(第1実施の形態)
次に、本発明の第1実施の形態について、図1〜図5に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るショーツの概略を説明する正面図であり、図2は、ショーツの概略を説明する背面図である。なお、本実施の形態において、ショーツが通常の下着用として用いられるショーツである場合を例として説明する。
図示のように、ショーツ10は、伸縮性を有する通気性のよい布地で形成された前身頃11及び後身頃12を主要構成として備える。この前身頃11と後身頃12とによって、着用者の大腿部の付け根部分を挿通してこの付け根部分に密着する、下方に開口した一対の大腿部回り開口部13が形成される。
このショーツ10は、本実施の形態では、主に、外鼠径ヘルニアの罹患者に着用されるものであり、前身頃11及び/又は後身頃12の内面に着脱可能に形成された患部押圧部材20が設けられる。
この患部押圧部材20は、本実施の形態では、前身頃11の内面における着用者の外鼠径ヘルニアの患部に対応する位置に装着されて位置決めされた状態で、患部に向かって突出して着用者の患部を押圧する。患部押圧部材20は、保持部材、本実施の形態では引張力付与部材30によって、患部に向かって突出する位置に位置決めされた状態が保持される。
更に、ショーツ10は、前身頃及び/又は後身頃の任意の位置に、着用者の任意の部位を支持するパッド状の補整部材40を備える。この補整部材40は、本実施の形態では、後身頃12における着用者の臀部に対応する位置に着脱可能に設けられており、着用者の臀部を後方から支持する。
次に、本実施の形態におけるショーツ10の各部の具体的構成について説明する。
前身頃11は、その下部に着用者の大腿部の外股側に密着する弧状の一対の前身頃側大腿部端縁13a、13aが形成されている。一方、後身頃12は、その下部に着用者の大腿部の内股側に密着する弧状の一対の後身頃側大腿部端縁13b、13bが形成されている。
この前身頃11と後身頃12とは、前身頃11の端縁11a、11aと後身頃12の端縁12a、12aとが互いに縫い合わせられており、前身頃11の内股側端縁11bと後身頃12の内股側端縁12bとの間に、着用者の大腿部の内股側に密着する弧状の一対の股布側大腿部端縁13c、13cが形成された股布14が縫い合わせられている。
これら前身頃11、後身頃12及び股布14が互いに縫い合わせられることによって、一対の前身頃側大腿部端縁13a、13a、一対の後身頃側大腿部端縁13b、13b及び一対の股布側大腿部端縁13c、13cが連続して、一対の大腿部回り開口部13がショーツ10の対称位置に形成される。
この一対の大腿部回り開口部13の周縁には、ゴム13Aが縫い付けられており、腿部回り開口部13が着用者の大腿部に密着して、ショーツ10が着用者の臀部側にズレ上がることが抑制される。
なお、この大腿部回り開口部13の周縁を、ゴム13Aに代えて、肌に刺激の少ない伸縮性の高い生地で構成してもよい。
一方、前身頃11と後身頃12とが互いに縫い合わせられることによって、前身頃11の上端部11cと後身頃12の上端部12cとが連続して、着用者の腰部に密着するウエスト部15が形成される。このウエスト部15の周縁には、ゴム15Aが縫い付けられている。
なお、このウエスト部15の周縁を、ゴム15Aに代えて、肌に刺激の少ない伸縮性の高い生地で構成してもよい。
更に、前身頃11側のウエスト部15の両端側には、面ファスナで構成されたアジャスタ15aが形成されており、着用者の腰部にウエスト部15が適合するように調整可能に構成されている。
これら前身頃11、後身頃12及び股布14を有するショーツ10を着用者が着用すると、着用者の臀部及び下腹部の全体が包含されるように構成されている。
前身頃11には、本実施の形態では、そのほぼ全面に亘って放射状の前身頃側重ね部材16が縫い付けられている。この前身頃側重ね部材16は、着用者の下腹部の中央領域に位置する基部16a、この基部16aの一方の側部から前身頃11の一方の側部に向かって略水平に延在する第1重ね部材16b、この第1重ね部材16bの下方で第1重ね部材16bと略平行に延在する第2重ね部材16c、及び基部16aの他方の側部から前身頃11の他方の側部に向かって略水平に延在する第3重ね部材16d、この第3重ね部材16dの下方で第3重ね部材16dと略平行に延在する第4重ね部材16eを有する。
さらに、前身頃側重ね部材16は、基部16aの一方の側部における基部16aの上部から前身頃11の上端部11c側に向かって延在する第5重ね部材16f、基部16aの他方の側部における基部16aの上部から前身頃11の上端部11c側に向かって延在する第6重ね部材16g、及び第5重ね部材16fと第6重ね部材16gとの間において基部16aの上部から前身頃11の上端部11c側に向かって延在する第7重ね部材16hを有する。
