しかしながら、上記従来の特許文献1に開示されたLCノイズフィルタにおいては、同文献の第4図に示される等価回路のように、第1の絶縁シートの表面側の第1の導体によって構成されるコイルと、裏面側の第2の導体によって構成されるコイルとの間でコンデンサを形成しているため、大きなコンデンサ容量を得られず、また、その容量値の調整が難しい。また、コンデンサ電極間には薄い絶縁シートしか存在しないので、コンデンサの電極間の耐圧を確保することは困難である。また、各折り畳み部に形成された、コイルを構成する各導電体間の距離も、薄い絶縁シートの厚さ分の距離しかないので、大きなインダクタンス値を得ることはできない。
また、積層体を形成するために第1の絶縁シートと第2の絶縁シートとを積層するので、シートを積層する製造工程が必要となり、LCフィルタの製品コスト上昇の要因となる。
また、外部接続導体をピンで構成し、第1の導体および第2の導体に接続して入出力端子およびアース用端子を形成するので、ピンと各導体との接続部において接続信頼性が低下する。
また、上記従来のSMDタイプのLCノイズフィルタにおいては、積層体から外部に突出した幅広の入出力端子およびアース端子をそれぞれ順次折り畳む工数がかかる。このため、この工数によっても、LCフィルタの製品コストが上がってしまう。
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
電気絶縁性を有するシートと、
シートの一方の面に蛇行して設けられてシートが繰り返して曲げられることで巻き構造を呈する導体路と、
シートの他方の面または一方の面に設けられてシートが繰り返して曲げられることで相互に対向する複数のコンデンサ電極と
を備えて、LCフィルタを構成した。
本構成によれば、1枚のシートが繰り返して曲げられることで、1枚のシートの一方の面に形成された導体路が巻き構造を呈してコイルを構成し、他方の面または一方の面に形成されたコンデンサ電極が相互に対向してコンデンサを構成する。ここで、相互に対向するコンデンサ電極間の距離はシートの曲げ形状、コンデンサ電極の面積はそのパターン形状によって容易に調整できるので、シートの曲げの間隔分の距離を確保することで、コンデンサ電極間の耐圧を容易に確保することができると共に、コンデンサの容量値も容易に調整することができる。また、コイルを構成する導体路間の距離、つまり巻き線間の距離も、シートの曲げの間隔分の距離を確保することができるので、大きなインダクタンス値を得られる。このため、従来のLCフィルタのように、シートの一方および他方の面に一対のコイルを形成して、一対のコイル間に生じるキャパシタをコンデンサとする構成とは異なり、容量値の調整が容易でしかも大きな容量値およびインダクタンス値を持つLCフィルタが簡単に得られる。
また、本発明は、導体路とコンデンサ電極とが、シートの重ならない領域に形成されることを特徴とする。
本構成によれば、コイルを構成する導体路とコンデンサを構成するコンデンサ電極とがシートの重ならない領域に形成されるため、シートを曲げることで形成されるコイルの内径部分にコンデンサ電極が存在し、コンデンサ電極がコイルの内径部分を通る磁束を遮断することは無い。このため、1枚のシートにコイルおよびコンデンサを形成しても、コイルおよびコンデンサのそれぞれの機能が阻害されることなく、1枚のシートにコイルおよびコンデンサを併存させることができる。
また、本発明は、
シートが、谷面と山面とが側面を介して交互に現れる、連続する4つの面を1周期とする周期で折り曲げられ、
導体路が、シートの一方の面において、連続する4つの面に形成される部分を1周期として蛇行し、
コンデンサ電極が、シートの他方の面または一方の面において各側面に設けられる
ことを特徴とする。
本構成によれば、導体路は、曲げられたシートの谷面への下降と山面への上昇を側面を介して交互に繰り返しながら蛇行することで、巻き構造を呈する。コンデンサ電極は、各側面で対向することで、コンデンサの対向電極を構成する。従って、1枚のシートが、連続する4つの面を1周期とする周期で単に折り曲げられことで、シートの一方の面に形成された導体路が巻かれてコイルが構成され、他方の面または一方の面に形成されたコンデンサ電極が対向してコンデンサが構成されて、LCフィルタが形成される。
また、本発明は、
シートが、上り斜面と下り斜面とが交互に現れる、連続する2つの面を1周期とする周期で折り曲げられ、
導体路が、シートの一方の面において、連続する2つの面に形成される部分を1周期として蛇行し、
コンデンサ電極が、シートの他方の面または一方の面において、連続する面の1つおきの面に設けられる
ことを特徴とする。
本構成によれば、導体路は、折り曲げられたシートの上り斜面への上昇と下り斜面の下降とを交互に繰り返しながら蛇行することで、巻き構造を呈する。コンデンサ電極は、上り斜面または下り斜面を介して対向することで、コンデンサの対向電極を構成する。従って、1枚のシートが、連続する2つの面を1周期とする周期で単に折り曲げられことで、シートの一方の面に形成された導体路が巻かれてコイルが構成され、他方の面または一方の面に形成されたコンデンサ電極が対向してコンデンサが構成されて、LCフィルタが形成される。
また、シートが、連続する2つの面を1周期とする周期で折り曲げられて導体路が1周期の蛇行をするので、連続する4つの面を1周期とする周期で折り曲げられて導体路が1周期の蛇行をする構成に比較して、少ない回数で1巻き当たりの折り曲げを行える。このため、同外形寸法のLCフィルタにおいて、より多くの巻き数を稼ぐことができるので、大きなインダクタンスを有するLCフィルタを提供することができる。また、同じ巻き数のコイルを持ったLCフィルタにおいて、シートの折り曲げ回数を少なくすることができるので、シートの信頼性の向上を期待することができる。
