JP6258754B2 - 接続構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被覆電線と圧着端子とを圧着接続した接続構造体、及び接続構造体の製造方法に関する。
近年、自動車の多機能化及び高性能化に伴い自動車に様々な電装機器が搭載されるようになったために、自動車の電気回路は複雑化し、各電装機器に電力を安定的に供給することが必要不可欠になっている。様々な電装機器が搭載された自動車には、複数本の被覆電線を束ねることによって形成されたワイヤーハーネスが配索され、ワイヤーハーネス同士をコネクタで接続することによって電気回路が形成されている。また、ワイヤーハーネス同士を接続するコネクタの内部には、被覆電線を圧着部で圧着接続する圧着端子が設けられ、雄型の圧着端子と雌型の圧着端子とを嵌合接続することにより被覆電線同士が接続されるようになっている。
ところで、被覆電線を圧着端子の圧着部で圧着接続する場合、被覆電線の絶縁被覆の先端部から露出したアルミニウム芯線等の導体部と圧着部との間に隙間が生じ、露出した導体部が外気に曝される。このような状態において圧着部に水分が浸入すると、露出した導体部の表面が水分によって腐食し、電気抵抗が増加することにより、導体部の導電性が低下する。そして、導体部の導電性が大きく低下した場合には、電装機器に電力を安定的に供給することができなくなる。
このような背景から、従来の圧着端子に対しては、水分の浸入により導体部の導電性が低下することを抑制する技術が提案されている。具体的に、例えば特許文献1には、粘度の高い樹脂製の絶縁体で露出した導体部全体を被覆することによって露出した導体に水分が接触することを抑制する接続構造体が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の接続構造体では、被覆電線を圧着接続した後に導体部の露出部分全体を絶縁体で被覆するため、被覆用の樹脂が大量に必要となりコストが増加してしまう問題があった。
そこで、特許文献2には、圧着部の一方の端部が被覆電線と圧着されて封止され、一方の端部と反対側の端部が溶接によって断面中空筒形状に形成されて封止された接続構造体が、開示されている。
特開2011−233328号公報 国際公開第2014/010605号
しかしながら、特許文献2に記載の接続構造体においても、被覆電線と圧着部とを圧着した際に、被覆電線と圧着部との間に隙間が生じてしまうことがあった。このような隙間が生じると導体部が腐食してしまう場合があり、さらなる止水性の向上が求められている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、止水性をより一層向上させて導体部の劣化を抑制可能な接続構造体、及び接続構造体の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の接続構造体は、導体部及び前記導体部を被覆する被覆部を有する被覆電線が、該被覆電線に圧着接続する圧着部を有する圧着端子に接続された接続構造体であって、前記圧着部の一方の端部が前記被覆電線と圧着され、前記一方の端部とは反対側の端部が封止されており、前記圧着部の一方の端部の先端側には、前記圧着部の一方の端部の先端に形成された拡径部と、前記被覆部の径が長手方向に変化することで前記被覆部に形成された段差部とで前記圧着部を封止する樹脂を充填可能な樹脂充填部が形成され、該樹脂充填部には前記樹脂が充填されていることを特徴としている。
また、本発明の接続構造体の一態様において、前記樹脂は、前記被覆部と前記圧着部との圧着箇所において前記圧着部の長手方向に伸びる隙間を埋めるように充填されていることを特徴としている。
また、本発明の接続構造体の一態様は、前記圧着部が前記被覆部を圧着する被覆圧着部の内面には、前記被覆部を押圧する凸部が前記圧着部の周方向にわたって少なくとも一つ形成されており、前記樹脂充填部から前記凸部の位置まで前記樹脂が充填されていることを特徴とする。
また、本発明の接続構造体の一態様において、前記樹脂充填部は、前記圧着部が前記被覆電線に圧着接続される際に形成され、かつ収容されるコネクタハウジング内に収まる形状に形成されていることを特徴としている。
また、本発明の接続構造体の一態様において、前記樹脂は、固化前の粘度が23℃で1000mPa・s以下、かつ前記被覆部及び前記圧着部に対する濡れ性が良好であることを特徴としている。
