本発明の実施形態に係るワイヤハーネス用保護部材1は、たとえば、従来のものと同様に、高圧ケーブルからなるワイヤハーネス3を内側に通して保護するものである(図1参照)。ワイヤハーネス3は、たとえば、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載されている高電圧バッテリとインバータとをお互いに接続し、また、他の機器同士を接続している。
ワイヤハーネス用保護部材1は、成形用棒状体設置工程と素材曲げ工程と素材形状処置工程と成形用棒状体抜き取り工程とを有する製造方法によって製造される。なお、成形用棒状体設置工程の前に素材切断工程による素材の切断が行われることもある。
素材切断工程では、図2で示す押出機5によって押し出し成形された円筒状等の筒状の細長い素材9を、切断機7で所定の長さに切断する。素材9は、たとえば熱可塑性樹脂で構成されている。熱可塑性樹脂として、PVC(ポリ塩化ビニル;Polyvinyl Chloride)、PE(ポリエチレン;Polyethylene)、PP(ポリプロピレン;Polypropylene)、PA(ポリアミド Polyamide)、PBT(ポリブチレンテレフタレート;Polybutylene Terephthalate)等を掲げることができるが、PVC、PPが好適に用いられる。
成形用棒状体設置工程では、素材切断工程で所定の長さに切断され、たとえば、ほぼ直線状になっている筒状の細長い素材(所定長素材)11に、図4で示すようなほぼ直線状の細長い成形用棒状体(心棒)13を通す。
成形用棒状体13は、本体部15と操作部17とを備えて構成されている(図6等参照)。成形用棒状体設置工程で筒状の所定長素材11に成形用棒状体13を通した状態では、筒状の所定長素材11の内部を成形用棒状体13の本体部15が貫通している。すなわち、成形用棒状体13の本体部15が所定長素材11で覆われている。成形用棒状体13の操作部17が、所定長素材11から突出している。
そして、所定長素材11のほぼ直線状に延びている中心軸と成形用棒状体13の本体部15ほぼ直線状に延びている中心軸とがお互いがほぼ一致しており、各中心軸の延伸方向(所定長素材11や成形用棒状体13の本体部15の長手方向)における成形用棒状体13の本体部15の寸法と所定長素材11の寸法とはお互いがほぼ等しくなっており、成形用棒状体13の本体部15がこの全長にわたって所定長素材11で覆われている。
なお、成形用棒状体13の本体部15の長さ寸法が、所定長素材11の長さ寸法よりも長くなっており、所定長素材11の長手方向の端部から延出していてもよいし、逆に短くなっていてもよい。
素材曲げ工程では、成形用棒状体設置工程で素材(所定長素材)11に成形用棒状体13(本体部15)を通した状態で、成形用棒状体13(本体部15)を所定の曲がった形状に変形させ(図6参照)、所定長素材11を成形用棒状体13(本体部15)に倣わせて所定の曲がった形状に曲げる(図7参照)。
素材形状処置工程では、素材曲げ工程で曲げられた形状を素材(所定長素材)11が維持するための処置を素材(所定長素材)11に施す。
成形用棒状体抜き取り工程では、素材形状処置工程で、所定の形状に曲がっている素材(所定形状素材)19から、成形用棒状体設置工程で設置した成形用棒状体13を抜き取る。所定形状素材19から成形用棒状体13を抜き取ることで、ワイヤハーネス用保護部材1が得られる。
成形用棒状体13は、外部からの操作によって曲がりの状態(曲がりの形状)やその剛性が変化するように構成されている。
たとえば、成形用棒状体13(本体部15)は、操作部17を介した外部からの所定の操作によって、直線状の形状(直線状の状態;図4参照)から所定の曲がった形状(曲がった状態;図6、図7参照)になり、外部からの別の所定の操作によって、所定の曲がった形状から直線状の形状になるように構成されている。
また、たとえば、所定の曲がった形状における成形用棒状体13は、剛性が高く外力が加わっても変形しにくくなっており(ほとんど変形しないようになっており)、所定の曲がった形状以外の形状(直線状の形状を含む)における成形用棒状体15は、容易に変形するようになっている。
