JP6257714B2 - 組換えヒトイズロン酸−2−スルファターゼの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は,組換えヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(rhI2S)の製造方法に関する。より詳しくは,本発明は,rhI2S産生哺乳類細胞を無血清培地中で培養することによりrhI2Sを製造する方法に,及び,該培養上清中に得られたヒトイズロン酸−2−スルファターゼを,カラムクロマトグラフィーを用いて,高収率で且つ精製されたタンパク質をそのまま医薬として使用し得る程度にまで高純度で精製するための方法に関する。本発明は,更に,高効率で細胞に取り込まれる能力及びマンノース6−リン酸(M6P)受容体に対する高親和性を有し,且つ高いM6P含量を有する結合オリゴ糖鎖を有することを特徴とするグリコシル化rhI2Sに関する。
イズロン酸−2−スルファターゼ(I2S)は,ヘパラン硫酸やデルマタン硫酸のようなグリコサミノグリカン(GAG)分子内に存在する硫酸エステル結合を加水分解する活性を有するライソゾーム酵素の1つである。ハンター症候群の患者は,イズロン酸−2−スルファターゼ活性を遺伝的に欠損している。この酵素の欠損は,ヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸の代謝異常を引き起こし,それは次いで肝臓や腎臓のような組織中にそれらの分子の断片の蓄積や,更には尿中へのヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸の排泄をも引き起こす。その結果,これらの異常により,骨格の変形及び重症の精神遅滞を含む,ハンター症候群の患者における種々の症状が引き起こされる。
ハンター症候群の患者がI2S活性を僅かしか示さないという事実は,1970年代に既に知られており,I2S遺伝子の異常がこの疾病の原因であると予想されていた。1999年には, I2Sをコードするヒト遺伝子が単離され,この疾患に対する原因遺伝子であることが確認された(非特許文献1を参照)。
上記の事実に基づいて,患者のI2S活性を補充するために,患者への正常なマクロファ−ジ(非特許文献2を参照)の移植や,正常血清(非特許文献3を参照)の静注を含むI2S置換が,1970年代から患者の臨床症状を改善するために試みられてきた。それらの試みの結果,臨床症状における改良は確認されなかったものの,I2S活性の補充によって患者の尿中のヘパラン硫酸の濃度が減少したことが示されたので,I2S補充療法がハンター症候群に対して臨床効果を有する可能性が示唆された。しかしながら,I2S補充療法の実用化は,この酵素の供給不足により非常に制限されていた。
1999年におけるI2Sをコードする遺伝子の単離は,組換え技術を用いてI2Sを大量生産し,この酵素を治療薬としてハンター症候群の酵素補充療法に使用できることを可能にした(特許文献1を参照)。しかしながら,医薬品として直接使用されるに十分であるような高純度でI2S酵素を供給するための方法は,これまで報告されていない。
米国特許公報 5932211
Wilson PJ et al., Proc Natl Acad Sci USA. 87: 8531-5, 1990. Dean MF et al., J Clin Invest. 63: 138-45, 1979. Brown FR 3rd et al., Am J Med Genet. 13: 309-18, 1982.
上記背景の下で,本発明の目的は,I2S産生哺乳類細胞を無血清培地存在下で培養して組換えヒトI2S(rhI2S)を製造するための方法を提供することである。
本発明の更なる目的は,培養上清中に得られたrhI2Sを,種々のカラムクロマトグラフィーを用いて,高収率で且つ医薬としてそのまま使用できる高純度にまで精製するための方法を提供することである。
本発明者らは,I2S産生哺乳類細胞の無血清培地中での培養物の上清中に含まれるrhI2Sを,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー,色素親和性カラムクロマトグラフィー,陰イオン交換カラムクロマトグラフィー,リン酸基に親和性を有するカラムを用いたカラムクロマトグラフィー,及びゲル濾過カラムクロマトグラフィーの組み合わせからなる精製方法を用いることで,非常に高い収率で且つそのまま医薬として使用できる高純度にまで精製できることを見出した。本発明は,上記発見に基づき更なる研究を通じて完成されたものである。
すなわち,本発明は以下のものを提供する。
1.組換えヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(rhI2S)の製造方法であって,次のステップすなわち,
(a) 培地中にrhI2Sを分泌させるために無血清培地中でrhI2S産生哺乳類細胞を培養し,
(b) 上記ステップ(a)で得られた培養物から細胞を除去することによって培養上清を回収し,
(c) 上記ステップ(b)で得られた培養上清を陽イオン交換カラムクロマトグラフィーに付してrhI2S活性を有する画分を回収し,
(d) 上記ステップ(c)で回収された該画分を色素親和性カラムクロマトグラフィーに付してrhI2S活性を有する画分を回収し,
(e) 上記ステップ(d)で回収された該画分を陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに付してrhI2S活性を有する画分を回収し,
(f) 上記ステップ(e)で回収された該画分をリン酸基に対し親和性をもつ材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーに付してrhI2S活性を有する画分を回収し,そして,
(g) 上記ステップ(f)で回収された該画分をゲルろ過カラムクロマトグラフィーに付してrhI2S活性を有する画分を回収することを,この順で含んでなるもの。
2.該陽イオン交換カラムクロマトグラフィーに使用した陽イオン交換体が弱陽イオン交換体である,上記(1)の方法。
3.該弱陽イオン交換体が疎水性作用及び疎水結合形成の双方に基づき選択性を保持するものである,上記(2)の方法。
4.該弱陽イオン交換体がフェニル基,アミド結合及びカルボキシル基を有するものである,上記(2)又は(3)の方法。
5.該色素親和性カラムクロマトグラフィーに用いられる色素がブル−トリアジン色素である,上記(1)ないし(4)の何れかの方法。
6.リン酸基に親和性をもつ材料が,フルオロアパタイト及びハイドロキシアパタイトからなる群から選択されるものである,上記(1)ないし(5)の何れかの方法。
7.リン酸基に親和性をもつ材料がフルオロアパタイトである,上記(6)の方法。
8.該哺乳類細胞が,EF-1(アルファ)プロモーターの制御下にrhI2Sを発現するように構築された発現ベクターで形質転換されたCHO細胞である,上記(1)ないし(7)の何れかの方法。
9.不純物からのrhI2Sの精製方法であって,rhI2Sは,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,次のステップ,
(a)不純物を含んだrhI2Sを,リン酸基に親和性をもつ固相材料を用いたクロマトグラフィー用カラムに付し,
(b)該カラムにrhI2Sを吸着させつつ該カラムを洗うために,該カラムを通して第1の移動相を流し,そして,
(c)該カラムを通して,第1の移動相より高い濃度でリン酸塩を含む第2の移動相を流すことにより,該カラムからrhI2Sを溶出することを,この順で含んでなるものである,精製方法。
る。
10.リン酸基に親和性をもつ該材料が,フルオロアパタイト及びハイドロキシアパタイトからなる群から選択されるものである,上記(9)の製造方法。
11.リン酸基に親和性をもつ該材料がフルオロアパタイトである,上記(10)の製造方法。
12.rhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が3.5〜6.0の範囲にある,rhI2S。
13.上記(12)のrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が3.6〜5.5個の範囲にある,rhI2S。
14.上記(12)のrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が3.7〜5.4個の範囲にある,rhI2S。
15.上記(12)のrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が4.0〜6.0個の範囲にある,rhI2S。
16.上記(12)のrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が4.2〜5.8個の範囲にある,rhI2S。
17.上記(12)のrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が4.5〜5.4個の範囲にある,rhI2S。
18.上記(12)ないし(17)の何れかのrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が7.5〜20x10-10 mol/Lの範囲にある,rhI2S。
