以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
本発明の一実施の形態である変復調方式は、本願発明者らが既に提案している特許文献3に記載された方式を基礎としており、変調方式については基本的に同一である。以下においては、本発明の特徴を分かり易くするために、特許文献3に記載された従来の技術(以下では「従来方式」と記載する場合がある)における作用と課題について概要を説明し、これとの比較によって本実施の形態を説明する。
<概要>
従来方式は、共通の搬送周波数を有する4つのSSB要素からなる多重波に対して、復調時に周波数領域での各信号間の相互干渉を抑制し得る変調方式および復調方式に係るものである。
図11は、従来方式における共通の搬送周波数を有する4つのSSB要素からなる変調信号の周波数領域での配置の例について概要を示した図である。4つのSSB要素は、図11に示すように、周波数軸上で偶対象となるUSB(偶対称USB)と、周波数軸上で偶対象となるLSB(偶対称LSB)と、周波数軸上で奇対称となるUSB(奇対称USB)と、周波数軸上で奇対称となるLSB(奇対称LSB)とからなる。それぞれのSSB要素は、周波数領域の正域と負域のそれぞれに偶対称もしくは奇対称の形状の周波数成分を有する。従って、周波数領域における正負の成分を独立に考慮すると、変調信号におけるSSB要素は8個である。
なお、8個のSSB要素は概念上のものであり、それぞれのSSB要素が物理的に単独で存在するものではない。例えば、角周波数ωcの信号は、cosωctまたはsinωctである。しかし、SSBの概念を説明する上では、これらを解析信号(Analytic Signal)化することが必要となる。従って、cosωctを例とすると、その解析成分であるフェイサーexp(jωct)とexp(−jωct)とにより、オイラーの定理を用いて次式のように表すことができる。
ここで、フェイサーとは、一方向の位相回転をする基本要素であり、exp(jω
ct)は角周波数ω
cの位置で正方向に位相回転し、exp(−jω
ct)は角周波数−ω
cの位置で正方向に位相回転する。
一方、情報を伝送するための帯域幅を有する信号は、情報信号の遷移により位相が正方向に増大したり、負方向に増大したりする。このとき、図11に示したような正負の領域を考慮した周波数領域上において、信号の位相が正方向に増大する場合にUSB信号とし、負方向に増大する場合にLSB信号とすると、例えば、図11の例における偶対称USBでは、情報信号の遷移により位相が正方向に増大する際には正の周波数領域上のUSB成分を形成し、位相が負方向に増大する際には負の周波数領域上のLSB成分を形成する。すなわち、図11の例に示した偶対称USB、偶対称LSB、奇対称USB、および奇対称LSBは、それぞれがUSB成分とLSB成分とを有するが、時間領域上ではUSB成分もしくはLSB成分のいずれかの1つのみが存在するものと考える。
ここで、USB型のSSBによるQPSK(USB型SSB−QPSK)によって搬送される情報をu(t)、v(t)とし、LSB型SSB−QPSKによって搬送される情報をp(t)、r(t)とする。また、それぞれの前者(u(t)、p(t))を同相(I:In-phase)成分、後者(v(t)、r(t))を直交(Q:Quadratured-phase)成分とする。また、u(t)、v(t)、p(t)、r(t)の搬送波上の信号をそれぞれU(t)、V(t)、P(t)、R(t)とすると、図11における4種類のSSB要素の変調信号は以下のように表される。
[1.偶対称USB]
解析信号化された信号u(t)は、次式で表される。
なお、H[u(t)]は、u(t)のヒルベルト変換処理を示す。
ここで、搬送波角周波数をωcとすると、信号u(t)は、次式に示すSSBとして搬送される。
[2.奇対称USB]
上記の数2式と同様に、信号v(t)は、次式に示すSSBとして搬送される。
[3.偶対称LSB]
上記の数2式と同様に、信号p(t)は、次式に示すSSBとして搬送される。
[4.奇対称LSB]
上記の数2式と同様に、信号r(t)は、次式に示すSSBとして搬送される。
上記の4種類のSSB要素を全て合成した変調信号S
SSB−QPSK(t)は、次式で表すことができる。
以下では、まず、従来方式において、情報信号を上記の4種類のSSB要素からなる変調信号に変調する際の手法について説明する。図12は、従来方式における変調装置の構成例について概要を示した図である。変調装置100において、伝送すべき情報信号110(S(t))は、シリアルパラレル(S/P)変換器120に入力される。S/P変換器120は、情報信号110を直並列変換して、4系統の並列信号(u(t)、v(t)、p(t)、r(t))を生成し、各信号をそれぞれナイキストフィルタ131〜134に出力する。ナイキストフィルタ131〜134は、それぞれ、入力された信号に対してフィルタリング処理を施して所望の帯域幅の信号として出力する。
加算器141は、ナイキストフィルタ131の出力u(t)と、ナイキストフィルタ133の出力p(t)とを加算して、u(t)+p(t)を出力する。また、加算器142は、ナイキストフィルタ134の出力r(t)からナイキストフィルタ132の出力v(t)を減算して、r(t)−v(t)を出力する。ヒルベルト変換器151は、加算器142から出力されたr(t)−v(t)をヒルベルト変換し、変換後の信号H[r(t)−v(t)]を出力する。加算器145は、加算器141からの出力(u(t)+p(t))と、ヒルベルト変換器151からの出力H[r(t)−v(t)]とを加算して、信号I(t)を出力する。信号I(t)は次式で表される。
一方、加算器144は、ナイキストフィルタ134の出力r(t)の負値と、ナイキストフィルタ132の出力v(t)の負値とを加算して、−{r(t)+v(t)}を出力する。また、加算器143は、ナイキストフィルタ133の出力p(t)からナイキストフィルタ131の出力u(t)を減算して、p(t)−u(t)を出力する。ヒルベルト変換器152は、加算器143から出力されたp(t)−u(t)をヒルベルト変換し、変換後の信号H[p(t)−u(t)]を出力する。加算器146は、加算器144からの出力(−{r(t)+v(t)})と、ヒルベルト変換器152からの出力H[p(t)−u(t)]とを加算して、信号Q(t)を出力する。信号Q(t)は次式で表される。
乗算器147には、局部信号発生器150で発生された局部信号(cosω
ct)が入力され、乗算器148には、移相器160によって90°(π/2)だけ位相がシフトされた局部信号(sinω
ct)が入力される。これにより、乗算器147は、信号I(t)をcosω
ctで乗算し、乗算器148は、信号Q(t)をsinω
ctで乗算する。
加算器149は、乗算器147の出力と乗算器148の出力とを加算する。これにより、2種類のUSB信号(u(t)、v(t))および2種類のLSB信号(p(t)、r(
t))が直交多重化された変調出力171が得られる。この変調出力171をSSSB−QPSK(t)として示すと、次式で表される。
ここで、この数10式は、上記の数7式に等しい。従って、図12に示した構成により、従来方式における変調信号、すなわち、4種類のSSB要素からなる変調信号を得ることができることが示される。
次に、従来方式において、上記の4種類のSSB要素からなる変調信号を復調するために、4種類のSSB要素を2種類のUSB成分と2種類のLSB成分とに分離する手法について説明する。図13は、従来方式における復調装置の構成例について概要を示した図である。復調装置300において、SSSB−QPSK(t)で表される希望波を含む受信信号310は、検波用の乗算器341および342において直交検波される。具体的には、乗算器341は、検波用の局部信号発生器320で発生された局部信号(cosωct)で受信信号310を乗算し、同相成分をナイキストフィルタ351に出力する。また、乗算器342は、移相器330によって90°(π/2)だけ位相がシフトされた局部信号(sinωct)で受信信号310を乗算し、直交成分をナイキストフィルタ352に出力する。
ナイキストフィルタ351および352は、後述するように、それぞれが有するローパスフィルタ作用によって、SSSB−QPSK(t)の同相成分および直交成分の高域成分を除去して信号I(t)、Q(t)を得る。ヒルベルト変換器361および362は、それぞれ、信号I(t)、Q(t)をヒルベルト変換して、信号H[I(t)]、H[Q(t)]を得る。加算器343は、I(t)とH[Q(t)]とを加算して復号器371へ出力する。加算器344は、I(t)からH[Q(t)]を減算して復号器372へ出力する。加算器345は、Q(t)とH[I(t)]とを加算して復号器371へ出力する。加算器346は、Q(t)からH[I(t)]を減算して復号器372へ出力する。
復号器371は、周波数直交する2つのUSB信号を分離して、分離したu(t)およびv(t)をパラレルシリアル(P/S)変換器380へ出力する。また、復号器372は、周波数直交する2つのLSB信号を分離して、分離したp(t)およびr(t)をP/S変換器380へ出力する。P/S変換器380は、入力される4系統の並列信号を直並列変換することによって、1系統のデータ信号390(S(t))を生成する。
上記の構成において、受信信号310であるSSSB−QPSK(t)に対して乗算器341でcosωctを乗算することで検波し、得られた同相成分について、ナイキストフィルタ351が有するローパスフィルタ作用によって高域成分を除去すると、次式の信号I(t)が得られる。
同様に、受信信号310であるS
SSB−QPSK(t)に対して乗算器342でsinω
ctを乗算することで検波し、得られた直交成分について、ナイキストフィルタ352が有するローパスフィルタ作用によって高域成分を除去すると、次式の信号Q(t)が得られる。
ここで、上記の数11式および数12式に示す信号には、それぞれ4種類の信号が含まれているため、2信号のためのSSB−QPSKの場合よりもさらに干渉成分が増加している。このままでは、4元連立方程式を数11式および数12式の2式で解かなければならず、理論的に不可能である。
ここで、従来方式では、SSBの特徴である解析信号としての性質に着目している。SSB信号は位相空間での回転方向が正負いずれか一方向に定まる。すなわち、SSB信号のうち、USBとLSBとでは位相回転の方向が異なるため、ヒルベルト変換を施してもそれぞれの位相回転方向は変わらない。そこで、ヒルベルト変換器361および362は、この性質を利用して、数11式の信号I(t)および数12式の信号Q(t)をそれぞれヒルベルト変換して次式の信号を得る。
数11式と数14式とを比較すると、u(t)およびH[v(t)]は同符号であるが、p(t)およびH[r(t)]は異符号である。同様に、数12式と数13式とを比較すると、H[u(t)]およびv(t)は異符号であるが、H[p(t)]およびr(t)は同符号である。そこで、数11式と数14式とを加算および減算することによりそれぞれ次式が得られる。
加算器343および344は、それぞれ上記の数15式および数16式の信号を得ていることになる。同様に、数12式と数13式とを加算および減算することによりそれぞれ次式が得られる。
加算器345および346は、それぞれ上記の数17式および数18式の信号を得ていることになる。
以上により、数15式および数18式は、u(t)とv(t)との2元連立方程式となり、また、数16式および数17式は、p(t)とr(t)との2元連立方程式となる。これらはそれぞれ解くことが可能であり、その結果各SSB信号を分離することが可能となる。
ただし、これらの2元連立方程式にはそれぞれヒルベルト変換要素が含まれており、実際には非常に強いシンボル間干渉を引き起こす。図14は、ヒルベルト変換要素が引き起こすシンボル間干渉の例について概要を示した図である。図14は、数15式において、シンボル信号u(t)をナイキストロールオフ信号として用いる場合、すなわち、u(t)が以下の数19式で表され、そのヒルベルト変換が以下の数20式で表される場合の時間領域におけるシンボル間干渉の例を示した図である。
ここで、ω
0はシンボル信号の周期周波数で、シンボル周期Tによって次式で表される。
上記の数15式では、I軸(同相軸)における希望波u(t)に加え、直交成分である信号v(t)のヒルベルト変換成分H[v(t)]が共存する。そこで、図14では、連続する3シンボルu(t)、u(t−T)、u(t−2T)に加えて、これらの直交成分であるシンボルv(t)、v(t−T)、v(t−2T)のそれぞれのヒルベルト変換成分H[v(t)],H[v(t−T)],H[v(t−2T)]を合わせて示している。なお、図14では、説明を簡略にするために、すべてのシンボルの状態を“1”、すなわち“+1”として表している。
図14において、例えば、u(t)と、その直交成分であるv(t)のヒルベルト変換成分であるH[v(t)]との間では、H[v(t)]は、u(t)側の信号点t=0ではu(t)に干渉していない。一方で、隣接シンボルの信号点t=−Tとt=Tにおいて、u(t−T)およびu(t+T)に干渉していることが明らかに分かる。このことは、数20式の奇対称性を考慮しても明らかである。
