JP6259752B2 - 樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置 - Google Patents

樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置 Download PDF

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この発明は樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置に関し、より詳しくは樹脂を金型キャビティに注入して成形するときの挙動をコンピュータによるシミュレーションを介して解析するコンピュータ支援の開発支援装置(Computer Aided Engineering)用の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置に関する。
コンピュータによるシミュレーションを介して金型設計、商品設計などの開発を支援する装置としては、有限要素法、有限体積法、差分法、境界要素法などを用いて成形中の金型内樹脂流動挙動をシミュレーションする技術が、樹脂部品に対してすでに広く活用されている。
シミュレーションを行うためには、事前に樹脂物性をコンピュータへ入力しなければならない。必要な樹脂物性としては、粘度、熱伝導率、比熱、密度などがあるが、粘度は流動挙動へ著しく影響を及ぼす重要な物性といえる。
ところで、成形には、モノマーを高温に温度制御された金型内に流し込みながら、または流し込んだ後で化学反応(架橋、重合など)を伴って賦形されるプロセスもある。例えば、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を用いた成形は、架橋による硬化反応を伴う。信頼できる解析結果を得るためには、反応を生じながら時間と共に変化する粘度に対して精度良く合わせた粘度カーブフィッティング式をコンピュータへ入力した後に、金型内樹脂流動挙動をシミュレーションしなければならない。
この硬化反応を伴う樹脂を用いたシミュレーションでは、粘度が複雑に変化するため、下記の特許文献1,2に記載されているように、有限要素法などを用いて流動性樹脂の流動挙動を解析することが知られている。
特開2003−068776号 特開2014−058049号
特許文献1,2記載の技術はエポキシ樹脂などの1種類の硬化反応を生じる熱硬化性樹脂のみに対して広く活用されているが、樹脂の中には2種類の硬化反応を生じるものも存在する。例えば、原料モノマーとしてε-カプロラクタムを用いたナイロン6の合成では、第1の硬化反応(短時間側)として重合、第2の硬化反応(長時間側)として結晶化の2種類の硬化反応を生じる。従って、特許文献1,2記載の技術ではこのような複数の硬化反応を伴う樹脂に対応することができなかった。
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、複数の硬化反応を伴う樹脂を金型キャビティに注入して成形するときの挙動をコンピュータによるシミュレーションを介して解析する開発支援装置用の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置において、樹脂の粘度変化を精度良く算出し、よって流動解析側において金型キャビティでの樹脂の流動挙動を精度良く把握して適切な成形条件、金型キャビティ形状、注入口数とその配置等を見出すことを可能にした樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置を提供することにある。
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては複数の硬化反応が生じる樹脂原料成分を含む樹脂を金型キャビティに注入して成形するときの挙動をコンピュータによるシミュレーションを介して解析する開発支援装置用の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置において、前記金型キャビティに注入されるべき樹脂の示差走査熱量を測定して昇温開始からm秒後の重合による硬化反応を示す第1発熱カーブと、n(n>m)秒後の結晶化による硬化反応を示す第2発熱カーブとで合成される合成発熱カーブを測定する合成発熱カーブ測定手段と、前記測定された合成発熱カーブを前記第1発熱カーブと第2発熱カーブとに分離(算出)する第1、第2発熱カーブ分離手段と、前記分離された第1発熱カーブに基づいて前記樹脂の硬化度αを算出する硬化度算出手段と、前記樹脂の初期粘度に前記算出された硬化度αに関連した値を乗じて前記樹脂の重合による粘度ηpを算出する粘度算出手段と、前記算出された樹脂の重合による粘度ηpを前記開発支援装置に入力する入力手段とを備え、前記第1、第2発熱カーブ分離手段は、前記樹脂の示差走査熱量を測定して昇温開始からo(o>n)秒後の結晶融解による吸熱カーブを測定し、前記測定された吸熱カーブに基づいて前記第2発熱カーブを分離すると共に、前記合成発熱カーブから前記分離された第2発熱カーブを差し引くことで前記第1発熱カーブを分離する如く構成した。