また、導体路の幅を広くすることで、斜面上に形成された導体路がコイルの径方向に占める高さは大きくなる。このため、巻き構造コイルの内径が小さくなってコイル内径部の断面積が小さくなり、コイル内径部を磁束が通り難くなるので、コイルのQ値は低くなる。しかし、コイルの直流抵抗値は低くなるので、大電流を流せるコイルを持ったLCフィルタを構成することができる。他方、導体路の幅を狭くすることで、斜面上に形成された導体路がコイルの径方向に占める高さは小さくなる。このため、巻き構造コイルの内径および内径部断面積の大きさを確保することができ、コイル内径部を磁束が通り易くなるので、高いQ値を有するコイルを持ったLCフィルタを構成することができる。また、導体路の蛇行する振幅を大きくすることで、巻き構造コイルの内径部の断面積を大きくすることができる。このため、コイル内径部を磁束がさらに通り易くなるので、より高いQ値を有するコイルを持ったLCフィルタを構成することができる。
また、本発明は、導体路が、シートの折り曲げ線に交差して形成されることを特徴とする。
本構成によれば、シートの折り曲げによって導体路が曲げられる部分は、シートの折り曲げ線に導体路が交差する部分だけになる。このため、導体路が曲げられる部分が少なくなるので、導体路の信頼性の向上を期待することができる。また、導体路の大部分が面部に位置するので、シートの折り曲げ部に沿って導体路を形成する場合に比較して、シートの折り曲げの影響を受けずに任意の幅の導体路を形成し易くなる。このため、シートの折り曲げ線に沿って導体路を形成する場合に比較して、導体路の幅を広くすることが可能になり、コイルの直流抵抗値を容易に低減化することができる。
また、本発明は、シートの周囲を囲む基材を備えたことを特徴とする。
本構成によれば、シートの曲げ形状がシートの周囲を囲む基材によって保たれ、強度が確保されるので、LCフィルタの製品取り扱い性が向上する。また、基材を高絶縁抵抗の材料で形成することで、コンデンサ電極間の耐圧を容易に確保することが可能となり、高い信頼性を持つLCフィルタを得ることができる。
また、本発明は、シートの曲がりに下方から嵌合する凹凸形状を一面に有する下側の基材と、シートの曲がりに上方から嵌合する凹凸形状を一面に有する上側の基材とを備えたことを特徴とする。
本構成によれば、シートの曲がりに下方および上方から嵌合する凹凸形状をそれぞれ一面に有する下側の基材および上側の基材によってシートが挟まれることで、シートの曲げ形状が保たれ、強度が確保されるので、LCフィルタの製品取り扱い性が向上する。また、本構成によっても、基材を高絶縁抵抗の材料で形成することで、コンデンサ電極間の耐圧を容易に確保することが可能となり、高い信頼性を持つLCフィルタを得ることができる。
また、本発明は、基材が、非磁性体または磁性体からなることを特徴とする。
本構成によれば、基材が非磁性体からなる場合には基材の透磁率が小さくなり、インダクタンス値を低く抑えることができるので、高周波用途のLCフィルタが提供される。また、基材が磁性体からなる場合には基材の透磁率が大きくなるので、用いる磁性体の種類を選択することで、所望の大きさのインダクタンス値を有するLCフィルタが得られる。
また、本発明は、
導体路の両端部および複数のコンデンサ電極の両端部に電極パットを備え、導体路の一方の端部に備えられた電極パットと複数のコンデンサ電極の一方の端部に備えられた電極パットとが共通接続され、導体路の他方の端部に備えられた電極パットと複数のコンデンサ電極の他方の端部に備えられた電極パットとがシートの一側面に設けられ、
シートが、共通接続された電極パットおよびシートの一側面に設けられた各電極パットを基材の表面に露出させて曲げられる
ことを特徴とする。
本構成によれば、共通接続された電極パットおよびシートの一側面に設けられた各電極パットが基材の表面に露出して、外部電極を構成する。このため、電極パットとピン等との接続部を全く有すること無く、LCフィルタに外部電極を備えることができる。また、従来のLCフィルタのように、積層体から外部に突出した幅広の端子を順次折り畳む工数を必要とすることなく、基材の表面に各電極パットを露出させてシートを曲げるだけで、LCフィルタに外部電極を備えることができる。よって、外部電極を備えたLCフィルタを接続信頼性高くかつ安価に提供することができる。
また、複数のコンデンサ電極は、その両端部に備えられた電極パットの間で、直列接続された複数のコンデンサを構成する。このため、直列接続するコンデンサの個数を選択することでも、LCフィルタの容量を調整することができ、直列接続するコンデンサの個数を増やすと容量の値は小さく調整される。
また、本発明は、
導体路の両端部に電極パットを備え、複数のコンデンサ電極を1つおきに共通接続する電極パットおよび残りのコンデンサ電極を共通接続する電極パットを複数のコンデンサ電極の両端部に備え、導体路の一方の端部に備えられた電極パットと複数のコンデンサ電極の一方の端部に備えられた電極パットとが共通接続され、導体路の他方の端部に備えられた電極パットと複数のコンデンサ電極の他方の端部に備えられた電極パットとがシートの一側面に設けられ、
シートが、共通接続された電極パットおよびシートの一側面に設けられた各電極パットを基材の表面に露出させて曲げられる
ことを特徴とする。