この複雑な干渉状態がすべての信号点で発生するため、図13に示した復調装置300では、受信信号310から希望する情報信号を抽出することは容易ではない。このような干渉状態において希望する情報信号を抽出する方法として、ターボ復号器を用いた方法がある。しかし、この方法は、干渉成分のレプリカを生成して巡回的に干渉成分を除去するため、処理時間が長くなるという課題を有する。また、符号拡散技術を用いた方法があるが、この方法では、例えば、Gold符号等の拡散符号の中で利用できる範囲が限定されるため、拡散効率が低下してしまうという課題を有する。ヒルベルト変換成分の除去に関する根本的な解決には、その干渉成分の特徴を利用することが必要と考えられる。
そこで、従来方式では、ヒルベルト変換成分が隣接シンボルに干渉を与える点に着目し、干渉波を干渉波としてではなく希望波として捉え、復調装置300において、直交軸(Q軸)を含めて希望波成分が通信フレーム内の3箇所に生成される点を利用して希望波を抽出する方式を採用している。
図15は、従来方式における希望波の抽出方法の例について示した図である。図15は、図12に示した変調装置100のS/P変換器120が送出するシンボル列のフレームを示したものである。従来方式では、このフレームの先頭および/または最後尾にヌルシンボルを配置する。具体的には、図15に示すように、例えば、フレームの先頭であるT0にヌルシンボルを配置し、フレームの最後尾であるT11にヌルシンボルを配置する。また、フレームの先頭および最後尾以外のシンボル(T1〜T10のシンボル)には、図15に示すように、I軸およびQ軸に信号u(t)およびv(t)をそれぞれ配置する。
図16は、フレームの先頭および/または最後尾にヌルシンボルを配置した場合の効果の例について示した図である。図16では、図15に示す時刻t=T0〜T11のシンボルうち、時刻t=T0〜T5のI軸およびQ軸における6個の信号成分を示している。図16に示すように、時刻t=0にI軸で信号点を有するu(t)は、I軸に直交するQ軸上では、時刻t=−Tにおいてu(t)のヒルベルト変換成分H[u(t)]のみが単独で現れることが分かる。同様に、時刻t=0にQ軸上で信号点を有するv(t)は、Q軸に直交するI軸では、時刻t=−Tにおいてv(t)のヒルベルト変換成分H[v(t)]のみが単独で現れることが分かる。ここで、信号u(t),v(t)の振幅を正規化した場合、ヒルベルト変換成分の隣接シンボルとの干渉量(振幅比)は約0.63662である。
この結果、図13に示した復調装置300では、時刻t=−Tでヒルベルト変換成分としてのu(t)とv(t)とを単独で抽出した後、その値を、時刻t=0におけるu(t)およびv(t)と次のシンボルからの干渉との合成出力に対して代入することができる。すなわち、I軸上では時刻t=0における信号成分はu(t)−H[v(t−T)]であるが、時刻t=−Tで既知となったu(t)を代入することで−H[v(t−T)]の値を算出することができる。同様に、Q軸上では時刻t=0における信号成分はv(t)+H[u(t−T)]であるが、時刻t=−Tで既知となったv(t)を代入することでH[u(t−T)]の値を算出することができる。これにより、時刻t=0までに、u(t)およびu(t−T)と、v(t)およびv(t−T)の値を得ることができる。
そして、時刻t=Tにおいても時刻t=0までに既知となった値を代入することで時刻t=Tにおける信号成分を分離することができる。具体的には、時刻t=Tでは、I軸上の信号成分はu(t−T)−H[v(t)]−H[v(t−2T)]であり、既知となったv(t)、u(t−T)を代入することで−H[v(t−2T)]の値を算出することができる。同様に、Q軸上では時刻t=Tにおける信号成分はv(t−T)+H[u(t)]+H[u(t−2T)]であり、既知となったu(t)、v(t−T)を代入することでH[u(t−2T)]の値を算出することができる。以降、同様にして、既知となったシンボルの値を順次代入していくことで、フレーム上のすべてのシンボル信号を抽出できることは明らかである。
このように、従来方式によれば、図13に示した復調装置300のヒルベルト変換器361および362において再度のヒルベルト変換処理を行うことで、4種類のSSB信号を、USB信号(2種類)とLSB信号(2種類)とに分離することができる。また、その結果生じる時間領域でのシンボル間干渉に対して、さらに、図12に示した変調装置100が、図15に示すようにフレームの先頭および/またはフレームの最後尾にヌルシンボルを配置することで、時間領域において、復調時に非干渉部分を確保する。これにより、復調装置300は、フレームの先頭および/またはフレームの最後尾で単独で抽出されるヒルベルト変換成分を用いて、フレームの先頭以降またはフレームの最後尾以前において直交する2つの成分を分離することが可能である。
以上に説明したように、従来方式を含むこれまでの技術では、残存するヒルベルト変換成分を除去するのは大変困難である。従来方式では、希望信号と干渉信号とのわずかな振幅差を把握してヒルベルト変換成分を求め、復調を図っている。しかしながら、各信号の振幅は、移動体通信等におけるフェージング環境下では、識別することが更に困難なものとなる。その結果、シンボル信号の振幅情報を多値化する余裕が全くない状況となっており、シンボル信号の多値化により伝送速度を上げることが必須である無線通信システムとしては、実用化に対する大きな障害の一つとなっていた。
そこで、本発明の一実施の形態である変復調方式では、上記の従来方式を基礎として、変調方式については基本的に同一である一方、復調方式において、4種類のSSB信号を分離する際に、従来方式とは異なり、ヒルベルト変換処理を行わずに分離することを可能とする。
すなわち、変調信号は、基本的に従来方式と同様に、共通の搬送周波数領域の周囲に相互に直交的に配置された4種類のSSB要素からなる。第1のSSB要素(偶対称USB)は、正の周波数領域に正極性の上側単側波用解析信号を有するとともに負の周波数領域に正極性の下側単側波用解析信号を有する。第2のSSB要素(奇対称USB)は正の周波数領域に正極性の上側単側波用解析信号を有するとともに、負の周波数領域に負極性の下側単側波用解析信号を有する。第3のSSB要素(偶対称LSB)は、正の周波数領域に正極性の下側単側波用解析信号を有するとともに、負の周波数領域に正極性の上側単側波用解析信号を有する。第4のSSB要素(奇対称LSB)は正の周波数領域に正極性の下側単側波用解析信号を有するとともに、負の周波数領域に負極性の上側単側波用解析信号を有する。
本実施の形態では、変調信号は、上記の4種類のSSB要素のいずれか1つ以上、最大4つの要素からなるものとする。すなわち、必ずしも4種類のSSB要素を全て用いて変調を行うことは必要ではない。また、各SSB要素によって変調されるシンボル信号は、それぞれ振幅情報によって多値化され得るものとする。
一方、本実施の形態では、受信側の復調装置において、SSB検波を行う際の局部信号として、4種類の局部信号を生成し、受信信号とこれらの局部信号との乗算結果について、I軸およびQ軸の成分でそれぞれ加減算および積分処理を行うことにより、4種類のSSB要素によって変調された希望シンボル成分を分離して取り出すものである。上記の局部信号は、受信信号が搬送するシンボル信号のタイミングに同期した単調パルス波、およびこれにヒルベルト変換を施したものに対して、それぞれ、搬送波に同調した第1の搬送波および第1の搬送波と直交する第2の搬送波によって変調することで、計4種類を得る。
このような手法を用いることにより、受信側において、ヒルベルト変換処理を行わずに、送信側から変調信号により送られた4系統の多値化された通信情報を、4系統の多値化された通信情報として再生することができる。
図17は、本実施の形態における信号群を周波数スペクトル上に変調した例について、従来方式と比較して示した図である。図中の右下部(4)(“SSB変調”の“多値化例”)において、本実施の形態による場合を示しているが、ここでは、4系統の信号をそれぞれ2bitとしたSSB化16値QAMの状態を、それぞれのSSB要素を2段に重ねて表示することで模式的に表している。
また、本発明の他の実施の形態では、さらに、変調時にナイキストロールオフ率を十分に小さくする(可能な限りゼロに近付ける)ことで、占有帯域幅を約1/2に圧縮し、周波数利用効率を向上させることを可能とする。
(実施の形態1)
[装置構成]
図2は、本発明の実施の形態1である変復調方式における変調装置の構成例について概要を示した図である。本実施の形態における送信側の変調装置100の構成は、基本的に上述の図12に示した従来方式における変調装置100と同様であるため、再度の詳細な説明は省略する。なお、本実施の形態においては、信号が多値化され得ることから、図12における搬送情報u(t)、v(t)、p(t)、r(t)について、図2ではそれぞれA(t)、B(t)、C(t)、D(t)と表記を変更している。また、図12におけるSSSB−QPSK(t)の変調出力171は、本実施の形態では、多値化され得ることから変調出力170(SSSB−QAM(t))として表す。
また、上述したように、変調装置100は、4種類の搬送情報のいずれか1つ以上、最大4つについて変調するものとする。すなわち、4種類のSSB要素を全て用いて4種類の搬送情報を全て変調することは必須ではない。
以下では、本実施の形態における復調方式について説明する。動作原理についての詳細は後述するが、まず復調装置200の構成例について以下に示す。図1は、本発明の実施の形態1である変復調方式における復調装置の構成例について概要を示した図である。
復調装置200において、SSSB−QAM(t)で表される希望波を含む受信信号210は、まず、SSB検波用の4系統の乗算器211〜214によって検波される。具体的には、乗算器211はI軸(同相軸)側のSSB検波用のI軸側乗算器であり、入力された受信信号210と、後述する手段により生成された4種類の検波用の局部信号のうち、第1の局部信号(LO1)とを乗算し、結果をローパスフィルタ(LPF)221へ出力する。また、乗算器212はI軸側のSSB検波用のQ軸側乗算器であり、入力された受信信号210と、4種類の検波用の局部信号のうち、ヒルベルト変換されている第4の局部信号(LO4)とを乗算し、結果をLPF222へ出力する。なお、LPF221および222は、それぞれ、例えば、搬送周波数以上の成分を除去する機能を併せ持つナイキストフィルタによって構成される。
同様に、乗算器213はQ軸(直交軸)側のSSB検波用のI軸側乗算器であり、入力された受信信号210と、4種類の検波用の局部信号のうち、ヒルベルト変換されている第3の局部信号(LO3)とを乗算し、結果をLPF223へ出力する。また、乗算器214はQ軸側のSSB検波用のQ軸側乗算器であり、入力された受信信号210と、4種類の検波用の局部信号のうち、第2の局部信号(LO2)とを乗算し、結果をLPF224へ出力する。LPF223および224についても、それぞれ、例えば、搬送周波数以上の成分を除去する機能を併せ持つナイキストフィルタによって構成される。
LPF221および222により不要な高域成分を除去された信号は、それぞれ、加算器231および232の双方に入力される。加算器231は、LPF221の出力からLPF222の出力を減算して、積分器241へ出力する。また、加算器232は、LPF221の出力とLPF222の出力とを加算して、積分器242へ出力する。同様に、LPF223および224により不要な高域成分を除去された信号は、それぞれ、加算器233および234の双方に入力される。加算器233は、LPF223の出力からLPF224の出力を減算して、積分器243へ出力する。また、加算器234は、LPF223の出力とLPF224の出力とを加算して、積分器244へ出力する。
積分器241〜244は、それぞれ入力された信号に対して積分処理を行って、4種類のシンボル信号(Ar(t)、Br(t)、Cr(t)、Dr(t))を生成し、P/S変換器250へ出力する。P/S変換器250は、入力された4系統の並列信号を直並列変換することによって、1系統のデータ信号260(Sr(t))を生成する。
本実施の形態の復調装置200は、さらに、上記の4種類のSSB検波用の局部信号(LO1〜LO4)を生成するための局部信号生成手段201を有している。具体的には、受信信号210であるSSSB−QAM(t)が局部信号生成手段201におけるシンボル同期回路271にも入力される。シンボル同期回路271は、受信信号210に含まれるシンボル信号のタイミングを抽出し、受信信号210に同期したシンボル信号を生成して、ナイキストフィルタ272へ出力する。具体的には、例えば、受信信号210の二乗検波を行い、単一極性化を施してシンボル信号の2倍の速度の単調パルス信号とした後、分周のタイミングを受信信号210との論理積をとることによって確立し、2倍の速度となった単調パルス信号を元の速度(1倍)の単調パルス信号として出力するなどの公知の手法を適宜用いることができる。
ナイキストフィルタ272は、入力された単調パルス信号となったシンボル信号を、ナイキスト成形して出力する。出力された信号の一部は、乗算器291および292へ出力される。乗算器291には、局部信号発生器281で発生された基準角周波数ωcの基準信号(cosωct)が入力され、乗算器292には、上記の基準信号(cosωct)が移相器282によって90°(π/2)だけ位相がシフトされた直交基準信号(sinωct)が入力される。
