JP6252922B2 - テストステロン分泌促進剤、抗疲労剤及びその製造方法と利用 - Google Patents

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Description

本発明は、特定の発酵処理物を有効成分とするテストステロン分泌促進剤及び該剤を含有してなる抗疲労剤と、その製造方法、更には、前記剤を配合してなる組成物等に関する。
生物は、通常、体外から取り入れた糖類、体内に貯蔵した糖類あるいは脂肪を利用し、細胞のミトコンドリア内で解糖系、TCA回路及び電子伝達経路を経てエネルギーを産生している。心身ともに健康で安静な状態では、好気的なエネルギー産生が行われ、十分なエネルギーが供給されているが、長時間の活動あるいは激しい運動を行った場合、嫌気的なエネルギー産生が亢進し、乳酸や活性酸素等の疲労関連物質が体内に蓄積する。
疲労とは、体内に疲労関連物質が蓄積し、休養への欲求が高まった状態のことであり、1999年に厚生省(現厚生労働省)疲労研究班が実施した疫学調査によると、我が国で疲労感を自覚している人の割合は、就労人口の約60%(4,720万人)、そのうち約半数が半年間以上続く慢性的な疲労に悩んでいることが示されている(非特許文献1)。
身体が疲労した状態が継続すると、肩こり、腰痛、頭痛、冷え、生理不順、眠気、集中力の低下、食欲不振、睡眠障害、倦怠感等といった症状を伴い、免疫力を低下させたり、作業効率を低下させ、日常生活に支障をきたす。また、運動時における疲労は、前記に加えて、運動パフォーマンスの低下や怪我の原因となり、疲労を防ぐことは重要な課題とされ、日常から、ビタミン、ミネラル類や炭水化物等の栄養素の必要量を摂取し、栄養バランスのとれた食事を摂取することが推奨されている。
テストステロンは、アンドロゲンに属するステロイドホルモンで、男性ホルモンの一種であり、筋肉量を増強させる作用が一般的に知られている。また、疲労との関連についても知られており(特許文献1、2)、疲労の予防・軽減及び/又は回復を促進させるためには体内のテストステロン値を増加させることが望ましいとされている。
このため、体内のテストステロン値を高める観点から、機能性コーヒー(特許文献2)、タマネギ加工品(特許文献3)、ツルニンジン属の植物(特許文献4)等の摂取が提案されている。
しかしながら、これらの素材が有する生理作用を生体内で発現させるためには、多量に摂取する必要があったり、副作用が発現する可能性がある等の問題があり、実用面では十分に満足できるものはほとんど見当たらなかった。したがって、体内のテストステロン値を高め、また、疲労を予防・軽減及び/又は回復するような実効性のある素材や組成物の開発が求められていた。
ところで、黒酢もろみについては次のようなことが知られている。黒酢もろみは、黒酢の製造過程で発酵及び熟成の処理を経て生じる沈殿物であって、これを圧搾濾過して得られる固形物である。黒酢もろみには、タンパク質、食物繊維をはじめとして、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、これら脂肪酸のエチルエステル、リン、カリウム、ナトリウム、カルシウム等のミネラル類が含まれており、これまでに高コレステロール、糖尿、アレルギー、癌等の症状や疾患に対して様々な生理活性を示すことが動物モデルを用いて研究されているが、黒酢もろみの抗疲労作用について検討した報告や提案は見当たらない。
また、ホスファチジルセリンは、グリセロリン脂質の一種であり、細胞膜に多く含まれている。ホスファチジルセリンは、これまでに、記憶力、ストレス、注意欠陥多動性障害等に対して生理作用を示すことがヒトにおいて研究され、脳機能や神経機能の回復・改善に有用であることが知られている(非特許文献2、3)。
特表2007−507503号公報 特開2009−106253号公報 特開平9−169661号公報 特開2007−84559号公報
