JP6252891B2 - 評価データ作成装置、評価データ作成プログラム、評価データ作成システム及び評価データ作成方法 - Google Patents

評価データ作成装置、評価データ作成プログラム、評価データ作成システム及び評価データ作成方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面処理フィルムとしての光学フィルムを評価するための評価データを作成する装置、評価データを作成するためのプログラム、評価データを作成するシステム及び評価データの作成方法に関する。
液晶表示装置等の画像表示装置の画面には、外光の映り込みを抑制するために、防眩性などを付与する表面処理が施された光学フィルムが貼付されることがある(特許文献1参照)。このような光学フィルムは表面処理フィルムとして知られる。
特開2003−279485号公報
表面処理フィルムにおける表面処理特性(例えば、防眩性)の評価は、従来、人間の目による官能評価でなされていたが、評価者によってバラツキが生じる場合もあるため、より客観的な評価方法が望まれていた。
そこで、本発明の目的は、表面処理フィルムの特性を定量的に評価するための評価データを作成する評価データ作成装置、評価データ作成プログラム、評価データ作成システム及び評価データ作成方法を提供することである。
本発明の一側面に係る評価データ作成装置は、画像表示装置の画面に貼付される光学フィルムを評価する評価データを作成する評価データ作成装置である。評価データ作成装置は、支持体に貼付された第1の光学フィルムに所定画像が映り込むことによって第1の光学フィルムの表面に現れる第1の映込み画像を撮像装置が撮影して得られる信号データを処理するデータ処理部を備える。データ処理部は、信号データに基づく第1の映込み画像に対応する第1の画像データを2次元フーリエ変換して第1のスペクトル分布を算出するフーリエ変換部と、参照用の第2のスペクトル分布と、第1のスペクトル分布との比を演算することによって、相対スペクトル分布を算出する相対スペクトル分布作成部であって、第2のスペクトルは、支持体に貼付された参照用の第2の光学フィルムに上記所定画像が映り込んで第2の光学フィルムの表面に現れる第2の映込み画像に対応する第2の画像データを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル分布である、上記相対スペクトル分布作成部と、相対スペクトル分布内の同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの平均値を算出して評価データを作成する評価データ作成部と、を有する。
本発明の他の側面に係る評価データ作成プログラムは、画像表示装置の画面に貼付される光学フィルムを評価する評価データを作成する評価データ作成プログラムである。評価データ作成プログラムは、コンピュータに、支持体に貼付された第1の光学フィルムに所定画像が映り込むことによって第1の光学フィルムの表面に現れる第1の映込み画像を撮像装置が撮影して得られる信号データを処理するデータ処理工程を実行せしめる。上記データ処理工程は、信号データに基づく第1の映込み画像に対応する第1の画像データを2次元フーリエ変換して第1のスペクトル分布を算出するフーリエ変換工程と、参照用の第2のスペクトル分布と、第1のスペクトル分布との比を演算することによって、相対スペクトル分布を算出する相対スペクトル分布作成工程であって、第2のスペクトルは、支持体に貼付された参照用の第2の光学フィルムに上記所定画像が映り込んで第2の光学フィルムの表面に現れる第2の映込み画像に対応する第2の画像データを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル分布である、上記相対スペクトル分布作成工程と、相対スペクトル分布内の同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの平均値を算出して評価データを作成する評価データ作成工程とを有する。