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、前記第1、第2発熱カーブ分離手段は、前記樹脂の示差走査熱量の測定において、前記合成発熱カーブまで昇温させた後に、一旦冷却させてから、再度昇温して前記吸熱カーブまで測定する如く構成した。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、前記粘度算出手段は、前記分離された第2発熱カーブに基づいて前記樹脂の結晶化度Xcを算出し、前記硬化度αから算出された樹脂の重合による粘度ηpに前記算出された結晶化度Xcに関連した値を乗じて前記樹脂の重合と結晶化による粘度ηpcを算出すると共に、前記入力手段は、前記算出された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpcを前記開発支援装置に入力する如く構成した。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、前記樹脂の粘度変化曲線を測定する粘度変化測定手段と、前記測定された粘度変化曲線に基づいて前記算出された樹脂の重合による粘度ηpのフィッティング精度が向上するように補正する粘度補正手段を備えると共に、前記入力手段は前記補正された樹脂の重合による粘度ηpを前記開発支援装置に入力する如く構成した。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、前記樹脂の粘度変化曲線を測定する粘度変化測定手段と、前記測定された粘度変化曲線に基づいて前記算出された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpcのフィッティング精度がさらに向上するように補正する粘度補正手段を備えると共に、前記入力手段は前記補正された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpcを前記開発支援装置に入力する如く構成した。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、前記第1、第2発熱カーブ分離手段は、前記分離された第1発熱カーブと第2発熱カーブとを再び合成して前記合成発熱カーブと一致するか否か検証する検証手段を備える如く構成した。
請求項1に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、金型キャビティに注入されるべき樹脂の示差走査熱量を測定して昇温開始からm秒後の重合による硬化反応を示す第1発熱カーブと、n(n>m)秒後の結晶化による硬化反応を示す第2発熱カーブとで合成される合成発熱カーブを測定し、測定された合成発熱カーブを第1発熱カーブと第2発熱カーブとに分離し、分離された第1発熱カーブに基づいて樹脂の硬化度αを算出し、樹脂の初期粘度に算出された硬化度αに関連した値を乗じて樹脂の重合による粘度ηpを算出すると共に、算出された樹脂の重合による粘度ηpを開発支援装置に入力し、樹脂の示差走査熱量を測定して昇温開始からo(o>n)秒後の結晶融解による吸熱カーブを測定し、測定された吸熱カーブに基づいて第2発熱カーブを分離すると共に、合成発熱カーブから分離された第2発熱カーブを差し引くことで第1発熱カーブを分離する如く構成したので、複数の硬化反応を生じる樹脂の粘度変化を適切に算出することができ、流動解析側において金型キャビティでの樹脂の流動挙動を精度良く把握して適切な成形条件、金型キャビティ形状、注入口数とその配置等を見出すことができる。また、第1、第2発熱カーブを容易に分離(あるいは算出)することができる。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、第1、第2発熱カーブ分離手段は、樹脂の示差走査熱量の測定において、合成発熱カーブまで昇温させた後に、一旦冷却させてから、再度昇温して吸熱カーブまで測定する如く構成したので、上記した効果に加え、重合、結晶化による発熱カーブの測定と、結晶融解による吸熱カーブの測定とを別々に行うことも可能となり、試験の自由度を高めることができる。