これにより、ナイキストフィルタ272から出力されたナイキスト成形されたシンボル信号に対して、乗算器291はcosωctで乗算して搬送波に同調した第1の局部信号(LO1)を出力し、乗算器292はsinωctで乗算して第1の局部信号(LO1)に直交した第2の局部信号(LO2)を出力する。
一方、ナイキストフィルタ272から出力されたナイキスト成形されたシンボル信号の一部は、ヒルベルト変換器273へ出力される。ヒルベルト変換器273は、入力された信号をヒルベルト変換して、乗算器293および294へ出力する。乗算器293には、局部信号発生器281で発生された基準信号(cosωct)が入力され、乗算器294には、局部信号発生器281で発生された基準信号(cosωct)が移相器282によって90°(π/2)だけ位相がシフトされた直交基準信号(sinωct)が入力される。
これにより、ナイキストフィルタ272から出力されたナイキスト成形されたシンボル信号をヒルベルト変換したものに対して、乗算器293はcosωctで乗算して搬送波に同調した第3の局部信号(LO3)を出力し、乗算器294はsinωctで乗算して第3の局部信号(LO3)に直交した第4の局部信号(LO4)を出力する。なお、第1〜第4の局部信号(LO1〜LO4)を総称して局部信号SLO(t)として表している。
[動作原理]
以下に、本実施の形態における主に復調時の動作原理について説明する。図2に示した変調装置100において、4種類の情報シンボルA(t)、B(t)、C(t)、D(t)を、搬送波角周波数ωcでSSB化して得られる変調出力170(SSSB−QAM(t))は、次式で表される。
このS
SSB−QAM(t)を、例えば、上記の図13に示した従来方式のように受信側で直交検波した場合、局部信号がcosω
ct側の出力、およびsinω
ct側の出力に対して、ローパスフィルタを通して高域成分を除去した検波出力は、それぞれ次式で表される。
例えば、上記の数23式から明らかなように、検波出力には、シンボル信号の形で受信することができるA(t)、B(t)の成分と、ヒルベルト変換された形で受信信号に残留するC(t)、D(t)の成分(H[C(t)]、H[D(t)])が混在する。同様に、数24式に示される検波出力には、シンボル信号の形で受信することができるC(t)、D(t)の成分と、ヒルベルト変換された形で信号に残留するA(t)、B(t)の成分(H[A(t)]、H[B(t)])が混在する。
これに対し、上述した従来方式においては、それぞれの検波出力にさらにヒルベルト変換を施すことでヒルベルト変換成分を除去するという工夫を行っていた。例えば、数24式に示される検波出力に対してヒルベルト変換を施すと、次式が得られる。
この数25式と、上記の数23式とを加算するとA(t)のシンボル信号を得ることができるが、H[C(t)]の成分が付随する。また、減算するとB(t)のシンボル信号を得ることができるが、H[D(t)]の成分が付随する。同様に、数23式に示される検波出力に対してヒルベルト変換を施し、数24式と加算することにより、C(t)およびD(t)についてのシンボル信号を得ることができるが、H[A(t)]およびH[B(t)]の成分がそれぞれ付随する。
ここで、シンボル信号としてナイキスト信号を用いた場合を考える。実際の変調装置100においては、2値を[0,1]ではなく[−1,+1]として処理するため、これに伴い振幅を是正すると、シンボル信号は次式のように変形される。
なお、Tはシンボル周期、ω
0はナイキスト(角)周波数である。この数26式をヒルベルト変換した結果は、定数のヒルベルト変換結果がゼロとなることから、次式で表される。
図3は、上記の数26式および数27式をω
0=1(rad/sec)として規格化して時間領域で表した図である。図3において明らかなように、ナイキスト信号では、シンボル間隔(図3の例ではπ毎)で隣接シンボルが到来することを可能としているのに対し、そのヒルベルト変換成分は、ヌル点が2π毎に到来することを示している。その結果、ナイキスト信号における後続のシンボルのうち半数がヒルベルト変換成分により干渉を受けることになる。すなわち、図13に示したような従来方式における復調の手法では、同相(I軸)成分に直交(Q軸)成分のヒルベルト変換成分が生成される(その逆もある)ことから、隣接シンボルに干渉を与える結果となってしまう。
図4は、I軸上に多重配置されたUSB成分とLSB成分の直交検波時の干渉状況の例について周波数スペクトル上で示した図である。図4(a)はUSB成分の検波の場合、図4(b)はLSB成分の検波の場合について示しており、図4(a)の(1−a)、および図4(b)の(2−a)では、それぞれ、受信RF(Radio Frequency)信号のUSB成分およびLSB成分を示している。いずれも、周波数軸に対して正負の領域にUSB成分とLSB成分とが対称に配置される。なお、図4(a)と図4(b)とでは、USB成分とLSB成分の配置が反転した状態となる。
上記の信号に通常の直交検波を施す場合、I軸側では局部信号(ローカル信号)として余弦波を乗じるのが一般的である。上記の数1式に示したオイラーの定理により、余弦波の局部信号のスペクトルは、図4(a)、(b)において(1−b)に示すように、周波数軸に対して正負の領域に線スペクトルが対称に配置される形となる。従って、上記の受信RF信号と局部信号とを乗算して得られる検波出力のスペクトルは、それぞれ、図4(a)の(1−c)および図4(b)の(2−c)に示すような形状となる。両者の形状は異なっているものの、これらの出力結果をそれぞれローパスフィルタに通して高域成分を除去して得られるベースバンド信号出力のスペクトル(図4(a)の(1−c)および図4(b)の(2−c)の中央の成分)は、図4(a)と図4(b)とでは同様のDSB(Double Side Band:両側波帯)の形状となり、両者を識別することができない。
本実施の形態に係る変復調方式では、純然たるSSB波を対象としている。SSBは、上述したように、フェイサーであるexp(jωct)とexp(−jωct)を用いることに特徴がある。しかしながら、図13に示したような従来方式の復調装置300における直交検波回路では、局部信号発生器320により生成する局部信号に余弦波(および正弦波)を用いている。数1式に示したオイラーの定理が示すように、余弦波(および正弦波)は、正負のフェイサーからなるDSBとなっている。
上述した従来方式での復調方式において、直交軸を越えてヒルベルト変換成分が相互に影響を及ぼす結果となるのは、上記のように直交検波の際の局部信号がDSB性を有することに起因するものと推測される。また、上述したように、SSB要素は4種類存在するのに対して、従来方式での復調方式では、直交検波の際の局部信号は余弦波と正弦波の2種類のみを用いており、4種類のSSB要素に対する検波手段としては不十分であるものと推測される。
そこで、本実施の形態では、SSB要素を復調するための全く新しい方式を採用した。すなわち、検波用の局部信号として、SSB信号を構成する要素となる4種類の局部信号を生成し、これらを用いてSSB検波を行う。
図5は、本実施の形態における局部信号とI軸上に多重配置されたUSB成分とLSB成分に対する検波時の作用の例について周波数スペクトル上で示した図である。図4の例と同様に、図5の(a)はI軸におけるUSB成分の検波の場合、図5(b)はLSB成分の検波の場合について示しており、図5(a)の(1−a)、および図5(b)の(2−a)では、それぞれ、受信RF信号のUSB成分およびLSB成分を示している。
本実施の形態では、検波用の局部信号として、SSB信号を構成する要素となる4種類の信号を用いる。すなわち、図5(a)、(b)において(1−b)に示すように、局部信号(図5の例では第1の局部信号(LO1)と第4の局部信号(LO4)を合成したもの)は、周波数軸に対して正負の領域にそれぞれのSSB成分が対称に配置される形となる。図中では、負領域のSSB成分からなるSSB信号をLOSSB−、正領域のSSB成分からなるSSB信号をLOSSB+として示す。
上記の受信RF信号(1−a)と各SSB信号(LOSSB+、LOSSB-)とをそれぞれ乗算して得られる検波出力のスペクトルは、それぞれ、図5(a)の(1−c1)、(1−c2)、および図5(b)の(2−c1)、(2−c2)に示すような形状となる。各SSB信号による検波出力を合成した全体での検波出力は、図5(a)の(1−c)および図5(b)の(2−c)に示すような形状となる。そして、これらの出力結果をそれぞれローパスフィルタに通して高域成分を除去して得られるベースバンド信号出力のスペクトル(図5(a)の(1−c)および図5(b)の(2−c)の中央の成分)は、いずれもDSBではあるものの両者の形状は異なる。従って、図4の例の場合と異なって、両者を識別することが可能である。
具体的には、例えば、図5(a)の(1−a)に示したI軸上の受信RF信号において、USB成分を搬送する信号SI−USBおよびLSB成分を搬送する信号SI−LSBを複素表現すると、それぞれ次式で示される。
ここで、A(t)はシンボル信号の極性および振幅情報を表す。また、u(t)はシンボル信号の核であるナイキスト関数を表す。
上述したように、SSB変調された信号を受信側で復調するためには、検波用の信号としてSSB化された信号が必要であると考えられ、そのためには検波用の信号に対してSSB変調を行う必要がある。本実施の形態では、SSB化される被変調信号として、シンボル信号のナイキスト関数であるu(t)を用いるものとする。このu(t)は、受信信号のシンボル信号と同期していることが必要である。これは、例えば、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)の通信方式においてチップ同期が必要であることと同一の理由に基づく。
上述の図1に示した復調装置200では、SSB検波用の局部信号SLO(t)を生成する局部信号生成手段201におけるシンボル同期回路271およびナイキストフィルタ272によって、ナイキスト化されたシンボル信号u(t)を生成する。従って、局部信号生成手段201の乗算器291では、u(t)と基準信号(cosωct)との乗算を行い、また、乗算器292では、u(t)と直交基準信号(sinωct)との乗算を行い、それぞれ、次式に示す局部信号LO1、LO2を出力する。
同様に、乗算器293では、u(t)をヒルベルト変換した結果(H[u(t)])と基準信号(cosω
ct)との乗算を行い、また、乗算器294では、u(t)をヒルベルト変換した結果(H[u(t)])と直交基準信号(sinω
ct)との乗算を行い、それぞれ、次式に示す局部信号LO
3、LO
4を出力する。
上記の4種類の局部信号(LO
1〜LO
4)により、SSB信号における上記の4種類のSSB要素を構成することができる。すなわち、LO
1−LO
4により第1のSSB要素(偶対称USB)を構成し、LO
1+LO
4により第2のSSB要素(偶対称LSB)を構成し、LO
2+LO
3により第3のSSB要素(奇対称USB)を構成し、LO
3−LO
2により第4のSSB要素(奇対称LSB)を構成する。
図1に示した復調装置200において、受信信号210である希望波SSSB−QAM(t)は、上述の数22式に示した通りであるが、これを単純化するためにナイキスト化されたシンボル信号u(t)を用いることで、次式を得る。
ここで、上部にバーが記載されたA(t)(以下では「A(t) ̄」のように記載する場合がある)、B(t) ̄、C(t) ̄、D(t) ̄は、それぞれ、送信側のデータ系列からなる情報信号を示しており、シンボル期間内では変化しない一定値である。従って、例えば、A(t)は、A(t) ̄とu(t)との積として表すことができる。
復調装置200の乗算器211では、上記の数31式からなる受信信号210に対して、上記の数29式に示した局部信号LO1であるu(t)cosωctを入力として乗算し、次式の出力を得る。
この出力には、搬送周波数ω
cの2倍の角速度を有する要素が含まれるが、このような高域成分はLPF221によって除去されるため、LPF221からの出力は次式で表される。
同様に、復調装置200の乗算器212では、上記の数31式からなる受信信号210に対して、上記の数29式に示した局部信号LO
4であるH[u(t)]sinω
ctを入力として乗算し、次式の出力を得る。
この出力にも上記の数32式と同様に、搬送周波数ω
cの2倍の角速度を有する要素が含まれるが、このような高域成分はLPF222によって除去されるため、LPF222からの出力は次式で表される。
ここで、復調装置200の加算器231において、LPF221からの出力(数33式)からLPF222からの出力(数35式)を減算すると、次式が得られる。
上記の数36式は、受信信号210に対して、上記の第1のSSB要素(LO
1−LO
4)を乗算した結果をローパスフィルタに通したものと等価である。すなわち、受信信号210を第1のSSB要素によって検波した結果が出力されることになる。
また、復調装置200の加算器232において、LPF221からの出力(数33式)とLPF222からの出力(数35式)とを加算すると、次式が得られる。
上記の数37式は、受信信号210に対して、上記の第2のSSB要素(LO
