JP7009251B2 - 樹脂成形品の変形予測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂成形品の変形予測方法に関する。
樹脂成形用の金型を設計するにあたり、金型から取り出された樹脂成形品の変形(変形量或いは変形状態)を予測するコンピュータシミュレーション解析が行われることがある。このコンピュータシミュレーション解析による樹脂成形品の変形の予測精度が低いと、金型の試作回数が増え、その結果、金型の製造コストの増大を招く。よって、斯かる解析における樹脂成形品の変形の予測精度の向上が、望まれる。
特許文献1は、結晶性樹脂からなる樹脂成形品のシェルモデルの各シェルを厚さ方向に複数の層に分割したモデルを作成するステップと、各シェルの各層ごとに樹脂の結晶化度を予測するステップと、予測した結晶化度から各シェルの各層ごとに、樹脂の流動方向における線膨張係数及び樹脂の流動方向に直交する方向における線膨張係数を求めるステップと、求めたこれらの線膨張係数を用いて樹脂成形品の離型後の変形量を予測するステップと、を含む、樹脂成形品の変形予測方法を開示する。特許文献1によれば、各シェルを厚さ方向に分割したモデルを用い、且つ、線膨張係数を樹脂の流動方向及びその方向に直交する方向に分けて予測することにより、二次元のシェルモデルを用いて樹脂成形品の変形を予測した場合であっても予測精度を向上させることができる。
特許文献2は、任意の結晶化度における樹脂のPVT特性に基づいて、成形時の結晶化挙動に従った樹脂のPVT曲線と樹脂の比容積を算出し、これらから樹脂の収縮率を予測する方法を開示する。特許文献2によれば、成形時の結晶化度に合致した収縮率を計算することができるので、このように予測された収縮率を用いて樹脂成形品の変形を予測することにより、予測精度を向上させることができる。
特許文献3は、樹脂の収縮異方性を表す式から面内方向の収縮率と厚さ方向の収縮率とを求め、求めたこれらの収縮率を用いて、樹脂成形品のそり変形を予測する方法を開示する。特許文献3によれば、樹脂の収縮異方性を考慮して樹脂成形品のそり変形を予測することにより、予測精度を向上させることができる。
特開2002-219739号公報 特開平9-262887号公報 特開平9-230008号公報 特開2012-152964号公報
(発明が解決しようとする課題)
従来の樹脂成形品の変形予測方法、特に繊維強化していない樹脂を用いた樹脂成形品の変形予測方法において、樹脂の線膨張係数は分布データとして入力が可能である。しかし、樹脂の機械的物性値は、成形条件による影響等により正確な予測およびその予測値の実証が難しい。このため、機械的物性値を用いない、あるいは、一定値(固定値)として機械的物性値が与えられている場合が多い。ところが、実際には、樹脂成形品の機械的物性値は一定ではなく、成形部位によって異なると考えられる。つまり、樹脂成形品の機械的物性値は分布を有すると考えられる。
樹脂の機械的物性値は、樹脂成形品の変形の大きさに関与する。特に、樹脂成形品が強化繊維を含んでいない(繊維強化していない)非強化材料により構成されている場合、樹脂の機械的物性値が樹脂成形品の変形の大きさに大きく寄与する。したがって、樹脂成形品の変形の予測に際して樹脂の機械的物性値が固定値により与えられている場合、変形の予測精度が大きく低下する。
また、便宜的に機械的物性値を分布データとして与えて、樹脂成形品の変形を予測する方法も提案されている。例えば、特許文献4は、温度に応じたヤング率を分布データとして形状モデルに与えて、樹脂成形品の変形を予測する変形予測方法を開示する。この文献に示されるヤング率の分布データは、ヤング率の温度依存性を表す理論式から導かれると考えられる。ところが、実際の製造時には、ヤング率等の機械的物性値が温度に関する理論式のみから精度良く導かれる場合が少なく、よって、このように理論的に計算された機械的物性値の分布を与えても、予測精度は十分に向上しない。
本発明は、変形の予測精度が十分に向上した、樹脂成形品の変形予測方法を提供することを目的する。
本発明は、金型を用いて樹脂成形された樹脂成形品の変形を予測する変形予測方法であって、樹脂成形品の成形時の樹脂温度分布データを取得する樹脂温度分布データ取得ステップ(S1)と、金型を用いて実際に樹脂成形した樹脂成形品について実測された結晶化度を用いて求められた、樹脂成形品の温度と結晶化度との相関関係である第一相関関係に基づいて、樹脂温度分布データに対応した樹脂成形品の結晶化度の分布データである結晶化度分布データを作成する結晶化度分布データ作成ステップ(S2)と、金型を用いて実際に樹脂成形した樹脂成形品について実測された結晶化度及び機械的物性値とから求められた、樹脂成形品の結晶化度と機械的物性値との相関関係である第二相関関係に基づいて、結晶化度分布データに対応した樹脂成形品の機械的物性値の分布データである機械的物性値分布データを作成する機械的物性値分布データ作成ステップ(S3)と、樹脂温度分布データ及び機械的物性値分布データを用いて、金型から取り出されて所定の温度に冷却された樹脂成形品の変形を予測する変形予測ステップ(S4)と、を含む、樹脂成形品の変形予測方法を提供する。