一方、前身頃側重ね部材16の基部16aの下部には、基部16aから連続するとともに大腿部の内股側の一対の後身頃側大腿部端縁13b、13bまで延在して一対の後身頃側大腿部端縁13b、13bと縫合される延在部16iが形成され、この延在部16iが後述する後身頃側重ね部材17に連続している。
この前身頃側重ね部材16は、通気性がよくかつ前身頃11より伸縮性の高い布地で形成され、前身頃側重ね部材16が縫い付けられた部分において前身頃11が二層に形成されている。
一方、後身頃12には、後身頃側重ね部材17が放射状に縫い付けられている。この後身頃側重ね部材17は、臀部の一方側から前身頃側重ね部材16の延在部16iと連続して後身頃12の上端部12c側に向かって傾斜して延在する第1重ね部材17a、第1重ね部材17aと交差するとともに臀部の他方側から前身頃側重ね部材16の延在部16iと連続して後身頃12の上端部12c側に向かって傾斜して延在する第2重ね部材17b、及び第1重ね部材17aと第2重ね部材17bの交差部分17cから後身頃12の上端部12cに向かって垂直に延在する第3重ね部材17cを有する。
さらに、後身頃側重ね部材17は、第1重ね部材17a、第2重ね部材17b及び第3重ね部材17cと交差するとともに後身頃12の一方の側部に向かって略水平に延在する第4重ね部材17d、後身頃12の他方の側部に向かって略水平に延在する第5重ね部材17eを有する。
この後身頃側重ね部材17は、通気性がよくかつ後身頃12より伸縮性の高い布地で形成され、後身頃側重ね部材17が縫い付けられた部分において後身頃12が二層に形成されている。
このように、前身頃11より伸縮性の高い前身頃側重ね部材16と後身頃12より伸縮性の高い後身頃側重ね部材17とは、本実施の形態では連続して一体に形成され、前身頃11及び後身頃12にそれぞれ縫い付けられることによって前身頃11及び後身頃12に緊張力を付与する。
前身頃11における一対の大腿部回り開口部13の間には、スリット18が形成されている。例えば、ショーツ10の着用者が要介護者である場合に、ショーツ10を下ろさないで、このスリット18から排尿することができる。スリット18は、通常時は、伸縮性を有しかつ肌に刺激を与えることが少ない面ファスナ等の封止部材18aによって封止されている。
前身頃11及び後身頃12の内面には、本実施の形態では、面ファスナの雌部材19が、その全面に亘って設けられている。
図3は、患部押圧部材20の概略を説明する図であり、(a)は側面図、(b)は患部押圧部材20が被覆用袋に収納された状態の概略を説明する図である。
図3(a)で示すように、患部押圧部材20は、患部押圧部材20がショーツ10の取付位置X1またはX2に装着された状態でショーツ10の内面側に位置する平坦状の基部20a、基部20aから離間して患部に向かって突出する突出部20bを有し、突出部20bの頂面20dは、湾曲面を有する略半円球状に形成されている。
この患部押圧部材20は、本実施の形態では、発泡樹脂材料を発泡させた柔軟性を有するポリウレタンフォームで形成されており、面ファスナの雄部材で構成された取付部材20cが基部20aに設けられている。
一方、図3(b)で示すように、上記構成の患部押圧部材20を、被覆用袋21に収納してもよい。この場合、取付部材20cは被覆用袋21に設けられている。この被覆用袋21は、肌に過度な刺激を与えることのない木綿等の布地で形成されていることが好ましい。
図4は、補整部材40の概略を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図4(a)で示すように、補整部材40は、本実施の形態では、発泡樹脂材料を発泡させた柔軟性を有するポリウレタンフォームで形成され、左側臀部支持部41及び右側臀部支持部42を備える。左側臀部支持部41は、上端縁40aの一端から湾曲形成された下端縁40bに移行するに従って漸次膨出する側端縁40dを備え、右側臀部支持部42は、上端縁40aの他端から湾曲形成された下端縁40cに移行するに従って漸次膨出する側端縁40eを備えて形成される。
一方、図4(b)で示すように、補整部材40は、補整部材40がショーツ10に装着された状態でショーツ10の内面側に位置する裏面40A、及び着用者の臀部側に位置する表面40Bを有し、上端縁40aから下端縁40b、40cに移行するに従って漸次肉厚が増大して形成されている。裏面40Aには、本実施の形態では、面ファスナの雄部材が、その全面に亘って設けられている。