なお、上述したように、所定の操作による成形用棒状体13の変形が成形用棒状体13の曲がりでなされるので、所定の操作によっても、成形用棒状体13(本体部15)の長さ寸法(所定の曲がった形状においては道程)は僅かに変化するかもしくはほとんど変化しないようになっている。
所定の曲がった形状になるときおよびなった成形用棒状体13(本体部15)は、所定長素材11を曲げるだけの剛性(強度)を備えている。そして、素材曲げ工程によって所定長素材11が成形用棒状体13(本体部15)と同様の形態に曲がるようになっている。
素材9(11)は、上述したように、たとえば熱可塑性樹脂で構成されている。そして、素材切断工程、成形用棒状体設置工程、素材曲げ工程において、素材9(11)が半溶融状態になっており、素材形状処置工程において、所定形状素材19を冷却して固化させるようになっている。素材9(11)を半溶融状態にしたり、また、固化させる温度の調整は、たとえば、素材9(11)にエアーを吹き付けることでなされるようになっている。
なお、素材切断工程で素材9を半溶融状態にしておき、成形用棒状体設置工程では素材11が常温になっており、素材曲げ工程で所定長素材11を加熱して軟化し(半溶融状態にし)、素材形状処置工程で、所定長素材11を冷却して再び固化するようにしてもよい。
成形用棒状体抜き取り工程では、所定形状素材19が固化した状態が維持されている。また、成形用棒状体抜き取り工程では、成形用棒状体13(本体部15)は、容易に変形可能な状態になっており、所定形状素材19がさらに変形をしてしまうようなストレスを所定形状素材19に与えることなく、所定形状素材19からの成形用棒状体13の抜き取りができるようになっている。
なお、すでに理解されるように、ワイヤハーネス用保護部材1は、所定長の円筒状等の筒状の素材11を、この中心軸の延伸方向(長手方向)で曲げた形態になっている。
成形用棒状体13(本体部15)は、図4〜図6等で示すように、たとえば、糸(ワイヤー)25を通すための貫通孔23が設けられているボール状の構造体21を複数個、これらの貫通孔23がつながるように直列にならべ、これらの貫通孔23に糸25を通したボールジョイント状のもの(環の一箇所を切断した数珠状のもの)で構成されている。
そして、素材曲げ工程では、糸25を張ることで成形用棒状体13(本体部15)を所定の曲がった形状(図6、図7参照)に変形させている。
素材形状処置工程も、糸25を張った状態でなされるようになっている。一方、成形用棒状体設置工程、成形用棒状体抜き取り工程は、成形用棒状体13の糸25を緩めた状態でなされるようになっている。
ここで、成形用棒状体13についてさらに詳しく説明する。
成形用棒状体13は、上述したように、筒状の素材11を所定の形状に曲げるために使用されるものである。すなわち、筒状の素材11に通された状態で所定の曲がった形状に変形し、素材11を所定の曲がった形状に曲げ、素材11の曲げをなした後に素材11(19)から抜き取られるようにして使用されるものである。
成形用棒状体13は、前述したように、本体部15と操作部17とを備えて構成されている。操作部17は本体部15の長手方向の一端から延出している。
本体部15を構成するボール状の構造体21は球状になっている。ボール状の構造体21には、糸25を通す2つの貫通孔23が設けられている。2つの貫通孔23は球の中心の近傍を通りお互いが平行になって延びている。また、2つの貫通孔23の両端部には平面状の部位(接触部位)27が形成されている。すなわち、ボール状の構造体21には、2つの平面状の部位27が形成されており、貫通孔23の延伸方向(貫通方向)から見ると、2つの貫通孔23は、平面状の部位27内側に位置している。
本体部15は、ボール状の構造体21を複数個、これらの貫通孔23がつながるように直列にならべ、これらの貫通孔23に糸25を通すことで生成されている。なお、構造体21を構成している各球の直径はお互いが等しくなっている。
