装面の被着体(例えば、外壁パネル、笠木など)に対して好適に用いることができる。
また、本実施形態の組成物は、難接着性塗装部材用のプライマーとしても好適に使用できる。本実施形態の組成物を好適に使用できる難接着性塗装部材の材料としては、例えば、アクリル電着塗装、フッ素焼付け塗装が挙げられる。これらの難接着性部材は、例えば、自動車、車輌、建築、電子部品等に使用される。また、本実施形態の組成物は、難接着性塗装部材以外の部材にも使用することができる。
本実施形態の組成物を難接着性塗装部材に接着させる方法は特に限定されない。例えば、本実施形態の組成物を難接着性塗装部材に塗布、浸漬して、接着させることができる。本実施形態の組成物の硬化は5℃以上40℃以下、30%RH以上70%RH以下の条件下で行うことが好ましい。
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ポリイソシアネート化合物(B)の調製>
表1に示す各成分を、同表に示す配合量(質量部)で、配合しこれらを均一に混合して反応温度40℃以上150℃以下の条件下で反応させて、表1に示されるポリイソシアネート化合物(B)を調製した。各成分の配合量を表1に示す。また溶剤中(例えば酢酸エチルなど)で、イソシアネート化合物とジオールとをイソシアネート基がポリオールのヒドロキシ基に対して過剰となるような量で混合し、必要に応じて触媒を使用して、40℃以上150℃以下の条件下で反応させることでポリイソシアネート化合物(B)を得ることもできる。
Figure 0006273083
上記表1に示される各成分は、以下のとおりである。
・イソシアネート化合物:ディスモジュールHL、バイエル社製
・ジオール:1,4−ブタンジオール
<プライマー組成物の調製>
表2に示す各成分を、同表に示す配合量(質量部)で、配合しこれらを均一に混合して、表2に示される各プライマー組成物を調製した。各々の実施例、比較例における各成分の配合量を表2に示す。
<剥離試験(ピール試験)>
図1は、剥離試験の様子を示す斜視図である。得られた各プライマー組成物11をメラミン樹脂コートの超耐候性アクリル電着塗装板12に塗布し、20℃で2分間放置した後、変成シリコーン系のシーリング材13(商品名:スーパーII、横浜ゴム株式会社製)を塗布し、以下に示す硬化・養生条件で硬化させて試験体とした。
(硬化・養生条件)
・初期接着性:20℃で3日間放置した後、50℃で4日間放置
・耐温水接着性:20℃で3日間放置した後、50℃で4日間放置し、更に50℃の温水中に7日間浸漬
得られた各試験体について、以下に示す方法で、各プライマー組成物11の90°剥離試験(ピール試験)を行い、破壊状態を評価した。図1に示すように、シーリング材13を被着体12から矢印A方向に被着体12に対して90度となるように剥離させた。その結果を表2に示す。表2中、CF、AFの評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
・CF:シーリング材の凝集破壊となったもの
・AF:シーリング材とプライマー組成物との界面で剥離したもの
CFの方が接着性に優れると評価した。
Figure 0006273083
上記表2に示される各成分は、以下のとおりである。
・塩素化重合体(A):ペルグートS170、住化バイエル株式会社製
・ポリイソシアネート化合物(B):上記表1で調製して得られた化合物
・触媒(D):オクチル酸第1錫、スタノクト、数平均分子量405、株式会社エーピーアイ・コーポレーション製
・溶剤(E):酢酸エチル、関東化学株式会社製
・シランカップリング剤(C)1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、数平均分子量236.3、KBM−403、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)2:3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、数平均分子量220.3、KBM−402、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)3:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、数平均分子量278.4、KBE−403、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)4:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、数平均分子量246.4、KBM−303、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)5:3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、数平均分子量264.4、KBE−585、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)6:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、数平均分子量248.4、KBM−503、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)7:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、数平均分子量234.3、KBM−5103、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)8:アニリノトリエトキシシラン、数平均分子量255.4、Y9669、日本ユニカー株式会社製
