以下に、本願の開示する無線装置及び無線通信システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により開示技術が限定されるものではない。
まず、実施例1に係る無線装置100による動作の一例を説明する。図1は、実施例1に係る無線装置による動作の一例を説明する説明図である。図1において、横軸は、周波数[Hz]を示し、左側の縦軸は、送信信号の電力である信号電力[W]を示し、右側の縦軸は、無線装置に搭載された増幅器の効率である増幅効率[−]を示している。なお、増幅効率は、(増幅器の出力電力)/(増幅器の消費電力)により表される効率である。
実施例1に係る無線装置は、増幅器で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力を示す電力分布を検出する。図1の(a)の例では、無線装置は、送信信号の周波数帯内の周波数fsにおいて信号電力が最大値となる電力分布502を検出する。
続いて、実施例1に係る無線装置は、検出された電力分布を用いて、増幅器の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数が電力分布の最大値に対応する周波数に近付くように、増幅器の効率‐周波数特性を変動させるパラメータを制御する。増幅器の効率‐周波数特性とは、増幅器で増幅される送信信号の周波数帯と、増幅器の効率との対応関係を表す。図1の(a)の例では、増幅器の効率‐周波数特性504の最大値に対応する周波数faが、電力分布502の最大値に対応する周波数fsに一致していない。この場合、無線装置は、図1の(b)に示すように、増幅器の効率‐周波数特性504の最大値に対応する周波数faが電力分布502の最大値に対応する周波数fsに近付くように、増幅器の効率‐周波数特性504を変動させるパラメータを制御する。
このように、実施例1に係る無線装置は、増幅器で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を用いて、増幅器の効率‐周波数特性を変動させるパラメータを制御する。このため、実施例1によれば、増幅対象となる送信信号の種別が変化した場合でも、増幅器の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数と、増幅対象となる送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数とのずれを動的に減少させることができる。結果として、実施例1によれば、増幅対象となる信号の種別の変化に追従して増幅器を高効率に運用することが可能となる。
次に、実施例1に係る無線装置100の構成例を説明する。図2は、実施例1に係る無線装置の構成例を示す図である。図2に示すように、実施例1に係る無線装置100は、DPD(Digital Pre Distortion)制御回路101、DAC(Digital Analog Converter)102、ミキサ103及び局部発振器104を有する。また、無線装置100は、増幅器105、移相器106、結合器107、ミキサ108、局部発振器109、ADC(Analog Digital Converter)110を有する。また、無線装置100は、制御回路150を有する。かかる無線装置100は、例えば、移動局装置と無線通信する基地局装置等の無線装置に適用される。
DPD制御回路101は、ベースバンド(BB(Baseband))信号の同相成分(In-phase)及び直交成分(Quadrature-phase)が送信信号として入力されると、入力された送信信号と、ADC110からフィードバックされた送信信号との差分を算出する。そして、DPD制御回路101は、算出した差分に基づいて送信信号を逆補正することで歪補償処理を行い、歪補償処理後の送信信号をDAC102及び制御回路150に出力する。
DAC102は、DPD制御回路101から入力された送信信号をディジタル‐アナログ変換し、ディジタル‐アナログ変換した送信信号をミキサ103に出力する。
ミキサ103は、DAC102から入力された送信信号の周波数を、局部発振器104から入力された信号の周波数に基づいて変換し、変換後の送信信号を移相器106に出力する。
局部発振器104は、例えばPLL(Phase Locked Loop)回路であり、所定の周波数の信号を発振し、発振した信号をミキサ103に出力する。
移相器106は、増幅器105の前段に配置され、設定される駆動電圧に応じて増幅器105で増幅される送信信号の位相をシフトし、位相のシフト後の送信信号を増幅器105に出力する。ここで、移相器106に設定される駆動電圧は、制御回路150によって動的に制御される。このため、移相器106は、動的に制御される駆動電圧に基づいて、増幅器105で増幅される送信信号の位相をシフトする。これにより、増幅器105の効率‐周波数特性が変動する。すなわち、移相器106に設定される駆動電圧は、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの一例に相当する。
増幅器105は、移相器106から入力された送信信号を増幅し、増幅した送信信号を結合器107を介してアンテナ111に出力する。
結合器107は、増幅器105から入力された送信信号の一部を分岐し、分岐した送信信号をミキサ108に出力することで、フィードバックする。
ミキサ108は、結合器107から入力された送信信号の周波数を、局部発振器109から入力された信号の周波数に基づいて変換し、変換後の送信信号をADC110に出力する。
