JP6261801B1 - 電気化学セル - Google Patents

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Abstract

【課題】出力の低下を抑制可能な電気化学セルを提供する。【解決手段】燃料電池10は、燃料極20と空気極50と固体電解質層30とを備える。空気極50は、一般式ABO3で表され、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物によって構成される主相と、SrSO4及び(Co,Fe)3O4によって構成される第二相とを含有する。空気極50の断面における第二相の面積占有率は、10.5%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、電気化学セルに関する。
近年、環境問題及びエネルギー資源の有効利用の観点から、電気化学セルの一種である燃料電池に注目が集まっている。燃料電池は、一般的に、燃料極と、空気極と、燃料極及び空気極の間に配置される固体電解質層とを有する。
空気極は、例えば(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルト
フェライト)などのペロブスカイト型酸化物によって構成される(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−32132号公報
しかしながら、発電を繰り返すうちに燃料電池の出力が低下する場合がある。本発明者らは、出力の低下の原因の1つが空気極の劣化によるものであり、この空気極の劣化は内部に導入されるSrSO及び(Co,Fe)の合計割合に関係することを新たに見出した。
本発明は、このような新たな知見に基づくものであって、出力の低下を抑制可能な電気化学セルを提供することを目的とする。
本発明に係る電気化学セルは、燃料極と、空気極と、燃料極と空気極の間に配置される固体電解質層とを備える。空気極は、一般式ABOで表され、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物によって構成される主相と、SrSO及び(Co,Fe)によって構成される第二相とを含有する。空気極の断面における第二相の面積占有率は、10.5%以下である。
本発明によれば、出力の低下を抑制可能な電気化学セルを提供することができる。
燃料電池の構成を示す断面図
(燃料電池10の構成)
燃料電池10の構成について、図面を参照しながら説明する。燃料電池10は、いわゆる固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。燃料電池10は、縦縞型、横縞型、燃料極支持型、電解質平板型、或いは円筒型などの形態を取りうる。
燃料電池10は、燃料極20、固体電解質層30、バリア層40および空気極50を備
える。
燃料極20は、燃料電池10のアノードとして機能する。燃料極20は、図1に示すように、燃料極集電層21と燃料極活性層22とを有する。
燃料極集電層21は、ガス透過性に優れる多孔質体である。燃料極集電層21を構成する材料としては、従来SOFCの燃料極集電層に用いられてきた材料を用いることができ、例えばNiO(酸化ニッケル)-8YSZ(8mol%のイットリアで安定化されたジ
ルコニア)やNiO‐Y(イットリア)が挙げられる。燃料極集電層21がNiOを含んでいる場合、燃料電池10の作動中においてNiOの少なくとも一部はNiに還元されていてもよい。燃料極集電層21の厚みは、例えば0.1mm〜5.0mmとすることができる。
燃料極活性層22は、燃料極集電層21上に配置される。燃料極活性層22は、燃料極集電層21より緻密な多孔質体である。燃料極活性層22を構成する材料としては、従来SOFCの燃料極活性層に用いられてきた材料を用いることができ、例えばNiO‐8YSZが挙げられる。燃料極活性層22がNiOを含んでいる場合、燃料電池10の作動中においてNiOの少なくとも一部はNiに還元されていてもよい。燃料極活性層22の厚みは、例えば5.0μm〜30μmとすることができる。
固体電解質層30は、燃料極20と空気極50の間に配置される。本実施形態において、固体電解質層30は、燃料極20とバリア層40に挟まれている。固体電解質層30は、空気極50で生成される酸化物イオンを透過させる機能を有する。固体電解質層30は、燃料極20や空気極50よりも緻密質である。