木谷照夫、「疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復法に関する研究」、厚生省平成11年度研究業績報告、厚生科学研究費補助金健康科学総合研究事業 G.Palmieri等、Clinical Trials Journal、第24巻、第1号、第73−83号、1987年 Crook T.等、Neurology、第41巻、第644−649頁、1991年
かかる現状に鑑み、本発明は、体内のテストステロン値を高めるテストステロン分泌促進剤、疲労を予防・軽減及び/又は回復する抗疲労剤を開発し、前記剤を含有してなる組成物、また、テストステロン値を高める方法、疲労を予防・軽減及び/又は回復させる方法を提供することを課題とした。
上記課題を達成するために、本発明者らは、種々多様な素材のテストステロン分泌促進作用や抗疲労作用について鋭意検討を重ねた結果、黒酢関連素材及び該素材と特定素材との組み合わせがテストステロンの分泌を顕著に促進し、疲労を予防・軽減及び/又は回復を促進する効果を奏することを見出し、また、これを飲食品、飼料、ペットフード、医薬部外品、医薬品等の産業分野において有効利用できる知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の特徴は、黒大豆と玄米とを原料として、同時発酵過程及び熟成過程を経て得られる穀物酢もろみと、ホスファチジルセリンとの併用物を有効成分として含有してなるテストステロン分泌促進剤を含んでなることを特徴とする抗疲労剤である。
本発明の第二の特徴は、穀物酢もろみが粉末であることを特徴とする前記抗疲労剤である。
本発明の第三の特徴は、抗疲労剤が筋肉増強作用を有するものである前記抗疲労剤である。
本発明の第四の特徴は、黄麹を加えた後、前記同時発酵過程及び熟成過程を経て、遠赤外線乾燥後に粉砕粉末化した前記穀物酢もろみと前記ホスファチジルセリンとを2:3の割合で均一に混合した混合物として含有してなる前記テストステロン分泌促進剤を含んでなることを特徴とする抗疲労剤である。
本発明の第五の特徴は、前記テストステロン分泌促進剤あるいは前記抗疲労剤を含有してなる抗疲労用の経口用組成物である。
本発明の第六の特徴は、飲食品、医薬部外品、医薬品、飼料又はペットフードの形態である前記経口用組成物である。
本発明のテストステロン分泌促進剤は、その有効成分として(a)黒酢もろみ、(b)黒酢もろみ及びホスファチジルセリンの併用物、(c)大豆と玄米及び/又は大麦とを発酵処理及び熟成処理して得られる穀物酢、(d)該穀物酢のもろみ、(e)前記(c)の穀物酢及びホスファチジルセリンの併用物、(f)前記(d)の穀物酢のもろみ及びホスファチジルセリンの併用物のうちの1種以上を含有してなり、品質などの安定性に優れ、これを経口的に摂取又は投与することにより、前記有効成分に基づき体内のテストステロン値を高める効果を奏する。したがって、本発明のテストステロン分泌促進剤は、生体の疲労を予防・軽減及び/又は回復するための抗疲労剤として有効利用することができ、また、サルコペニア、オステオペニア、男性更年期障害、肥満、鬱、ED、脱毛、糖尿病、冠動脈疾患等を予防及び/又は改善し、鎮痛、滋養強壮、筋肉増強、及び、性機能、持久力、集中力やスポーツにおけるパフォーマンス等を向上する等の用途においても利用することが期待される。このため、前記テストステロン分泌促進剤及び抗疲労剤は、特に飲食品、医薬部外品、医薬品、飼料又はペットフード等の分野において、前記の剤のままで又は従来の各種製品に配合した形態で有効利用することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。先ず、本発明のテストステロン分泌促進剤の態様の一つは、前記(a):黒酢もろみを有効成分として含有してなるものである。