19.上記(12)ないし(17)の何れかのrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が7.5〜15x10-10 mol/Lの範囲にある,rhI2S。
20.上記(12)ないし(17)の何れかのrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が4.5〜20x10-10 mol/Lの範囲にある,rhI2S。
21.上記(12)ないし(17)の何れかのrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が5.0〜15x10-10 mol/Lの範囲にある,rhI2S。
22.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が3.5〜6.0個の範囲にある,rhI2S。
23.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が3.6〜5.5個の範囲にある,rhI2S。
24.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が3.7〜5.4個の範囲にある,rhI2S。
25.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が4.0〜6.0個の範囲にある,rhI2S。
26.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が4.2〜5.8個の範囲にある,rhI2S。
27.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が4.5〜5.4個の範囲にある,rhI2S。
28.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が7.5〜20x10-10 mol/Lの範囲にある,rhI2S。
29.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が7.5〜15x10-10 mol/Lの範囲にある,rhI2S。
30.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が4.5〜20x10-10 mol/Lの範囲にある,rhI2S。
31.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が5.0〜15x10-10 mol/Lの範囲にある,rhI2S。
32.上記(1)ないし(11)の何れかの方法により製造されるrhI2S。
本発明は,細胞の無血清培養から始めてrhI2Sを製造することを可能にするから,ウイルスやプリオン等のような病原因子を含む血清由来の夾雑物を含有しないrhI2Sを提供する。従って,本発明により得られるrhI2Sは,そのような汚染因子への曝露のリスクを実質的に伴わない,安全な医薬として,ヒトの身体内に投与することができる。更に,本発明は,有機溶媒の如何なる使用も実質的に回避してrhI2Sを精製することを可能にするから,さもなければ使用された有機溶媒への曝露によって引き起こされかねないrhI2Sの変性のリスクを排除する。更には,本発明による精製方法を実施した後に残される排液は有機溶媒を含まないことから,本発明は環境面で好ましく,また,他の方法では廃液に含まれるであろう有機溶媒を処理するための施設を必要としないことから,経済面においても,好ましい。
更に,本発明の製造方法によれば,糖鎖中にM6P残基を有するrhI2Sを選択的に精製することができる。rhI2Sは,人体への投与後にその酵素活性を発揮するためには,組織表面上に発現しているマンノース−6−リン酸受容体を介して適切な細胞によって取り込まれる必要がある。従って,本発明によるrhI2Sの選択的精製により,医薬としてのrhI2Sの有効性は劇的に増加する。
図1−1は,ベクターpE-neo/hGHpA(I2S)の構築のための方法を示す模式図の第一の部分を示す。 図1−2は,ベクターpE-neo/hGHpA(I2S)の構築のための方法を示す模式図の第二の部分を示す。 図2は,rhI2Sを発現する組換え細胞の増殖曲線を示す。 図3は,精製したhI2SのSDS-PAGE電気泳動によって得られたパターンを示す。レーン1〜3には,それぞれ,ロット番号1〜3の精製したrhI2Sを2.5μgずつ加えた。 図4は,精製したrhI2S(ロット番号1)のSE-HPLCチャートを示す。縦軸及び横軸は,215 nmでの吸光度及び保持時間をそれぞれ示す。 図5は,精製したrhI2S(ロット番号1)のSAX-HPLC図表を示す。垂直及び水平軸は,280 nmの吸光度及び保持時間をそれぞれ示す。 図6は,rhI2S(ロット番号1)及び市販の医療用rhI2Sについての繊維芽細胞への取り込みの測定結果を示す。縦軸は,総細胞タンパク質の単位質量(mg)当たりの取り込まれたrhI2Sの量(ng)を示す(ng/mg,総細胞タンパク質)。横軸は,培地中のrhI2Sの濃度を示す。黒丸と黒三角は,rhI2S(ロット番号1)及び市販の医療用rhI2Sについての繊維芽細胞による取り込み値を,それぞれ示す。横軸の付近の白丸と白三角は,20 mmol/L のM6P存在下におけるrhI2S(ロット番号1)及び市販の医療用rhI2Sの繊維芽細胞による取り込み値を,それぞれ示す。 図7は,M6P含量測定のための装置及び流路の模式図を示す。1:オートサンプラー,2:カラムヒーター,3:カラム,4:ヒートブロック,5:水槽,6:背圧発生器,7:蛍光検出器,A:移動相A,B:移動相B,C:反応緩衝液
本発明において,組換えヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(rhI2S)は,好ましくは525個のアミノ酸残基からなり単一の糖鎖ポリペプチドを含んでなるヒト野生型I2Sである組換えタンパク質であるが,野生型ヒトI2Sと比較して1個又は2個以上のアミノ酸の置換,欠失,付加及び挿入を有するものであるヒト変異型のI2Sである組換えタンパク質を排除するものではない。野生型ヒトI2Sのアミノ酸配列(N末端シグナル配列を含む)及びこれをコードするDNA配列は,配列番号9及び配列番号10としてそれぞれ示されている。N末端シグナル配列は25のアミノ酸からなり,翻訳後に除去される。
本発明において,「組換えヒトI2S産生哺乳類細胞」又は「rhI2S産生哺乳類細胞」の語は,ヒトI2Sをコードする遺伝子を発現,又は強発現するように人工的に操作された哺乳類細胞を意味する。一般に,強発現する遺伝子は,その遺伝子が組み込まれた発現ベクターを用いて哺乳類細胞に導入(形質転換)されたものであるが,強発現する遺伝子は,その遺伝子が強発現するような仕方で人為的に修正された内因性遺伝子であってもよい。内因性遺伝子自体を強発現するように人為的にを修正するための手段の例としては,当該内因性遺伝子の上流にあるプロモーターを当該遺伝子の強発現を引き起こすプロモーターで置換することを含むが,これに限定されない。そのような方法はいくつかの特許文献(例えばWO 94/12650,またWO 95/31560)に開示されている。どの哺乳類細胞が用いられるかについて,特に制限はないが,好ましくは,ヒト−,マウス−又はハムスタ−由来の細胞,取り分け,チャイニーズハムスター卵巣細胞由来のCHO細胞である。
本発明において,「組換えヒトI2S」又は「rhI2S」の語は,培地中の上記rhI2S産生哺乳類細胞によって培養中に分泌されるヒトI2Sを意味する。
本発明において,「オリゴ糖鎖」の語は,I2Sのペプチド鎖と共有結合したオリゴ糖鎖を意味し,I2Sのアスパラギン残基に共有結合しているものであるアスパラギン型の糖鎖を含む。
本発明で使用されるものとして,「フルオロアパタイト」の語は,化学式がCa(POFであるリン酸カルシウムからなる不溶性無機フッ化物を含んでなる材料を意味する。天然に存在する化合物とは異なって,フルオロアパタイトは,ヒドロキシルアパタイト(Ca(POOH)の水酸基を置換することにより人工的に製造され,それらのヒドロキシル基が殆ど完全に置換された製品が市販されている〔例えば,CFTタイプII 40μm(Bio-Rad Laboratories)〕。
本発明において,rhI2S産生哺乳細胞の培養のための好ましい無血清培地の一例は,アミノ酸3〜700 mg/L,ビタミン類0.001〜50 mg/L,単糖類0.3〜10 g/L,無機塩類0.1〜10000 mg/L,微量元素0.001〜0.1 mg/L,ヌクレオシド0.1〜50 mg/L,脂肪酸0.001〜10 mg/L,ビオチン0.01〜1 mg/L,ヒドロコルチゾン0.1〜20 μg/L,インスリン0.1〜20 mg/L,ビタミンB120.1〜10 mg/L,プトレッシン0.01〜1 mg/L,ピルビン酸ナトリウム10〜500 mg/L,及び水溶性鉄化合物から構成されるものである。所望により,当該培地に,チミジン,ヒポキサンチン,慣用のpH指示薬及び抗生物質を添加してもよい。