固体電解質層30は、ZrO(ジルコニア)を主成分として含んでいてもよい。固体電解質層30は、ジルコニアの他に、Y(イットリア)及び/又はSc(酸化スカンジウム)等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、安定化剤として機能する。固体電解質層30において、安定化剤のジルコニアに対するmol組成比(安定化剤:ジルコニア)は、3:97〜20:80程度とすることができる。従って、固体電解質層30の材料としては、例えば、3YSZ、8YSZ、10YSZ、或いはScSZ(スカンジアで安定化されたジルコニア)などが挙げられる。固体電解質層30の厚みは、例えば3μm〜30μmとすることができる。
本実施形態において、組成物Xが物質Yを「主成分として含む」とは、組成物X全体のうち、物質Yが70重量%以上を占め、より好ましくは90重量%以上を占めることを意味する。
バリア層40は、固体電解質層30と空気極50の間に配置される。バリア層40は、固体電解質層30と空気極50の間に高抵抗層が形成されることを抑制する。バリア層40は、燃料極20や空気極50よりも緻密質である。バリア層40は、GDC(ガドリニウムドープセリア)やSDC(サマリウムドープセリア)などのセリア系材料を主成分とすることができる。バリア層40の厚みは、例えば3μm〜20μmとすることができる。
空気極50は、バリア層40上に配置される。空気極50は、燃料電池10のカソードとして機能する。空気極50は、多孔質体である。空気極50の気孔率は特に制限されないが、20%〜60%とすることができる。空気極50の厚みは特に制限されないが、2μm〜100μmとすることができる。
空気極50は、一般式ABOで表され、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物を主相として含有する。ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、ランタン含有ペロブスカイト型複合酸化物やランタンを含有しないSSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト:(Sm,Sr)CoO)などが好適に用いられる
が、これに限られるものではない。ランタン含有ペロブスカイト型複合酸化物としては、LSCF(ランタンストロンチウムコバルトフェライト:(La,Sr)(Co,Fe)O3)、LSF(ランタンストロンチウムフェライト:(La,Sr)FeO)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト:(La,Sr)CoO)及びLNF(ランタン
ニッケルフェライト:La(Ni,Fe)O)などが挙げられる。ペロブスカイト型酸
化物によって構成される主相の密度は、5.5g/cm〜8.5g/cmとすることができる。
空気極50の断面における主相の面積占有率は、89.5%以上99.8%以下とすることができる。本実施形態において「断面における物質Zの面積占有率」とは、断面における固相の総面積に対する物質Z相の合計面積の割合をいう。面積占有率の算出方法については後述する。
空気極50は、SrSO及び(Co,Fe)によって構成される第二相を含有する。第二相において、SrSOと(Co,Fe)とは、混合された状態で存在している。具体的には、「SrSOと(Co,Fe)とが混在する」とは、SrとSとOとが検出されるEDXスペクトルと、CoとFeとOとが検出されるEDXスペクトルとが異なる位置で別々に取得され、かつ、SrSOと(Co,Fe)とが文字通り混在(=いりまじって存在すること(広辞苑第二版補訂版、昭和54年10月15日 第四刷発行))している状態を意味する。(Co,Fe)には、CoFeO、Co1.5Fe1.5及びCoFeなどが含まれる。第二相の密度は、5.2g/cm〜6.2g/cmとすることができる。第二相の密度は、主相の密度よりも小さくてもよい。
空気極50の断面における第二相の面積占有率は、10.5%以下である。第二相の面積占有率は、SrSOの面積占有率と(Co,Fe)の面積占有率の総和である。具体的に、第二相の面積占有率には、SrSOによって構成される粒子の面積占有率と、(Co,Fe)によって構成される粒子の面積占有率と、SrSO及び(Co,Fe)の混合物によって構成される粒子の面積占有率と、主相の粒子中に混在するSrSO及び/又は(Co,Fe)の面積占有率とが含まれている。
第二相の面積占有率を10.5%以下とすることによって、空気極内部の不活性部が低減されるため、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことを抑制できる。
