JP6261580B2 - 重水素化イブルチニブ - Google Patents

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Description

関連出願
本出願は、2012年7月30日出願の米国仮特許出願第61/677,307号明細書の利益を主張する。上記の出願の教示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
現在の多くの薬剤は、吸収、分布、代謝および/または排泄(ADME)特性が乏しく、そのため特定の適応において、そのより広い使用が妨げられる、またはその使用が制限される。ADME特性の乏しさは、臨床試験において薬物候補が不合格となる主な理由でもある。製剤化技術およびプロドラッグ戦略を用いて、場合によっては特定のADME特性を向上させることができるが、これらのアプローチは、多くの薬物および薬物候補に関して存在する、根底にあるADME問題を解決することに失敗する場合が多い。かかる一つの問題は急速な代謝であり、それによって疾患の治療に非常に有効であろう多くの薬物が、体内から急速に排出されすぎる。急速な薬物クリアランスに対する可能性のある解決策は、十分に高い薬物血漿中レベルを達成するために頻繁に、または多量に投与することである。しかしながら、これは、投与計画の服薬遵守、より用量が高くなるにしたがって急性となる副作用、および治療費用の増大など、多くの潜在的な治療上の問題を引き起こす。急速に代謝される薬物はまた、不要な毒性または反応性代謝産物に患者をさらし得る。
多くの薬物に影響する他のADME制限は、毒性または生理活性代謝産物の形成である。その結果として、その薬物を投与された一部の患者は毒性を経験することがあるか、またはかかる薬物の安全な投与が制限され、そのため患者に最適下限量の活性剤が投与され得る。特定の場合には、投与間隔または製剤化アプローチを修正することによって、臨床的有害作用を低減する助けとなり得るが、かかる望ましくない代謝産物の形成は、その化合物の代謝に固有のものである。
抜粋される一部の事例において、代謝阻害剤は、急速に排出されすぎる薬物と同時投与される。HIV感染の治療に使用されるプロテアーゼ阻害剤クラスの薬物がこのような事例である。FDAは、これらの薬物をリトナビル、チトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)(一般にその代謝を担う酵素)の阻害剤と同時投与することを推奨している(Kempf,D.J.ら,Antimicrobial agents and chemotherapy,1997,41(3):654−60))。しかしながら、リトナビルは、有害作用を引き起こし、既に様々な薬物の組み合わせを摂取しなければならないHIV患者に薬の負担を付加する。同様に、CYP2D6阻害剤キニジンは、偽性球麻痺作用の治療におけるデキストロメトルファンの急速なCYP2D6代謝を低減する目的のためにデキストロメトルファンに添加されている。しかしながら、キニジンは不要な副作用があり、それによって潜在的な併用療法におけるその使用が大きく制限される(Wang,Lら,Clinical Pharmacology and Therapeutics,1994,56(6 Pt 1):659−67;およびwww.accessdata.fda.govにあるFDA label for quinidine参照)。
一般に、チトクロムP450阻害剤と薬物を併用することは、薬物クリアランスの低減に関する満足の行く戦略ではない。CYP酵素の活性の阻害は、その同じ酵素によって代謝される他の薬物の代謝とクリアランスに影響を及ぼし得る。CYP阻害によって、他の薬物が毒性レベルまで体内に蓄積し得る。
薬物の代謝特性を改善するための潜在的に魅力のある戦略は、重水素修飾である。このアプローチでは、1つまたは複数の水素原子を重水素原子で置き換えることによって、薬物のCYP仲介代謝を遅くする、あるいは望ましくない代謝産物の形成を低減する試みがなされる。重水素は、安全、安定な、水素の非放射性同位体である。水素と比較して、重水素は、炭素とより強い結合を形成する。抜粋される事例において、重水素によって付与される結合強度は、薬物のADME特性にポジティブな影響を及ぼし、薬効性、安全性および/または耐容性を向上する潜在性が生まれる。同時に、重水素のサイズおよび形状は、水素と本質的に同じであることから、重水素による水素の置換は、水素のみ含有する元の化学物質と比較して、薬物の生化学的効力および選択性に影響を及ぼすと予想されないだろう。
過去35年間にわたって、代謝速度に対する重水素置換の効果が、ごく少ないパーセンテージの承認薬物について報告されてきた(例えば,Blake,MIら,J Pharm Sci,1975,64:367−91;Foster,AB,Adv Drug Res 1985,14:1−40(「Foster」);Kushner,DJら,Can J Physiol Pharmacol 1999,79−88;Fisher,MBら,Curr Opin Drug Discov Devel,2006,9:101−09(「Fisher」)参照)。その結果は定まらず、予測できなかった。一部の化合物に関して、重水素化は、生体内での代謝クリアランスの低減を引き起こした。他の化合物に関しては、代謝の変化はなかった。さらに他の化合物によって、代謝クリアランスの増加が実証された。重水素作用にばらつきがあることから、専門家は、有害な代謝を阻害する実行可能な薬物設計戦略としての重水素修飾に疑問を持ち、またはそれを却下した(Fosterのp.35およびFisherのp.101参照)。
重水素原子が代謝の既知の部位に組み込まれる場合でさえ、薬物の代謝特性に対する重水素修飾の効果を予測できない。重水素化薬物を実際に製造し、試験することによってのみ、その代謝速度が、非重水素化対照物と異なるのか、どのように異なるのかが決定される。例えば、Fukutoら(J.Med.Chem.1991,34,2871−76)を参照されたい。多くの薬物が、代謝の可能性があり得る複数の部位を有する。重水素置換が必要とされる部位(1つまたは複数)および、もしあれば代謝に対する効果を確かめるために必要な重水素化の程度は、それぞれの薬物で異なるだろう。
本発明は、イブルチニブの新規な誘導体、慢性リンパ性白血病、外套細胞リンパ腫および多発性骨髄腫の治療のための、開発進行中のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤に関する。イブルチニブは、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫、および自己免疫疾患の治療にも有効であり得る。本発明は、本発明の化合物を含む組成物、および上述のような疾患を治療する方法におけるかかる組成物の使用も提供する。
イブルチニブの潜在的な有益な活性にもかかわらず、前述の疾患および病状を治療するために新規な化合物が引き続き必要とされている。
定義
「治療」という用語は、疾患(本明細書で描写される疾患または障害)の発症または進行を低減し、抑制し、減弱し、減少させ、停止し、または安定化し、その疾患の重症度を減らし、またはその疾患に伴う症状を改善することを意味する。
「疾患」とは、細胞、組織、または臓器の正常な機能を損なう、または妨げる、症状または障害を意味する。
合成で使用される化学物質の起源に応じて、合成化合物において天然同位体存在度のいくらかの変化が生じることが認識される。したがって、イブルチニブの製剤は本質的に、少量の重水素化アイソトポログを含有する。この変化にもかかわらず、天然に豊富な安定な水素および炭素同位体の濃度は、本発明の化合物の安定な同位体置換の程度と比較して、低く、微々たるものである。例えば、Wada,Eら,Seikagaku,1994,66:15;Gannes,LZら,Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol,1998,119:725を参照されたい。
本発明の化合物において、特定の同位体として特に設計されていない任意の元素は、その原子のいずれかの安定同位体を表すことを意味する。別段に指定がない限り、位置が具体的に「H」または「水素」と指定されている場合には、その位置は、その天然存在度の同位体組成にて水素を有すると理解される。また、別段の指定がない限り、位置が具体的に「D」または「重水素」と指定されている場合には、その位置は、0.015%である重水素の天然存在度よりも少なくとも3000倍高い存在度で重水素を有すると理解される(つまり、重水素の少なくとも45%の取り込み)。
本明細書で使用される「同位体濃縮係数」という用語は、同位体存在度と、指定の同位体の天然存在度との比を意味する。
他の実施形態において、本発明の化合物は、少なくとも3500(指定される各重水素原子にて重水素取り込み52.5%)、少なくとも4000(重水素取り込み60%)、少なくとも4500(重水素取り込み67.5%)、少なくとも5000(重水素75%)、少なくとも5500(重水素取り込み82.5%)、少なくとも6000(重水素取り込み90%)、少なくとも6333.3(重水素取り込み95%)、少なくとも6466.7(重水素取り込み97%)、少なくとも6600(重水素取り込み99%)、または少なくとも6633.3(重水素取り込み99.5%)の、指定される各重水素原子の同位体濃縮係数を有する。
「アイソトポログ」という用語は、その化学構造が、その同位体組成においてのみ本発明の特定の化合物と異なる種を意味する。