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、分離された第2発熱カーブに基づいて樹脂の結晶化度Xcを算出し、硬化度αから算出された樹脂の重合による粘度ηpに算出された結晶化度Xcに関連した値を乗じて樹脂の重合と結晶化による粘度ηpcを算出すると共に、算出された樹脂の重合と結晶化によるηpcを開発支援装置に入力する如く構成したので、複数の硬化反応を生じる樹脂の粘度変化を一層適切に算出することができ、流動解析側において金型キャビティでの樹脂の流動挙動を精度良く把握して一層適切な成形条件、金型キャビティ形状、注入口数とその配置等を見出すことができる。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、樹脂の粘度変化曲線を測定し、測定された粘度変化曲線に基づいて算出された樹脂の重合による粘度ηpのフィッティング精度が向上するように補正すると共に、補正された樹脂の重合による粘度ηpを開発支援装置に入力する如く構成したので、上記した効果に加え、粘度変化を一層適切に算出することができる。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、樹脂の粘度変化曲線を測定し、測定された粘度変化曲線に基づいて算出された樹脂の重合と結晶化によるηpcのフィッティング精度がさらに向上するように補正すると共に、補正された樹脂の重合と結晶化によるηpcを開発支援装置に入力する如く構成したので、上記した効果に加え、粘度変化を一層適切に算出することができる。
請求項に係る樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置にあっては、分離された第1発熱カーブと第2発熱カーブとを再び合成して合成発熱カーブと一致するか否か検証する如く構成し、一致の程度が不十分な場合は分離を修正することができるので、上記した効果に加え、粘度変化を一層適切に算出することができる。
この発明の第1実施例に係る粘度算出機能を有する流動解析装置を用いて行われる製品設計から量産までの工程を示す説明図である。 図1に示す装置の処理を示すフロー・チャートである。 図2の処理によって得られる熱量カーブ全体の測定結果を示すデータ図である。 図2の処理によって得られる合成発熱カーブから分離された第1発熱カーブと第2発熱カーブの算出結果を示すデータ図である。 図2の処理によって得られる合成発熱カーブと吸熱カーブの測定結果を示すデータ図である。 図2の処理によって得られる合成発熱カーブから分離された第1発熱カーブと第2発熱カーブを再び合成して、元の合成発熱カーブと一致するか否か検証した結果を示すデータ図である。 図2の処理によって得られる粘度の測定結果と算出結果を示すデータ図である。 この発明の第2実施例に係る粘度算出機能を有する流動解析装置の処理を示すフロー・チャートである。 図8の処理によって得られる粘度の測定結果と算出結果を示すデータ図である。
以下、添付図面を参照してこの発明に係る粘度算出機能を有する流動解析装置を実施するための形態について説明する。
図1はこの発明の第1実施例に係る粘度算出機能を有する流動解析装置を用いて行われる製品設計から量産までの工程を示す説明図である。
図1において符号10は粘度算出機能を有する流動解析装置を示し、装置10は開発支援装置(CAE)12用の装置、より具体的には開発支援装置12の一部を構成する装置として構成される。開発支援装置12はコンピュータからなり、金型14内の樹脂流動挙動を解析するための対話形式のシミュレーションプログラム16が格納される。
金型14は上型14aと下型14bを備え、その間にキャビティ14cが形成される。キャビティ14cは上型14aに形成される注入路から樹脂20が注入機14dによって注入(充填)される。樹脂20は複数の反応性原料樹脂成分を混合させてなるモノマーからなる。キャビティ14cは減圧ポンプ14eに接続されて減圧(真空引き)可能に構成される。
開発支援装置(コンピュータ)12はディスプレイ12aとキーボードやマウスなどの入力手段12bを備え、樹脂20を金型キャビティ14cに注入して成形、より具体的にはRTM(Resin Transfer Molding)法などの成形を行うときの挙動を格納された対話形式のプログラム16によるシミュレーションを介して解析する。
粘度算出機能を有する流動解析装置10は開発支援装置12とシミュレーションプログラム16を共用すると共に、樹脂20のDSC(Differential Scanning Calorimetry。示差走査熱量)を測定するためのDSC分析器22と、樹脂20の粘度を測定するためのレオメータ24からの測定結果が送られる。尚、開発支援装置12は、コンピュータを2台以上用いて、樹脂粘度算出機能用のコンピュータで粘度変化を計算した結果を別の流動解析用のコンピュータに送り解析しても良い。また、DSC分析器22とレオメータ24は具体的には金型キャビティ14cに注入されるべき樹脂20の試料の熱量と粘度を測定する。