なお、補整部材40は、例えば、肌に過度な刺激を与えることのない木綿等の布地で形成された被覆用袋に収納されて用いられてもよい。
上記構成を有するショーツ10に、図1で示す前身頃11に設定された取付位置X1またはX2に患部押圧部材20が装着され、図2で示す後身頃12に設定された取付位置Yに補整部材40が装着される。本実施の形態では、取付位置X1またはX2は、外鼠径ヘルニアの患部である鼠径部に対応する位置に設定されており、取付位置Yは、着用者の臀部に対応する位置に設定されている。
次に、引張力付与部材30について、図1及び図2を用いて説明する。
図示のように、引張力付与部材30は、面ファスナの雌部材で構成された第1係着部材30a、及びこの第1係着部材30aと係着する面ファスナの雄部材で構成された第2係着部材30bによって形成される。
この引張力付与部材30は、本実施の形態では、前身頃11の外面において前身頃側重ね部材16と対応する位置、及び後身頃12の外面において後身頃側重ね部材17と対応する位置に複数設けられている。これらの位置は、第2係着部材30bが第1係着部材30aに係着した際に患部押圧部材20が着用者の患部に付勢される位置である。
すなわち、これら各引張力付与部材30は、第2係着部材30bを第1係着部材30aに係着させることで前身頃11に引張力を付与することが可能な位置に設けられている。これにより、ショーツ10を着用者が着用した状態で、患部押圧部材20を着用者の患部に付勢させることが可能となる。
さらに、一対の大腿部回り開口部13の外股側にはそれぞれ、補助引張力付与部材31が複数設けられている。この補助引張力付与部材31は、面ファスナの雌部材で構成された第1係着部材31a、及びこの第1係着部材31と係着する面ファスナの雄部材で構成された第2係着部材31bによって形成される。
上記構成を有するショーツ10を、外鼠径ヘルニアの罹患者が着用する場合は、まず、患部押圧部材20をショーツ10の取付位置X1またはX2に装着し、補整部材40をショーツ10の取付位置Yに装着する。この状態でショーツ10を着用し、患部押圧部材20が患部を押圧する位置に位置決めされるように微調整を行う。
次に、各引張力付与部材30の各第2係着部材30bを各第1係着部材30aにそれぞれ係着させて、前身頃側重ね部材16及び後身頃側重ね部材17を介して前身頃11に引張力を付与し、患部押圧部材20を着用者の患部に付勢させる。その後、ウエスト部15に設けられたアジャスタ15a、15aを任意に適宜調整して、着用者の腰部にウエスト部15が適合するように調整する。
このように、本実施の形態のショーツ10によると、患部押圧部材20が、外鼠径ヘルニアの患部に対応する位置に設定された取付位置X1またはX2に装着されたうえで、各第2係着部材30bが各第1係着部材30aにそれぞれ係着される。その結果、前身頃側重ね部材16及び後身頃側重ね部材17を介して前身頃11に引張力が付与され、患部押圧部材20に着用者の患部への付勢力が作用する。これにより、患部押圧部材20が着用者の患部を適切に押圧しつつ密着することから、着用者の体位が変形しても患部押圧部材20が患部からずれることがない。
しかも、各引張力付与部材30は、放射状に形成された前身頃側重ね部材16の基部16a、第1重ね部材16b〜第7重ね部材16h及び延在部16iにそれぞれ設けられ、かつ放射状に形成された後身頃側重ね部材17の第1重ね部材17a〜第5重ね部材17eにそれぞれ設けられていることから、ショーツ10の全体に亘って引張力が分散される。従って、着用者に過度な圧迫感を与えることが回避され、良好な着心地が確保されることから、通常のショーツとして日常生活において長時間に亘って着用することができる。
さらに、一対の大腿部回り開口部13の周縁が着用者の大腿部に密着することから、ショーツ10が着用者の大腿部に確実に支持される一方、前身頃側重ね部材16の延在部16iが後身頃側重ね部材17と連続して前身頃側重ね部材16と後身頃側重ね部材17とが一体に形成されていることから、身体の種々の動作によってもショーツ10が身体からずれることがない。従って、身体の動作によっても患部押圧部材20が患部からずれることが抑制される。
一方、取付位置Yには補整部材40が装着されて着用者の臀部が後方から支持されることから、患部押圧部材20による着用者の患部への密着状態が良好に保持される。従って、着用者の体位の変形による患部押圧部材20の患部からのずれを、効率的に抑制することができる。
さらに、各第2係着部材30bが各第1係着部材30aにそれぞれ係着されることで、補整部材40が着用者の臀部を後方から支持する力が補助され、着用者の臀部を上方に向かって持ち上げることができる。従って、着用者の臀部が引き締められるとともに、臀部のシルエットを良好に保持することができる。