また、本発明の接続構造体の一態様において、前記樹脂は、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系、シリコン系、及びフッ素系のいずれかの樹脂であることを特徴としている。
また、本発明の接続構造体の一態様は、前記圧着部の一方の端部とは反対側の端部は、ファイバーレーザー溶接によって溶接されていることを特徴としている。
また、本発明の接続構造体の一態様において、前記導体部は、アルミ系材料によって構成され、前記圧着部は銅系材料によって構成されていることを特徴としている。
また、本発明の接続構造体の製造方法は、導体部及び前記導体部を被覆する被覆部を有する被覆電線が、該被覆電線に圧着接続する圧着部を有する圧着端子に接続された接続構造体の製造方法であって、前記圧着部を、前記被覆電線が挿入される一方の端部とは反対側の端部が溶接により封止された断面中空筒形状に形成し、前記圧着部の一方の端部から前記被覆電線を挿通し、前記圧着端子と前記被覆電線とを圧着接続し、この圧着接続の際に前記圧着部の一方の端部の先端側において、前記圧着部の一方の端部の先端に拡径部を形成するとともに、前記被覆部の径を長手方向に変化させることで前記被覆部に段差部を形成することにより、前記圧着部を封止する樹脂を充填可能な前記樹脂充填部を形成し、該樹脂充填部から樹脂を充填することを特徴としている。
また、本発明の接続構造体の製造方法の一態様は、前記樹脂を充填する際に、前記圧着部の一方の端部とは反対側の端部が下側に、前記樹脂充填部が上側となるように配置し、前記樹脂充填部に樹脂を充填することを特徴としている。
本発明によれば、止水性をより一層向上させて導体部の劣化を抑制可能な接続構造体、及び接続構造体の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る接続構造体に用いられる圧着端子の斜視図である。 図2は、本発明の実施形態に係る接続構造体に用いられる圧着端子を幅方向中央部で分断した縦断斜視図である。 図3は、本発明の実施形態に係る接続構造体に用いられる被覆電線の概略斜視図である。 図4は、本発明の実施形態に係る接続構造体の斜視図である。 図5(a)は、本発明の実施形態に係る接続構造体の概略断面図である。図5(b)は、本発明の実施形態に係る接続構造体の要部拡大図である。 図6は、本発明の実施形態に係る接続構造体の変形例の斜視図である。 図7(a)は、本発明の実施形態に係る接続構造体の変形例の概略断面図である。図7(b)は、本発明の実施形態に係る接続構造体の変形例の要部拡大図である。 図8は、図1に示す圧着端子のボックス部を透過状態とした圧着端子の底面側の概略斜視図である。 図9は、図8に示す領域の拡大図である。 図10は、圧着部の溶接方法を説明するための概略図である。 図11は、圧着部の溶接方法を説明するための概略図である。 図12は、本発明の実施形態に係る接続構造体の製造方法の概略説明図である。 図13は、本発明の実施形態に係る接続構造体の変形例の製造方法の概略説明図である。 図14は、本発明の実施形態に係る接続構造体を用いたワイヤーハーネスにおけるコネクタの斜視図である。 図15は、他の圧着部の溶接方法を説明するための概略図である。 図16は、他の圧着部の溶接方法を説明するための概略図である。 図17は、他の圧着部の溶接方法を説明するための概略図である。 図18は、引張せん断応力の測定方法を説明するための概略図である。
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態である接続構造体、及び接続構造体の製造方法について説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
まず、本発明の実施形態に係る接続構造体に用いられる圧着端子10について説明する。この圧着端子は、図1、2に示すように、雌型圧着端子として形成され、長手方向Xの前方から後方に向かって、雄型圧着端子が有する挿入タブが挿入される中空四角柱体のボックス部20と、所定長さのトランジション部40を介してボックス部20の後方に設けられた後方視略O型形状の圧着部30と、を備えている。
なお、本明細書中において、長手方向Xとは、圧着部30で圧着接続される被覆電線の長手方向と一致する方向を意味し、幅方向Yとは、略水平な平面内において長手方向Xに対し直交する方向を意味する。さらに、高さ方向Zとは、長手方向Xおよび幅方向Yから規定されるXY平面に対して略垂直な方向を意味する。また、本明細書中では、圧着部30に対するボックス部20側の方向を前方と表記し、逆にボックス部20に対する圧着部30側の方向を後方と表記する。