1+LO
4)を乗算した結果をローパスフィルタに通したものと等価である。すなわち、受信信号210を第2のSSB要素によって検波した結果が出力されることになる。
上記の数36式および数37式には、共通した要素が存在することが分かる。まずは、希望波信号Sdesired(t)のシンボル関数群として、次式の要素が共通に存在する。
また、I軸内で対向するSSB要素であるS
⊥(t)のシンボル関数群として、次式の要素が共通に存在する。
さらに、I軸とQ軸の関係にあるSSB要素であるS
∇×(t)のシンボル関数群として、次式の要素が共通に存在する。
数38式〜数40式の要素を用いると、上記の数36式および数37式はそれぞれ次式のように表される。
ここで、上記の数38式〜数40式の要素の性質を、ヒルベルト変換定理やナイキスト信号の性質を考慮して検討する。まず、数38式および数39式に対しては、Stefan L. Hahn,“Hilbert Transforms in Signal Processing”,Artech House, Inc.,1996年,pp.56 Table 2.1 A Listing of the Properties of the Hilbert Transformation,Number 11,Energy equality.に記載されているヒルベルト変換公式を適用する。すなわち、任意の正則関数の二乗の積分は、その関数のヒルベルト変換の二乗の積分に等しい、とするものであり、次式で表される。
上記の数43式のu(t)を、ナイキスト関数のシンボル関数とした場合、u(t)およびH[u(t)]は上記の数19式および数20式で表されることから、振幅を正規化した場合、u(t)
2とH[u(t)]
2の状況は図6のように示される。図6は、受信検波のために生成されるナイキスト関数のシンボル関数u(t)とこれをヒルベルト変換したH[u(t)]の二乗値をそれぞれ示した図である。
数43式によれば、積分区間は−∞と∞の間とされるが、図6からは、−2πと2πの間(すなわち−2T〜2T)の積分でほぼ等しい値が得られるものと考えられる。従って、数38式および数39式は、それぞれ近似的に次式のように表すことができる。
また、上記の数40式についても、u(t)をナイキスト関数のシンボル関数とした場合、u(t)およびH[u(t)]は上記の数19式および数20式で表されることから、振幅を正規化した場合、次式で表される。
図7は、上記の数46式の状況として、受信検波のために生成されるナイキスト関数のシンボル関数u(t)とこれをヒルベルト変換したH[u(t)]とを乗算した値を示した図である。図7から明らかなように、数46式の関数は原点に対して奇対称であることから、次式が成り立つ。
ここで、t
0は、積分区間を示す任意の値である。上記の数44式、数45式、および数47式を用いると、上記の数41式、数42式を積分した結果は、それぞれ次式で表される。
数48式および数49式から明らかなように、復調装置200の加算器231において、上記のLPF221の出力(数33式)からLPF222の出力(数35式)を減算した結果、すなわち、受信信号210を第1のSSB要素によって検波した結果を積分器241で積分することにより、シンボル信号A
r(t)が得られることが分かる。また、加算器232において、上記のLPF221の出力(数33式)とLPF222の出力(数35式)とを加算した結果、すなわち、受信信号210を第2のSSB要素によって検波した結果を積分器242で積分することにより、シンボル信号B
r(t)が得られることが分かる。
ここで、シンボル関数u(t)はsinc関数であるから、数48式、数49式におけるu(t)2の積分値は次式で表される。
ここで、ω
0=1のときは次式に表されるように積分値は1となる。
従って、数48式、数49式は、それぞれ、“2A(t) ̄”、“2B(t) ̄”に定数β/ω
0 2を乗算したものとして次式のように表される。
すなわち、シンボル情報A(t)やB(t)に定数を乗じたものとして得ることができる。なお、ここでのβは次式で表される定数である。
同様に、復調装置200の乗算器213では、上記の数31式からなる受信信号210に対して、上記の数30式に示した局部信号LO
3であるH[u(t)]cosω
ctを入力として乗算し、次式の出力を得る。
この出力には、搬送周波数ω
cの2倍の角速度を有する要素が含まれるが、このような高域成分はLPF223によって除去されるため、LPF223からの出力は次式で表される。
同様に、復調装置200の乗算器214では、上記の数31式からなる受信信号210に対して、上記の数30式に示した局部信号LO
2であるu(t)sinω
ctを入力として乗算し、次式の出力を得る。
この出力にも上記の数55式と同様に、搬送周波数ω
cの2倍の角速度を有する要素が含まれるが、このような高域成分はLPF224によって除去されるため、LPF224からの出力は次式で表される。
ここで、復調装置200の加算器233において、LPF223からの出力(数56式)からLPF224からの出力(数58式)を減算すると、次式が得られる。
上記の数59式は、受信信号210に対して、上記の第4のSSB要素(LO
3−LO
2)を乗算した結果をローパスフィルタに通したものと等価である。すなわち、受信信号210を第4のSSB要素によって検波した結果が出力されることになる。
また、復調装置200の加算器234において、LPF223からの出力(数56式)とLPF224からの出力(数58式)とを加算すると、次式が得られる。
上記の数60式は、受信信号210に対して、上記の第3のSSB要素(LO
2+LO
3)を乗算した結果をローパスフィルタに通したものと等価である。すなわち、受信信号210を第3のSSB要素によって検波した結果が出力されることになる。
上記の数59式、数60式を積分した結果は、それぞれ次式で表される。
数61式および数62式から明らかなように、復調装置200の加算器233において、上記のLPF223の出力(数56式)からLPF224の出力(数58式)を減算した結果、すなわち、受信信号210を第4のSSB要素によって検波した結果を積分器243で積分することにより、シンボル信号C
r(t)が得られることが分かる。また、加算器234において、上記のLPF223の出力(数56式)とLPF224の出力(数58式)とを加算した結果、すなわち、受信信号210を第3のSSB要素によって検波した結果を積分器244で積分することにより、シンボル信号D
r(t)が得られることが分かる。
以上に示したように、本実施の形態の復調装置200におけるSSB検波を含む復調方式によれば、SSB信号を構成する4種類の要素からなる検波用の局部信号(LO1〜LO4)を生成して、これを用いて検波することにより、受信信号210であるSSSB−QAM(t)から、4種類のシンボル信号Ar(t)、Br(t)、Cr(t)、Dr(t)を抽出することができる。
[シンボル間干渉の解消についての検証]
次に、本実施の形態の復調方式を用いることで、従来方式での課題であった自チャネルにおける隣接シンボルによるシンボル間干渉(ISI:Inter Symbol Interference)を解消することができることを検証する。シンボル周期をTとすると、例えば、I軸USB信号を搬送する信号SI−USB(t)について、シンボル信号A(t)の隣接シンボルAs(t)は次式で表される。
この隣接シンボルA
s(t)に対して、t=0のシンボルタイミングで検波を行う。数63式の信号に対して、復調装置200の乗算器211でSSB検波のためにLO
1の局部信号を乗算すると次式が得られる。
数64式には、搬送周波数ω
cの2倍の角速度を有する要素が含まれるが、このような高域成分はLPF221によって除去されるため、LPF221からの出力は次式で表される。
同様に、数63式の信号に対して、乗算器212でLO
4の局部信号を乗算すると次式が得られる。
数66式にも同様に、搬送周波数ω
cの2倍の角速度を有する要素が含まれるが、このような高域成分はLPF222によって除去されるため、LPF222からの出力は次式で表される。
加算器231によって数65式から数67式を減算すると、次式が得られる。
ここで、上述したように、u(t)としてナイキスト関数を用いる場合、u(t)およびH[u(t)]はそれぞれ次式によって表される。
これを用いて上記の数68式におけるu(t)u(t−T)について展開すると、次式のように表される。
同様に、H[u(t)]H[u(t−T)]について展開すると、次式のように表される。
数70式および数71式を見て明らかなように、これらの式は互いに正負が逆極性の同一の関数であり、これらの和はゼロとなる。従って、これらの和からなる隣接シンボル信号は、その成分同士の相殺により消滅し、シンボル間干渉(ISI)を生じることはない。図8は、受信検波の出力における隣接シンボルの信号成分の干渉状況を示した図である。図8では、隣接シンボル信号の各成分の関数を示しているが、ここからも各成分同士が相殺されて和がゼロとなることが分かる。
最後に、検波出力における上記の数40式に示されるS∇×(t)=u(t)H[u(t)]の項についての隣接シンボルからの干渉について検証する。この項は、例えば、上記の数34式に示されるように、I軸側の検波出力とQ軸側の検波出力の双方から生成され、隣接シンボルについては、u(t)H[u(t−T)]と、u(t−T)H[u(t)]とに分かれる。これら2つの信号成分は、それぞれ次式で表される。
図9は、u(t)をナイキスト関数とした場合の、受信検波の出力における隣接シンボルの上記2つの信号成分の干渉状況を示した図である。図9では、2つの信号成分は、t=π/2の点で点対称であることが分かる。従って、これらの成分の和は、時間軸上で−∞〜+∞の間で積分するとゼロになる。図9からは、−2π〜2πの間で積分すれば、シンボル信号の振幅が1の場合では結果が0.02以下となり、ほぼゼロになると言える。上述した図6においても、積分区間は−2π〜2πとしていることから、復調装置200において検波出力を積分器241〜244で積分することで、S
∇×(t)=u(t)H[u(t)]の項における隣接シンボルからの干渉も同時に解決されることになる。
ここで、上述の図14に示したように、u(t)の希望シンボルに対して、次々隣接シンボル(偶数個離れたシンボル)は、希望シンボルの信号点においてヌルとなるため、シンボル間干渉を考慮する必要はないが、奇数個離れたシンボルは、希望シンボルの信号点においてヌルとはならない。そこで、1個離れた隣接シンボルに限らず、奇数(2n+1)個離れたシンボル一般についてシンボル間干渉が生じないことを検証する。隣接シンボルについての上記の数63式は、奇数(2n+1、nは整数)個離れたシンボルについて次式で表される。
この隣接波に対して上記と同様に検波を行う。数73式の信号に対して、復調装置200の乗算器211でSSB検波のためにLO
1の局部信号を乗算すると次式が得られる。
数74式には、搬送周波数ω
cの2倍の角速度を有する要素が含まれるが、このような高域成分はLPF221によって除去されるため、LPF221からの出力は次式で表される。
同様に、数73式の信号に対して、乗算器212でLO
4の局部信号を乗算すると次式が得られる。
数76式にも同様に、搬送周波数ω
cの2倍の角速度を有する要素が含まれるが、このような高域成分はLPF222によって除去されるため、LPF222からの出力は次式で表される。
加算器231によって数75式から数77式を減算すると、次式が得られる。
ここで、上記の数69式を用いて上記の数78式におけるu(t)u(t−(2n+1)T)について展開すると、次式のように表される。
同様に、H[u(t)]H[u(t−(2n+1)T)]について展開すると、次式のように表される。
数79式および数80式も、隣接シンボルにおける上記の数70式および数71式と同様に、両者の式が互いに正負が逆極性の同一の関数であり、これらの和はゼロとなる。従って、これらの和からなる隣接シンボル信号は、その成分同士の相殺により消滅し、シンボル間干渉を生じることはない。
以上に説明したように、本発明の実施の形態1である変復調方式によれば、送信側において、4多重化したSSB多重化変調方式によって変調装置100で変調された信号は、受信側の復調装置200において、4種類の局部信号を用いたSSB検波の手法により、4多重化された情報の復調分離が可能である。さらに、復調装置200において、4系統の積分器241〜244から出力された信号からは、それぞれ希望波を単独かつ振幅方向に歪なく抽出することができることから、振幅情報を維持することができる。従って、従来方式では困難であった振幅多値化が可能となり、SSB−QPSK方式から、SSB−16QAMやSSB−64QAMなどのSSB−QAM方式を実現することが可能である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2である変復調方式は、上述した実施の形態1の変復調方式の図2に示した変調装置100および図1に示した復調装置200において、変調装置100のナイキストフィルタ131〜134と、ナイキストフィルタにより構成される復調装置200のローパスフィルタ221〜224のロールオフ率をゼロに近づけることで、周波数利用効率を向上させるものである。