本発明によれば、実測した結晶化度を用いて求められる樹脂成形品の温度と結晶化度との相関関係(第一相関関係)に基づいて、樹脂成形品の成形時の樹脂温度分布データに対応する結晶化度分布データが作成される。また、実測した結晶化度と機械的物性値とから得られる結晶化度と機械的物性値との相関関係(第二相関関係)に基づいて、樹脂成形品の結晶化度分布データに対応する機械的物性値分布データが作成される。従って、上記2つの相関関係から、樹脂温度分布データに対応する機械的物性値分布データを導出することができる。そして、樹脂温度分布データ及び機械的物性値分布データを用いて樹脂成形品の変形が予測される。このように、樹脂成形品の変形の予測に際して樹脂成形品の機械的物性値の分布データが与えられるので、樹脂成形品の機械的物性値が固定値として与えられる場合に比較して、予測精度が向上する。
また、本発明に係る樹脂成形品の機械的物性値分布データは、実測された結晶化度から得られる温度と結晶化度との相関関係、及び、実測された結晶化度及び機械的物性値から得られる結晶化度と機械的物性値との相関関係、に基づいて、導出される。このため機械的物性値の分布データには、実測値が反映される。実測値が反映された機械的物性値の分布データを用いることにより、理論式から求めた機械的物性値の分布を用いる場合に比較して、樹脂成形品の変形の予測精度が向上する。
このように、本発明によれば、変形の予測精度が十分に向上した、樹脂成形品の変形予測方法を提供することができる。
上記した樹脂成形品の機械的物性値は、ヤング率、横弾性率、ポアソン比のいずれか一つ又は複数であるのがよい。これらの機械的物性値は、樹脂成形品の変形に特に強く関与する。よって、これらの機械的物性値の分布データのいずれか一つ又は複数を用いて樹脂成形品の変形を予測することにより、予測精度をより一層向上させることができる。なお、本発明において、樹脂の線膨張係数や収縮率などは機械的物性値に該当しない。
また、成形時の樹脂温度分布データは、樹脂成形品の成形開始時から樹脂成形品が金型から取り出されるまでの樹脂温度分布の推移を示すデータである樹脂温度分布推移データであるのがよい。このようなデータを用いて樹脂成形品の変形を予測することにより、予測精度をより一層向上させることができる。なお、樹脂温度分布推移データには、成形開始時の樹脂温度分布データ、充填時の樹脂温度分布データ、冷却過程における樹脂温度分布データ、及び金型からの取り出し時の樹脂温度分布データが含まれている。
また、結晶化度分布データ作成ステップは、樹脂温度分布データ及び第一相関関係に基づいて、樹脂温度分布データに対応する結晶化度分布データを作成するとよい。これによれば、樹脂成形品の樹脂温度分布データに表される樹脂成形品の所定の部位における樹脂温度に対応する結晶化度が、第一相関関係から得られる。このようにして樹脂成形品の各部位における樹脂温度に対応する結晶化度を得ることにより、樹脂成形品の結晶化度分布データを作成することができる。
また、機械的物性値分布データ作成ステップは、結晶化度分布データ及び第二相関関係に基づいて、結晶化度分布データに対応する機械的物性値分布データを作成するとよい。これによれば、樹脂成形品の結晶化度分布データに表される樹脂成形品の所定の部位における結晶化度に対応する機械的物性値が、第二相関関係から得られる。このようにして樹脂成形品の各部位における結晶化度に対応する機械的物性値を得ることにより、樹脂成形品の機械的物性値分布データを作成することができる。
また、樹脂温度分布データは、樹脂成形品の形状モデルを複数の要素に分割することにより作成された要素分割モデルを構成する複数の要素のそれぞれに、その要素に対応する部位における樹脂温度を割り当てることにより作成され、結晶化度分布データは、要素分割モデルを構成する複数の要素のそれぞれに、その要素に割り当てられた樹脂温度に対応する結晶化度を第一相関関係に基づいて割り当てることにより作成され、機械的物性値分布データは、要素分割モデルを構成する複数の要素のそれぞれに、その要素に割り当てられた結晶化度に対応する機械的物性値を第二相関関係に基づいて割り当てることにより作成されるのがよい。これによれば、樹脂成形品の要素分割モデルを構成する各要素に、適切な温度及び機械的物性値を、それぞれ与えることができる。そして、そのように適切な温度及び機械的物性値が与えられた要素により構成される要素分割モデルを用いて樹脂成形品の変形を予測することにより、予測精度を向上させることができる。なお、要素分割モデルを構成する要素としては、メッシュ、セル、ボクセル等を例示できる。
また、第一相関関係は、金型を用いて実際に樹脂成形した前記樹脂成形品について実測された結晶化度と、結晶化度が実測された樹脂成形品の成形時の金型の温度とに基づいて求められていても良い。或いは、第一相関関係は、金型を用いて実際に樹脂成形した樹脂成形品について実測された結晶化度と、樹脂温度データ取得ステップにて取得した樹脂成形品の成形時(成形過程)の樹脂温度分布データとに基づいて求められていても良い。