このテストステロン分泌促進剤に用いる黒酢もろみとは、黒酢の製造過程における発酵工程及び熟成工程を経て、褐色又は黒褐色に着色した醸造酢の沈殿物として得られる固形物をいう。本発明に係わる黒酢もろみの製造方法は、一般的な黒酢の製造方法を採用することができ、特に限定されるものではない。
黒酢の製造過程において、沈殿物として得られる黒酢もろみは、上清である黒酢を分離をした後の形態そのままでもよく、もろみを圧搾採取後、凍結乾燥、真空乾燥、赤外線乾燥等の方法で乾燥させて粉砕し、粉末化したものでもよい。本発明に係わる黒酢もろみは、市販品を利用することが簡便である。
本発明者らは、黒酢もろみと併用することによって、より一層強力なテストステロン分泌促進作用及び抗疲労作用を発揮し得る素材を検討した結果、ホスファチジルセリンが極めて有効であることを見出した。すなわち、本発明のテストステロン分泌促進剤のもう一つの態様は、前記(b):黒酢もろみ及びホスファチジルセリンの組み合わせを有効成分として含有してなるものである。
この態様のテストステロン分泌促進剤に使用するホスファチジルセリンは、大豆、菜種、トウモロコシ、ひまわり、紅花、胡麻、月見草、ボラージ、亜麻、綿実、パーム、オリーブ、ヤシ等の植物種子や卵黄、魚介類、牛、豚、鶏等の動物の組織等から抽出することにより製造することができる。さらに、この抽出物をシリカゲル、そのオクタデシルシリル化物、ケイ酸マグネシウム、イオン交換樹脂、活性アルミナ、活性炭等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフィーによる分画や溶剤分別等の精製処理を施して高純度のホスファチジルセリンを調製することができる。また、前記原料から製造されたレシチンを原料としてホスホリパーゼDを用い、ホスファチジル基転移反応させてホスファチジルセリン高含有リン脂質を製造することもできる。本発明に係わるホスファチジルセリンは、特に製造方法を限定するものではなく、市販のリン脂質を利用することが簡便である。この場合、ホスファチジルセリン含量が20質量%以上であることが望ましい。これを下回ると本発明の所望効果が低下し又は発現しなくなることがある。
本発明の前記テストステロン分泌促進剤に用いる黒酢もろみとホスファチジルセリンの併用割合は、該剤の使用目的と用途、製造コスト等により適宜に変動させることができるが、黒酢もろみ/ホスファチジルセリン(質量比)が概ね99.9/0.1〜10/90であり、より好ましくは99/1〜30/70である。
また、本発明のテストステロン分泌促進剤の別の態様は、前記(c):大豆と玄米及び/又は大麦を原料として発酵過程及び熟成過程を経て得られる穀物酢、あるいは、前記(d):そのもろみを有効成分として含有してなるものである。
本発明における穀物酢は食酢品質表示基準(農林水産省告示第1507号平成20年10月16日改正参照)により、『醸造酢のうち、原材料として1種又は2種以上の穀類を使用したもの(穀類及び果実以外の農産物並びにはちみつを使用していないものに限る。)で、その使用総量が醸造酢1Lにつき40g以上であるものをいう』と定義される穀物酢において、大豆と玄米及び/又は大麦を原料として使用しているが、特に限定されるものではない。
本発明に使用する玄米とは籾殻や糠層の全部を取り除いて精白したもの以外の米であり、具体的には、玄米ないしは玄米から糠部分を完全に除去しないように搗精処理した米を意味する。使用する大豆は特に限定されないが黒大豆がより好ましい。また、本発明で原料として用いる大麦とは、上記米の場合と同様に、玄大麦ないしは玄大麦の麦糠部分を完全に除去しないように精白した大麦を意味する。
穀物酢は、通常、1種又は2種以上の穀類に麹及び水を加え、糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵の3段階を経て製造されており、本発明に係る穀物酢はその製造過程における発酵工程及び熟成工程を経て得られる醸造酢である。その製造方法は一般的な静置発酵法でも連続発酵法でも良く、特に限定されるものではない。