本発明の化合物を意味する場合に「化合物」という用語は、分子の構成原子の中に同位体のバリエーションがあり得ることを除いて、同一の化学構造を有する分子のコレクションを意味する。したがって、指定の重水素原子を含有する特定の化学構造によって表される化合物は、その構造における指定の重水素位置の1つまたは複数にて水素原子を有するアイソトポログも少量で含有することは当業者には明らかであるだろう。本発明の化合物におけるかかるアイソトポログの相対量は、化合物を製造するために使用される重水素化試剤の同位体純度および化合物の製造に用いられる種々の合成ステップにおける重水素の取り込み効率など、多くの因子に応じて異なる。しかしながら、上述のように、かかるアイソトポログの相対量は全体で、化合物の55%未満である。他の実施形態において、かかるアイソトポログの相対量は全体で、化合物の50%未満、47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、または0.5%未満である。
本発明は、本発明の化合物の塩も提供する。
本発明の化合物の塩は、酸と、アミノ官能基などの化合物の塩基性基との間、または塩基と、カルボキシル官能基などの化合物の酸性基との間で形成される。他の実施形態にしたがって、この化合物は、薬学的に許容される酸付加塩である。
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という表現は、健全な医学的判断の範囲内にあり、過度な毒性、刺激、アレルギー反応等なく、ヒトおよび他の哺乳動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比と釣り合う成分を意味する。「薬学的に許容される塩」とは、レシピエントに投与した場合に、本発明の化合物を直接、または間接的に提供することができる、非毒性塩を意味する。「薬学的に許容される対イオン」とは、レシピエントに投与した場合に、その塩から放出された時に毒性でない塩のイオン性部分である。
薬学的に許容される塩は、本発明の化合物の塩および塩基であってもよい。例示的な塩基としては、限定されないが、ナトリウム、カリウム、およびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛などの他の金属の水酸化物;アンモニア、未置換またはヒドロキシル置換モノ、ジまたはトリアルキルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの有機アミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチルアミン、N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−、またはトリス−(2−OH−(C1−C6)−アルキルアミン)、例えばN,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン;N−メチル−D−グルカミン;モルホリン;チオモルホリン;ピペリジン;ピロリジン;およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸等が挙げられる。
本発明の化合物(例えば、式Iの化合物)は、例えば、重水素置換または他の結果として、不斉炭素原子を含有し得る。本発明の化合物はそれ自体で、個々の鏡像異性体として、または2つの鏡像異性体の混合物として存在し得る。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物または非ラセミ混合物のいずれかとして、または他の可能性のある立体異性体を実質的に含有しない個々のそれぞれの立体異性体として存在し得る。本明細書で使用される「他の立体異性体を実質的に含有しない」という用語は、存在する他の立体異性体の25%未満、好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満、最も好ましくは2%未満を意味する。所定の化合物の個々の鏡像異性体を得る、または合成する方法は当技術分野で公知であり、最終化合物に対して、または出発原料もしくは中間体に対して実行可能なものとして適用され得る。
別段の指定がない限り、開示される化合物が、立体化学を特定することなく構造によって名付けられるか、または表され、1つまたは複数のキラル中心を有する場合には、化合物の可能性のあるすべての立体異性体を表すと理解される。
本明細書で使用される「安定性化合物」という用語は、その製造を可能にするのに十分な安定性を有し、かつ本明細書に詳述される目的(例えば、治療薬への製剤化、治療化合物の製造に使用される中間体、分離可能なまたは保管可能な中間体化合物、治療薬に対して反応性の疾患または症状の治療)に対して有用であるのに十分な期間、化合物の完全性を維持する、化合物を意味する。
「D」と「d」のどちらも重水素を意味する。「dx-y」とは、x〜y個の重水素原子での置換を意味する。「立体異性体」とは、鏡像異性体とジアステレオマーの両方を意味する。「Tert」および「t−」はそれぞれ、第3級を意味する。「US」は、アメリカ合衆国を意味する。
相当する数の置換原子(置換基が原子である場合)または相当する数の置換基(置換基が基である場合)で、その基の1つまたは複数の水素原子が置換されている場合には、基が置換基「で置換されている」。例えば、「重水素で置換されている」とは、相当する数の重水素原子での1つまたは複数の水素原子の置換を意味する。
本明細書全体を通して、変数は、一般的に呼ばれるか(例えば、「Yがそれぞれ」)、または具体的に呼ばれる(例えば、Y1、Y2、Y3等)。別段の指定がない限り、変数が一般的に呼ばれる場合、その特定の変数のすべての具体的な実施形態を包含することを意味する。
治療化合物
一実施形態における本発明は、式Iの化合物:
Figure 0006261580
またはその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、少なくとも1つのYが重水素であることを条件として、Yはそれぞれ独立して、水素および重水素から選択される。
式Iの化合物の一実施形態において、Y12、Y13、およびY14はそれぞれ、水素である。この実施形態の一態様において、Y5は水素である。他の態様において、Y5は重水素である。この実施形態の一態様において、Y1はそれぞれ、水素である。この実施形態の他の態様において、Y1はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y2はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y2はそれぞれ重水素である。この実施形態の一態様において、Y3はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y3はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y12、Y13、およびY14はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y5は水素である。他の態様において、Y5は重水素である。この実施形態の一態様において、Y1はそれぞれ、水素である。この実施形態の他の態様において、Y1はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y2はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y2はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y3はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y3はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y5は水素である。この実施形態の一態様において、Y1はそれぞれ、水素である。この実施形態の他の態様においてY1はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y2はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y2はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y3はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y3はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y5は重水素である。この実施形態の一態様において、Y1はそれぞれ、水素である。この実施形態の他の態様において、Y1はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y2はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y2はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y3はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y3はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y1はそれぞれ、水素である。