このとき、上述した実施の形態1における変復調方式の根幹である、SSB信号を構成する要素からなる局部信号SLO(t)を生成するための局部信号生成手段201におけるナイキストフィルタ272に対するロールオフ率の配分についても整合をとらなければ、様々な干渉除去作用を弱体化するものとなる。
一般的に、通信システムにおけるナイキストフィルタでは、送信側および受信側におけるロールオフ率の配分として、平方根を取ったルートナイキストロールオフを用いることでマッチドフィルタ化するが、通信要件に応じて適宜配分率は調整され得る。本実施の形態においても、図2の変調装置100におけるナイキストフィルタ131〜134と、図1の復調装置200においてSSB検波処理に関連するローパスフィルタ221〜224との間で、ロールオフ率を、例えば、ルートナイキストロールオフ等によって適宜配分する。
一方、復調装置200における局部信号生成手段201のナイキストフィルタ272については、局部信号生成手段201が実質は送信側と同様の機能を奏することから、ロールオフ率は、変調装置100におけるナイキストフィルタ131〜134のロールオフ率と同値となるようにする。すなわち、ナイキストフィルタ272と、SSB検波処理に関連するローパスフィルタ221〜224との間では、ルートナイキストロールオフ等によりローフオフ率を適宜配分する。
ロールオフ率αを盛り込んだナイキストフィルタ特性は、次式で表される。
ここで、ロールオフ率αは、0≦α≦1の値を取る。このナイキストロールオフフィルタのインパルスレスポンスΓ(t)は、次式で表される。
ルートナイキストロールオフフィルタとしての特性は、このインパルスレスポンスの平方根Γ
√2を送信側および受信側に振り分けるというものである。すなわち、変調装置100のナイキストフィルタ131〜134および復調装置200のナイキストフィルタ272と、復調装置200のローパスフィルタ221〜224との間では、それぞれ次式で表される特性を備える。
本実施の形態では、数83式の特性におけるロールオフ率αを可能な限りゼロに近づける。
図10は、ロールオフ率をゼロに近づけた場合のシンボル信号の周波数スペクトルの例を示した図である。図10では、上段にI軸、下段にQ軸についてのスペクトルをそれぞれ示し、左側に一般的なナイキスト特性でのスペクトル、右側にロールオフ率をゼロに近づけた場合のスペクトルをそれぞれ示している。図10から明らかなように、ロールオフ率をゼロに近づけることで、占有帯域幅は狭くなって元の1/2に近づく、すなわち、周波数利用効率は元の2倍に近づく。これにより、例えば、現在の変復調方式で最も周波数利用効率が高いOFDM方式での2bit/s/Hzの2倍である4bit/s/Hzを達成することができる。
現在の移動体通信で用いられるロールオフ率はα=0.2前後であり、フィルタ等における信号処理上の負荷は大きくない。ロールオフ率α=0.2においても占有帯域外への漏洩電力は十分に低下することから、本実施の形態では、少なくともロールオフ率αを0.2以下とするのが望ましい。これにより、他の無線システムが占有する帯域を、本実施の形態における占有帯域のより近傍に配置することができ、総合的な周波数利用効率の向上を図ることができる。
(実施の形態3)
上述したように、実施の形態1、2で示した4種類のSSB要素を用いた変復調方式によれば、OFDMの2倍の周波数利用効率を実現することができる。しかしながら、実施の形態1、2における変復調方式は基本的にシングルキャリアであり、OFDMAなどの現在の高度の無線アクセスに適応することができない。そこで、本発明の実施の形態3である変復調方式は、実施の形態1、2における4種類のSSB要素を用いた変復調方式を用いてOFDM化を実現する。
以下においては、本発明の特徴を分かり易くするために、従来技術でのOFDM、および実施の形態1、2における変復調方式をそのままOFDM化した場合の課題について概要を説明した上で、当該課題を解決する構成を有する本実施の形態について説明する。なお、本実施の形態では、OFDMすなわち周波数直交分割多重における多重数を3とした場合(すなわちキャリア周波数が3つの場合)を例として説明するが、多重数はこれに限られない。
<概要>
図30は、従来のOFDMおよび実施の形態1、2における変復調方式によるOFDM化での周波数スペクトルの例を示した図である。図30(a)は、例えばLTE(Long Term Evolution)方式などの従来のOFDMにおける周波数スペクトルの例を示している。キャリア周波数が3つの場合は、搬送できるキャリア数はI軸(実軸)とQ軸(直交軸)合計6つ(図中のI1〜I3、Q1〜Q3)となる。これらそれぞれに多値化シンボルを載せるので、多値化が16QAMであれば合計12bitとなる。なお、キャリア信号の間隔は、シンボル信号の周波数ω0である。
一方、図30(b)は、実施の形態1、2における変復調方式によるOFDM化の例を示しており、3つのキャリア周波数は、それぞれ、USB(上側波帯)とLSB(下側波帯)となる。従って、搬送できるキャリア数はI軸(実軸)とQ軸(直交軸)の合計12となり(図中のIU1〜IU3(上側帯波)、IL1〜IL3(下側帯波)、QU1〜QU3(上側帯波)、QL1〜QL3(下側帯波))、多値化が16QAMであれば合計24bitとなる。
送信系すなわち変調系では、図30(b)に示したスペクトル配置は問題なく構成することができる。しかしながら、受信系すなわち復調系では、実施の形態1、2に示した復調方式を用いて、検波のためにSSB化された局部信号との乗算を行うと、受信信号および局部信号に包含されるシンボル関数が乗算されるため、各キャリアの周波数帯域幅は送信信号の2倍となってしまう。
図31は、実施の形態1、2における変復調方式においてSSB化された局部信号による検波の結果の周波数スペクトルの例を示した図である。図示するように、I軸(実軸)、Q軸(直交軸)それぞれにおいて、各単側波帯成分は、OFDMとして守らなければならないシンボル周波数に等しい帯域(すなわちキャリア周波数から±ω0の範囲)をω0だけ外側に逸脱し、それぞれのキャリア信号が周波数スペクトル上でオーバーラップしている。さらに、全体の帯域幅もω0分外側に逸脱することになる。その結果、復調系において周波数分離することが困難となる。
そこで、本実施の形態では、復調系での検波出力における周波数直交多重性を確保するため、後述するように、変調系および復調系におけるナイキストフィルタの特性を、上記の実施の形態2で示したものよりもさらに急峻にして、占有帯域幅をシンボル信号の周波数スペクトルの1/2に近付ける。これにより、送信波および受信波の周波数スペクトルにおいて、各キャリアの周波数帯域幅を±ω0の範囲にほぼ収めることができ、OFDM化が可能となる。
[装置構成]
図18は、本発明の実施の形態3である変復調方式における変調装置の構成例について概要を示した図である。本実施の形態では、変調装置1000は、実施の形態1の図2に示した変調装置100をSSB変調器1(1101)〜SSB変調器3(1103)として3基並列に有する。これら3基のそれぞれの搬送波角周波数ω1〜ω3は、シンボル周波数ω0の間隔で設定されているものとする。例えば、ω1=ωc+ω0、ω2=ωc、ω3=ωc−ω0などとすることができる。
これら3基のSSB変調器1(1101)〜SSB変調器3(1103)に対して、伝送すべき情報信号1110(St(t))は、マルチプレクサ(MUX)1010により3分割された情報信号1(1111(S1(t))〜情報信号3(1113(S3(t))としてそれぞれ供給される。そして、SSB変調器1(1101)〜SSB変調器3(1103)のそれぞれにおいて実施の形態1に示した変調方式によって変調された結果の変調出力1(1171)〜変調出力3(1173)は、加算器1020によって加算合成され、OFDM化された変調出力1030(SOFDM−SSB−QAM(ωk,t))となる。
図19は、本実施の形態の変復調方式における復調装置の構成例について概要を示した図である。図18に示した変調装置1000と同様に、本実施の形態では、復調装置2000は、実施の形態1の図1に示した復調装置200に相当するものをSSB復調器1(2201)〜SSB復調器3(2203)として3基並列に有する。なお、3基の各SSB復調器のそれぞれの搬送波角周波数ω1〜ω3も、図18に示した変調装置1000と同様に、シンボル周波数ω0の間隔で設定されているものとする。
図19に示した本実施の形態の各SSB復調器と、実施の形態1の図1に示した復調装置200との相違点は、本実施の形態のSSB復調器では、復調装置200における局部信号生成手段201に相当する部分を有しておらず、後述の図20に示すように局部信号生成手段として独立して有している点と、各SSB復調器において、各積分器の前段にルートナイキストフィルタ(例えば、図中のルートナイキストフィルタ(RNF)2211〜2214)を有している点にある。
3基のSSB復調器1(2201)〜SSB復調器3(2203)に対して、受信信号2020(SOFDM−SSB−QAM(ωk,t))がそれぞれ入力される。そして、SSB復調器1(2201)〜SSB復調器3(2203)のそれぞれにおいて実施の形態1に示した復調方式によって復調された結果の復調出力1(2261(S1(t))〜復調出力3(2263(S3(t))は、マルチプレクサ(MUX)2030により合成されてデータ信号2040(Sr(t))となる。
図20は、本実施の形態の変復調方式における局部信号生成手段の構成例について概要を示した図である。局部信号生成手段2010は、図18に示した変調装置1000などと同様に、実施の形態1の図1に示した局部信号生成手段201に相当するものを局部信号生成部1(2011)〜局部信号生成部3(2013)として3基並列に有する。なお、図21の例では、図1に示した局部信号生成手段201の構成のうち、シンボル同期回路271およびナイキストフィルタ272に相当する部分については、3基の各局部信号生成部に共通の構成として、シンボル同期回路2371およびナイキストフィルタ2372に集約して有している。
3基の局部信号生成部1(2011)〜局部信号生成部3(2013)のそれぞれにおいて用いる搬送波角周波数ω1〜ω3も、図18に示した変調装置1000と同様に、シンボル周波数ω0の間隔で設定されているものとする。各局部信号生成部によって生成されたSSB化された局部信号SLO1(t)〜SLO3(t)は、それぞれ、対応するSSB復調器1(2201)〜SSB復調器3(2203)に対して供給される。
なお、本実施の形態では、局部信号生成手段2010を復調装置2000のSSB復調器1(2201)〜SSB復調器3(2203)とは独立して有しているが、実施の形態1の図1に示した局部信号生成手段201も含む復調装置200の構成全体を3基並列させるようにしてもよい。
[動作原理]
本実施の形態では、図18に示した変調装置1000において、SSB変調器1(1101)の搬送波角周波数ω1をω1=ωc+ω0とし、SSB変調器2(1102)の搬送波角周波数ω2をω2=ωcとし、SSB変調器3(1103)の搬送波角周波数ω3をω3=ωc−ω0とする。すなわち、SSB変調器1(1101)〜SSB変調器3(1103)における各搬送波角周波数ω1〜ω3の間隔はシンボル周波数ω0とする。また、SSB変調器1(1101)により変調される搬送情報をA1(t)、B1(t)、C1(t)、D1(t)とし、SSB変調器2(1102)により変調される搬送情報をA2(t)、B2(t)、C2(t)、D2(t)とし、SSB変調器3(1103)により変調される搬送情報をA3(t)、B3(t)、C3(t)、D3(t)として表す。
SSB変調器1(1101)〜SSB変調器3(1103)では、それぞれ、対応する搬送波角周波数ω1〜ω3を核として4種類のSSB化された局部信号が生成され、変調が行われる。
この場合、図18に示した変調装置1000における変調出力1030(SOFDM−SSB−QAM(ωk,t))は、SSB変調器1(1101)〜SSB変調器3(1103)からそれぞれ出力された変調出力1(1171)〜変調出力3(1173)の和として、実施の形態1における数31式に基づいて次式で表される。
一方、図19に示した復調装置2000では、上記の3種類の搬送波角周波数ω
1〜ω
3毎に、SSB復調器1(2201)〜SSB復調器3(2203)によって、受信信号2020(S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t))から4種類のSSB要素を復調する。このとき、局部信号生成部1(2011)〜局部信号生成部3(2013)において、3種類の搬送波角周波数ω
1〜ω
3毎に、SSB化のための4種類の局部信号(実施の形態1の数29式、数30式のLO
1〜LO
4に相当)を生成する。
上記の数84式に示した受信信号2020(SOFDM−SSB−QAM(ωk,t))の復調について、例えば、SSB復調器1(2201)での復調を例とすると、SSB復調器1(2201)では、搬送波角周波数ω1=ωc+ω0の局部信号によって復調を行う。