流動解析は具体的には製品設計から量産までの工程の一環として行われ、設計者(エンジニア)は、入力装置12bを介してデータを入力し、プログラム16に格納された指示に従い、対話形式で製品モデル26を設計する。
CAEにおいては、金型14を用いて製品製造を行う場合、設計者は先ず製品設計工程で製品モデル26を設計し、その作成した製品モデル26を使用して金型設計工程で金型モデル28を設計する。
次いで、設計者は、作成した金型モデル28を使用して金型加工データを作成し、そのデータを使用してNC加工装置30などによって金型14を製造し、製造した金型14を使用してRTM法などの成形を行うことによって製品32を製造する。
図2は粘度算出機能を有する流動解析装置10の処理を示すフロー・チャート、図3から図7はそれによって得られる発熱カーブなどの測定結果を示す説明図である。図2フロー・チャートのプログラムは開発支援装置(コンピュータ)12によって実行される。
以下説明すると、S10において樹脂20を一定昇温速度条件、例えば4℃/minで加熱しながらDSC分析器22を用いてDSC(示差走査熱量)を測定し、2種類の硬化反応が生じる際の発熱カーブaと結晶融解が生じる際の吸熱カーブdを測定する。樹脂20は具体的には、ナイロン6の合成原料モノマーとして、室温で固体顆粒状のε-カプロラクタム、触媒、重合開始剤等の混合物からなる。
図3にその測定結果を示す。同図に示す如く、70℃付近でモノマーが融解して液化することによる吸熱が、120から170℃付近で重合による発熱(第1発熱カーブb)と結晶化による発熱(第2発熱カーブc)が、200から220℃付近でポリマーの結晶が融解して液化することによる吸熱(吸熱カーブd)が見られた。
尚、この熱量カーブの測定において、樹脂を結晶化による発熱(第2発熱カーブc)まで昇温させた後、一旦冷却させ、再度昇温させた熱量カーブ測定においても、200から220℃付近で該吸熱(吸熱カーブd)が見られた。
図3において横軸は一定昇温速度で加熱したときの温度を示すことから、発熱カーブaは、時間的に先行する短時間側で(換言すれば昇温開始からm秒後に)生じる第1の硬化反応(重合)の発熱カーブbと、長時間側で(換言すれば昇温開始からn(n>m)秒後に)生じる第2の硬化反応(結晶化)の発熱カーブcとで合成される合成発熱カーブからなる。
成形は樹脂20が金型キャビティ14c内の末端まで到達できる成形条件(成形品のサイズ、樹脂20の温度、金型14の温度)の範囲で行わなければならない。つまり、樹脂20に十分な流動性が確保されている範囲内で流動(注入)を完了させる必要があるため、シミュレーションのための粘度カーブフィッティングは、先ずは粘度が十分に増加していない、換言すれば硬化反応が十分に進行していない低粘度(短時間)側の精度が重要となる。第1実施例はこの点に着目してなされた。
そこで、S12において測定された合成発熱カーブaを第1発熱カーブbと第2発熱カーブcとに分離し、第1発熱カーブbなどから硬化度α(t)を算出する。図4に分離された第1発熱カーブbと第2発熱カーブcを示す。
分離について説明すると、上記したように合成発熱カーブaのうちの低温側は重合による硬化反応が、高温側は結晶化による硬化反応が生じていることから、これらより第1発熱カーブbと第2発熱カーブcとに分離(算出)する。
即ち、第2の硬化反応である結晶化による発熱量(第2発熱カーブcの発熱量)は、より高温側(換言すれば昇温開始からo(o>n)秒後)に認められる、形成された結晶の融解による吸熱量(吸熱カーブdの吸熱量)に理論的に等しくなる。従って、合成発熱カーブaの面積をS、第1発熱カーブbの面積をS1、第2発熱カーブcの面積をS2、吸熱カーブdの面積をS3とするとき、図5に示す如く、第2発熱カーブcの面積S2は吸熱カーブdの面積S3と等しくなる。
尚、吸熱カーブdの面積S3の算出には、熱量カーブの測定において、樹脂を結晶化による発熱(第2発熱カーブc)まで昇温させた後、一旦冷却させ、再度昇温させた熱量カーブ測定で見られる吸熱(吸熱カーブd)を採用しても構わない。
第1、第2発熱カーブb,cの分離に際しては、統計学で使用される分布曲線(ガウス分布、コーシー分布など)を用いて分離する。実施例の場合、数1に示すガウス分布を用いた(μ:平均値、σ:標準偏差)。即ち、面積S2がS3と等しくなるように左右で半値幅が異なるガウス分布曲線を活用して第2発熱カーブcを算出し、合成発熱カーブaから、算出した第2発熱カーブcを差し引いて、第1発熱カーブbを算出した。尚、これらカーブ形状は左右対称でないことも多いので、左右で半値幅が異なるような分布曲線を用いても良い。