上記評価データ作成装置及び評価データ作成プログラムにおいて、第1及び第2のスペクトル分布は、同じ支持体に貼付された第1及び第2の光学フィルムに対して所定画像が映り込んだ第1及び第2の映込み画像に対応する第1及び第2の画像データを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル分布である。そのため、相対スペクトル分布は、第2の光学フィルムの表面特性を基準とした第1の光学スペクトルの表面特性を表している。上記構成では、相対スペクトル分布に含まれる同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの平均値を算出する。これは、空間周波数が0を原点とした座標系で相対スペクトル分布を表した場合において、同じ空間周波数を有する複数のスペクトルの原点周りの平均値を算出することに相当するので、平均値の算出によって、空間周波数に対する方位角依存性のないスペクトル情報が得られる。このように方位角依存性を除くことによって、評価データとして、所定画像に依存しておらず、第2の光学フィルムの空間周波数特性に対する、第1の光学フィルムの空間周波数特性を反映したデータが得られる。そのため、評価データを利用することによって、第2の光学フィルムの空間周波数特性を基準として、第1の光学フィルムの空間周波数特性を定量的に評価できる。例えば、第2の光学フィルムとして空間周波数特性が既知のものを選択することで、第1の光学フィルムを、空間周波数特性を利用して評価し得る。
一実施形態において、データ処理部は、信号データを輝度データに変換することによって、第1の画像データを作成する画像データ作成部を、更に有してもよい。この場合、フーリエ変換部は、画像データ作成部で作成された第1の画像データを2次元フーリエ変換する。同様に、一実施形態において、データ処理工程は、信号データを輝度データに変換することによって、第1の画像データを作成する画像データ作成工程を、更に有してもよい。この場合、フーリエ変換工程は、画像データ作成工程で作成された第1の画像データを2次元フーリエ変換する。
理論的には、輝度は光量に比例している。しかしながら、撮像装置によっては、その出力データである信号データが光量に比例していない場合がある。信号データを、輝度データに変換して画像データを作成すれば、実際の明るさに対応した画像データに基づいて第1の光学フィルムを評価し得る。
一実施形態において、画像データ作成部は、複数の信号データをそれぞれ輝度データに変換し、変換された輝度データを合成することによって、第1の画像データを作成してもよい。上記複数の信号データは、撮像装置における露出量が異なっている第1の映込み画像に対応する信号データである。同様に、一実施形態において、画像データ作成工程は、複数の信号データをそれぞれ輝度データに変換し、変換された輝度データを合成することによって、第1の画像データを作成してもよい。上記複数の信号データは、撮像装置における露出量が異なっている第1の映込み画像に対応する信号データである。
撮像装置にはダイナミックレンジがあるので、実際の画像の明るさを一度の撮影では得られない場合があるが、画像データ作成部が、撮像装置における露出量が異なっている複数の信号データをそれぞれ輝度データに変換し、変換された輝度データを合成して第1の画像データを作成することによって、実際の明るさの画像に対応する画像データを得ることができる。そのため、実際の明るさに対応した画像データに基づいて第1の光学フィルムを評価し得る。
本発明の更に他の側面に係る評価データ作成システムは、画像取得部と、上記本発明の一側面に係る評価データ作成装置と、を備える。画像取得部は、第1の光学フィルムが貼付される支持体、支持体と対向して配置され第1の光学フィルムに映り込ませる所定画像を表示する画像表示装置、及び、支持体と、画像表示装置との間に配置され所定画像が第1の光学フィルムに映り込むことによって第1の光学フィルムの表面に現れる第1の映込み画像を撮影して、第1の映込み画像に対応する信号データを得る撮像装置と、を有する。評価データ作成装置のデータ処理部は、画像取得部が有する撮像装置からの信号データを処理する。
上記構成では、支持体に貼付された第1の光学フィルムに映り込んだ第1の映込み画像は、支持体に対向して配置された画像表示装置に表示される所定画像が第1の光学フィルムに映り込んだものである。このように第1の光学フィルムの表面に現れる第1の映り込み画像を撮像装置が撮影して得られる信号データを、評価データ作成装置のデータ処理部が処理して、評価データを作成する。第1の光学フィルムには、それに対向した画像表示装置に表示される所定画像を映り込ませるので、季節や時間などによる評価データへの影響を低減できる。そのため、第1の光学フィルムをより正確に評価できる。
