ところで、特許文献1に記載の従来技術では、五酸化ニオビウム、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル及び酸化亜鉛の少なくとも1つを高屈折率材料として用いている。しかし、これらの高屈折率材料は、1500℃以上の高温で加熱した際に白色とは異なる色に変色する材料である。このため、高屈折率材料をアルミナに含有させてグリーンシートを形成し、形成したグリーンシートを焼成してセラミック層を形成すると、セラミック層、ひいてはセラミック基板の白色度が低下するおそれがある。
この問題を解決するためには、1000℃未満の温度で焼成できるガラスセラミックに対して高屈折率材料を含有させることにより、グリーンシートを形成することも考えられる。このようにすれば、グリーンシートを焼成したとしても高屈折率材料が変色しないため、セラミック層(及びセラミック基板)の白色度の低下を防止することができる。しかしながら、ガラスセラミックは熱伝導率が低いため、セラミック基板の放熱性が低下し、ひいてはセラミックパッケージの信頼性が低下するという問題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光素子からの光を効率良く反射させることができ、かつ信頼性の高い発光素子搭載用セラミックパッケージを提供することにある。
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、基板主面及び基板裏面を有するとともに、アルミナを主成分とする複数のセラミック層を積層配置してなるセラミック基板を備え、前記基板主面上に発光素子を搭載可能な搭載部が設定された発光素子搭載用セラミックパッケージであって、前記複数のセラミック層は、高屈折率無機材料を含有しない第1のセラミック層と、前記高屈折率無機材料を含有する第2のセラミック層とを含み、前記第1のセラミック層は、前記基板主面側の最外層に配置され、第1の屈折率を有しており、前記第2のセラミック層は、前記第1のセラミック層よりも前記基板裏面側に配置され、前記高屈折率無機材料が前記第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有していることを特徴とする発光素子搭載用セラミックパッケージがある。
従って、手段1に記載の発明によると、発光素子からの光が第1のセラミック層に入射する場合、光の一部が第1のセラミック層の表面で反射し、残りが第1のセラミック層内に入射する。そして、第1のセラミック層内に入射した光は、第1のセラミック層よりも基板裏面側に配置された第2のセラミック層にそのまま入射する。さらに、第2のセラミック層内に入射した光が第2のセラミック層に含有される高屈折率無機材料に到達すると、光の一部が基板主面側に反射し、残りが屈折して基板裏面側に進行する。また、光が別の高屈折率無機材料に到達した場合であっても、光の一部が基板主面側に反射し、残りが屈折して基板裏面側に進行する。以上の結果、発光素子からの光の一部は基板裏面側から外部に放出されるが、大部分の光は、高屈折率無機材料によって基板主面側に反射するため、発光素子からの光を効率良く反射させることができる。
また、第2のセラミック層よりも基板主面側に、高屈折率無機材料を含有しない第1のセラミック層が配置されているため、高屈折率無機材料はセラミック基板の内部に隠れるようになる。従って、セラミック基板の製造時(焼成時)に第2のセラミック層の高屈折率無機材料が変色したとしても、基板主面に露出する第1のセラミック層は変色しないため、変色に起因するセラミック基板の白色度の低下を防止することができる。さらに、セラミック層が、例えば、ガラスセラミック等よりも熱伝導率が高いアルミナを主成分とするため、セラミック基板の放熱性が向上する。ゆえに、信頼性に優れた発光素子搭載用セラミックパッケージが実現可能となる。
上記発光素子搭載用セラミックパッケージを構成するセラミック基板は、基板主面及び基板裏面を有する板状部材であって、アルミナを主成分とする複数のセラミック層を積層配置してなる。なお、「アルミナを主成分とするセラミック層」とは、アルミナの含有率が例えば90重量%以上となるセラミック層のことをいう。セラミック基板は発光素子に電力を供給するための導体層を有していることがよく、特には、このような導体層を2層以上有するセラミック多層基板を用いることがよい。
セラミック基板の基板主面上には、発光素子を搭載可能な搭載部が設定されている。その具体例を挙げると、メタライズ印刷等の手法によって形成された実装用パッドなどがある。