本実施形態に係る変形予測方法が実施される解析システムの構成を示す概略図である。 解析装置の機能構成を示す概略図である。 変形解析部による変形予測の流れを概略的に示すフローチャートである。 金型温度と結晶化度との相関関係を示すグラフである。 金型温度とスキン層厚みとの相関関係を示すグラフである。 金型温度とコア層厚みとの相関関係を示すグラフである。 金型温度と表面領域の結晶化度との相関関係を示すグラフである。 金型温度と境界領域の結晶化度との相関関係を示すグラフである。 実測した結晶化度分布を示すグラフである。 実測したヤング率分布を示すグラフである。 結晶化度とヤング率との相関関係を示すグラフである。 樹脂成形品のメッシュ分割モデルに対して、5つの領域に区分したメッシュ分割モデルを示す図である。 実測した反り量(変形量)及び予測した反り量(変形量)を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る変形予測方法が実施される解析システムの構成を示す概略図である。この解析システムは、金型を用いた樹脂成形である射出成形により成形された樹脂成形品が、金型から取り出されて常温にまで冷却されたときにどの程度変形するかの解析(予測)、すなわち変形解析を、コンピュータシミュレーションにより実行する。また、変形解析を行うために、金型の温度分布の解析(金型冷却解析)、金型に充填された樹脂の充填解析(流動解析)、充填完了後に実行される保圧・冷却時における樹脂温度及び樹脂圧力の解析(保圧・冷却解析)、等も、実行される。なお、解析対象の樹脂は、結晶性樹脂である。
図1に示すように、本実施形態に係る解析システム1は、入力装置2と、解析装置3と、表示装置4とを備える。入力装置2には、解析システム1による解析に必要な条件(樹脂の種類、成形条件(樹脂温度、射出時間、保圧時間、保圧力、冷却時間、等)、金型温度条件(冷却水の種類、流量、温度等)、形状モデル等)が入力される。入力装置2として、例えばキーボード或いはマウス等を例示できる。解析装置3は、CPU,ROM,RAM等を有するマイクロコンピュータにより構成され、入力装置2から入力された条件に基づいて上記した解析(予測)を実行する。表示装置4は、解析装置3により解析(予測)した結果を表示する。
図2は、解析装置3の機能構成を示す概略図である。図2に示すように、解析装置3は、メッシュ分割モデル作成部10と、金型冷却解析部20と、充填解析部30と、保圧・冷却解析部40と、繊維配向解析部50と、変形解析部60とを備える。なお、繊維配向解析部50は、樹脂が繊維強化樹脂であるときのみ解析を行う。
メッシュ分割モデル作成部10は、CADツールにより作成された形状モデルを表す形状データ(樹脂成形品の形状データ、その樹脂成形品を成形するために用いられる金型の形状データ、その金型に設けられる冷却管の形状データ、ゲート、ランナーの形状データ等)を入力する。そして、入力した形状データにより表される形状を複数のメッシュに分割する。これにより、複数のメッシュに分割された形状モデル(以下、メッシュ分割モデルと呼ぶ)が作成される。このメッシュ分割モデルが本発明の要素分割モデルに相当する。
金型冷却解析部20は、金型冷却解析を実行する。具体的には、金型冷却解析部20は、入力装置2から入力された各種の条件に基づいて、射出成形時における金型の温度の予測値を、金型のメッシュ分割モデルを構成するメッシュごとに計算する。これにより、樹脂成形時における金型の温度の予測値の分布データが作成される。
充填解析部30は、充填解析を実行する。具体的には、充填解析部30は、金型冷却解析部20が作成した金型の温度の予測値の分布データ、及び、入力装置2から入力された各種条件に基づいて、金型に射出された樹脂の充填パターン、金型内を流動する樹脂の温度及び圧力等を、経時的に計算する。すなわち、樹脂充填時における樹脂温度分布の推移を計算する。そして、計算した結果を表示装置4に出力する。充填解析部30が実行する充填解析により、金型に射出された溶融樹脂が金型内にどのように充填されていくか、及び、金型内に充填された樹脂の温度分布、圧力分布を、予測することができる。
保圧・冷却解析部40は、保圧・冷却解析を実行する。具体的には、保圧・冷却解析部40は、金型冷却解析部20が作成した金型の温度の予測値の分布データ、充填解析部30が計算した充填完了時における金型内での樹脂の温度分布、圧力分布、及び、入力装置2から入力された各種条件に基づいて、金型内で樹脂の保圧が開始されてから金型による樹脂成形品の冷却が完了して樹脂成形品が金型から取り出されるまでの期間における、金型内での樹脂成形品の温度の推移、線膨張係数の推移を、樹脂成形品のメッシュ分割モデルを構成するメッシュごとに経時的に計算する。そして、計算した温度及び線膨張係数を、樹脂成形品のメッシュ分割モデルを構成する各メッシュに割り当てることにより、樹脂温度分布データ及び線膨張係数の分布データを作成する。この保圧・冷却解析部40が実行する保圧・冷却解析により、保圧時及び冷却時における、金型内での樹脂成形品の温度変化、圧力変化、を、予測することができる。
繊維配向解析部50は、充填解析部30で得られた結果と保圧冷却解析部40で得られた結果より、充填時の樹脂の流動から繊維強化樹脂の繊維の配向を予測する。繊維配向解析部50が実行する繊維配向解析により、保圧・冷却解析部40で実施される樹脂の物性値(温度、圧力等)の結果と繊維配向による影響を合わせた予測を行うことができる。なお、繊維強化樹脂を用いない場合は、繊維配向解析部50による繊維配向解析は実行しない。