・シランカップリング剤(C)9:ケチミントリエトキシシラン、数平均分子量221.4、S340、チッソ株式会社製
・シランカップリング剤(C)10:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、数平均分子量247.4、KBE−9007、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)11:アミノプロピルトリエトキシシラン、数平均分子量425.7、A1170、日本ユニカー株式会社製
・シランカップリング剤(C)12:3−アミノプロピルジエトキシシラン、数平均分子量221.4、KBM−902、信越化学工業株式会社製
表2に示す結果から、実施例1〜6、9、10では、破壊形態が初期接着性および耐温水接着性の何れもCF(凝集破壊)であるため、何れも初期接着性および耐温水接着性に優れることが確認された。実施例7、8では、破壊形態が初期接着性はCF、耐温水接着性はAF(界面剥離)であるため、初期接着性に優れることが確認された。
これに対して、比較例1〜5、7では、破壊形態が初期接着性および耐温水接着性の何れもシーリング材13とプライマー組成物11との間での界面剥離(AF)であることから、何れも初期接着性および耐温水接着性に劣ることが確認された。比較例6、8では、破壊形態が初期接着性ではCF、耐温水接着性ではAFであり、初期接着性に優れるものの耐温水接着性に劣ることが確認された。
エポキシ基を有するシランカップリング剤(C)は、脂環式よりも脂肪族系の方が耐温水接着性が良好であることが確認された(実施例1〜6、8参照)。シランカップリング剤(C)の珪素に結合している官能基がジメトキシ基、トリメトキシ基の方が、トリエトキシ基よりも耐温水接着性が良好であることが確認された(実施例1〜6、7参照)。
よって、エポキシ基又はウレイド基を有するシランカップリング剤(C)の珪素に結合している官能基がジメトキシ基またはトリメトキシ基であるプライマー組成物の方が、従来のプライマー組成物と比べて難接着性の塗装面に対する接着性を向上させることができ、初期接着性および耐温水接着性に優れることから、難接着性の塗装面や変成シリコーン系シーラントのプライマー組成物として好適に用いることができる。
<プライマー組成物の調製>
表3に示す各成分を、同表に示す配合量(質量部)で、配合しこれらを均一に混合して、表3に示される各プライマー組成物を調製した。各々の実施例、比較例における各成分の配合量を表3に示す。
<剥離試験(ピール試験)>
図1は、剥離試験の様子を示す斜視図である。得られた各プライマー組成物11をフッ素系塗装板12及びメラミン樹脂コートの超耐候性アクリル電着塗装板12に塗布し、20℃で2分間放置した後、変成シリコーン系のシーリング材13(商品名:スーパーII、横浜ゴム株式会社製)を塗布し、以下に示す硬化・養生条件で硬化させて試験体とした。
[硬化・養生条件]
・初期耐熱接着性:40℃で1日間放置、及び23℃で3日間放置
・初期接着性:20℃で3日間放置した後、50℃で4日間放置
・耐温水接着性:20℃で3日間放置した後、50℃で4日間放置し、更に50℃の温水中に7日間浸漬
得られた各試験体について、以下に示す方法で、各プライマー組成物11の90°剥離試験(ピール試験)を行い、破壊状態を評価した。図1に示すように、シーリング材13を被着体12から矢印A方向に被着体12に対して90度となるように剥離させた。なお、初期耐熱接着性については、60℃及び80℃の条件下において90°剥離試験(ピール試験)を行った。その結果を表3に示す。表3中、CF、AFの評価基準は以下の通りである。
[評価基準]
(初期耐熱接着性)
・CF:シーリング材の凝集破壊となったもの
・AF:シーリング材とプライマー組成物との界面剥離の面積率
CF、及びAF20以下であれば接着性に優れると評価した。
(初期接着性、耐温水接着性)
・CF:シーリング材の凝集破壊となったもの
・AF:シーリング材とプライマー組成物との界面で剥離したもの
CFの方が接着性に優れると評価した。
Figure 0006273083
上記表3に示される各成分は、以下のとおりである。
・塩素化重合体(A):ペルグートS170、住化バイエル株式会社製
・ポリイソシアネート化合物(B):上記表1で調製して得られた化合物
・触媒(D):オクチル酸第1錫、スタノクト、数平均分子量405、株式会社エーピーアイ・コーポレーション製
・溶剤(E):酢酸エチル、関東化学株式会社製