搭載部に搭載されるべき発光素子の具体例としてはLED素子が挙げられるが、これ以外のもの、例えば、半導体レーザーダイオード(Laser Diode ;LD)や面発光レーザー(Vertical-Cavity-Surface Emitting Laser;VCSEL)などを用いてもよい。1つの搭載部に搭載される発光素子は、1つであってもよいし、複数であってもよい。例えば、赤色、緑色及び青色のLED素子を1つの搭載部に実装することにより、白色光を得るように構成してもよい。
また、セラミック基板を構成する複数のセラミック層は、第1の屈折率を有する第1のセラミック層と、第1の屈折率よりも高い第2の屈折率を有する高屈折率無機材料を含有する第2のセラミック層とを含んでいる。ここで、高屈折率無機材料としては特に限定されないが、例えば無機化合物が挙げられる。無機化合物としては、二酸化チタン(TiO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ランタン(La2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、窒化アルミニウム(AIN)、硫酸バリウム(BaSO4)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)などが挙げられる。なお、二酸化チタンの屈折率(2.3〜2.55)、五酸化タンタルの屈折率(2.16)、酸化ジルコニウムの屈折率(2.05)、酸化ランタンの屈折率(1.88)、酸化イットリウムの屈折率(1.87)、炭酸カルシウムの屈折率(1.6585)、窒化アルミニウムの屈折率(1.9〜2.2)、硫酸バリウムの屈折率(1.64)、チタン酸バリウムの屈折率(2.411)、チタン酸ストロンチウムの屈折率(2.409)、チタン酸鉛の屈折率(2.7)は、それぞれアルミナの屈折率(1.63)よりも高くなっている。そして、無機化合物(高屈折率無機材料)としては特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、五酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ランタン及び酸化イットリウムの少なくとも1つからなる金属酸化物が選択可能である。即ち、アルミナよりも屈折率が高い高屈折率無機材料を用いれば、第2のセラミック層内に入射した光を高屈折率無機材料によってより効率良く反射させることができる。
また、高屈折率無機材料の融点は、アルミナの融点とほぼ等しくてもよい。このようにすれば、同時焼成法によって第1のセラミック層及び第2のセラミック層を形成することができるため、工数が少なくなり、生産効率の向上及び製造コストの低減が達成しやすくなる。なお、高屈折率無機材料として例えば融点が1850℃の二酸化チタンを用いると、高屈折率無機材料の融点をアルミナの融点(2050℃)に近付けることができる。ここで、高屈折率無機材料の融点が「アルミナの融点とほぼ等しい」とは、高屈折率無機材料の融点がアルミナの融点に対して±300℃以内であることをいう。但し、焼結助剤の調整次第では、高屈折率無機材料の融点がアルミナの融点に対して±700℃以内となるものも、「アルミナの融点とほぼ等しい」ものとして含めることが可能である。
第2のセラミック層の熱伝導率は、第1のセラミック層の熱伝導率とほぼ等しくなっていてもよい。このようにすれば、第2のセラミック層の熱伝導率がアルミナの高い熱伝導率とほぼ等しくなるため、セラミック基板の放熱性が確実に向上する。ここで、第2のセラミック層の熱伝導率が「第1のセラミック層の熱伝導率とほぼ等しい」とは、第2のセラミック層の熱伝導率が第1のセラミック層の熱伝導率に対して例えば±20%以内であることをいう。また、高屈折率無機材料の反射率(%)は、アルミナの反射率(%)よりも高くてもよい。このようにすれば、第2のセラミック層内に入射した光を高屈折率無機材料によってより一層効率良く反射させることができる。さらに、第2のセラミック層の光透過率(%)は、第1のセラミック層の光透過率(%)よりも小さくてもよい。このようにすれば、光が第2のセラミック層を通過しにくくなるため、第2のセラミック層内に入射した光を確実に高屈折率無機材料によって反射させることができる。
また、第1のセラミック層の白色度(%)は、第2のセラミック層の白色度(%)よりも高くてもよい。即ち、基板主面に露出する部分(第1のセラミック層)の白色度が高くなるため、セラミック基板の品質向上を図ることができる。なお、「白色度」とは、JIS Z8722に規定する分光測色方法などによって測定されるものである。