本発明の更に他の側面に係る評価データ処理方法は、画像表示装置の画面に貼付される光学フィルムを評価する評価データを作成する評価データ作成方法である。評価データ作成方法は、支持体に貼付された第1の光学フィルムに所定画像が映り込むことによって第1の光学フィルムの表面に現れる第1の映込み画像を、第1の光学フィルムに対向して配置された撮像装置で撮影する撮影工程と、評価データ作成装置が、撮像装置から第1の映り込み画像に対する信号データの入力を受け付けるデータ受付け工程と、データ作成装置が、データ作成装置に入力された信号データを処理するデータ処理工程と、を備える。データ処理工程は、データ作成装置が、信号データに基づく第1の映込み画像に対応する画像データを2次元フーリエ変換して第1のスペクトル分布を算出するフーリエ変換工程と、参照用の第2のスペクトル分布と、第1のスペクトル分布との比を演算することによって、相対スペクトル分布を作成する相対スペクトル分布作成工程であって、第2のスペクトル分布は、上記支持体に貼付された参照用の第2の光学フィルムに上記所定画像が映り込んで第2の光学フィルムの表面に現れる第2の映込み画像に対応する第2の画像データを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル分布である、相対スペクトル分布作成工程と、相対スペクトルに含まれる同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの平均値を算出して評価データを作成する評価データ作成工程と、を有する。
上記方法では、第1及び第2のスペクトル分布は、同じ支持体に貼付された第1及び第2の光学フィルムに対して所定画像が映り込んだ第1及び第2の映込み画像に対応する第1及び第2の画像データを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル分布である。そのため、相対スペクトル分布は、第2の光学フィルムの表面特性を基準とした第1の光学スペクトルの表面特性を表している。上記構成では、相対スペクトル分布に含まれる同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの平均値を算出する。これは、空間周波数が0を原点とした座標系で相対スペクトル分布を表した場合において、同じ空間周波数を有する複数のスペクトルの原点周りの平均値を算出することに相当するので、平均値の算出によって、空間周波数に対する方位角依存性のないスペクトル情報が得られる。このように方位角依存性を除くことによって、評価データとして、所定画像に依存しておらず、第2の光学フィルムの空間周波数特性に対する、第1の光学フィルムの空間周波数特性を反映したデータが得られる。そのため、評価データを利用することによって、第2の光学フィルムの空間周波数特性を基準として、第1の光学フィルムの空間周波数特性を定量的に評価できる。例えば、第2の光学フィルムとして空間周波数特性が既知のものを選択することで、第1の光学フィルムを、空間周波数特性を利用して評価し得る。
本発明によれば、表面処理フィルムの特性を評価するための評価データを作成する評価データ作成装置、評価データ作成プログラム、評価データ作成システム及び評価データ作成方法が提供され得る。
図1は、一実施形態に係る評価データ作成装置を備える評価データ作成システムの概略構成を示す図面である。 図2は、データ作成装置を利用した評価データ作成方法のフローチャートである。 図3は、露出量の異なる複数の画像の撮像を説明するための模式図である。 図4(a)は、参照用光学フィルムに映り込んだ映込み画像の一例を示す図面である。図4(b)は、評価用光学フィルムに映り込んだ映込み画像の一例を示す図面である。 図5は、輝度データ変換を説明するための図面である。 図6(a)は、参照用光学フィルムに映り込んだ映込み画像に対するスペクトル分布である。図6(b)は、評価用光学フィルムに映り込んだ映込み画像に対するスペクトル分布である。 図7は、図6(a)及び図6(b)に示したスペクトル分布に対して、相対スペクトル分布を算出した結果を示す図面である。 図8は、空間周波数に対して、評価データ値をプロットしたグラフである。 図9は、実験に使用した光学フィルムE1〜E6の映り込み画像を示す図面である。 図10は、光学フィルムE2〜E6の評価データを示す図面である。 図11は、光学フィルムE4と、光学フィルムE5の評価データを抜粋した図面である。 図12は、光学フィルムE4の評価データを、光学フィルムE5の評価データで除した結果を示すグラフである。 図13は、光学フィルムE2〜E6に対する反射特性を示す図面である。 図14は、光学フィルムE2〜E6に対する防眩性を示すグラフである。 図15は、目視評価における着目領域を示す図面である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。同一の要素には同一符号を付する。重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。説明中、「上」、「下」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