また、本実施形態では、圧着端子10は雌型圧着端子として形成されているが、圧着部30を有する圧着端子であれば、圧着端子10はボックス部20に挿入接続される挿入タブと圧着部30とを備える雄型圧着端子であってもよい。ボックス部や挿入タブが無く、複数の圧着部30のみを備え、複数本の被覆電線の導体をそれぞれ挿入して圧着して一体に接続する圧着端子であってもよい。
圧着端子10は、板材としての表面に錫メッキ(Snメッキ)処理が施された黄銅等の銅系材料からなる銅合金条を、平面展開した圧着端子10の形状に打ち抜いた後、この銅合金条を中空四角柱体のボックス部20と後方視略O型形状の圧着部30とからなる立体的な端子形状に曲げ加工し、圧着部30を溶接したクローズバレル形式の端子である。
ボックス部20は、長手方向Xの後方に向かって折り曲げられ、雄型圧着端子の挿入タブに接触する弾性接触片21を備えている。ボックス部20は、底面部22の幅方向Y両側部に連設された側面部23を重なり合うように折り曲げることによって、長手方向Xの前方側から見て略四角形状に構成されている。
被覆電線を圧着する前の圧着部30は、圧着面31の幅方向Yの両側に延出したバレル構成片32を圧着面31が内側になるように丸めてバレル構成片32の対向端部32a同士を突き合せ溶接することによって、後方視略O型形状に形成されている。バレル構成片32の長手方向Xの長さは、被覆電線から露出する導体部の長手方向Xの長さより長く形成されている。
圧着部30は、図2に示すように、被覆電線の被覆部を圧着する被覆圧着範囲30a(被覆圧着部)と、被覆電線から露出した電線を圧着する電線圧着範囲30bと、被覆圧着範囲30aとは反対側で電線圧着範囲30bより前方端部を略平板状に押しつぶすように変形させた封止部30cと、を備えた断面中空筒形状を成している。圧着部30の内面には、YZ平面内で延びる溝である係止溝33が長手方向Xに沿って所定間隔を隔てて複数本形成されている。
また、電線圧着範囲30bの内面には、圧着状態において、被覆電線のアルミニウム芯線が食い込むYZ平面の溝である係止溝33(電線用係止溝)が、長手方向Xに沿って所定間隔を隔てて3本形成されている。
なお、係止溝33は、断面矩形凹形状に形成されている。また、係止溝33は、圧着面31からバレル構成片32の途中まで形成されている。この係止溝33は、被覆電線から露出した電線を食い込ませることによって圧着部30と電線との間の導通性を向上させるためのものである。なお、係止溝33は、圧着面31からバレル構成片32までの範囲内に連続的に形成され、圧着部30内で環状の溝を形成していてもよい。また、係止溝33は溝として形成されているが、係止部の態様は溝に限定されず、たとえば円形、矩形の穴(凹部)が離散的に配置されたものでもよい。
次に、図3を参照して、本発明の実施形態に係る接続構造体1に用いる被覆電線200の構成について説明する。
この被覆電線200は、図3に示すように、アルミ系材料からなるアルミニウム芯線201(導体部)と、アルミニウム芯線201を被覆する絶縁被覆202(被覆部)とを有する。被覆電線200を圧着端子10に圧着接続する際には、絶縁被覆202のうち先端の領域が除去され、露出したアルミニウム芯線である電線露出部201aが形成される。ここで、絶縁被覆202は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)などである。
次に、本発明の実施形態に係る接続構造体1について説明する。
本実施形態に係る接続構造体1は、図4に示すように、上述した被覆電線200が、圧着端子10の圧着部30に圧着接続されたものである。
すなわち、接続構造体1において、圧着部30が、被覆電線200が挿入されているX方向(長手方向)の後方(一方)の端部とは、反対側(前方側)の端部が封止された断面中空筒形状に形成されている。また、圧着部30において、封止された前方側の端部は、溶接することによって封止されている。
さらに、圧着部30の後方の端部は被覆電線200と圧着されており、被覆電線200の絶縁被覆202と、被覆圧着範囲30aにおける圧着部30とが圧着されることにより、圧着部30の後方の端部が封止されている。そして、圧着部30の後方の端部には圧着部30を封止する樹脂を充填可能な樹脂充填部50が形成され、図5(a)に示すように、この樹脂充填部50には樹脂が充填され樹脂部51が形成されている。なお、図5(a)においては、係止溝33の図示が省略されている。