変形解析部60は、変形解析を実行する。具体的には、変形解析部60は、保圧・冷却解析部40が作成した成形時の樹脂温度の分布データ(以下、樹脂温度分布データ)及び、金型から取り出される時点における線膨張係数の分布データを取得する。また、変形解析部60は、金型冷却解析部20が作成した樹脂成形時における金型の温度の予測値の分布データ、充填解析部30が計算した金型内を流動する樹脂の温度分布データ等を、取得してもよい。また、変形解析部60は、取得したこれらの分布データ、及び、後述するヤング率分布データを用いて、金型から取り出された樹脂成形品が常温にまで冷却された時点における樹脂成形品の変形量を計算する。そして、変形後の樹脂成形品の形状を表すデータを表示装置4に出力する。変形解析部60の解析により、樹脂成形品の変形を予測することができる。
図3は、変形解析部60による変形予測の流れを概略的に示すフローチャートである。これによれば、変形解析部60は、樹脂成形品の変形を予測するにあたり、まず、図3のステップ(以下、ステップをSと略記する)1にて、成形時の樹脂温度分布データを取得する(樹脂温度分布データ取得ステップ)。なお、ここで取得する樹脂温度分布データは、樹脂成形品のメッシュ分割モデルを構成する複数のメッシュのそれぞれに、そのメッシュに対応する部位における樹脂温度の予測値が割り当てられることにより作成されている。また、線膨張係数分布データも、樹脂成形品のメッシュ分割モデルを構成する複数のメッシュのそれぞれに、そのメッシュに対応する部位における樹脂成形品の線膨張係数の予測値が割り当てられることにより作成される。また、本実施形態において、成形時の樹脂温度分布データとして、樹脂成形品の成形開始から樹脂成形品が金型から取り出されるまでの樹脂温度分布データが用いられる。これらの樹脂温度分布データは経時的に計算される。従って、S1にて取得するデータは、樹脂温度分布推移データである。
次いで、変形解析部60は、S2にて、解析対象の樹脂と同一の樹脂を用いて実際に樹脂成形(射出成形)した樹脂成形品について実際に測定された結晶化度とそのときに用いた金型の温度との対応関係から導出された、樹脂成形品の結晶化度と温度との相関関係(第一相関関係)に基づいて、樹脂温度分布データ(樹脂温度分布推移データ)に対応した樹脂成形品の結晶化度の分布データである結晶化度分布データを作成する(結晶化度分布データ作成ステップ)。
続いて、変形解析部60は、S3にて、解析対象の樹脂と同一の樹脂を用いて実際に樹脂成形した樹脂成形品について実際に測定された結晶化度及びヤング率との対応関係から導出された、樹脂成形品の結晶化度とヤング率(機械的物性値)との相関関係(第二相関関係)に基づいて、上記結晶化度分布データに対応した樹脂成形品のヤング率(機械的物性値)の分布データであるヤング率分布データ(機械的物性値分布データ)を作成する(機械的物性値分布データ作成ステップ)。
上記結晶化度分布データ作成ステップでは、実測された結晶化度と樹脂成形品の温度との相関関係(第一相関関係)に基づいて、結晶化度分布データが作成され、上記機械的物性値分布データ作成ステップでは、実測された結晶化度と実測されたヤング率との相関関係(第二相関関係)に基づいて、ヤング率分布データが作成される。以下に、これらの相関関係の導出方法について説明する。
[樹脂成形品の結晶化度と温度との相対関係(第一相関関係)の導出]
変形解析部60による変形解析を実施する前に、事前に、解析対象の樹脂と同一の樹脂を用いて、樹脂成形品の形状モデルと同一形状(例えば平板形状)の樹脂成形品のサンプルを実際に射出成形する。
また、金型(固定型及び可動型)の設定温度Tmを様々に変更して、平板形状を有する樹脂成形品のサンプルを射出成形した。これにより、複数の金型の設定温度Tmに対応した樹脂成形品のサンプルが実際に射出成形される。なお、金型内での樹脂の冷却が完了して金型内から樹脂成形品のサンプルを取り出す時点では、金型の温度はほぼ設定温度に等しい。従って、設定温度Tmは、金型から樹脂成形品のサンプルを取り出す時点における金型の温度と言える。また、金型が備える固定型及び可動型の設定温度がそれぞれ異なるように、それぞれの金型の温度を設定してもよい。
次に、実際に樹脂成形された複数のサンプルの厚さ断面方向(厚さ方向)の結晶化度を、10μm間隔ごとに測定した。10μm間隔といった極めて微小な距離ごとの詳細な結晶化度の測定は、非常に困難である。本実施形態では、大型放射光施設であるSPring-8(兵庫県ビームラインBL24XU)を利用し、放射光X線散乱法を用いて結晶化度を測定した。この測定により、厚さ方向における結晶化度の分布を得ることができる。
図5は、実測した結晶化度分布の一例を概略的に示すグラフである。図5のグラフの横軸がサンプルの厚さ方向における位置を表し、縦軸が結晶化度Xを表す。また、図5のグラフの横軸の左端位置は、サンプルの表面のうち固定型に接触していた表面(固定側表面)であり、横軸の右端位置は、サンプルの表面のうち可動型に接触していた表面(可動側表面)である。なお、図5に示す例において、固定型の設定温度は40℃であり、可動型の設定温度は90℃である。
図5に示すように、サンプルの厚さ方向に亘って、結晶化度に分布が存在していることがわかる。また、サンプルの両表面、すなわち金型に接触していた面の近傍における結晶化度は低く、厚さ方向における中央部分の結晶化度は高い。サンプルの厚さ方向における中央部分の結晶化度はほぼ一定である。