ADC110は、ミキサ108から入力された送信信号にアナログ‐ディジタル変換し、ディジタル‐アナログ変換した送信信号をDPD制御回路101に出力する。
アンテナ111は、結合器107を介して増幅器105から入力された送信信号を空間に放射する。
制御回路150は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を用いて、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの一つとして、移相器106に設定される駆動電圧を制御する。具体的には、制御回路150は、パラメータ記憶部151、電力分布検出部152及びパラメータ制御部153を有する。
なお、パラメータ記憶部151は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。また、電力分布検出部152及びパラメータ制御部153は、例えば、集積回路又は電子回路である。集積回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路である。電子回路は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。
パラメータ記憶部151は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布のパターンごとに、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの最適値を記憶する。パラメータ記憶部151は、記憶部の一例である。
図3は、実施例1におけるパラメータ記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。図3に示すように、パラメータ記憶部151は、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの一つとして、移相器106に設定される駆動電圧の最適値を送信信号の電力分布のパターンごとに記憶する。
例えば、パラメータ記憶部151は、電力分布「H」に対応付けて、駆動電圧の最適値「V1h」を記憶する。また、パラメータ記憶部151は、電力分布「M」に対応付けて、駆動電圧の最適値「V1m」を記憶する。また、パラメータ記憶部151は、電力分布「L」に対応付けて、駆動電圧の最適値「V1l」を記憶する。ここで、電力分布「H」は、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsが送信信号の周波数帯のうち高周波側の周波数帯Aに存在する電力分布である。電力分布「L」は、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsが送信信号の周波数帯のうち低周波側の周波数帯Bに存在する電力分布である。電力分布「M」は、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsが高周波側の周波数帯Aと低周波側の周波数帯Bとの中間に位置する周波数帯Cに存在する電力分布である。また、駆動電圧の最適値「V1h」は、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを高周波側の周波数帯Aに移動させるための駆動電圧の値である。駆動電圧の最適値「V1l」は、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを低周波側の周波数帯Bに移動させるための駆動電圧の値である。駆動電圧の最適値「V1m」は、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを高周波側の周波数帯Aと低周波側の周波数帯Bとの中間に位置する周波数帯Cに移動させるための駆動電圧の値である。すなわち、パラメータ記憶部151は、送信信号の電力分布のパターンごとに、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsに近付けるための駆動電圧の値を駆動電圧の最適値として記憶する。
電力分布検出部152は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を検出する。具体的には、電力分布検出部152は、DPD制御回路101から入力された送信信号を解析し、送信信号中の複数の成分の各々の電力と複数の成分の各々の周波数とを抽出することによって、電力分布を検出する。電力分布検出部152は、検出部の一例である。
パラメータ制御部153は、電力分布検出部152で検出された電力分布を用いて、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数が電力分布の最大値に対応する周波数に近付くように、増幅器105の特性を変動させるパラメータを制御する。具体的には、パラメータ制御部153は、増幅器105の特性を変動させるパラメータとして、移相器106に設定される駆動電圧を制御する。