樹脂充填部50は、圧着部30の後方の端部の先端に形成された拡径部36と、絶縁被覆202の径が長手方向に変化することで前記被覆部に形成された段差部202bとによって形成されている。より具体的には、図5(a)に示すように、圧着部30の後方側の先端に、圧着部30が被覆電線200を圧着する被覆圧着部35の径よりも拡径している拡径部36と、被覆電線200の被覆先端202a側と反対側の絶縁被覆202の厚さが厚くなることで形成された段差部202bとで、樹脂充填部50が形成されている。なお、本実施形態においては、圧着部30の後方側先端に形成された拡径部36が、前方側から後方側に向かうにしたがって、漸次拡径している。
ここで、被覆電線200と圧着部30とは、例えば後述する一対の押圧刃301、302によって押圧されることによって圧着されるが、押圧刃301、302同士が噛み合う領域において圧着力が低下し、絶縁被覆202と被覆圧着部35(圧着部30)との圧着箇所において長手方向Xに伸びる線状の隙間Sが形成されることがある(図5(b)参照)。図5(b)は、絶縁被覆202と被覆圧着部35との間に形成される、長手方向Xに伸びる線状の隙間Sを含む断面の拡大説明図である。本実施形態においては、図5(b)に示すように、隙間Sに樹脂が充填され、樹脂部52が形成されている。すなわち、樹脂充填部50から隙間Sにわたって樹脂が充填され、樹脂部51、52が形成されているのである。
なお、圧着部30には、図6に示すように、被覆圧着部35の外面において圧着部30の周方向にわたってリング形状の凹部37a、38aが形成されていることが好ましい。この凹部37a、38aは、被覆圧着部35を外方から押圧することによって形成されるものであり、この凹部37a、38aが形成されていることにより、図7(a)に示すように、絶縁被覆202を押圧する凸部37b、38bが被覆圧着部35の内面の周方向にわたって形成されている。この凸部37b、38bは、圧着部30の内部に水分が浸入することを防止するために形成されている。
図7(b)に、絶縁被覆202と被覆圧着部35との間に形成される、長手方向Xに伸びる線状の隙間Sを含む断面の拡大説明図を示す。この図7(b)は、凸部37b、38bも含む領域の拡大説明図である。このように凸部37b、38bが形成されている場合は、樹脂部52が隙間Sに形成されており、この樹脂部52は、樹脂部51から樹脂充填部50に近い側の凸部38bの位置まで伸びている。
上述の樹脂部51、52を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系、シリコン系、及びフッ素系のいずれかの樹脂であることが好ましい。また、樹脂は、空気遮断で硬化し、かつ硬化剤により化学反応で硬化することが好ましい。
また、樹脂は、樹脂を充填する際の流動性を確保するために、固化前の状態において、絶縁被覆202及び圧着部30に対する濡れ性が良好であることが好ましい。例えば、25℃において、ガラス板に対する接触角が10°程度の樹脂を用いることが好ましい。
また、樹脂は、固化前の粘度が23℃で1000mPa・s以下であることが好ましい。また、樹脂は、固化前の動粘度が25℃で5cSt以上10cSt以下であることが好ましい。
樹脂の固化前の粘度または動粘度が上記の範囲の場合、樹脂充填部から樹脂を充填する際に、樹脂が絶縁被覆202及び被覆圧着部35との間の隙間に浸透しやすくなり、隙間を確実に樹脂によって埋めることができる。
なお、樹脂の粘度及び動粘度は、JIS Z 8803に準拠して測定することができる。
また、樹脂は、絶縁被覆202と圧着部30との間の隙間を埋め止水性を維持するために、接着性を有することが好ましい。具体的には、樹脂によって接着された絶縁被覆202と圧着部30との引張せん断応力は、6MPa以上15MPa以下であることが好ましい。
引張せん断応力は、次のようにして測定することができる。図18に示すように、絶縁被覆202を構成する材料からなる板材61(長さ100mm、幅20mm、板厚3mm)と、圧着部30を構成する材料からなる板材62(長さ100mm、幅20mm、板厚2mm)とを、樹脂63を介して15mm×20mmの範囲において接着し、試験片を得る。そして、接着面と平行な方向に引張りの荷重をかけて接着面の破壊するときの最大荷重を測定し、この最大荷重から引張せん断応力を算出する。
また、樹脂は、例えば120℃のような高温環境においても、弾性力を維持できることが好ましい。
上述のように、樹脂が接着性を有していたり、高温においても弾性力を維持できたりする場合には、信頼性を向上させ、より確実に圧着部30の後方側の端部を封止することができる。