糸25を通した状態では、各ボール状の構造体21は一列で棒状にならんでいる。糸25は、棒状にならんだ各ボール状の構造体21のうちの長手方向の一端に位置しているボール状の構造体21(21A)から他端に位置しているボール状の構造体21(21B)に向かって各ボール状の構造体21の貫通孔23を順に通り、他端に位置しているボール状の構造体21(21B)のところで折り返されている。そして、他端に位置しているボール状の構造体21(21B)から一端に位置しているボール状の構造体21(21A)に向かって各ボール状の構造体21の貫通孔23を順に通り、一端に位置しているボール状の構造体21(21A)から延出している。これによって、糸25は「U」字状になっており、一端に位置しているボール状の構造体21(21A)から2本の糸25が所定の長さだけ延出している。
また、糸25を通した状態では、お互いが隣接しているボール状の構造体21の平面状の部位27同士が対向している。
そして、糸25を引っ張って張ることで、お互いが隣接しているボール状の構造体21の平面状の部位27同士が面接触し、お互いが隣接しているボール状の構造体21の平面状の部位27内に位置している貫通孔23の位置が一致し、成形用棒状体13の本体部15が、素材11を所定の形状に曲げるための曲がった形状に変形するように構成されている(図6等参照)。
なお、ボール状の構造体21によっては、2つの平面状の部位27同士が図5(a)で示すように平行になっている場合と、2つの平面状の部位27同士が図5(b)で示すように非平行であり所定の交差角度α交差している場合とがある。
糸25を張ったとき、成形用棒状体13の本体部15は、図5(b)で示すように2つの平面状の部位27同士が非平行になっているボール状の構造体21のところで曲がるようになっている。
操作部17は、成形用棒状体13の糸25を引っ張り、また、緩めるためのものであり、図6等で示すように、係止部材29と弾性体(たとえば圧縮コイルバネ)31と圧縮コイルバネ支持体33とを備えて構成されている。
係止部材29は、糸25の端部(本体部15から離れた側の端部)で、2本の糸25に一体的に設けられている。圧縮コイルバネ支持体33は、たとえば、円板状等の平板状に形成されており、切り欠き35が設けられている。切り欠き35は、「U」字状に形成されており、円板状の圧縮コイルバネ支持体33をこの厚さ方向に貫通している。また、切り欠き35は、円板状の圧縮コイルバネ支持体33の外周から中心のところにわたって形成されている。
図4で示すような糸25が緩んでいる状態において、まず、1つの圧縮コイルバネ支持体33を、糸25が切り欠き35を通るようにして成形用棒状体13の操作部17(本体部15側の端部)に設置する。
続いて、内側を糸25が貫通するようにして圧縮コイルバネ31を糸25に設置する。このとき、圧縮コイルバネ31の一方の端は、先に設置した圧縮コイルバネ支持体33に接触している。
続いて、糸25を引っ張るようにして圧縮コイルバネ31を縮め、他の1つの圧縮コイルバネ支持体33を圧縮コイルバネ31と係止部材29との間に設置する(図6、図7参照)。これにより、糸25が引っ張られた状態が維持され、成形用棒状体13の本体部15が所定の形状に曲がった状態が維持される。
ところで、上記説明では、ボール状の構造体21の一対の平面状の部位27同士を図5(b)で示すように非平行にすることで、成形用棒状体13の本体部15を曲げているが、図5(c)で示すようなスペーサ37を用いて、成形用棒状体13の本体部15を曲げるようにしてもよい。スペーサ37には、ボール状の構造体21と同様にして糸25を通す貫通孔が設けられており、糸25がその貫通孔を通るようになっている。また、スペーサ37の2つの平面状部位(ボール状の構造体21の平面状の部位27に対向し接触する平面状部位)39は、図5(b)で示すものと同様にしてお互いが非平行になっている。
さらに、スペーサ37を使用する場合において、ボール状の構造体21の一対の平面状の部位27同士を非平行にしてもよいし、スペーサ37の2つの平面状部位39同士をお互いに平行にしておいて、ボール状の構造体21の一対の平面状の部位27同士を非平行にしてもよい。
また、上記説明では、ボール状の構造体21が、球状になっているが、これに限ることなく、回転楕円体状、正12多面体、正20面体状、これらの多面体に類似した形状、径寸法と高さ寸法とがお互いに近似した値になっている正多角形柱(図5(d)参照)等の他の形状になっていてもよい。