Figure 0006259752
このように、S12においては測定された合成発熱カーブaを第1発熱カーブbと第2発熱カーブcとに分離する。
より具体的には、DSC分析器22を用いて樹脂20の示差走査熱量を測定し、昇温開始からm秒後に生じる第1の硬化反応である重合による第1発熱カーブbとn(n>m)秒後に生じる第2の硬化反応である結晶化による第2発熱カーブcとからなる合成発熱カーブaと、o(o>n)秒後に生じる結晶融解による吸熱カーブdを測定する。次に、合成発熱カーブaを第1発熱カーブbと第2発熱カーブcとに分離する。まず、第2発熱カーブcの面積S2(発熱量)が、吸熱カーブdの面積S3(吸熱量)に等しく、かつ、図5のように合成発熱カーブaの高温側と第2発熱カーブcの高温側がほぼ一致するように分布曲線(式1−1)を設定して第2発熱カーブcを算出する。さらに、算出した第2発熱カーブcを合成発熱カーブaから差し引くことで、第1発熱カーブbが算出される。この手順により第1発熱カーブbと第2発熱カーブcの分離が行われる。
S12の処理においては、次いで、算出された第1発熱カーブbなどから硬化度α(t)を算出する。
数2の式2−1(所定の式(1))に硬化度α(t)などを用いて粘度ηp(t)を求める粘度カーブフィッティング式を示す。式2−1の初期粘度ηtp(T,γドット)は式2−2から求められ、硬化反応速度dα/dtは式2−3で表される。
Figure 0006259752
数2においてηp:樹脂の重合による粘度、ηtp:初期粘度、t:時間、T:温度、γドット:せん断速度、αgel;ゲル化点における硬化度、α:硬化度、E1,E2,E3,F1,C1,C2,C3,A1,A2,m,nは樹脂の反応粘度パラメータである。
このように、第1発熱カーブbと式2−3とから重合のみによる硬化度α(t)を算出する。それらデータに式2−3を適用することで、A1,A2,E1,E2,m,nなど各パラメータの最適値が求まる。
またS12の処理においては、合成発熱カーブaを第1、第2発熱カーブb,cに分離した後、図6に示す如く、分離された第1発熱カーブbと第2発熱カーブcとを再び合成して合成発熱カーブa’を作成し、測定された(図3に示す)合成発熱カーブaと一致するか否か検証する。
図2フロー・チャートにあっては次いでS14に進み、レオメータ24を用い、等温加熱かつ一定せん断速度の条件で樹脂20の粘度データの経時変化を測定する。図7に測定された粘度データの経時変化を示す。
次いでS16に進み、分離した第1発熱カーブbから数2の式2−3を用いて算出された硬化度α(t)を式2−1(所定の式(1))に代入し、樹脂20の重合による粘度ηp(t)を算出する。式2−1は、概括すると、初期粘度ηtp(T,γドット)に算出された硬化度αに関連した値を乗じることで、重合により硬化した樹脂20の重合による粘度ηp(t)を算出するように構成される。
このとき、式2−1で算出される粘度カーブが図7に示す実測データに合うように、数2の式(式2−1,2−2,2−3)のA1,A2,C1,C2,C3,E1,E2,E3,F1,m,nなど各パラメータを決めて粘度カーブフィッティング(曲線あてはめ)を行う。
図7に実施例による粘度カーブフィッティング結果を示す。同図において実線が測定値、破線が第1発熱カーブbから算出されたフィッティング値である。参考までに、一点鎖線で第1発熱カーブbと第2発熱カーブcから算出されたフィッティング値(第2実施例で後述)も示す。図7に示す場合、樹脂20の温度が110℃と低く、第1の硬化反応である重合しか生じていないため、フィッティング値が測定値と経時的に良く一致することが確認された。
次いでS18に進み、算出された樹脂の重合による粘度ηp(t)を開発支援装置12に入力し、コンピュータによるシミュレーションを通じて金型キャビティ14c内の樹脂流動挙動を解析する。
この実施例は上記の如く構成したので、複数の硬化反応を生じる樹脂20の粘度変化を適切に算出することができ、流動解析側において金型キャビティ14cでの樹脂の流動挙動を精度良く把握して適切な成形条件、金型キャビティ形状、注入口数とその配置等を見出すことができる。
図8はこの発明の第2実施例に係る粘度算出機能を有する流動解析装置10の処理を示す、図2と同様のフロー・チャートである。
尚、第2実施例に係る粘度算出機能を有する流動解析装置10の構成は、図1に示す第1実施例と異ならないため、説明は省略する。