また、第2のセラミック層における高屈折率無機材料の含有率は特に限定されないが、例えば、1重量%以上5重量%以下であることがよい。仮に、高屈折率無機材料の含有率が1重量%未満になると、第2のセラミック層内に入射した光が高屈折率無機材料に到達しにくくなるため、第2のセラミック層内に入射した光をさほど反射させることができなくなる。一方、高屈折率無機材料の含有率が5重量%よりも大きくなると、第2のセラミック層の融点が下がり過ぎる可能性があるため、焼成によって第2のセラミック層を形成する場合に、第2のセラミック層が変形するおそれがある。
以下、本発明の発光素子搭載用セラミックパッケージを具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態の発光素子搭載用セラミックパッケージ10(以下「セラミックパッケージ10」という)は、発光素子であるLED素子21を搭載するための装置である。このセラミックパッケージ10を構成するセラミック基板11は、基板主面12及び基板裏面13を有する矩形平板状の部材である。
セラミック基板11の中央部には、基板主面12側にて開口し、LED素子21を収容可能な大きさを有する有底のキャビティ31が形成されている。このキャビティ31は平面視で円形状を呈しており、その深さは、基板主面12上に積層されたセラミック層14の厚さ分に相当する。キャビティ31の底面33(基板主面12)上の中央部には、LED素子21を搭載可能な搭載部であるカソード導体層34及びアノード導体層35が、タングステンのメタライズ印刷によってそれぞれ矩形状に形成されている。なお、アノード導体層35にはLED素子21が搭載されるとともに、LED素子21のアノード端子がはんだ付け等により接合されている。一方、カソード導体層34には、LED素子21の上面にあるカソード端子が、ボンディングワイヤ22を介して電気的に接続されている。カソード導体層34及びアノード導体層35は、いずれもタングステンメタライズ層上にニッケルめっき、金めっき、銀めっき等を施した層構造を有している。
図1に示されるように、キャビティ31の側面32は、底面33を基準として約45°の傾斜角を有するテーパ面となっている。キャビティ31の側面32上には、タングステンメタライズ層上にニッケルめっき、金めっき、銀めっき等を施した層構造の光反射層23が形成されている。従って、この光反射層23により、LED素子21からの光がセラミック基板11の厚さ方向(図1では上方)に反射されるようになっている。また、キャビティ31内にはエポキシ等の熱硬化性樹脂からなる透明樹脂25が充填され、その透明樹脂25によりLED素子21が全体的に覆われている。
また、セラミック基板11は、3層のセラミック層15,16,17を積層配置した構造を有している。セラミック層16,17の表面(図1では上面)には、タングステンからなる導体層18がそれぞれ形成されている。また、各セラミック層15〜17においてカソード導体層34及びアノード導体層35に対応した箇所には、キャビティ31の底面33とセラミック基板11の基板裏面13とを連通するビアホール36がそれぞれ形成されている。これらのビアホール36内には、タングステンを主体とするビア導体37が設けられている。セラミック基板11の基板裏面13には、タングステンを主体とするメタライズ配線層38がパターン形成され、メタライズ配線層38は、ビア導体37を介して導体層18に電気的に接続されている。
図1,図2に示されるように、本実施形態では、各セラミック層15〜17のうち、第1層,第3層のセラミック層15,17が第1のセラミック層となり、第2層のセラミック層16が第2のセラミック層となっている。よって、基板主面12側の最外層に配置されたセラミック層は第1のセラミック層(第1のセラミック層15)となり、基板裏面13側の最外層に配置されたセラミック層も第1のセラミック層(第1のセラミック層17)となる。また、第2のセラミック層16は、第1のセラミック層15よりも基板裏面13側であって、第1のセラミック層17よりも基板主面12側に配置されている。なお、各セラミック層15〜17の厚さは、40μm以上500μm以下であることが好ましい。本実施形態では、第1のセラミック層15の厚さが250μmに設定され、第2のセラミック層16及び第1のセラミック層17の厚さがそれぞれ150μmに設定されている。
図1,図2に示される各セラミック層15〜17は、光透過性を有する無機材料、具体的にはアルミナ焼結体からなる。よって、各セラミック層15〜17には、LED素子21からの光L1(図2参照)が入射するようになっている。なお、上述したセラミック層14も、光透過性を有するアルミナ焼結体からなっている。また、第1のセラミック層15,17(及びセラミック層14)は、第1の屈折率(本実施形態では1.63)を有している。第1のセラミック層15,17は、白色を呈しており、光透過率が18%、熱伝導率が18W/m・Kに設定されている。さらに、第1のセラミック層15,17を構成するアルミナは、融点が2050℃、反射率が82%(550nm)となっている。