本構成によっても、共通接続された電極パットおよびシートの一側面に設けられた各電極パットが基材の表面に露出して、外部電極を構成する。このため、電極パットとピン等との接続部を全く有すること無く、また、幅広の端子を順次折り畳む工数を必要とすることなく、LCフィルタに外部電極を備えることができ、外部電極を備えたLCフィルタを接続信頼性高くかつ安価に提供することができる。
また、複数のコンデンサ電極は、その両端部に備えられた電極パットの間で、並列接続された複数のコンデンサを構成する。このため、並列接続するコンデンサの個数を選択することでも、LCフィルタの容量を調整することができ、並列接続するコンデンサの個数を増やすと容量の値は大きく調整される。
また、本発明は、シートが、共通接続された電極パットおよびシートの一側面に設けられた各電極パットを基材の一側面に露出させて曲げられることを特徴とする。
本構成によれば、基材の一側面に各電極パットが露出するので、回路基板の基板面に基材の一側面を向けて基材を回路基板に実装することで、基材の一側面に露出した各電極パットを回路基板の基板面に形成された各ランドに接続することができる。このため、製品コスト上昇の要因となる、複数のシートを積層する製造工程を必要とすることなく、薄型扁平のSMDタイプのLCフィルタを簡単にかつ安価に提供することができる。
また、本発明は、下側の基材と上側の基材との間にシートを挟んでプレスすることでシートを曲げるLCフィルタの製造方法を構成した。
本構成によれば、シートを曲げて導体路を巻き構造にすると共に複数のコンデンサ電極を相互に対向させる工程と、下側の基材と上側の基材とを嵌合させてシートの曲げ形状を保つ強度に加工する工程とが、下側の基材と上側の基材との間にシートを挟んでプレスする1つの工程で行われる。このため、製造工程が少なくなり、LCフィルタの製品コストをさらに低減することができる。
また、本発明は、シートの両面に接着剤を付けてプレスを行うことを特徴とする。
本構成によれば、シートを曲げて導体路を巻き構造にすると共に複数のコンデンサ電極を相互に対向させる工程と、下側の基材と上側の基材とを嵌合させてシートの曲げ形状を保つ強度に加工する工程と、下側の基材と上側の基材との間にシートを接合する工程とが、下側の基材と上側の基材との間にシートを挟んでプレスする1つの工程で行われる。このため、製造工程がさらに少なくなり、LCフィルタの製品コストをさらに低減することができる。
本発明によれば、上記のように、容量値の調整が容易で、しかも、大きな容量値およびインダクタンス値を持つLCフィルタが簡単に得られる。
次に、本発明のLCフィルタおよびその製造方法を実施するための形態について、説明する。
図1は、第1の実施形態によるLCフィルタ1の外観斜視図である。
LCフィルタ1は、非磁性体または磁性体からなる下側基材2および上側基材3と、電気絶縁性を有するシート4とを備えて構成されており、幅W,長さL,厚みtの直方体状をしている。下側基材2は、その外観が図2(b)に示されるラック歯車状をしており、底面2aに対向する一面2bに、シート4の矩形状の曲がりに下方から嵌合する凹凸形状を有する。上側基材3は、その外観が図2(a)に示され、上面3aに対向する一面3bに、シート4の矩形状の曲がりに上方から嵌合する凹凸形状を有する。下側基材2および上側基材3に形成される凹凸形状は、LCフィルタ1が備えるコイルの巻き数およびLCフィルタ1が備えるコンデンサの個数に応じて、形成される。
上側基材3は、下側基材2の両側部2c,2cを覆って山面3c,3cが下側基材2の底面2aと並ぶ凸部3d,3dを両端部に備えている。これら凸部3d,3dは、基材中央部に形成された凸部よりも大きなものとなっている。下側基材2の長さは、これら凸部3d,3dの分、上側基材3の長さよりも短くなっている。シート4は、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂や、セラミック等の材質からなり、これら下側基材2および上側基材3の各凹凸形状部間に挟まれて、設けられている。
図3は、シート4が折り曲げられる前の平面図、同図(b)はその背面図である。シート4の一方の面である表面には単一の導体路5、シート4の他方の面である裏面には複数のコンデンサ電極6が形成されている。また、導体路5の両端部には電極パット5a,5b、複数のコンデンサ電極6の両端部には電極パット6a,6bが形成されている。
導体路5の一方の端部に備えられた電極パット5aと、複数のコンデンサ電極6の一方の端部に備えられた電極パット6aとは、シート4の表面および裏面間を貫通するビア等により、相互に電気的に共通接続されている。また、シート4の表面において導体路5の他方の端部に設けられた電極パット5bが、同様なビア等により、シート4の裏面に形成された電極パット5cに電気的に接続されることで、電極パット5cは導体路5の他方の端部に備えられている。従って、導体路5の他方の端部に備えられた電極パット5cと複数のコンデンサ電極6の他方の端部に備えられた電極パット6bとは、シート4の一側面に設けられている。これら導体路5、複数のコンデンサ電極6、および電極パット5a,5b,5c、6a,6bは、銅、銀などの一般的な内部電極材料を用いて、印刷法やリソグラフィー技術などの一般的な電極形成法によって形成されている。
導体路5は、LCフィルタ1の幅W方向において、所定の台形波状パターンで振幅し、LCフィルタ1の長さL方向において、この台形波状パターンが周期的に繰り返されてミアンダ形状に形成されている。このシート4が、図1に示すように、厚みt方向において、台形波状パターンが繰り返される1周期を1周期とする周期で折り曲げられることで、導体路5は巻き線形状を呈する。すなわち、導体路5は、シート4の一方の面に蛇行して設けられて、シート4が繰り返して折り曲げられることで、巻き構造を呈する。また、シート4がこのように繰り返して折り曲げられることで、複数のコンデンサ電極6は相互に対向する。
