JP6254655B1 - 亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法 - Google Patents
亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6254655B1 JP6254655B1 JP2016180751A JP2016180751A JP6254655B1 JP 6254655 B1 JP6254655 B1 JP 6254655B1 JP 2016180751 A JP2016180751 A JP 2016180751A JP 2016180751 A JP2016180751 A JP 2016180751A JP 6254655 B1 JP6254655 B1 JP 6254655B1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cast iron
- spheroidal graphite
- heat treatment
- graphite cast
- producing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
- 238000005266 casting Methods 0.000 title claims abstract description 77
- 229910001141 Ductile iron Inorganic materials 0.000 title claims abstract description 61
- 238000004519 manufacturing process Methods 0.000 title claims abstract description 39
- 238000010438 heat treatment Methods 0.000 claims abstract description 64
- 238000001816 cooling Methods 0.000 claims abstract description 37
- 229910000859 α-Fe Inorganic materials 0.000 claims abstract description 34
- 229910001566 austenite Inorganic materials 0.000 claims abstract description 31
- 238000011282 treatment Methods 0.000 claims abstract description 27
- 229910001562 pearlite Inorganic materials 0.000 claims abstract description 25
- 239000011159 matrix material Substances 0.000 claims abstract description 10
- 239000000203 mixture Substances 0.000 claims description 20
- XEEYBQQBJWHFJM-UHFFFAOYSA-N iron Substances [Fe] XEEYBQQBJWHFJM-UHFFFAOYSA-N 0.000 claims description 17
- 229910052742 iron Inorganic materials 0.000 claims description 6
- 239000002184 metal Substances 0.000 claims description 6
- 229910052751 metal Inorganic materials 0.000 claims description 6
- OKTJSMMVPCPJKN-UHFFFAOYSA-N Carbon Chemical compound [C] OKTJSMMVPCPJKN-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 48
- 229910002804 graphite Inorganic materials 0.000 description 47
- 239000010439 graphite Substances 0.000 description 47
- 230000000694 effects Effects 0.000 description 23
- 238000005087 graphitization Methods 0.000 description 17
- 229910052802 copper Inorganic materials 0.000 description 15
- 230000000052 comparative effect Effects 0.000 description 12
- 229910052759 nickel Inorganic materials 0.000 description 11
- 238000000034 method Methods 0.000 description 10
- 235000019589 hardness Nutrition 0.000 description 9
- 230000008569 process Effects 0.000 description 8
- 230000001737 promoting effect Effects 0.000 description 8
- 229910001567 cementite Inorganic materials 0.000 description 7
- KSOKAHYVTMZFBJ-UHFFFAOYSA-N iron;methane Chemical compound C.[Fe].[Fe].[Fe] KSOKAHYVTMZFBJ-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 7