一方、第2のセラミック層16は、二酸化チタンからなる高屈折率無機材料19を含有している。高屈折率無機材料19は、粒状をなしており、第1の屈折率よりも高い第2の屈折率(本実施形態では2.3〜2.55)を有している。なお、本実施形態では、第2のセラミック層16が高屈折率無機材料19を含有する一方、第1のセラミック層15,17は、高屈折率無機材料19を含有しないようになっている。第2のセラミック層16における高屈折率無機材料19の含有率は、1重量%以上5重量%以下(本実施形態では1重量%)である。
また、図1,図2に示される第2のセラミック層16の光透過率は、第1のセラミック層15,17の光透過率(18%)よりも小さくなっており、本実施形態では10%に設定されている。第2のセラミック層16は、灰色を呈しており、第1のセラミック層15,17に比べて白色度が低くなっている。第2のセラミック層16の熱伝導率は、第1のセラミック層15,17の熱伝導率(18W/m・K)とほぼ等しくなっており、本実施形態では16W/m・Kとなっている。また、第2のセラミック層16を構成する高屈折率無機材料19の融点は、アルミナの融点(2050℃)とほぼ等しくなっており、本実施形態では1850℃となっている。さらに、高屈折率無機材料19の反射率は、アルミナの反射率(82%)よりも高くなっており、本実施形態では90%となっている。
なお、アルミナ及び高屈折率無機材料19の反射率の測定は、図3に示す測定装置を用いて行われる。この測定装置は、測定対象物83を支持する支持台80と、支持台80上の測定対象物83を覆う積分球84とを備えている。測定装置は、積分球84の外側(図3では積分球84の左側の箇所)に、光源81及びミラー85を備えている。光源81の先端は、ミラー85を介して測定対象物83の被測定面を狙っている。一方、この測定装置は、積分球84の外側であって測定対象物83の被測定面の上方となる位置(図3では測定対象物83の略真上の位置)に、受光手段82を備えている。受光手段82の受光部は、測定対象物83の被測定面に対向して配置されている。
この測定装置を用いた測定では、まず、光源81を所定強度で発光させ、ミラー85に対して光を入射させる。この光は、ミラー85によって反射して積分球84内に入射し、積分球84の内面で反射した後、測定対象物83の被測定面に対して入射する。そして、測定対象物83に入射した入射光の反射光を受光手段82で受光するとともに、その反射光の強度を求める。次に、反射光強度から入射光強度を割った値を算出し、この算出値を100倍することにより、反射率(%)が算出される。
次に、セラミックパッケージ10の動作について説明する。
LED素子21は、セラミック基板11や配線に接続された回路デバイス(図示略)を介して動作する。LED素子21に電気信号が出力されると、LED素子21は入力した電子信号を光信号に変換した後、その光信号を光L1(図2参照)として出射する。そして、LED素子21から出射した光L1は、第1のセラミック層15(第1層のセラミック層)に入射する。このとき、光L1の一部が第1のセラミック層15の表面(図2では上面)で反射するとともに、光L1の残りの部分が第1のセラミック層15に入射する。
また、図2では、第1のセラミック層15と第2のセラミック層16(第2層のセラミック層)との界面を破線で示しているが、実際には明確な界面が存在している訳ではない。このため、第1のセラミック層15に入射した光L1は、第1のセラミック層15と第2のセラミック層16との界面をそのまま直進し、第2のセラミック層16に入射する。そして、光L1が第2のセラミック層16内に存在する高屈折率無機材料19に到達すると、光L1の一部が基板主面12側に反射するとともに、光L1の残りが屈折して基板裏面13側へ進行する。さらに、基板裏面13側へ進行する光L1が第2のセラミック層16内に存在する別の高屈折率無機材料19に到達すると、光L1の一部が基板主面12側に反射するとともに、光L1の残りが屈折して基板裏面13側へ進行する。本実施形態では、第2のセラミック層16に入射した光L1の大部分が、高屈折率無機材料19によって基板主面12側に反射するようになっている。
また、図2では、第2のセラミック層16と第1のセラミック層17(第3層のセラミック層)との界面も破線で示されているが、実際に明確な界面が存在している訳ではない。よって、第2のセラミック層16の裏面(図2では下面)付近に到達した光L1は、第2のセラミック層16と第1のセラミック層17との界面をそのまま直進し、第1のセラミック層17に入射する。その後、第1のセラミック層17に入射した光L1は、第1のセラミック層17の裏面(基板裏面13)からセラミック基板11の外部に放出される。