シート4の上記の折り曲げは、図3に一点鎖線で示す線を谷折り線v、破線で示す線を山折り線mとして行われ、長さL方向において谷面Vと山面Mとが側面Sを介して交互に現れる、連続する4つの面を1周期とする周期で行われる。この折り曲げパターンは、図4の模式図に示すように、谷折り−山折り−山折り−谷折りを1周期としている。なお、同図において図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。導体路5は、連続する4つの面の内の、始めの谷折り線vで区切られる第1面Iの谷面Vにおいて、次に連続する第2面IIの側面Sに近付くに連れて振幅高さが高くなる幅W方向に振幅し、対角線方向に横切る。そして、次の第2面IIの側面Sを振幅高さを保って、長さL方向に平行に横切る。その後、第2面IIに連続する次の第3面IIIの山面Mにおいて、次に連続する第4面IVの側面Sに近付くに連れて振幅高さが低くなる幅W方向に振幅し、対角線方向に横切る。そして、次の第4面IVの側面Sを振幅高さを保って、長さL方向に平行に横切る。
従って、導体路5は、長さL方向に進行するのに連れ、LCフィルタ1の厚みt方向において、曲げられたシート4の谷面Vへの下降と山面Mへの上昇を側面Sを介して交互に繰り返し、幅W方向において、振幅高さを第1面Iで高くし、第2面IIで保ち、第3面IIIで低くし、第4面IVで保って振幅し、巻き構造を呈する。
シート4は、図6に示すように、上側基材3の両端部に備えられた凸部3d,3dの山面3c,3cに、電極パット5aに共通接続された電極パット6aおよびシート4の一側面に設けられた各電極パット5c,6bを露出させて曲げられる。図6は、LCフィルタ1を底面側から見た外観斜視図で、同図において図1から図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。このため、電極パット5a,5bに隣接する側面Sにおける導体路5は、図3(a)に示すように、他の側面Sにおけるミアンダ周期の長さよりも長く形成されており、LCフィルタ1の厚みtとなる凸部3d,3dの高さ寸法とほぼ同じになっている。また、電極パット6a,6bに隣接する側面Sにおけるコンデンサ電極6も、他の側面Sにおけるコンデンサ電極6の幅よりも長く形成されており、凸部3d,3dの高さ寸法とほぼ同じになっている。図5は、このようにして折り曲げられた状態のシート4の斜視図である。なお、同図において図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
本実施形態では、下側基材2と上側基材3との間にシート4を挟んでプレスすることで、シート4が図5に示すように折り曲げられ、LCフィルタ1が製造される。この際、シート4の両面に接着剤が付けられて、プレス加工が行われる。用いる接着剤の種類は一般的な接着剤でよく、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤などが用いられる。
このような本実施形態のLCフィルタ1によれば、導体路5は、曲げられたシート4の谷面Vへの下降と山面Mへの上昇を側面Sを介して交互に繰り返しながら蛇行することで、巻き構造を呈する。コンデンサ電極6は、各側面Sで対向することで、コンデンサの対向電極を構成する。従って、1枚のシート4が、連続する4つの面を1周期とする周期で単に折り曲げられることで、シート4の一方の面に形成された導体路5が巻かれてコイルが構成され、他方の面に形成されたコンデンサ電極6が対向してコンデンサが構成されて、LCフィルタ1が形成される。
このLCフィルタ1では、相互に対向するコンデンサ電極6間の距離はシート4の曲げ形状、コンデンサ電極6の面積はそのパターン形状によって容易に調整できる。従って、シート4の曲げの間隔分の距離を確保することでコンデンサ電極6間の耐圧を容易に確保することができると共に、コンデンサの容量値も容易に調整することができる。また、コイルを構成する導体路5間の距離、つまり巻き線間の距離も、シート4の曲げの間隔分の距離を確保することができるので、大きなインダクタンス値を得られる。このため、特許文献1に開示された、シート4の一方および他方の面に一対のコイルを形成して、一対のコイル間に生じるキャパシタをコンデンサとする従来のLCフィルタとは異なり、容量値の調整が容易でしかも大きな容量値およびインダクタンス値を持つLCフィルタが簡単に得られる。
また、本実施形態のLCフィルタ1によれば、図3に示すように、コイルを構成する導体路5とコンデンサを構成するコンデンサ電極6とがシート4の重ならない領域に形成されるため、シート4を曲げることで形成されるコイルの内径部分にコンデンサ電極6が存在し、コンデンサ電極6がコイルの内径部分を通る磁束を遮断することは無い。このため、1枚のシート4にコイルおよびコンデンサを形成しても、コイルおよびコンデンサのそれぞれの機能が阻害されることなく、1枚のシート4にコイルおよびコンデンサを併存させることができる。
また、本実施形態のLCフィルタ1によれば、シート4の曲がりに下方および上方から嵌合する凹凸形状をそれぞれ一面に有する下側基材2および上側基材3によってシート4が挟まれることで、シート4の図5に示す曲げ形状が保たれ、強度が確保されるので、LCフィルタ1の製品取り扱い性が向上する。また、下側基材2および上側基材3を高絶縁抵抗の材料で形成することで、コンデンサ電極6間の耐圧を容易に確保することが可能となり、高い信頼性のコンデンサCと大インダクタンス値のコイルLを併せ持つLCフィルタ1を得ることができる。