空気極50の断面における第二相の面積占有率は、0.2%以上であることがより好ましい。これによって、適度に導入された第二相によって空気極50の焼結性が改善されるため、多孔質の骨格構造を強化することができる。その結果、空気極50の微構造が変化することを抑制できるため、通電中に空気極50内にクラックが発生することを抑制できる。
第二相の面積占有率のうち、SrSOの面積占有率と(Co,Fe)の面積占有率との割合は特に制限されないが、空気極50の骨格構造の強化には、SrSOよりも(Co,Fe)を添加した方が効果的である。そのため、(Co,Fe)の面積占有率は、SrSOの面積占有率より大きいことが好ましい。空気極50の断面におけるSrSOの面積占有率は、5%以下とすることができ、空気極50の断面における(Co,Fe)の面積占有率は9.5%以下とすることができる。
空気極50の断面において、主相と第二相がどのように分布しているかは特に制限されないが、両者が全体的に均一に分布していることが好ましい。
また、第二相のうちSrSOは、空気極50の固体電解質層と反対側の領域に多く分布していることが好ましい。具体的には、空気極50の厚み方向中央を基準として、固体電解質層と反対側の「第1領域」と固体電解質層側の「第2領域」とに空気極50を分けた場合、第1領域におけるSrSOの面積占有率は、第2領域におけるSrSOの面積占有率よりも高いことが好ましい。これによって、第1領域よりも活性反応が高くなりやすい第2領域における活性を高めることができる。
また、第二相のうち(Co,Fe)は、空気極50の固体電解質層側の領域に多く分布していることが好ましい。具体的には、空気極50の厚み方向中央を基準として、固体電解質層と反対側の「第1領域」と固体電解質層側の「第2領域」とに空気極50を分けた場合、第2領域における(Co,Fe)の面積占有率は、第1領域における(Co,Fe)の面積占有率よりも高いことが好ましい。この際、第1領域における(Co,Fe)の面積占有率は、第1領域におけるSrSOの面積占有率よりも低いことがより好ましく、第2領域における(Co,Fe)の面積占有率は、第2領域におけるSrSOの面積占有率よりも高いことがより好ましい。
また、空気極50の断面における第二相の平均円相当径は特に制限されないが、0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましい。これによって、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことをより抑制できる。平均円相当径とは、無作為に選出した50個の第二相それぞれと同じ面積を有する円の直径を算術平均した値である。円相当径の測定対象である50個の第二相は、空気極50の断面上における5箇所以上のFE−SEM画像(倍率10000倍)から無作為に選出することが好ましい。なお、平均円相当径の算出のために選出される第二相は、SrSOと(Co,Fe)の両方を含む領域、SrSOだけを含む領域、或いは、(Co,Fe)だけを含む領域のいずれであってもよい。
また、空気極50は、上述した主相及び第二相とは異なる第三相を含有していてもよい。第三相を構成する成分としては、Co(四酸化三コバルト)、CoO(酸化コバルト)、SrO(酸化ストロンチウム)、及び主相の構成元素の酸化物などが挙げられるが、これに限られるものではない。空気極50の断面における第三相の合計面積占有率は、10%未満が好ましい。
(第二相の面積占有率の算出方法)
次に、空気極50の断面における第二相の面積占有率の算出方法について説明する。
まず、空気極50の断面を精密機械研磨した後に、株式会社日立ハイテクノロジーズのIM4000によってイオンミリング加工処理を施す。
次に、インレンズ二次電子検出器を用いたFE−SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope:電界放射型走査型電子顕微鏡)を用いて、空気極50の断面を倍率10000倍で拡大したSEM画像を取得する。
次に、SEM画像の輝度を256階調に分類することによって、主相と第二相と気孔との明暗差を3値化する。例えば、主相を薄灰色、第二相を濃灰色、気孔を黒色に表示させることができるが、これに限られるものではない。
次に、MVTec社(ドイツ)製の画像解析ソフトHALCONを用いて、SEM画像を画像解析することによって、SrSOと(Co,Fe)とが強調表示された解析画像を取得する。そして、この解析画像におけるSrSOと(Co,Fe)との合計面積を第二相の合計面積として、解析画像における固相全体の合計面積で第二相の合計面積を除すことによって、第二相の面積占有率が求められる。このような解析を空気極50の同一断面上の5箇所で行い、5箇所それぞれで算出された第二相の合計面積の割合を算術平均した値が、空気極50における第二相の面積占有率である。