次に、上記構造のセラミックパッケージ10を製造する方法について説明する。
まず、アルミナ粉末、有機バインダ、溶剤、可塑剤等を混合してスラリーを作製する。そして、このスラリーを従来周知の手法(本実施形態ではドクターブレード法)によりシート状に成形し、所定サイズに切断して、3枚のセラミックグリーンシート61,62,64(図4参照)を作製する。また、アルミナ粉末、有機バインダ、溶剤、可塑剤、高屈折率無機材料19(本実施形態では二酸化チタン)等を混合して、高屈折率無機材料含有スラリーを作製する。なお、高屈折率無機材料19は、アルミナ粉末と高屈折率無機材料19との重量の合計(100重量%)に対して、1重量%以上5重量%以下(本実施形態では1重量%)の割合で含有される。そして、この高屈折率無機材料含有スラリーを従来周知の手法(本実施形態ではドクターブレード法)によりシート状に成形し、所定サイズに切断して、1枚のセラミックグリーンシート63(図4参照)を作製する。
次に、セラミックグリーンシート61〜64に対する孔あけを下記のように行う。図5に示されるように、1つのセラミックグリーンシート61に対して従来周知の打抜金型(図示略)を用いた打抜加工を行い、貫通孔65を形成する。この貫通孔65は、後にキャビティ31の一部となるため、テーパ状をなすように形成される。また、他のセラミックグリーンシート62〜64に対して従来周知のパンチング(打抜)加工を行い、シート表裏面を貫通するビアホール36を形成する。なお、レーザー加工やドリル加工などの手法によって、ビアホール36を形成することも可能である。
次に、従来周知のペースト印刷装置を用いて、タングステン(W)、モリブデン(Mo)またはそれらの合金を含有するペースト71を、ビアホール36内に充填する(図6参照)。また、同じ装置を用いて、セラミックグリーンシート61に設けられた貫通孔65の内周面にペースト71を塗布するとともに、セラミックグリーンシート62〜64の表裏面の所定箇所にペースト71を塗布する(図7参照)。
次に、セラミックグリーンシート64、セラミックグリーンシート63、セラミックグリーンシート62、セラミックグリーンシート61の順で積層し、従来周知のラミネート装置を用いて厚さ方向に所定の荷重を加えることにより、これらを圧着、一体化して積層体を形成する(図8参照)。その後、この積層体をアルミナ及びタングステンが焼結しうる温度(例えば1400℃〜1800℃程度の温度)に加熱する焼成工程を行う。この焼成を経ると、セラミックグリーンシート61〜64が焼結して、キャビティ31を有するセラミック基板11が得られる。また、ペースト71の焼結によって、セラミック基板11において光反射層23となるべき箇所(キャビティ31の側面32)に、光反射層23の一部をなすタングステンメタライズ層が形成される。さらに、セラミック基板11においてカソード導体層34及びアノード導体層35となるべき箇所(キャビティ31の底面33)に、カソード導体層34及びアノード導体層35の一部をなすタングステンメタライズ層が形成される。また、セラミック基板11の所定箇所には、ビア導体37とメタライズ配線層38とがそれぞれ形成される。次に、電解ニッケルめっき及び電解金めっきを行ってタングステンメタライズ層上にニッケル層及び金層を形成し、さらに電解銀めっきを行ってニッケル層及び金層上に銀層を形成する。その結果、光反射層23、カソード導体層34及びアノード導体層35が完成し、セラミックパッケージ10が得られる。
その後、セラミックパッケージ10に対して素子搭載工程を行い、LED素子21の実装及びワイヤボンディングを実施する。次に、充填工程を行い、キャビティ31内に透明樹脂25を充填して熱硬化させることにより、LED素子21付きのセラミックパッケージ10が完成する。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態のセラミックパッケージ10では、LED素子21からの光L1が第1のセラミック層15に入射する際に、光L1の一部が第1のセラミック層15の表面で反射し、残りが第1のセラミック層15内に入射する。そして、第1のセラミック層15内に入射した光L1は、第1のセラミック層15よりも基板裏面13側に配置された第2のセラミック層16にそのまま入射する。さらに、第2のセラミック層16内に入射した光L1が第2のセラミック層16に含有される高屈折率無機材料19に到達すると、光L1の一部が基板主面12側に反射し、残りが屈折して基板裏面13側に進行する。また、光L1が別の高屈折率無機材料19に到達した場合であっても、光L1の一部が基板主面12側に反射し、残りが屈折して基板裏面13側に進行する。以上の結果、LED素子21からの光L1の一部は基板裏面13側から外部に放出されるが、大部分の光L1は、高屈折率無機材料19によって基板主面12側に反射するため、LED素子21からの光L1を効率良く反射させることができる。