- 230000000087 stabilizing effect Effects 0.000 description 7
- 230000007423 decrease Effects 0.000 description 5
- 239000000047 product Substances 0.000 description 5
- 230000008859 change Effects 0.000 description 4
- 239000000463 material Substances 0.000 description 4
- 229910001018 Cast iron Inorganic materials 0.000 description 3
- 229910001037 White iron Inorganic materials 0.000 description 3
- 229910000734 martensite Inorganic materials 0.000 description 3
- 238000005728 strengthening Methods 0.000 description 3
- IJGRMHOSHXDMSA-UHFFFAOYSA-N Atomic nitrogen Chemical compound N#N IJGRMHOSHXDMSA-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 2
- 229910001296 Malleable iron Inorganic materials 0.000 description 2
- 238000005469 granulation Methods 0.000 description 2
- 230000003179 granulation Effects 0.000 description 2
- 239000012535 impurity Substances 0.000 description 2
- 230000002401 inhibitory effect Effects 0.000 description 2
- 239000002054 inoculum Substances 0.000 description 2
- 239000002994 raw material Substances 0.000 description 2
- 230000009466 transformation Effects 0.000 description 2
- XLYOFNOQVPJJNP-UHFFFAOYSA-N water Substances O XLYOFNOQVPJJNP-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 2
- 229910052726 zirconium Inorganic materials 0.000 description 2
- 229910017112 Fe—C Inorganic materials 0.000 description 1
- 241000446313 Lamella Species 0.000 description 1
- 229910001035 Soft ferrite Inorganic materials 0.000 description 1
- 229910000831 Steel Inorganic materials 0.000 description 1
- 230000009471 action Effects 0.000 description 1
- 239000000654 additive Substances 0.000 description 1
- 230000000996 additive effect Effects 0.000 description 1
- 230000008901 benefit Effects 0.000 description 1
- 229910052799 carbon Inorganic materials 0.000 description 1
- 238000002425 crystallisation Methods 0.000 description 1
- 230000008025 crystallization Effects 0.000 description 1
- 230000005496 eutectics Effects 0.000 description 1
- 238000005562 fading Methods 0.000 description 1
- 230000002349 favourable effect Effects 0.000 description 1
- 230000014759 maintenance of location Effects 0.000 description 1
- 238000002844 melting Methods 0.000 description 1
- 230000008018 melting Effects 0.000 description 1
- 238000002156 mixing Methods 0.000 description 1
- 229910052757 nitrogen Inorganic materials 0.000 description 1
- 239000002245 particle Substances 0.000 description 1
- 238000010587 phase diagram Methods 0.000 description 1
- 229910052698 phosphorus Inorganic materials 0.000 description 1
- 230000000704 physical effect Effects 0.000 description 1