また、サンプルの固定側表面から厚さ方向における中央部分に向かうにつれて結晶化度がほぼ直線状に増加する領域が存在し、サンプルの可動側表面から厚さ方向における中央部分に向かうにつれて結晶化度がほぼ直線状に増加する領域が存在する。図5において、サンプルの固定側表面から厚さ方向における中央部分に向かうにつれて結晶化度がほぼ直線状に増加する領域が、固定側表面領域として示され、サンプルの可動側表面から厚さ方向における中央部分に向かうにつれて結晶化度がほぼ直線状に増加する領域が、可動側表面領域として示される。また、厚さ方向における中央部分の結晶化度がほぼ一定の領域がコア層領域として示される。さらに、固定側表面領域とコア層領域との間に、固定側表面領域からコア層領域に向かうにつれて、結晶化度の増加率が徐々に減少する領域が存在する。この領域が、図5において固定側境界領域として示される。さらに、可動側表面領域とコア層領域との間に、可動側表面領域からコア層領域に向かうにつれて、結晶化度の増加率が徐々に減少する領域が存在する。この領域が、図5において可動側境界領域として示される。このように、樹脂成形品の厚さ方向に沿った領域を、結晶化度の変化状態に応じて、5つの領域(固定側表面領域、固定側境界領域、コア層領域、可動側境界領域、可動側表面領域)に、区分することができる。
また、図5に示すように、固定側表面領域における厚さ方向に沿った結晶化度の変化率は、可動側表面領域における厚さ方向に沿った結晶化度の変化率よりも小さいことがわかる。つまり、固定側表面領域にて結晶化度は緩やかに変化し、可動側表面領域にて結晶化度は急峻に変化する。固定側表面の温度は40℃であり、可動側表面の温度は90℃である。つまり、接触している金型の温度が低いほど、その金型に接触した部分近傍の結晶化度の変化率は小さいと推定することができる。
このように、サンプルの厚さ方向における微小間隔ごとの結晶化度の実測により、結晶化度の分布の存在や、部位による結晶化度の変化傾向を、得ることができる。
複数のサンプルについての結晶化度の測定後に、各サンプルについて実測された結晶化度と、そのサンプルの射出成形時における金型の設定温度Tm(正確には、固定型及び可動型のうち、各サンプルについて結晶化度が実測された表面に接触していた型の設定温度)とから、金型の設定温度Tmと結晶化度との相関関係を導出した。この場合、例えば、それぞれのサンプルについて実測した結晶化度と、そのサンプルの射出成形時に結晶化度を実測した表面に接触している金型の設定温度Tmとの組み合わせを、回帰計算ソフトに入力し、回帰計算することにより、相関式(回帰式)を導出することができる。
図4Aは、結晶化度分布と金型温度Tmの相関関係を示すグラフである。このグラフは、図4Bに示されるスキン層厚みと金型温度Tmとの相関関係、図4Cに示されるコア層厚みと金型温度Tmとの相関関係、図4Dに示される表面領域の結晶化度と金型温度Tmとの相関関係、および図4Eに示される境界領域の結晶化度と金型温度Tmとの相関関係から得られる。このような結晶化度分布と金型温度Tmの相関関係から各流動固化条件における結晶化度(分布)を得ることができる。つまり、樹脂の温度推移と結晶化度との相関関係(第一相関関係)を得ることができる。そして、得られた結晶化度(分布)により、成形開始時から樹脂成形品が金型から取り出されるまでの樹脂温度分布推移(データ)に対応する結晶化分布データが作成される。なお、スキン層厚みと金型温度Tmとの相関関係(図4B)、コア層厚みと金型温度Tmとの相関関係(図4C)、表面領域の結晶化度と金型温度Tmとの相関関係(図4D)および境界領域の結晶化度と金型温度との相関関係(図4E)は、実測することにより得られる。
上記において、「コア層厚み」とは、図5におけるコア層の厚さである。また、「スキン層厚み」とは、図5における表面領域の厚みと境界領域の厚みとの総和(図5に示す例では、スキン層厚みは、固定側表面領域の厚さと固定側境界領域の厚さの総和、又は、可動側境界領域の厚さと可動側表面領域の厚さの総和)である。
[樹脂成形品の結晶化度とヤング率との相対関係(第二相対関係)の導出]
上記のようにして実際に射出成形した複数のサンプルのうち、金型が備える可動型の設定温度と固定型の設定温度との差が最も大きい設定温度条件にて射出成形したサンプルを選定する。例えば、可動型の設定温度が90℃、固定型の設定温度が40℃である金型の設定温度条件にて射出成形したサンプルを選定する。
次に、選定したサンプルについて、厚さ方向に沿った結晶化度の測定点におけるヤング率を10μm間隔で厚さ方向に沿って測定した。この測定は、本実施形態ではナノインデンターを用いたナノインデンテーション法により行われたが、微小間隔でヤング率を測定することができる測定機器であれば、それを用いても良い。この測定により、厚み方向におけるヤング率分布を得ることができる。
図6は、実測したヤング率分布を概略的に示すグラフである。図6のグラフの横軸がサンプルの厚さ方向における位置を表し、縦軸がヤング率を表す。また、図6のグラフの横軸の左端位置は固定側表面であり、右端位置は可動側表面である。図6に示すように、ヤング率も結晶化度と同様に、サンプルの厚さ方向の位置によって異なる。つまり、サンプルの厚さ方向に亘って、ヤング率に分布が存在していることがわかる。また、厚さ方向における表面から中央部分に向かうほど、ヤング率が高くなることがわかる。