図1は、一実施形態に係る評価データ作成装置を備える評価データ作成システムの概略構成を示す図面である。評価データ作成システム1は、画像表示装置の画面に貼付される光学フィルムを評価する評価データを作成するシステムである。
評価されるべき光学フィルムは、表面処理が施された表面処理フィルムである。表面処理の一例は、反射防止機能及び防眩性の少なくとも一方が付与されるような表面処理である。具体的には、表面処理フィルムとしての光学フィルムは、透明なフィルムの表面に反射防止層を形成したフィルム或いは透明なフィルムの表面に微細な凹凸を形成したフィルムなどが例示され得る。表面処理フィルムの基材の例は、ポリエチレンテレフタレートといった透明な樹脂である。
上述した表面処理フィルムのように、画像表示装置の画面に貼付される光学フィルムは、画面の保護フィルムとしても機能する。画像表示装置の例は、液晶ディスプレイ及びプラズマディスプレイといったフラットパネルディスプレイである。
評価データ作成システム1は、評価データを作成するための画像を取得する画像取得部10と、空間周波数解析を利用して光学フィルムの評価データを作成する評価データ作成装置20と、を備える。
画像取得部10は、2台の画像表示装置11,12と、撮像装置としてのカメラ13とを有する。
2台の画像表示装置11,12は、それらの画面11a,12aが互いに向かいあうように、一定の距離を開けて配置されている。画像取得部10で使用される画像表示装置11,12の例も上述したフラットパネルディスプレイである。画像表示装置11の画面11aには、評価データを作成するために使用される光学フィルム30が貼付される。画像表示装置11は、光学フィルム30を支持する支持体として機能する。
画像表示装置12は、光学フィルム30に映り込ませる所定画像を表示する。図1では、所定画像が画面12aに表示されることによって発せられる光を矢印で模式的に示している。
カメラ13は、画像表示装置11と画像表示装置12との間に配置されている。カメラ13は、画面11aに貼付された光学フィルム30がカメラ13の撮影範囲内に入るように配置されていればよい。カメラ13は、通常、画像表示装置12寄りであって、画面12aの中央近傍に配置される。カメラ13は、CMOSイメージセンサといった撮像素子を備えており、撮影した画像に対応する信号データを出力し得る。
一実施形態において、画面12aは、画面11a及びカメラ13の大きさより大きくしてもよい。これにより、画面12aに表示された所定画像を、光学フィルム30に映り込ませられ得る。
評価データ作成装置20は、カメラ13から評価データ作成装置20に入力される信号データを処理するデータ処理部21を備える。
データ処理部21は、カメラ13からの信号データに基づいたデータ処理用の画像データを作成する画像データ作成部21Aと、画像データを2次元フーリエ変換してスペクトル分布を得るフーリエ変換部21Bと、参照用の所定のスペクトル分布(第2のスペクトル分布)に対する、評価用の光学フィルム30に対するスペクトル分布(第1のスペクトル分布)の比を演算することによって、相対スペクトル分布を作成する相対スペクトル分布作成部21Cと、相対スペクトル分布内の同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの方位角に対する平均値を算出して評価データを作成する評価データ作成部21Dと、を有する。
上記画像データ作成部21A、フーリエ変換部21B、相対スペクトル分布作成部21C及び評価データ作成部21Dは、評価データ作成装置20の主要な構成要素である。評価データ作成装置20は、上記画像データ作成部21A、フーリエ変換部21B、相対スペクトル分布作成部21C及び評価データ作成部21Dの他に、ユーザからの指示の入力或いはカメラ13からの信号データを受け付ける入力部、各種データ及びプログラムを記憶する記憶部、及び、作成した評価データを表示装置や印刷装置に出力する出力部を備え得る。