ここで、パラメータ制御部153による駆動電圧制御の詳細を説明する。パラメータ制御部153は、電力分布検出部152で検出された電力分布を受け付けると、受け付けた電力分布のパターンに対応付けられた駆動電圧の最適値をパラメータ記憶部151から取得する。例えば、電力分布のパターンが、図3に示した電力分布「H」である場合を想定する。この場合、パラメータ制御部153は、パラメータ記憶部151を参照して電力分布「H」に対応付けられた駆動電圧の最適値「V1h」を取得する。そして、パラメータ制御部153は、取得した駆動電圧の最適値が移相器106に既に設定されているか否かを判定する。パラメータ制御部153は、取得した駆動電圧の最適値が移相器106に既に設定されている場合には、移相器106に既に設定されている駆動電圧を維持する。一方、パラメータ制御部153は、取得した駆動電圧の最適値が移相器106に未だ設定されていない場合には、取得した駆動電圧の最適値に基づいて、移相器106に既に設定されている駆動電圧を変更する。
次に、実施例1に係る無線装置100の処理手順を説明する。図4は、実施例1に係る無線装置の処理手順を示すフローチャートである。図4に示した処理手順は、所定の周期で繰り返し実行される。
図4に示すように、無線装置100の電力分布検出部152は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を検出する(ステップS101)。
パラメータ制御部153は、電力分布検出部152で検出された電力分布のパターンに対応付けられた駆動電圧の最適値をパラメータ記憶部151から取得する(ステップS102)。
パラメータ制御部153は、取得した駆動電圧の最適値が移相器106に既に設定されているか否かを判定する(ステップS103)。パラメータ制御部153は、取得した駆動電圧の最適値が移相器106に既に設定されている場合には(ステップS103;Yes)、移相器106に既に設定されている駆動電圧を維持し、処理を終了する。
一方、パラメータ制御部153は、取得した駆動電圧の最適値が移相器106に未だ設定されていない場合には(ステップS103;No)、取得した駆動電圧の最適値に基づいて、移相器106に既に設定されている駆動電圧を変更する(ステップS104)。
上述したように、実施例1に係る無線装置100は、送信信号の電力分布を検出し、検出した電力分布を用いて、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、移相器106の駆動電圧を制御する。このため、実施例1によれば、増幅対象となる送信信号の種別が変化した場合でも、増幅器の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数と、増幅対象となる送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数とのずれを動的に減少させることができる。結果として、実施例1によれば、増幅対象となる信号の種別の変化に追従して増幅器を高効率に運用することが可能となる。
また、無線装置100は、増幅対象となる送信信号の電力分布のパターンごとに、移相器106の駆動電圧の最適値を記憶するパラメータ記憶部151を備え、検出した電力分布のパターンに対応付けられた最適値に基づいて、移相器106の駆動電圧を制御する。結果として、実施例1によれば、増幅対象となる信号の種別が多様化した場合でも、増幅対象となる信号の種別の変化に追従して増幅器を高効率に運用することが可能となる。
上記実施例1では、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、移相器106の駆動電圧を制御する例を説明した。しかしながら、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、増幅器105による送信信号の増幅に用いられるゲート電圧を制御しても良い。そこで、実施例2では、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、増幅器105による送信信号の増幅に用いられるゲート電圧を制御する例について説明する。
図5は、実施例2に係る無線装置の構成例を示す図である。図5において、図2と同一の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。図5に示すように、実施例2に係る無線装置200は、図2に示した制御回路150に代えて、制御回路250を有する。また、無線装置200は、図2に示した移相器106を有さない。
ミキサ103は、DAC102から入力された送信信号の周波数を、局部発振器104から入力された信号の周波数に基づいて変換し、変換後の送信信号を増幅器105に出力する。増幅器105は、ミキサ103から入力された送信信号を増幅し、増幅した送信信号を結合器107を介してアンテナ111に出力する。
制御回路250は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を用いて、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの一つとして、増幅器105のゲート電圧を制御する。具体的には、制御回路250は、パラメータ記憶部251、電力分布検出部252及びパラメータ制御部253を有する。
パラメータ記憶部251は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布のパターンごとに、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの最適値を記憶する。パラメータ記憶部251は、記憶部の一例である。