この実施形態の一態様において、Y2はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y2はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y3はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y3はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y1はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y2はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y2はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y3はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y3はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y2はそれぞれ、水素である。この実施形態の一態様において、Y3はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y3はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y2はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y3はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y3はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y3はそれぞれ、水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y3はそれぞれ、重水素である。この実施形態の一態様において、Y4はそれぞれ、水素である。他の態様において、Y4はそれぞれ、重水素である。
式Iの化合物の一実施形態において、Y4はそれぞれ、水素である。他の実施形態において、Y4はそれぞれ、重水素である。
上記の実施形態または態様のいずれかの一実施形態において、または一態様において、Y2はそれぞれ、水素であり、Y4はそれぞれ、水素である。他の実施形態または態様において、Y2はそれぞれ、重水素であり、Y4はそれぞれ、重水素である。
上記の実施形態または態様のいずれかの一実施形態において、または一態様において、Y7はそれぞれ、水素であり、Y8はそれぞれ、水素である。他の実施形態または態様において、Y7はそれぞれ、重水素であり、Y8はそれぞれ、重水素である。
さらに他の実施形態において、その化合物は、表1(以下の)に示す化合物(Cmpd)のいずれか1つから選択される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩であり、重水素と指定されていないいずれかの原子が、その天然同位体同位体存在度で存在する。
Figure 0006261580
実施形態の他のセットにおいて、上記の実施形態、態様または実施例のいずれかにおける重水素と指定されていないいずれかの原子が、その天然同位体同位体存在度で存在する。
式Iの化合物の合成は、本明細書に開示される例示的な合成および実施例を参照することによって、当技術分野の合成化学者によって容易に達成される。式Iの化合物およびその中間体の製造に使用される手順と類似する関連手順が、例えば米国特許第7732454号明細書に開示されている。
相当する重水素化、任意選択的に他の同位体含有試剤および/または中間体を用いて、または同位体原子を化学構造に導入するのに当技術分野で公知の標準合成プロトコルを用いて、かかる方法を行い、本明細書に描かれる化合物を合成することができる。
例示的な合成
スキーム1は、式Iの化合物を製造する例示的手順を提供する。
スキーム1.式Iの化合物の合成:
Figure 0006261580
スキーム1に示すように、適切に重水素化された2は、Zhengying,P.ら,Chem.Med.Chem.2007,2,58−61に類似の手法でミツノブ(Mitsunobu)反応条件下にて適切に重水素化された3と反応し、4が得られる。米国特許出願公開第20080108636号明細書と同様に、4を脱保護し、続いて適切に重水素化された5でアシル化し、式Iの化合物が形成される。
スキーム2は、スキーム1で使用される式2の化合物を製造する例示的手順を示す。
スキーム2.化合物2の合成(スキーム1):
Figure 0006261580
スキーム2に示すように、国際公開第2012003544号パンフレットに記載される手順と類似の手順を用いて、6で出発して2が製造される。適切に重水素化された7と共に6を加熱し、8が得られ、それをN−ヨードスクシンイミドと共に加熱して9が得られる。9を10と反応させて、2が生成される。7の重水素化実施例、化合物7a(スキーム2の挿入図に示される)は市販されている。
スキーム3は、スキーム2で使用される式10の化合物を製造する例示的手順を示す。
スキーム3.化合物10の合成(スキーム2):
Figure 0006261580
スキーム3に示すように、国際公開第2006125208号パンフレットに記載される手順と類似の手順を用いて、適切に重水素化された11を適切に重水素化された12で処理し、17が生成される。17をBuLiで処理し、続いてB(OiPr)3で処理して、10が生成される。11の重水素化実施例、化合物11a(スキーム3の挿入図に示される)は市販されている。12の重水素化実施例、化合物12a(スキーム3の挿入図に示される)は市販されている。11aおよび/または12aをスキーム3で用いて、化合物10a、10bおよび10cが得られる。
スキーム4aは、スキーム1で使用される化合物3aを製造する例示的手順を示す。
スキーム4a.3a、化合物3の実施例の製造(スキーム1):
Figure 0006261580
スキーム4に示すように、13をDCl/D2Oで処理して14aが生成され、それをBD3で処理して、15aが生成される。15aのキラル分割に続いてBoc保護基の導入は、国際公開第2004072086号パンフレットに記載される手法と類似の手法で達成され、3aが生成される。
スキーム4bは、スキーム1で使用される化合物3b〜3hを製造する例示的手順を提供する。
スキーム4b.3b〜3h、化合物3(Y2=Y4)の実施例の製造(スキーム1):
Figure 0006261580
それぞれの場合で式IにおいてY4およびY2に相当する位置が同じである、化合物3b〜3hは、スキーム4bに示すように製造される。経路(i)に従って、Y4がそれぞれ、Y2がそれぞれ重水素である場合に、Sabot,C.ら,J.Org.Chem.2007,72,5001−5004に記載の手順と類似の手順を用いて、18が19に転化される。19をNaBY5 4で処理し、続いてBY1 3で処理して、15(i)が形成される。15(i)のキラル分割に続いて、Boc保護基の導入は、国際公開第2004072086号パンフレットに記載の手法と類似の手法で達成され、3(i)が生成される。経路(ii)に従って、Y4がそれぞれ、Y2がそれぞれ水素である場合に、18をNaBY5 4で処理し、続いてBY1 3で処理して、15(ii)が生成される。15(ii)のキラル分割に続いて、Boc保護基の導入は、国際公開第2004072086号パンフレットに記載の手法と類似の手法で達成され、3(ii)が生成される。経路(i)を用いて、化合物3b〜3eを製造することができ、経路(ii)を用いて、化合物3f〜3hを製造することができる(スキーム4bの挿入図にすべて示す)。
スキーム5は、スキーム1で使用される化合物5aを製造する例示的手順を提供する。
スキーム5.化合物5a、化合物5の実施例の製造(スキーム1):
Figure 0006261580
スキーム5に示すように、国際公開第2009005937A1号パンフレットに記載の手法と類似の手法で、市販の16を塩化オキサリルで処理して5aが得られる。
上記に示す具体的なアプローチおよび化合物は、制限されることを意図しない。本明細書のスキームにおける化学構造は、同じ変数名(つまり、R1、R2、R3等)によって同定されようと、そうでなかろうと、本明細書における化合物式における相当する位置の化学基の定義と同等に定義される変数を表す。他の化合物の合成で使用される化学構造中の化学基の適性は、当業者の知識の範囲内にある。
本明細書におけるスキームで明示されていない経路内の方法など、式Iの化合物およびその合成前駆物質を合成するための更なる方法は、当技術分野の化学者の手段の範囲内にある。該当する化合物の合成に有用な、合成化学変換および保護基の方法論(保護および脱保護)は当技術分野で公知であり、例えばLarock R,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);Greene,TWら,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley and Sons(1999);Fieser,Lら,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);およびPaquette,L,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)およびその次の版に記述される方法などが挙げられる。