また、上記説明では、1つのボール状の構造体21の2つの平面状部位27のそれぞれが平面になっているが、図5(e)で示すように、ボール状の構造体21において、貫通孔23の貫通方向における一方の平面状部位27を、2つの平面41,43よりなる「V」字状の凹部で構成し、ボール状の構造体21において、貫通孔23の貫通方向における他方の平面状部位27を、2つの平面47,49よりなる「V」字状の凸部で構成してもよい。
この場合、糸25を通す貫通孔23は、2つの平面41,43の直線状の境界45のところから、2つの平面47,49の直線状の境界51のところに向かって直線状に延びている。
そして、糸25を張ったときに、1つのボール状の構造体21の2つの平面47,49よりなる「V」字状の凸部が、これに隣接する他の1つのボール状の構造体21の2つの平面41,43よりなる「V」字状の凹部に嵌り込むようになっている。各境界45,51同士は、お互いがほぼ接するようになっている。
なお、図5(e)では、境界45と境界51とがお互いが平行になって延びているが、お互いが非平行になって延びていてもよい。
また、図6や図7では、成形用棒状体13の本体部15が、二次元的に曲がっているだけであるが(紙面に直交する方向には曲がっていないのであるが)、三次元的に曲がる構造であってもよい(紙面に直交する方向にも曲がっている構造であってもよい)。
図5(e)で示すようなボール状の構造体21を採用して図6や図7で示すように曲がる場合、各境界45,51が図6や図7の紙面に直交する方向い延びていてもよいし、紙面と交差する方向に延びていてもよい。
さらに、ボール状の構造体21において、貫通孔23の貫通方向における一方の平面状部位(ボール状の構造体の接触部位)を、円錐や角錐等の凹状の錐体で構成し、貫通孔23の貫通方向における他方の平面状部位(ボール状の構造体の接触部位)を、円錐や角錐等の凸状の錐体で構成してもよいし、さらには、糸25を張ったときにお互いに隣接しているボール状の構造体21同士の位置ずれを無くすための他の形状の凹部や凸部で構成してもよい。
また、ボール状の構造体21に設ける貫通孔(糸25を通す貫通孔)を1つにしてもよい。この場合、糸25は、図4、図6、図7の一番左のボール状の構造体21Bに固定されているものとする。
また、図4に示すように糸25が緩められている状態では、成形用棒状体13の本体部15は、糸25そのものの剛性しかなく、容易に変形するようになっている。一方、図6図7で示すような糸25が張られている状態では、成形用棒状体13の本体部15の剛性は高くなり、素材11に曲げ加工を施すことができるようになっている。
なお、成形用棒状体設置工程では、成形用棒状体13の本体部15は、図4で示す状態になっており、素材曲げ工程や素材形状処置工程では、成形用棒状体13の本体部15が、図6や図7で示す状態になり、成形用棒状体抜き取り工程では、成形用棒状体13の本体部15が、図4で示す状態になる。
このようにして、筒状の素材11を成形用棒状体13を用い所定の形状に曲げたことで生成(製造)されたワイヤハーネス用保護部材1では、内周面に、成形用棒状体13の本体部15の押圧痕(接触痕)が形成されている場合がある。
押圧痕は、複数のボール状の構造体21の外周面の一部の転写による凹部として球冠状に形成されている。また、押圧痕は、所定形状に曲がった筒状のワイヤハーネス用保護部材1の長手方向で、連続的もしくは断続的にならんでいる。
ワイヤハーネス用保護部材1の製造方法によれば、成形用棒状体13を用いて筒状の素材11を曲げることでワイヤハーネス用保護部材1を製造するので、硬化性樹脂の充填等をする専用設備、ベンダー、金型や射出成形機(たとえば、100t〜150tの射出成形機)等の高価は設備が不要であり、ワイヤハーネス用保護部材1の肉厚を薄くすることができ、屈曲部が複数箇所あっても製造工程を簡素化でき、設計変更等による形状変更にも柔軟に対応することができる。