更に,DMEM/F12培地(DMEMとF12からなる混合培地)を基本無血清培地の1つとして用いてもよい。これらの培地はともに当業者に周知である。無血清培地の1つとしてDMEM(HG)HAM改良型(R5)培地も使用してよく,これは,炭酸水素ナトリウム,L−グルタミン,D−グルコース,インスリン,亜セレン酸ナトリウム,ジアミノブタン,ヒドロコルチゾン,硫酸第一鉄(II),アスパラギン,アスパラギン酸,セリン及びポリビニルアルコ−ルを含んでいる。更には,市販の無血清培地も基本培地として使用できる。
本発明において,rhI2Sの精製のためのクロマトグラフィーの各々は,必要に応じ,タンパク質の非特異的吸着を防止するため,非イオン性界面活性剤の存在下で行われてよい。どの非イオン性界面活性剤を用いるかについて特段の限定はないが,ポリソルベート系界面活性剤が好ましく用いられ,より好ましくはポリソルベート80又はポリソルベート20である。そのような非イオン性界面活性剤の濃度は,好ましくは0.005% (w/v)〜0.05% (w/v),より好ましくは0.01% (w/v)である。
rhI2S精製工程は,室温又は低温で行うことができるが,好ましくは低温で,特に1〜10℃で行うことができる。
精製工程の第一ステップにおいて,rhI2Sは,塩を添加した酢酸緩衝液で平衡化させておいた陽イオン交換クロマトグラフィーに結合させられる。酢酸緩衝液のpHは,好ましくは4.0〜4.6,より好ましくは4.2〜4.4,更に好ましくは約4.3に調整される。酢酸緩衝液にどの塩を添加するかについて特に限定はないが,塩化ナトリウムが好ましく,その濃度は,好ましくは50-250 mMの範囲,より好ましくは100-200 mMの範囲である。
rhI2Sを結合させた絡むを洗浄した後,pHを好ましくは4.8〜6.5の範囲に,より好ましくは5.0〜5.4の範囲に,そして更に好ましくは約5.1に高めた酢酸緩衝液を用いて,このrhI2Sを溶出させる。この酢酸緩衝液には塩を含有させる必要がある。この酢酸緩衝液にどの塩を含有させるかにつき特段の制限はないが,塩化ナトリウムが好ましく,その濃度は,好ましくは50〜250 mMの範囲,より好ましくは100-200 mMの範囲である。
更に,陽イオン交換クロマトグラフィーにおいてどの陽イオン交換樹脂を用いるかについて特段の限定はないが,弱陽イオン交換体が好ましく,より好ましいのは,疎水性相互作用及び水素結合形成の双方に基づく選択性を持つ弱陽イオン交換体である。例えば,CaptoMMC(GE Healthcare)等のような,フェニル基,アミド結合及びカルボキシル基を備え疎水性相互作用及び水素結合形成の双方に基づく選択性を持つ弱陽イオン交換体を使用することができる。
精製工程の第二ステップである色素アフィニティークロマトグラフィーは,特定の色素に対するヒトI2Sの強い親和性を利用して,夾雑物を除去するためのものである。ブルートリアジン色素が好適に用いられるが,その他のトリアジン色素も用いることができる。このために特に好ましいからむ材料の1つは,色素CibacronTM Blue F3GAをSepharose 6 Fast Flowマトリックスに共有結合で固定した,Blue Sepharose 6 FF, Fast Flow(GE Healthcare)である。
色素親和性クロマトグラフィーは,塩を加えた酢酸緩衝液で平衡化される。この酢酸緩衝液のpHは,好ましくは4.5〜5.5,より好ましくは4.8〜5.2,更に好ましくは約5.0に調整される。緩衝液にどの塩を加えるかについて特に限定はないが,塩化ナトリウムが好ましく,その濃度は,好ましくは50〜200 mMの範囲,より好ましくは80〜120 mMの範囲である。
第一ステップで得られた溶出液のrhI2S含有画分は,1〜2倍容の水で希釈され,pH4.5〜5.5,より好ましくはpH4.8〜5.2,更に好ましくはpH約5.0に調整され,次いで,この溶出液がカラムに加えられる。
rhI2Sを結合させたカラムを洗浄した後,rhI2Sを溶出させる。溶出は,pHを高めた酢酸緩衝液によって行うことができる。緩衝液中の塩の濃度を同時に高めてもよい。この緩衝液のpHは,好ましくは5.5〜6.5,より好ましくは5.8〜6.2,更に好ましくは約6.0に調整されている。培地中の塩の濃度も同時に上昇させる場合には,その濃度は,好ましくは100〜200 mMの範囲,より好ましくは120〜170 mMの範囲,更に好ましくは約150 mMである。
精製工程の第三ステップである陰イオン交換クロマトグラフィーは,夾雑タンパク質を除去するためのものである。どの陰イオン交換樹脂を用いるかについて特に限定はないが,強アニオン交換樹脂を好ましく用いてよい。Q Sepharose Fast Flow (GE Healthcare)のような市販の樹脂を好適に使用できる。
陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて,カラムは,塩を加えたリン酸緩衝液で平衡化される。このリン酸緩衝液のpHは,好ましくは5.0〜6.0,より好ましくはpH5.2〜5.8,更に好ましくは約5.5に調整されている。どの塩をリン酸緩衝液に加えるかについて特に限定はないが,塩化ナトリウムが好ましく,その濃度は,好ましくは100〜200 mMの範囲,より好ましくは120〜180 mol/Lの範囲,更に好ましくは約150 mMの範囲である。
第二ステップで得られた溶出液のrhI2S含有画分のpHは,好ましくは5.0〜6.0,より好ましくは5.2〜5.8,更により好ましくは約pH5.5,に調整される。この溶出画分が,次いでカラムに加えられる。
rhI2Sを結合させた陰イオン交換カラムを洗浄した後,rhI2Sは,塩濃度を,好ましくは300〜500 mM,より好ましくは350〜450 mM,更に好ましくは約400 mMに高めたリン酸緩衝液で溶出される。
精製の第四ステップである,リン酸基に親和性をもつ固相を用いたカラムクロマトグラフィーは,夾雑タンパク質を除去するだけでなく,相対的に少ない数のマンノース−6−リン酸残基を含んだオリゴ糖鎖を有するrhI2Sを除去するためのものである。リン酸基に親和性を有するどの固相を用いるかについて特に限定はないが,フルオロアパタイト及びハイドロキシアパタイトを好ましく用いることができ,フルオロアパタイトが特に好ましい。
フルオロアパタイトは,オリゴ糖鎖中のリン酸基に対して親和性を有する。従って,rhI2Sがそのオリゴ糖鎖上に有するM6P残基が多いほど,rhI2Sはより選択的にフルオロアパタイトに結合する。どのフルオロアパタイトを固相として用いるかについて特に限定はないが,CFT Type II 40μm(Bio-Rad Laboratories)のような市販のフルオロアパタイトが好適に使用できる。
フルオロアパタイトカラムは,塩を添加したリン酸緩衝液で平衡化される。このリン酸緩衝液のpHは,好ましくは6.0〜7.0,より好ましくは6.3〜6.7,更に好ましくは約6.5,に調整されており,リン酸濃度は,好ましくは4.0〜15.0 mM,より好ましくは5.0〜10.0 mM,更に好ましくは約7.5 mMである。どの塩をリン酸緩衝液に添加するかにつき特に限定はないが,塩化ナトリウムが好適であり,その濃度は,好ましくは300〜500 mMの範囲,より好ましくは350-450 mMの範囲である。
第三ステップで得られた溶出液のrhI2S含有画分を水で2〜4倍容の水で希釈し,そして,好ましくはpH6.0〜7.0,より好ましくはpH6.3〜6.7,更に好ましくは約pH6.5に調整し,次いで,この希釈溶出画分が次いでフルオロアパタイトカラムに加えられる。
rhI2Sを結合させたカラムを洗浄した後,rhI2Sは溶出される。溶出は,塩を含有するリン酸緩衝液によって行われる。このリン酸緩衝液のpHは,好ましくは6.0〜7.0,より好ましくは6.3〜6.7,更に好ましくは約6.5に調整され,リン酸の濃度は,好ましくは100〜200 mM,より好ましくは125〜175 mM,更に好ましくは約150 mMに調整される。どの塩を用いるかについて特に限定はないが,塩化カリウムを好適に用いることができ,その濃度は,好ましくは50〜250 mM,より好ましくは100〜200 mM, 更に好ましくは約150 mMである。
精製工程の第五ステップであるゲルろ過カラムクロマトグラフィーは,エンドトキシンのような低分子不純物,及びrhI2Sの多量体又は分解物を除去するためのものである。こうして,実質的に純粋なrhI2Sが,第一から第五までのこれら連続的ステップを通して得られる。
ウイルス不活化のステップを,本発明における精製工程に所望により加えることができる。どのウイルス不活化工程を適用するかについて特に限定はないが,好ましくは溶媒−界面活性剤法が好適に適用できる。この目的で, rhI2S を含有する溶液に非イオン性界面活性剤が添加され,混合液が3時間を超えてインキュベートされる。どの界面活性剤を用いるかについて特に限定はないが,好ましくはポリソルベート20,ポリソルベート80,triton X-100,及びトリ(n−ブチル)ホスフェ−トが,単独で又はこれらの任意の組み合わせ,そしてより好ましくはポリソルベート80とトリ(n−ブチル)ホスフェ−トの組み合わせの形で,用いられる。