- 239000002244 precipitate Substances 0.000 description 1
- 239000006104 solid solution Substances 0.000 description 1
- 239000010959 steel Substances 0.000 description 1
Images
Landscapes
- Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)
Abstract
Description
また剛性と摺動性を満足する素材としては可鍛鋳鉄がある。しかし可鍛鋳鉄の場合は、鋳造時には白鋳鉄で、それを黒鉛化熱処理するという製造方法となり、鋳造時に鋳巣が出易いため大きな押し湯が必要となって歩留まりが悪くなる問題、また黒鉛化熱処理に長時間を要する問題があり、コストも高くなる。また白鋳鉄を黒鉛化処理して得られる黒鉛は塊状の黒鉛になっているために、球状黒鉛とは言えず球状化率が悪く、伸びが悪い。
これらの問題を解決するために本出願人は、特願2015−54631号において、亜共晶球状黒鉛鋳鉄を提供した。該出願に係る亜共晶球状黒鉛鋳鉄では、鋳放しのままで、セメンタイトが晶出することなく、よって白鋳鉄化することなく、しかも晶出する黒鉛の面積率が小さく、黒鉛球状化率が高い、高ヤング率を有する亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物を提供できるメリットがある。
上記特許文献2の発明は、亜共晶球状黒鉛鋳鉄に関し、鋳放しのままでも遊離セメンタイトが晶出することなく、晶出する黒鉛の面積率が小さく、黒鉛球状化率が高い、高ヤング率の機械的性質を得ることができる。しかし鋳放しのままの場合には、肉厚によって組織の相異が大きくなり易く、硬度差等の機械的性質のバラツキが大きくなる問題がある。
溶湯から一旦鋳造してなる出発鋳物を、先ず900〜1100℃の第1熱処理温度で、0.5〜6時間保持して、基地をオーステナイト化させ、次に炉内温度を降温して700〜900℃の第2熱処理温度で、0.5〜15時間保持して、基地を初析フェライトとオーステナイトからなる組織とし、次に第2熱処理温度から0.5〜60℃/分の第2冷却処理速度で常温まで冷却処理して、オーステナイトからパーライトとフェライトを析出させ、基地を初析フェライト、パーライト、析出フェライトからなる組織とすることを第1の特徴としている。
また本発明の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法は、上記第1の特徴に加えて、第2熱処理温度を730〜850℃とし、第2熱処理温度からの第2冷却処理速度を0.5〜30℃/分としたことを第2の特徴としている。
また本発明の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法は、上記第2の特徴に加えて、第2熱処理温度を750〜810℃とし、第2熱処理温度からの第2冷却処理速度を1〜30℃/分としたことを第3の特徴としている。
また本発明の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法は、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、質量パーセントで、C:1.5〜2.7%、Si:1.0〜4.5%、Al:0.01〜0.2%、Cu+Ni:0.01〜2.0%、Mg:0.015〜0.060%を含有し、残部がFeからなる成分組成を有することを第4の特徴としている。
また本発明の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法は、上記第4の特徴に加えて、質量パーセントで、C:1.5〜2.7%、Si:1.0〜4.5%、Al:0.01〜0.2%、Ni:0.01〜2.0%、Cu+Ni:0.01〜2.0%、Mg:0.015〜0.060%を含有し、残部がFeからなる成分組成を有することを第5の特徴としている。
また本発明の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法は、上記第5の特徴に加えて、質量パーセントで、C:1.5〜2.7%、Si:1.0〜4.5%、Al:0.01〜0.2%、Ni:0.05〜1.6%、Cu:0.05〜1.6%、Cu+Ni:0.1〜2.0%、Mg:0.015〜0.060%を含有し、残部がFeからなる成分組成を有することを第6の特徴としている。
また本発明の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法は、上記第6の特徴に加えて、質量パーセントで、C:1.5〜2.7%、Si:1.0〜4.5%、Al:0.01〜0.2%、Ni:0.1〜1.2%、Cu:0.1〜1.2%、Cu+Ni:0.2〜1.6%、Mg:0.015〜0.060%を含有し、残部がFeからなる成分組成を有することを第7の特徴としている。
また本発明の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法は、上記第1〜第7の何れかの特徴に加えて、質量パーセントで、C:1.5〜2.5%、Si:1.6〜4.0%とすることを第8の特徴としている。
また本発明の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法は、上記第8の特徴に加えて、質量パーセントで、C:1.5〜2.4%、Si:1.8〜3.5%とすることを第9特徴としている。
また本発明の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法は、上記第1〜第9の何れかの特徴に加えて、質量パーセントで、Mn:1.0%未満とすることを第10の特徴としている。