評価データ作成装置20において、画像データ作成部21A、フーリエ変換部21B、相対スペクトル分布作成部21C及び評価データ作成部21Dは、データの処理の流れに応じて互いに連携できるように直接又は評価データ作成装置20の他の構成要素(例えば、入力部、記憶部及び出力部)等を介して間接的に接続されている。
図2は、図1に示したデータ作成装置を利用した評価データ作成方法のフローチャートである。評価データ作成方法は、図2に示したように、画像取得工程S10と、データ受付工程S11と、データ処理工程S12と、を備える。
データ処理工程S12は、画像データ作成工程S12A、フーリエ変換工程S12B、相対スペクトル分布作成工程S12C及び評価データ作成工程S12D、を有する。
評価データ作成装置20が有する画像データ作成部21A、フーリエ変換部21B、相対スペクトル分布作成部21C及び評価データ作成部21Dは、画像データ作成工程S12A、フーリエ変換工程S12B 、相対スペクトル分布作成工程S12C及び評価データ作成工程S12Dを実行するための評価データ作成装置20の各機能を表している。そのため、画像データ作成部21A、フーリエ変換部21B、相対スペクトル分布作成部21C及び評価データ作成部21Dの具体的な説明は、データ処理工程S12が有する各工程を説明する際に一緒に説明する。
一実施形態において、評価データ作成装置20は、画像データ作成部21A、フーリエ変換部21B、相対スペクトル分布作成部21C及び評価データ作成部21Dの各機能を備えた専用の装置であり得る。一実施形態において、評価データ作成装置20は、データ処理部21が有する画像データ作成部21A、フーリエ変換部21B、相対スペクトル分布作成部21C及び評価データ作成部21Dの各機能、すなわち、画像データ作成工程S12A、フーリエ変換工程S12B、相対スペクトル分布作成工程S12C及び評価データ作成工程S12Dをコンピュータに実行せしめる評価データ作成プログラムを組み込んだパーソナルコンピュータ(パソコン)でもよい。評価データ作成プログラムを組み込んだパソコンである場合、パソコンが評価データ作成プログラムを実行することによって、パソコンが評価データ作成装置20として機能する。
以下、一実施形態に係る評価データ作成方法について、カメラ13が備える撮像素子をCMOSイメージセンサとして説明する。
[画像取得工程S10]
画像取得工程S10では、評価データ作成装置20でデータ処理すべき画像を撮影する。
評価用サンプルとしての光学フィルム30を画像表示装置11の画面11aに貼付した後、画像表示装置12の画面12aに所定画像を表示する。これにより、光学フィルム30の表面(画面11aと反対側の面)に、画面12aで表示された所定画像が擬似外光として映り込む。次に、カメラ13で光学フィルム30に映り込んだ画像(以下、映込み画像と称す)を撮影する。この撮影の際、画像表示装置11の電源はOFF、すなわち、画面11aには何も表示させない。
映込み画像を撮影する場合、カメラ13の露出量を変えた複数枚の画像を撮影する。露出量は、例えば、カメラ13の絞りを一定にして露出時間を変化させることによって調整され得る。これは、図3に示すように、撮影したい実際の画像の明るさを複数の明るさの範囲に分割して撮影していることに対応する。図3では、撮影したい実際の画像の明るさの範囲を、第1の明るさ範囲、第2の明るさ範囲及び第3の明るさ範囲の3つに分割している例を模式的に示している。撮影したい実際の画像の明るさの範囲を輝度に換算した場合の範囲が、0.55〜720cd/mである場合、第1〜第3の明るさ範囲に対応する第1〜第3の輝度範囲の例は次の通りである。すなわち、第1の輝度範囲の例は0.55〜7.4cd/mであり、第2の輝度範囲の例は、7.4〜60cd/mであり、第3の輝度範囲の例は60〜720cd/mである。明るさ範囲の分割数は、撮影したい実際の画像の明るさと、CMOSイメージセンサのダイナミックレンジの大きさに応じて決定すればよく、分割数は3に限定されない。分割した明るさ範囲は、図3に示したように重複範囲がなくてもよいが、一定の重複範囲が生じていても良い。