このようなウイルス不活化の追加的ステップは,上記の精製工程中の隣接した如何なる2工程間にも挿入することができ,特に第二と第三の精製工程の間(即ち,色素親和性クロマトグラフィーのステップと陰イオン交換クロマトグラフィーのステップの間)に挿入することができる。
本発明において,rhI2Sの製造方法は,少なくともrhI2Sを含有する画分がリン酸基に親和性を有する固相を用いるカラムクロマトグラフィーに付されるステップを含む。そのような固相として,フルオロアパタイト及びハイドロキシアパタイトを好適に用いることができ,これらのうちフルオロアパタイトが特に好適である。リン酸基に対する親和性を有する固相を使用するものであるこのステップは,オリゴ糖鎖中にマンノース−6−リン酸残基をより多数含むrhI2Sを優先的に精製するために採用される。このステップは,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー,色素親和性カラムクロマトグラフィー,陰イオン交換カラムクロマトグラフィー,及びゲル濾過カラムクロマトグラフィーから選択される少なくとも一種類の他の精製ステップと,任意の順序で組み合わせて用いることができる。陽イオン交換カラムクロマトグラフィー,色素親和性カラムクロマトグラフィー,陰イオン交換カラムクロマトグラフィー,及び次いでリン酸基に親和性を有する固相を用いたカラムクロマトグラフィーの,この順からなる組み合わせが好ましい。より好ましいのは,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー,色素親和性カラムクロマトグラフィー,陰イオン交換カラムクロマトグラフィー,リン酸基に親和性を有する固相を用いたカラムクロマトグラフィー,及び次いでゲル濾過カラムクロマトグラフィーの,この順からなる組み合わせである
本発明は,1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいる結合したオリゴ糖鎖を有するrhI2Sを提供し,そこにおいて,rhI2Sの1分子当たりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数は,好ましくは3.5〜6.5個,より好ましくは3.5〜6.0個,更に好ましくは3.6〜5.5個,更に尚好ましくは3.7〜5.4個の範囲である。或いはまた,rhI2Sの1分子当たりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数は,好ましくは4.0〜6.5個,より好ましくは4.0〜6.0個,更に好ましくは4.2〜5.8個,更に尚好ましくは4.5〜5.4個の範囲である。rhI2Sの1分子当たりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数は,下記の方法により決定することができる。
本発明は,rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が,好ましくは7.0〜25×10-10 mol/L,より好ましくは7.5〜20×10-10 mol/L,更に好ましくは7.5〜15×10-10 mol/L,更により好ましくは7.5〜13×10-10 mol/Lの範囲であるrhI2Sを提供する。或いは,rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数は,好ましくは4.5〜20×10-10 mol/L,より好ましくは7.5〜20×10-10 mol/L,更に好ましくは5.0〜15×10-10 mol/L,尚も更に好ましくは7.5〜13×10-10 mol/Lの範囲であるrhI2Sを提供する。hI2Sとマンノース6-リン酸受容体との間の解離定数は,下記の方法により計算することができる。
上記のrhI2Sは,rhI2S含有画分をリン酸基に対する親和性を有する固相を用いたカラムクロマトグラフィーに付すステップを少なくとも含む,以下に詳細に記載する精製工程によって精製することができる。そのような固相の好適な例は,フルオロアパタイト及びハイドロキシアパタイトであり,これらのうちフルオロアパタイトがより好適である。
rhI2S分子は,標的細胞表面上に発現しているM6P受容体への結合を介して細胞内に取り込まれることから,本発明によって提供されるrhI2Sは,より効率的に標的細胞内へと選別される。
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
1.ヒトI2S発現ベクターの構築
pEF/myc/nucベクター(インビトロジェン社)を,KpnIとNcoIで消化し,EF-1αプロモーター及びその第一イントロンを含む領域を切り出し,これをT4 DNAポリメラ-ゼで平滑末端化処理した。pCI-neoベクター(インビトロジェン社)を,BglII及びXbaIで消化して,CMVのエンハンサー/プロモーター及びキメリックイントロンを含む領域を切り出し,次いでT4 DNA ポリメラ-ゼで平滑末端化処理した。これに,上記のEF-1αプロモーター及びその第一イントロンを含む領域を挿入して,pE-neoベクターを構築した(図1)。
ヒト胎盤cDNAライブラリー(タカラバイオ)を鋳型として,第一反応に用いる外側プライマーセット:
(a) I2S-f: 5'-ACGCCTATTGCTGCAGGATG-3' (配列番号1),及び
(b) I2S-r: 5'-AAACGACCAGCTCTAACTCC-3' (配列番号2),
第二反応に用いる内側プライマーセット:
(c) I2S-f2: 5'-ATActcgagGCCACCATGCCGCCACCCCGG-3' (配列番号3),及び
(d) I2S-r2: 5'-TTCTTATgcggccgcTCAAGGCATCAACAA-3' (配列番号4)
の2つのプライマーセットを用いて,ヒトI2S cDNAを含むDNA断片を増幅させるために,ネスティッドPCR反応を行った。増幅させたPCR断片を,XhoI(配列番号3中の小文字部分に相当する)とNotI(配列番号4中の小文字部分に相当する)で消化し,pE-neoベクターのSalI と NotIサイトの間に挿入して,pE-neo(I2S)ベクターを構築した(図1)。
ヒト成長ホルモン遺伝子のポリアデ二レーションシグナル配列を含むDNA断片を4種類の合成オリゴヌクレオタイド
(a) hGH-f1:5'-GGCCGCTCTAGACCCGGGTGGCATCCCTGTGACCCCTCCCCAGTGCCTCTCCTGGCCCTGGAAGTTGCCACTCCAGTGCCCACCAGCCTTGTCCTAATAAA-3'(配列番号5),
(b) hGH-r1:5'-TGATGCAACTTAATTTTATTAGGACAAGGCTGGTGGGCACTGGAGTGGCAACTTCCAGGGCCAGGAGAGGCACTGGGGAGGGGTCACAGGGATGCCACCCGGGTCTAGAGC-3'(配列番号6),
(c) GH-f2:5'-ATTAAGTTGCATCATTTTGTCTGACTAGGTGTCCTTCTATAATAGCGCAGCACCATGGCCTGAAATAACCTCTGAAAGAGGAACTTGGTTAGGTAC-3'(配列番号7),及び
(d) hGH-r2:5'-CTAACCAAGTTCCTCTTTCAGAGGTTATTTCAGGCCATGGTGCTGCGCTATTATAGAAGGACACCTAGTCAGACAAAA-3' (配列番号8)をアニーリングすることにより合成した。
上記で調製されたDNA断片をpE-neo(I2S)のNotIとKpnIサイトの間に挿入し,これを pE-neo/hGHpA(I2S)とした。このベクターにおいて,I2S cDNAは上流域にEF-1プロモーターの下流であってヒト成長ホルモンのポリアデ二レ-ションシグナル配列の上流に位置している(図1−1)。
2.ヒトI2Sの発現用の組換え細胞の製造
CHO細胞(CHO-K1 : American Type Culture Collectionから入手)を,下記の方法により,リポフェクタミン2000試薬(Invitrogen社)を用いて,上記の発現ベクターpE-neo/hGHpA(I2S)で形質転換した。すなわち,形質転換の前日に,1×106個のCHO-K1細胞を5% FCS を含む3mLのD-MEM/F12培地(D-MEM/F12/5%FCS)の入った3.5-cm 培養ディッシュに播種し,37℃で,5% CO2と95%空気からなる湿潤環境において一晩培養した。翌日,Opti-MEM I 培地(Invitrogen) で25倍に希釈したリポフェクタミン2000試薬と,Opti-MEM I 培地で13.2μg/mLに希釈したpE-neo/hGHpA(I2S)プラスミドDNA溶液とからなる1:1混合液300μLにより,37℃で,5%CO2と95%空気からなる湿潤環境において一晩形質導入した。
形質導入後,0.6 mg/mLのG418を添加したD-MEM/F12/5% FCS培地で培地を交換し,選択培養を,37℃で,5%CO2と95%空気からなる湿潤環境において行った。hI2S発現細胞を得るため,選択培養用の培地で増殖した細胞を同培地で数回連続的にサブカルチャーしてhI2S発現細胞を得た。
次いで,限界希釈法により,1ウェルあたり1個以下の細胞が播種されるように,96ウェルプレート上にhI2S発現細胞を播種し,各細胞が単クローンコロニーを形成するように約10日間培養した。単クローンコロニーが形成されたウェルの培養上清を取り,脱塩操作をしない以外は実施例6に記載されているようにして,ヒトI2S活性を調べ,I2S高活性発現細胞株を選択した。
細胞を無血清培地に馴化させるために,L−グルタミンを8 mM,G418を120 mg/L添加した市販の血清不含培地IS CHO-V-GS 培地 (Irvine Scientific)中に細胞を移し,37℃で,5%CO2と95%空気からなる湿潤環境において細胞が安定して増殖するまで培養した。次いで,細胞を,L−グルタミンを8mM,ヒポキサンチンを100 μmol/L,チミジンを16μmol/L,G418を120 mg/L, 及び10%のDMSO添加したIS CHO-V-GS 培地 (Irvine Scientific社)に懸濁させ,種細胞として液体窒素中で保存した。
3.ヒトI2S発現のための組換え細胞の培養
前記種細胞を融解後,4×105個/mLの密度に希釈して,IS CHO-V-GS 培地(Irvine Scientific)にL−グルタミンを8mM,ヒポキサンチンを100μmol/L,チミジンを16μmol/L添加した培地(IS培地)中で3〜4日培養した。細胞を,IS培地で2×105個/mLの密度にまで再度希釈して,5%CO2と95%空気からなる湿潤環境において37℃で4日間,静置培養で行われる拡大培養に供した。
細胞数を測定し,細胞を,生細胞密度が5X105個/mLとなるようにIS培地で希釈した。当該希釈培養液1L当たり,CDLC(Chemically defined Lipid Concentrate, Invitrogen)を10 mL加え,次いで細胞を3日間振とう培養した。培養条件は以下のとおりである:
振とう速度:20 rpm, pH7.2,溶存酸素:70%,温度:37℃。培養規模は,培養量が160 Lに達するまで拡大させた。
次いで,細胞数を測定し,細胞を,細胞濃度が約2X105個/mLとなるように,L−グルタミンを 4 mM,ヒポキサンチンを100μmol/L,チミジンを16μmol/L添加したEX-CELL TM 302血清不含培地(EX 培地, SAFC Bioscience)で希釈した。720 Lの希釈培養液をインキュベ-ションタンクに移動させ,7日間培養した。このときの培養条件以下のとおりである:
撹拌速度:約90 rpm, pH7.0,溶存酸素:50%,温度:37℃。L−グルタミンを3.6 mol ,ヒトインスリン10 gを添加したEX-CELL TM 302血清不含培地63 Lを,3日目と5日目に加えた。サンプリングは,培養中に毎日実施され,細胞数,生存率,グルコース濃度,乳酸濃度,ヒトI2S発現量が測定された。グルコース濃度が9.5 mmol/L未満になった場合,19 mmol/Lの濃度になるようにグルコースを添加した。
上記の細胞培養を6回繰り返した(ロット番号1〜6)。各培養において,生細胞数は培養6〜7日目に1×107 個/mL又はそれ以上に達し,これは,高密度の細胞培養が達成されたことを示した(図2)。細胞によって培地中に分泌されたrhI2S濃度を,ELISA法により測定し細胞密度と比較した結果,rhI2S濃度は,わずかな時間遅れて増加することが判明した(データは示さず)。
培養上清を回収し,Millistak+ HC Pod Filter grade D0HC (Millipore)で,次いでMillistak+ HC grade A1HC (Millipore)でろ過して,培養上清とした。
4.組換えrhI2Sの精製法
上記の回収した培養上清に,そのpHを4.3に調整するために酢酸を加えた。これによって形成された沈殿物は,Millistak+ HC Pod Filter grade D0HC (Millipore)で,次いでOpticap XL4 Durapore (Millipore) で過することにより除去した。このようにして回収した培養上清を, 150 mM NaClを含むカラム体積3倍容の20 mM酢酸緩衝液(pH4.3)で平衡化しておいた,疎水的相互作用及び水素結合形成の両方に基づく選択性を有する陽イオン交換カラムであるCapto MMCカラム(カラム体積: 6.3 L,ベッド高: 約20 cm,GE Healthcare)に負荷した。次いで,この緩衝液を,カラムにrhI2Sを吸着させるために150cm/hrの一定流速でカラムに供給した。次いで,カラム体積の4倍容の同緩衝液を同じ流速で供給してカラムを洗浄した後,150 mM NaClを含むカラム体積の4倍容の20 mM 酢酸緩衝液(pH5.1)で,吸着したrhI2Sを溶出させた。
上記のCapto MMCカラムから溶出した溶出液を水で1.5倍に薄め,そしてこの希釈溶液のpHを5.0に調整した。次いで,この溶液を,カラム体積の4倍容の,100 mM NaClを含む20 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)で平衡化しておいた色素親和性カラムブルーセファロース 6FFカラム(カラム体積: 約7.1 L,ベッド高: 約10 cm,GE Healthcare)に負荷した。次いで,この緩衝液を,カラムにrhI2Sを吸着させるために50 cm/hrの一定流速でカラムに供給した。カラム体積の4倍容の同緩衝液を同じ流速で供給してカラムを洗浄後,吸着したrhI2Sを,カラム体積の5倍量の,150 mM NaClを含む20 mMリン酸緩衝液(pH6.0)で溶出させた。
次いで,ウイルス不活化プロセスとして,トリn−ブチルリン酸(TNBP)及びポリソルベート80を,それらの終濃度がそれぞれ0.3%(v/v)及び1%(w/v)になるように,上記のブルーセファロース6FFカラムからの溶出液のrhI2S含有画分に加え,次いで,この混合溶液を室温で3時間おだやかに撹拌した。次いで溶液をOpticap XL4 Durapore (Millipore)でろ過した。
ウイルスを不活化させた上記の溶液に,希釈した塩酸を添加してpHを5.5に調整した。この溶液を,カラム体積の4倍容の,150 mM NaClを含む20 mMリン酸緩衝液 (pH5.5) で平衡化させておいた陰イオン交換カラムQ Sepharose Fast Flow カラム(カラム体積: 約6.3 L,ベッド高: 約20 cm,GE Healthcare) に負荷した。次いで,この緩衝液を,カラムにrhI2Sを吸着させるために150 cm/hrの一定流速でカラムに供給した。カラム体積の4倍容の同緩衝液を同じ流速で供給してカラムを洗浄後,カラム体積の5倍容の,400 mM NaClを含む20 mMリン酸緩衝液 (pH5.5) で吸着したrhI2Sを溶出させた。
次いで,上記Q Sepharose Fast Flow columnカラムから溶出した溶出液を,400 mM NaCl溶液で約2.7倍に希釈し,次いで,この希釈液のpHを6.5に調整した。次いでこの溶液を,カラム体積の9倍容の400 mM NaCl含有7.5 mMリン酸緩衝液 (pH6.5) で平衡化しておいた,フルオロアパタイトカラムであるCFT TypeII 40μmカラム (カラム体積: 約3.2 L,ベッド高: 約10 cm,Bio-Rad)に負荷した。次いで,この緩衝液を,150 cm/hrの一定流速でカラムに供給して,カラムにrhI2Sを吸着させた。カラム体積の15倍容の同緩衝液を同じ流速で供給してカラムを洗浄後,吸着したrhI2Sを,カラム体積の15倍量の150 mM KCl含有150 mMリン酸緩衝液 (pH6.5) で溶出させた。
次いで,上記のCFT TypeII 40μmカラムから溶出した溶出液を,Biomax TM30膜(ミリポア)で濃縮した。この濃縮液の約1.2 Lを,137 mM NaCl及び0.02%(w/v)ポリソルベート80を含む20 mMリン酸緩衝液 (pH6.0) で平衡化しておいたSuperdex 200 prep グレードカラム(カラム体積: 約19 L,ベッド高: 約64 cm,GE Healthcare)に負荷した。この同じ緩衝液を14.9 cm/hrの一定流速でカラムに供給し,280 nmで吸収ピークを示した画分を,精製rhI2Sを含む画分として回収した。
精製rhI2Sを含む画分を合わせ,最終精製品におけるウイルス汚染の如何なる可能性をも回避するため,プラノバTM 15N(サイズ0.3 m2,旭化成メディカル)で,次いでMillipak-20 Filter Unit (0.22 μm)で濾過した。
各ステップ後のrhI2S量を,下記のELISA法を用いて定量した。各精製ステップのrhI2Sの回収率を表1に示す。表1において,「rhI2S回収率/ステップ」は,各ステップにおける負荷したrhI2S量に対する回収されたrhI2S量の比率を意味し,「rhI2S回収率/全体」は,精製工程に供したrhI2S量の初期量に対する各プロセスで回収されたrhI2S量の比率を意味する。上記の精製工程に供したrhI2S量は14435.2 mg であり,そのうち9086.3 mgのrhI2Sが最終的に回収され,従ってこれは,62.9%もの高さでのrhI2S回収率/全体を与えた。これらの結果は,上記の精製法が,非常に高い回収率且つ大きな規模で,rhI2Sを精製することを可能にすることを示すものである。