第1実施例においては、比較的低温で粘度が緩やかに増加する(硬化反応が十分に進行していない)条件の低粘度(短時間)側が一致するように粘度カーブをフィッティングしたが、比較的高温で粘度が急激に増加する(硬化反応が十分に進行する)条件においても、低粘度が確保し続けられるタイミングを予測することが必要であるため、低粘度(短時間)側だけでなく高粘度(長時間)側でも粘度カーブをフィッティングできることが望ましい。
そこで、第2実施例においては、短時間側で生じる硬化反応である重合による第1発熱カーブbと、長時間側で生じる硬化反応である結晶化による第2発熱カーブcとを用いて粘度カーブフィッティングを行うようにした。
図8フロー・チャートを参照して説明すると、図2フロー・チャートのS10からS16までの処理と同様、S100からS106までの処理を行い、S108に進み、分離した第2発熱カーブcなどから結晶化度Xc(t)を算出する。
即ち、第2発熱カーブcが結晶化の場合は数2の式をそのまま使うことはできないため、硬化度α(t)の代替として結晶化度Xc(t)を用いることとした。結晶化度Xc(t)は数3に示す一般化アブラミ式3−1より算出することとした(ρc:結晶部密度、ρl:非結晶部密度、G:核成長速度、N:核生成頻度、V:結晶体積)。
Figure 0006259752
結晶体積Vの算出に必要な球晶サイズrは式3−3で、核成長速度Gと核生成頻度Nは式3−4から3−6で表される(Tm:融点、Tg:ガラス転移点、C1,C2:WLF定数、C3,C4,Gc,Nc:樹脂パラメータ)。
このように、第2実施例においては、第1実施例において第1発熱カーブbと式2−3とから重合のみによる硬化度α(t)を算出したように、第2発熱カーブcと式3−1とから結晶化による結晶化度Xc(t)を算出するようにした。それらデータに数3に示す式を適用することで、核成長速度G、核生成頻度N、球晶サイズr、結晶体積V、樹脂パラメータC3,C4,Gc,Ncなど各パラメータの最適値が求まる。尚、結晶部密度ρc、非晶部密度ρl、融点Tm、ガラス転移点Tg、WLF定数C1,C2は既知の値を使用する。
また、粘度カーブフィッティング式を新たに考案した。即ち、第1の硬化反応による粘度の変化中または変化後に第2の硬化反応が生じるので、第1の硬化反応による粘度変化式2−1で求められる粘度に第2の硬化反応が加わるように式を考案した。数4にその式を示す。
Figure 0006259752
数4においてηpc:樹脂の重合と結晶化による粘度、ηp:樹脂の重合による粘度、Xcmax:最大結晶化度、Xc:結晶化度、t:時間、E4,F2は樹脂の反応粘度パラメータである。
S108においては、分離した第1発熱カーブbと数2の式2−3を用いて算出された硬化度α(t)と、第2発熱カーブcと数3の式3−1を用いて算出された結晶化度Xc(t)から数4の式4−1(所定の式(1a))を用いて樹脂20の重合と結晶化による粘度ηpc(t)を算出する。式4−1は、概括すると、重合により硬化した樹脂20の粘度ηp(t)に算出された結晶化度Xcに関連した値を乗じることで、結晶化により硬化した樹脂20の重合と結晶化による粘度ηpc(t)を算出するように構成される。
図9に第2実施例による粘度カーブフィッティング結果を示す。図9において、図7と同様、実線が測定値を、破線が第1発熱カーブbから算出されたフィッティング値ηp(t)を、一点鎖線が第1発熱カーブbと第2発熱カーブcから算出されたフィッティング値ηpc(t)を示す。
第1実施例に比し、第2実施例の場合は温度が比較的高温の140℃まで昇温されるので、第2の硬化反応である結晶化も進行しているため、第1の硬化反応のみによるフィッティング値ηp(t)は経時的に測定値と乖離するが、第1の硬化反応と第2の硬化反応によるフィッティング値ηpc(t)が測定値と良く一致することを確認することができた。
次いでS110に進み、算出された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpc(t)を開発支援装置12に入力し、コンピュータによるシミュレーションを通じて金型キャビティ14c内の樹脂流動挙動を解析する。
第2実施例は上記の如く構成したので、2種類以上の硬化反応を生じる樹脂20の粘度変化を一層適切に算出することができ、流動解析側において金型キャビティ14cでの樹脂の流動挙動を精度良く把握して適切な成形条件、金型キャビティ形状、注入口数とその配置等を見出すことができる。