図6は、実施例2におけるパラメータ記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。図6に示すように、パラメータ記憶部251は、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの一つとして、増幅器105のゲート電圧の最適値を送信信号の電力分布のパターンごとに記憶する。
例えば、パラメータ記憶部251は、電力分布「H」に対応付けて、ゲート電圧の最適値「V2h」を記憶する。また、パラメータ記憶部251は、電力分布「M」に対応付けて、ゲート電圧の最適値「V2m」を記憶する。また、パラメータ記憶部251は、電力分布「L」に対応付けて、ゲート電圧の最適値「V2l」を記憶する。ここで、電力分布「H」は、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsが送信信号の周波数帯のうち高周波側の周波数帯Aに存在する電力分布である。電力分布「L」は、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsが送信信号の周波数帯のうち低周波側の周波数帯Bに存在する電力分布である。電力分布「M」は、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsが高周波側の周波数帯Aと低周波側の周波数帯Bとの中間に位置する周波数帯Cに存在する電力分布である。また、ゲート電圧の最適値「V2h」は、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを高周波側の周波数帯Aに移動させるためのゲート電圧の値である。ゲート電圧の最適値「V2l」は、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを低周波側の周波数帯Bに移動させるためのゲート電圧の値である。ゲート電圧の最適値「V2m」は、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを高周波側の周波数帯Aと低周波側の周波数帯Bとの中間に位置する周波数帯Cに移動させるためのゲート電圧の値である。すなわち、パラメータ記憶部251は、送信信号の電力分布のパターンごとに、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsに近付けるためのゲート電圧の値を最適値として記憶する。
電力分布検出部252は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を検出する。具体的には、電力分布検出部252は、DPD制御回路101から入力された送信信号を解析し、送信信号中の複数の成分の各々の電力と複数の成分の各々の周波数とを抽出することによって、電力分布を検出する。電力分布検出部252は、検出部の一例である。
パラメータ制御部253は、電力分布検出部252で検出された電力分布を用いて、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数が電力分布の最大値に対応する周波数に近付くように効率‐周波数特性を変動させるパラメータを制御する。具体的には、パラメータ制御部253は、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、増幅器105のゲート電圧を制御する。増幅器105のゲート電圧は、増幅器105による信号の増幅に用いられる電圧の一例である。
ここで、パラメータ制御部253によるゲート電圧制御の詳細を説明する。パラメータ制御部253は、電力分布検出部252で検出された電力分布を受け付けると、受け付けた電力分布のパターンに対応付けられたゲート電圧の最適値をパラメータ記憶部251から取得する。例えば、電力分布のパターンが、図6に示した電力分布「H」である場合を想定する。この場合、パラメータ制御部253は、パラメータ記憶部251を参照して電力分布「H」に対応付けられたゲート電圧の最適値「V2h」を取得する。そして、パラメータ制御部253は、取得したゲート電圧の最適値が増幅器105に既に設定されているか否かを判定する。パラメータ制御部253は、取得したゲート電圧の最適値が増幅器105に既に設定されている場合には、増幅器105に既に設定されているゲート電圧を維持する。一方、パラメータ制御部153は、取得した駆動電圧の最適値が増幅器105に未だ設定されていない場合には、取得した駆動電圧の最適値に基づいて、増幅器105に既に設定されているゲート電圧を変更する。
次に、実施例2に係る無線装置200の処理手順を説明する。図7は、実施例2に係る無線装置の処理手順を示すフローチャートである。図7に示した処理手順は、所定の周期で繰り返し実行される。
図7に示すように、無線装置200の電力分布検出部252は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を検出する(ステップS201)。
パラメータ制御部253は、電力分布検出部252で検出された電力分布のパターンに対応付けられたゲート電圧の最適値をパラメータ記憶部251から取得する(ステップS202)。
パラメータ制御部253は、取得したゲート電圧の最適値が増幅器105に既に設定されているか否かを判定する(ステップS203)。パラメータ制御部253は、取得したゲート電圧の最適値が増幅器105に既に設定されている場合には(ステップS203;Yes)、増幅器105に既に設定されているゲート電圧を維持し、処理を終了する。