また、ワイヤハーネス用保護部材1の製造方法によれば、成形用棒状体13を用いて筒状の素材11を曲げることでワイヤハーネス用保護部材1を製造するので、専門の成形工程ではなくワイヤハーネスの製造ライン側で素材11に曲げ加工を施し、ワイヤハーネス用保護部材1を得ることができる。
また、ワイヤハーネス用保護部材1の製造方法によれば、成形用棒状体13を用いて筒状の素材11を曲げることでワイヤハーネス用保護部材1を製造するので、必要な形状のものを必要なときに必要なだけ製造することが容易になる。すなわち、保護対象であるワイヤハーネスの生産に同期させて、ワイヤハーネス用保護部材1を得ることが容易になる。
また、ワイヤハーネス用保護部材1の製造方法によれば、高速生産に対して比較的低速でのライン同期生産になるので、成形ロスが低減する。
また、ワイヤハーネス用保護部材1の製造方法によれば、成形用棒状体13が、ボール状の構造体21を複数個直列にならべこれらの貫通孔23に糸25を通したボールジョイント状のもので構成されており、糸25を張ることで成形用棒状体13を所定の曲がった形状に変形させるので、ボール状の構造体21の端部の形状を変更したり組み合わせを変えること(ボール状の構造体21のならび順の変更や一部のボール状の構造体21の交換)で、糸25を張ったときの曲がりの形状を変更することができ、設計変更等によるワイヤハーネス用保護部材1の形状変更にも柔軟に対応することができる。
また、糸25を緩めることで、ボール状の構造体21同士の密着が無くなり成形用棒状体13の剛性を極めて低い状態にすることができるので、成形用棒状体抜き取り工程での、所定の形状に曲がっている素材19からの成形用棒状体13の抜き取りを容易に行うことができる。
また、ワイヤハーネス用保護部材1の製造方法によれば、素材11に曲げ加工を施すとき、素材11の内部に成形用棒状体13が入り込んでいるので、素材11が挫屈せず、また、ワイヤハーネス3を通す内部空間を確実に生成することができる。
なお、ワイヤハーネス用保護部材1の曲がり形状が、つづら折れ状等の複雑な形状になっている等により、成形用棒状体抜き取り工程での成形用棒状体13を抜き取りができない場合には、素材形状処置工程後にワイヤハーネス用保護部材1にスリット(たとえば、素材11の所定の1つの母線に相当する1本のスリット)を入れ、成形用棒状体13の抜き取りをしてもよい。スリットが入れられたワイヤハーネス用保護部材1であっても、曲がった形状は維持され、機能が保たれているものとする。
また、球状のボール状の構造体21の直径は、素材11の内径よりも所定の値だけ小さくなっていることが望ましい。球状のボール状の構造体21の直径が、素材11の内径よりも僅かに小さいだけであると、成形用棒状体13と素材11との間のクリアランスが小さくなり、成形用棒状体13で素材11を曲げたとき、図8(a)で示すように、素材11の一部12がお互いが隣接している構造体21の間に食い込んでしまう。そして、テンションがかかっていた糸25を緩めても、上記食い込みが解除されず、素材11から成形用棒状体13が抜けなくなってしまうことがある。
そこで、図8(b)で示すように、ボール状の構造体21の直径を、素材11の内径よりも所定の値だけ小さくして、成形用棒状体13と素材11との間に所定のクリアランス14を形成することが望ましい。このクリアランス14は、素材11の成形後にテンションがかかっていた糸25を緩めたときに、上記食い込みが生成されていようがいまいが、素材11から成形用棒状体13を抜くことができるのに必要な大きさのクリアランスということになる。なお、この場合、成形用棒状体13は当然そのまま再使用することができる。
また、上記説明では、素材11が内周および外周に凹凸部が存在しない円筒状に形成されており、ワイヤハーネス用保護部材1も、図3(a)で示すように、曲がった円筒状に形成されているが、図3(b)で示すように、素材11やワイヤハーネス用保護部材1の内外周にリブ状の凹凸部が設けられていてもよい。
さらに説明すると、素材11(ワイヤハーネス用保護部材1)の外周形状および内周形状が、スプライン状に形成されていて、素材11の周方向で外径(外周;外壁)の凸部と内径(内周;内壁)の凹部とがお互いに一致していてもよい。これにより、素材11の肉厚がほぼ一定になっている。このようにリブ状の凹凸部が設けられていることで、ワイヤハーネス用保護部材1の剛性や強度を高めることができる。