まず、4種類の局部信号から構成される第1のSSB要素(LO1−LO4、偶対称USB)、および第2のSSB要素(LO1+LO4、偶対称LSB)による復調について見る。まず、I軸側について、数84式に示したSOFDM−SSB−QAM(ωk,t)のうち、搬送波角周波数ω1=ωc+ω0で搬送されるA1(t)、B1(t)、C1(t)、D1(t)に係る部分について、数29式のLO1の局部信号に相当するu(t)cos(ωc+ω0)tで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
1の局部信号に相当するu(t)cos(ω
c+ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
1の局部信号に相当するu(t)cos(ω
c+ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
1の局部信号に相当するu(t)cos(ω
c+ω
0)tで検波した結果は、上記の数85式〜数87式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
次にQ軸側について、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0で搬送されるA
1(t)、B
1(t)、C
1(t)、D
1(t)に係る部分について、数30式のLO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sin(ω
c+ω
0)tで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sin(ω
c+ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sin(ω
c+ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sin(ω
c+ω
0)tで検波した結果は、上記の数89式〜数91式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
ここで、I軸側の検波結果である上記の数88式と、Q軸側の検波結果である上記の数92式とを加算および減算すると、それぞれ以下の式が得られる。
これらの式は、いずれも{u(t)
2+H[u(t)]
2}、{u(t)
2−H[u(t)]
2}、およびu(t)H[u(t)]の項からなっていることが分かる。検波出力はポテンシャルで扱われているため、上記の数93式および数94式における二乗の形式は電力を表すものではない。これはすなわち、検波出力の帯域幅が二乗、つまり二倍に拡大することを示す。
実施の形態1の数44式、数45式、数47式等において示したように、数93式および数94式に対して積分を施すことで、{u(t)2+H[u(t)]2}、{u(t)2−H[u(t)]2}、u(t)H[u(t)]の成分のうち、{u(t)2+H[u(t)]2}の項のみを保全することができる。しかしながら、その場合でも、数93式および数94式には、周波数シフトを示すcosω0t、sinω0t、cos2ω0t、sin2ω0tの項が含まれており、これらの項が残る結果として、図31に示したように、シンボル関数間の周波数の直交多重性が崩れる。
そこで、本実施の形態では、上述したように、復調装置2000での検波出力における周波数直交多重性を確保するため、変調装置1000および復調装置2000のナイキストフィルタの特性を、実施の形態2で示したものよりもさらに急峻にして、占有帯域幅をシンボル信号の周波数スペクトルの1/2に近付ける。
静特性誤り率1/1000における誤り率特性を、従来のQPSKもしくは16QAMに比して1dB以内とするためには、帯域外への漏洩電力を数パーセントに抑える必要がある。そのためには、ロールオフ率αを0.1以下とすることが望ましいところ、現在の技術ではαを0.1未満とすることも可能である。
ナイキストフィルタのロールオフ特性は、上記の実施の形態2における数81式によって表される。図21は、ロールオフ率αを0.1とした場合のナイキストフィルタの周波数特性の例を示した図である。図中の網掛け部分が、{u(t)2+H[u(t)]2}、{u(t)2−H[u(t)]2}、およびu(t)H[u(t)]が示す隣接チャネルへの漏洩電力を表しており、その電力は全体の約5%である。これをデシベルで示すと−13dB程度であり、従来のQPSKもしくは16QAMでの誤り率特性に比してその劣化は1dB以内となる。従って、変調装置1000および復調装置2000で用いるナイキストフィルタのロールオフ率を0.1以下とすることで、以下に示すように、本実施の形態においてもOFDM化が可能となる。
図22は、ロールオフ率αを0.1とした場合の送信波および受信波の周波数スペクトルの例を示した図である。図22(a)は、ナイキストフィルタのロールオフ率を0.1とした場合の変調装置1000のOFDM化された出力の例を示している。また、図22(b)は、ナイキストフィルタのロールオフ率を0.1とした場合の復調装置2000の乗算出力の例を示している。図示するように、いずれにおいても、各キャリア信号の周波数帯域幅は、シンボル周波数に等しい帯域(2ω0の範囲)にほぼ収まっており、隣接チャネルへの漏洩電力による干渉は少ないことが分かる。以上より、本実施の形態では、OFDM化を実現するため、ナイキストフィルタのロールオフ率を0.1以下とする。
上述した、復調装置2000のSSB復調器1(2201)での検波の例において、上記の数93式は、図1の復調装置200における加算器232からの出力に相当する。また、数94式は、加算器231からの出力に相当する。数93式、数94式には、上述したように、実施の形態1における数36式、数37式と異なり、cosω0t、sinω0t、cos2ω0t、sin2ω0tの項が含まれている。本実施の形態では、これらの項を除去するため、SSB復調器1(2201)における積分器の前段に、ロールオフ率を0.1以下としたルートナイキストフィルタ(RNF)2211、2212を有する。このフィルタを通すことにより、シンボル周波数以上離れた成分、すなわち、cosω0t、sinω0t、cos2ω0t、sin2ω0tの項を除去することができる。
数93式、数94式からcosω0t、sinω0t、cos2ω0t、sin2ω0tの項を除去した結果の式に対して、実施の形態1の場合と同様に−∞〜∞(実際は−2π〜2πで足りる)の区間で積分を施すと、{u(t)2+H[u(t)]2}の項のみが保全される結果、以下の式となり、A1(t)、B1(t)を抽出することができることが分かる。
また、4種類の局部信号から構成される第3のSSB要素(LO
2+LO
3、奇対称USB)、および第4のSSB要素(LO
3−LO
2、奇対称LSB)による復調についても、上記と同様の手順で処理を行う。すなわち、まず、I軸側について、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0で搬送されるA
1(t)、B
1(t)、C
1(t)、D
1(t)に係る部分について、数30式のLO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cos(ω
c+ω
0)tで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cos(ω
c+ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cos(ω
c+ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cos(ω
c+ω
0)tで検波した結果は、上記の数97式〜数99式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
次にQ軸側について、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0で搬送されるA
1(t)、B
1(t)、C
1(t)、D
1(t)に係る部分について、数29式のLO
2の局部信号に相当するu(t)sin(ω
c+ω
0)tで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するu(t)sin(ω
c+ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するu(t)sin(ω
c+ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
2の局部信号に相当するu(t)sin(ω
c+ω
0)tで検波した結果は、上記の数101式〜数103式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
ここで、I軸側の検波結果である上記の数100式と、Q軸側の検波結果である上記の数104式とを加算および減算すると、それぞれ以下の式が得られる。
これらの出力結果に対して、上記と同様にルートナイキストフィルタ2213、2214を通すことでsinω
0、cosω
0、sin2ω
0、cos2ω
0の項を除去し、さらに積分を施して{u(t)
2+H[u(t)]
2}の項のみを残すことで、以下の式のようにC
1(t)、D
1(t)を抽出することができる。
以上に示したように、復調装置2000のSSB復調器1(2201)では、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0の局部信号によって復調を行って、受信信号2020(S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t))からA
1(t)、B
1(t)、C
1(t)、D
1(t)の各搬送情報を抽出することができることが分かる。
同様に、SSB復調器2(2202)では、搬送角周波数ω2=ωcの局部信号によって上記と同様の復調処理を行う。まず、第1のSSB要素(LO1−LO4)、および第2のSSB要素(LO1+LO4)による復調について見る。I軸側について、数84式に示したSOFDM−SSB−QAM(ωk,t)のうち、搬送波角周波数ω1=ωc+ω0で搬送されるA1(t)、B1(t)、C1(t)、D1(t)に係る部分について、LO1の局部信号に相当するu(t)cosωctで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
1の局部信号に相当するu(t)cosω
ctで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
1の局部信号に相当するu(t)cosω
ctで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
1の局部信号に相当するu(t)cosω
ctで検波した結果は、上記の数109式〜数110式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
次にQ軸側について、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0で搬送されるA
1(t)、B
1(t)、C
1(t)、D
1(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sinω
ctで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sinω
ctで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sinω
ctで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sinω
ctで検波した結果は、上記の数89式〜数91式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
ここで、I軸側の検波結果である上記の数112式と、Q軸側の検波結果である上記の数116式とを加算および減算すると、それぞれ以下の式が得られる。
これらの出力結果に対して、上記と同様にルートナイキストフィルタを通すことでsinω
0、cosω
0、sin2ω
0、cos2ω
0の項を除去し、さらに積分を施して{u(t)
2+H[u(t)]
2}の項のみを残すことで、以下の式のようにB
2(t)、A
2(t)を抽出することができる。
また、第3のSSB要素(LO
2+LO
3)、および第4のSSB要素(LO
3−LO
2)による復調では、まず、I軸側について、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0で搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cosω
ctで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cosω
ctで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cosω
ctで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cosω
ctで検波した結果は、上記の数121式〜数123式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