一方、パラメータ制御部253は、取得したゲート電圧の最適値が増幅器105に未だ設定されていない場合には(ステップS203;No)、取得したゲート電圧の最適値に基づいて、増幅器105に既に設定されているゲート電圧を変更する(ステップS204)。
上述したように、実施例2に係る無線装置200は、送信信号の電力分布を検出し、検出した電力分布を用いて、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、増幅器105のゲート電圧を制御する。このため、実施例2によれば、増幅対象となる送信信号の種別が変化した場合でも、増幅器の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数と、増幅対象となる送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数とのずれを動的に減少させることができる。結果として、実施例2によれば、増幅対象となる信号の種別の変化に追従して増幅器を高効率に運用することが可能となる。しかも、実施例2によれば、移相器を用いることなく増幅器105の効率‐周波数特性を変動させることができるので、部品点数を削減しつつ増幅器を高効率に運用することが可能となる。
上記実施例1では、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、移相器106の駆動電圧を制御する例を説明した。しかしながら、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、増幅器105による送信信号の増幅に用いられるドレイン電圧を制御しても良い。そこで、実施例3では、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、増幅器105による送信信号の増幅に用いられるドレイン電圧を制御する例について説明する。
図8は、実施例3に係る無線装置の構成例を示す図である。図8において、図2と同一の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。図8に示すように、実施例3に係る無線装置300は、図2に示した制御回路150に代えて、制御回路350を有する。また、無線装置300は、図2に示した移相器106を有さない。
ミキサ103は、DAC102から入力された送信信号の周波数を、局部発振器104から入力された信号の周波数に基づいて変換し、変換後の送信信号を増幅器105に出力する。増幅器105は、ミキサ103から入力された送信信号を増幅し、増幅した送信信号を結合器107を介してアンテナ111に出力する。
制御回路350は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を用いて、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの一つとして、増幅器105のゲート電圧を制御する。具体的には、制御回路350は、パラメータ記憶部351、電力分布検出部352及びパラメータ制御部353を有する。
パラメータ記憶部351は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布のパターンごとに、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの最適値を記憶する。パラメータ記憶部351は、記憶部の一例である。
図9は、実施例3におけるパラメータ記憶部に記憶される情報の一例を示す図である。図9に示すように、パラメータ記憶部351は、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータの一つとして、増幅器105のドレイン電圧の最適値を送信信号の電力分布のパターンごとに記憶する。
例えば、パラメータ記憶部351は、電力分布「H」に対応付けて、ドレイン電圧の最適値「V3h」を記憶する。また、パラメータ記憶部351は、電力分布「M」に対応付けて、ドレイン電圧の最適値「V3m」を記憶する。また、パラメータ記憶部351は、電力分布「L」に対応付けて、ドレイン電圧の最適値「V3l」を記憶する。ここで、電力分布「H」は、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsが送信信号の周波数帯のうち高周波側の周波数帯Aに存在する電力分布である。電力分布「L」は、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsが送信信号の周波数帯のうち低周波側の周波数帯Bに存在する電力分布である。電力分布「M」は、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsが高周波側の周波数帯Aと低周波側の周波数帯Bとの中間に位置する周波数帯Cに存在する電力分布である。また、ドレイン電圧の最適値「V3h」は、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを高周波側の周波数帯Aに移動させるためのドレイン電圧の値である。ドレイン電圧の最適値「V3l」は、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを低周波側の周波数帯Bに移動させるためのドレイン電圧の値である。ドレイン電圧の最適値「V3m」は、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを高周波側の周波数帯Aと低周波側の周波数帯Bとの中間に位置する周波数帯Cに移動させるためのドレイン電圧の値である。すなわち、パラメータ記憶部351は、送信信号の電力分布のパターンごとに、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数faを送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数fsに近付けるためのドレイン電圧の値を最適値として記憶する。