画像取得工程S10では、評価用サンプルとしての光学フィルム30の代わりに、基準となる参照用の光学フィルム30を画面11aに貼付して、評価用の光学フィルム30の場合と同じ条件で且つ評価用の光学ファイル30の場合と同様にして、参照用の光学フィルム30に映り込んだ映込み画像を撮影する工程を更に有してもよい。参照用の光学フィルム30の例は、表面処理が施されていない光学フィルム30、すなわち、いわゆるグレアフィルムである。参照用の光学フィルム30の一例は、評価用の光学フィルム30と同じ基材で構成され評価用の光学フィルム30に対して施された表面処理が施されていないフィルムである。
説明の便宜のために、評価用サンプルとしての光学フィルム30を、評価用光学フィルム31と称し、参照用の光学フィルム30を、参照用光学フィルム32と称する場合もある。
図4(a)は、参照用光学フィルムに映り込んだ映込み画像の一例を示す図面である。図4(b)は、評価用光学フィルムに映り込んだ映込み画像の一例を示す図面である。図4(a)及び図4(b)は、光学フィルムの違い以外は、同じ条件で撮影された画像を示している。
画像取得工程S10で、評価用光学フィルム31及び参照用光学フィルム32に映り込んだ画像をカメラ13で撮影する場合、評価用光学フィルム31及び参照用光学フィルム32に所定画像からの光以外の光が反射しないように、例えば、画像取得部10を暗幕など覆っておいてもよい。
[データ受付け工程S11]
評価データ作成装置20は、カメラ13で撮影された画像に対応する信号データの入力を受け付ける。このデータの受け付けは、例えば、評価データ作成装置20が外部からのデータなどの入力を受け付ける入力部を介して実施され得る。カメラ13が露出量の異なる状態で撮影された複数枚の映込み画像に対する信号データを有する場合、それら複数の信号データの入力がデータ受付工程S11で受け付けられる。カメラ13が参照用光学フィルム32に映り込んだ映込み画像の信号データを有する場合、それらの信号データもデータ受付工程S11で受け付けられる。評価データ作成装置20への信号データの入力方法又は転送方法は、カメラ13から評価データ作成装置20に信号データを入力できれば特に限定されない。例えば、USBケーブルといった有線を利用してカメラ13と評価データ作成装置20とを物理的に連結する方法でもよいし、無線通信を利用した方法でもよいし、SDメモリカードといった記録媒体を利用した方法でもよい。
[データ処理工程S12]
次に、評価データ作成装置20が評価データを作成するデータ処理工程S12について説明する。データ処理工程S12は、前述したように、画像データ作成工程S12A、フーリエ変換工程S12B、相対スペクトル分布作成工程S12C及び評価データ作成工程S12Dを有する。
(画像データ作成工程S12A)
画像データ作成工程S12Aでは、画像データ作成部21Aが、カメラ13からの信号データを、後工程においてデータ処理するための処理用画像データに変換する。具体的には次の工程1と、必要に応じて工程2とを行う。
1)工程1:カメラ13からの信号データを輝度データに変換する。
図5は、輝度データ変換を説明するための図面である。図5中の横軸は光量を示し、縦軸は、カメラ13からの出力値を示す。撮像素子としてのCMOSイメージセンサが理想的な信号特性を有する、すなわち、輝度計として機能する場合、図5に示す破線のように光量に対して出力値は比例する。このように光量に比例した出力値は輝度値に対応する。しかしながら、通常、図5の実線で示すようにCMOSイメージセンサ固有の出力特性が生じる。そのため、CMOSイメージセンサからの信号データは、映込み画像の輝度情報を正確に表していない場合もある。
工程1では、カメラ13が有するCMOSイメージセンサの出力特性に基づいた出力値を補正して、破線で表される光量に比例した輝度値に変換する。この変換は、例えば、CMOSイメージセンサから出力された値に、所定の補正係数を乗算することにより行い得る。補正係数は、例えば、所定の光量の光に対するCMOSイメージセンサの出力値と、同じ光量に対する輝度計の計測結果とを比較して予め算出しておけばよい。ただし、変換方法は、カメラ13が有するCMOSイメージセンサの出力特性に基づいた出力値を補正して、破線で表される光量に比例した輝度値に変換できれば、上記例示した方法に限定されない。本実施形態において輝度データとは、上記のように、光量に比例した輝度値から構成されるデータである。
2)工程2:同一の映込み画像を異なる露出量で撮影することによって得られた輝度データを合成して1つの処理用画像データを作成する。
画像取得工程S10で説明したように、露出量の異なる複数枚の画像を撮影することで、撮影したい実際の画像の明るさを分割している場合、工程2では、工程1において、各信号データから変換された輝度データを合成して、1つの画像データを形成する。