また請求項2に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、熱処理における第2熱処理温度を730〜850℃に限定し、第2熱処理温度からの第2冷却処理速度を0.5〜30℃/分と限定することで、一層容易、確実に、強度、靱性、摺動性に優れ、且つ肉厚による機械的性質のバラツキが少ない亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物を製造することが可能となる。
また請求項3に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法によれば、上記請求項2に記載の構成による作用効果に加えて、第2熱処理温度を更に750〜810℃と限定し、第2熱処理温度からの第2冷却処理速度を更に1〜30℃/分と限定することにより、より一層容易、確実に、強度、靱性、摺動性に優れ、且つ肉厚による機械的性質のバラツキが少ない亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物を製造することができる。
また請求項5に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法によれば、上記請求項4に記載の構成による作用効果に加えて、Niを0.01〜2.0質量%、CuとNiの総量を0.01〜2.0質量%とすることにより、より一層、黒鉛化の促進を図ることができ、確実に黒鉛面積率が小さく、黒鉛球状化率が高い、高ヤング率の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物を製造することが可能となる。
また請求項6に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法によれば、上記請求項5に記載の構成による作用効果に加えて、Niを0.05〜1.6質量%、Cuを0.05〜1.6質量%、CuとNiの総量を0.1〜2.0質量%とすることにより、更に一層、黒鉛化の促進を図ることができ、より確実に黒鉛面積率が小さく、黒鉛球状化率が高い、高ヤング率の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物を製造することが可能となる。
また請求項7に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法によれば、上記請求項6に記載の構成による作用効果に加えて、Niを0.1〜1.2質量%、Cuを0.1〜1.2質量%、CuとNiの総量を0.2〜1.6質量%とすることにより、更により一層、黒鉛化の促進を図ることができ、更により確実に黒鉛面積率が小さく、黒鉛球状化率が高い、高ヤング率の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物を製造することが可能となる。
また請求項9に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法によれば、上記請求項8に記載の構成による作用効果に加えて、Cを1.5〜2.4質量%、Siを1.8〜3.5質量%とすることで、基地中の黒鉛面積率が小さく、黒鉛球状化率の高い、より高ヤング率の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物を、より一層確実に製造することが可能となる。
また請求項10に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法によれば、上記請求項1〜9の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、Mnを1.0質量%未満とすることで、共晶セメンタイトの晶出を抑制することができ、黒鉛化が十分になされた亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物を製造することが可能となる。
亜共晶鋳鉄のCの含有量は、前提として4.3%未満ということになるが、Cの含有量が多くなりすぎると、黒鉛面積率が増加して、機械的性質が劣る。このためCの含有量は、2.7%以下とする。
Cの含有量が2.7%を超えると、基地中の黒鉛の量が多くなって黒鉛面積率が9%を超え易く、そうなると機械的性質としてのヤング率が180GPa未満になり易い。またCの含有量が1.5%未満では、黒鉛が晶出し難くなり、遊離セメンタイトが生成する。
Cの含有量は、得られる亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物が黒鉛面積率9%以下、ヤング率が180GPa以上となることを考慮して、1.5〜2.5%がより好ましく、更に好ましくは1.5〜2.4%とするのがよい。
なお、ヤング率は黒鉛面積率の影響が大きいため、熱処理によって組織が変わってもヤング率に大きな影響はない。
Siは強い黒鉛化作用があり、添加量の1/3の割合で炭素当量に含まれる。1.0%未満では黒鉛化作用を十分発揮させることができない。またSiはフェライト基地に固溶し、4.5%を超えると靱性を大きく下げる。
Siの含有量は、Cの黒鉛化促進と基地への固溶(靱性の低下を招く)を考慮して、1.6〜4.0%が好ましく、更に好ましくは1.8〜3.5%とするのがよい。
本発明ではAlを添加、含有させるのが1つの特徴である。
AlはSiと同様に、強い黒鉛化促進作用がある。また溶湯中の窒素濃度を下げ、セメンタイトの発生を抑制する作用がある。しかし0.2%以上添加すると、湯流れが悪くなる。また0.01%未満では効果が薄い。
Mgの含有量は0.015〜0.060%とする。
Mgは溶湯中で気化し、その気泡中にCが拡散して、球状黒鉛が生成されるため、必須である。0.060%を超えると、フェーディングが速く、温度の低下が大きくなるため、好ましくない。また0.015%未満では、黒鉛が自由に成長して片状になり易いので、好ましくない。
Niを含有させる場合は、0.01〜2.0%とする。2.0%を超えると、フェライト基地の脆化につながる。また0.01%未満では効果が薄い。