なお、SrSO及び(Co,Fe)それぞれの面積占有率は、以下の成分分析によって確認することができる。
まず、第二相の面積占有率の算出に用いたSEM画像を参照して、第二相の位置を確認する。次に、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光法)を用いて、第二相の位置におけるEDXスペクトルを取得する。そして、EDXスペクトルを半定量分析することによって、第二相の位置に存在する元素を同定する。これにより、第二相にSrSOと(Co,Fe)が混在した状態で存在していることを確認できるとともに、第二相のうちSrSOの面積占有率と(Co,Fe)の面積占有率とを別々に取得することができる。
(Co,Fe)が、CoFe、Co1.5Fe1.5及びCoFeOのいずれの形態であるかは、TEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)のSAED(Selected Area Electron Diffraction:制限視野解析)を用いて、第二相の結晶構造(格子定数、格子型、結晶方位)を解析することで確認できる。
以上、第二相の面積占有率の算出方法について説明したが、主相の面積占有率も同様に算出することができる。
(空気極材料)
空気極50を構成する空気極材料としては、一般式ABOで表されるペロブスカイト型酸化物原料粉末にSrSO原料粉末と(Co,Fe)原料粉末を添加した混合材料を用いることができる。
ペロブスカイト型複合酸化物原料粉末としては、LSCF、LSF、LSC、LNF、SSCなどの原料粉末が挙げられる。(Co,Fe)としては、CoFeO、Co1.5Fe1.5及びCoFeなどの原料粉末が挙げられる。
空気極材料に添加されるSrSO原料粉末と(Co,Fe)原料粉末の合計添加量は、9.5重量%以下である。これによって、空気極50の断面における第二相の面積占有率を10.5%以下に制御することができる。
空気極材料におけるSrSOと(Co,Fe)の合計添加量は、0.18重量%以上であることが好ましい。これによって、空気極50の断面における第二相の面積占有率を0.2%以上に制御することができる。
なお、SrSO原料粉末と(Co,Fe)原料粉末の状態や、各原料粉末の粒度を調整することによって、第二相の面積占有率を微調整することができる。
また、SrSO原料粉末と(Co,Fe)原料粉末の粒度を調整することによ
って、空気極50の断面における第二相の平均円相当径を調整することができる。SrSO原料粉末と(Co,Fe)原料粉末の粒度調整には、気流式分級機を用いることが好ましい。これによって、粒径の上限値及び下限値を含む精密な分級が可能となる。
(燃料電池10の製造方法)
次に、燃料電池10の製造方法の一例について説明する。以下の説明において、「成形体」は、焼成前の部材を意味する。
まず、燃料極集電層用粉末(例えば、NiO粉末とYSZ粉末)と造孔剤(例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))との混合物にバインダー(例えば、ポリビニルアルコール)を添加して燃料極集電層用スラリーを作製する。次に、燃料極集電層用スラリーをスプレードライヤーで乾燥・造粒することによって燃料極集電層用粉末を得る。次に、金型プレス成形法で燃料極用粉末を成形することによって、燃料極集電層21の成形体を形成する。この際、金型プレス成形法に代えてテープ積層法を用いてもよい。
次に、燃料極活性層用粉末(例えば、NiO粉末とYSZ粉末)と造孔剤(例えばPMMA)との混合物にバインダー(例えば、ポリビニルアルコール)を添加して燃料極活性層用スラリーを作製する。次に、燃料極活性層用スラリーを印刷法で燃料極集電層21の成形体上に印刷することによって、燃料極活性層22の成形体を形成する。これによって、燃料極20の成形体が形成される。この際、印刷法に代えてテープ積層法や塗布法等を用いてもよい。
次に、固体電解質層用粉末(例えば、YSZ粉末)に水とバインダーの混合物をボールミルで混合することによって固体電解質層用スラリーを作製する。次に、固体電解質層用スラリーを燃料極20の成形体上に塗布・乾燥させることによって、固体電解質層30の成形体を形成する。この際、塗布法に代えてテープ積層法や印刷法等を用いてもよい。