静置発酵法は日本の伝統的な酢の製造方法である。静置発酵法では、糖化とアルコール発酵、酢酸発酵が同時に進行し、長期間熟成されて酢が生産される。一方、連続発酵法は強制的に空気を送り込み、強く撹拌することで、酢酸菌の増殖を飛躍的に拡大させ、短期間で酢の生産ができる方法である。本発明では、いずれの発酵方法によっても産生されるもろみを使用することができる。
本発明のテストステロン分泌促進剤に用いる穀物酢は、前記方法により製造される穀物酢の原液、その濃縮物又は希釈物であって、酸度が約0.1質量%〜約15質量%であるものを対象にする。その形態は液体状のもの(穀物酢原液)、液体状の穀物酢を減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等によって固形化や粉末化したり、デキストリンや脂質類の共存化で常法により粉末状に加工したもの(穀物酢粉末)、前記穀物酢原液を、例えば、水で約1.5倍〜約20倍、より望ましくは約5倍〜約10倍に希釈したもの等を利用することが可能である。前記希釈率が約20倍を超えると本発明の所望効果が低下するようになる。更には、本発明の趣旨に沿って、穀物酢に含まれる成分(有機酸、糖類、ペプチド及び蛋白質、アミノ酸類、ビタミン類及びミネラル類、ポリフェノール類、リン脂質、配糖体等)を分別、分画、カラムクロマトグラフィー等の公知の手段によって適宜に濃縮や精製したものでもよい。なお、本発明における穀物酢原液はもろみを含有したもの、濾過等により除去されたもののいずれも含む。
本発明のテストステロン分泌促進剤の更なる態様は、前記(e):大豆と玄米及び/又は大麦を原料として発酵過程及び熟成過程を経て得られる穀物酢及びホスファチジルセリンの組み合わせ、あるいは、前記(f):大豆と玄米及び/又は大麦を原料として発酵過程及び熟成過程を経て得られる穀物酢のもろみ及びホスファチジルセリンの組み合わせ、を有効成分として含有してなるものである。
次に、本発明の抗疲労剤について説明する。この抗疲労剤は、前述のテストステロン分泌促進剤を含有してなるものであり、該剤が有効利用される用途の一例である。したがって、本発明の抗疲労剤は、前述の(a):黒酢もろみ、(b):黒酢もろみ及びホスファチジルセリンの併用物、(c):大豆と玄米及び/又は大麦とを発酵処理及び熟成処理に供して製造される穀物酢、(d):該穀物酢のもろみ、(e):前記(c)の穀物酢及びホスファチジルセリンの併用物、(f):前記(d)の穀物酢のもろみ及びホスファチジルセリンの併用物、のいずれか1種又は2種以上を有効成分として含むものである。そして、前記テストステロン分泌促進剤として、望ましくは約30質量%〜100質量%、更に望ましくは約50質量%以上含有してなり、後述するような公知の賦活剤、安定剤、希釈剤等の添加物を適宜に併用して固形状、粉末状、ゲル状あるいは液体状等の形態に成形加工することができる。本発明の抗疲労剤は、生体の疲労を予防、軽減及び/又は回復する、持久力や筋肉量を増強する等のために、経口的に摂取又は投与する方法で利用し得る。
上述したテストステロン分泌促進剤や抗疲労剤は前記(a)〜(f)の少なくとも1種を有効成分として、これをそのまま、すなわち、前記有効成分からなる粉末状、固形状、ベースト状、ゲル状又は液体状の形態となし、これを飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料、ペットフード等の製品として利用することが可能である。