次いで、サンプルの厚さ方向に沿って微小間隔(10μm間隔)ごとに実測した結晶化度分布及びヤング率分布を用いて、結晶化度とヤング率との相関関係を導出した。この場合、例えば、同一の測定点における結晶化度とヤング率との組み合わせを回帰計算ソフトに入力し、回帰計算することにより、相関式(回帰式)を導出することができる。図7は、導出された相関式により表される結晶化度Xとヤング率Yとの相関関係を示すグラフである。図7に示すように、結晶化度Xとヤング率Yとの間には、結晶化度Xが高いほどヤング率Yが大きいという相関関係が存在することがわかる。このようにして、樹脂成形品の結晶化度Xとヤング率Yとの相関関係が導出される。導出された相関関係は、第二相関関係として、予め、解析装置3に記憶されている。従って、変形解析部60は、S3の処理(ヤング率分布データ作成ステップ)を実行するにあたり、樹脂成形品のメッシュ分割モデルを構成する各メッシュに、上記第一相関関係に基づいてそのメッシュに割り当てるべき結晶化度に対応するヤング率を第二相関関係に基づいて計算し、計算したヤング率を、そのメッシュに割り当てる(設定する)。このようにして各メッシュに結晶化度に対応したヤング率を割り当てることにより、結晶化度分布データに対応したヤング率分布データが作成される。
S3にてヤング率が各メッシュに割り当てられた場合、各メッシュに、樹脂温度分布推移、線膨張係数、及び、ヤング率が、それぞれ設定されることになる。つまり、樹脂温度分布データ、線膨張係数分布データ、ヤング率分布データが、樹脂成形品のメッシュ分割モデルに与えられたことになる。
次いで、変形解析部60は、図2のS4にて、樹脂成形品のメッシュ分割モデルに与えられた樹脂温度分布データ、線膨張係数分布データ、ヤング率分布データに基づいて、樹脂成形品の表面温度が常温にまで冷却されたときにおける変形量を計算する(変形予測ステップ)。これにより、樹脂成形品の変形が予測される。そして、S4にて計算された変形量に基づいて、樹脂成形品の変形後の形状を予測し、予測した形状を表すデータを表示装置4に出力する(S5)。これにより、表示装置4に、変形後の樹脂成形品の形状が表示される。
このように、変形解析部60は、樹脂成形品のヤング率の分布データが反映されたメッシュ分割モデルを用いて変形を予測する。このため、ヤング率が固定値として与えられている場合に比較して、より精度の高い変形の予測を行うことができる。
(実施例)
サンプルと同一形状である平板状の樹脂成形品の形状モデルを作成した。次に、この形状モデルをメッシュ分割して、樹脂成形品のメッシュ分割モデルを作成した。
次いで、可動型の温度を90℃、固定型の温度を40℃に設定し、所定の成形条件を入力条件として、金型冷却解析部20による金型冷却解析、充填解析部30による充填解析、及び、保圧・冷却解析部40による保圧・冷却解析を実施した。これにより、樹脂成形品のメッシュ分割モデルを構成する各メッシュに、成形時の樹脂温度及び線膨張係数が与えられる。つまり、樹脂成形品のメッシュ分割モデルに、樹脂温度分布データ(樹脂温度分布推移データ)及び線膨張係数分布データが与えられる。
次に、樹脂成形品のメッシュ分割モデルを、厚さ方向に沿って、可動側表面領域、可動側境界領域、コア層領域、固定側境界領域、固定側表面領域、の5つの領域に区分した。図8は、メッシュ分割モデル100が5つの領域に区分された状態を示す。図8に示すメッシュ分割モデル100において、左右方向が長さ方向であり、上下方向が厚さ方向である。図8に示すように、メッシュ分割モデル100が、図8の上側から下側にかけて、順に、可動側表面領域101、可動側境界領域102、コア層領域103、固定側境界領域104、及び固定側表面領域105、に、区分される。これらの各領域は、図5に示す実測された結晶化度に基づいて厚さ方向に沿って区分された各領域に対応する。従って、図8に示すメッシュ分割モデルの上面が、温度90℃の可動型に接触する面であり、下面が、温度40℃の固定型に接触する面である。
また、各領域は、図5に示す実測された結晶化度に基づいて区分された各領域の厚さに対応する厚さを有するように、区分される。例えば、図5において、サンプルの厚さが2mmであり、可動側表面領域の厚さが0.2mm、可動側境界領域の厚さが0.2mm、コア層領域の厚さが1.0mm、固定側境界領域の厚さが0.3mm、固定側表面領域の厚さが0.3mmであると仮定する。この場合、サンプルの厚さに対する可動側表面領域101の厚さの比が10%、サンプルの厚さに対する可動側境界領域102の厚さの比が10%、サンプルの厚さに対するコア層領域103の厚さの比が50%、サンプルの厚さに対する固定側境界領域104の厚さの比が20%、サンプルの厚さに対する固定側表面領域105の厚さの比が20%、である。従って、図8に示すメッシュ分割モデルを上記5つの領域に区分する際にも、各領域が占める比率が上記した比率に一致するように、メッシュ分割モデルを5つの領域に区分する。
続いて、図4Aに示す金型温度Tmと結晶化度の相関関係から得られる、樹脂温度(推移)と結晶化度との相関関係(第一相関関係)に基づいて、保圧・冷却解析により計算された樹脂温度分布データ(樹脂温度分布推移データ)に対応する結晶化度を求め、求めた結晶化度を各領域に割り当てる。これにより、結晶化度分布データが作成される。その後、図7に示す相関関係(第二相関関係)に基づいて、各領域について求められた結晶化度に対応するヤング率を求め、求めたヤング率を各領域に設定する。これにより、ヤング率分布データが作成されるとともに作成されたヤング率分布データがメッシュ分割モデルに与えられる。なお、この場合、各領域についてそれぞれ求められたヤング率を、各領域を構成する全てのメッシュに割り当てる。表1に、各領域に設定したヤング率を示す。