また、本実施形態のLCフィルタ1によれば、電極パット5aに共通接続された電極パット6aおよびシート4の一側面に設けられた各電極パット5c,6bが、図6に示すように、上側基材3の両端部に備えられた凸部3d,3dの山面3c,3cに露出して、外部電極を構成する。このため、特許文献1に開示された従来のLCフィルタのように、電極パット5c、6a,6bとピン等との接続部を全く有すること無く、LCフィルタ1に外部電極を備えることができる。また、特許文献1に開示された従来のLCフィルタのように、積層体から外部に突出した幅広の端子を順次折り畳む工数を必要とすることなく、上側基材3の山面3c,3cに各電極パット5c、6a,6bを露出させてシート4を折り曲げるだけで、LCフィルタ1に外部電極を備えることができる。よって、外部電極を備えたLCフィルタ1を接続信頼性高くかつ安価に提供することができる。
また、複数のコンデンサ電極6は、その両端部に備えられた電極パット6a,6bの間で、図7に示すように、直列接続された複数のコンデンサCを構成する。図7は、LCフィルタ1の等価回路図で、図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。LCフィルタ1は、このコンデンサCと導体路5が構成するコイルLとで、ノイズ除去フィルタを構成する。このため、直列接続するコンデンサCの個数を選択することでも、LCフィルタ1の容量を調整することができ、直列接続するコンデンサCの個数を増やすと容量の値は小さく調整される。
また、本実施形態のLCフィルタ1によれば、図6に示すように、下側基材2および上側基材3によって構成される基材の一側面に各電極パット5c、6a,6bが露出する。電極パット5c、6aはホット電極となり、これら電極パット5c、6a間に電圧が印加されることで、コイルLの両端部間に電圧が印加される。また、電極パット6bはグランド電極となり、この電極パット6bが接地されることで、直列接続されたコンデンサCはその一端部が接地電位に接続される。このようなLCフィルタ1は、各電極パット5c、6a,6bが露出した基材の一側面を図示しない回路基板の基板面に向けて、基材を回路基板に実装することで、基材の一側面に露出した各電極パット5c、6a,6bを回路基板の基板面に形成された各ランドに接続することができる。このため、特許文献1に開示された従来のLCフィルタのように、積層体を形成するために、製品コスト上昇の要因となる、複数のシートを積層する製造工程を必要とすることなく、薄型扁平のSMDタイプのLCフィルタ1を簡単にかつ安価に提供することができる。
また、本実施形態のLCフィルタ1は、導体路5がシート4の折り曲げ線v,mに交差して形成され、シート4の折り曲げによって導体路5が曲げられる部分は、シー4の折り曲げ線v,mに導体路5が交差する部分だけになる。このため、導体路5が曲げられる部分が少なくなるので、導体路5の信頼性の向上を期待することができる。また、導体路5の大部分が谷面V,山面M,および側面Sの面部に位置するので、シート4の折り曲げ線v,mに沿って導体路5を形成する場合に比較して、シート4の折り曲げの影響を受けずに任意の幅の導体路5を形成し易くなる。このため、シート4の折り曲げ線v,mに沿って導体路5を形成する場合に比較して、導体路5の幅を広くすることが可能になり、コイルLの直流抵抗値を容易に低減化することができる。
また、本実施形態のLCフィルタ1は、下側基材2および上側基材3が非磁性体または磁性体からなり、アルミナ等の非磁性体からなる場合には基材の透磁率が小さくなる。このため、インダクタンス値を低く抑えることができるので、高周波用途のLCフィルタ1が提供される。また、下側基材2および上側基材3がフェライト等の磁性体からなる場合には基材の透磁率が大きくなる。このため、用いる磁性体の種類を選択することで、所望の大きさのインダクタンス値を有するLCフィルタ1が得られる。
また、本実施形態のLCフィルタ1の製造方法によれば、シート4を曲げて導体路5を巻き構造にすると共に複数のコンデンサ電極6を相互に対向させる工程と、下側基材2と上側基材3とを嵌合させてシート4の曲げ形状を保つ強度に加工する工程とが、下側基材2と上側基材3との間にシート4を挟んでプレスする1つの工程で行われる。このため、製造工程が少なくなり、LCフィルタ1の製品コストをさらに低減することができる。
また、本実施形態のLCフィルタ1の製造方法によれば、シート4の両面に接着剤が付けられて上記のプレス加工が行われるので、シート4を曲げて導体路5を巻き構造にすると共に複数のコンデンサ電極6を相互に対向させる工程と、下側基材2と上側基材3とを嵌合させてシート4の曲げ形状を保つ強度に加工する工程と、下側基材2と上側基材3との間にシート4を接合する工程とが、下側基材2と上側基材3との間にシート4を挟んでプレスする1つの工程で行われる。このため、製造工程がさらに少なくなり、LCフィルタ1の製品コストをさらに低減することができる。
なお、上記の実施形態では、シート4を谷折り線vおよび山折り線mに沿って折り曲げる場合について、説明した。しかし、シート4は必ずしも折り線に沿って折り曲げる必要は無く、波状などに湾曲させることで、シート4上に形成された導体路5を巻き構造にすると共に複数のコンデンサ電極6を相互に対向させるようにしてもよい。この場合、下側基材2および上側基材3に設けられる凹凸形状も、図2に示すような階段状では無く、波状などの湾曲状となる。