次に、バリア層用粉末(例えば、GDC粉末)に水とバインダーの混合物をボールミルで混合することによってバリア層用スラリーを作製する。次に、バリア層用スラリーを固体電解質層30の成形体上に塗布・乾燥させることによって、バリア層40の成形体を形成する。この際、塗布法に代えてテープ積層法や印刷法等を用いてもよい。
次に、燃料極20、固体電解質層30及びバリア層40それぞれの成形体の積層体を1300〜1600℃で2〜20時間共焼結することによって、燃料極20、固体電解質層30及びバリア層40の共焼成体を形成する。
次に、上述した空気極材料と水とバインダーをボールミルで混合することによって空気極用スラリーを作製する。次に、空気極用スラリーを共焼成体のバリア層40上に塗布・乾燥させることによって、空気極50の成形体を形成する。次に、空気極50の成形体を電気炉(酸素含有雰囲気)で焼成(1000℃〜1100℃、1時間〜10時間)することによって、バリア層40上に空気極50を形成する。
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態では、本発明に係る空気極50を燃料電池10に適用した場合について説明したが、本発明に係る空気極は、燃料電池のほか、固体酸化物型の電解セルを含む固体酸化物型の電気化学セルに適用可能である。
上記実施形態において、燃料電池10は、燃料極20、固体電解質層30、バリア層40及び空気極50を備えることとしたが、これに限られるものではない。燃料電池10は、燃料極20、固体電解質層30及び空気極50を備えていればよく、燃料極20と固体電解質層30との間や固体電解質層30と空気極50との間には、他の層が介挿されていてもよい。
以下において本発明に係るセルの実施例について説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
(サンプルNo.1〜No.20の作製)
以下のようにして、サンプルNo.1〜No.20に係る燃料電池を作製した。
まず、金型プレス成形法で厚み500μmの燃料極集電層(NiO:8YSZ=50:50(Ni体積%換算))を成形し、その上に厚み20μmの燃料極活性層(NiO:8YSZ=45:55(Ni体積%換算))を印刷法で形成した。
次に、燃料極活性層上に8YSZ層とGDC層の成形体を塗布法で順次形成して共焼成(1400℃、2時間)した。
次に、表1に示すように、主相(LSCF、LSF又はSSC)と第二相(SrSO及び(Co,Fe))とを含む空気極材料を準備した。表1に示すように、第二相の添加量をサンプルごとに変更することによって、空気極における第二相の面積占有率を変更した。また、第二相の平均円相当径が表1に示す値になるように、SrSO原料粉末と(Co,Fe)原料粉末の粒度を調整した。なお、サンプルNo.1、No.2、No.10、No.11では、(Co,Fe)としてCoFeOを用い、サンプルNo.3〜No.5、No.12、No.13、No.16では、(Co,Fe)としてCo1.5Fe1.5を用い、サンプルNo.6〜No.9、No.14、No.15、No.17〜No.20では、(Co,Fe)としてCoFeを用いた。
次に、空気極材料と水とPVAをボールミルで24時間混合することによって空気極用スラリーを作製した。
次に、空気極用スラリーを共焼成体のGDC層上に塗布・乾燥させた後に、電気炉(酸素含有雰囲気、1000℃)で1時間焼成することによって空気極を形成した。
(第二相の面積占有率の測定)
まず、各サンプルの空気極の断面を精密機械研磨した後に、株式会社日立ハイテクノロジーズのIM4000によってイオンミリング加工処理を施した。
次に、インレンズ二次電子検出器を用いたFE−SEMによって、空気極の断面の5箇所を倍率10000倍で拡大したSEM画像を取得した。SEM画像は、加速電圧:1kV、ワーキングディスタンス:3mmに設定されたFE−SEM(Zeiss社製のULTRA55)によって得た。このSEM画像では、画像の輝度を256階調に分類することによって、主相と第二相と気孔の明暗差を3値化した。
次に、MVTec社(ドイツ)製画像解析ソフトHALCONを用いて、SEM画像を画像解析することによって、SrSOと(Co,Fe)とが強調表示された解析画像を取得した。
次に、この解析画像におけるSrSOと(Co,Fe)との合計面積を解析画像における固相の合計面積で除すことによって、第二相の面積占有率を5箇所それぞれで求め、それらの算術平均値を第二相の面積占有率として算出した。また、SEM画像を参照しながら第二相の位置におけるEDXスペクトルを取得することによって、第二相のうちSrSOの面積占有率と(Co,Fe)の面積占有率とを別々に取得した。空気極の断面における第二相の面積占有率の算出結果は、表1に示す通りである。