Figure 0007009251000001
このようにして各領域にヤング率を設定した後に、変形解析部60による変形の計算を実行して、樹脂成形品の温度が常温にまで冷却された時点における樹脂成形品の変形(反り)を予測した。また、比較のため、樹脂成形品のメッシュ分割モデルを構成する全てのメッシュに一定のヤング率(2.52[N/m])を設定した場合についても、変形解析部60による変形解析を実施して、樹脂成形品の変形(反り)を予測した。さらに、実際に上記と同一の条件で形状モデルと同一形状の樹脂成形品を射出成形した。そして、射出成形した樹脂成形品が常温にまで冷却された時点における変形量(反り量)を実測した。
図9は、実測した反り量(変形量)及び予測した反り量(変形量)を示すグラフである。図9の横軸が樹脂成形品(又はメッシュ分割モデル)の長手方向における位置であり、縦軸が、基準位置からの反り量(変形量)を表す。また、図9のグラフAが、ヤング率分布を与えたメッシュ分割モデルを用いて予測した変形量(すなわち本例に係る変形予測)を示すグラフであり、グラフBが、比較のために一定のヤング率を与えたメッシュ分割モデルを用いて予測した変形量(すなわち比較例に係る変形予測)を示すグラフであり、グラフCが、実際に製造した樹脂成形品について実測した反り量(変形量)を示すグラフである。
図9からわかるように、比較例に係る変形量の予測結果(グラフB)は、実測した反り量を示すグラフCと大きく異なる。これに対し、本例に係る変形量の予測結果(グラフA)は、実測した反り量を表すグラフCにかなり近い。このことから、本例に係る変形予測の精度は高いことがわかる。
以上のように、本実施形態に係る樹脂成形品の変形予測方法は、樹脂成形品の成形時の樹脂温度分布データを取得する樹脂温度分布データ取得ステップS1と、金型を用いて実際に射出成形した樹脂成形品について実測された結晶化度Xを用いて求められた、樹脂成形品の温度と結晶化度との相関関係である第一相関関係に基づいて、樹脂温度分布データに対応した樹脂成形品の結晶化度の分布データである結晶化度分布データを作成する結晶化度分布データ作成ステップS2と、金型を用いて実際に射出成形した樹脂成形品について実測された結晶化度X及びヤング率Y(機械的物性値)とから求められた、樹脂成形品の結晶化度Xとヤング率Yとの相関関係である第二相関関係に基づいて、結晶化度分布データに対応した樹脂成形品のヤング率の分布データであるヤング率分布データ(機械的物性値分布データ)を作成する機械的物性値分布データ作成ステップS3と、樹脂温度分布データ及びヤング率分布データを用いて、金型から取り出されて所定の温度(例えば常温)に冷却された樹脂成形品の変形を予測する変形予測ステップS4と、を含む。
本実施形態によれば、樹脂成形品の変形の予測に際して樹脂成形品の機械的物性値としてのヤング率の分布データが与えられるので、変形の予測に際して樹脂成形品のヤング率が固定値として与えられる場合に比較して、予測精度が向上する。
また、樹脂成形品のヤング率分布データは、実測された結晶化度から得られる温度と結晶化度との相関関係、及び、実測された結晶化度及びヤング率から得られる結晶化度とヤング率との相関関係、に基づいて、導出される。このためヤング率分布データにヤング率の実測値が反映される。実測値が反映されたヤング率分布データを用いることにより、樹脂成形品の変形の予測精度がより一層向上する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、本発明が適用される樹脂は結晶性樹脂であれば、その材質を問わない。また、用いる樹脂は、強化繊維が含有された繊維強化樹脂であっても良いし、強化繊維が含有されていない非強化樹脂であってもよい。また、上記実施形態では、機械的物性値としてのヤング率の分布データを作成する例を示したが、それ以外の機械物性値、例えば、横弾性率、ポアソン比、等の分布データを作成するように構成してもよい。また、上記実施例では、メッシュ分割モデルを厚さ方向に沿って5つの領域に区分し、区分したそれぞれの領域にヤング率の予測値を設定することにより、ヤング率分布データを作成する例を示した。しかし、メッシュ分割モデルを複数の領域に区分することなしに、それぞれのメッシュに与えられている樹脂温度、第一相関関係、及び第二相関関係に基づいて、それぞれのメッシュにそれぞれヤング率を設定してもよい。また、上記実施例では、メッシュ分割モデルの面方向(長さ方向及び幅方向)に同一のヤング率を設定することになるが、面方向に温度分布が存在する場合には、面方向に分割したメッシュごとに、それぞれ、そのメッシュにおける樹脂温度に対応するヤング率を設定することもできる。さらに、上記実施形態では、サンプルの厚さ方向に沿って微小間隔ごとに結晶化度の分布を実測するために放射光X線散乱法を用いたが、それ以外の方法、例えば、X線回折法、示差走査熱量測定法、赤外吸収分光法、ラマン分光法、等を用いても良い。さらに、上記実施形態では、機械的物性値としてのヤング率を実測するためにナノインデンターを用いたが、それ以外の装置、例えば、マイクロビッカース硬度計、走査型プローブ顕微鏡等を用いて機械的物性値を実測してもよい。また、上記実施形態に示す全てのステップを一つのプログラムソフトで実行してもよく、複数のプログラムソフトを用いて実行してもよい。例えば、上記実施形態にて示された図3の各ステップのうちS3のみを別のプログラムソフトで実行させても良い。