次に、図面を参照して、本実施形態に係る接続構造体1の製造方法について説明する。まず、図8〜11を参照して、接続構造体1に用いる圧着端子10の製造方法を説明する。
圧着端子10は、銅合金条を平面展開した端子形状に打ち抜いた後、中空四角柱体のボックス部20と後方視略O型形状の圧着部30とからなる立体的な端子形状に銅合金条を曲げ加工し、圧着部30を溶接することにより製造される。この際、図8に示すように、圧着部30は、バレル構成片32の対向端部32a同士を突き合わせた長手方向Xの長手方向溶接箇所W1と封止部30cにおいて圧着部30の前方を完全に封止する幅方向Yの幅方向溶接箇所W2とを溶接することによって形成される。
詳しくは、圧着部30を製造する際は、始めに、対向端部32a同士が底面側で突き合わさるようにして圧着面31及びバレル構成片32を丸めて円筒状に構成する。その後、図8の領域Rの拡大図である図9に示すように、円筒状の前方部分を上面側から底面側に押し付けて略平板状となるように変形させる。そして、図10に示すように、円筒状の対向端部32a同士を突き合わせた長手方向溶接箇所W1を溶接した後、幅方向溶接箇所W2を溶接する。このとき、長手方向溶接箇所W1及び幅方向溶接箇所W2は、図11に示す仮想平面Pにおける同一平面上となるように配置されているため、単一焦点のレーザー溶接で溶接することができる。
図11に示すように、長手方向溶接箇所W1及び幅方向溶接箇所W2の溶接は、ファイバーレーザー溶接装置Fwを利用してファイバーレーザー溶接にて行う。ファイバーレーザー溶接は、約1.08μmの波長のファイバーレーザー光を用いた溶接のことを意味する。ファイバーレーザー光は、理想的なガウスビームであり、回折限界まで集光可能であるため、YAGレーザーやCOレーザーでは実現できなかった30μm以下の集光スポット径を構成できる。従って、エネルギー密度の高い溶接を容易に実現できる。
このように、圧着端子10においては、ファイバーレーザー溶接によって長手方向溶接箇所W1及び幅方向溶接箇所W2を溶接しているため、止水性のある圧着部30を構成することができる。これにより、圧着部30で圧着接続された被覆電線200の電線露出部201aが外気に曝されることがなく、アルミニウム芯線201の劣化や経年変化が起きることを抑制できる。従って、アルミニウム芯線201に腐食が発生することがなく、その腐食を原因とする電気抵抗の上昇も防止できるので、安定した導電性が得られる。
また上記溶接を、ファイバーレーザー溶接で行うことにより、隙間の無い圧着部30を構成し、圧着状態において圧着部30の内部に水分が浸入することを確実に防止でき、止水性を向上させることができる。また、ファイバーレーザー溶接は他のレーザー溶接と比べ、焦点を極小なスポットに合わせ、高出力なレーザー溶接を実現することができると共に、連続照射が可能である。そのため、ファイバーレーザー溶接を採用することによって、微細な圧着端子10に対して、レーザー痕の発生を抑制しつつ微細加工が可能になると共に連続加工が可能になる。従って、確実な止水性を有する溶接を行うことができる。
以上のようにして、接続構造体1に用いられる圧着端子10の製造が完了する。
次に、被覆電線200の絶縁被覆202より先端側で露出するアルミニウム芯線201の電線露出部201aを、電線露出部201aの先端201aaの長手方向Xの位置が圧着部30における封止部30cより後方となるように、被覆電線200を圧着部30に挿入して配置する。
そして、圧着部30の上方及び下方に、圧着工具300の一対の押圧刃301、302を配置する。このとき、圧着時において被覆圧着部35の一部が、押圧刃301、302の外方に出るように圧着部30の長手方向の位置を調整する。そして、押圧刃301、302を互いに押し付け、被覆電線200と圧着部30とを圧着することによって、電線露出部201aの先端201aaから絶縁被覆202の被覆先端202aより後方までの領域を圧着部30で圧着して一体的に囲繞する(図12参照)。これにより、圧着部30は、被覆電線200の絶縁被覆202及びアルミニウム芯線201の電線露出部201aの周面に対して密着した状態に圧着する。
このとき、図12に示すように、被覆電線200と圧着部30とが圧着される際に、圧着部30の後方側の先端が、圧着部30が絶縁被覆202を圧着する被覆圧着部35の径よりも拡径することにより、拡径部36が形成される。すなわち、圧着時において、圧着部の先端が、前方側から後方側に向かうにしたがって、漸次、径が広がることにより拡径部36が形成されるのである。