本発明によって描かれる、置換基と変数の組み合わせは、安定な化合物が形成される結果となる組み合わせだけである。
組成物
本発明は、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、または前記化合物の薬学的に許容される塩;および薬学的に許容される担体;を含む医薬組成物も提供する。担体は、製剤の他の成分と適合性であるという意味で「許容される」ということであり、薬学的に許容される担体の場合には、薬物中に使用される量にてそのレシピエントに有害ではないということである。
本発明の医薬組成物において使用され得る、薬学的に許容される担体、補助剤および賦形剤としては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースとする物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
必要であれば、当技術分野でよく知られている方法によって、医薬組成物における本発明の化合物の溶解性およびバイオアベイラビリティを高めることができる。一つの方法としては、製剤における脂質賦形剤の使用が挙げられる。「Oral Lipid−Based Formulations:Enhancing the Bioavailability of Poorly Water−Soluble Drugs(Drugs and the Pharmaceutical Sciences)」,David J.Hauss,ed.Informa Healthcare,2007;および「Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery:Basic Principles and Biological Examples」,Kishor M.Wasan,ed.Wiley−Interscience,2006を参照のこと。
バイオアベイラビリティを高めるための他の既知の方法は、LUTROL(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)などのポロキサマー、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーと共に任意に製剤化された本発明の化合物の非晶質形を使用する方法である。米国特許第7,014,866号明細書;および米国特許出願公開第20060094744号明細書および米国特許出願公開第20060079502号明細書を参照のこと。
本発明の医薬組成物は、経口、経直腸、経鼻、局所(口腔および舌下など)、経膣、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内など)投与に適した組成物を包含する。特定の実施形態において、本明細書における式の化合物は、経皮投与される(例えば、経皮パッチまたはイオン導入技術を用いて)。他の製剤は便利なことに、単位剤形で、例えば錠剤、徐放性カプセルで、およびリポソームで存在することができ、薬学分野でよく知られているいずれかの方法によって製造することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD(20th ed.2000)を参照のこと。
かかる製造方法は、1種または複数種の補助成分を構成する担体などの成分を、投与すべき分子と会合(association)させるステップを含む。一般に、その組成物は、活性成分を液体担体、リポソーム、または微細化固形担体、またはその両方と均一かつ密に会合し、次いで必要であれば、生成物を成形することによって製造される。
特定の実施形態において、化合物は経口投与される。経口投与に適した本発明の組成物は、それぞれが所定量の活性成分を含有する、カプセル、サッシェ、または錠剤などの個々の単位として;粉末または顆粒;水溶液または非水溶液中の溶液または懸濁液;水中油型液体エマルジョン;油中水型液体エマルジョン;リポソームに封入された状態;またはボーラス等として存在し得る。ソフトゼラチンカプセルは、かかる懸濁液を封入するのに有用であり、化合物の吸収速度が有利に高められる。
経口投与用の錠剤の場合には、通常使用される担体としては、ラクトースおよびコーンデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も一般に、添加される。カプセル剤形での経口投与に関して、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁液が経口投与される場合、活性成分が乳化剤および懸濁化剤と合わせられる。所望の場合には、特定の甘味剤および/または着香剤を添加してもよい。
経口投与に適した組成物としては、香味ベースに成分、通常ショ糖およびアカシアまたはトラガカントゴムを含むトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアなどの不活性ベースに活性成分を含む口中錠が挙げられる。
非経口投与に適した組成物としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および意図するレシピエントの血液との等張性を製剤に付与する溶質を含有し得る、水性および非水性滅菌注入溶液;懸濁化剤および増粘剤を含有し得る、水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、1回量または複数回量容器中に、例えば密閉されたアンプルおよびバイアル中に存在することができ、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水を添加することのみ必要な、凍結乾燥条件で保管され得る。即時調合注入溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
かかる注入溶液は、注射可能な滅菌水性または油性懸濁液の形をとり得る。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween80など)および懸濁化剤を使用して、当技術分野で公知の技術に従って製剤化され得る。注射可能な滅菌製剤は、非経口的に許容可能な非毒性希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。用いてもよい許容可能な賦形剤および溶媒の中では、マンニトール、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、滅菌固定油が従来から、溶媒または懸濁媒体として用いられている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどのいずれかのブランドの固定油を使用してもよい。オリーブ油またはヒマシ油、特にそのポリオキシエチル化形など、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸が、薬学的に許容される天然オイルであるため、注射剤の製造に有用である。これらのオイル溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含有し得る。
本発明の医薬組成物は、経直腸投与用の坐剤の形で投与され得る。これらの組成物は、室温で固体であるが、直腸温度で液体であり、したがって直腸内で融解して活性成分を放出する、適切な非刺激性賦形剤と本発明の化合物を混合することによって製造することができる。かかる材料としては、限定されないが、カカオ脂、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
本発明の医薬組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。かかる組成物は、医薬製剤の分野でよく知られている技術に従って製造され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高める吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当技術分野で公知の他の可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製され得る。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡された、Rabinowitz JDおよびZaffaroni ACの米国特許第6,803,031号明細書を参照のこと。
所望の治療が局所適用によって容易にアクセス可能な部位または臓器を含む場合に、本発明の医薬組成物の局所投与は特に有用である。一般に皮膚への局所適用の場合には、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解された活性成分を含有する適切な軟膏と共に製剤化されるべきである。本発明の化合物の局所投与用担体としては、限定されないが、鉱油、液体石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化用ワックス、および水が挙げられる。その代わりとして、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解された活性化合物を含有する適切なローションまたはクリームと共に製剤化することができる。適切な担体としては、限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられる。本発明の医薬組成物は、直腸坐剤製剤によって、または適切な浣腸製剤で、下部腸管に局所適用もされ得る。経皮パッチおよびイオン導入の局所投与もまた、本発明に含まれる。