次にQ軸側について、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0で搬送されるA
1(t)、B
1(t)、C
1(t)、D
1(t)に係る部分について、LO
2の局部信号に相当するu(t)sinω
ctで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するu(t)sinω
ctで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するu(t)sinω
ctで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
2の局部信号に相当するu(t)sinω
ctで検波した結果は、上記の数125式〜数127式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
ここで、I軸側の検波結果である上記の数124式と、Q軸側の検波結果である上記の数128式とを加算および減算すると、それぞれ以下の式が得られる。
これらの出力結果に対して、上記と同様にルートナイキストフィルタを通すことでsinω
0、cosω
0、sin2ω
0、cos2ω
0の項を除去し、さらに積分を施して{u(t)
2+H[u(t)]
2}の項のみを残すことで、以下の式のようにC
1(t)、D
1(t)を抽出することができる。
以上に示したように、復調装置2000のSSB復調器2(2202)では、搬送波角周波数ω
2=ω
cの局部信号によって復調を行って、受信信号2020(S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t))からA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)の各搬送情報を抽出することができることが分かる。
同様に、SSB復調器3(2203)では、搬送角周波数ω3=ωc−ω0の局部信号によって上記と同様の復調処理を行う。まず、第1のSSB要素(LO1−LO4)、および第2のSSB要素(LO1+LO4)による復調について見る。I軸側について、数84式に示したSOFDM−SSB−QAM(ωk,t)のうち、搬送波角周波数ω1=ωc+ω0で搬送されるA1(t)、B1(t)、C1(t)、D1(t)に係る部分について、LO1の局部信号に相当するu(t)cos(ωc−ω0)tで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
1の局部信号に相当するu(t)cos(ω
c−ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
1の局部信号に相当するu(t)cos(ω
c−ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
1の局部信号に相当するu(t)cosω
ctで検波した結果は、上記の数133式〜数135式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
次にQ軸側について、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0で搬送されるA
1(t)、B
1(t)、C
1(t)、D
1(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sin(ω
c−ω
0)tで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sin(ω
c−ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sin(ω
c−ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
4の局部信号に相当するH[u(t)]sin(ω
c−ω
0)tで検波した結果は、上記の数137式〜数139式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
ここで、I軸側の検波結果である上記の数136式と、Q軸側の検波結果である上記の数140式とを加算および減算すると、それぞれ以下の式が得られる。
これらの出力結果に対して、上記と同様にルートナイキストフィルタを通すことでsinω
0、cosω
0、sin2ω
0、cos2ω
0の項を除去し、さらに積分を施して{u(t)
2+H[u(t)]
2}の項のみを残すことで、以下の式のようにB
3(t)、A
3(t)を抽出することができる。
また、第3のSSB要素(LO
2+LO
3)、および第4のSSB要素(LO
3−LO
2)による復調では、まず、I軸側について、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0で搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cos(ω
c−ω
0)tで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cos(ω
c−ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cos(ω
c−ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
3の局部信号に相当するH[u(t)]cos(ω
c−ω
0)tで検波した結果は、上記の数145式〜数147式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
次にQ軸側について、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
1=ω
c+ω
0で搬送されるA
1(t)、B
1(t)、C
1(t)、D
1(t)に係る部分について、LO
2の局部信号に相当するu(t)sin(ω
c−ω
0)tで乗算、すなわち検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
2=ω
cで搬送されるA
2(t)、B
2(t)、C
2(t)、D
2(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するu(t)sin(ω
c−ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
同様に、S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)のうち、搬送波角周波数ω
3=ω
c−ω
0で搬送されるA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)に係る部分について、LO
4の局部信号に相当するu(t)sin(ω
c−ω
0)tで検波した場合、次式が得られる。
以上より、数84式に示したS
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t)に対して、LO
2の局部信号に相当するu(t)sin(ω
c−ω
0)tで検波した結果は、上記の数125式〜数127式の和となる。この式に対してローパスフィルタで搬送周波数以上の高調波成分を除去すると、以下の式が得られる。
ここで、I軸側の検波結果である上記の数148式と、Q軸側の検波結果である上記の数152式とを加算および減算すると、それぞれ以下の式が得られる。
これらの出力結果に対して、上記と同様にルートナイキストフィルタを通すことでsinω
0、cosω
0、sin2ω
0、cos2ω
0の項を除去し、さらに積分を施して{u(t)
2+H[u(t)]
2}の項のみを残すことで、以下の式のようにC
3(t)、D
3(t)を抽出することができる。
以上に示したように、復調装置2000のSSB復調器3(2203)では、搬送波角周波数ω
2=ω
c−ω
0の局部信号によって復調を行って、受信信号2020(S
OFDM−SSB−QAM(ω
k,t))からA
3(t)、B
3(t)、C
3(t)、D
3(t)の各搬送情報を抽出することができる。
復調装置2000のSSB復調器1(2201)、SSB復調器2(2202)、およびSSB復調器3(2203)は、それぞれ、上記の手順により取得した多値化された搬送情報A1(t)、B1(t)、C1(t)、D1(t)、A2(t)、B2(t)、C2(t)、D2(t)、およびA3(t)、B3(t)、C3(t)、D3(t)を、図1の復調装置200におけるパラレルシリアル変換器250に相当する箇所でシリアル化して出力する。復調装置2000のマルチプレクサ2030は、送信側におけるデータ系列に復元されて、データ信号2040(Sr(t))となる。
以上に説明したように、本発明の実施の形態3の変復調方式によれば、実施の形態1、2における4種類のSSB要素を用いた変復調方式を用いて、変調側でシンボル周波数間隔で複数チャネルに配置した信号を、受信側にて検波して復調することができ、OFDM化を実現することができる。
(実施の形態4)
上述の実施の形態3の復調装置2000の構成では、例えば、SSB復調器1(2201)において、局部信号LO1およびLO4によるI軸側の検波出力とQ軸側の検波出力との加算・減算により、数93式、数94式を得ているが、これらの式中の{u(t)2+H[u(t)]2}、{u(t)2−H[u(t)]2}、およびu(t)H[u(t)]は、それぞれシンボル周波数の帯域内に収容されている。従って、これらの検波結果を周波数間隔ω0のFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)に入力することで、周波数間隔ω0にある数93式、数94式の検波出力は、分離抽出することができる。局部信号LO2およびLO3による検波出力である数105式、数106式についても同様である。
また、これらの式のうち、{u(t)2+H[u(t)]2}、{u(t)2−H[u(t)]2}、およびu(t)H[u(t)]の項から{u(t)2+H[u(t)]2}のみを抽出するための積分器については、FFTを実行する処理部に内蔵されていることから、当該処理部とは別に設ける必要はない。
また、数93式、数94式、および数105式、数106式は、実施の形態3の図20におけるSSB復調器1(2201)での検波出力、すなわち搬送波角周波数ω1=ωc+ω0の局部信号によって復調した場合の結果を表している。これをFFTにより分離抽出することで、搬送情報A1(t)、B1(t)、C1(t)、D1(t)、A2(t)、B2(t)、C2(t)、D2(t)、およびA3(t)、B3(t)、C3(t)、D3(t)を取得できることが分かる。すなわち、全ての搬送情報を抽出する場合であっても、検波に用いる局部信号は単一の搬送波角周波数のもののみで足りることが分かる。
図23は、上述の実施の形態3における送信波および1つの復調系における検波出力の周波数スペクトルの例を示した図である。図23(a)は、送信波の周波数スペクトルであり、上記の図22(a)の内容と同様である。図23(b)は、例えば、SSB復調器1(2201)での検波出力の周波数スペクトルを示している。周波数スペクトルは、図示するように配置されることから、これらは周波数間隔ω0のFFTによって分離できることが分かる。
[装置構成(復調系)]
図24は、本発明の実施の形態4である変復調方式における復調装置の構成例について概要を示した図である。本実施の形態の復調装置2001における検波の基本的な考え方は、上述の実施の形態1の図1に示した復調装置200とものと同様であるが、本実施の形態では、検波の際に用いる局部信号として、搬送波周波数ωcを有するcosωctおよびsinωctと、シンボル関数u(t)およびこれをヒルベルト変換したH[u(t)]とを、別個に受信波に対して乗算する構成をとる。
SOFDM−SSB−QAM(t)(2020)で表される希望波を含む受信信号2020は、まず、2系統の乗算器2215、2216によって検波される。乗算器2215はI軸側の検波用であり、入力された受信信号2010とcosωctとを乗算し、結果をLPF2217へ出力する。同様に、乗算器2216はQ軸側の検波用であり、受信信号2010とsinωctとを乗算し、結果をLPF2218へ出力する。LPF2217、2218で高周波成分を除去された信号は、それぞれ、A/D変換器2219、2220に入力される。
I軸側において、A/D変換器2219によってデジタルデータ化された出力は、乗算器2221、2222の双方にそれぞれ入力される。乗算器2221は、A/D変換器2219の出力とシンボル関数u(t)とを乗算し、結果をLPF2225へ出力する。また、乗算器2222は、A/D変換器2220の出力と、シンボル関数u(t)をヒルベルト変換したH[u(t)]とを乗算し、結果をLPF2226へ出力する。なお、LPF2225、2226は、それぞれ、例えば、搬送周波数以上の成分を除去する機能を併せ持つナイキストフィルタによって構成される。