上記した如く、この発明の第1、第2実施例にあっては、複数の硬化反応が生じる樹脂原料成分を含む樹脂20を金型キャビティ14cに注入して成形するときの挙動をコンピュータによるシミュレーションを介して解析する開発支援装置12用の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置10において、前記金型キャビティ14cに注入されるべき樹脂20の示差走査熱量を測定して昇温開始からm秒後の重合による硬化反応を示す第1発熱カーブbと、n(n>m)秒後の結晶化による硬化反応を示す第2発熱カーブcとで合成される合成発熱カーブaを測定する合成発熱カーブ測定手段(DSC分析器22,S10,S100)と、前記測定された合成発熱カーブaを前記第1発熱カーブbと第2発熱カーブcとに分離する第1、第2発熱カーブ分離手段(S12,S102)と、前記分離された第1発熱カーブbに基づいて前記樹脂20の硬化度α(t)を算出する硬化度算出手段(S12,S102)と、前記樹脂20の初期粘度ηtp(t)に前記算出された硬化度αに関連した値を乗じて、より具体的には所定の式(1)に基づき、前記樹脂20の重合による粘度ηp(t)を算出する粘度算出手段(S16,S106)と、前記算出された樹脂の重合による粘度ηp(t)を前記開発支援装置12に入力する入力手段(S18,S110)とを備え、前記第1、第2発熱カーブ分離手段(S12,S102)は、前記樹脂20の示差走査熱量を測定して昇温開始からo(o>n)秒後の結晶融解による吸熱カーブdを測定し、前記測定された吸熱カーブdに基づいて前記第2発熱カーブcを分離すると共に、前記合成発熱カーブaから前記分離された第2発熱カーブcを差し引くことで前記第1発熱カーブbを分離する如く構成したので、複数の硬化反応を生じる樹脂の粘度変化を適切に算出することができ、流動解析側において金型キャビティでの樹脂の流動挙動を精度良く把握して適切な成形条件、金型キャビティ形状、注入口数とその配置等を見出すことができる。また、第1、第2発熱カーブb,cを容易に分離(あるいは算出)することができる。
また、前記第1、第2発熱カーブ分離手段(S12,S102)は、前記樹脂20の示差走査熱量の測定において、前記合成発熱カーブaまで昇温させた後に、一旦冷却させてから、再度昇温して前記吸熱カーブdまで測定する如く構成したので、上記した効果に加え、重合、結晶化による発熱カーブの測定と、結晶融解による吸熱カーブの測定とを別々に行うことも可能となり、試験の自由度を高めることができる。
また、前記粘度算出手段(S16,S106)は、前記分離された第2発熱カーブcに基づいて前記樹脂20の結晶化度Xc(t)を算出し、前記硬化度α(t)から算出された樹脂20の重合による粘度ηp(t)に前記算出された結晶化度Xcに関連した値を乗じて、より具体的には所定の式(1a)に基づき、前記樹脂20の重合と結晶化による粘度ηpc(t)を算出すると共に、前記入力手段(S18,S110)は、前記算出された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpc(t)を前記開発支援装置12に入力する如く構成したので、複数の硬化反応を生じる樹脂の粘度変化を一層適切に算出することができ、流動解析側において金型キャビティでの樹脂の流動挙動を精度良く把握して一層適切な成形条件、金型キャビティ形状、注入口数とその配置等を見出すことができる。
また、前記樹脂20の粘度変化曲線を測定する粘度変化測定手段(レオメータ24,S14,S104)と、前記測定された粘度変化曲線に基づいて前記算出された樹脂の重合による粘度ηp(t)のフィッティング精度が向上するように補正する粘度補正手段(S16,S106)を備えると共に、前記入力手段(S18,S110)は前記補正された樹脂の重合による粘度ηp(t)を前記開発支援装置12に入力する如く構成したので、上記した効果に加え、粘度変化を一層適切に算出することができる。
また、前記樹脂20の粘度変化曲線を測定する粘度変化測定手段(レオメータ24,S104)と、前記測定された粘度変化曲線に基づいて前記算出された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpc(t)のフィッティング精度がさらに向上するように補正する粘度補正手段(S108)を備えると共に、前記入力手段(S110)は前記補正された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpc(t)を前記開発支援装置12に入力する如く構成したので、上記した効果に加え、粘度変化を一層適切に算出することができる。
また、前記第1、第2発熱カーブ分離手段(S12,S102)は、前記分離された第1発熱カーブbと第2発熱カーブcとを再び合成して前記合成発熱カーブaと一致するか否か検証する検証手段(S12,S102)を備える如く構成したので、上記した効果に加え、粘度変化を一層適切に算出することができる。