対象の治療の適用は、対象となる部位に投与されるように局所的であり得る。例えば、注入、カテーテル、トロカール、発射物(projectile)、プルロニックゲル、ステント、徐放性ポリマーまたは内部アクセスを提供する他のデバイスの使用など、対象となる部位で対象に組成物を提供する様々な技術を使用することができる。
このように、他の実施形態に従って、本発明の化合物は、埋め込み型医療器具、例えばプロテーゼ、人工弁、代用血管、ステントまたはカテーテル等をコーティングするための組成物中に組み込まれ得る。適切なコーティングおよびコーティングされた埋め込み型デバイスの一般的な製造は当技術分野で公知であり、米国特許第6,099,562号明細書;米国特許第5,886,026号明細書;および米国特許第5,304,121号明細書に例示されている。このコーティングは、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびその混合物などの生体適合性ポリマー材料である。このコーティングは任意に、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質またはその組み合わせの適切なトップコートによってさらに覆われ、組成物に放出制御特性が付与される。侵襲性デバイスのコーティングは、それらの用語が本明細書で使用される場合には、薬学的に許容される担体、補助剤または賦形剤の定義内に包含される。
他の実施形態に従って、本発明は、前記デバイスを上述のコーティング組成物と接触させるステップを含む、埋め込み型医療器具をコーティングする方法を提供する。デバイスのコーティングは、哺乳動物に埋め込む前に行われることは当業者には明らかであるだろう。
他の実施形態に従って、本発明は、前記薬物放出デバイスを本発明の化合物または組成物と接触させるステップを含む、埋め込み型薬物放出デバイスを含浸する方法を提供する。埋め込み型薬物放出デバイスとしては、限定されないが、生分解性ポリマーカプセルまたは弾丸、非分解性、拡散性ポリマーカプセルおよび生分解性ポリマーウエハーが挙げられる。
他の実施形態に従って、本発明は、化合物が治療的に活性であるように、化合物で、または本発明の化合物を含む組成物でコーティングされた埋め込み型医療器具を提供する。
他の実施形態に従って、本発明は、化合物がデバイスから放出され、かつ治療的に活性であるように、化合物で、または本発明の化合物を含む組成物で含浸された埋め込み型薬物放出デバイスを提供する。
対象から取り出されたために臓器または組織がアクセス可能な場合には、かかる臓器または組織を本発明の組成物を含有する媒体に浸し、本発明の組成物を臓器上に塗布してもよいし、または本発明の組成物を他の簡便な方法で塗布してもよい。
他の実施形態において、本発明の組成物はさらに、第2治療薬を含む。その第2治療薬は、イブルチニブと同じ作用メカニズムを有する化合物を投与した場合に有利な特性を有することが知られている、または実証されている、いずれかの化合物または治療薬から選択され得る。第2作用薬は、オファツムマブ、リツキシマブ、ベンダムスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾン、ビンクリスチン硫酸塩、フルダラビン、およびアロプリノールから選択され得る。
他の実施形態において、本発明は、本発明の化合物および上述の第2治療薬のうちの1種または複数種の別々の剤形を提供し、その化合物および第2治療薬は互いに付随している。本明細書で使用される「互いに付随している」という用語は、別々の剤形が共に包装されるか、または互いに付属していることを意味し、別々の剤形が、販売され、共に投与される(連続的に、または同時に互いに24時間未満以内に)ことが意図されることは容易に理解される。
本発明の医薬組成物において、本発明の化合物は有効量で存在する。本明細書で使用される、「有効量」という用語は、適切な投与計画において投与された場合に、対象の障害を治療するのに十分な量を意味する。
動物およびヒトに対する投薬量の相互関係(体表面の平方メートル当たりのミリグラムに基づく)は、Freireichら,Cancer Chemother.Rep,1966,50:219に記述されている。体表面積は、対象の身長および重量から概算で決定され得る。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,N.Y.,1970,537を参照のこと。
一実施形態において、本発明の化合物の有効量は、1日1回投与される場合に、1mg/kg〜50mg/kg、例えば2.5〜50mg/kg、例えば2.5〜25mg/kg、例えば5〜25mg/kgの範囲であり得る。
一実施形態において、本発明の化合物の有効量は、1日2回投与される場合に、1〜50mg/kg、例えば2.5〜50mg/kg、例えば2.5〜25mg/kg、例えば5〜25mg/kgの範囲であり得る。
一実施形態において、本発明の化合物の有効量は、50〜5000mg、例えば100〜2500mg、例えば100〜2250mg、例えば150〜2250mg、例えば180〜2250mg、例えば300〜100mg、例えば350〜800mg、例えば400〜600mgの範囲、例えば450mgであることができ、1日1回投与することができる。
当業者によって認識されているように、有効用量もまた、治療される疾患、疾患の重症度、投与経路、対象の性別および全身の健康状態、賦形剤の使用量、他の治療的処置との同時使用の可能性、例えば他の作用薬の使用、および治療する医師の判断に応じて変化する。
第2治療薬を含む医薬組成物に関して、第2治療薬の有効量は、その作用薬のみを使用した単独療法で通常用いられる投薬量の約20〜100%である。好ましくは、有効量は、通常の単独療法用量の約70〜100%である。これらの第2治療薬の通常の単独療法の投薬量は、当技術分野でよく知られている。例えば、それぞれ参考文献の全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wellsら,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)を参照のこと。
上記で参照される第2治療薬の一部が、本発明の化合物と相乗的に作用することが予想される。これが起こる場合には、第2治療薬および/または本発明の化合物の有効投薬量を単独両方で必要な量から減らすことが可能となる。これは、本発明の化合物の第2治療薬の毒性作用を最低限に抑える利点、有効性の相乗効果的向上、投与または使用の容易さの向上、または化合物製造または製剤化の全体的な費用の低減を有する。
治療方法
他の実施形態において、本発明は、本明細書における式Iの化合物と細胞を接触させることを含む、細胞中のBTKを阻害する方法を提供する。
他の実施形態に従って、本発明は、慢性リンパ性白血病などの白血病;外套細胞リンパ腫などのリンパ腫;多発性骨髄腫などの骨髄腫;および自己免疫疾患;からなる群から選択される疾患を治療する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む。一実施形態において、その疾患は、慢性リンパ性白血病、外套細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および自己免疫疾患からなる群から選択される。
かかる治療が必要な対象の同定は、対象または医療専門家の判断にあり、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験または診断法によって測定可能)であり得る。一実施形態において、対象は患者である。
他の実施形態において、上記の治療方法のいずれかは、1種または複数種の第2治療薬を、それを必要とする対象に同時投与する更なるステップを含む。第2治療薬の選択は、イブルチニブと同時投与するのに有用であることが知られている、いずれかの第2治療薬からなされる。第2治療薬の選択は、治療すべき特定の疾患または症状にも依存する。本発明の方法で用いることができる第2治療薬の例は、本発明の化合物と第2治療薬を含む併用組成物で使用される、上記の治療薬である。かかる作用薬としては、限定されないが、オファツムマブ、リツキシマブ、ベンダムスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾン、ビンクリスチン硫酸塩、フルダラビン、およびアロプリノールが挙げられる。
本明細書で使用される「同時投与」という用語は、単回剤形(上述の本発明の化合物と第2治療薬を含む本発明の組成物など)の一部として、または別々の複数回剤形として、本発明の化合物と共に第2治療薬が投与されることを意味する。その代わりとして、更なる作用薬は、本発明の化合物の投与前、本発明の化合物の投与と連続的に、または本発明の化合物の投与後に投与され得る。かかる併用治療において、本発明の化合物と第2治療薬の両方が従来の方法によって投与される。本発明の化合物と第2治療薬の両方を含む本発明の組成物の対象への投与は、治療過程中の他の時点での前記対象への、同じ治療薬、他のいずれかの第2治療薬または本発明のいずれかの化合物の別々の投与を除外する。
有効量のこれらの第2治療薬は当業者によく知られており、投与のガイダンスは、参照により本明細書に組み込まれる特許および公開特許出願、ならびにWellsら,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,TarasconPublishing,Loma Linda,Calif.(2000)、および他の医療テキストに記載されている。しかしながら、第2治療薬の最適な有効量範囲を決定することは当業者の範囲内に十分にある。