Niの含有量は、黒鉛化促進作用、オーステナイト安定化作用、基地強化作用、フェライト基地の脆化作用を考慮して、0.05〜1.6%がより好ましく、更には0.1〜1.2%が最も好ましい。
Cuを含有させる場合は、0.01〜2.0%とする。2.0%を超えるとパーライト基地を脆化し、靱性が低下し、また黒鉛球状化を阻害する。また0.01%未満では効果が薄い。
Cuの含有量は、黒鉛化促進作用、オーステナイト安定化作用、耐力向上作用、パーライト基地の脆化作用、黒鉛球状化阻害作用を考慮して、0.05〜1.6%が好ましく、更には0.1〜1.2%が最も好ましい。
Ni+Cuの合計量としては、0.01〜2.0%とする。0.01%未満では黒鉛化促進効果が薄い。また2.0%を超えると基地の脆化につながる。
Ni+Cuの合計含有量は、黒鉛化促進作用、オーステナイト安定化作用、耐力向上作用、基地の強化と脆化の作用、黒鉛球状化阻害作用を考慮して、0.1〜2.0%がより好ましく、更には0.2〜1.6%が最も好ましい。
なお、CuとNiのオーステナイト安定化作用は、熱処理をよりやり易くする効果があるので、含有させるのがよく、多く入れるほどその効果がより得られる。
また同様に、PやSは実際の製品では、いわゆる不純物として混入され得るが、本発明ではそれらの不純物は、積極的に含有させる対象ではない。
なお黒鉛化促進のため、Zr、Ca、Ba等を含有する接種剤を溶湯に添加するようにしてもよい。
先ず上記で説明した亜共晶球状黒鉛鋳鉄の成分組成を持つように原料を調整し、これを電気炉に入れ、1350〜1550℃で1時間溶融し、その後1550℃で取鍋に移して黒鉛球状化処理を施し、1450℃で鋳型に鋳込む。Alは溶解後に溶湯に添加する。また必要に応じて、Zr、Ca、Ba等を含有する接種剤を鋳込む。その後、所定の形状に鋳込む。
鋳放し状態の鋳物の組織は、球状黒鉛とフェライト、若しくは球状黒鉛とフェライトとパーライト、若しくは球状黒鉛とパーライトとなる。
上記の鋳込み工程で得られた鋳放し状態の鋳造品を用い、先ず第1熱処理としてオーステナイト化処理を行う。
第1熱処理であるオーステナイト化処理は、前記一旦鋳放し鋳造したものを、第1熱処理温度である900〜1100℃に加熱して保持し、組織をオーステナイト化することにより行う。この第1熱処理(オーステナイト化処理)温度は、好ましくは900〜1050℃、更に好ましくは950〜1050℃とするのがよい。
前記900〜1100℃での保持時間は、例えば30分〜6時間とすることができる。好ましくは、基地組織のオーステナイト化が十分に行え、且つ無駄な加熱エネルギーの低減のため、1〜5時間がよく、更に好ましくは1〜3時間がよい。
次に第1熱処理により完全にオーステナイト化された鋳物を、第1熱処理温度(オーステナイト化温度)から、第1冷却処理して、初析フェライトが析出する温度まで降温する。
第1冷却処理は、鋳物を炉内に入れたままでの降温、即ち炉冷により行う。第1冷却処理速度は、炉の大きさにもよるが、鋳物の降温が炉内の降温速度に追従できる速度であればよい。
第1熱処理温度から第1冷却処理により降温される第2熱処理温度は、初析フェライトが析出する温度として、700〜900℃とする。
第2熱処理温度は、好ましくは730〜850℃、更に好ましくは750〜810℃とするのがよい。また第2熱処理温度での保持時間は0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間、更に好ましくは1〜6時間とする。
第2熱処理により、鋳物の組織は初析フェライトとオーステナイトの状態となる。
第2熱処理の保持時間を調節することで、初析フェライトとオーステナイトの比率を調整することが可能となる。そしてオーステナイトを後の第2冷却処理によりパーライトにすることで、結論的には、第2熱処理の保持時間を調節することで、熱処理後の鋳物組織におけるフェライトとパーライトの比率を調整することができる。
前記第2熱処理がなされた鋳物は、第2冷却処理され、常温に至る。
第2冷却処理では、第2熱処理により初析フェライトとオーステナイトとからなる組織における、オーステナイトを、パーライトと冷却処理中に生じたフェライトとからなる組織にする。
第2冷却処理速度が炉冷等、遅すぎる場合には、オーステナイトのフェライト化が進んで、組織が不均一になってしまう。一方、水冷等、速すぎる場合は、オーステナイトがマルテンサイトに変態してしまうため、組織の脆化につながり、好ましくない。
第2冷却処理速度は、マルテンサイト変態が生じない程度に速い冷却処理速度として、例えば強制空冷程度が好ましいと言える。
第2冷却測度は、数値的には0.5〜60℃/分とする。第2冷却処理は、鋳物が常温になるまで行う。
第2冷却処理速度は、オーステナイトのフェライト化防止、マルテンサイトの発生防止の観点から、好ましくは0.5〜30℃/分がよく、更に好ましくは1〜30℃/分がよい。
よって本発明の成分組成と熱処理により、強度、靱性(衝撃特性)、摺動性に優れると共に、肉厚差による機械的性質のバラツキが少ない、亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物を安定して提供できる。
また前記共存領域の中で、温度の高い領域ではオーステナイトの割合が大きく、オーステナイトは冷却処理時に硬いパーライトになるため、硬めの組織になり、高強度の機械的性質を持つことになる。同様に、前記共存領域の中で温度の低い領域では、軟らかいフェライトの割合が多くなり、延性の良い組織になる。
実施例1〜9、比較例1の成分組成を表1に示す。
結果を表4に示す。
また各実施例1〜9、比較例1についての機械的性質として、肉厚10mmのものにおける0.2%耐力(N/mm2)、ヤング率(GPa)、引張強さ(N/mm2)、伸び(%)を、併せて表4に示す。
よって比較例1の鋳物は、伸びはよいが、強度が低くなる。表4では引張強さが716.3(N/mm2)で低い。
また比較例1では、組織変化が黒鉛粒数に依存するため、黒鉛粒数が肉厚差により変化(413個、335個、98個)すると、実際には肉厚差で組織が変化し、そのため表4に示すように、肉厚差による硬度変化(89、91、95HRB)が生じる。即ち、肉厚差で機械的強度が変化し易い。