また、上記の実施形態では、シート4の曲がりに下方および上方から嵌合する下側基材2および上側基材3により、シート4の強度を保つ構造を構成した場合について、説明した。しかし、電極パット5c、6a,6bを露出させてシート4の周囲に樹脂を充填し、シート4の周囲を樹脂で直方体状に囲む樹脂基材などを備えることで、シート4の強度を保つ構造を構成するようにしてもよい。本構成によれば、シート4の曲げ形状がシート4の周囲を囲む樹脂などの基材によって保たれ、強度が確保されるので、本構成によっても、LCフィルタ1の製品取り扱い性が向上する。
また、上側基材3を備えず、シート4の曲がりに下方から嵌合する凹凸形状を一面2bに有する下側基材2だけを備えることで、シート4の強度を保つ構造を構成するようにしてもよい。
この際、上記の実施形態と異なり、コンデンサ電極6が形成されたシート4の裏面が露出するようにシート4を裏返し、シート4の電極パット5a,5bに隣接する折り線を山折り線mとする。このようにして折ることで、シート4は、図8(a)の斜視図に示すように、コンデンサ電極6を露出させて、両端部が内側に折り返された形状に折られる。なお、同図(a)において図5と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。このため、下側基材2だけを備えることで得られるLCフィルタ1Aは、同図(b)の斜視図に外観が示されるようになる。なお、同図(b)において図2と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。このLCフィルタ1Aにおいては、シート4は、下側基材2の両側部2c,2cを覆って下側基材2の底面2a側に両端部が曲げ返され、下側基材2の底面2aに電極パット5c、6a,6bを露出させて、曲げられている。
本構成のLCフィルタ1Aによれば、シート4の曲げ形状が下側基材2だけによって保たれ、強度が確保されるので、本構成によっても、LCフィルタ1の製品取り扱い性が向上する。また、下側基材2の両側部でシート4が曲げ返されることで、LCフィルタ1Aの長さL方向に外部電極形成のための寸法を図1に示すLCフィルタ1のように取る必要がなくなり、LCフィルタ1Aの長さL方向を全て導体路5およびコンデンサ電極6の形成に使用することができる。このため、同外形寸法および同構成材料のLCフィルタにおける、インダクタンス値および容量値の取得効率を上げることができる。
また、図8(c)に示す上側基材3Aを用い、図8(b)に示す上記のLCフィルタ1Aに載せて、シート4を下側基材2と上側基材3Aとの間に挟んで、LCフィルタ1Bを形成することもできる。上記の実施形態では、上側基材3の両端部に、基材中央部に形成された凸部よりも大きな凸部3d,3dを備え、凸部3d,3dの山面3c,3cに電極パット5c,6a,6bを露出させて外部電極を構成した。しかし、図8(c)の外観斜視図に示すように、このような凸部3d,3dを備えずに構成した上側基材3Aを用いることによっても、シート4の強度を保つ構造のLCフィルタ1Bが得られ、図8(b)に示すLCフィルタ1Aが奏する作用効果と同様な作用効果が奏される。
図9は、本発明の第2の実施形態によるLCフィルタ11の外観斜視図である。
LCフィルタ11は、第1の実施形態によるLCフィルタ1と同様に、非磁性体または磁性体からなる下側基材12および上側基材13と、電気絶縁性を有するシート14とを備えて構成されており、幅W,長さL,厚みtの直方体状をしている。下側基材12は、その外観が図10(b)に示され、底面12aに対向する一面12bに、シート14の鋸歯状の折れ曲がりに下方から嵌合する凹凸形状を有する。上側基材13は、その外観が図10(a)に示され、上面13aに対向する一面13bに、シート14の鋸歯状の折れ曲がりに上方から嵌合する凹凸形状を有する。下側基材12および上側基材13に形成される凹凸形状は、LCフィルタ11が備えるコイルの巻き数およびLCフィルタ11が備えるコンデンサの個数に応じて、形成される。
上側基材13は、下側基材12の両側部12c,12cを覆って山面13c,13cが下側基材12の底面12aと並ぶ凸部13d,13dを両端部に備えている。LCフィルタ11の厚みtは、凸部13d,13dの高さ寸法になっている。下側基材12の長さは、これら凸部13d,13dの分、上側基材13の長さよりも短くなっている。シート14も、第1の実施形態によるLCフィルタ1と同様に、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂や、セラミック等の材質からなり、これら下側基材12および上側基材13の各凹凸形状部間に挟まれて、設けられている。
図11(a)は、第2の実施形態によるLCフィルタ11に用いられるシート14が折り曲げられる前の平面図、同図(b)はその背面図である。シート14の一方の面である表面には単一の導体路15、シート14の他方の面である裏面にはコンデンサ電極16が形成されている。また、導体路15の両端部には電極パット15a,15b、複数のコンデンサ電極16の両端部には電極パット16a,16bが形成されている。
導体路15の一方の端部に備えられた電極パット15aと、複数のコンデンサ電極16の一方の端部に備えられた電極パット16aとは、シート14の表面および裏面間を貫通するビア等により、相互に電気的に共通接続されている。また、シート14の表面において導体路15の他方の端部に設けられた電極パット15bが、同様なビア等により、シート14の裏面に形成された電極パット15cに電気的に接続されることで、電極パット15cは導体路15の他方の端部に備えられている。従って、導体路15の他方の端部に備えられた電極パット15cと複数のコンデンサ電極16の他方の端部に備えられた電極パット16bとは、シート14の一側面に設けられている。これら導体路15、複数のコンデンサ電極16、および電極パット15a,15b,15c、16a,16bも、銅、銀などの一般的な内部電極材料を用いて、印刷法やリソグラフィー技術などの一般的な電極形成法によって形成されている。
導体路15は、LCフィルタ11の幅W方向において、所定の正弦波状パターンで振幅し、LCフィルタ11の長さL方向において、この正弦波状パターンが繰り返されて、ミアンダ形状に形成されている。このシート14が、厚みt方向において、正弦波状パターンが繰り返される1周期を1周期とする周期で、図12(a)の斜視図に示すように折り曲げられることで、導体路15は巻き線形状を呈し、コンデンサ電極16は相互に対向する。
上記の第1の実施形態では、シート4は、側面S,山面M,側面Sおよび谷面Vの連続する4つの面を1周期とする周期で折り曲げられたが、この第2の実施形態では、シート14は、上り斜面Uと下り斜面Dとが交互に現れる、連続する2つの面を1周期とする周期で折り曲げられる。つまり、シート14の上記の折り曲げは、図11に一点鎖線で示す折り曲げ線を谷折り線v、破線で示す折り曲げ線を山折り線mとして行われる。導体路15は、シート14の折り曲げ線に交差して上り斜面Uおよび下り斜面Dに形成されており、正弦波振幅パターンの1周期の半周期部分が、上り斜面Uおよび下り斜面Dのそれぞれに形成されている。つまり、導体路15は、シート14の表面において、連続する2つの面に形成される部分を1周期として蛇行している。コンデンサ電極16は、シート14の裏面において、連続する面の1つおきの面に設けられている。
また、シート14は、図12(b)に底面側から見たLCフィルタ11の外観斜視図を示すように、上側基材13の両端部に備えられた凸部13d,13dの山面13c,13cに、電極パット15aに共通接続された電極パット16aおよびシート14の一側面に設けられた各電極パット15c,16bを露出させて折り曲げられる。このため、電極パット15a,15bに隣接する導体路15は、図11(a)に示すように直線状に形成されている。また、電極パット16aおよび電極パット16bは、隣接する側面Sに延びて形成されている。なお、側面Sにおける導体路15は、必ずしも直線状に形成する必要は無く、上り斜面Uおよび下り斜面Dと同様に正弦波状に振幅させてもよい。
第2の実施形態でも、下側基材12と上側基材13との間にシート14を挟んでプレスすることで、シート14が図12(a)に示すように折り曲げられて、LCフィルタ11が製造される。この際、シート14の両面に接着剤が付けられて、プレス加工が行われる。
このような第2の実施形態によるLCフィルタ11によれば、導体路15は、折り曲げられたシート14の上り斜面Uへの上昇と下り斜面Dの下降とを交互に繰り返しながら蛇行することで、巻き構造を呈する。コンデンサ電極16は、下り斜面Dを介して対向することで、コンデンサの対向電極を構成する。従って、1枚のシート14が、連続する2つの面を1周期とする周期で単に折り曲げられことで、シート14の一方の面に形成された導体路15が巻かれてコイルLが構成され、他方の面に形成されたコンデンサ電極16が対向してコンデンサCが構成されて、LCフィルタ11が形成される。このため、第2の実施形態によるLCフィルタ11によっても、図12(b)に示す、下側基材12および上側基材13からなる基材の一側面に電極パット15c,16a,16bを備えたSMDタイプの薄型扁平のLCフィルタ11が得られ、第1の実施形態によるLCフィルタ1と同様な作用効果が奏される。
また、第2の実施形態によるLCフィルタ11においては、シート14が、連続する2つの面を1周期とする周期で折り曲げられて導体路15が1周期の蛇行をするので、連続する4つの面を1周期とする周期で折り曲げられて導体路5が1周期の蛇行をする第1の実施形態の構成に比較して、少ない回数で1巻き当たりの折り曲げを行える。このため、同外形寸法のLCフィルタにおいて、より多くの巻き数を稼ぐことができるので、大きなインダクタンスを有するLCフィルタ11を提供することができる。また、同じ巻き数のコイルを持つLCフィルタにおいて、シート14の折り曲げ回数を少なくすることができるので、シート14の信頼性の向上を期待することができる。
また、導体路15の幅d(図11(a)参照)の大きさや、シート14における導体路15の形成位置を適宜選択することで、様々な特性を備えるLCフィルタ11を簡易に製作することができる。
例えば、導体路15の幅dを広くすることで、斜面上に形成された導体路15がコイルLの径方向に占める高さは大きくなる。このため、巻き構造コイルLの内径が小さくなってコイル内径部の断面積が小さくなり、コイル内径部を磁束が通り難くなるので、コイルLのQ値は低くなる。しかし、コイルLの直流抵抗値は低くなるので、大電流を流せるコイルLを持つLCフィルタ11を構成することができる。他方、導体路15の幅dを狭くすることで、斜面上に形成された導体路15がコイルLの径方向に占める高さは小さくなる。このため、巻き構造コイルLの内径および内径部断面積の大きさを確保することができ、コイル内径部を磁束が通り易くなるので、高いQ値を有するコイルLを持つLCフィルタ11を構成することができる。また、導体路15の蛇行する振幅を大きくすることで、巻き構造コイルLの内径部の断面積を大きくすることができる。このため、コイル内径部を磁束がさらに通り易くなるので、より高いQ値を有するコイルLを持つLCフィルタ11を構成することができる。