従って、本実施の形態のショーツ10によると、通常のショーツとして日常生活において長時間に亘って着用しても、良好な着心地が確保された上で患部押圧部材20が着用者の患部を適切に押圧することから、外鼠径ヘルニアの罹患者が日常生活において行動する際に患部押圧部材20が患部からずれてしまわないように配慮して行動する必要がなくなる。その結果、着用者が日常生活において行動する際の行動上の規制がなくなり、日常生活の質的向上を図ることができる。
なお、本発明は上記第1実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記第1実施の形態では、患部押圧部材20が、湾曲面を有する略半円球状に形成された頂面20dを有する突出部20bを備えることを説明したが、患部の形状や大きさ等に合わせて、例えば、図5(a)〜(e)で示す形状に構成してもよい。
図5(a)で示すように、患部押圧部材21は、ショーツ10の取付位置X1またはX2に装着された状態でショーツ10の内面側に位置する平坦状の基部21a、基部21aから離間して患部に向かって突出する円柱状の突出部21bを有する。基部21aには、面ファスナで形成された取付部材21cが設けられ、突出部21bの頂面21dは、一方側から他方側に向かって漸次傾斜する傾斜面として構成されている。
図5(b)で示すように、患部押圧部材22は、ショーツ10の取付位置X1またはX2に装着された状態でショーツ10の内面側に位置する平坦状の基部22a、基部22aから離間して患部に向かって突出する円柱状の突出部22bを有する。基部22aには、面ファスナで形成された取付部材22cが設けられ、突出部22bの頂面22dは、患部を包含しつつ患部に密接する凹凸面として構成されている。
図5(c)で示すように、患部押圧部材23は、ショーツ10の取付位置X1またはX2に装着された状態でショーツ10の内面側に位置する平坦状の基部23a、基部23aから離間して患部に向かって突出する円柱状の突出部23bを有する。基部23aには、面ファスナで形成された取付部材23cが設けられ、突出部23bの頂面23dは、突部と凹部とが複数連続する鋸状に形成されている。
図5(d)で示すように、患部押圧部材24は、ショーツ10の取付位置X1またはX2に装着された状態でショーツ10の内面側に位置する平坦状の基部24a、基部24aから離間して患部に向かって突出する円柱状の突出部24bを有する。基部24aには、面ファスナで形成された取付部材24cが設けられ、突出部24bの頂面24dは、平坦状に形成されている。
なお、患部押圧部材24の突出部24bは、本実施の形態では接合部24eを介して第1突出部24ba及び第2突出部24bbを有する二層型に形成され、着用者の患部に対する押圧力を緩衝するように構成されているが、単体の突出部24bとして構成してもよい。
図5(e)で示すように、患部押圧部材25は、ショーツ10の取付位置X1またはX2に装着された状態でショーツ10の内面側に位置する平坦状の基部25a、基部25aに対して揺動可能に一端が軸支された平坦状の突出部25b、基部25aと突出部25bとの間に介在されて突出部25bを患部に向かって付勢するスプリング25dを有する。基部25aには、面ファスナで形成された取付部材25cが設けられている。
この患部押圧部材25がショーツ10に装着される場合は、例えば、その全体がポリウレタンフォームで包含されるように構成される。
これら患部押圧部材20〜25は、患部の形状や大きさ等に合わせて着用者が任意に選択可能となるように、種々の素材や大きさ及び形状で形成することが可能である。
上記第1実施の形態では、患部押圧部材20は発泡樹脂材料を発泡させたポリウレタンフォームであることを説明したが、例えば、患部押圧部材20を袋状に形成し、袋状の内部に液体や空気等の流体を注入して膨らませるように構成してもよい。患部押圧部材21〜24についても、同様の構成とすることができる。さらに、可撓性のある柔軟なゴム、あるいは伸縮性のある布材等の種々の素材を用いて構成することもできる。
上記第1実施の形態では、患部押圧部材20が取付位置X1またはX2に装着される場合を説明したが、取付位置X1またはX2に限られないで、着用者の患部に対応させた任意の所望の位置に取付位置を設定したうえで着脱することが可能である。
さらに、患部押圧部材20が収納可能な袋状体を取付位置X1またはX2に予め設けておき、この袋状体に患部押圧部材20を収納して患部押圧部材20を装着することもできる。
上記第1実施の形態では、雌部材19が前身頃11及び後身頃12の内面の全面に亘って設けられた場合を説明したが、例えば、患部押圧部材20を装着する取付位置X1またはX2のみに雌部材19を設けてもよいし、患部押圧部材20を装着する着用者の患部に対応させた任意の所望の位置のみに雌部材19を設けてもよい。
上記第1実施の形態では、引張力付与部材30は、前身頃11の外面において前身頃側重ね部材16と対応する位置、及び後身頃12の外面において後身頃側重ね部材17と対応する位置に設けられた場合を説明したが、前身頃11の内面において前身頃側重ね部材16と対応する位置、及び後身頃12の内面において後身頃側重ね部材17と対応する位置に設けられていてもよい。この場合は、着用者の肌に刺激を与えないように、引張力付与部材30を布地で被覆することが好ましい。
上記第1実施の形態では、補整部材40が取付位置Yに装着される場合を説明したが、取付位置Yに限られないで着用者の任意の所望の位置に取り付けることが可能である。一方、ショーツ10の前身頃11及び/又は後身頃12の内面に限られないで、前身頃11及び/又は後身頃12の外面に装着されるように構成してもよい。さらに、補整部材40は、着用者の要望に応じてショーツ10に複数個が装着可能となるように構成してもよい。
このとき、補整部材40は、複数の補整部材40が互いに重ね合わせられて面ファスナ等で係着された状態でショーツ10に装着されるように構成することもできる。これにより、着用者の下腹部及び臀部のシルエットを着用者の所望の状態に良好に保持するために、適宜調整することが可能となる。
さらに、補整部材40が収納可能な袋状体を取付位置Yに予め設けておき、この袋状体に補整部材40を収納して補整部材40を装着することもできる。
一方、補整部材40を前身頃11及び/又は後身頃12の任意の位置に縫いつけあるいは編みこんだり、接着材料等で任意の位置に接着したり、加熱して任意の位置に溶着したりしてもよい。
男性が着用する場合を想定してショーツ10を構成する場合は、前身頃11におけるスリット18の形成された位置に、陰茎及び陰嚢が収納される陰茎陰嚢収納袋を形成してもよい。このような陰茎陰嚢収納袋に陰茎及び陰嚢が収納されることによって、より適切に患部押圧部材20を着用者の患部に密着させて押圧することができる。
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態について、図6及び図7に基づいて説明する。なお、図6及び図7において、図1〜5と同様の構成には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図6は、本実施の形態に係るショーツ10の概略を説明する図である。図示のように、ショーツ10は、本実施の形態では、主に、脱肛あるいは子宮内脱腸といったヘルニア等の罹患者に着用されるものであり、前身頃11及び/又は後身頃12の内面に着脱可能に形成された患部押圧部材50が設けられる。
この患部押圧部材50は、前身頃11及び後身頃12の内面における着用者のヘルニア等の患部に対応する位置に装着されて位置決めされた状態で、患部に向かって突出して着用者の患部を押圧する。
図7は、患部押圧部材50の概略を説明する図であり、(a)は一の具体例である患部押圧部材51を説明する図、(b)は他の具体例である患部押圧部材52を説明する図である。
図7(a)で示すように、患部押圧部材51は、患部押圧部材50がショーツ10の取付位置X3に装着された状態でショーツ10の内面側に位置する平坦状の基部51a、基部51aから離間して患部に向かって突出する突出部51bを有し、突出部51bの頂面51dは、湾曲面を有する球面状に形成されている。
この基部51aと突出部51bとは、中間部51cを介して互いに連結されている。中間部51cと基部51aとは、ボールジョイント51eを介して互いに連結され、中間部51cと突出部51bとが、図示しないスプリングが内蔵された伸縮部51fを介して互いに回動可能に連結されている。
この患部押圧部材51の突出部51bは、本実施の形態では、発泡樹脂材料を発泡させた柔軟性を有するポリウレタンフォームで形成されており、突出部51bの頂面51dには、肌に刺激の少ない柔軟性を有する布地51gが設けられている。患部押圧部材51の基部51aには、面ファスナの雄部材で構成された取付部材51cが設けられている。
一方、図7(b)で示すように、患部押圧部材52は、患部押圧部材52がショーツ10の取付位置X3に装着された状態でショーツ10の内面側に位置する円柱状の基部52a、基部52aから離間して患部に向かって突出する突出部52bを有し、突出部52bの頂面52dは平坦状に形成されている。