(第二相の平均円相当径)
面積占有率の算出に用いた5枚の解析画像から無作為に選出した50個の第二相の平均円相当径を算出した。第二相の平均円相当径の算出結果は、表1に示す通りである。
(燃料電池の出力測定)
各サンプルの燃料極側に窒素ガス、空気極側に空気を供給しながら750℃まで昇温し、750℃に達した時点で燃料極に水素ガスを3時間供給することによって還元処理した。
次に、定格電流密度を0.2A/cmに設定して、セル電圧を測定しながら1000
時間発電した。そして、1000時間当たりの電圧降下率を劣化率として算出した。
また、1000時間発電した後に、空気極の断面を電子顕微鏡で観察することによって、空気極内のクラックを観察した。表1では、燃料電池の特性への影響が小さい5μm以下のクラックが観察されたサンプルに「有(軽微)」と表示されている。
Figure 0006261801
表1に示すように、空気極の断面における第二相の面積占有率を10.5%以下に抑えたサンプルNo.1〜No.8、No.10〜No.14、No.16〜No.19では、燃料電池の出力が低下することを抑制できた。これは、空気極内部の不活性部を低減することができたためである。
なお、本実施例では、本発明の効果を簡便に確認するために、第二相が導入された空気極を作製して、燃料電池の製造直後から1000時間発電後に劣化率を測定した。ただし、本実施例の結果に基づけば、燃料電池がどのように製造され、どの程度使用されたかに関わらず、空気極の断面における第二相の面積占有率が10.5%以下に抑えられていれば、燃料電池の出力低下を抑制する効果が得られることが分かる。
また、空気極の断面における第二相の面積占有率を0.20%以上としたサンプルNo.2〜No.8、No.11〜No.14、No.17〜No.19では、空気極内にクラックが発生することを抑制できた。これは、第二相によって空気極の焼結性を改善することによって、多孔質の骨格構造を強化できたためである。
なお、これらのサンプルでは、(Co,Fe)の面積占有率がSrSOの面積占有率よりも総じて大きく、このことが空気極の骨格構造の強化に対して、より有利な効果を発揮している。ただし、(Co,Fe)の面積占有率がSrSOの面積占有率よりも小さかったとしても、或いは同等であったとしても、第二相の面積占有率を0.20%以上とすることによって空気極の骨格構造を強化することができる。
また、本実施例では、本発明の効果を簡便に確認するために、第二相が導入された空気極を作製して、燃料電池の製造直後から1000時間発電後にクラックを観察した。ただし、本実施例の結果に基づけば、燃料電池がどのように製造され、どの程度使用されたかに関わらず、空気極の断面における第二相の面積占有率が0.20%以上になっていれば、空気極にクラックが発生することを抑制できることが分かる。
さらに、空気極の断面における第二相の平均円相当径を0.05μm以上2.0μm以下としたサンプルNo.1〜No.8、No.10〜No.13、No.16〜No.19では、燃料電池の出力が低下することをさらに抑制できた。
10 燃料電池
20 燃料極
21 燃料極集電層
22 燃料極活性層
30 固体電解質層
40 バリア層
50 空気極

Claims (3)

  1. 燃料極と、
    空気極と、
    前記燃料極と前記空気極の間に配置される固体電解質層と、
    を備え、
    前記空気極は、一般式ABOで表され、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物によって構成される主相と、SrSO及び(Co,Fe)によって構成される第二相とを含有し、
    前記空気極に含まれる(Co,Fe) は、CoとFeを含有し、
    前記空気極の断面における前記第二相の面積占有率は、10.5%以下であ
    前記空気極の断面における(Co,Fe) の面積占有率は、SrSO の面積占有率より大きい、
    電気化学セル。
  2. 前記空気極の断面における前記第二相の面積占有率は、0.20%以上である、
    請求項1に記載の電気化学セル。
  3. 前記空気極の断面において、前記第二相の平均円相当径は、0.05μm以上2.0μm以下である、
    請求項1又は2に記載の電気化学セル。
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