一方、圧着部30と被覆電線200とが圧着される際に、絶縁被覆202が被覆先端202a側と反対側の方向に押し出されることで、被覆先端202a側と反対側の絶縁被覆202の厚さが厚くなるように絶縁被覆202に段差部202bが形成される。
このようにして、拡径部36を形成するとともに、段差部202bを形成することにより、圧着部30の後方の端部側に、圧着部30を封止する樹脂を充填可能な樹脂充填部50を形成する。
なお、本実施形態では、電線圧着範囲30bと電線露出部201a、被覆圧着範囲30aと被覆電線200を、一括に圧着する場合を一例として説明しているが、電線圧着範囲30bと電線露出部201a、被覆圧着範囲30aと被覆電線200のそれぞれを別々に圧着しても良い。
また、押圧刃301、302を互いに押し付け、被覆電線200と圧着部30とを圧着する場合には、前述したように、被覆電線200と圧着部30との間に、長手方向Xに伸びる線状の隙間Sが生じてしまうことがある(図5(b)参照)。このような隙間Sが生じると止水性が低下してしまうため、樹脂充填部50から樹脂を注入し、長手方向Xに伸びる隙間Sを埋める樹脂を充填して樹脂部51、52を設ける。
なお、充填された固化前の樹脂については、例えば空気遮断で硬化させたり、硬化剤により化学反応で硬化させたりすることができる。
樹脂を充填する際には、図12に示すように、圧着部30の前方が下側に、樹脂充填部50が上側となるように配置し、樹脂充填部50に樹脂を充填すると良い。これにより、重力を利用して絶縁被覆202と圧着部30との間の隙間Sに樹脂が流れ込みやすくなる。
また、樹脂を充填する際に、樹脂充填部50に溜める樹脂の量を調節することにより、絶縁被覆202と圧着部30との間の隙間Sに流れ込む樹脂の量を制御することができる。
上記のようにして、本実施形態に係る接続構造体1の製造方法が完了する。
なお、被覆圧着部35の内面に凸部37b、38bを形成する場合は、例えば、図13に示すように、圧着工具300Aの一対の押圧刃301A、302Aに、圧着時にリング形状となる凸部303A、304Aを設けておき、圧着部30を圧着する際に被覆圧着部35の外面に凹部37a、38aが形成されるようにしておけばよい。この場合、圧着部30と被覆電線200を圧着する際に、一度の圧着で、電線圧着範囲30bと電線露出部201a、被覆圧着範囲30aと被覆電線200を圧着するとともに、凹部37a、38aを形成することができる。このように凹部37a、38aを形成することによって、被覆圧着部35の内面に凸部37b、38bを形成することができる。この場合、樹脂充填部50から樹脂を充填した際に、凸部38bの位置まで樹脂を流れ込ませ、樹脂を隙間Sに確実に溜めた状態で樹脂を硬化させることができ、図7(b)に示すように、樹脂部51から凹部38aの位置まで樹脂部52を形成可能となる。
以上のような構成とされた本実施形態に係る接続構造体1においては、圧着部30の後方の端部が被覆電線200と圧着されることにより封止されている。そして、さらにこの接続構造体1では、圧着部30の後方の端部には圧着部30を封止する樹脂を充填可能な樹脂充填部50が形成され、この樹脂充填部50には樹脂が充填され、樹脂部51が形成されているので、確実に圧着部30の後方の端部を封止し、止水性を向上させることができる。
本実施形態においては、長手方向Xに伸びる、絶縁被覆202と被覆圧着部35との間の隙間Sが樹脂によって充填され、樹脂部52が形成されているので、より確実に圧着部30の後方の端部を封止することが可能である。
また、好ましくは、被覆圧着部35の外面に周方向にわたってリング形状の凹部37a、38aが形成されることにより被覆圧着部35の内面に凸部37b、38bが形成される構成とされている。この場合、樹脂部52を凸部38bの位置まで形成することにより、樹脂部51、52で圧着部30の後方側を封止するとともに、凸部37b、38bによっても封止することができ、止水性をより向上させることが可能となる。なお、本実施形態においては、被覆圧着部35の内面に凸部が二つ形成されている場合について説明しているが、凸部は少なくとも一つ形成されていれば良い。
また、上述したように、圧着端子10では、長手方向溶接箇所W1及び幅方向溶接箇所W2が溶接されている。このため、被覆電線200を圧着した状態では、圧着部30の前方及び外部から圧着部30の内部に水が浸入することがない止水性が実現されている。