尚、上記実施例では、ε-カプロラクタムの重合によるナイロン6の合成とその結晶化を例に挙げ、重合と結晶化の二つの硬化反応による発熱カーブの分離を行ったが、対応する吸熱カーブが独立して測定可能な場合には、同様の分離(算出)方法を用いて、三つ以上の発熱反応による合成発熱カーブを分離することもできる。
また、合成吸熱カーブを独立した発熱カーブを利用して分離する場合も同様である。原料や生じる化学反応がこれらに限られないことは、いうまでもない。装置構成も開示したものに限られるものではない。
10 粘度算出機能を有する流動解析装置、12 開発支援装置(コンピュータ)、12a ディスプレイ、12b 入力手段、14 金型、14a 上型、14b 下型、14c キャビティ、14d 注入機、20 樹脂、22 DSC分析器、24 レオメータ

Claims (6)

  1. 複数の硬化反応が生じる樹脂原料成分を含む樹脂を金型キャビティに注入して成形するときの挙動をコンピュータによるシミュレーションを介して解析する開発支援装置用の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置において、前記金型キャビティに注入されるべき樹脂の示差走査熱量を測定して昇温開始からm秒後の重合による硬化反応を示す第1発熱カーブと、n(n>m)秒後の結晶化による硬化反応を示す第2発熱カーブとで合成される合成発熱カーブを測定する合成発熱カーブ測定手段と、前記測定された合成発熱カーブを前記第1発熱カーブと第2発熱カーブとに分離する第1、第2発熱カーブ分離手段と、前記分離された第1発熱カーブに基づいて前記樹脂の硬化度αを算出する硬化度算出手段と、前記樹脂の初期粘度に前記算出された硬化度αに関連した値を乗じて前記樹脂の重合による粘度ηpを算出する粘度算出手段と、前記算出された樹脂の重合による粘度ηpを前記開発支援装置に入力する入力手段とを備え、前記第1、第2発熱カーブ分離手段は、前記樹脂の示差走査熱量を測定して昇温開始からo(o>n)秒後の結晶融解による吸熱カーブを測定し、前記測定された吸熱カーブに基づいて前記第2発熱カーブを分離すると共に、前記合成発熱カーブから前記分離された第2発熱カーブを差し引くことで前記第1発熱カーブを分離することを特徴とする樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置。
  2. 前記第1、第2発熱カーブ分離手段は、前記樹脂の示差走査熱量の測定において、前記合成発熱カーブまで昇温させた後に、一旦冷却させてから、再度昇温して前記吸熱カーブまで測定することを特徴とする請求項1に記載の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置。
  3. 前記粘度算出手段は、前記分離された第2発熱カーブに基づいて前記樹脂の結晶化度Xcを算出し、前記硬化度αから算出された樹脂の重合による粘度ηpに前記算出された結晶化度Xcに関連した値を乗じて前記樹脂の重合と結晶化による粘度ηpcを算出すると共に、前記入力手段は、前記算出された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpcを前記開発支援装置に入力することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置。
  4. 前記樹脂の粘度変化曲線を測定する粘度変化測定手段と、前記測定された粘度変化曲線に基づいて前記算出された樹脂の重合による粘度ηpを補正する粘度補正手段を備えると共に、前記入力手段は前記補正された樹脂の重合による粘度ηpを前記開発支援装置に入力することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置。
  5. 前記樹脂の粘度変化曲線を測定する粘度変化測定手段と、前記測定された粘度変化曲線に基づいて前記算出された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpcを補正する粘度補正手段を備えると共に、前記入力手段は前記補正された樹脂の重合と結晶化による粘度ηpcを前記開発支援装置に入力することを特徴とする請求項3に記載の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置。
  6. 前記第1、第2発熱カーブ分離手段は、前記分離された第1発熱カーブと第2発熱カーブとを再び合成して前記合成発熱カーブと一致するか否か検証する検証手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂粘度算出機能を有する流動解析装置。
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