本発明の一実施形態において、第2治療薬が対象に投与される場合に、本発明の化合物の有効量は、第2治療薬が投与されない場合に考えられるその有効量よりも少ない。他の実施形態において、第2治療薬の有効量は、本発明の化合物が投与されない場合に考えられるその有効量よりも少ない。このように、いずれかの作用物質の高用量に伴う、望ましくない副作用が最低限に抑えられる。他の潜在的な利点(制限されないが、投与計画の改善および/または薬物費用の低減など)は当業者には明らかであるだろう。
さらに他の態様において、本発明は、対象において上記の疾患、障害または症状を治療または予防のための薬物製造において、式Iの化合物の単独での使用、または単一組成物として、または別々の剤形としての、上述の第2治療のうちの1種または複数種との使用を提供する。本発明の他の態様は、対象における本明細書に記述される疾患、障害または症状の治療または予防に使用される式Iの化合物である。
実施例1.(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1イル)ピペリジン−1イル)プロプ−2−エン−2,3,3−d3−1−オン(化合物122)の合成
スキーム5.化合物122の製造
Figure 0006261580
ステップ1.3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(31)
1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン、30(5.0g,37mmol,1当量)をDMF(100mL)に懸濁し、N−ヨードスクシンイミド(NIS)(10.7g,45mmol,1.2当量)を添加した。反応を80℃で2時間加熱した。反応を室温に冷却し、次いで0℃に冷却し、水(200mL)を一滴ずつ添加してクエンチした。得られた固形物を濾過によって回収し、水および冷たいエタノールで洗浄し、真空オーブンで乾燥させて、ベージュ色の固形物として31(8.1g,収率84%)が得られた。
ステップ2.フェノキシフェニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(33)
化合物31(4.0g,15.3mmol,1当量)、ボロン酸32(6.56g,30.7mmol,2当量)、および三塩基性リン酸カリウム一水和物(10.56g,45.9mmol,3当量)をジオキサン(50mL)および水(20mL)に溶解した。混合物を窒素で20分間スパージし、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(2.70g,2.3mmol,0.15当量)を添加した。混合物を窒素でさらに5分間スパージし、次いで還流で24時間加熱した。反応を室温に冷却し、一晩攪拌し、ベージュ色の沈殿物が得られた。反応混合物を水(50mL)で希釈し、固形物を濾過によって回収した。粗生成物をメタノール(150mL)で粉砕し、純度85%の生成物3.9gが得られた。その純度は、酢酸エチル(100mL)で粉砕することによってさらに向上し、ベージュ色の固形物として33(3.6g,収率77%,純度90%)が得られた。
ステップ3.(R)−t−ブチル3−(4−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(35)
化合物33(1.80g,5.9mmol,1当量)、保護ピペリジン、34(1.43g,7.1mmol,1.2当量)、トリフェニルホスフィン(2.33g,8.9mmol,1.5当量)、およびジイソプロピルアゾジカルボキシレート(1.80g,8.9mmol,1.5当量)をTHF(200mL)に溶解し、室温で一晩攪拌した。反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(1×300mL)およびブライン(1×300mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下にて濃縮した。未精製材料をシリカゲルに吸着し、ジクロロメタン中の0〜8%メタノールで溶出するAnalogix自動クロマトグラフィーシステムを使用して精製した。生成物を含有するすべての画分を合わせ、上記の条件を用いて、再びクロマトグラフを行い、白色の泡状で35(1.1g,収率38%)を得た。
ステップ4.(R)−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン塩酸塩(36)
化合物35(700mg,1.48mmol,1当量)をジオキサン(8mL)に溶解した。ジオキサン中の塩化水素の溶液(ジオキサン中の4N溶液4mL,16mmol,10.7当量)を添加し、反応を室温で一晩攪拌した。その反応をジエチルエーテル(20mL)で希釈し、窒素ストリーム下にて濾過することによって、得られた固形物を回収した。生成物を真空オーブン内でさらに乾燥させ、白色の固形物として36(550mg,収率88%)を得た。
ステップ5.(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1イル)ピペリジン−1イル)プロプ−2−エン−2,3,3−d3−1−オン(化合物122)
A)DMF(0.003mL,0.03mmol,0.02当量)を市販のアクリル酸−d4(126mg,1.66mmol,1当量,D99原子%)に添加し、続いて塩化オキサリル(0.16mL,1.83mmol,1.1当量)を添加した。混合物を30分間攪拌し、その時点ですべてのガスの発生が止まっていた。得られた塩化アクリロイル−d3(37)自体を使用した。
B)20mLバイアル中で、ジクロロメタン(10mL)中の36(450mg,1.06mmol,1当量)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.46mL,3.18mmol,3当量)を添加した。反応を15分間攪拌し、その結果、透明な溶液が得られた。塩化アクリロイル−d3(37)(0.10mL,1.17mmol,1.1当量,上記で製造された)を次いで添加し、反応を室温で2時間攪拌した。反応混合物をジクロロメタン(50mL)で希釈し、5%クエン酸(50mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下にて濃縮した。ジクロロメタン中の0〜8%メタノールで溶出するAnalogix自動クロマトグラフィーシステムを使用して、未精製材料を精製した。生成物を含有するすべての画分を合わせ、濃縮し、無色のフィルムが形成され、それをベンゼン/メタノール(5mL)に溶解し、凍結乾燥させて、白色粉末として化合物122(170mg,収率36%,[M+H]+=444.3)が得られた。
実施例2.(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1イル−6−d1)ピペリジン−1イル)プロプ−2−エン−1−オン(化合物110)の合成
スキーム6.化合物110の製造
Figure 0006261580
ステップ1.1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン−3,6−d2(30a)
2L Parr bomb反応器に、30(5.0g,37mmol,1.0当量)、10%炭素担持パラジウム(500mg,乾燥)、およびD2O(1L,D99.8原子%)を装入した。反応器を排気し、水素で3回充填した。最終的に水素を20psiに充填した後、混合物を室温で30分間攪拌した。次いで、水素を排気し、窒素に置き換えた。反応器を140℃で32時間加熱し、その時点で、MS分析によって決定されるように反応は完了していた。反応を室温に冷却し、3L丸底フラスコに移した。濃HCl(15mL)を添加し、混合物を加熱して還流した。固形生成物すべてが溶解したら、混合物をセライトのパッドを通して熱い状態で濾過し、水で洗浄した。まだ熱い間に、濾液のpHを濃水酸化アンモニウムでpH8に調整した。濾液を室温に冷却し、減圧下で元の体積の約50%まで濃縮した。得られた白色の固形物を濾過で回収し、真空オーブン内で乾燥させて、白色の固形物として30a(2.0g,収率40%)が得られた。余分な生成物が濾液に残存した。
ステップ2.3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン−6−d1(31a)
化合物30a(1.0g,7.3mmol,1当量)をDMF(20mL)に懸濁し、N−ヨードスクシンイミド(NIS)(1.97g,8.7mmol,1.2当量)を添加した。反応を80℃で2時間加熱し、追加分のNIS(1.0g)を添加し、反応を80℃でさらに2時間加熱した。反応を室温に冷却し、次いで0℃に冷却し、水(60mL)を一滴ずつ添加することによってクエンチした。得られた固形物を濾過によって回収し、水で洗浄した。冷たいエタノール(100mL)で粉砕することによって、粗生成物を精製し、真空オーブンで乾燥させて、ベージュ色の固形物として31a(1.74g,収率91%)が得られた。
ステップ3.3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン−6−d1(33a)