なお、素材11の外径の凸部と内径の凹部とは、素材11の長手方向に直線状に延びているが、らせん状に延びていてもよい。また、素材11を押し出し成形するときの口金は、図3(c)で示すような、内側金型53と外側金型55とを備えて構成されている。
また、上記説明では、図1、図3、図7等で示すように、1本の素材11を曲げ加工してワイヤハーネス用保護部材1を製造しているが、ワイヤハーネス用保護部材1がたとえば2m以上の長さになった場合、図9で示すように、ワイヤハーネス用保護部材1をこの長手方向で分割し、分割したもの1A,1B,1Cの一部1A,1Cに上述した曲げ加工を施して、分割したもの1A,1B,1Cを接続してもよい。これにより、ワイヤハーネス用保護部材1が長くなった場合でも、ワイヤハーネス用保護部材1の製造がしやすくなる。
ここで、変形例に係る成形用棒状体13について、図10を参照しつつ説明する。成形用棒状体13は、図4等で示す成形用棒状体13と同様に使用されるものである。
変形例に係る成形用棒状体13は、図10(a)で示すように、予め所定形状に曲がっているコイルバネ(たとえば、円筒形コイルバネ)59で構成されている。
そして、成形用棒状体設置工程は、直線状のコイルバネ用心棒57(コイルバネ用の心棒;操作部17に相当)が通されたコイルバネ59を、所定長素材11に通すことでなされるようになっている(図10(b)、(c)参照)。
また、素材曲げ工程は、図10(c)に示す状態において、コイルバネ用心棒57をコイルバネ59から抜き取ることでなされるようになっている。これにより、所定長素材11が図10(a)で示すコイルバネ59と同様に曲がり、この後、成形用棒状体抜き取り工程でコイルバネ59を抜き取ると、図10(d)で示すようなワイヤハーネス用保護部材1を得ることができる。
コイルバネ59は、コイルバネ用心棒57が通されておらず重力以外の外力が加わっていない状態では、たとえば素線がお互いに密着し所定の曲がった形状(素材11を所定の形状に曲げるためにワイヤハーネス用保護部材1と同様に曲がった形状)になっている(図10(a)参照)。また、直線状のコイルバネ用心棒57を内部に通されたコイルバネ59は、コイルバネ用心棒57によって変形し、コイルバネ用心棒57と同様に直線状の形状に変形するようになっている(図10(b)参照)。これらは、コイルバネ59の素線の材質、線形等を適宜選択することでなされている。
成形用棒状体設置工程で成形用棒状体13(コイルバネ用心棒57が通されたコイルバネ59)を所定長素材11に通した状態(図10(c)参照)では、直線状の所定長素材11の内部をコイルバネ59が貫通しており、コイルバネ59の内部をコイルバネ用心棒57が貫通している。
素材曲げ工程だけでなく、素材形状処置工程、成形用棒状体抜き取り工程も、コイルバネ用心棒57をコイルバネ59から抜き取った状態でなされるようになっている。さらに、成形用棒状体抜き取り工程は、コイルバネ59の素線を引っ張り、コイルバネ59の素線のピッチを一時的に広げ、引張り側の端から順に、コイルバネ59の素線を所定形状素材19から引き剥がすことでなされるようになっている。
成形用棒状体13としてコイルバネ59を用いたことにより、成形用棒状体設置工程が、コイルバネ用心棒57が通されたコイルバネ59を素材11に通すことでなされ、素材曲げ工程が、コイルバネ用心棒57をコイルバネ59から抜き取ることでなされるので、製造が容易であり耐久性が高い成形用棒状体13を用いて、素材11の曲げを行うことができる。
なお、成形用棒状体13がコイルバネ59で構成されている場合には、コイルバネ59の外周に位置している素線の押圧痕である凹部(球冠状の凹部)が、所定形状に曲がった筒状のワイヤハーネス用保護部材1の内周壁(内壁)に、長手方向で連続的もしくは断続的にならんでいる。
また、成形用棒状体13を、たとえば、内部に気体や液体等の流動体を所定の圧力にして封入したときに、剛性を備えた所定の曲がった形状になる袋状体で構成してもよい。この袋状体の内部から流動体を除去すると、袋状体の剛性は極めて低くなるように構成されている。