同様に、Q軸側において、A/D変換器2220によってデジタルデータ化された出力は、乗算器2223、2224の双方にそれぞれ入力される。乗算器2223は、A/D変換器2220の出力とシンボル関数u(t)とを乗算し、結果をLPF2227へ出力する。また、乗算器2224は、A/D変換器2220の出力とH[u(t)]とを乗算し、結果をLPF2228へ出力する。LPF2227、2228についても、それぞれ、例えば、搬送周波数以上の成分を除去する機能を併せ持つナイキストフィルタによって構成される。
LPF2225〜2228により不要な高域成分を除去された信号は、それぞれ、I軸側のFFT処理部(FFT1−I2271、FFT2−I2273、FFT3−I2275、FFT4−I2277)、およびQ軸側のFFT処理部(FFT1−Q2272、FFT2−Q2274、FFT3−Q2276、FFT4−Q2278)の双方に入力される。各FFT処理部は、それぞれ、内部の出力段に積分器2241〜2248を有している。
4系統の各FFT処理部の積分器からの出力は、周波数間隔ω0の3種類の搬送波角周波数毎に分離された3種類の要素、すなわち、A1(t)、B1(t)、C1(t)、D1(t)に係る要素と、A2(t)、B2(t)、C2(t)、D2(t)に係る要素と、A3(t)、B3(t)、C3(t)、D3(t)に係る要素とを含んでおり、これらの各要素は、3種類の搬送波角周波数毎に対応する合成部2281〜2283にそれぞれ入力される。
3種類の搬送波角周波数にそれぞれ対応した各合成部2281〜2283では、それぞれ、入力された複数の信号を合成して4系統の信号を作成し、対応する後段の加算減算部2291〜2293に出力する。例えば、A1(t)、B1(t)、C1(t)、D1(t)に係る要素が入力される合成部2281では、FFT1−I2271からの入力とFFT3−Q2276からの入力とを合成して合成出力1(2251)を出力する。また、FFT2−Q2274からの入力とFFT4−I2277からの入力とを合成して合成出力2(2252)を出力する。また、FFT1−Q2272からの入力とFFT3−I2275からの入力とを合成して合成出力3(2253)を出力する。また、FFT2−I2273からの入力とFFT4−Q2278からの入力とを合成して合成出力4(2254)を出力する。他の合成部2282、2283についても同様である。
各加算減算部2291〜2293では、対応する合成部2281〜2283から出力された4系統の信号を、加減算することで各搬送情報を抽出し、P/S変換器2250に出力する。例えば、A1(t)、B1(t)、C1(t)、D1(t)に係る要素が入力される加算減算部2291では、合成出力1(2251)と合成出力4(2254)に対して、加算器2231により減算し、加算器2232により加算することで、I軸側の搬送情報であるA1(t)およびB1(t)を算出する。同様に、合成出力2(2252)と合成出力3(2253)に対して、加算器2233により減算し、加算器2234により加算することで、Q軸側の搬送情報であるC1(t)およびD1(t)を算出する。他の加算減算部2292、2293についても同様である。
P/S変換器250は、各加算減算部2291〜2293からそれぞれ入力された4系統の並列信号を整理統合して直並列変換することによって、1系統のデータ信号2260(Sr(t))を生成する。
本実施の形態の復調装置2001は、さらに、検波の際に用いる局部信号である、cosωctおよびsinωctと、シンボル関数u(t)およびこれをヒルベルト変換したH[u(t)]を生成する局部信号発生部を有する。
図25は、本実施の形態における局部信号発生部の構成例について概要を示した図である。局部信号発生部2002は、復調装置2001と同様に、受信信号2020を入力とする。受信信号2020は、搬送波同期回路2051と、シンボル同期回路2052の双方に入力される。
搬送波同期回路2051では、受信信号2020の搬送波に対する同期がとられる。同期された出力は、局部周波数ωcのシンセサイザ2053に入力され、その周波数制御に用いられる。シンセサイザ2053の出力をcosωctとして得るとともに、これを移相器2054によって90°(π/2)だけ位相をシフトさせてsinωctを得る。
搬送波同期回路2051からの出力は、シンボル同期回路2052にも入力され、同期制御に用いられる。シンボル同期回路2052は、実施の形態1の図1に示した局部信号生成手段201のシンボル同期回路271と同様であり、受信信号2020に含まれるシンボル信号のタイミングを抽出し、受信信号2020に同期したシンボル信号を生成して出力する。このシンボル信号は、シンボル関数生成部2055、およびヒルベルト変換シンボル関数生成部2056の双方に入力され、u(t)およびH[u(t)]がそれぞれ生成される。
得られた4種類の信号(cosωct、sinωct、u(t)、H[u(t)])は、局部信号DSLO(t)として、図24に示した復調装置2001に提供される。
図26は、シンボル関数生成部2055およびヒルベルト変換シンボル関数生成部2056の信号生成方法を説明する図である。シンボル関数生成部2055は、例えば、4シンボル区間長、すなわち4倍オーバーサンプリングに相当する速度でのシンボル関数u(t)のデータを格納するデータレジスタとして構成され、図26(a)に示すように、これらのデータを時系列で送出するものである。同様に、ヒルベルト変換シンボル関数生成部2056は、例えば、4シンボル区間長、すなわち4倍オーバーサンプリングに相当する速度でのシンボル関数u(t)のヒルベルト変換された関数H[u(t)]のデータを格納するデータレジスタとして構成され、図26(b)に示すように、これらのデータを時系列で送出するものである。
[装置構成(変調系)]
上述した本実施の形態の復調装置2001の構成では、FFTを用いることで、単一の搬送波角周波数によって複数の角周波数の搬送波に対応するものとしているが、この考え方は変調系においても適用することができる。
変調系からのOFDM化された変調出力(SOFDM−SSB−QAM(ωk,t))は、上述の数84式のように表されるが、この式を展開してωcとωkを分離すると次式が得られる。
この数157式に示す変調出力を得るための変調系の装置構成は図27に示す通りである。図27は、本発明の実施の形態4である変復調方式における変調装置の構成例について概要を示した図である。変調装置1001において、伝送すべき情報信号1110(S
r(t))は、マルチプレクサ(MUX)1010に入力される。マルチプレクサ1010は、情報信号1110をマルチキャリア化の数に応じてI軸とQ軸にデータを並列化するだけではなく、適宜、変調多値数の変更に応じて、対応するコンスタレーションにデータを配置するマッピングを行うものとする。
図27の例では、OFDMによりマルチキャリア化する際の搬送波の数を3とした場合を示しており、マルチプレクサ1010からは、各搬送波によって伝送する対象となるS1(t)、S2(t)、S3(t)の3つの出力を得る。これらの出力は、変調部1200において、それぞれ、レジスタ1(1211)、レジスタ2(1212)、レジスタ3(1213)に提供される。各レジスタは、それぞれ、各搬送波を核とする4種類のSSB要素のI軸およびQ軸の振幅と極性情報を保持しており、対応する振幅・極性制御部(図中の振幅・極性制御部1(1221)、振幅・極性制御部2(1222)、振幅・極性制御部3(1223))に対して、振幅と極性についての制御内容を送信する。
各振幅・極性制御部は、それぞれ、対応するレジスタ群(図中のレジスタ1231、1232、1233)に対して振幅と極性の指示を与え、これに対応するI軸もしくはQ軸の振幅と極性のデータを取り出して、対応するマルチプレクサ(図中のMUX1i、MUX1q、MUX2i、MUX2q、MUX3i、MUX3q)に対して出力する。
図28は、図27に示した変調装置1001における各振幅・極性制御部でのデータの取り扱い形態の例について概要を示した図である。図28(a)では、QPSKモードでの振幅・極性情報が“01”もしくは“11”となることを示している。また、図28(b)では、16QAMモードでの振幅・極性情報が“011”、“001”、“101”、“111”となることを示している。また、図28(c)では、64QAMモードでの振幅・極性情報が“01111”、“00111”、“00011”、“00001”、“10001”、“10011”、“10111”、“11111”となることを示している。
各振幅・極性制御部は、このような振幅・極性情報に基づいて、対応するレジスタ群(図中のレジスタ1231、1232、1233)のうち、レジスタRNF1、RNF2、RNF3、RNF4からは、対応する極性および振幅のシンボル関数データ列を取り出す。また、レジスタRNF1H、RNF2H、RNF3H、RNF4Hからは、対応する極性および振幅のシンボル関数のヒルベルト変換データ列を取り出す。シンボル関数のデータ系列を保持するレジスタRNF1〜4、およびシンボル関数のヒルベルト変換データ列を保持するレジスタRNF1H〜4Hは、4種類のSSB要素に対応してそれぞれ4系列有している。
図29は、振幅・極性制御部が有する振幅および極性の状況と、レジスタ群内の各レジスタとの関係を示した図である。図29(a)は、シンボル関数のデータ系列を示し、図29(b)は、シンボル関数に対するヒルベルト変換関数のデータ系列を示している。いずれにおいても、左側の図は、振幅・極性制御部が有する振幅および極性の情報の例を示している。ここでは、Si(t)(図27の例では、S1(t)、S2(t)、S3(t))のそれぞれに含まれるAi(t) ̄、Bi(t) ̄、Ci(t) ̄、Di(t) ̄の振幅・極性情報を示しており、シンボル期間T内では変化しない一定の値をとる。
中央の図は、レジスタ群内の各レジスタ(RNF1〜4)が格納するシンボル関数のデータ系列の基本形(図29(a))、および各レジスタ(RNF1H〜4H)が格納するシンボル関数に対するヒルベルト変換関数のデータ系列の基本形(図29(b))を示している。
左側の図に示す振幅および極性の情報と、中央の図に示すデータ系列の内容とを乗算することで、右側の図に示すAi(t)、Bi(t)、Ci(t)、Di(t)、およびH[Ai(t)]、H[Bi(t)]、H[Ci(t)]、H[Di(t)]のデータ系列の情報を得ることができる。しかしながら、演算や処理に係る時間や負荷を低減させるため、本実施の形態では、乗算結果についてサンプリングのタイミング毎の値を予め全てレジスタに格納しておき、振幅・極性情報の値に基づいて対応するデータ系列をレジスタから取り出すものとしている。
変調部1200の各マルチプレクサ(図27のMUX1i、MUX1q、MUX2i、MUX2q、MUX3i、MUX3q)は、レジスタ1231〜1233内の各レジスタから取り出されたデータを合成して、第1搬送波用I軸信号1241i、第2搬送波用I軸信号1242i、第3搬送波用I軸信号1243i、および第1搬送波用Q軸信号1241q、第2搬送波用Q軸信号1242q、第3搬送波用Q軸信号1243qを生成する。生成した信号のうち、I軸信号は、2系統のIFFT(Inverse FFT)処理部1311、1312にそれぞれ同じ内容が入力される。
IFFT処理部1311は、cosに係るIFFT処理を行い、上記の数157式におけるI軸成分のcos(2?i)ω0tに係る部分を生成する。また、IFFT処理部1312は、sinに係るIFFT処理を行い、数157式におけるI軸成分のsin(2?i)ω0tに係る部分を生成する。同様に、IFFT処理部1321は、上記の数157式におけるQ軸成分のcos(2?i)ω0tに係る部分を生成する。また、IFFT処理部1322は、数157式におけるQ軸成分のsin(2?i)ω0tに係る部分を生成する。
I軸側のIFFT処理部1311およびQ軸側のIFFT処理部1322からの出力は、加算器1410に入力されて合成され、D/A変換器1510に入力されてアナログ信号化される。同様に、Q軸側のIFFT処理部1321およびI軸側のIFFT処理部1312からの出力は、加算器1420に入力されて合成され、D/A変換器1520に入力されてアナログ信号化される。
このようにして得られたI軸側の出力IkとQ軸側の出力Qkは、それぞれ、乗算器1147、1148に入力される。乗算器1147には、局部信号発生器1150で発生された局部信号(cosωct)が入力され、乗算器1148には、移相器1160によって90°(π/2)だけ位相がシフトされた局部信号(sinωct)が入力される。これにより、乗算器1147は、信号Ikをcosωctで乗算し、乗算器1148は、信号Qkをsinωctで乗算する。加算器1149は、乗算器1147の出力と乗算器1148の出力とを加算する。これにより、周波数直交多重化された変調出力1170(SOFDM−SSB−QAM(ωk,t))が得られる。
以上に説明したように、本発明の実施の形態4である変復調方式によれば、実施の形態3と同様の4種類のSSB要素を用いた変復調方式を用いたOFDM化において、複数の搬送波信号として、FFTもしくはIFFTに内蔵する周波数源を利用することが可能であり、変調装置1001や復調装置2001の構成を簡略化することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現することができる。また、演算処理等に係る部分をソフトウェアとして実装することも可能である。