本発明の前記剤は、また、これが利用され得る前記製品に用いられる公知の添加物を適宜に併用して、常法により含有せしめて経口用組成物として利用することも可能である。ここで、公知の添加物は本発明の趣旨に反しない限り種々の原料や成分を使用でき、経口摂取物、飲食品、医薬品、医薬部外品等に通常使用されるものが好ましく、例えば、賦形剤、結合剤、湿潤剤、流動化剤、酸化防止剤、保存剤、安定剤、希釈剤、溶解剤、等張化剤、pH調整剤、酸味料、甘味料、着色剤、香料等の各種添加物質を利用でき、また、テストステロンの分泌を促進する作用を有する既知成分(アルギニン、エキナコサイド等)や抗疲労作用を有する既知成分(クエン酸、アンセリン、カルノシン等)あるいはその含有素材を併用してもよい。前記剤とりわけテストステロン分泌促進剤は、更に、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料、ペットフードに加えて、その他の産業分野の各種経口用組成物や製品の配合原料の一部として使用することもできる。例えば、サルコペニア、オステオペニア、男性更年期障害、肥満、鬱、ED、脱毛、糖尿病、冠動脈疾患等を予防及び/又は改善、鎮痛、滋養強壮、筋肉増強、及び、性機能、持久力、集中力やスポーツにおけるパフォーマンス等を向上するための製品となすことが期待される。
前記剤を公知の添加物と併用して経口用組成物とする場合の形態は、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等のタイプの経口用製剤となすことが可能である。かかる経口用組成物における前記有効成分の含有量は、併用する原料の種類や含有量等により一律に規定し難いが、概ね0.1質量%〜100質量%程度、より望ましくは約10質量%〜約100質量%である。約0.1質量%を下回ると本発明の所望効果が認められなくなる。本発明の経口用組成物の好適な摂取量又は投与量の目安は、前記剤に含まれる有効成分ベースで、ヒト成人(体重50kg)1日あたり約10mg〜約100,000mg、望ましくは約100mg〜約10,000mg、更に望ましくは約300mg〜約5,000mgである。
本発明の経口用組成物は、これを飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の製品となすことができる。実用的な製品の例を以下に述べるが、本発明はこの例示により何ら制限されるものではない。
飲食品の具体例として、野菜ジュース、果汁飲料、清涼飲料、茶等の飲料類、即席麺、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、ふりかけ、味噌、醤油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、植物性クリーム、焼肉用たれや麺つゆ等の調味料、麺類、うどん、蕎麦、スパゲッティ、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ハンバーグ、コロッケ、佃煮、ジャム、牛乳、クリーム、バター、スプレッドやチーズ等の粉末状、固形状又は液状の乳製品、マーガリン、パン、ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディー、グミ、ガム等の各種一般加工食品のほか、粉末状、顆粒状、丸剤状、錠剤状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、ペースト状又は液体状の栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品、健康食品、濃厚流動食や嚥下障害用食品の治療食等を挙げることができる。