また同様に、実施例1〜9においては、肉厚が5mm、10mm、50mmと変化しても、硬度(HRB)の変化は少ないことがわかる。その理由は、本発明では、肉厚差による冷却速度等の変化によって、黒鉛粒数や黒鉛寸法に変化が生じても、鋳物基地におけるフェライトとパーライトとの比率を一定にすることができ、基地の硬度を肉厚差によらず安定させることができるからである。
実施例1〜9では、全体として引張強度が大であり、しかも伸びも良好であることがわかる。即ち、実施例1〜9においては、何れも引張強さが770N/mm2以上で、伸びも10.0%以上の良好な機械的性質を示している。
実施例1〜9では、第2熱処理温度が850℃〜760℃の範囲で温度が下がると、フェライト量が低下し、パーライト量が増加する傾向がわかる。またそれに伴って、パーライト量が増加するにつれて、硬度、引張強さが増加する傾向がわかる。
Claims (10)
- 質量パーセントで、
C :1.5〜2.7%
Si :1.0〜4.5%
Al :0.01〜0.2%
Mg :0.015〜0.060%
を含有し、残部がFeからなる成分組成を有し、
溶湯から一旦鋳造してなる出発鋳物を、先ず900〜1100℃の第1熱処理温度で、0.5〜6時間保持して、基地をオーステナイト化させ、次に炉内温度を降温して700〜900℃の第2熱処理温度で、0.5〜15時間保持して、基地を初析フェライトとオーステナイトからなる組織とし、次に第2熱処理温度から0.5〜60℃/分の第2冷却処理速度により常温まで冷却して、オーステナイトからパーライトとフェライトを析出させ、基地を初析フェライト、パーライト、析出フェライトからなる組織とすることを特徴とする亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。 - 第2熱処理温度を730〜850℃とし、第2熱処理温度からの第2冷却処理速度を0.5〜30℃/分としたことを特徴とする請求項1に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。
- 第2熱処理温度を750〜810℃とし、第2熱処理温度からの第2冷却処理速度を1〜30℃/分としたことを特徴とする請求項2に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。
- 質量パーセントで、
C :1.5〜2.7%
Si :1.0〜4.5%
Al :0.01〜0.2%
Cu+Ni :0.01〜2.0%
Mg :0.015〜0.060%
を含有し、残部がFeからなる成分組成を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。 - 質量パーセントで、
C :1.5〜2.7%
Si :1.0〜4.5%
Al :0.01〜0.2%
Ni :0.01〜2.0%
Cu+Ni :0.01〜2.0%
Mg :0.015〜0.060%
を含有し、残部がFeからなる成分組成を有することを特徴とする請求項4に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。 - 質量パーセントで、
C :1.5〜2.7%
Si :1.0〜4.5%
Al :0.01〜0.2%
Ni :0.05〜1.6%
Cu :0.05〜1.6%
Cu+Ni :0.1〜2.0%
Mg :0.015〜0.060%
を含有し、残部がFeからなる成分組成を有することを特徴とする請求項5に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。 - 質量パーセントで、
C :1.5〜2.7%
Si :1.0〜4.5%
Al :0.01〜0.2%
Ni :0.1〜1.2%
Cu :0.1〜1.2%
Cu+Ni :0.2〜1.6%
Mg :0.015〜0.060%
を含有し、残部がFeからなる成分組成を有することを特徴とする請求項6に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。 - 質量パーセントで、
C :1.5〜2.5%
Si :1.6〜4.0%
とすることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。 - 質量パーセントで、
C :1.5〜2.4%
Si :1.8〜3.5%
とすることを特徴とする請求項8に記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。 - 質量パーセントで、
Mn :1.0%未満
とすることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016180751A JP6254655B1 (ja) | 2016-09-15 | 2016-09-15 | 亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016180751A JP6254655B1 (ja) | 2016-09-15 | 2016-09-15 | 亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP6254655B1 true JP6254655B1 (ja) | 2017-12-27 |
JP2018044216A JP2018044216A (ja) | 2018-03-22 |
Family
ID=60860191
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016180751A Active JP6254655B1 (ja) | 2016-09-15 | 2016-09-15 | 亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6254655B1 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN117604371B (zh) * | 2023-12-12 | 2024-07-12 | 河北京东管业有限公司 | 一种球墨铸铁及其制备方法 |
Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS61174358A (ja) * | 1985-01-30 | 1986-08-06 | Toyota Motor Corp | 高強度球状黒鉛鋳鋼 |
JPH0813079A (ja) * | 1994-07-01 | 1996-01-16 | Mazda Motor Corp | 球状黒鉛鋳鉄とその製造方法 |
WO2011145194A1 (ja) * | 2010-05-20 | 2011-11-24 | 虹技株式会社 | 耐熱鋳鉄系金属短繊維とその製造方法 |
JP2013227598A (ja) * | 2012-04-24 | 2013-11-07 | Kogi Corp | 鋳鉄鋳物とその製造方法 |
JP2015203138A (ja) * | 2014-04-14 | 2015-11-16 | 虹技株式会社 | 鋳鉄鋳物とその製造方法 |
JP2016172918A (ja) * | 2015-03-18 | 2016-09-29 | 虹技株式会社 | 亜共晶球状黒鉛鋳鉄 |
-
2016
- 2016-09-15 JP JP2016180751A patent/JP6254655B1/ja active Active
Patent Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS61174358A (ja) * | 1985-01-30 | 1986-08-06 | Toyota Motor Corp | 高強度球状黒鉛鋳鋼 |
JPH0813079A (ja) * | 1994-07-01 | 1996-01-16 | Mazda Motor Corp | 球状黒鉛鋳鉄とその製造方法 |
WO2011145194A1 (ja) * | 2010-05-20 | 2011-11-24 | 虹技株式会社 | 耐熱鋳鉄系金属短繊維とその製造方法 |
JP2013227598A (ja) * | 2012-04-24 | 2013-11-07 | Kogi Corp | 鋳鉄鋳物とその製造方法 |
JP2015203138A (ja) * | 2014-04-14 | 2015-11-16 | 虹技株式会社 | 鋳鉄鋳物とその製造方法 |
JP2016172918A (ja) * | 2015-03-18 | 2016-09-29 | 虹技株式会社 | 亜共晶球状黒鉛鋳鉄 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2018044216A (ja) | 2018-03-22 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6475809B1 (ja) | 球状黒鉛鋳鉄とその製造方法 | |
CN102605256B (zh) | 一种掺稀土轴承钢及其制备方法 | |
CN103114245B (zh) | 一种耐磨衬板及其制备方法 | |
JP2008156688A (ja) | 高強度球状黒鉛鋳鉄 | |
JP2008303434A (ja) | 耐摩耗性に優れた高強度球状黒鉛鋳鉄品 | |
JPH0239563B2 (ja) | ||
CN104911458A (zh) | 一种液压泵体的铸造工艺 | |
KR20200075643A (ko) | 흑연화 열처리용 선재와 흑연강 및 그 제조방법 | |
JP6254656B1 (ja) | 亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法 | |
JPWO2018186417A1 (ja) | 低熱膨張合金 | |
JP6139062B2 (ja) | 鋳鉄鋳物の製造方法 | |
JP2012092401A (ja) | 耐摩耗性に優れた球状黒鉛鋳鉄品 | |
CN108203786B (zh) | 一种硅固溶高强度塑性铁素体球墨铸铁、制造方法和铁路机车零部件 | |
JP6254655B1 (ja) | 亜共晶球状黒鉛鋳鉄鋳物の製造方法 | |
JP5282546B2 (ja) | 耐摩耗性に優れた高強度厚肉球状黒鉛鋳鉄品 | |
JP2012036465A (ja) | 耐摩耗性に優れた球状黒鉛鋳鉄品 | |
JP6548924B2 (ja) | 亜共晶球状黒鉛鋳鉄 | |
JP2012026017A (ja) | 耐摩耗性に優れた球状黒鉛鋳鉄品 | |
JP2015183198A (ja) | 球状黒鉛鋳鉄、及び球状黒鉛鋳鉄の製造方法 | |
JP6195727B2 (ja) | 鋳鉄鋳物とその製造方法 | |
JP6087402B2 (ja) | 球状黒鉛鋳鉄とその製造方法 | |
JP2775049B2 (ja) | 球状黒鉛鋳鉄の製造法 | |
JP6793541B2 (ja) | 球状黒鉛鋳鉄管、および、球状黒鉛鋳鉄管の製造方法 | |
JPH0570685B2 (ja) | ||
RU2250268C1 (ru) | Способ получения отливок из половинчатого чугуна с аустенитно-бейнитной структурой |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20171020 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20171031 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20171130 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6254655 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |