JP2021066730A - 血清アルブミンと成長ホルモンの融合蛋白質の製造方法 - Google Patents

血清アルブミンと成長ホルモンの融合蛋白質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒト血清アルブミンとヒト成長ホルモンとの融合蛋白質の製造方法を提供すること。【解決手段】ヒト血清アルブミンとヒト成長ホルモンとの融合蛋白質の製造方法であって,(a)該蛋白質を産生する哺乳動物細胞を無血清培地中で培養して該蛋白質を培養液中に分泌させるステップと,(b)上記ステップ(a)で得られた培養液から該哺乳動物細胞を除去することにより培養上清を回収するステップと,(c)上記ステップ(b)で得られた培養上清から,該蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィーとを用いて,該蛋白質を精製するステップと,を含んでなるものである,製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は,血清アルブミンと成長ホルモンの融合蛋白質の,医薬としてそのまま使用し得る純度のものの製造方法に関する。
ヒト成長ホルモン(hGH)は,視床下部の制御下で下垂体前葉から分泌される蛋白質である。hGHは,軟骨形成促進,蛋白質同化促進等の成長促進活性を示すほか,体組成及び脂質代謝改善作用を示す。hGHの分泌が少ない小児は,健常児と比較して低身長を呈する成長ホルモン分泌不全性低身長症を発症する。
hGH遺伝子を導入した大腸菌を用いて組換え蛋白質として製造された分子量約22KDのhGHを有効成分として含有する製剤(hGH製剤)が,成長ホルモン分泌不全性低身長症,ターナー症候群における低身長,SGA(Small-for-Gestational Age)性低身長症,ヌーナン症候群における低身長症,慢性腎不全による低身長症,プラダーウィリー症候群における低身長症,軟骨異栄養症における低身長症の治療剤として広く臨床応用されている。hGH製剤は,これら疾患において骨端線閉鎖を伴わない場合において特に効果を奏する。hGH製剤は,皮下又は筋肉内に投与されて血中を循環し,その成長促進活性により患者の成長を促す効果を奏する。また,hGH製剤は,成人成長ホルモン分泌不全症の治療剤としても広く臨床応用されている。成人成長ホルモン分泌不全症の患者では,脂質代謝異常等種々の異常が認められるが,hGH製剤の投与により,患者の脂質代謝が正常化する等,患者のQOLが改善される。成長ホルモン分泌不全性低身長症,成人成長ホルモン分泌不全症等に対するhGH製剤としては,例えば,グロウジェクト(登録商標)がある。
hGHの血漿中における半減期は20分未満とされており,患者に投与されたhGHは,速やかに血中から消失する。このため,hGHの薬効を患者で実質的に発揮させるには,患者にhGHを週に3回筋肉内に,又は毎日皮下に,投与する必要がある。このような頻繁な投与は患者の負担となっている。従って,hGHの血漿中における安定性を増加させて半減期を延長させることにより患者へのhGHの投与回数を減らすことができれば,患者の負担を軽減させることができ,好ましい。
ヒト血清アルブミン(HSA)は,その成熟型が585個のアミノ酸からなる蛋白質である。単にヒト血清アルブミンというときは,この成熟型のことをいう。HSAは,血漿蛋白質の中では最も量の多い成分で,血漿中での半減期が14〜20日と長い。HSAは,血漿の浸透圧の調節に寄与するとともに,血中の陽イオン,脂肪酸,ホルモン類,ビリルビンその他の内因性の物質及び薬剤等の外因性の物質と結合してそれらを運搬する機能を有する。一般に,HSAと結合した物質は,臓器に取り込まれ難くなり,血中をより長時間循環できるようになる。
ヒト血清アルブミン(HSA)には,天然のバリアントが複数あることが知られている。ヒト血清アルブミンRedhillはその一つである(非特許文献1,2)。ヒト血清アルブミンRedhillは,585個のアミノ酸からなる上記の通常のヒト血清アルブミンのアミノ酸配列と比べて,そのN末端側から320番目のアミノ酸残基がアラニンでなくトレオニンであり,且つそのN末端にアルギニン残基が一つ付加している点で異なり,586個のアミノ酸からなる。上記アラニンのトレオニンへの変化により,アルブミンRedhillではそのアミノ酸配列中にAsn-Tyr-Thrで表される配列が生じ,この配列中のAsn(アスパラギン)残基がN−結合型グリコシド化される。このためアルブミンRedhillは,上記の通常のヒト血清アルブミンと比較して分子量が2.5kDa程大きく観察される。
hGHの血漿中での安定性を,hGHにHSAを結合させることによって増加させる方法が報告されている(特許文献1〜8)。hGHにHSAを結合させた蛋白質は,hGHをコードする遺伝子とHSAをコードする遺伝子とをインフレームに結合させたDNAを組込んだ発現ベクターを導入した形質転換細胞を作製し,この細胞を培養することにより,培地中又は細胞内に組換え蛋白質として作製される。
WO2017/154869 WO2017/159540 特表2003−530838号公報 特表2005−514060号公報 特表2000−502901号公報 特表2008−518615号公報 特表2013−501036号公報 特表2013−518038号公報
上記背景の下で,本発明の一目的は,ヒトアルブミンとヒト成長ホルモンの融合蛋白質の,医薬としてそのまま使用し得る純度のものの製造方法,及びそれを有効成分として含有する医薬を提供することである。
本発明者らは,上記目的に向けた研究において検討を重ねた結果,585個のアミノ酸からなる通常のヒト血清アルブミンと比較してそのN末端から320番目のアミノ酸残基であるアルギニンがトレオニンで置き換わっているものであるアミノ酸配列よりなる変異体(ヒト血清アルブミン変異体)をヒト成長ホルモン(hGH)と結合させて得た化合物(ヒト血清アルブミン変異体−hGH融合蛋白質)の,医薬としてそのまま使用し得る純度のものを効率良く製造する方法を見出し,本発明を完成した。すなわち,本発明は以下を含むものである。
1.ヒト血清アルブミンとヒト成長ホルモンとの融合蛋白質の製造方法であって,
(a)該蛋白質を産生する哺乳動物細胞を無血清培地中で培養して該蛋白質を培養液中に分泌させるステップと,
(b)上記ステップ(a)で得られた培養液から該哺乳動物細胞を除去することにより培養上清を回収するステップと,
(c)上記ステップ(b)で得られた培養上清から,該蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィーとを用いて,該蛋白質を精製するステップと,
を含んでなるものである,製造方法。
2.該ステップ(c)において,該蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィーとを,この順で用いてなるものである,上記1に記載の製造方法。
3.該蛋白質に親和性を有する抗体が,ヒト血清アルブミン又はヒト成長ホルモンに親和性を有するものである,上記1又は2の製造方法。
4.該融合蛋白質に親和性を有する抗体が,ヒト成長ホルモンに親和性を有するものである,上記1又は2の製造方法。
5.該リン酸基に対する親和性を有する該材料が,フルオロアパタイト又はハイドロキシアパタイトのいずれかである,上記1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
6.該リン酸基に対する親和性を有する該材料が,ハイドロキシアパタイトである,上記1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
7.該陽イオン交換カラムクロマトグラフィーに使用した陽イオン交換体が,弱陽イオン交換体である,上記1乃至6のいずれかに記載の製造方法。
8.該弱陽イオン交換体が疎水性相互作用及び疎水結合形成の双方に基づき選択性を保持するものである,上記7の製造方法。
9.ウイルスを不活化するためのステップを,更に含むものである,上記1乃至8の何れかの製造方法。
10.該蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーで得られた該蛋白質の溶出液に対して,ウイルスの不活化が行われるものである,上記9の製造方法。
11.該サイズ排除カラムクロマトグラフィーで得られた該蛋白質の溶出液に対して,ウイルスの不活化が行われるものである,上記9の製造方法。
12.ウイルスを不活化するためのステップを,2回含むものである,上記1乃至8の何れかの製造方法。
13.該蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーで得られた該蛋白質の溶出液,及び該サイズ排除カラムクロマトグラフィーで得られた該蛋白質の溶出液に対して,ウイルスの不活化が行われるものである,上記12の製造方法。
14.ウイルスを不活化するためのステップの1回が,HSA−hGH融合蛋白質を含有する溶液に非イオン性界面活性剤を添加してウイルスを不活化する方法により行われるものであり,他の1回が,HSA−hGH融合蛋白質を含有する溶液をろ過膜に通過させる方法により行われるものである,上記12又は13に記載の製造方法。
15.該蛋白質が,ヒト成長ホルモンのC末端側に,リンカー配列を介して又は直接,ヒト血清アルブミンがペプチド結合により結合したものである,上記1乃至14の製造方法。
16.該リンカー配列が,1個のグリシン,1個のセリン,アミノ酸配列(Gly−Ser),アミノ酸配列(Gly−Gly−Ser),及びこれらのアミノ酸配列が1〜10個連続してなるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるものである,上記15に記載の製造方法。
17.該リンカー配列が,アミノ酸配列(Gly−Ser)で示されるアミノ酸配列を有するものである,上記16に記載の製造方法。
18.該蛋白質のアミノ酸配列が,配列番号11で示されるアミノ酸配列と,85%以上の同一性を有するものである,上記1乃至14の製造方法。
19.該蛋白質のアミノ酸配列が,配列番号11で示されるアミノ酸配列と,95%以上の同一性を有するものである,上記1乃至14の製造方法。
20.該蛋白質のアミノ酸配列が,配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するものである,上記1乃至14の製造方法。
本発明によれば,例えば,医薬として市場に流通させることが可能な程度にまで精製された血清アルブミンと成長ホルモンの融合蛋白質を,効率良く製造することができる。
図1は,22KhGH−mHSA精製品のSE-HPLCチャートを示す。縦軸は215nmにおける吸光度(任意単位),横軸は保持時間(分)を,それぞれ示す。図中,ピーク1は22KhGH−mHSA精製品の単量体を,ピーク2は22KhGH−mHSA精製品の重合体にそれぞれ対応する。
本明細書において,単に「ヒト血清アルブミン」又は「HSA」というときは,配列番号1で示される585個のアミノ酸残基からなる通常の野生型のヒト血清アルブミンに加え,血中の内因性の物質及び薬剤等の外因性の物質を結合して運搬する機能等の通常の野生型ヒト血清アルブミンとしての機能を有するものである限り,配列番号1で示されるアミノ酸配列に対し,1個又は複数個のアミノ酸残基が,置換,欠失,及び/又は付加(本明細書において,アミノ酸残基の「付加」は,配列の末端又は内部に残基を追加することを意味する。)されたものに相当するHSAの変異体も特に区別することなく包含する。アミノ酸残基を他のアミノ酸残基で置換する場合,置換するアミノ酸残基の個数は,好ましくは1〜10個であり,より好ましくは1〜5個であり,更に好ましくは1〜3個である。アミノ酸残基を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸残基の個数は,好ましくは1〜10個であり,より好ましくは1〜5個であり,更に好ましくは1〜3個である。例えば,配列番号1で示されるアミノ酸配列のN末端又はC末端のアミノ酸残基が欠失した,584個のアミノ酸残基からなる変異体も,ヒト血清アルブミンに含まれる。また,これらアミノ酸残基の置換と欠失を組み合わせてもよい。更に,通常の野生型のHSA又はその変異体のアミノ酸配列中に又は当該アミノ酸配列のN末端側若しくはC末端側に,1個又は複数個のアミノ酸残基が付加されたものであってもよい。このとき付加されるアミノ酸残基の個数は,好ましくは1〜10個であり,より好ましくは1〜5個であり,更に好ましくは1〜3個である。
これらアミノ酸の置換及び欠失,及び付加の3種類の変異のうち,少なくとも2種類の変異を組み合わせて導入したHSAの変異体としては,配列番号1で示されるアミノ酸配列に対し,0〜10個のアミノ酸残基の欠失と,0〜10個のアミノ酸残基の他のアミノ酸残基への置換と,更に0〜10個のアミノ酸残基の付加とを行ってなるアミノ酸配列を有するものが好ましい。より好ましくは,配列番号1で示されるアミノ酸配列に対するそれら欠失,置換,及び/又は付加されるアミノ酸残基の個数は,好ましくはそれぞれ5個以下,更に好ましくは3個以下である。
本発明において,「ヒト血清アルブミンRedhill」(HSA-Redhill)の語は,ヒト血清アルブミンのバリアントであって,配列番号2で示される586個のアミノ酸残基からなるものを意味する。ヒト血清アルブミンRedhillは,配列番号1で示される585個のアミノ酸からなる野生型のヒト血清アルブミンのアミノ酸配列に対して,N末端から320番目のアミノ酸残基がアラニンでなくトレオニンであり且つN末端にアルギニン残基が一つ付加したものに相当する。このアラニンのトレオニンへの置換により,アルブミンRedhillではそのアミノ酸配列中にAsn-Tyr-Thrで表される配列部分が生じ,この配列部分中のAsn(アスパラギン)残基がN−結合型グリコシド化されている。このためアルブミンRedhillは,通常の野生型アルブミン(配列番号1)と比較して分子量が2.5kDa程大きく観察される。
本発明において,「ヒト血清アルブミン変異体」(HSA変異体)の語は,通常の野生型HSA(配列番号1)に対する上述の変異体であって,但し配列番号2で示されるバリアント(HSA-Redhill)以外のものをいう。本発明において好ましいHSA変異体は,野生型のHSAのアミノ酸配列のN末端から320番目のアラニンがトレオニンへ置換したものである配列番号3で示されるものに加え,血中の内因性の物質及び薬剤等の外因性の物質を結合して運搬する機能等の通常の野生型ヒト血清アルブミンとしての機能を有するものである限り,配列番号3で示されるアミノ酸配列に対し,1個又は複数個のアミノ酸残基が,他のアミノ酸残基へ置換され,欠失し,或いは付加されたアミノ酸配列であって,但し配列番号3で示されるアミノ酸配列のN末端から318番目のアスパラギン残基及び320番目のトレオニン残基が,これら2残基の間にプロリン以外の単一のアミノ酸残基(X)を介してペプチド結合により結合された状態で保存されているものであるアミノ酸配列を有するものを含む。当該アミノ酸配列中のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基で置換する場合,置換するアミノ酸残基の個数は,好ましくは1〜10個であり,より好ましくは1〜5個であり,更に好ましくは1〜3個である。アミノ酸残基を欠失させる場合,欠失させるアミノ酸残基の個数は,好ましくは1〜10個であり,より好ましくは1〜5個であり,更に好ましくは1〜3個である。例えば,配列番号3で示されるアミノ酸配列のN末端又はC末端のアミノ酸残基が欠失した,584個のアミノ酸残基からなる変異体でもよい。また,これらアミノ酸残基の置換と欠失を組み合わせたものであってもよい。更に,それら変異体のアミノ酸配列中に又は当該アミノ酸配列のN末端側若しくはC末端側に,1個又は複数個のアミノ酸残基が付加されたものであってもよい。即ち,配列番号3で示されるアミノ酸配列に対し,アミノ酸の置換及び欠失,及び付加の3種類の変異のうち,少なくとも2種類の変異を組み合わせて導入したものであって,0〜10個のアミノ酸残基の欠失と,0〜10個のアミノ酸残基の他のアミノ酸残基への置換と,更に0〜10個のアミノ酸残基の付加とを行ったものであることができる。但し,配列番号3に示されるアミノ酸配列のN末端から318〜320番目のアミノ酸残基はアスパラギン−X−トレオニン(「X」はプロリン以外のアミノ酸残基)でなければならず,好ましくは,アスパラギン−チロシン−トレオニンである。なお,ヒト血清アルブミン変異体は,ヒト血清アルブミンとしての機能を保持する限り,ヒト血清アルブミンに包含される。ここでヒト血清アルブミン変異体のアミノ酸配列は,配列番号1で示される通常の野生型HSAのアミノ酸配列と,好ましくは85%以上の同一性を,より好ましくは90%以上の同一性を,更に好ましくは95%以上の同一性を有するものである。
本発明において,種々のHSA変異体における通常の野生型HSAと比較したときの各変異の位置及びその形式(欠失,置換,付加)は,両HSAのアミノ酸配列のアラインメントにより,容易に確認することができる。なお,本発明において,野生型HSAのアミノ酸配列と変異を加えたHSAのアミノ酸配列との同一性は,周知の相同性計算アルゴリズムを用いて容易に算出することができる。例えば,そのようなアルゴリズムとして,BLAST(Altschul SF. J Mol. Biol. 215. 403-10, (1990)),Pearson及びLipmanの類似性検索法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 85. 2444 (1988)),Smith及びWatermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2. 482-9(1981))等がある。
上記のHSAのアミノ酸配列中のアミノ酸の他のアミノ酸による置換としては,例えば,芳香族アミノ酸(Phe, Trp, Tyr),脂肪族アミノ酸(Ala, Leu, Ile, Val),極性アミノ酸(Gln, Asn),塩基性アミノ酸(Lys, Arg, His),酸性アミノ酸(Glu, Asp),水酸基を有するアミノ酸(Ser, Thr),側鎖の小さいアミノ酸(Gly,Ala,Ser,Thr,Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は,HSAの機能に大きな変化をもたらさない(即ち,保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。
後述の実施例においてヒト成長ホルモンと結合させたヒト血清アルブミン変異体(HSA変異体の典型的一例)は,585個のアミノ酸からなる野生型のヒト血清アルブミンのアミノ酸配列(配列番号1)に対し,N末端から320番目のアミノ酸残基がアラニンでなくトレオニンである点においてのみ異なる(配列番号3)。この相違により,当該HSA変異体(「HSA(A320T)」という。)ではそのアミノ酸配列中にAsn-Tyr-Thrで表される配列部分が生じ,この配列部分においてAsn(アスパラギン)残基がN−結合型グリコシド化されることができる。
本明細書において,「ヒト血清アルブミンとヒト成長ホルモンの融合蛋白質」又は「ヒト血清アルブミン−hGH融合蛋白質(HSA−hGH融合蛋白質)」の語は,HSAが結合した成長ホルモンをいい,これは両者の各アミノ酸配列を有するポリペプチド同士を結合させることで得られる化合物である。ここで,それらのポリペプチドを「結合させる」とは,一方のN末端と他方のC末端との間の直接のペプチド結合による場合のみならず,両ポリペプチドをリンカーを介して間接的に結合させる場合も含む。特に,ヒト血清アルブミンがヒト血清アルブミン変異体であるときは,「ヒト血清アルブミン変異体とヒト成長ホルモンの融合蛋白質」又は「ヒト血清アルブミン変異体−hGH融合蛋白質(HSA変異体−hGH融合蛋白質)」という。つまり,ヒト血清アルブミン変異体−hGH融合蛋白質は,ヒト血清アルブミン−hGH融合蛋白質に包含される。
ここに「リンカー」は,上記2つのポリペプチドの間にあって両者を共有結合で結合する構造部分であり,HSA(HSA変異体を含む)とその結合相手である成長ホルモンの何れの末端にも由来しないものである。リンカーは,両ポリペプチドとペプチド結合した,単一のアミノ酸残基であるか又は2個以上のアミノ酸残基からなるペプチド鎖部分(ペプチドリンカー)であることができ,これら1個以上のアミノ酸残基からなるリンカーを,本明細書において包括的に「ペプチドリンカー」という。また,本明細書において,HSAと成長ホルモンが「ペプチド結合を介して」結合しているというときは,両者が直接ペプチド結合により結合している場合と両者がペプチドリンカーとの結合により結合している場合とを包含する。なお,本明細書において,HSAと成長ホルモンとが直接に又はペプチドリンカーを介して結合している場合,当該化合物である「ヒト血清アルブミン−hGH融合蛋白質(HSA−hGH融合蛋白質)」は,「ヒト血清アルブミン融合hGH(HSA融合hGH)」ということもできる。ヒト血清アルブミン変異体−hGH融合蛋白質(HSA変異体−hGH融合蛋白質)についても同様である。
本発明において,HSAと成長ホルモンがペプチドリンカーを介して結合しているとき,そのリンカーは,好ましくは1〜50個,より好ましくは1〜17個,更に好ましくは1〜10個,尚も好ましくは1〜6個のアミノ酸残基で構成されており,例えば,2〜17個,2〜10個,10〜40個,20〜34個,23〜31個又は25〜29個のアミノ酸で構成されるものであり,更に例えば,1個のアミノ酸残基のみで,又は2個,3個,5個,6個又は20個のアミノ酸残基から構成されるものである。ペプチドリンカーで結合されたHSA部分がHSAとしての機能を保持し且つ成長ホルモンの部分も生理的条件下で成長ホルモンの生理活性を発揮できる限り,ペプチドリンカーを構成するアミノ酸残基又はアミノ酸配列に限定はないが,好ましくは,グリシンとセリンから構成されるものである。ペプチドリンカーの好適な例として,Gly-Ser,Gly-Gly-Ser,Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号4),Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号5),Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号6)からなるもの,及びこれらアミノ酸配列を含んでなるものが挙げられる。これらのアミノ酸配列の何れか一種が2〜10回,あるいは2〜5回連続してなる配列を有するものも,ペプチドリンカーとして好適に使用でき,また,これらのアミノ酸配列の何れかニ種以上が組み合わさって1〜10回,あるいは2〜5回連続してなる配列を有するものも,ペプチドリンカーとして好適に使用できる。これらのアミノ酸配列の何れかニ種以上が組み合わさったペプチドリンカーの好適なものとして,アミノ酸配列Gly−Serに続いてアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号5)が3個連続してなる計20個のアミノ酸配列を含むものが挙げられる。
2つの異なるポリペプチドを結合する方法としては,例えば,一方のポリペプチドをコードする遺伝子の下流に,インフレームで他方のポリペプチドをコードする遺伝子を結合させたDNAを組み込んだ発現ベクターを作製し,この発現ベクターを用いて形質転換させた宿主細胞を培養することにより,組換え融合蛋白質として発現させる方法が一般的であり,本発明において利用できる。
組換え体として形質転換細胞に発現させることによりHSA−hGH融合蛋白質を産生させる場合,成長ホルモンのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドが,HSAのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドのN末端又はC末端の何れかに結合された形の融合蛋白質が得られる。遺伝子組換え技術を用いて製造されたHSA−hGH融合蛋白質は,特に,組換えHSA−hGH融合蛋白質という。
HSAのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドのN末端側に成長ホルモンのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを結合させる場合,成長ホルモンのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする遺伝子の下流に,HSAのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドをコードする遺伝子をインフレームで結合させたDNAを組み込んだ発現ベクターが用いられる。ペプチドリンカーを介して2つのポリペプチドを間接的に結合させる場合は,2つのポリペプチドをコードする遺伝子の間に,当該リンカーをコードするDNA配列がインフレームで挿入される。
HSAのアミノ酸配列を含むポリペプチドのC末端側に成長ホルモンのアミノ酸配列を含むポリペプチドを結合させる場合,成長ホルモンのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする遺伝子の上流に,HSAのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする遺伝子をインフレームで結合させたDNAを組み込んだ発現ベクターが用いられる。ペプチドリンカーを介して2つのポリペプチドを間接的に結合させる場合は,2つのポリペプチドをコードする遺伝子の間に,当該リンカーをコードするDNA配列がインフレームで挿入される。
HSA−hGH融合蛋白質を宿主細胞に産生させるには,それらの何れかをコードするDNAを組み込んだ発現ベクターが宿主細胞に導入される。このために用いることのできる宿主細胞は,そのような発現ベクターを導入することによりHSA−hGH融合蛋白質を発現させることができるものである限り特に制限はなく,哺乳動物細胞,酵母,植物細胞,昆虫細胞等の真核生物細胞,大腸菌,枯草菌等の原核細胞の何れであってもよいが,哺乳動物細胞が特に好適である。但し,糖鎖修飾された蛋白質として発現させる場合の宿主細胞は,哺乳動物細胞,酵母,植物細胞,昆虫細胞等の真核生物細胞から選択される。通常野生型のHSAの320番目のアミノ酸残基がトレオニンとなることにより生じるAsn−Tyr−Thrで表される配列部分のAsn残基,又はAsn−X−Thr(「X」はプロリン以外のアミノ酸残基)で表される配列中のAsn残基は,HSA−hGH融合蛋白質の発現を真核生物細胞で行わせることによりN−結合型グリコシド化される。
哺乳動物細胞を宿主細胞として使用する場合,該哺乳動物細胞の種類について特に限定はないが,ヒト,マウス,チャイニーズハムスター由来の細胞が好ましく,特にチャイニーズハムスター卵巣細胞由来のCHO細胞,又はマウス骨髄腫に由来するNS/0細胞が好ましい。またこのときHSA−hGH融合蛋白質をコードするDNA断片を組み込んで発現させるために用いる発現ベクターは,哺乳動物細胞内に導入したとき該遺伝子の発現をもたらすものであれば特に限定なく用いることができる。発現ベクターに組み込まれた該遺伝子は,哺乳動物細胞内で遺伝子の転写の頻度を調節することができるDNA配列(遺伝子発現制御部位)の下流に配置される。本発明において用いることのできる遺伝子発現制御部位としては,例えば,サイトメガロウイルス由来のプロモーター,SV40初期プロモーター,ヒト伸長因子−1α(EF−1α)プロモーター,ヒトユビキチンCプロモーターが挙げられる。
このような発現ベクターが導入された哺乳動物細胞は,発現ベクターに組み込まれている蛋白質を発現するようになるが,その発現量は個々の細胞により異なり一様ではない。従って,HSA−hGH融合蛋白質を効率よく生産するためには,発現ベクターが導入された哺乳動物細胞から,これらの発現レベルが高い細胞を選択するステップが必要となる。この選択ステップを行うために,発現ベクターには選択マーカーとして働く遺伝子が組み込まれている。
選択マーカーとして最も一般的なものはピューロマイシン,ネオマイシン等の薬剤を分解する酵素(薬剤耐性マーカー)である。哺乳動物細胞は通常一定濃度以上のこれらの薬剤の存在下で死滅する。しかし,薬剤耐性マーカー遺伝子の組み込まれた発現ベクターが導入された哺乳動物細胞は,発現された薬剤耐性マーカーにより上記薬剤を無毒化又は弱毒化することができるため,上記薬剤存在下でも生存可能となる。選択マーカーとして薬剤耐性マーカーが組み込まれた発現ベクターを哺乳動物細胞に導入し,その薬剤耐性マーカーに対応する薬剤を含有する選択培地中で,例えば,その薬剤の濃度を徐々に上昇させながら培養を続けると,より高濃度の薬剤存在下でも増殖可能な細胞が得られる。このようにして選択された細胞では,薬剤耐性マーカーとともに,一般に,発現ベクターに組み込まれた目的の蛋白質をコードする遺伝子の発現量も増加し,結果として当該蛋白質の発現レベルの高い細胞が選択される。
また,選択マーカーとして,グルタミン合成酵素(GS)を用いることもできる。グルタミン合成酵素は,グルタミン酸とアンモニアからグルタミンを合成する酵素である。哺乳動物細胞を,グルタミン合成酵素の阻害剤,例えばL-メチオニンスルホキシミン(MSX)を含有し,且つグルタミンを含有しない選択培地中で培養すると,細胞は通常死滅する。しかし,選択マーカーとしてグルタミン合成酵素が組み込まれた発現ベクターを哺乳動物細胞に導入すると,該細胞では,グルタミン合成酵素の発現レベルが上昇するようになるので,より高濃度のMSX存在下でも増殖可能となる。このとき,MSXの濃度を徐々に上昇させながら培養を続けると,より高濃度のMSX存在下でも増殖可能な細胞が得られる。このようにして選択された細胞では,グルタミン合成酵素とともに,一般に,発現ベクターに組み込んだ目的の蛋白質をコードする遺伝子の発現量も増加し,結果として当該蛋白質の発現レベルの高い細胞が選択される。
また,選択マーカーとして,ジヒドロ葉酸レデクターゼ(DHFR)を用いることもできる。DHFRを選択マーカーとして用いる場合,発現ベクターを導入した哺乳動物細胞は,メトトレキセート,アミノプテリン等のDHFR阻害剤を含有する選択培地中で培養される。DHFR阻害剤の濃度を徐々に上昇させながら培養を続けると,より高濃度のDHFR阻害剤存在下でも増殖可能な細胞が得られる。このとき用いられる選択培地は,ヒポキサンチン及びチミジンを含有しないことが好ましい。このようにして選択された細胞では,DHFRとともに,一般に,発現ベクターに組み込んだ目的の蛋白質をコードする遺伝子の発現量も増加し,結果として当該蛋白質の発現レベルの高い細胞が選択される。
目的の蛋白質をコードする遺伝子の下流側に内部リボソーム結合部位(IRES:internal ribosome entry site)を介して,選択マーカーとしてグルタミン合成酵素(GS)を配置した発現ベクターが知られている(国際特許公報WO2012/063799,WO2013/161958)。これら文献に記載された発現ベクターは,HSA−hGH融合蛋白質の製造に特に好適に使用することができる。
例えば,目的の蛋白質を発現させるための発現ベクターであって,第1の遺伝子発現制御部位,並びに,その下流に該蛋白質をコードする遺伝子,更に下流に内部リボソーム結合部位,及び更に下流にグルタミン合成酵素をコードする遺伝子を含み,且つ,上記第1の遺伝子発現制御部位の又はこれとは別の第2の遺伝子発現制御部位の下流にジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子又は薬剤耐性遺伝子を更に含んでなる発現ベクターは,HSA−hGH融合蛋白質の製造に好適に使用できる。この発現ベクターにおいて,第1の遺伝子発現制御部位又は第2の遺伝子発現制御部位としては,サイトメガロウイルス由来のプロモーター,SV40初期プロモーター,ヒト伸長因子−1αプロモーター(hEF−1αプロモーター),ヒトユビキチンCプロモーターが好適に用いられるが,hEF−1αプロモーターが特に好適である。
また,内部リボソーム結合部位としては,ピコルナウイルス科のウイルス,口蹄疫ウイルス,A型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス,コロナウイルス,ウシ腸内ウイルス,サイラーのネズミ脳脊髄炎ウイルス,コクサッキーB型ウイルスからなる群より選択されるウイルスのゲノム,又はヒト免疫グロブリン重鎖結合蛋白質遺伝子,ショウジョウバエアンテナペディア遺伝子,ショウジョウバエウルトラビトラックス遺伝子からなる群から選択される遺伝子の5’非翻訳領域に由来するものが好適に用いられるが,マウス脳心筋炎ウイルスゲノムの5’非翻訳領域に由来する内部リボソーム結合部位が特に好適である。マウス脳心筋炎ウイルスゲノムの5’非翻訳領域に由来する内部リボソーム結合部位を用いる場合,野生型のもの以外に,野生型の内部リボソーム結合部位に含まれる複数の開始コドンのうちの一部が破壊されたものも好適に使用できる。また,この発現ベクターにおいて,好適に用いられる薬剤耐性遺伝子は,好ましくはピューロマイシン又はネオマイシン耐性遺伝子であり,より好ましくはピューロマイシン耐性遺伝子である。
また,例えば,目的の蛋白質を発現させるための発現ベクターであって,ヒト伸長因子−1αプロモーター,その下流に該蛋白質をコードする遺伝子,更に下流にマウス脳心筋炎ウイルスゲノムの5’非翻訳領域に由来する内部リボソーム結合部位,及び更に下流にグルタミン合成酵素をコードする遺伝子を含み,且つ別の遺伝子発現制御部位及びその下流にジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子を更に含む発現ベクターであって,該内部リボソーム結合部位が,野生型の内部リボソーム結合部位に含まれる複数の開始コドンのうちの一部が破壊されたものである発現ベクターは,HSA−hGH融合蛋白質の製造に好適に使用できる。このような発現ベクターとして,WO2013/161958に記載された発現ベクターが挙げられる。
また,例えば,目的の蛋白質を発現させるための発現ベクターであって,ヒト伸長因子−1αプロモーター,その下流に該蛋白質をコードする遺伝子,更に下流にマウス脳心筋炎ウイルスゲノムの5’非翻訳領域に由来する内部リボソーム結合部位,及び更に下流にグルタミン合成酵素をコードする遺伝子を含み,且つ別の遺伝子発現制御部位及びその下流に薬剤耐性遺伝子を更に含む発現ベクターであって,該内部リボソーム結合部位が,野生型の内部リボソーム結合部位に含まれる複数の開始コドンのうちの一部が破壊されたものである発現ベクターは,HSA−hGH融合蛋白質の製造に好適に使用できる。このような発現ベクターとして,WO2012/063799に記載されたpE-mIRES-GS-puro及びWO2013/161958に記載されたpE-mIRES-GS-mNeoが挙げられる。
野生型のマウス脳心筋炎ウイルスゲノムの5’非翻訳領域に由来する内部リボソーム結合部位の3’末端には,3つの開始コドン(ATG)が存在しており,その3つの開始コドンを含む配列部分は配列番号7(5'-ATGataatATGgccacaaccATG-3':開示コドンのATGを大文字で示す)で示される。この配列部分中の開始コドンのうちの一部が破壊されたものとして,例えば,配列番号8(5'-atgataagcttgccacaaccatg-3')で示されるものがあり,上記のpE-mIRES-GS-puro及びpE-mIRES-GS-mNeoは,配列番号8で示される配列を含むIRESを有する発現ベクターである。
本発明において,HSA−hGH融合蛋白質をコードするDNA断片を組み込んだ発現ベクターが導入された哺乳動物細胞は,これらの発現レベルの高い細胞を選択するために,選択培地中で選択培養される。
選択培養において,DHFRを選択マーカーとして使用する場合,選択培地に含まれるDHFR阻害剤の濃度を段階的に上昇させる。その最大濃度は,DHFR阻害剤がメトトレキセートの場合,好ましくは0.25〜5 μMであり,より好ましくは0.5〜1.5 μMであり,更に好ましくは約1.0 μMである。
GSを選択マーカーとして使用する場合,選択培地に含まれるGS阻害剤の濃度を段階的に上昇させる。その最大濃度は,GS阻害剤がMSXの場合,好ましくは10〜1000 μM等であり,例えば,20〜500 μM,20〜80 μM,20〜30 μMである。またこのとき,一般的にグルタミンを含有しない培地が選択培地として用いられる。
ピューロマイシンを分解する酵素を選択マーカーとして使用する場合,選択培地に含まれるピューロマイシンの最大濃度は,好ましくは3〜30 μg/mLであり,より好ましくは5〜20 μg/mLであり,更に好ましくは約10 μg/mLである。
ネオマイシンを分解する酵素を選択マーカーとして使用する場合,選択培地に含まれるG418の最大濃度は,好ましくは0.1〜2 mg/mLであり,より好ましくは0.5〜1.5 mg/mLであり,更に好ましくは約1 mg/mLである。
また,哺乳動物細胞の培養のための培地としては,選択培養で用いる培地,後述する組換え蛋白質を生産するために用いる培地(組換え蛋白質生産用培地)ともに,哺乳動物細胞を培養して増殖させることのできるものであれば,特に限定なく用いることができるが,好ましくは無血清培地が用いられる。HSAは血清中に含まれる成分を吸着する性質を有するため,血清を含有する培地を用いてHSAを生産した場合には,血清中の不純物を吸着したHSAが得られることから,その後の工程でこの不純物を除去する必要が生じる。
本発明において,HSA−hGH融合蛋白質は,特に,これらを発現している細胞を無血清培地で培養して得られるものである。無血清培地を用いることにより,HSA−hGH融合蛋白質への不純物の吸着量を低減することができるので,その後の精製工程を簡便化することができる。
選択培養により選択されたHSA−hGH融合蛋白質の発現レベルの高い細胞がHSA−hGH融合蛋白質の生産に用いられる(HSA−hGH融合蛋白質産生細胞)。HSA−hGH融合蛋白質の生産は,HSA−hGH融合蛋白質産生細胞をHSA−hGH融合蛋白質生産用培地中で培養することにより行われる。この培養を生産培養という。
本発明において,HSA−hGH融合蛋白質生産用培地として用いられる無血清培地としては,例えば,アミノ酸を3〜700mg/L,ビタミン類を0.001〜50 mg/L,単糖類を0.3〜10 g/L,無機塩を0.1〜10000 mg/L,微量元素を0.001〜0.1 mg/L,ヌクレオシドを0.1〜50 mg/L,脂肪酸を0.001〜10 mg/L,ビオチンを0.01〜1 mg/L,ヒドロコルチゾンを0.1〜20 μg/L,インシュリンを0.1〜20 mg/L,ビタミンB12を0.1〜10 mg/L,プトレッシンを0.01〜1 mg/L,ピルビン酸ナトリウムを10〜500 mg/L,及び水溶性鉄化合物を含有する培地が好適に用いられる。所望により,チミジン,ヒポキサンチン,慣用のpH指示薬及び抗生物質等を培地に添加してもよい。
HSA−hGH融合蛋白質生産用培地として用いられる無血清培地として,DMEM/F12培地(DMEMとF12の混合培地)を基本培地として用いてもよく,これら各培地は当業者に周知である。更にまた,無血清培地として,炭酸水素ナトリウム,L−グルタミン,D−グルコース,インスリン,ナトリウムセレナイト,ジアミノブタン,ヒドロコルチゾン,硫酸鉄(II),アスパラギン,アスパラギン酸,セリン及びポリビニルアルコールを含むものである,DMEM(HG)HAM改良型(R5)培地を使用してもよい。更には市販の無血清培地,例えば,CD OptiCHOTM培地,CHO−S−SFM II培地又はCD CHO培地(Thermo Fisher Scientific社),IS cho−VTM 培地(Irvine Scientific社),EX−CELLTM302培地,EX−CELLTM Advanced培地又はEX−CELLTM325−PF培地(SAFC Biosciences社)等を基本培地として使用することもできる。
HSA−hGH融合蛋白質生産用培地には,適宜,ダイズ,小麦,イネ等の植物由来の加水分解物を1〜50 g/L(例えば1〜5 g/L)を添加することもできる。最も一般的に用いられるものは,ダイズ由来の蛋白質加水分解物である。但し,HSA−hGH融合蛋白質は,HSA−hGH融合蛋白質生産用培地に,イネ等の植物由来の加水分解物,例えばダイズ由来の蛋白質加水分解物を添加することなく製造することができる。
生産培養終了後の培養液は,HSA−hGH融合蛋白質の精製のためのクロマトグラフィー工程に供される。但し,クロマトグラフィー工程に供されるものは,培養液から細胞等が除去された培養上清である。培養液から培養上清を得る方法としては,膜フィルターによるろ過,遠心分離等がある。
本発明において,HSA−hGH融合蛋白質の精製のためのクロマトグラフィー工程の各々は,必要に応じ,蛋白質の非特異的吸着を防止するため,非イオン性界面活性剤の存在下で行われてよい。どの非イオン性界面活性剤を用いるかについて特段の限定はないが,ポリソルベート系界面活性剤が好ましく用いられ,より好ましくはポリソルベート80又はポリソルベート20である。そのような非イオン性界面活性剤の濃度は,好ましくは0.005% (w/v)〜0.1% (w/v)であり,より好ましくは0.005% (w/v)〜0.05% (w/v)であり,例えば0.01% (w/v),0.05% (w/v)等である。
HSA−hGH融合蛋白質の精製工程は,室温又は低温で行うことができるが,好ましくは低温で,特に1〜10℃で行うことができる。
本発明の一実施形態において,HSA−hGH融合蛋白質の精製工程は,HSA−hGH融合蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程と,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程と,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー工程と,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー工程とを含むものである。但し,これらのクロマトグラフィー工程に1又は複数のクロマトグラフィー工程を加えることもできる。かかる追加のクロマトグラフィー工程としては,例えば,HSA−hGH融合蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー工程,陰イオン交換カラムクロマトグラフィー工程,疎水性カラムクロマトグラフィー工程,色素親和性カラムクロマトグラフィー工程,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー工程が挙げられる。
本発明の一実施形態において,HSA−hGH融合蛋白質の精製工程は,HSA−hGH融合蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程と,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程と,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー工程と,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー工程とを,この順で含むものである。但し,これらのクロマトグラフィー工程に1又は複数のクロマトグラフィー工程を加えることもできる。かかる追加のクロマトグラフィー工程としては,例えば,HSA−hGH融合蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー工程,陰イオン交換カラムクロマトグラフィー工程,疎水性カラムクロマトグラフィー工程,色素リガンドカラムクロマトグラフィー工程及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー工程が挙げられる。追加のクロマトグラフィーは,どの隣接するステップ間に加えても良く,又は,最初のクロマトグラフィー工程,最後のクロマトグラフィー工程として加えても良い。
本発明の一実施形態における,HSA−hGH融合蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程と,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程と,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー工程と,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー工程とを,この順で含む精製工程について以下に詳述する。
第一のカラムクロマトグラフィー工程は,HSA−hGH融合蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーを用いるものである。ここで,抗体は,HSA又はhGHの何れに親和性を有するものであってもよいが,好ましくはhGHに親和性を有するものである。例えば,ヒト成長ホルモンに対する抗体を結合させた担体を含むものである,Capture select Human Growth Hormone Affinity Matrix(Thermo Fisher Scientific社)は,好適に使用することができる。
hGHに親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーカラムを用いる場合,HSA−hGH融合蛋白質は,予め緩衝液で平衡化させたカラムに付される。ここで,緩衝液の種類に特に限定は無いが,Tris-HCl緩衝液が好ましく,その濃度は,好ましくは5〜50 mMであり,より好ましくは10〜30 mMである。また,そのpHは,好ましくは6.7〜7.3,より好ましくは6.9〜7.1,更に好ましくは約7.0に調整される。カラムからのHSA−hGH融合蛋白質の溶出は,好ましくはグリシン-塩酸を用いて行われる。グリシン-塩酸の濃度は,好ましくは20〜100 mMであり,より好ましくは40〜60mMであり,更に好ましくは約50 mMである。また,そのpHは好ましくは2.0〜4.0,より好ましくは2.8〜3.2,そして更に好ましくは約3.0に調整される。溶出液のpHは,直ちに中性付近,例えばpH 6.4〜7.0に調整される。
第二のカラムクロマトグラフィー工程は,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いるものである。リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いるカラムクロマトグラフィーとして好適なものとして,ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーとフルオロアパタイトカラムクロマトグラフィーが挙げられるが,ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーが特に好ましい。これらは,カルシウムイオンによる金属アフィニティと,リン酸基による陽イオン交換の双方による相互作用を利用して,夾雑物を除去するためのものである。
ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーを用いる場合について,以下に詳述する。ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーに用いる担体については特段の限定は無く,セラミック性であっても,結晶性であってもよいが,特に好ましい担体の1つとして,CHT Type II, 40μm(バイオ・ラッド ラボラトリーズ社)が挙げられる。
第一のカラムクロマトグラフィー工程で得られた溶出液は,ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムに付される前に,pHと導電率が調整される。このとき,pHは,好ましくは6.5〜7.5,より好ましくは6.8〜7.2,更に好ましくは6.9〜7.1に調整される。また,導電率は,好ましくは0.4〜0.8 S/m,より好ましくは0.5〜0.7 S/mに調整される。
pHと導電率を調整した溶出液は,予め緩衝液で平衡化されたハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムに付される。ここで,緩衝液の種類に特に限定は無いが,MES緩衝液が好ましく,その濃度は,好ましくは5〜50 mMであり,より好ましくは10〜30 mMであり,例えば20 mMである。また,そのpHは,好ましくは6.7〜7.3,より好ましくは6.9〜7.1,更に好ましくは約7.0に調整される。また,緩衝液はリン酸イオンを含み,その濃度は好ましくは0〜3 mMであり,より好ましくは0〜2 mMであり,例えば1 mMである。
ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムからのHSA−hGH融合蛋白質の溶出は,リン酸イオンの濃度を高めた緩衝液を用いて行われる。このときのリン酸イオンの濃度は,好ましくは20〜50 mMであり,より好ましくは25〜40 mMであり,更に好ましくは25〜35 mMであり,例えば30 mMである。
第三のカラムクロマトグラフィー工程は,陽イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いるものであり,夾雑蛋白質を除去するためのものである。陽イオン交換カラムクロマトグラフィーにおいてどの陽イオン交換樹脂を用いるかについて特に限定はないが,弱陽イオン交換樹脂が好ましく,より好ましくは,疎水性相互作用及び水素結合形成の双方に基づく選択性を有する弱陽イオン交換樹脂である。例えば,Capto MMC (GE Healthcare)等のような,フェニル基,アミド結合,及びカルボキシル基を有し且つ疎水性相互作用及び水素結合形成に基づく選択性を有する弱陽イオン交換樹脂は好適に用いることができる。
第二のカラムクロマトグラフィー工程で得られた溶出液は,陽イオン交換カラムクロマトグラフィーに付される前に,pHと導電率が調整される。このとき,pHは,好ましくは5.3〜6.2,より好ましくは5.4〜6.1,更に好ましくは5.6〜5.8に調整される。また,導電率は,好ましくは0.5〜0.9 S/m,より好ましくは0.6〜0.8 S/mに調整される。
pHと導電率を調整した溶出液は,予め緩衝液で平衡化された陽イオン交換カラムクロマトグラフィーに付される。ここで,緩衝液の種類に特に限定は無いが,MES緩衝液が好ましく,その濃度は,好ましくは30〜70 mMであり,より好ましくは40〜60 mMであり,例えば50 mMである。また,そのpHは,好ましくは5.4〜6.0,より好ましくは5.6〜5.8,例えば5.7に調整される。また,緩衝液は塩を含み,塩が中性塩であるときの緩衝液中での濃度は好ましくは30〜150 mMであり,より好ましくは50〜120 mMであり,更に好ましくは80〜120 mMであり,例えば100 mMである。このときの中性塩は,好ましくは塩化ナトリウム,塩化カリウムであるが,特に好ましくは塩化ナトリウムである。
陽イオン交換カラムクロマトグラフィーからのHSA−hGH融合蛋白質の溶出は,中性塩の濃度を高めた緩衝液を用いて行われる。このときの中性塩の濃度は,好ましくは400〜600 mMであり,より好ましくは500〜600 mMであり,更に好ましくは530〜570 mMであり,例えば550 mMである。
第四のカラムクロマトグラフィー工程は,サイズ排除クロマトグラフィーを用いるものである。サイズ排除クロマトグラフィーは,分子サイズに基づいて,特にエンドトキシン等の低分子の夾雑物,HSA−hGH融合蛋白質の多量体や分解物を除去するためのものである。
サイズ排除クロマトグラフィー工程において,カラムは予め平衡化される。ここで,緩衝液の種類に特に限定は無いが,リン酸緩衝液が好ましく,その濃度は,好ましくは5〜20 mMであり,より好ましくは8〜12 mMであり,例えば10 mMである。そのpHは,好ましくは6.6〜7.4,より好ましくは7.0〜7.4,例えば7.2に調整される。また,緩衝液は医薬品添加物として使用し得る二糖を含有するものであってもよい。かかる二糖は,好ましくはショ糖であり,その濃度は,好ましくは60〜90 mg/mLであり,より好ましくは70〜80 mg/mLであり,例えば75 mg/mLである。この第一から第四のカラムクロマトグラフィー工程により,実質的に純粋なHSA−hGH融合蛋白質が得られる。
HSA−hGH融合蛋白質の精製工程において,ウイルス不活化工程を所望により追加することもできる。ウイルス不活化工程は,任意の2つのクロマトグラフィー工程の間で実施してもよく,また,最初のクロマトグラフィー工程の前に,又は最後のクロマトグラフィー工程の後に実施しても良い。また,ウイルス不活化工程はHSA−hGH融合蛋白質の精製工程において,1回実施してもよく,2回実施してもよく,又は3回以上実施してもよい。
クロマトグラフィー工程が,HSA−hGH融合蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程(第一のカラムクロマトグラフィー工程)と,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィー工程(第二のカラムクロマトグラフィー工程)と,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー工程(第三のカラムクロマトグラフィー工程)と,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー工程(第四のカラムクロマトグラフィー工程)とを,この順で含むものである場合,ウイルス不活化工程は,好ましくは,第一のカラムクロマトグラフィー工程と第二のカラムクロマトグラフィー工程の間において,又は/及び第四のカラムクロマトグラフィー工程の後で実施される。如何なるウイルス不活化工程を適用するかについて特に限定はないが,溶媒−界面活性剤法又はフィルターろ過法が好適に適用できる。溶媒−界面活性剤法は,ウイルスを不活化すべき溶液に,有機溶媒と界面活性剤を添加することにより,ウイルスを不活化させる方法である。溶媒−界面活性剤法が適用される場合,HSA−hGH融合蛋白質を含有する溶液に有機溶媒と非イオン性界面活性剤を添加して混合し,この混合液が,例えば3時間を超えてインキュベートされる。溶媒−界面活性剤法において用いられる溶液は,HSA−hGH融合蛋白質が少なくとも2時間安定に保持されるものである限り特に限定はないが,中性付近にpHが調整されたグリシン緩衝液,リン酸緩衝液,MES緩衝液,Tris-HCl緩衝液,又はこれらの混合物に,有機溶媒と非界面活性剤が混合されたものが好適に使用できる。また,どの非イオン性界面活性剤を用いるかについても特に限定はないが,例えば,ポリソルベート20,ポリソルベート80,及びtriton X-100を,単独で又はこれらを任意に組み合わせて用いることができる。ポリソルベート80は特に好適な非イオン性界面活性剤の一つであり,単独で又は他の非イオン性界面活性剤と組み合わせて用いることができる。また,どの有機溶媒を用いるかについても特に限定はないが,例えば,トリ(n−ブチルホスフェート)を用いることができる。ポリソルベート80とトリ(n−ブチルホスフェート)とを組み合わせ用いる場合,混合液中のポリソルベート80の濃度は0.3〜2%,例えば1%であり,トリ(n−ブチルホスフェート)の濃度は0.1〜0.5%,例えば0.3%であり,混合液は2〜5時間,例えば3時間インキュベートされる。
フィルターろ過法は,ウイルスを除去すべき溶液を,ウイルスを除去する性能を有するろ過膜でろ過して,ウイルスを除去する方法である。フィルターろ過法で用いられるろ過膜は,好ましくは平均孔径が17〜21 nmのものであり,その材質は例えば再生セルロースである。フィルターろ過法が適用される場合,HSA−hGH融合蛋白質を含有する溶液をウイルス除去膜に通過させる。例えば,第一のカラムクロマトグラフィー工程と第二のカラムクロマトグラフィー工程の間において溶媒−界面活性剤法によりウイルス不活化を行い,第四のカラムクロマトグラフィー工程の後に,フィルターろ過法によりウイルス不活化を行うことにより,より確実にウイルス除去を行うことができる。
なお,ウイルス除去膜による方法は,ウイルス除去工程ということもできるが,本発明においては,ウイルス不活化工程の一手法ということもできる。
本発明において,HSA−hGH融合蛋白質は,HSAが結合していない元の成長ホルモンに比べ,血中での安定性が高まり半減期が長くなる。投与経路や投与量により変動はするが,皮下注射でカニクイザルに投与したときの血中半減期(t1/2β)が例えば5時間以上と,血中で極めて安定になる。例えば,HSA変異体−ヒト成長ホルモン融合蛋白質の血中半減期(t1/2β)は,0.5〜10 mg/kgの用量で雄性カニクイザルに単回皮下投与したとき,血中半減期(t1/2β)は,5〜40時間である。
本発明において,HSA変異体−成長ホルモン融合蛋白質を有効成分として含有してなる医薬は,注射剤として静脈内,筋肉内,腹腔内又は皮下に投与することができる。
ヒト成長ホルモンには,主に分子量が22 kDaであるもの(22kDaヒト成長ホルモン,本明細書において22Kヒト成長ホルモン)と20 kDaであるもの(20kDaヒト成長ホルモン,本明細書において20Kヒト成長ホルモン)の分子量の異なる2種類がある。22K成長ホルモンは,配列番号9で示されるアミノ酸配列を有する,191個のアミノ酸から構成される蛋白質である。通常,「ヒト成長ホルモン(又はhGH)」というときは,この22K成長ホルモンのことを意味するが,本明細書において,単に「ヒト成長ホルモン(又はhGH)」というときは,22Kヒト成長ホルモンと20Kヒト成長ホルモンの双方を包含する。
本明細書において,単に「22Kヒト成長ホルモン(又は22KhGH)」というときは,配列番号9で示されるアミノ酸配列を有する野生型の22KhGHに加え,これに対し1個又は複数個のアミノ酸が,置換,欠失及び/又は付加されたものである22KhGH変異体であって成長促進活性を有するものも含まれる。置換,欠失及び/又は付加されてよいアミノ酸の個数は,各変異タイプにつき,好ましくは1〜8個であり,より好ましくは1〜4個であり,更に好ましくは1〜2個である。ここで22KhGH変異体のアミノ酸配列は,配列番号9で示される野生型の22KhGHのアミノ酸配列と,好ましくは85%以上の同一性を,より好ましくは90%以上の同一性を,更に好ましくは95%以上の同一性を有するものである。
野生型の20Kヒト成長ホルモンは,野生型の22K成長ホルモン(配列番号9)を構成する191個のアミノ酸のうちN末端から数えて32番目〜46番目の15個のアミノ酸が欠失したものに相当し,176個のアミノ酸から構成されるアミノ酸配列(配列番号10)よりなる,成長促進活性を有する蛋白質である。但し,本明細書において,単に「20Kヒト成長ホルモン(又は20KhGH)」というときは,配列番号10で示される野生型の20KhGHに加え,当該配列に対し,1個又は複数個のアミノ酸が,置換,欠失及び/又は付加されたものに相当する20KhGHの変異体であって成長促進活性を有するものも含まれる。置換,欠失及び/又は付加されてよいアミノ酸の個数は,各変異タイプにつき,好ましくは1〜8個であり,より好ましくは1〜4個であり,更に好ましくは1〜2個である。ここで20KhGH変異体のアミノ酸配列は,配列番号10で示される野生型の20KhGHのアミノ酸配列と,好ましくは85%以上の同一性を,より好ましくは90%以上の同一性を,更に好ましくは95%以上の同一性を有するものである。
本発明において,種々のhGH変異体における通常の野生型hGHと比較したときの各変異の位置及びその形式(欠失,置換,付加)は,両hGHのアミノ酸配列のアラインメントにより,容易に確認することができる。なお,本発明において,野生型hGHのアミノ酸配列と変異を加えたhGHのアミノ酸配列との同一性は,周知の相同性計算アルゴリズムを用いて容易に算出することができる。例えば,そのようなアルゴリズムとして,BLAST(Altschul SF. J Mol. Biol. 215. 403-10, (1990)),Pearson及びLipmanの類似性検索法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 85. 2444 (1988)),Smith及びWatermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2. 482-9(1981))等がある。
上記のhGHのアミノ酸配列中のアミノ酸の他のアミノ酸による置換としては,例えば,芳香族アミノ酸(Phe, Trp, Tyr),脂肪族アミノ酸(Ala, Leu, Ile, Val),極性アミノ酸(Gln, Asn),塩基性アミノ酸(Lys, Arg, His),酸性アミノ酸(Glu, Asp),水酸基を有するアミノ酸(Ser, Thr),側鎖の小さいアミノ酸(Gly,Ala,Ser,Thr,Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は,hGHの機能に大きな変化をもたらさない(即ち,保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。
hGH遺伝子を導入した大腸菌を用いて組換え蛋白質として製造された分子量約22KDのhGHを有効成分として含有する製剤(hGH製剤)が,成長ホルモン分泌不全性低身長症,ターナー症候群における低身長,SGA性低身長症,ヌーナン症候群における低身長症,慢性腎不全による低身長症,プラダーウィリー症候群における低身長症,及び軟骨異栄養症における低身長症の治療剤として広く臨床使用されている。hGH製剤は,これら疾患において骨端線閉鎖を伴わない場合において特に効果を奏する。hGH製剤は,皮下又は筋肉内に投与されることで成分のhGHが血中を循環し,その成長促進活性により患者の成長を促進する効果を発揮する。また,hGH製剤は,成人成長ホルモン分泌不全症の治療剤としても広く臨床使用されている。成人成長ホルモン分泌不全症の患者では,脂質代謝異常が認められるが,hGH製剤の投与により,患者の脂質代謝等が正常化し,患者のQOLが改善される。AIDSによる消耗の治療剤としても成長ホルモンは臨床応用されている。成長ホルモン分泌不全性低身長症,成人成長ホルモン分泌不全症等のhGH製剤としては,例えば,グロウジェクト(登録商標)がある。
HSA変異体とhGHとの融合蛋白質を作製する場合,HSA変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドとhGHのアミノ酸配列を含むポリペプチドとを結合させる具体的方法としては,例えば,一方のポリペプチドをコードする遺伝子の下流に,インフレームで他方のポリペプチドをコードする遺伝子を結合させたDNA断片を組み込んだ発現ベクターを作製し,この発現ベクターを用いて形質転換させた宿主細胞を培養することにより,組換え蛋白質として発現させる方法が一般的であり,本発明において利用できる。
組換え蛋白質として形質転換細胞に発現させる方法によりHSA変異体とhGHとの融合蛋白質を作製するとき,hGHのアミノ酸配列を含むポリペプチドは,HSA変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドのN末端側又はC末端側の何れかに,直接,又はリンカーを介して間接的に結合される。
HSA変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドのN末端側にhGHのアミノ酸配列を含むポリペプチドを結合させる場合,hGHのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする遺伝子の下流に,HSA変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする遺伝子をインフレームで結合させたDNA断片を組み込んだ発現ベクターが用いられる。2つのポリペプチドをペプチドリンカーを介して間接的に結合させる場合は,2つのポリペプチドをコードする遺伝子の間に,当該リンカーをコードするDNA配列がインフレームで配置される。
HSA変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドのC末端側にhGHのアミノ酸配列を含むポリペプチドを結合させる場合,hGHのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする遺伝子の上流に,HSA変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする遺伝子をインフレームで結合させたDNA断片を組み込んだ発現ベクターが用いられる。2つのポリペプチドをペプチドリンカーを介して間接的に結合させる場合は,2つのポリペプチドをコードする遺伝子の間に,当該リンカーをコードするDNA配列がインフレームで配置される。
本発明において,HSA変異体とhGHの融合蛋白質(HSA−hGH融合蛋白質の一種)の好適な一例として,配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するHSA(A320T)のN末端に,リンカーを介さずに,配列番号9で示されるアミノ酸配列を有する22Kヒト成長ホルモンのC末端をペプチド結合により結合させたものである,配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するHSA−hGH融合蛋白質が挙げられる。本発明において,この順序でHSA(A320T)と22KhGHとを結合させたものを,「22Kヒト成長ホルモン−mHSA」又は「22KhGH−mHSA」という。同様に,HSA(A320T)のC末端に,リンカーを介さずに,22Kヒト成長ホルモンのN末端がペプチド結合により結合したものを「mHSA−22Kヒト成長ホルモン」又は「mHSA−22KhGH」という。
また,配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するヒト血清アルブミン(A320T)のN末端に,リンカーを介さずに,配列番号10で示されるアミノ酸配列を有する20Kヒト成長ホルモンのC末端をペプチド結合により結合させたものである,配列番号12で示されるアミノ酸配列を有するHSA−hGH融合蛋白質を,「20Kヒト成長ホルモン−mHSA」又は「20KhGH−mHSA」という。同様に,ヒト血清アルブミン(A320T)のC末端に,リンカーを介さずに,20Kヒト成長ホルモンのN末端がペプチド結合により結合したものを「mHSA−20Kヒト成長ホルモン」又は「mHSA−22KhGH」という。
本発明において,HSA−hGH融合蛋白質は,皮下注射でカニクイザルに投与したときの血中半減期(t1/2β)が概ね5時間以上と血中で極めて安定になることを特徴とする。投与量により変動はするが,例えば,4 mg/kgの用量で雄性カニクイザルに単回皮下投与したときの,mHSA−22KhGH及び22KhGH−mHSAの血中半減期(t1/2β)は,20〜35時間である。
本発明におけるHSA−hGH融合蛋白質は,医薬として使用することができる。HSA−hGH融合蛋白質は,ヒト成長ホルモンとHSAの機能を生体内において協働させることができる。
本発明におけるHSA−hGH融合蛋白質は,血中で極めて安定である。従って,本発明によればヒト成長ホルモンを血中で安定化させて長時間に渡って活性を保持した状態で血中に留まらせることができる。従って,当該融合蛋白質は,医薬として用いた場合,ヒト成長ホルモンと比較して投与頻度又は/及び投与量を減じることが可能となる。例えば,ヒト成長ホルモンは毎日投与が必要であるが,当該融合蛋白質であれば,投与頻度を例えば3〜30日毎とすることも可能となる。また,治療期間中の医薬の総投与量を,例えばモル比で1/3以下(例えば1/3〜1/10)にまで減じることも可能となる。
本発明におけるHSA−hGH融合蛋白質は,成長ホルモン分泌不全性低身長症,ターナー症候群における低身長,慢性腎不全による低身長症,プラダーウィリー症候群における低身長症,軟骨異栄養症における低身長症,SGA性低身長症,又はヌーナン症候群における低身長症を対象疾患とする医薬として使用することができる。hGH製剤は,これら疾患において骨端線閉鎖を伴わない場合において特に効果を奏する。その他,本発明におけるHSA−hGH融合蛋白質は,成人成長ホルモン分泌不全症,AIDSによる消耗,及び拒食症による消耗を対象疾患とする医薬として使用することができるが,これに限らず,成長ホルモンの有する軟骨形成促進,蛋白質同化促進等の成長促進活性,体組成及び脂質代謝改善作用等の生理活性を,長期に渡って作用させることにより症状が改善され得る疾患の治療剤として使用することができる。
mHSA−22KhGHを治療目的でヒトに投与するときの用法用量に,hGHの薬効が示される限り特に限定はない。mHSA−22KhGHの用法用量を以下に例示するが,用法用量はこれらに限定されるものではない。
mHSA−22KhGHを,骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症の患者に投与する場合,1回当たりの好ましい投与量は0.01〜0.7mg/Kg体重である。mHSA−22KhGHを,骨端線閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長症の患者に投与する場合,1回当たりの好ましい投与量は0.015〜1.4mg/Kg体重である。mHSA−22KhGHを,骨端線閉鎖を伴わない慢性腎不全による低身長症の患者に投与する場合,1回当たりの好ましい投与量は0.01〜1.4 mg/Kg体重である。mHSA−22KhGHを,骨端線閉鎖を伴わないプラダーウィリー症候群における低身長症の患者に投与する場合,1回当たりの好ましい投与量は0.012〜0.98 mg/Kg体重である。mHSA−22KhGHを,骨端線閉鎖を伴わない軟骨異栄養症における低身長症の患者に投与する場合,1回当たりの好ましい投与量は0.015〜1.4 mg/Kg体重である。mHSA−22KhGHを,骨端線閉鎖を伴わないSGA性低身長症の患者に投与する場合,1回当たりの好ましい投与量は0.012〜1.9 mg/Kg体重である。mHSA−22KhGHを,成人成長ホルモン分泌不全症の患者に投与する場合,1回当たりの好ましい投与量は0.001〜0.34 mg/Kg体重である。mHSA−22KhGHを,骨端線閉鎖を伴わないヌーナン症候群における低身長症の患者に投与する場合,1回当たりの好ましい投与量は0.013〜1.8 mg/Kg体重である。mHSA−22KhGHを,AIDSにより消耗した患者に投与する場合,1回当たりの好ましい投与量は0.005〜0.4 mg/Kg体重である。但し,投与量は患者の検査所見等によって,適宜変更されるべきものである。また,これら疾患における,好ましいmHSA−22KhGHの投与間隔は,7〜30日毎に1回であり,患者の検査所見等によって,7〜14日毎,10〜20日毎,又は14〜21日毎に1回と適宜変更されるべきものである。また,投与方法は,好ましくは皮下注射,筋肉内注射又は静脈注射であり,より好ましくは皮下注射又は筋肉内注射である。
本発明のHSA−hGH融合蛋白質を有効成分として含有してなる医薬は,注射剤として静脈内,筋肉内,腹腔内,皮下又は脳室内に投与することができる。それらの注射剤は,凍結乾燥製剤又は水性液剤として供給することができる。水性液剤とする場合,バイアルに充填した形態としてもよく,注射器に予め充填したものであるプレフィルド型の製剤として供給することもできる。凍結乾燥製剤の場合,使用前に水性媒質に溶解し復元して使用する。
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
〔実施例1〕22KhGH−HSA発現用ベクターの構築
22KhGHのC末端と野生型HSA(配列番号1)のN末端とを結合させたものである,配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質を,22KhGH−HSAとした。配列番号15で示されるアミノ酸配列中,1〜191番目のアミノ酸残基が22KhGHのアミノ酸配列に相当し,192〜776番目のアミノ酸残基がHSAのアミノ酸配列に相当する。22KhGH−HSAをコードする遺伝子(22KhGH-HSA遺伝子)を含む配列番号16で示される塩基配列を有するDNAを化学的に合成した。この配列において,塩基11〜88がhGHのリーダーペプチドを,塩基89〜661が22KhGHを,塩基662〜2416がHSAを,それぞれコードする。このDNAを制限酵素(MluI及びNotI)で消化し,pE-mIRES-GS-puroのMluI部位とNotI部位の間に組み込むことにより,22KhGH−HSA発現用ベクターであるpE-mIRES-GS-puro(22KhGH-HSA)を構築した。なお,pE-mIRES-GS-puroは,国際特許公報WO2012/063799等に作製方法が記載されており周知のものである。
〔実施例2〕22KhGH−mHSA発現用ベクターの構築
22KhGH(配列番号9)のC末端とHSA(A320T)(配列番号3)のN末端とを結合させたものである,配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質を,22KhGH−mHSAとした。実施例1で作製したpE-mIRES-GS-puro(22KhGH-HSA)を鋳型として,プライマーYA082(配列番号13)及びプライマーYA083(配列番号14)を用いて,PCRにより22KhGH−mHSAをコードする遺伝子を含むDNA断片を増幅した。このDNA断片をセルフアニールさせて,22KhGH−mHSA発現用ベクターであるpE-mIRES-GS-puro(22KhGH-mHSA)を構築した。
〔実施例3〕22KhGH−mHSA発現細胞株の作製
22KhGH−mHSAを発現させるための細胞を次のようにして作製した。チャイニーズハムスターの卵巣に由来する細胞であるCHO-K1細胞に,Gene Pulser Xcell エレクトロポレーションシステム(Bio Rad社)を用いて,実施例2で作製した,22KhGH−mHSA発現用ベクターであるpE-mIRES-GS-puro(22KhGH-mHSA)を導入した。発現ベクターを導入した細胞を,16 μM チミジン,100 μM ヒポキサンチン,10 mg/L インスリン,L-メチオニンスルホキシミン(SIGMA社)及びピューロマイシン(SIGMA社)を含むCD OptiCHOTM培地(Thermo Fisher Scientific社)を用いて選択培養した。選択培養の際には,L-メチオニンスルホキシミン及びピューロマイシンの濃度を段階的に上昇させて,最終的にL-メチオニンスルホキシミンの濃度を300 μM,ピューロマイシンの濃度を10 μg/mLとして,より高い薬剤耐性を示す細胞を選択的に増殖させた。次いで,限界希釈法により,1ウェルあたり1個以下の細胞が播種されるように,96ウェルプレート上に選択培養で選択された細胞を播種し,単一細胞由来のコロニーが形成されるまで約10日間培養して,細胞をクローン化した。クローン化した細胞を更に培養して増殖させた後,16 μM チミジン,100 μM ヒポキサンチン,300 μM L-メチオニンスルホキシミン,及び10% (v/v) DMSOを含有するCD OptiCHOTM培地に懸濁させてからクライオチューブに分注し,液体窒素中で保存した。この細胞を22KhGH−mHSA発現細胞株とした。
〔実施例4〕22KhGH−mHSA発現細胞の前培養
実施例3で作製した22KhGH−mHSA発現細胞株を,37℃水浴中で融解し,16 μM チミジン,100 μM ヒポキサンチン及び300 μM L-メチオニンスルホキシミンを含む無血清培地のEX-CELL Advanced培地(前培養用培地,SIGMA社)に懸濁させて遠心して細胞を沈殿させ,上清を除去した。沈殿させた細胞を,2×105 個/mL以上の密度で前培養用培地に懸濁し,37℃,5% CO2存在下で2〜4日間培養した。細胞数が少なくとも1.0×1011 個に増殖するまで培養規模を拡大させながら,この培養を繰り返した。
〔実施例5〕22KhGH−mHSA発現細胞の生産培養
前培養で増殖させた細胞を,細胞濃度が4×105 個/mLの密度で,200 Lの容量の16 μMのチミジン及び100 μMのヒポキサンチンを含む無血清培地であるEX-CELL Advanced培地(生産培養用培地,SIGMA社)に懸濁させた。この懸濁液を,Xcellerex200L培養システム(XDR200)のシングルユース培養槽内で,インペラで100 rpmの速度で撹拌しながら,37℃,溶存酸素量40%,pHを6.9に維持して10日間培養した。
〔実施例6〕22KhGH−mHSAの精製
(精製工程1:ハーベスト工程/濃縮1工程)
生産培養終了後,培養液を,Millistak+(登録商標)HCポッドフィルターグレードD0HC(1.1 m2×2,Merck社)を用いてろ過し,次いでMillistak+HCポッドフィルターグレードX0HC(1.1 m2×1,Merck社)を用いてろ過して細胞を除去し,更に,Opticap SHC XL3(孔径:0.5/0.2 μm,Merck社)でろ過して培養上清を得た。得られた培養上清を,予め純水で洗浄した後,PBSで平衡化した分画分子量30 kDaの限外ろ過膜装置(Pellicon3 カセット ウルトラセルPLCTK メンブレン装着 1.14 m2,Merck社)を用いて濃縮した。限外ろ過膜装置から濃縮後の溶液を回収した。更に装置内を,PBSを通して洗浄し,この洗浄液を先に回収した濃縮後の溶液に合わせて重量を約15 kgに調整したものを濃縮培養液とした。次いで,濃縮培養液を,孔径が最大部が0.5 μmであり最小部が0.2 μmである親水性フィルター(Opticap SHC XL600,Merck社)を用いてろ過した。ろ過後,濃縮培養液のpH及び導電率がそれぞれ7.0±0.3,1.2±0.4 S/mであることを確認した。
(精製工程2:第一のクロマトグラフィー工程(アフィニティーカラムクロマトグラフィー工程))
Capture select Human Growth Hormone Affinity Matrix(Thermo Fisher Scientific社)を充填したQSカラム(カラム体積:4.2〜5.2 L,ベッド高:15.0±1.5 cm,Merck社)を,カラム体積の1倍容の50 mMグリシン塩酸緩衝液(pH 3.0),更にカラム体積の1倍容の0.01 M 水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後,カラム体積の4倍容の20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.0)で平衡化した。次いで,精製工程1で得られた濃縮培養液の1/4量をカラムに負荷して,22KhGH−mHSAをカラムに吸着させた。次いで,カラム体積の5倍容の200 mM アルギニン及び0.05%(w/v) ポリソルベート80を含有する20 mM Tris-HCl緩衝液(pH7.0),更にカラム体積の5倍容の20 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.0)でカラムを洗浄した。次いで,カラム体積の5倍容の50 mMグリシン塩酸緩衝液(pH 3.0)をカラムに供給して,22KhGH−mHSAを溶出させた。溶出液は,溶出液量の1/5容量の250 mM MES緩衝液(pH7.0)を予め入れた容器に回収してpHが6.7±0.3となるよう直ちに中和した。精製工程2は4〜8℃の冷温下で実施し,また,精製工程2の全体を通じてカラムに供給される溶液の線流速は200 cm/時とした。また1 Lのアフィニティーカラム担体あたりに負荷される22KhGH−mHSAの上限は7 gとした。
(精製工程3:ウイルス不活化工程)
精製工程2で得られた溶出液を25℃に加温し,この溶出液に,その液量の1/19容量の20.0%(w/v) ポリソルベート80を含有する6.0%(v/v) トリ(nーブチル)ホスフェート水溶液を加え,25℃で3時間撹拌した。
(精製工程4:第二のクロマトグラフィー工程(ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー工程))
精製工程3でウイルス不活化処理を行った画分を8℃に冷却し,1 M Tris-HCl緩衝液(pH8.8)と,4 M NaClを含有する20 mM MES緩衝液(pH7.0)とを適量加えてpH及び導電率をそれぞれ7.0±0.1及び0.6±0.1 S/mに調整し,孔径0.2 μmの親水性フィルター(Merck社)を用いてろ過した。次いで,以下のクロマトグラフィーを冷蔵(線流速:200 cm/時)で実施した。
ハイドロキシアパタイト担体であるCHT Type II, 40 μm(バイオ・ラッド ラボラトリーズ社)を充填したQSカラム(カラム体積:8.8〜10.8 L,ベッド高:20.0±2.0 cm,Merck社)を,200 mM リン酸緩衝液(pH7.0),次いで,1 M NaOH水溶液,更に200 mM リン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄した後,4倍容の50 mM NaCl及び1 mM リン酸二水素ナトリウムを含有する20 mM MES緩衝液(pH7.0)で平衡化した。次いで,上記のろ液をカラムに負荷し22KhGH−mHSAをカラムに吸着させた。次いで,3倍容の50 mM NaCl及び1 mM リン酸二水素ナトリウムを含有する20 mM MES緩衝液(pH7.0)でカラムを洗浄した。次いで,50 mM NaCl及び30 mM リン酸二水素ナトリウムを含有する20 mM MES緩衝液(pH7.0)をカラムに供給して22KhGH−mHSAを溶出させた。精製工程4は4〜8℃の冷温下で実施し,また,精製工程4の全体を通じてカラムに供給される溶液の線流速は200 cm/時とした。また1 Lのハイドロキシアパタイト担体あたりに負荷される22KhGH−mHSAの上限は13 gとした。
(精製工程5:第三のクロマトグラフィー工程(マルチモーダル弱陽イオン交換カラムクロマトグラフィー工程))
精製工程4で得られた溶出液に,これと同体積の50 mM NaClを含有する20mM MES緩衝液(pH5.7)を添加した後,希塩酸を添加して,pH及び導電率をそれぞれ5.7±0.1,0.7±0.1 S/mに調整した。その後,孔径0.5/0.2 μmの親水性フィルター(Merck社)を用いてろ過した。
プレパックカラムRTP Capto MMC 10 L(カラム体積:8.8〜10.8 L,ベッド高:20.0±2.0 cm,Merck社)を,1 M NaOH水溶液,次いで1M NaClを含有する50 mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて洗浄した後,4倍容の100 mM NaClを含有する50 mM MES緩衝液(pH5.7)で平衡化した。次いで上記のろ液をカラムに負荷し22KhGH−mHSAをカラムに吸着させた。次いで,5倍容の100 mM NaClを含有する50 mM MES緩衝液(pH5.7)でカラムを洗浄した。次いで,550 mM NaClを含有する50 mM MES緩衝液(pH5.7)をカラムに供給して22KhGH−mHSAを溶出させた。精製工程5は4〜8℃の冷温下で実施し,また,精製工程5の全体を通じてカラムに供給される溶液の線流速は200 cm/時とした。また1 Lのマルチモーダル弱陽イオン交換担体あたりに負荷される22KhGH−mHSAの上限は11.5 gとした。
(精製工程6:濃縮2工程)
分画分子量30 kDaの限外ろ過膜(Pellicon3 カセット ウルトラセルPLCTK メンブレン1.14m2,Merck社)に純水を通液して十分に洗浄した後,75 mg/mL スクロースを含有する10 mM リン酸緩衝液(pH 7.2)で平衡化した。精製工程5で得られた溶出液を,この限外ろ過膜を用いて濃縮した。濃縮後の溶液に75 mg/mL スクロースを含有する10 mM リン酸緩衝液(pH 7.2)を添加して,吸光度(280 nm)を23±3に調整した。この濃縮工程は室温で実施した。
(精製工程7:第四のクロマトグラフィー工程(サイズ排除カラムクロマトグラフィー工程))
精製工程6で得られた濃縮液を孔径0.5/0.2 μmの親水性フィルター(Merck社)を用いてろ過した。サイズ排除クロマトグラフィー用の樹脂であるFractogelTM BioSEC樹脂(Merck社)を充填したQSカラム(カラム体積:25.4〜31.1 L,ベッド高:40.0±4.0 cm, Merck社)を0.5M NaOH水溶液で洗浄した後,75 mg/mL スクロースを含有する10 mM リン酸緩衝液(pH 7.2)で平衡化した。次いで,上記のろ液をカラムに負荷し,引き続き,75 mg/mL スクロースを含有する10 mM リン酸緩衝液(pH 7.2)を供給した。このとき,サイズ排除カラムからの溶出液の流路に,溶出液の吸光度を連続的に測定するための吸光光度計を配置して,280 nmの吸光度をモニターし,280 nmで吸収ピークを示した画分を,22KhGH−mHSAを含む画分として回収し,これを22KhGH−mHSA精製品とした。精製工程7は室温下で実施し,また,精製工程7の全体を通じてカラムに供給される溶液の線流速は30 cm/時以下とした。またマルチモーダル弱陽イオン交換担体に負荷される22KhGH−mHSAを含有するろ液の液量は,担体の体積の8%以下とした。