これらの飲食品を製造するには、前記剤と公知の原材料を用い、あるいは公知の原材料の一部を前記剤で置き換え、常法によって製造すればよい。例えば、前記剤を、必要に応じてグルコース、ブドウ糖、デキストリン、乳糖、澱粉又はその加工物、セルロース粉末等の賦形剤、ビタミン類、ミネラル類、動植物や魚介類の油脂、たん白(動植物や酵母由来の蛋白質、その加水分解物等を含む)、糖質、色素、香料、酸化防止剤、界面活性剤、その他の食用添加物、各種栄養機能成分を含む粉末やエキス類等の食用素材とともに混合して粉末、顆粒、ペレット、錠剤等の形状に加工したり、常法により前記例の一般加工食品の形態に加工したり、混合した粉末や液状物をゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の被覆剤で被覆してカプセルに成形したり、飲料(ドリンク類)の形態に加工して、栄養補助食品や健康食品として利用することは好適である。とくに錠剤、カプセル剤やドリンク剤の形態が望ましい。なお、これらの飲食品に含まれる本発明のテストステロン分泌促進剤及び抗疲労剤の含量や摂取量は、前述の経口用組成物の場合とほぼ同様である。
前記剤を用いる医薬品及び医薬部外品は、前記剤に本発明の趣旨に反しない範囲で薬学的に許容される公知の賦形剤や添加物を適宜に加え、常法により加工して錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等の製剤となすことができる。これを経口投与して、疲労の予防、軽減及び/又は回復、筋肉増強、持久力や集中力の向上、男性更年期障害の軽減や治療等のために適用する。なお、これらの医薬品及び医薬部外品に含まれる前記剤の含量や摂取量は、前述の経口用組成物の場合に準ずる。
また、前記剤を家畜用飼料やペットフードに適用するには、前記飲食品の場合と同様に、公知の各種飼料や飲用水に配合したり、公知の原材料、添加物とともに錠剤状、顆粒状、カプセル状等の製剤形態のものに加工することができる。これらの飼料における前記剤の含量や摂取量は前述の経口用組成物の場合とほぼ同様である。前記剤を配合した組成物は、例えば、ペットの毛並みや艶の改善、競走馬の持久力や筋肉量の増強等のために利用され得る。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。各例において、%、部及び比率は特に表示しない限りすべて質量基準である。また、原料の玄米は宮崎県産及び鹿児島県産、大麦玄麦は鹿児島県産、黒大豆は兵庫県丹波産を用いた。
製造例1
公知の静置発酵法で黒酢を製造する場合に用いるかめ壺(以下、同様。)に黄麹3.7kg、蒸した玄米11.6kg及び水32Lを加え、8ヶ月間発酵及び熟成させた後、圧搾してもろみを得た。このもろみを赤外線乾燥、粉砕して黒酢もろみ(試料1)を製造した。
製造例2
製造例1と同様に処理して得た黒酢もろみとホスファチジルセリン(米国、カーギル社製、商品名:リパミン(登録商標)PS90P。以下同様。)を2:3の割合で均一混合し、黒酢もろみとホスファチジルセリンの混合物(試料2)を調製した。
製造例3
かめ壺に黄麹3.7kg、蒸した玄米7.6kg、蒸した黒大豆4kg及び水32Lを加え、8ヶ月間発酵及び熟成させたもろみ入り穀物酢(試料3)を製造した。また、それを圧搾し、穀物酢(試料4)と穀物酢もろみをそれぞれ製造した。
製造例4
製造例3に記載の穀物酢(試料4)にα−シクロデキストリン(ドイツ・ワッカーヘミー社製、商品名:CAVAMAX(登録商標)W6。以下同様。)を加えて凍結乾燥した後粉砕し、α−シクロデキストリン50%含有穀物酢粉末(試料5)を製造した。
製造例5
製造例3に記載の穀物酢もろみを遠赤外線乾燥後に粉砕粉末化し、穀物酢もろみ粉末(試料6)とした。また、穀物酢(試料4)は減圧濃縮し、α−シクロデキストリンを10kg添加して噴霧乾燥を行いα−シクロデキストリン80%含有の粉末を製造した。次いで、前記穀物酢もろみ粉末を混合し、α−シクロデキストリン50%含有もろみ入り穀物酢粉末(試料7)を製造した。
製造例6
製造例5と同様に処理して得られたα−シクロデキストリン50%含有もろみ入り穀物酢粉末(試料7)とホスファチジルセリンとを2:3の割合で均一に混合し、α−シクロデキストリン50%含有もろみ入り穀物酢粉末とホスファチジルセリンとの混合物(試料8)を調製した。
製造例7
製造例5と同様に処理して得られた穀物酢もろみ粉末(試料6)とホスファチジルセリンを2:3の割合で均一に混合し、穀物酢もろみ粉末とホスファチジルセリンとの混合物(試料9)を調製した。