化合物31a(1.74g,6.6mmol,1当量)、ボロン酸32(2.85g,13.2mmol,2当量)、および三塩基性リン酸カリウム(4.60g,19.9mmol,3当量)をジオキサン(20mL)および水(8mL)に溶解した。混合物を窒素で15分間スパージし、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.15g,1.0mmol,0.15当量)を添加した。混合物を窒素でさらに5分間スパージし、次いで還流で30時間加熱した。
反応を室温に冷却し、一晩攪拌し、ベージュ色の沈殿物が得られた。反応混合物水(60mL)で希釈し、固形物を濾過によって回収した。粗生成物をメタノール(50mL)で粉砕し、ベージュ色の固形物として33a(900mg,収率45%)を得た。
ステップ4.(R)−t−ブチル3−(4−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1イル−6−d1)ピペリジン−1−カルボキシレート(35a)
化合物33a(840mg,2.75mmol,1当量)、保護ピペリジン34(670mg,3.30mmol,1.2当量)、トリフェニルホスフィン(1.10g,4.13mmol,1.5当量)、およびジイソプロピルアゾジカルボキシレート(850mg,8.9mmol,1.5当量)をTHF(80mL)に溶解し、室温で一晩攪拌した。反応を完了させるために、追加分の34(670mg)、トリフェニルホスフィン(1.10g)、およびジイソプロピルアゾジカルボキシレート(850mg)を添加し、反応をさらに6時間攪拌した。反応混合物を減圧下にて濃縮した。未精製材料をシリカゲルに吸着し、ジクロロメタン中の0〜8%メタノールで溶出するAnalogix自動クロマトグラフィーシステムを使用して精製した。生成物を含有するすべての画分を合わせ、上記の条件を用いて、再びクロマトグラフを行い、白色固形物として35a(160mg,収率12%)を得た。その他の純度が低い画分も回収し、保持した。
ステップ5.(R)−3−(4−フェノキシフェニル)−1−(ピペリジン−3イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン−6−d1塩酸塩(36a)
化合物35a(160mg,0.33mmol,1当量)をジオキサン(10mL)に溶解した。ジオキサン中の塩化水素の溶液(ジオキサン中の4N溶液2mL,8mmol,24当量)を添加し、反応を室温で65時間攪拌した。その反応をジエチルエーテル(40mL)で希釈し、得られた固形物を窒素ストリーム下にて濾過によって回収した。生成物を真空オーブン内でさらに乾燥させて、オフホワイトの固形物として36a(100mg,収率73%)を得た。
ステップ6.(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1イル−6−d1)ピペリジン−1イル)プロプ−2−エン−1−オン(化合物110)
A)DMF(0.014mL,0.18mmol,0.02当量)をアクリル酸(0.24mL,3.5mmol,1当量)に添加し、続いて塩化オキサリル(0.33mL,3.8mmol,1.1当量)を添加した。混合物を30分間攪拌し、その時点ですべてのガスの発生が止まっていた。得られた塩化アクリロイル37a自体を使用した。
B)ジクロロメタン(2.5mL)中の36a(50mg,0.12mmol,1当量)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.050mL,0.36mmol,3当量)を添加した。反応を15分間攪拌し、その結果、透明な溶液が得られた。塩化アクリロイル、37a(0.011mL,0.13mmol,1.1当量,上記で製造された)を添加し、反応を室温で2時間攪拌し、化合物110([M+H]+=442)が得られた。
実施例3.(R)−1−(3−(4−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1イル−6−d1)ピペリジン−1イル)プロプ−2−エン−2,3,3−d3−1−オン(化合物121)の合成
スキーム7.化合物121の製造
Figure 0006261580
A)DMF(0.002mL,0.03mmol,0.02当量)を市販のアクリル酸−d4(0.10mL,1.38mmol,1当量,D99原子%)に添加し、続いて塩化オキサリル(0.12mL,1.52mmol,1.1当量)を添加した。混合物を30分間攪拌し、その時点ですべてのガスの発生が止まっていた。得られた塩化アクリロイル−d3(37)自体を使用した。
B)ジクロロメタン(2.5mL)中の36a(50mg,0.12mmol,1当量)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.050mL,0.36mmol,3当量)を添加した。反応を15分間攪拌し、その結果、透明な溶液が得られた。塩化アクリロイル−d3、37(0.011mL,0.13mmol,1.1当量,上記で製造された)を添加し、反応を室温で2時間攪拌し、化合物121([M+H]+=445)が得られた。
実施例4.中間体(S)−t−ブチル3−ヒドロキシ−2,2,3,4,4,5,5,6,6−d9−ピペリジン−1−カルボキシレート(3a)の合成。中間体3aの合成をスキーム7で示し、以下に説明する。
スキーム8.中間体3aの製造
Figure 0006261580
ステップ1.t−ブチル2−オキソ−3,3,4,4,5,5−d6−ピロリジン−1−カルボキシレート(41)
市販のピロリジン−2−オン、40(5.0g,55mmol,1当量,D98原子%)および4−ジメチルアミノピリジン(740mg,6mmol,0.11当量)をアセトニトリルに溶解し、0℃に冷却し、続いて、ジ−t−ブチルジカーボネート(24.0g,110mmol,2当量)を添加した。反応を室温に温め、一晩攪拌した。反応混合物を水(250mL)に注ぎ、一部濃縮した。水性混合物を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を1N HCl(1×200mL)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(1×200mL)、およびブライン(1×200mL)で洗浄した。その有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下にて濃縮した。ヘプタン中の20〜80%酢酸エチルで溶出するAnalogix自動クロマトグラフィーシステムを使用して、粗生成物を精製し、淡黄色の液体として41(10.1g,収率96%)が得られた。
ステップ2.4−オキソ−5−ジメチルスルホキソニウム−ペンチル−1,1,2,2,3,3−d6−カルバミン酸t−ブチルエステル(42)
ヨウ化トリメチルスルホキソニウム(7.26g,33mmol,3当量)をTHF(50mL)に溶解した。カリウムt−ブトキシド(5.09g,27.5mmol,2.5当量)を添加し、反応を還流で2時間加熱した。白色の懸濁液を室温に冷却し、41(2.1g,11.0mmol,1当量)を添加した。反応を室温で2時間攪拌し、水(80mL)を添加してクエンチした。ジクロロメタン中の10%イソプロパノール(4×100mL)で反応混合物を抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下にて濃縮した。酢酸エチル:ヘプタン(2:1)(100mL)に粗生成物を溶解し、約10mLにゆっくりと濃縮した。オフホワイトの沈殿物を濾過によって回収し、オフホワイトの固形物として42(2.2g,収率68%)を得た。1H NMRによって、3位での約50%のプロトン取り込みが示された。
ステップ3.t−ブチル3−オキソ−4,4,5,5,6,6−d6−ピペリジン−1−カルボキシレート(43)
ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(47mg,0.071mmol,0.01当量)を1,2−ジクロロエタンに溶解し、その溶液を窒素で15分間スパージし、次いで加熱して還流した。別のフラスコで、42(2.0g,7.1mmol,1当量)を1,2−ジクロロエタンに溶解し、その溶液を窒素で15分間スパージした。次いで、この溶液をシリンジポンプを使用して一滴ずつ、12時間にわたって触媒溶液に還流にて添加した。添加が完了したら、その反応を還流にてさらに1時間加熱した。反応を室温に冷却し、減圧下にて濃縮した。ヘプタン中の0〜40%酢酸エチルで溶出するAnalogix自動クロマトグラフィーシステムを使用して、粗生成物を精製し、濃い無色の液体として43(1.1g,収率76%)が得られた。1H NMRによって、4位での約50%のプロトン取り込みが示された。
ステップ4.t−ブチル3−オキソ−2,2,4,4,5,5,6,6−d8−ピペリジン−1−カルボキシレート(44)
化合物43(1.1g,5.9mmol,1当量)をクロロホルム−d(100mL,D99.8原子%)に溶解し、2,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1H−ピリミド[1,2−α]ピリミジン(81mg,0.59mmol,0.1当量)を添加した。反応を室温で16時間攪拌し、その時点で1H NMRによって、2位および4位で10%が残存していることが示された。溶媒を蒸発させ、新たなクロロホルム−dを添加し、反応をさらに16時間攪拌した。次いで、そのサイクルを3回繰り返し、その時点で反応をジクロロメタン(100mL)で希釈し、1N HCl(1×100mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下にて濃縮して、濃い無色のオイルとして44(1.1g,定量的回収)が得られた。1H NMRによって2位または4位でのプロトンシグナルは検出することができなかった。