5.ELISA法によるヒトI2Sの定量
96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)の各ウェルに,マウス抗ヒトモノクロ−ナル抗体溶液を0.05 M炭酸水素塩緩衝液 (pH9.6) で4μg/mLに希釈したしたものを100μLずつ加え,室温で少なくとも1時間静置して抗体をプレートに吸着させた。次いで,リン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4)に0.05% Tween 20を添加したもの (PBS-T) で各ウェルを3回洗浄後,Starting Block(PBS) Blocking Buffer (Thermo Fisher Scientific) を各ウェルに200μLずつ加えてプレートを室温で30分静置した。各ウェルをPBS-Tで3回洗浄した後,PBSに0.5% BSA 及び 0.05% Tween 20 を添加したもの(PBS-BT)で適当な濃度に希釈した試料又はヒトI2S標準品を,各ウェルに100μLずつ加え,プレートを室温で少なくとも1時間静置した。プレートをPBS-Tで3回洗浄した後,PBS-BTで希釈したビオチン標識抗ヒトI2Sモノクロ-ナル抗体溶液を,100μLずつ加え,プレートを室温で少なくとも1時間静置した。次いで,PBS-Tで各ウェルを3回洗浄した後,PBS-Tで希釈したストレプトアビジン−HRP (R&D SYSTEMS)を100μLずつ加え,プレートを室温で少なくとも30分間静置した。PBS-Tで各ウェルを3回洗浄後,リン酸−クエン酸緩衝液 (pH 5.0) を含む 0.4 mg/mLo−フェニレンジアミンを100μLずつ各ウェルに加え,室温で8〜20分間静置した。次いで,1 mol/L硫酸を100μLずつ各ウェルに加えて反応を停止させ,96ウェルプレートリーダーを用いて,各ウェルにつき490 nm での吸光度を測定した。
6.rhI2Sの活性測定
サンプルを,垂直ポリエーテルスルホン膜(VIVASPIN2 5,000 MWCO PES,ザルトリウス)を限外濾過膜として用いた膜濾過により脱塩し,次いで,脱塩された試料を反応緩衝液(5 mM酢酸ナトリウム,0.5 mg/L BSA,0.1% Triton X-100,pH4.45)で約100 ng/mLに希釈した。96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェル(FluoroNunc Plate, Nunc)にrhI2Sサンプル10μLを添加し,37℃で15分間プレインキュベートした。基質溶液は,基質緩衝液(0.5 mg/mL BSAを含む5 mM酢酸ナトリウム,pH4.45)を用いて4−メチルウンベリフェリルサルフェート(SIGMA)を最終濃度1.5 mg/mLになるように溶解することより調製した。基質溶液を,rhI2Sサンプルを含んだ各ウェルに100μLずつ添加し,プレートを暗所に37℃で1時間静置した。インキュベーション後,停止緩衝液(0.33 Mグリシン,0.21 M炭酸ナトリウム緩衝液, pH 10.7)を190μLずつ,サンプルを含む各ウェルに加えた。対照として,150μLの0.4μmol/L 4−メチルウンベリフェリルサルフェート(4-MUF,Sigma)溶液と150μLの停止緩衝液とを,ウェルに加え,次いで,励起波長330 nm,蛍光検出波長440 nmでプレートを測定した。
種々の濃度の4-MUF溶液の蛍光強度を測定することにより標準曲線を作成した。各試料の蛍光強度を標準曲線に外挿した。なお,結果は,37℃で1分当たりに1μモルの4-MUFが生成されるのと等しい活性を1単位 (Unit)とし,Unit/mLで表される活性として計算した。公開された米国特許出願(公開番号2004-0229250)は,この測定を実施する上で参照された。上記の精製ヒトI2Sの比活性は,約2630 mU/mgであった。
7.宿主細胞由来蛋白の測定
ウサギをCHO細胞から得られたタンパク質(宿主細胞タンパク質,HCPs)で免疫し,次いで抗血清をウサギ血液から調製した。全IgGを,プロテインAカラムクロマトグラフィーを用いて抗血清から精製し,次いで,HCPsに対する抗体(ウサギ抗HCP抗体)を,HCP-結合樹脂を含有する親和性カラムクロマトグラフィーを用いて,総IgGから精製した。ビオチン標識ウサギ抗HCP抗体は,EZ-結合スルホ-NHS-LC-ビオチン化キット(Thermo)を使って,ビオチン部分にウサギ抗HCP抗体を接合させることによって調製した。
100 mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH 9.6)で5μg/mLに希釈したウサギ抗HCP抗体を100μLずつ,96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)の各ウェルに添加した。抗体を吸着させるために,プレートを室温で少なくとも1時間静置した後,各ウェルをT-TBS(0.05%Tween 20を含むトリス緩衝生理食塩水,pH8.0,シグマ)で3回洗浄し,次いで,Super Block Blocking Buffer in TBS(Thermo)を200μLずつ各ウェルに添加し,プレートを室温で少なくとも30分間静置した。次いで,各ウェルをT-TBSで3回洗浄した後,Super Block Blocking Buffer in TBS(Thermo)で希釈した試料溶液を100μLずつ添加し,プレートを室温で少なくとも1時間穏やかに回転させた。各ウェルをT-TBSで3回洗浄した後,Super Block Blocking Buffer in TBS中で60 ng/mLのビオチン標識ウサギ抗HCP抗体を100μLずつ添加し,プレートを室温で少なくとも1 時間穏やかに回転させた。その後,各ウェルをT-TBSで3回洗浄し,Super Block Blocking Buffer in TBS (Thermo) で希釈したホースラディッシュパーオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(NeutrAvidin,ホースラディッシュパーオキシダーゼ結合,Thermo)を100μLずつ添加し,プレートを室温で少なくとも30分間穏やかに回転させた。各ウェルをT-TBSで3回洗浄し,TMB溶液(TMBパーオキシダーゼ基質,KPL)を100μLずつ添加した後,プレートを室温で15〜30分間静置した。各ウェルの反応を停止させるために,1 Mリン酸を100μLずつウェルに添加し,96ウェルプレートリーダーで各ウェルにつき450 nmの吸光度を測定した。その結果,上記精製rhI2S(ロット番号1)におけるHCPsの算出された濃度はわずか12 ppmであり,これは,人体に注射可能な医薬としてこのrhI2Sを使用することを許容する水準であった。
8.精製rhI2Sの分析
上記の精製したrhI2Sを,非還元,加熱条件下にSDS-PAGE電気泳動に供した。クマシーブリリアントブルーにより染色したゲルは,以前に報告されたrhI2Sの分子量(米国特許公報5932211)に相当する,約80 kDの分子量の位置に単一バンドを示した(図3)。
更に,上記の精製したrhI2Sを,サイズ排除HPLC (SE-HPLC)とSAX-HPLCとにより分析した。HPLCは,LC-20Aシステム,SPD-20AVのUV/VIS検出器(島津製作所)を用いて行った。
SE-HPLC分析用には,上記の精製したrhI2Sを2 mg/mL含む試料溶液10μLを,25 mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化されたTSKgel G3000SWXLカラム(内径7.8 mm×30 cm,東ソー)に,流速0.5mL/分で負荷した。溶出プロファイルは,215 nmにおける吸光度を測定して作製した。 SAX-HPLC分析用には,rhI2Sを2 mg/mL含む試料溶液20μLを10 mMトリス−塩酸(pH 7.5)で平衡化したTSK gel Q-STATカラム(内径4.6 mm×10cm,東ソー)に,流速1.0 mL/分で負荷した。この移動相緩衝液のNaCl濃度は,試料を注入してから30分後まで,直線勾配で0.5 Mまで増加させた。溶出プロファイルは,280 nmにおける吸光度を測定して作製した。
上記の精製したrhI2SのSE-HPLC及びSAX-HPLCは共に,単一のピークのみを示した(それぞれ図4と図5)。これらのデータは,上記で得られたrhI2Sが,高度に精製されており,検出可能な如何なる不純物も含まないことを示した。更には,精製rhI2Sに夾雑する宿主細胞タンパク質(HCPs)の濃度は,ELISAによって測定したところ,僅か12 ppmであった。以上の結果は,総合すると,上記精製rhI2Sが,直接医薬品として使用できる程の高純度のものであることを示している。
9.正常ヒト線維芽細胞を用いたrhI2Sの細胞内取り込みの測定