比較製造例1
かめ壺に黄麹3.7kg、蒸した玄米7.6kg及び水32Lを加え、8ヶ月間発酵させた後、圧搾処理してもろみを除去した黒酢を製造した。
比較製造例2
比較製造例1と同様に処理して得られた黒酢に黒大豆3.8kgを浸漬し、20日間室内暗所で静置して穀物酢(比較試料1)を製造した。
比較製造例3
比較製造例と同様に処理して得られた穀物酢を製造例4と同様に粉末化処理を行い、未発酵黒大豆エキス含有穀物酢粉末(比較試料2)を調製した。
試験例1(テストステロン分泌促進試験及び抗疲労試験)
テストステロン分泌促進作用及び抗疲労作用を以下の方法で調べた。すなわち、6週齢ddy系雄マウス(三協ラボサービス(株))を1週間予備飼育した後、1群4匹とし、蒸留水のみ投与する対照群、ホスファチジルセリン(米国、カーギル社製、商品名:リパミン(登録商標)PS90P)投与群、本発明試料(試料1〜9)投与群、及び、比較試料(黒酢及び比較試料1、2)投与群に群分けした。それぞれの試料を毎日、経口投与し、全てのマウスに1週間3回の遊泳運動を実施させて4週間飼育した。飼育2週目にマウスの尾に2gの錘をつけ、水槽で遊泳させ、疲労困憊してマウスの頭頂部が水面下に沈み込むような遊泳運動が継続不能になるまでの時間(限界遊泳時間)を測定した。また、飼育終了後にマウスの血液を採取し、血漿を分離して血漿テストステロン値を測定した。
この結果を表1に示した。表1のデータから、黒酢と比較試料1及び2は、コントロール群と比べて、有意な変化は認めなかったが、試料1(黒酢もろみ)、ホスファチジルセリン、試料2(黒酢もろみとホスファチジルセリンとの混合物)、試料3、4(穀物酢)、試料5(穀物酢粉末)、試料6(穀物酢もろみ粉末)、試料7(もろみ入り穀物酢粉末)、試料8(もろみ入り穀物酢粉末とホスファチジルセリンとの混合物)、及び、試料9(穀物酢もろみとホスファチジルセリンとの混合物)は、コントロール群と比較して、有意に血漿テストステロン値が高くなり、また、限界遊泳時間も延長していることを確認した。
Figure 0006252922
試験例2(ヒトにおけるテストステロン分泌促進、抗疲労及び筋肉増強試験)
以下の試験に参加することに同意が得られた、日常的に運動を行う健常男性50名(21歳〜28歳、平均年齢:22.8歳)を、1群5名で11群に分け、それぞれの群に各試料250mgを充填したゼラチンカプセルを1日1カプセル摂取してもらい、これを4週間続けた。被験者は、普段の生活通りに運動も継続的に実施し、試料を摂取する前後で採血を行い、また、疲労の評価として、Visual Analog Scale(VAS)アンケートを実施し、更に、筋肉量の指標として除脂肪量を測定した。なお、本試験は、プラセボ(難消化デキストリン)、前記の試料1(黒酢もろみ)、ホスファチジルセリン、試料2(黒酢もろみとホスファチジルセリンとの混合物)、試料5(穀物酢粉末)、試料6(穀物酢もろみ粉末)、試料7(もろみ入り穀物酢粉末)、試料8(もろみ入り穀物酢粉末とホスファチジルセリンとの混合物)、試料9(穀物酢もろみ粉末とホスファチジルセリンとの混合物)、及び、黒酢、比較試料2で行った。
この結果を表2及び表3に示した。同表において、数値はプラセボ及び被験物質を摂取する前の値を100としたときの相対値として、表2は平均値±標準誤差、表3は平均値で表わした(n=5、ANOVA解析)。表2のデータから、試料を摂取する前後での血漿テストステロン値は、プラセボ、黒酢及び比較試料2を摂取した場合、摂取前の値と比較して、大きな変化は認められなかった。しかし、黒酢及び比較試料2以外の試料は、摂取前と比較して有意に高値となり、テストステロン分泌促進作用を確認した。
VAS評価における疲労スコアについても、テストステロン値の変化と同様の傾向となり、プラセボ、黒酢及び比較試料2以外の試料においては、VASスコアが有意に低下しており、抗疲労作用を確認した。