・シランカップリング剤(C)13:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、数平均分子量236.3、KBM−403、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)14:3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、数平均分子量220.3、KBM−402、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)15:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、数平均分子量278.4、KBE−403、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)16:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、数平均分子量246.4、KBM−303、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)17:ビニルトリメトキシシラン、数平均分子量148.2、KBM−1003、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)18:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、数平均分子量247.4、KBE−9007、信越化学工業株式会社製
・シランカップリング剤(C)19:アニリノトリエトキシシラン、数平均分子量255.4、Y9669、日本ユニカー株式会社製
・シランカップリング剤(C)20:アミノプロピルトリエトキシシラン、数平均分子量425.7、A1170、日本ユニカー株式会社製
・シランカップリング剤(C)21:3−アミノプロピルジエトキシシラン、数平均分子量221.4、KBM−902、信越化学工業株式会社製
表3に示す結果から、実施例11〜17では、破壊形態が初期耐熱接着性(60℃及び80℃)の何れもCF(凝集破壊)及びAF(界面剥離)20以下であることから、初期耐熱接着性に優れることが確認された。実施例11〜15では、初期接着性および耐温水接着性の何れもCFであることから、何れも初期接着性および耐温水接着性に優れることが確認された。実施例16、17では、破壊形態が初期接着性はCF、耐温水接着性はAFであることから、初期接着性に優れることが確認された。
これに対して、比較例9〜14では、破壊形態が初期耐熱接着性(60℃及び80℃)の何れもAF20以上であることから、初期耐熱接着性に劣ることが確認された。比較例9、10、12、13では、初期接着性および耐温水接着性の何れもAFであることから、何れも初期接着性および耐温水接着性に劣ることが確認された。比較例11、14では、破壊形態が初期接着性はCF、耐温水接着性はAFであることから、初期接着性に優れるものの耐温水接着性に劣ることが確認された。
エポキシ基を有するシランカップリング剤(C)を所定量含有するプライマー組成物は、初期耐熱接着性(60℃及び80℃)が良好であることが確認された(実施例11〜17参照)。シランカップリング剤(C)の珪素に結合している官能基がジメトキシ基、トリメトキシ基の方が、トリエトキシ基よりも初期耐熱接着性が良好であることが確認された(実施例11〜17参照)。
よって、エポキシ基を有するシランカップリング剤(C)を所定量含有し、シランカップリング剤(C)の珪素に結合している官能基がジメトキシ基またはトリメトキシ基であるプライマー組成物の方が、従来のプライマー組成物と比べて難接着性の塗装面に対する初期の接着性を向上させることができ、初期耐熱接着性、初期接着性および耐温水接着性に優れることから、難接着性の塗装面や変成シリコーン系シーラントのプライマー組成物として好適に用いることができる。
11 プライマー組成物
12 被着体
13 シーリング材

Claims (6)

  1. 塩素化重合体(A)と、
    前記塩素化重合体(A)100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下のポリイソシアネート化合物(B)と、
    エポキシ基またはウレイド基を有するシランカップリング剤(C)と、
    触媒(D)と、
    溶剤(E)と、
    を含むことを特徴とする変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
  2. 前記シランカップリング剤(C)の含有量が、前記塩素化重合体(A)100質量部に対して5質量部以上100質量部以下である請求項1に記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
  3. 前記ポリイソシアネート化合物(B)が、イソシアネート化合物と数平均分子量が50以上500以下のジオールとの反応物である請求項1又は2に記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
  4. 前記触媒(D)が、錫系触媒またはアミン系触媒の何れか一方または両方である請求項1から3の何れか1項に記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
  5. 前記シランカップリング剤(C)の珪素に結合している官能基が、ジメトキシ基またはトリメトキシ基である請求項1から4の何れか1項に記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
  6. アクリル電着塗装面又はフッ素系塗装面とシーリング材との接着に用いられる請求項1から5の何れか1項に記載の変成シリコーン系シーリング材用プライマー組成物。
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