培養ヒト線維芽細胞(CCD-1076SK,DS Pharma Biomedical Co., Ltd.から入手)を10%熱不活化FBS及び2 mM L−グルタミンを含むMEM-イーグル培地(Gibco)に懸濁させ,細胞密度を8.0×104個/mLに調整した。100μLの細胞懸濁液を,96ウェルマイクロプレートの各ウェルに播種し, 5%CO2と95%空気からなる湿潤環境において37℃で2日間培養した。上記で得られたrhI2S(ロット番号1)又は市販の医療用rhI2Sを含む試料を,4.88 ng/mLから20μg/mLまでの種々の濃度を作るために,培地で連続的に希釈した。次いで,線維芽細胞を播種しておいた96ウェルマイクロプレート中の培地をマイクロピペットで除去し,上記の希釈した各試料100μLずつ2重にウェルに添加し,インキュベ-ションを18時間行った。インキュベ-ションにおけるrhI2Sの最終濃度は4.88 ng/mLから20μg/mLであった。この測定において,マンノース−6−リン酸(M6P)受容体に対するrhI2Sの特異的結合を確認するために,rhI2Sのアンタゴニストとしての10 mmol/Lのマンノース−6−リン酸(M6P)と20μg/mLのrhI2Sとを含む試料を調製し,96ウェルマイクロプレートに添加して,上記と同様にしてインキュベーションした。測定は3回繰り返し行った。
氷冷したPBSで3回洗浄した後,細胞を0.5%プロテアーゼ阻害剤カクテル(シグマ)を添加したM-PER哺乳類タンパク質抽出試薬(Thermo scientific)で溶解した。次いで,総細胞タンパク質量はPierce BCATM タンパク質アッセイキット(Pierce, IL,イリノイ州,米国)により測定し,細胞内に取り込まれたrhI2Sの量は上記のELISA法により測定した。細胞内に取り込まれたrhI2Sの量は,総細胞タンパク質の単位質量(mg)当たりとして計算し,グラフ上に描かれた(図6)。
その結果は,本rhI2S(ロット番号1)が,用量依存的に,市販の医療用rhI2Sより効率的に培養ヒト線維芽細胞に取り込まれたことを示した(図6)。本rhI2S(ロット番号1)と市販の医療用rhI2Sの細胞内取り込みのEC50は,それぞれ0.452±0.0853μg/mL及び1.455±0.434μg/mL(平均±SD)であった。培養液への10 mmol/Lの濃度のM6Pの添加により, rhI2S(ロット番号1)と市販の医療用rhI2Sの細胞取り込みがほぼ完全に本阻害されたことは,それらがM6P受容体への特異的結合を介してヒト線維芽細胞上によって取り込まれたことを示している。非特許文献(Tsukimura T.ら,Biol Pharm Bull. 31: 1691〜5,1979)は,上記の測定を実施する上で参照された。これらの結果は,本rhI2S(ロット番号1)と市販の医療用rhI2Sの両方が,そのオリゴ糖鎖に1個又は2個以上のM6P残基を含むことを示している。
10.M6P受容体に対するrhI2Sの親和性の測定
M6P受容体に対するrhI2Sの結合親和性を,以下に記載した方法により測定した。M6P結合に不可欠であるヒトマンノース−6−リン酸受容体(ヒトM6P受容体)をコードするcDNAを含むプラスミドをATCC(ATCC No.95660)から入手した。ヒトM6P受容体のドメイン9をコードするDNA断片(hMPR9)を次のプライマー:
(a) hMPR9-f: 5'-ATAATCCATGGTTGTCAGAGTGGAAGGGGAC-3' (配列番号11),及び
(b) hMPR9-r: 5'-GCAATGCGGCCGCGAAAGGTGGGCAGGCATAC-3' (配列番号12)
からなるプライマーセットを用いたPCRにより,当該プラスミドから増幅した。
増幅されたDNA断片をNcoIとNotIで消化し,pET26 ベクター(Novagen)のNcoI−NotI部位に挿入した。得られたプラスミドをpET26-MPR9と命名した。2セットのプライマーを用いた2段階PCR反応を行い,その結果,5’末端及び3’末端の両方に追加塩基配列を含んだ,hMPR9をコードする配列番号13示すDNA断片が増幅された。この増幅されたDNA断片は,N末端にBipシグナル,C末端にHis-tagを有するhMPR9をコードしていることから,Bip-tagged-hMPR9と命名した。
上記2段階PCR反応の最初の反応は,pET26-MPR9を鋳型とし,次のプライマーセット:
(c) MPR9-f2:5'-GTTGGCCTCTCGCTCGGGAGCGCTGTTGTCAGAGTGGAAGGGGAC-3'(配列番号14)及び,
(d)MPR9-r2:5'-ATAATGCGGCCGCTCAGTGATGGTGATGGTGATGTGGCGCGCCGGATCCGAAAGGTGGGCAGGCATAC-3'(配列番号15)を用いて行った。
次いで,第2の反応は,この増幅DNA断片を鋳型とし,次のプライマーセット:
(e)MPR9-f3:5'-ATAATCCATGGGATATCTAATAAATATGAAGTTATGCATATTACTGGCCGTCGTCGCCTTTGTTGGCCTCTCG-3'(配列番号16),及び,
(f)MPR9-r3:5'-ATAATGCGGCCGCTCAGTGATGGTGATGGTGATGTGGCGCGCCGGATCCGAAAGGTGGGCAGGCATAC-3’(配列番号17)
を用いて行なった。
増幅したDNA断片をEcoRVとNotIで消化し,pIB/V5-His-DESTベクター(Invitrogen)のEco47III−NotI部位に挿入した。得られたプラスミドをpXBi-MPR9と命名し,Bip-タグhMPR9からBipシグナル配列が除去されることにより生じるHisタグ-hMPR9を発現する細胞を得るため,このプラスミドで,High Five細胞に形質導入を行った。
High Five細胞(Invitrogen)を,Express Five培地(Invitrogen)を用いて,50%コンフルエントになるまで24ウェルプレート中で増殖させ,Hily Maxトランスフェクション試薬(同仁化学薬品,日本)を用いて,pXBi-MPR9で形質導入を行った。細胞は,安定した形質転換体を選択するため30μg/mLのブラストシジンの存在下に培養した。次いで,安定した形質転換細胞を4日間エルレーンマイヤーフラスコ(100 mL)中で拡大培養した。その後,培養物を回収し,3,000rpm,30分間遠心分離して,上清を集めた。上清を0.22μmのフィルタ(Millapore)を用いてろ過し,平衡緩衝液(300 mM NaClを含む10 mMリン酸緩衝液(pH 7.2))で5倍希釈した。この希釈した培養上清を,平衡緩衝液で平衡化しておいたProfinity IMAC Ni-charged レジン(ベッド体積: 1 mL,Bio-Rad)を充填したクロマトグラフィーカラムに負荷し,5ベッド容の平衡緩衝液で洗浄した。次いで,樹脂に結合したHisタグhMPR9を,5ベッド容の10 mM NaPO4,300 mM NaCl,及び10mMイミダゾール (pH 7.2) と,続いて5ベッド容の10 mM NaPO4,300 mM NaCl,及び300 mMイミダゾ-ル (pH 7.2) で溶出した。Hisタグ-hMPR9を含む画分を集め,150 mM NaClを含む20 mMトリス緩衝液 (pH7.4) への緩衝液交換をしつつ,Amicon 3K (MIllipore) で濃縮した。Hisタグ-hMPR9濃度を280 nmの吸光度で測定することにより決定した。
M6PRに対するrhI2Sの結合親和性を,ニトリロ三酢酸固定センサーチップ (Series S Sensor Chip NTA "BR-1005-32")を備えたBiacore T100 (GE Healthcare) を用いて測定した。Biacore T100は表面プラズモン共鳴 (SPR) に基づいた測定装置であり,そこでは受容体が固定されたリガンドを含む試料がセンサーチップの表面上に一定流速で送られる。リガンドが受容体に結合した場合,表面のセンサーチップの質量は受容体に結合したリガンドの質量のために増加し,SPR信号のずれが,結合したリガンドの量に比例して共鳴単位 (RU) における変化として検知される。一般に,タンパク質については,1RUはおよそ1pg/mm2である。センサーチップを活性化するために,500μmol/L NiCl2,150 mM NaCl,50μmol/L EDTA及び0.05% Surfactant P20を含む10 mM HEPES (pH7.4) を10μL/分の流速で60秒負荷した。次いで,上記精製Hisタグ-hMPR9の約50-100RUを負荷し,続いて,活性化されたセンサーチップにHisタグ-hMPR9を固定するために,150 mM NaCl,50μmol/L EDTA及び0.05% Surfactant P20を含む10 mM HEPES (pH7.4) を,10μL/分の流速で60秒負荷した。各サンプルを,rhI2Sの濃度が12.5,6.25,3.125及び1.5625 nmol/Lとなるように150 mM NaCl,50μmol/L EDTA及び0.05% Surfactant P20を含む10 mM HEPES (pH7.4) で希釈し,rhI2Sをセンサーチップ上のHisタグ-hMPR9に結合させるために,これらの調製した各希釈液の各々を,50μL/分の流速で300秒間流した。次いで,150 mM NaCl,50μmol/L EDTA及び0.05% Surfactant P20を含む10 mM HEPES (pH7.4) を,HisタグhMPR9とrhI2Sの間の解離状態を絶えずモニターしながら50μL/分の流速で180秒間流した。続いて,センサーチップを再生させるために,150 mM NaCl,350 mM EDTA及び0.05%のSurfactant P20を含む10 mM HEPES (pH8.3) を,50μL/分の流速で60秒間流した。解離定数 (Kd) は,Biacore T100評価ソフトウェアによりモニターされた上記の解離状態から自動的に計算された。