以上のように、被覆電線200を圧着した状態において接続構造体1は、圧着部30の高い止水性により、アルミニウム芯線201の電線露出部201aと圧着部30の内面とが密着した接触箇所に水が触れることがない。
また、アルミニウム芯線201はアルミ系材料によって形成され、圧着部30は銅系材料によって形成されている。このため、銅線からなる芯線を有する被覆電線に比して軽量化できる。また、上述したように接続構造体1では止水性が良好であるため、アルミニウム芯線201に腐食が発生することがなく、その腐食を原因として電気抵抗が上昇することもないので、アルミニウム芯線201の導電性が安定する。結果として、例えば、撚線、単線、平角線等のアルミニウム芯線201を圧着端子10の圧着部30に対して確実、かつ、強固に接続することができる。
また、本実施形態に係る接続構造体1、及び接続構造体1の製造方法においては、圧着部30の先端に拡径部36を形成しているので、樹脂充填部50が広く形成されており、樹脂を充填しやすく、生産性を向上させることができる。また、このように、樹脂充填部50が広く形成されていることにより、樹脂を溜めることができ樹脂部51を形成することができる。さらに、接続構造体1では、段差部202bを形成することにより、樹脂充填部50がさらに広がっており、より樹脂を充填しやすく、かつ確実に樹脂部51を形成することができる。
また、以上のように構成された接続構造体1は、接続構造体1にコネクタを装着してワイヤーハーネスを構成することが可能である。図14は、ワイヤーハーネスが一対のコネクタハウジングに装着されてなるコネクタを示す斜視図である。図14に示すように、雌型圧着端子である圧着端子10を有する接続構造体1と、圧着端子として雄型圧着端子(図示せず)を用いた接続構造体1bとがそれぞれ、一対のコネクタハウジングHcに装着されている。そして、接続構造体1,1bをそれぞれ、一対のコネクタハウジングHcのそれぞれに装着することによって、確実な導電性を有する雌型コネクタCa及び雄型コネクタCbを構成できる。
詳しくは、接続構造体1を雌型のコネクタハウジングHcに装着することにより、雌型コネクタCaを備えたワイヤーハーネス100aを構成する。また、雄型圧着端子(図示せず)を有して構成された接続構造体1bを雄型のコネクタハウジングHcに装着することにより、雄型コネクタCbを備えたワイヤーハーネス100bを構成する。そして、雌型コネクタCaと雄型コネクタCbとをX方向に沿って嵌合することによって、ワイヤーハーネス100a,100b同士を電気的かつ物理的に接続することができる。
このように、接続構造体1は、コネクタハウジングHcのキャビティ内に収容されるので、接続構造体1の形状は、キャビティ内に収容可能な形状に形成されていることが好ましい。より具体的には、接続構造体1は、その製造時において樹脂充填部50がコネクタハウジングHcのキャビティ内に収容される形状に形成されていることが好ましい。
また、上記の実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、圧着部30の製造の際に長手方向の溶接個所W1の高さが変わらない場合の圧着端子の製造方法を説明したが、図15〜図17に示すように、長手方向溶接箇所W3が高さ方向に変化する溶接を行っても良い。この場合、様々な形状の止水性のある圧着部30Aを構成することができる。
すなわち、図15に示すように、プレス加工によって端子形状に打ち抜いた板材としての銅合金条を丸めると共に、長手方向Xの前端部分をつぶして、封止部30Acを含む圧着部30Aの形状にあらかじめ形成する。
そして、丸めて突き合わさる対向端部32Aa同士を長手方向Xの長手方向溶接箇所W3に沿ってファイバーレーザー溶接を行うと共に、封止部30Acにおいて幅方向Yの幅方向溶接箇所W4に沿って溶接して封止する。以上により、圧着部30Aを完成させる。ここで、上記の実施形態においては、図8〜11に示すように、いわゆる背開きの状態で上述した一連の工程によるファイバーレーザー溶接を行っているため、製造工程中に圧着端子10を反対側に裏返す必要が生じる。これに対し、図15及び図16に示すように、上述したプレス加工からファイバーレーザー溶接までの一連の工程を通じて、圧着端子10を裏返すことなく加工できる。そのため、製造工程を簡略化することができ、たとえば数百個/分程度の圧着端子の量産化が実現可能になるので、それに伴う低コスト化を図ることができる。
なお、図8〜11に示すように、圧着部30Aの底面側で対向端部32Aa同士を突き合わせて溶接してもよく、図15及び図16に示すように、圧着部30Aの上面側で対向端部32Aa同士を突き合わせて溶接してもよい。