(精製工程8:濃縮3工程)
中空糸膜(ReadyToProcess Hollow Fiber Cartridge,分画分子量 30 kDa,GEヘルスケア社)を,75 mg/mL スクロースを含有する10 mM リン酸緩衝液(pH7.2)で平衡化した。この中空糸膜を用いて,精製工程7で得られた22KhGH−mHSA精製品を濃縮し,22KhGH−mHSAの濃度を85 mg/mLに調整した。得られた濃縮液に,その液量の1/29の容量の90 mg/mL ポロキサマー188と75 mg/mL スクロースを含有する10 mM リン酸緩衝液(pH7.2)を添加して混合し,孔径0.5/0.2 μmの親水性フィルター(Merck社)を用いてろ過した。この濃縮工程は室温で実施した。
(精製工程9:ウイルス除去工程)
3 mg/mL ポロキサマー188と75 mg/mL スクロースとを含有する10 mM リン酸緩衝液(pH7.2)を作製した。この緩衝液を用いて,ウイルス除去膜(プラノバ20N,膜面積:0.12 m2,材質:再生セルロース,旭化成メディカル社)を平衡化させた。このウイルス除去膜に,圧力98 kPa以下で,精製工程8で得られたろ液を通じてろ過した。このウイルス除去工程は室温で実施した。
(精製工程10:原薬化工程)
室温で,精製工程9で得られたろ液を孔径0.2 μmの親水性フィルター(Merck社)でろ過し,22KhGH−mHSA原薬とした。
〔実施例7〕各精製ステップにおける22KhGH−mHSAの定量
上記精製各ステップ後の22KhGH−mHSAの量を,下記の実施例8に記載した方法を用いて定量した。表1に示すように,上記精製工程において,第一のクロマトグラフィー工程であるアフィニティーカラムクロマトグラフィー工程に111.08 gの22KhGH−mHSAが供され,最終的に65.87 gの22KhGH−mHSAの精製品が得られた。すなわち,上記精製方法における22KhGH−mHSAの回収率は59%となり,この精製方法が,22KhGH−mHSAの精製方法として極めて効率の良いものであることが判明した。なお,表1において,「回収率/ステップ」は,各クロマトグラフィー工程(ステップ)における負荷した22KhGH−mHSA量に対する回収された22KhGH−mHSA量の比率を意味し,「回収率/全体」は,クロマトグラフィー工程に供した22KhGH−mHSAの初期量に対する各ステップで回収された22KhGH−mHSA量の比率を意味する。
Figure 2021066730
〔実施例8〕Bradford法による22KhGH−mHSAの定量方法
本発明により製造されアミノ酸分析法により定量された22KhGH−mHSAの精製品を,理論蛋白質濃度が1.0 mg/mLとなるように水で希釈し標準溶液1とした。なお,調製液量は800 μL以上となるようにした。次に理論蛋白質濃度が0.8 mg/mLとなるように,200 μLの標準溶液1と50 μLの純水を混合し標準溶液2とした。このように順にして理論蛋白質濃度が0.6 mg/mL,0.4 mg/mL及び0.2 mg/mLとなるように標準溶液1をそれぞれ180 μL,100 μL及び100 μLに対して,水それぞれ120 μL,150 μL及び400 μLを混合し,それぞれ標準溶液3,標準溶液4及び標準溶液5とした。試験物質を50 μL以上採取し,蛋白質濃度が0.4〜0.8 mg/mLの範囲に入るように水で希釈し,試料溶液とした。標準溶液及び試料溶液は用時調製とした。
クーマシー試液(PierceTM Coomassie (Bradford) Protein Assay Kitに含まれるPierce Coomasie Assay Reagent,Thermo Fisher SCIENTIFIC社)を15 mL遠心管に5 mLずつ採取した。遠心管に採取したクーマシー試液に水(ブランク用),標準溶液1〜5及び試料溶液を100 μLずつ添加し,各溶液の添加直後に穏やかに転倒混和した。10分間,室温で静置し,反応させた。反応後,速やかに分光光度計(UV-2600,島津製作所社)で595 nmにおける吸光度を測定した。上記クーマシー試液による反応操作は各溶液の調製後2時間以内に行った。標準溶液の測定値から検量線を作成し,この検量線に各試験物質の測定値を内挿することにより,各試験物質に含まれる22KhGH−mHSA濃度を算出した。
〔実施例9〕SE−HPLC分析による22KhGH−mHSA精製品の純度の評価
島津製作所製のLC−20Aシステム(システムコントローラ,オンライン脱気ユニット,送液ユニット,オートサンプラー,カラムオーブン及び紫外可視検出器)を用いてSE−HPLC分析を行った。TSKgel G3000SWXLカラム(内径 7.8 mm,長さ 30 cm,TOSOH社)をLC−20Aシステムにセットし,0.7 mL/分の流速でリン酸塩緩衝液(200 mM NaClを含有する200 mMリン酸ナトリウム)を流してカラムを平衡化させた後,このカラムに22KhGH−mHSAを2.0 mg/mLの濃度で含有する溶液10 μLを負荷した。同様に試料希釈液(75 mg/mLスクロース及び3 mg/mLポロキサマー含有する10 mMリン酸緩衝液)を同流速で負荷し,215 nmでの吸光度をモニターすることにより,溶出プロファイルを作成した。上記の製造法で得られた22KhGH−mHSAの精製品は,SE−HPLC分析で,概ね22KhGH−mHSAの単量体に対応する単一のピークのみを示した(図1)。
上記の22KhGH−mHSAの純度の評価の結果は,上記精製工程により精製された22KhGH−mHSAが,成長ホルモン分泌不全性低身長症等の治療剤としてそのまま使用し得る高い純度のものであることを示している。
本発明によれば,例えば,成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療剤として用いることのできる,血清アルブミンと成長ホルモンの融合蛋白質の原薬を提供することができる。
配列番号1:野生型のヒト血清アルブミンのアミノ酸配列
配列番号2:ヒト血清アルブミンRedhillのアミノ酸配列
配列番号3:ヒト血清アルブミン変異体(A320T)のアミノ酸配列
配列番号4:リンカーのアミノ酸配列の例1
配列番号5:リンカーのアミノ酸配列の例2
配列番号6:リンカーのアミノ酸配列の例3
配列番号7:野生型マウス脳心筋炎ウイルス由来の内部リボソーム結合部位の部分塩基配列
配列番号8:変異型マウス脳心筋炎ウイルス由来の内部リボソーム結合部位の部分塩基配列,合成
配列番号9:22Kヒト成長ホルモンのアミノ酸配列
配列番号10:20Kヒト成長ホルモンのアミノ酸配列
配列番号11:22KhGH−mHSAのアミノ酸配列
配列番号12:20KhGH−mHSAのアミノ酸配列
配列番号13:プライマーYA082,合成配列
配列番号14:プライマーYA083,合成配列
配列番号15:22KhGH−HSAのアミノ酸配列
配列番号16:22KhGH−HSA遺伝子を含む塩基配列,合成配列

Claims (20)

  1. ヒト血清アルブミンとヒト成長ホルモンとの融合蛋白質の製造方法であって,
    (a)該蛋白質を産生する哺乳動物細胞を無血清培地中で培養して該蛋白質を培養液中に分泌させるステップと,
    (b)上記ステップ(a)で得られた培養液から該哺乳動物細胞を除去することにより培養上清を回収するステップと,
    (c)上記ステップ(b)で得られた培養上清から,該蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,リン酸基に対する親和性を有する材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィーとを用いて,該蛋白質を精製するステップと,
    を含んでなるものである,製造方法。
  2. 該ステップ(c)において,該蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,リン酸基に対する親和性をもつ材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーと,陽イオン交換カラムクロマトグラフィー,及びサイズ排除カラムクロマトグラフィーとを,この順で用いてなるものである,請求項1に記載の製造方法。
  3. 該蛋白質に親和性を有する抗体が,ヒト血清アルブミン又はヒト成長ホルモンに親和性を有するものである,請求項1又は2の製造方法。
  4. 該融合蛋白質に親和性を有する抗体が,ヒト成長ホルモンに親和性を有するものである,請求項1又は2の製造方法。
  5. 該リン酸基に対する親和性を有する該材料が,フルオロアパタイト又はハイドロキシアパタイトのいずれかである,請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 該リン酸基に対する親和性を有する該材料が,ハイドロキシアパタイトである,請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
  7. 該陽イオン交換カラムクロマトグラフィーに使用した陽イオン交換体が,弱陽イオン交換体である,請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 該弱陽イオン交換体が疎水性相互作用及び疎水結合形成の双方に基づき選択性を保持するものである,請求項7の製造方法。
  9. ウイルスを不活化するためのステップを,更に含むものである,請求項1乃至8の何れかの製造方法。
  10. 該蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーで得られた該蛋白質の溶出液に対して,ウイルスの不活化が行われるものである,請求項9の製造方法。
  11. 該サイズ排除カラムクロマトグラフィーで得られた該蛋白質の溶出液に対して,ウイルスの不活化が行われるものである,請求項9の製造方法。
  12. ウイルスを不活化するためのステップを,2回含むものである,請求項1乃至8の何れかの製造方法。
  13. 該蛋白質に親和性を有する抗体を結合させた材料を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーで得られた該蛋白質の溶出液,及び該サイズ排除カラムクロマトグラフィーで得られた該蛋白質の溶出液に対して,ウイルスの不活化が行われるものである,請求項12の製造方法。
  14. ウイルスを不活化するためのステップの1回が,HSA−hGH融合蛋白質を含有する溶液に非イオン性界面活性剤を添加してウイルスを不活化する方法により行われるものであり,他の1回が,HSA−hGH融合蛋白質を含有する溶液をろ過膜に通過させる方法により行われるものである,請求項12又は13に記載の製造方法。
  15. 該蛋白質が,ヒト成長ホルモンのC末端側に,リンカー配列を介して又は直接,ヒト血清アルブミンがペプチド結合により結合したものである,請求項1乃至14の製造方法。
  16. 該リンカー配列が,1個のグリシン,1個のセリン,アミノ酸配列(Gly−Ser),アミノ酸配列(Gly−Gly−Ser),及びこれらのアミノ酸配列が1〜10個連続してなるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでなるものである,請求項15に記載の製造方法。
  17. 該リンカー配列が,アミノ酸配列(Gly−Ser)で示されるアミノ酸配列を有するものである,請求項16に記載の製造方法。
  18. 該蛋白質のアミノ酸配列が,配列番号11で示されるアミノ酸配列と,85%以上の同一性を有するものである,請求項1乃至14の製造方法。
  19. 該蛋白質のアミノ酸配列が,配列番号11で示されるアミノ酸配列と,95%以上の同一性を有するものである,請求項1乃至14の製造方法。
  20. 該蛋白質のアミノ酸配列が,配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するものである,請求項1乃至14の製造方法。
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