この基部52aと突出部52bとは、第1中間部52e及び第2中間部52fを介して互いに連結されている。第1中間部52e及び第2中間部52fは、第1中間部52eに内蔵された図示しないスプリングを介して互いに伸縮可能に連結され、第1中間部52eと突出部52bとがボールジョイント52gを介して互いに連結され、第2中間部52fと基部52aとがボールジョイント52hを介して互いに連結されている。
この患部押圧部材52の突出部52bは、本実施の形態では、発泡樹脂材料を発泡させた柔軟性を有するポリウレタンフォームで形成されており、面ファスナの雄部材で構成された取付部材52cが、基部52aに設けられている。
この患部押圧部材51または52は、着用者の患部の形状や大きさに合わせて、適宜選択して用いることが可能である。さらに、患部押圧部材51または52は、患部の形状や大きさ等に合わせて着用者が任意に選択可能となるように、種々の大きさ、形状及び素材で形成することが可能である。
上記構成を有するショーツ10に、後身頃12に設定された取付位置X3に患部押圧部材50が装着される。本実施の形態では、取付位置X3は、脱肛あるいは子宮内脱腸の患部である着用者の肛門部分に対応する位置に設定されている。
上記構成を有するショーツ10を、ヘルニア等の罹患者が着用する場合は、患部押圧部材51または52をショーツ10の取付位置X3に装着したうえで、ショーツ10を着用し、患部押圧部材51または52が患部を押圧する位置に配置されるように微調整を行う。
このように、本実施の形態のショーツ10によると、患部押圧部材51または52が、ヘルニア等の患部に対応する位置に設定された取付位置X3に装着されたうえで、患部押圧部材51または52に着用者の患部への付勢力が作用する。これにより、患部押圧部材51または52が着用者の患部を適切に押圧しつつ密着することから、身体の種々の動作によって着用者の体位が変形しても患部押圧部材51または52が患部からずれることがない。
従って、本実施の形態のショーツ10によると、第1実施の形態と同様に、通常のショーツとして日常生活において長時間に亘って着用しても、良好な着心地が確保された上で患部押圧部材51または52が着用者の患部を適切に押圧することから、ヘルニア等の罹患者が日常生活において行動する際に患部押圧部材51または52が患部からずれてしまわないように配慮して行動する必要がなくなる。その結果、日常生活において行動する際に、行動上の規制がなくなり、日常生活の質的向上を図ることができる。
なお、上記第2実施の形態では、上記第1実施の形態と同様に、例えば、患部押圧部材51または52を装着する取付位置X3のみに雌部材19を設けてもよいし、患部押圧部材51または52を装着する着用者の患部に対応させた所望の位置のみに雌部材19を設けてもよい。
(第3実施の形態)
次に、本発明の第3実施の形態について、図8及び図9に基づいて説明する。なお、図8及び図9において、図1〜7と同様の構成には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図8は、本実施の形態に係るショーツの概略を説明する正面図であり、図9は、ショーツの概略を説明する背面図である。本実施の形態のショーツ10は、主に、着用者の体型の保持といった美的効果を得ることを目的して着用されるものである。
図8で示すように、前身頃11には、そのほぼ全面に亘って放射状の前身頃側重ね部材60が縫い付けられている。この前身頃側重ね部材60は、着用者の下腹部の中央領域に位置する基部60a、この基部60aの一方の側部から前身頃11の一方の側部に向かって略水平に延在する第1重ね部材60b、及び基部60aの他方の側部から前身頃11の他方の側部に向かって略水平に延在する第2重ね部材60cを有する。
さらに、前身頃側重ね部材60は、基部60aの一方の側部における基部60aの上部から前身頃11の上端部11c側に向かって延在する第3重ね部材60d、基部60aの他方の側部における基部60aの上部から前身頃11の上端部11c側に向かって延在する第4重ね部材60e、及び第3重ね部材60dと第4重ね部材60eとの間において基部60aの上部から前身頃11の上端部11c側に向かって延在する第5重ね部材60fを有する。
この前身頃側重ね部材60は、通気性がよくかつ前身頃11より伸縮性の高い布地で形成され、前身頃側重ね部材60が縫い付けられた部分において前身頃11が二層に形成されている。
上記構成の前身頃側重ね部材60と対応する位置に、引張力付与部材30が設けられている。引張力付与部材30は、本実施の形態では、前身頃11の外面において前身頃側重ね部材60と対応する位置に複数設けられている。これらの位置は、第2係着部材30bが第1係着部材30aに係着した際に着用者の下腹部及び臀部が所望の形状に引き締められる位置である。