電力分布検出部352は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を検出する。具体的には、電力分布検出部352は、DPD制御回路101から入力された送信信号を解析し、送信信号中の複数の成分の各々の電力と複数の成分の各々の周波数とを抽出することによって、電力分布を検出する。電力分布検出部352は、検出部の一例である。
パラメータ制御部353は、電力分布検出部352で検出された電力分布を用いて、増幅器105の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数が電力分布の最大値に対応する周波数に近付くように、増幅器105の特性を変動させるパラメータを制御する。具体的には、パラメータ制御部353は、増幅器105の特性を変動させるパラメータとして、増幅器105のドレイン電圧を制御する。増幅器105のドレイン電圧は、増幅器105による信号の増幅に用いられる電圧の一例である。
ここで、パラメータ制御部353によるドレイン電圧制御の詳細を説明する。パラメータ制御部353は、電力分布検出部352で検出された電力分布を受け付けると、受け付けた電力分布のパターンに対応付けられたドレイン電圧の最適値をパラメータ記憶部351から取得する。例えば、電力分布のパターンが、図9に示した電力分布「H」である場合を想定する。この場合、パラメータ制御部153は、パラメータ記憶部351を参照して電力分布「H」に対応付けられたドレイン電圧の最適値「V3h」を取得する。そして、パラメータ制御部353は、取得したドレイン電圧の最適値が増幅器105に既に設定されているか否かを判定する。パラメータ制御部353は、取得したドレイン電圧の最適値が増幅器105に既に設定されている場合には、増幅器105に既に設定されているドレイン電圧を維持する。一方、パラメータ制御部353は、取得した駆動電圧の最適値が増幅器105に未だ設定されていない場合には、取得した駆動電圧の最適値に基づいて、増幅器105に既に設定されているドレイン電圧を変更する。
次に、実施例3に係る無線装置300の処理手順を説明する。図10は、実施例3に係る無線装置の処理手順を示すフローチャートである。図10に示した処理手順は、所定の周期で繰り返し実行される。
図10に示すように、無線装置300の電力分布検出部352は、増幅器105で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布を検出する(ステップS301)。
パラメータ制御部353は、電力分布検出部352で検出された電力分布のパターンに対応付けられたドレイン電圧の最適値をパラメータ記憶部351から取得する(ステップS302)。
パラメータ制御部353は、取得したドレイン電圧の最適値が増幅器105に既に設定されているか否かを判定する(ステップS303)。パラメータ制御部353は、取得したドレイン電圧の最適値が増幅器105に既に設定されている場合には(ステップS303;Yes)、増幅器105に既に設定されているドレイン電圧を維持し、処理を終了する。
一方、パラメータ制御部353は、取得したドレイン電圧の最適値が増幅器105に未だ設定されていない場合には(ステップS303;No)、取得したドレイン電圧の最適値に基づいて、増幅器105に既に設定されているドレイン電圧を変更する(ステップS304)。
上述したように、実施例3に係る無線装置300は、送信信号の電力分布を検出し、検出した電力分布を用いて、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、増幅器105のドレイン電圧を制御する。このため、実施例3によれば、増幅対象となる送信信号の種別が変化した場合でも、増幅器の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数と、増幅対象となる送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数とのずれを動的に減少させることができる。結果として、実施例3によれば、増幅対象となる信号の種別の変化に追従して増幅器を高効率に運用することが可能となる。しかも、実施例3によれば、移相器を用いることなく増幅器105の効率‐周波数特性を変動させることができるので、部品点数を削減しつつ増幅器を高効率に運用することが可能となる。
さて、これまで本願の開示する無線装置の実施例について説明したが、上述した実施例以外にも種々の異なる形態にて実施されてもよいものである。そこで、以下では実施例4として他の実施例を説明する。
(1)無線通信システム
上記実施例1〜3では、移動局装置と無線通信する基地局装置等の無線装置に本願の開示する無線装置を適用する場合を説明したが、開示の技術はこれには限られない。例えば、基地局装置と無線通信する移動局装置等の無線装置に本願の開示する無線装置を適用してもよい。要するに、基地局装置と、移動局装置とを有する無線通信システムにおいて、基地局装置及び移動局装置の少なくともいずれか一つに本願の開示する無線装置を適用することが可能である。