また、表3のデータより、除脂肪量についても、前記テストステロンの値と同様の傾向となり、プラセボ、黒酢及び比較試料2以外の試料において除脂肪量が有意に高値となり、筋肉増強作用を確認した。
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試作例1:ハードカプセル
前記の試料9をカプセルに充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が250mgのゼラチン被覆ハードカプセル製剤を試作した。このカプセル製剤は経口摂取可能な栄養補助食品、医薬品または動物用飼料として利用することができる。
試作例2:ソフトカプセル
試料2を200部、ミツロウを40部、精製大豆油を50部加え、加熱混合して均質化後、カプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が250mgのゼラチン被覆ソフトカプセル製剤を試作した。このカプセル製剤は経口摂取可能な栄養補助食品、医薬品または動物用飼料として利用することができる。
試作例3:飲料1
市販の栄養ドリンク100mLに試料8を500mg加えて十分に混合し飲料を試作した。この飲料を冷蔵庫で12ヶ月間保存しても外観及び風味に異常や違和感は認められなかった。本品は、滋養強壮のための飲料やドリンク剤として利用することができる。
試作例4:飲料2
市販のスポーツドリンク250mLに試料3を50mL加えて十分に混合し飲料を試作した。この飲料を冷蔵庫で12ヶ月間保存しても外観及び風味に異常や違和感は認められなかった。本品は、運動時の疲労予防のためや、筋肉を増加させるための飲料やドリンク剤として利用することができる。
試作例5:栄養補助食品
試料1を1g、試料5を1g、ロイシンを400mg、イソロイシンを250mg、バリンを200mg、アルギニンを300mgを混合・篩過した粉末を包装充填し、栄養補助食品を試作した。この栄養補助食品はペッsトフードにも利用することができる。
本発明の前記有効成分を含有してなるテストステロン分泌促進剤は、これを経口摂取又は投与することにより、生体内のテストステロンの分泌を促進するため、疲労を予防・改善又は回復するための用途に利用することができ、また、サルコペニア、オステオペニア、男性更年期障害、肥満、鬱、ED、脱毛、糖尿病、冠動脈疾患等を予防及び/又は改善、鎮痛、滋養強壮、筋肉増強、及び、性機能、持久力、集中力やスポーツにおけるパフォーマンス等を向上するための用途において、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料、ペットフード等の経口組成物の形態で利用することが可能となる。

Claims (5)

  1. 黒大豆と玄米とを原料として、同時発酵過程及び熟成過程を経て得られる穀物酢もろみと、ホスファチジルセリンとの併用物を有効成分として含有させてなるテストステロン分泌促進剤を含有せしめることを特徴とする、筋肉増強作用を有する剤の製造方法
  2. 穀物酢もろみが粉末であることを特徴とする請求項1記載の筋肉増強作用を有する剤の製造方法
  3. 黄麹を加えた後、前記同時発酵過程及び熟成過程を経て、遠赤外線乾燥後に粉砕粉末化した前記穀物酢もろみと前記ホスファチジルセリンとを2:3の割合で均一に混合した混合物として含有させてなる前記テストステロン分泌促進剤を含有せしめることを特徴とする請求項1又は2に記載の筋肉増強作用を有する剤の製造方法
  4. 1〜のいずれか1項に記載の製造方法により得られる筋肉増強作用を有する剤を含有せしめることを特徴とする、筋肉増強用の経口用組成物の製造方法
  5. 飲食品、医薬部外品、医薬品、飼料又はペットフードの形態である請求項に記載の経口用組成物の製造方法
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