上記の方法によって得られた本rhI2S(ロット番号1から7)についてのKd値(解離定数)は7.58〜12.29×10-10mol/ Lの範囲であり,平均10.4×10-10mol/ Lであったのに対し,市販の医療用rhI2SのKd値は33.2 x 10-10mol/ Lであった(表2参照)。結果は,上記の方法によって得られた本rhI2Sが市販の医療用rhI2Sより効率的にM6P受容体に結合することを示しており,図6に示す本rhI2S(ロット番号1)の高効率の細胞取り込みが,本rhI2SのM6P受容体に対するより強い親和性に起因することが示唆された。
11.M6P含量の測定
rhI2Sのオリゴ糖鎖中のM6P残基数を,後述の方法により測定した。標準溶液は,D−マンノース−6−リン酸,D(+)−マンノース,L(−)−フコースとD(+)−ガラクトースを水でそれぞれ0.1 mg/mL,0.1 mg/mL ,0.036 mg/mL及び0.1 mg/mLの濃度に溶解して調製した。移動相Aは,ホウ酸6.2 gを水に加えて溶かし,2N水酸化ナトリウムを用いてpH 9.0に調整した後,純水を加えて全量を1000 mLとして調製した。移動相Bは,ホウ酸6.2 g及び塩化ナトリウム11.7gを水に加えて溶かし,2N水酸化ナトリウムを用いてpH 9.0に調整した後,水を加えて全量を1000 mLとして調製した。反応緩衝液は,L−アルギニン10 g,ホウ酸30 gを全量を1000 mLとなるように水に溶解させることにより調製した。
rhI2Sを含むサンプルを限外濾過により脱塩した後, 280 nmにおける吸光度を水で0.4から0.6に調整した。次いで,この脱塩試料の0.2 mLを,減圧下に乾燥した後,トリフルオロ酢酸0.1 mLに完全に溶解した。溶解したサンプルを2時間100℃に加熱した後,室温まで冷却し,減圧下に乾燥させた。乾燥させた資料を移動相Aに完全に溶解させた。
島津HPLCシステムLC-10Avp(還元糖分析システム)に陰イオン交換カラム(Shim-pack ISA-07/S2504(4.0 mm I.D.×250 mm,島津製作所)(樹脂:スチレン−ジビニルベンゼンポリマー,固定相:第4級アンモニウム)をSHIMAZU HPLC System LC-Avp(還元糖分析用HPLCシステム)に接続した。このカラムを65℃に加熱するため,カラムヒーター(Shim-pack ガ−ドカラムISA,島津製作所)中にセットした。また,カラムの流出口に,加熱反応用のヒートブロック(ALB-221,AGC Techno Glass Co., Ltd.)を150℃に調整して接続した。ヒートブロックからの流路は,水槽を通し,次いで背圧調整弁(U-607,MS Instruments Inc.)に接続した。また,背圧調整弁からの流路を蛍光検出器に接続し,そこにおいて,流れに励起光(波長320 nm)の紫外線を照射し,流れから放射される蛍光(波長430 nm)を検出した。装置の配置及び流路を模式的に図7に示した。
図7に示されたように,HPLCシステムのオートサンプラーに,移動相A移動相Bの容器を接続し,カラムの流出口とヒートブロックの間で反応緩衝液が供給されるように,流路に反応緩衝液の容器を接続した。
最初の移動相(移動相Aと移動相Bの比率それぞれ40%:60%の混合液)でカラムを平衡化した。サンプル溶液又は標準溶液の20 μLを,この平衡化されたカラムに負荷し,最初の移動相を流速0.3 mL/分で60分間流した。続いて,移動相Bの割合を60%から100%に直線的に増加させながら,移動相を流速0.3 mL/分で10分間適用した。反応緩衝液は流速0.2 mL/分で常に添加した。
蛍光検出器で検出されたピーク面積を計算し,サンプル及び標準溶液で得られたピークの面積を比較することにより,サンプル中のマンノース−6−リン酸量を決定した。
rhI2Sの1分子あたりに含まれるM6P残基数を,次式に基づいて計算した。この式において,282.12及び77,000は,マンノース−6−リン酸の分子量及びrhI2S のおおよその分子量(結合しているオリゴ糖鎖を含む)に,それぞれ対応する。
rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基数 (mol/mol) =サンプル中のマンノース−6−リン酸量 (mg)/rhI2Sの量 (mg) ×282.12/77,000.
本rhI2S(ロット番号1〜7)の分子当たりのM6P残基の数は,3.74〜5.38 mol/molの範囲にあると分析され,平均4.37 mol/molであった。一方,市販の医療用rhI2Sの分子あたりのM6P残基の数は3.39 mol/molであった(表2を参照)。この結果は,上記方法により得られた本rhI2Sは,結合しているオリゴ糖鎖中に市販の医療用rhI2Sよりも多くのM6P残基数を含んでいることを示しており,このより高いM6P含量が,効率的な細胞取り込みとM6P受容体に対する強い親和性を含む本rhI2Sの特性の原因であることを示唆している。
本rhI2Sは,非常に効率的な細胞内取り込みを含む上記の特性を有することから,ハンター症候群のような,I2Sをコードする遺伝子の欠乏によって引き起こされる疾患の患者に対する酵素補充療法において,従来の薬剤よりもより効果的に使用することができる。酵素補充療法における医療用酵素として使用する場合,本rhI2Sは標的細胞に効率的に取り込まれるので,患者に注入する酵素の量の大幅な削減につながる可能性がある。この点は,関連する患者や医療施設にとってだけでなく医療サービスシステムの財政面において非常に有利である。何故なら,各治療における必要酵素量の減少は,酵素の全体としての生産規模の縮小をもたらし,全体としての生産コストの削減にもなるためである。
本発明は,医薬品として患者へ投与するための十分な高純度を有し,且つ,ハンター症候群患者のための酵素補充療法として使用するために必要なマンノース−6−リン酸残基を含むオリゴ糖を有する形で,組換えヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(rhI2S)を大量生産するために利用される。
配列番号1=プライマー I2S-f
配列番号2=プライマー I2S-r
配列番号3=プライマー I2S-f2
配列番号4=プライマー I2S-r2
配列番号5=合成オリゴヌクレオチド hGH-f1
配列番号6=合成オリゴヌクレオチド hGH-r1
配列番号7=合成オリゴヌクレオチド hGH-f2
配列番号8=合成オリゴヌクレオチド hGH-r2
配列番号9=ヒト野生型I2Sアミノ酸配列
配列番号10=ヒト野生型I2SをコードするDNA 塩基配列
配列番号11=プライマー hMPR9-f
配列番号12=プライマー hMPR9-r
配列番号13=N末端にBipシグナル配列をC末端にHis-タグ配列を有するhMPR9をコードする合成DNA塩基配列
配列番号14=プライマー hMPR9-f2
配列番号15=プライマー hMPR9-r2
配列番号16=プライマー hMPR9-f3
配列番号17=プライマー hMPR9-r3

Claims (5)

  1. rhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるアスパラギン型のオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が3.7〜5.4個の範囲にある,医薬としてのrhI2S。
  2. rhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるアスパラギン型のオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が4.0〜6.0個の範囲にある,医薬としてのrhI2S。
  3. rhI2Sであって,これに結合し1個又は2個以上のマンノース−6−リン酸残基を含んでいるオリゴ糖鎖を有するものであり,rhI2Sの1分子あたりのマンノース−6−リン酸残基の平均個数が4.2〜5.8個の範囲にある,医薬としてのrhI2S。
  4. 請求項1ないし3の何れかのrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が7.5〜15x10-10 mol/Lの範囲にある,医薬としてのrhI2S。
  5. 請求項1ないし3の何れかのrhI2Sであって,該rhI2Sとマンノース−6−リン酸受容体との間の平均解離定数が5.0〜15x10-10 mol/Lの範囲にある,医薬としてのrhI2S。
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