また、上記実施形態では、樹脂温度として金型設定温度を用いて第一相関関係を作成する例を示した。しかし、樹脂温度として、金型冷却解析部20、充填解析部30および保圧・冷却部40にて予測される成形過程の樹脂温度(推移)或いは金型温度を用いて、第一相関関係を作成しても良い。さらに、結晶化度分布データは、金型冷却解析部20、充填解析部30および保圧・冷却部40にて予測される成形過程の、圧力、せん断速度等のデータ(推移)と結晶化度との相関関係も用いて作成しても良い。
また、上記実施形態では、メッシュ分割モデルを厚さ方向に沿って5つの領域に区分し、区分したそれぞれの領域に、結晶化度および機械物性を割り当てた例を示した。しかし、メッシュ分割モデルの厚さ方向および面方向(長さ方向、幅方向)に分割された各要素(メッシュ、セル、ボクセル)に、結晶化度および機械物性値を割り当てても良い。これらの実施形態の変形は、樹脂成型品の変形量予測の精度をさらに向上させる手段として有用である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
1…解析システム、2…入力装置、3…解析装置、4…表示装置、10…メッシュ分割モデル作成部、20…金型冷却解析部、20…金型冷却解析部、30…充填解析部、40…保圧・冷却解析部、50…繊維配向解析部、60…変形解析部、100…メッシュ分割モデル、101…可動側表面領域(表面領域)、102…可動側境界領域(境界領域)、103…コア層領域、104…固定側境界領域(境界領域)、105…固定側表面領域(表面領域)、S1…樹脂温度分布データ取得ステップ、S2…結晶化度分布データ作成ステップ、S3…機械的物性値分布データ作成ステップ、S4…変形予測ステップ

Claims (6)

  1. 金型を用いて樹脂成形された樹脂成形品の変形を予測する変形予測方法であって、
    前記樹脂成形品の成形時の樹脂温度分布データを取得する樹脂温度分布データ取得ステップと、
    金型を用いて実際に樹脂成形した前記樹脂成形品について実測された結晶化度を用いて求められた、前記樹脂成形品の温度と結晶化度との相関関係である第一相関関係に基づいて、前記樹脂温度分布データに対応した前記樹脂成形品の結晶化度の分布データである結晶化度分布データを作成する結晶化度分布データ作成ステップと、
    前記金型を用いて実際に樹脂成形した前記樹脂成形品について実測された前記結晶化度及び機械的物性値とから求められた、前記樹脂成形品の結晶化度と機械的物性値との相関関係である第二相関関係に基づいて、前記結晶化度分布データに対応した前記樹脂成形品の機械的物性値の分布データである機械的物性値分布データを作成する機械的物性値分布データ作成ステップと、
    前記樹脂温度分布データ及び前記機械的物性値分布データを用いて、前記金型から取り出されて所定の温度に冷却された前記樹脂成形品の変形を予測する変形予測ステップと、
    を含む、樹脂成形品の変形予測方法。
  2. 請求項1に記載の樹脂成形品の変形予測方法において、
    前記機械的物性値が、ヤング率、横弾性率、ポアソン比のいずれか一つ又は複数である、樹脂成形品の変形予測方法。
  3. 請求項1又は2に記載の樹脂成形品の変形予測方法において、
    前記成形時の樹脂温度分布データが、前記樹脂成形品の成形開始時から前記樹脂成形品が前記金型から取り出されるまでの樹脂温度分布の推移を示すデータである樹脂温度分布推移データである、樹脂成形品の変形予測方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂成形品の変形予測方法において、
    前記結晶化度分布データ作成ステップは、前記樹脂温度分布データ及び前記第一相関関係に基づいて前記結晶化度分布データを作成する、樹脂成形品の変形予測方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂成形品の変形予測方法において、
    前記機械的物性値分布データ作成ステップは、前記結晶化度分布データ及び前記第二相関関係に基づいて前記機械的物性値分布データを作成する、樹脂成形品の変形予測方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹脂成形品の変形予測方法において、
    前記樹脂温度分布データは、前記樹脂成形品の形状モデルを複数の要素に分割することにより作成された要素分割モデルを構成する複数の要素のそれぞれに、その要素に対応する部位における前記樹脂温度を割り当てることにより作成され、
    前記結晶化度分布データは、前記要素分割モデルを構成する複数の要素のそれぞれに、その要素に割り当てられた前記樹脂温度に対応する結晶化度を前記第一相関関係に基づいて割り当てることにより作成され、
    前記機械的物性値分布データは、前記要素分割モデルを構成する複数の要素のそれぞれに、その要素に割り当てられた結晶化度に対応する機械的物性値を前記第二相関関係に基づいて割り当てることにより作成される、樹脂成形品の変形予測方法。
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