ステップ5.t−ブチル3−ヒドロキシ−2,2,3,4,4,5,5,6,6−d9−ピペリジン−1−カルボキシレート(45)
化合物44(1.1g,5.3mmol,1当量)をメタノール−d(40mL,D99原子%)に溶解し、0℃に冷却した。重水素化ホウ素ナトリウム(245mg,5.8mmol,1.1当量,D99原子%)を添加した。反応を0℃で2時間攪拌し、次いで室温で一晩攪拌した。反応を飽和塩化アンモニウム(5mL)および水(10mL)でクエンチした。混合物を一部濃縮し、次いでジクロロメタン(4×50mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下にて濃縮した。ジクロロメタン中の0〜5%メタノールで溶出するAnalogix自動クロマトグラフィーシステムを使用して、未精製材料を精製し、静置すると固化する濃い無色のオイルとして45(0.50g,収率46%)を得た。
ステップ6.3−ヒドロキシ−2,2,3,4,4,5,5,6,6−d9−ピペリジン(15a)
化合物45(0.50g,2.4mmol,1当量)をジオキサン(5mL)に溶解し、塩化水素を添加した(ジオキサン中の4N溶液2mL,8mmol,3.3当量)。反応を室温で一晩攪拌した。次いで、粗反応を減圧下で濃縮し、24%水酸化ナトリウム水溶液(5mL)を残留物に添加した。その水溶液をジクロロメタン中の10%イソプロパノール(6×50mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下にて濃縮し、無色のフィルム状で15a(160mg,収率62%)が得られた。
ステップ6.(S)−t−ブチル3−ヒドロキシ−2,2,3,4,4,5,5,6,6−d9−ピペリジン−1−カルボキシレート(中間体3a)
A)化合物15a(1当量)および(R)−カンファースルホン酸(1当量)を2−ブタノン中で加熱して還流し、透明な溶液が得られた。室温に冷却すると、白色の固形沈殿物が得られ、それを濾過し、2−ブタノンで洗浄し、乾燥させて、15aのS鏡像異性体の(R)−CSA塩が得られた。光学純度は、2−ブタノンの第2部分中で単離固形物を加熱して還流し、冷却し、濾過し、乾燥させることによってさらに向上される。
B)15aのS鏡像異性体の(R)−CSA塩(1当量)およびトリエチルアミン(1.2当量)をジクロロメタンに溶解し、0℃に冷却した。ジ−t−ブチルジカーボネート(1.1当量)を一度に添加し、反応を室温で48時間攪拌する。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄する。有機層を乾燥させ、濾過し、濃縮する。未精製材料をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、3a(S鏡像異性体)が得られる。中間体3aは、当業者であれば容易に想像できるように、化合物110、121および122に関して本明細書に示される手法と類似の手法で、化合物107、109、118および120などの式Iの化合物(Y1、Y2はそれぞれ、Y3はそれぞれ、Y4はそれぞれ、およびY5は重水素である)の製造において有用であり得る。例えば、化合物107の製造では、主要な中間体は、化合物3a、33および37aであるだろう。化合物109の製造については、主要な中間体は、化合物3a、33aおよび37aであるだろう。化合物118の製造については、主要な中間体は、化合物3a、33および37であるだろう。化合物120の製造については、主要な中間体は、化合物3a、33aおよび37であるだろう。
実施例5.代謝安定性の評価
ミクロソームアッセイ:ヒト肝臓ミクロソーム(20mg/mL)は、Xenotech,LLC(Lenexa,KS)から入手される。β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元型(NADPH)、塩化マグネシウム(MgCl2)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)は、Sigma−Aldrichから購入される。
代謝安定性の決定:試験化合物の7.5mMストック溶液をDMSOに溶解して調製する。7.5mMストック溶液をアセトニトリル(ACN)中で12.5〜50μMに希釈する。ヒト肝臓ミクロソーム20mg/mLを、3mM MgCl2を含有する0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中で0.625mg/mLに希釈する。希釈されたミクロソームを96穴ディープウェルポリプロピレンプレートのウェルに3つ組で添加する。12.5〜50μM試験化合物のアリコート10μLをミクロソームに添加し、混合物を10分間予熱する。予熱したNADPH溶液を添加することによって、反応を開始する。最終反応容積は0.5mLであり、ヒト肝臓ミクロソーム0.5mg/mL、0.25〜1.0μM試験化合物、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中の2mM NADPHおよび3mM MgCl2を含有する。反応混合物を37℃でインキュベートし、アリコート50μLを0、5、10、20、および30分の時点で取り出し、内標準と共に氷冷のACN50μLを含有するshallow−well96穴プレートに添加し、反応を止める。プレートを4℃で20分間保管し、その後、沈殿タンパク質をペレット状にするために遠心にかける前に、水100μLをプレートのウェルに添加する。上清を他の96穴プレートに移し、Applied Bio−systems API4000質量分析計を使用してLC−MS/MSによって、残存する親の量について分析する。式Iの化合物の非重水素化対応物およびポジティブコントロール、7−エトキシクマリン(1μM)に関して、同じ手順に従う。試験は3回繰り返して行う。
データ分析:
試験化合物の生体外t1/2は、インキュベーション時間の関係に対して残存する親%の線形回帰の勾配(ln)から計算される。
生体外t1/2=0.693/k
k=−[インキュベーション時間に対する、残存する親%の線形回帰の勾配(ln)]
データ分析は、マイクロソフトのエクセルソフトウェアを使用して行われる。
さらに説明することなく、先の説明および例証的な実施例を用いて、当業者であれば、本発明の化合物を製造かつ利用し、特許請求される方法を実施することができると考えられる。上述の考察および実施例は単に、特定の好ましい実施形態の詳細な説明を表すと考えるべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者は、様々な修正を加え、同等物を製造することができることは明らかであるだろう。

Claims (12)

  1. 式Iの化合物:
    Figure 0006261580

    (式中、 、各Y 、各Y 、各Y 、およびY が重水素であ、Y 、各Y 、各Y 、各Y 、各Y 10 、Y 11 、Y 12 、Y 13 、およびY 14 が独立して、水素および重水素から選択され、重水素として指定されないいずれの原子も、その天然同位体存在度で存在する)、またはその薬学的に許容される塩。
  2. 12、Y13、およびY14がそれぞれ、水素である、請求項1に記載の化合物。
  3. 12、Y13、およびY14がそれぞれ、重水素である、請求項1に記載の化合物。
  4. がそれぞれ、水素であり、かつYがそれぞれ、水素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
  5. がそれぞれ、重水素であり、かつYがそれぞれ、重水素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
  6. 前記化合物が、以下の表:
    Figure 0006261580

    示す化合物(Cmpd)のいずれかから選択される、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩;および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を含んでなる、細胞中のBTKを阻害するための組成物
  9. 慢性リンパ性白血病、外套細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群から選択される疾患を治療するための医薬組成物であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬組成物
  10. 各指定される重水素原子における重水素取り込みが、少なくとも90%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
  11. 各指定される重水素原子における重水素取り込みが、少なくとも95%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
  12. 各指定される重水素原子における重水素取り込みが、少なくとも97%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
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