(2)パラメータの組合せ
上記実施例1〜3では、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、移相器106の駆動電圧、増幅器105のゲート電圧及び増幅器105のドレイン電圧のいずれか一つを制御する例を説明した。しかしながら、開示の技術はこれには限られない。例えば、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、移相器106の駆動電圧、増幅器105のゲート電圧及び増幅器105のドレイン電圧の少なくともいずれか一つを選択し、選択したパラメータを複合的に制御するようにしても良い。
(3)パラメータの種類
上記実施例1〜3では、増幅器105の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、移相器106の駆動電圧、増幅器105のゲート電圧及び増幅器105のドレイン電圧のいずれか一つを制御する例を説明した。しかしながら、開示の技術はこれには限られない。増幅器105の効率‐周波数特性を変動させる他のパラメータが存在する場合には、当該パラメータを制御してもよい。例えば、増幅器105の温度が増幅器105の効率‐周波数特性を変動させる要因となり得る場合には、増幅器105の温度を制御してもよい。
(4)ドハティ型増幅装置
また、本願の開示する無線装置は、増幅器105に代えてドハティ型増幅装置が搭載されている場合にも、同様に適用することが可能である。以下、図11を用いて、ドハティ型増幅装置が搭載された無線装置の構成例を説明する。
図11は、ドハティ型増幅装置が搭載された無線装置の構成例を示す図である。図11において、図5と同一の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図11に示す無線装置400は、図5に示した増幅器105に代えて、ドハティ型増幅装置450を有する。ドハティ型増幅装置450は、CA(Carrier Amplifier:キャリア増幅素子)452と、CA452と並列に接続されたPA(Peak Amplifier:ピーク増幅素子)453と、CA452及びPA453に送信信号を分配する分配器451とを有する。CA452と、PA453とは、入力電力の増加にともなってCA452、PA453の順で動作する。また、ドハティ型増幅装置450は、PA453の入力側にλ/4線路455が設けられる。このため、ドハティ型増幅装置450へ入力された信号は、CA452に対してはそのまま入力され、PA453に対してはλ/4線路455を介して入力される。また、ドハティ型増幅装置450は、CA452の出力側にインピーダンス変換を行うλ/4線路454が設けられる。このため、PA453から出力された信号は結合器107へそのまま入力され、CA452から出力された信号はλ/4線路454を介して結合器107へ入力される。
パラメータ記憶部251は、CA452で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布のパターンごとに、CA452のゲート電圧の最適値を記憶する。
また、パラメータ記憶部251は、PA453で増幅される送信信号の周波数帯に対する、送信信号の電力の分布を示す電力分布のパターンごとに、PA453のゲート電圧の最適値を記憶する。
パラメータ制御部253は、電力分布検出部252で検出された電力分布を用いて、CA452の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数が電力分布の最大値に対応する周波数に近付くように、CA452の効率‐周波数特性を変動させるパラメータを制御する。具体的には、パラメータ制御部253は、CA452の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとしてCA452のゲート電圧を制御する。
また、パラメータ制御部253は、検出された電力分布を用いて、PA453の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数が電力分布の最大値に対応する周波数に近付くように、PA453の効率‐周波数特性を変動させるパラメータを制御する。具体的には、パラメータ制御部253は、PA453の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとしてPA453のゲート電圧を制御する。
このように、無線装置400は、送信信号の電力分布を検出し、検出した電力分布を用いて、ドハティ型増幅装置450内のCA452の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、CA452のゲート電圧を制御する。さらに、無線装置400は、検出した電力分布を用いて、ドハティ型増幅装置450内のPA453の効率‐周波数特性を変動させるパラメータとして、PA453のゲート電圧を制御する。このため、無線装置400は、増幅対象となる送信信号の種別が変化した場合でも、CA452及びPA453の効率‐周波数特性の最大値に対応する周波数と、送信信号の電力分布の最大値に対応する周波数とのずれを動的に減少させることができる。結果として、無線装置400は、増幅対象となる信号の種別の変化に追従してドハティ型増幅装置を高効率に運用することが可能となる。