(2)また、本実施形態では、第2のセラミック層16よりも基板主面12側に、高屈折率無機材料19を含有しない第1のセラミック層15が配置されるとともに、第2のセラミック層16よりも基板裏面13側に、高屈折率無機材料19を含有しない第1のセラミック層17が配置されているため、高屈折率無機材料19はセラミック基板11の内部に隠れるようになる。従って、セラミック基板11の製造時(焼成時)に第2のセラミック層16の高屈折率無機材料19が変色したとしても、基板主面12に露出する第1のセラミック層15や基板裏面13に露出する第1のセラミック層17は変色しないため、変色に起因するセラミック基板11の白色度の低下を防止することができる。さらに、セラミック基板11を構成するセラミック層14〜17が、ガラスセラミック等よりも熱伝導率が高いアルミナを主成分とするため、セラミック基板11の放熱性が向上する。ゆえに、信頼性に優れたセラミックパッケージ10が実現可能となる。
(3)本実施形態では、光反射層23、カソード導体層34及びアノード導体層35を同時に形成し、光反射層23、カソード導体層34及びアノード導体層35を構成するニッケル層、金層及び銀層の形成を廉価な手法であるめっき法により行っているため、製造コストの上昇を防止することができる。
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のセラミック基板11は、1層の第2のセラミック層16を備えていた。しかし、セラミック基板は、複数層の第2のセラミック層を備えていてもよい。例えば、図9のセラミックパッケージ110に示されるように、セラミック基板111が2層の第2のセラミック層112,113を有し、所定の第2のセラミック層112が、他の第2のセラミック層113上に直接的に積層されていてもよい。また、図10のセラミックパッケージ120に示されるように、セラミック基板121が2層の第2のセラミック層122,123を有し、所定の第2のセラミック層122が、第2のセラミック層122,123とは別のセラミック層(第1のセラミック層124)を介して、他の第2のセラミック層123上に間接的に積層されていてもよい。以上のようにすれば、第2のセラミック層が1層しかない場合に比べて、LED素子21からの光L1を基板主面12側に反射させやすくなる。
・上記実施形態のセラミック基板11では、基板裏面13側の最外層となるセラミック層が、第1のセラミック層17となっていた。しかし、図11のセラミックパッケージ130に示されるように、セラミック基板131の基板裏面132側の最外層となるセラミック層が、第2のセラミック層133となっていてもよい。
・上記実施形態では、キャビティ31内にLED素子21を1つ実装した構造を例示したが、その数は2つ以上であっても構わない。具体例を挙げると、平面視で長円形状のキャビティを形成し、そのキャビティの底面の略中央部にカソード導体層を3つ形成する。そして、これら3つのカソード導体層上に、赤色、緑色及び青色のLED素子をそれぞれ実装する。このように構成すると、高輝度の白色光が得られる装置を実現することができる。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段1において、前記第2のセラミック層の光透過率は、前記第1のセラミック層の光透過率よりも小さいことを特徴とする発光素子搭載用セラミックパッケージ。
(2)上記手段1において、前記第2のセラミック層の白色度は、前記第1のセラミック層の白色度よりも低いことを特徴とする発光素子搭載用セラミックパッケージ。
(3)上記手段1において、前記セラミック基板は複数の前記第2のセラミック層を有し、所定の第2のセラミック層は、他の第2のセラミック層上に直接的に積層されていることを特徴とする発光素子搭載用セラミックパッケージ。
(4)上記手段1において、前記セラミック基板は複数の前記第2のセラミック層を有し、所定の第2のセラミック層は、前記第2のセラミック層とは別のセラミック層を介して、他の第2のセラミック層上に間接的に積層されていることを特徴とする発光素子搭載用セラミックパッケージ。
(5)上記手段1において、前記基板裏面側の最外層となる前記セラミック層が、前記第2のセラミック層となることを特徴とする発光素子搭載用セラミックパッケージ。
(6)上記手段1において、前記基板裏面側の最外層となる前記セラミック層が、前記第1のセラミック層となることを特徴とする発光素子搭載用セラミックパッケージ。