一方、図9で示すように、後身頃12には、放射状に形成された後身頃側重ね部材61が縫い付けられている。この後身頃側重ね部材61は、後身頃12における着用者の腰部と臀部との間に対応する位置において水平方向に延在する帯状の基部61aを有する。
この後身頃側重ね部材61は、基部61aの一方側における基部61aの上部から後身頃12の上端部12c側に向かって延在する第1重ね部材61b、基部61aの他方側における基部61aの上部から後身頃12の上端部12c側に向かって延在する第2重ね部材61c、及び第1重ね部材61bと第2重ね部材61cとの間において基部61aの上部から後身頃12の上端部12c側に向かって延在する第3重ね部材61dを有する。
さらに、後身頃側重ね部材61は、基部61aの下部から臀部の一方側に向って延在する第4重ね部材61e、及び基部61aの下部から臀部の他方側に向って延在する第5重ね部材61fを有する。これら第4重ね部材61e及び第5重ね部材61fによって、着用者の臀部が下方から支持されて臀部に緊張力が付与される。
この後身頃側重ね部材61は、通気性がよくかつ後身頃12より伸縮性の高い布地で形成され、後身頃側重ね部材61が縫い付けられた部分において後身頃12が二層に形成されている。
上記構成の後身頃側重ね部材61に、引張力付与部材30が設けられている。引張力付与部材30は、本実施の形態では、後身頃12の外面において後身頃側重ね部材61と対応する位置に複数設けられている。これらの位置は、第2係着部材30bが第1係着部材30aに係着した際に着用者の下腹部及び臀部が所望の形状に引き締められる位置である。
これら前身頃11及び後身頃12に設けられた第2係着部材30bを、着用者の要望に応じて選択的にあるいはその全部を第1係着部材30aに係着させることによって、着用者の下腹部及び臀部が着用者の体型に応じた所望の形状に引き締められる。従って、着用者の下腹部及び臀部のシルエットを良好に保持して着用者の体型を保持するという美的効果を得ることができる。
なお、本発明は上記第1〜第3実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記第1〜第3実施の形態では、スリット18が形成された場合を説明したが、例えば図10(a)で示すように、ショーツ10の股部分を分割した形状に形成することもできる。
図示のように、ショーツ10は、後身頃12に股布14が連続して一体に形成され、股布14の前端部14aが、前身頃11の下端部11Aに着脱可能に形成されている。具体的には、前身頃11の表面側における下端部11Aに面ファスナの雄部材(または雌部材)32aが設けられるとともに、股布14の裏面側における前端部14aに面ファスナの雌部材(または雄部材)32bが設けられている。
一方、後身頃12の表面側における下端部12Aに面ファスナの雄部材(または雌部材)33aが設けられるとともに、股布14の表面側における前端部14aに面ファスナの雌部材(または雄部材)33bが設けられている。
上記構成のショーツ10によれば、用便時に前身頃11の雄部材(または雌部材)32aと股布14の雌部材(または雄部材)32bとの係着を解除するとともに、後身頃12の雄部材(または雌部材)33aと股布14の雌部材(または雄部材)33bとを係着させる。これにより、後身頃12に連続して一体に形成された股布14が、用便時の排泄物に付着することが阻止される。
一方、ショーツ10は、例えば図10(b)に示すように、股部分の下方を開放可能な形状に形成することもできる。このショーツ10は、互いに対称的に形成された一対のショーツ第1構成部10−1及びショーツ第2構成部10−2によって形成されている。ショーツ第1構成部10−1及びショーツ第2構成部10−2にはそれぞれ、着用者の大腿部の付け根部分を挿通する、下方に開口した一対の大腿部回り開口部13が形成される。
なお、ショーツ第1構成部10−1及びショーツ第2構成部10−2は、同様の構成を有することから、必要がある場合を除き、ショーツ第1構成部10−1を例として説明する。
ショーツ第1構成部10−1は、前身頃構成部11−1及び後身頃構成部12−1を有して形成される。前身頃構成部11−1は、ウエスト部15から下方に移行するに従って大腿部回り開口部13側に漸次傾斜する前身頃端縁11Bを有し、後身頃構成部12−1は、ウエスト部15から下方に移行するに従って大腿部回り開口部13側に漸次傾斜する後身頃端縁12Bを有する。