さらには、図17に示すように、圧着状態において、圧着部30Aの被覆圧着範囲30Aaを、被覆電線200の絶縁被覆202に対して正面視円形状に圧着し、電線圧着範囲30Abを、アルミニウム芯線201に対して正面視略U字状に圧着してもよい。
また、圧着端子10は、図15〜17に示すように、帯状のキャリアKに取り付けられたままの状態で圧着部30Aを溶接してから、被覆電線200を圧着接続する際、又は被覆電線200を圧着接続した後、キャリアKから分離してもよいが、キャリアKから分離された状態で圧着端子10を形成し、被覆電線200を圧着接続してもよい。
また、図17に示すように、圧着部30Aと被覆電線200とが圧着された状態において、圧着部30Aの後方側には樹脂充填部50が形成されており、この樹脂充填部50に樹脂が充填されることによって、より止水性が向上している。
以上のように製造することにより、アルミニウム芯線201を圧着部30Aに挿入した圧着状態において、すき間が少なく止水性の高い圧着状態を実現できる圧着端子10を製造することができる。従って、径が小さいアルミニウム芯線201であっても、すき間が少なく止水性の高い圧着状態を実現できる雌型圧着端子などの圧着端子10を製造することができる。
また、上記の実施形態では、被覆電線200と圧着端子10とを圧着した後に、樹脂充填部50に樹脂を充填する場合について説明したが、被覆電線200と圧着端子10とを圧着した後に、所定の加熱処理を行い、その後、樹脂充填部50に樹脂を充填する構成としても良い。
また、上記の実施形態においては、圧着端子10の圧着部30を、アルミ系材料(アルミニウム及びアルミニウム合金)からなるアルミニウム芯線201に圧着接続する例を説明したが、芯線にその他の金属を用いてもよく、例えば、銅(Cu)やCu合金などからなる金属導線や、アルミニウム線の外周に銅を配置してなる銅クラッドアルミ線(CA線)などを用いることも可能である。また、上述した実施形態において、ファイバーレーザー溶接以外であっても、所定の条件下においては、YAGレーザーやCOレーザーなどのその他のレーザーによる溶接を行うことも可能である。
1、1b、101 接続構造体
10 圧着端子
20 ボックス部
21 弾性接触片
22 底面部
23 側面部
30、30A 圧着部
30a、30Aa 被覆圧着範囲
30b、30Ab 電線圧着範囲
30c、30Ac 封止部
31 圧着面
32 バレル構成片
32a、32Aa 対向端部
33 係止溝
35 被覆圧着部
36 拡径部
37a、38a 凹部
37b、38b 凸部
40 トランジション部
50 樹脂充填部
51、52 樹脂部(樹脂)
61、62 板材
63 樹脂
100a、100b ワイヤーハーネス
200 被覆電線
201 アルミニウム芯線(導体部)
201a 電線露出部
201aa 先端
202 絶縁被覆(被覆部)
202a 被覆先端
202b 段差部
300、300A 圧着工具
301、301A、302、302A 押圧刃
303A、304A 凸部
Ca 雌型コネクタ
Cb 雄型コネクタ
Fw ファイバーレーザー溶接装置
Hc コネクタハウジング
P 仮想平面
S 隙間
W1、W3 長手方向溶接箇所
W2、W4 幅方向溶接箇所
X 長手方向
Y 幅方向
Z 高さ方向

Claims (2)

  1. 導体部及び前記導体部を被覆する被覆部を有する被覆電線が、該被覆電線に圧着接続する圧着部を有する圧着端子に接続された接続構造体の製造方法であって、
    前記圧着部を、前記被覆電線が挿入される一方の端部とは反対側の端部が溶接により封止された断面中空筒形状に形成し、
    前記圧着部の一方の端部から前記被覆電線を挿通し、前記圧着端子と前記被覆電線とを圧着接続し、この圧着接続の際に前記圧着部の一方の端部の先端側において、前記圧着部の一方の端部の先端に拡径部を形成するとともに、前記被覆部の径を長手方向に変化させることで前記被覆部に段差部を形成することにより、前記圧着部を封止する樹脂を充填可能な前記樹脂充填部を形成し、
    該樹脂充填部から樹脂を充填することを特徴とする接続構造体の製造方法。
  2. 前記樹脂を充填する際に、前記圧着部の一方の端部とは反対側の端部が下側に、前記樹脂充填部が上側となるように配置し、前記樹脂充填部に樹脂を充填することを特徴とする請求項1に記載の接続構造体の製造方法。
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