なお、上記の第2の実施形態でも、シート14の曲がりに下方および上方から嵌合する下側基材12および上側基材13により、シート14の強度を保つ構造を構成した場合について、説明した。しかし、電極パット5c,16a,16bを露出させてシート14の周囲に樹脂を充填し、シート14の周囲を樹脂で直方体状に囲む樹脂基材などを備えることで、シート14の強度を保つ構造を構成するようにしてもよい。
また、上側基材13を備えず、シート14の曲がりに下方から嵌合する凹凸形状を一面12bに有する下側基材12だけを備えることで、シート14の強度を保つ構造を構成するようにしてもよい。
この際、上記の第2の実施形態と異なり、コンデンサ電極16が形成されたシート14の裏面が露出するようにシート14を裏返し、シート14の電極パット15a,15bに隣接する折り線を山折り線mとする。このようにして折ることで、シート14は、図13(a)の斜視図に示すように、コンデンサ電極16を露出させて、両端部が内側に折り返された形状に折られる。なお、同図(a)において図12と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。このため、下側基材12だけを備えることで得られるLCフィルタ11Aは、同図(b)の斜視図に外観が示されるようになる。このLCフィルタ11Aにおいては、シート14は、下側基材12の両側部12c,12cを覆って下側基材12の底面12a側に両端部が曲げ返され、下側基材12の底面12aに電極パット15c、16a,16bを露出させて、曲げられている。本構成のLCフィルタ11Aによっても、シート14の曲げ形状が下側基材12だけによって保たれ、強度が確保される。
また、図13(c)に示す上側基材13Aを用い、図13(b)に示す上記のLCフィルタ11Aに載せて、シート14を下側基材12と上側基材13Aとの間に挟んで、LCフィルタ11Bを形成することもできる。上記の第2の実施形態では、上側基材13の両端部に、基材中央部に形成された凸部よりも大きな凸部13d,13dを備え、凸部13d,13dの山面13c,13cに電極パット15c,16a,16bを露出させて外部電極を構成した。しかし、図13(c)の外観斜視図に示すように、このような凸部13d,13dを備えずに構成した上側基材13Aを用いることによっても、シート14の強度を保つ構造のLCフィルタ11Bが得られ、図13(b)に示すLCフィルタ11Aが奏する作用効果と同様な作用効果が奏される。
また、上記の第1および第2の各実施形態では、図3および図11に示すように、複数のコンデンサ電極6,16の両端部に電極パット6a,6b、16a,16bを備え、複数のコンデンサ電極6,16が、図7に示す等価回路図のように、その両端部に備えられた電極パット6a,6b、16a,16bの間で、直列接続された複数のコンデンサCを構成した場合について、説明した。しかし、図14および図15に示すように、複数のコンデンサ電極6A,16Aの片端を1つおきに共通接続する電極パット6c,16c、および残りのコンデンサ電極6B,16Bの片端を共通接続する電極パット6d,16dを複数のコンデンサ電極6、16の両端部に備えるように構成してもよい。なお、図14および図15において図3および図11と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
この場合にも、導体路5,15の一方の端部に備えられた電極パット5a,15aと複数のコンデンサ電極6,16の一方の端部に備えられた電極パット6c,16cとを共通接続し、導体路5,15の他方の端部に備えられた電極パット5c,15cと複数のコンデンサ電極6,16の他方の端部に備えられた電極パット6d,16dとをシート4,14の一側面に設ける。シート4,14は、共通接続された電極パット6c,16cおよびシート4,14の一側面に設けられた各電極パット5c,6d、15c,16dを、基材の一側面に露出させて曲げる。
本構成によっても、共通接続された電極パット6c,16cおよびシート4,14の一側面に設けられた各電極パット5c,6d、15c,16dが基材の表面に露出して、外部電極を構成する。このため、電極パット5c,6c,6d、15c,16c,16dとピン等との接続部を全く有すること無く、また、幅広の端子を順次折り畳む工数を必要とすることなく、LCフィルタに外部電極を備えることができ、外部電極を備えたLCフィルタを接続信頼性高くかつ安価に提供することができる。
また、複数のコンデンサ電極6,16は、図16に示すように、その両端部に備えられた電極パット6c,6d、16c,16dの間で、並列接続された複数のコンデンサCを構成する。なお、図16において図14および図15と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。このため、並列接続するコンデンサCの個数を選択することでも、LCフィルタの容量を調整することができ、並列接続するコンデンサCの個数を増やすと容量の値は大きく調整される。
また、上記の第1および第2の各実施形態並びに各変形例では、図3および図11に示すように、導体路5,15および複数のコンデンサ電極6,16を、それぞれシート4,14の一方の面および他方の面の両面に形成した場合について、説明した。しかし、導体路5,15および複数のコンデンサ電極6,16の双方を、シート4,14の一方の面にのみ形成するようにしてもよい。このような構成によっても、上記の第1および第2の各実施形態並びに各変形例と同様な作用効果が奏される。