上記構成のショーツ第1構成部10−1及びショーツ第2構成部10−2によって、ショーツ10は、股部分の下方が開放された形状に形成されている。このショーツ10のショーツ第1構成部10−1における前身頃構成部11−1の前身頃端縁11Bには、面ファスナの雄部材(または雌部材)34aが設けられ、ショーツ第2構成部10−2における前身頃構成部11−2の前身頃端縁11Bには、面ファスナの雌部材(または雄部材)34bが設けられている。
上記構成のショーツ10によれば、用便時に一対の前身頃構成部11−1における前身頃端縁11Bにそれぞれ設けられた雄部材(または雌部材)34aと雌部材(または雄部材)34bとの係着を解除し、用便後は、一対の前身頃構成部11−1における前身頃端縁11Bにそれぞれ設けられた雄部材(または雌部材)34aと雌部材(または雄部材)34bとを係着させることができる。
これにより、用便後は、一対の前身頃構成部11−1における前身頃端縁11Bにそれぞれ設けられた雄部材(または雌部材)34aと雌部材(または雄部材)34bとを係着させることが可能となることから、ショーツ10の着用者の意に反してショーツ10の股部分の下方が開放することが阻止される。
さらに、ショーツ10は、例えば図10(c)に示すように、股部分に略矩形に切り欠いて形成された開口部70を形成することも可能である。開口部70の直上には面ファスナの雄部材(または雌部材)35aを設け、開口部70の下部には、この開口部70を封止する封止カバー71が設けられている。
この封止カバー71の裏面側には、雄部材(または雌部材)35aと係着可能な雌部材(または雄部材)35bが設けられるとともに、封止カバー71の先端側における表面側には、雄部材(または雌部材)36a、及び封止カバー71の基端側における表面側には、雄部材(または雌部材)36aと係着可能な雌部材(または雄部材)36bが設けられている。
なお、封止カバー71の両側部と開口部70の両側部とが係着可能となるように、封止カバー71の両側部の裏面側に雄部材(または雌部材)を設けるとともに、開口部70の両側部に雌部材(または雄部材)を設けてもよい。
この封止カバー71は、例えばレース地といった目が粗く極めて通気性のよい素材で形成されており、湿気の多い時期においても極めて良好な通気性が確保され、いわゆる蒸れ防止に資する。
一方、封止カバー71を開口部70の中央部から開口部70の左右方向に開閉可能とするように構成してもよい。さらに、開口部70の形状、大きさ及び封止カバー71の素材は、適宜選択可能である。
上記構成のショーツ10によれば、用便時に封止カバー71の雌部材(または雄部材)35bと開口部70の直上に設けられた雄部材(または雌部材)35aとの係着を解除するとともに、封止カバー71の先端側における表面側の雄部材(または雌部材)36aと封止カバー71の基端側における表面側の雌部材(または雄部材)36bとを係着させる。これにより、開口部70の下部に設けられた封止カバー71が、用便時の排泄物に付着することが阻止される。
引張力付与部材30は、上記第1及び第2実施の形態における前身頃側重ね部材16及び後身頃側重ね部材17の上記の位置に限定されることなく、患部押圧部材20が着用者の患部に付勢される任意の位置に設けることができる。
さらに、引張力付与部材30は、上記第3実施の形態における前身頃側重ね部材60及び後身頃側重ね部材61の上記の位置に限定されることなく、着用者の下腹部及び臀部が所望の形状に引き締められる任意の位置に設けることができる。
上記第1〜第3実施の形態では、引張力付与部材30がショーツ10の前身頃11及び後身頃12における外面に設けられていることを説明したが、例えば、前身頃11の内面及び後身頃12の内面における前身頃側重ね部材16(60)及び後身頃側重ね部材17(61)と対応する位置に設けることもできる。
上記第1〜第3実施の形態では、ショーツ10は、一対の大腿部回り開口部13を構成する一対の股布側大腿部端縁13c、13cを有する股布14を備える場合を説明したが、例えば、股布14を、前身頃11の下部側及び後身頃12の下部側に拡大させた股布、すなわち、股布14よりもその大きさを拡大させて、着用者の大腿部の内股側における陰部の下部及び臀部の下部を被覆する股布として構成してもよい。
この場合、股布は、例えばレース地といった目が粗く極めて通気性のよい素材で形成されており、湿気の多い時期においても極めて良好な通気性が確保され、着用者の着心地を向上させることができる。この股布の形状、大きさ及び素材等は、適宜選択可能である。
上記第1〜第3実施の形態では、ショーツ10が通常の下着用のショーツとして構成された場合を説明したが、ショーツ10が例えば水着、あるいはガードルといったインナーウェアとして構成してもよい。