撮像素子としてCMOSイメージセンサを使用している場合、ダイナミックレンジが制限されている。そのため、CMOSイメージセンサのダイナミックレンジを越える光量がカメラ13に入射すると、画像に、いわゆる白飛び領域が生じ、ダイナミックレンジより少ない光量の場合には、いわゆる黒つぶれ領域が生じる。そこで、図3に示したように、実際の画像の明るさを複数に分割して、各明るさに対応する画像を撮影した後、工程2で合成することによって、実際の画像の明るさを反映した画像データを得ることができる。複数の明るさ範囲(図3では、第1〜第3の明るさ範囲)のうち隣接する2つの明るさ範囲の境界領域で重なりが生じている場合、予めどちらかのデータを採用するように決めておけばよい。上記第1〜第3の明るさ範囲は、実際の画像の明るさ範囲に対応する輝度範囲を第1〜第3の輝度範囲に分割し、第1〜第3の輝度範囲に対応するように設定され得る。
画像取得工程S10で露出量を変えて映込み画像を撮影していない場合、画像データ作成部21は、工程2を実施しない。工程2を実施するか否かは、入力部が受け付けられ得るユーザからの指示に基づいて判断されてもよい。或いは、データ作成部21が判定部を備え、その判定部がカメラ13から入力部に入力され受け付けられた同じ画像に対する信号データの数を判定すると共に、その判定に基づいて決定してもよい。
画像データ作成部21Aは、上記工程1及び工程2を、評価用光学フィルム31に映り込んだ画像をカメラ13で撮影して得られる映込み画像(第1の映込み画像)の信号データに対して実行する。画像データ作成部21Aは、参照用光学フィルム32に映り込んだ画像をカメラ13で撮影している場合、カメラ13で撮影して得られる参照用光学フィルム32に現れた映込み画像(第2の映込み画像)の信号データにも、上記工程1及び工程2を実行する。
(フーリエ変換工程S12B)
フーリエ変換工程S12Bでは、フーリエ変換部21Bが、映込み画像に対応する画像データを2次元フーリエ変換し、空間周波数に対してフーリエ変換値が対応づけられたスペクトル分布を算出する。
具体的には、評価用光学フィルム31の映込み画像に対応する画像データ(第1の画像データ)における(x,y)の輝度値をfr(x,y)と表し、参照用光学フィルム32の映込み画像に対応する画像データ(第2の画像データ)における(x,y)の輝度値をf(x,y)としたとき、fr(x,y)及びf(x,y)それぞれを2次元フーリエ変換して、スペクトルFr(u,v)及びF(u,v)を算出する。
上記xは、図4(a)及び図4(b)に示した画像におけるx方向の位置を示し、yは図4(a)及び図4(b)に示した画像におけるy方向の位置を示す。uは、x方向の空間周波数成分であり、vは、y方向の空間周波数成分である。
図6(a)は、参照用光学フィルムに映り込んだ画像に対するスペクトル分布(フーリエ画像)であり、図4(a)に示した映込み画像を利用したスペクトル分布である。図6(b)は、評価用光学フィルムに映り込んだ画像に対するスペクトル分布(フーリエ画像)であり、図4(b)に示した映込み画像を利用したスペクトル分布である。図6(a)及び図6(b)では、Fr(u,v)及びF(u,v)の絶対値(強度)が輝点として表現されている。
図6(a)及び図6(b)は、横方向をu軸、すなわち、x方向の空間周波数成分を示す軸とし、横方向に直交する縦方向を、v軸、すなわち、y方向の空間周波数成分を示す軸として表される座標系に対して表されたスペクトル分布(フーリエ画像)である。図6(a)及び図6(b)における上記座標系の原点Oは、空間周波数のu成分及びy成分が共に0、すなわち、DC成分を表している。原点Oに近いほど低周波成分を示し、原点Oから離れるに従って高周波成分を表すように、図6(a)及び図6(b)ではスペクトルがプロットされている。
図6(a)及び図6(b)において、(u,v)であらわされる輝点の原点Oに対する位置は波の方向を示し、輝点と、原点Oとの距離は、空間周波数の大きさを示す。更に、各スペクトルの大きさ、すなわち、波の大きさ(強度)は、輝点の明るさで表されている。輝点の明るさは、グレースケールで表現されており、白い方がより明るい、すなわち、強度がより大きいことを示す。
(相対スペクトル分布作成工程S12C)
相対スペクトル分布作成工程S12Cでは、相対スペクトル分布作成部21Cが、参照用光学フィルム32に対応する参照用のスペクトル分布(第2のスペクトル分布)に対する評価用光学フィルム31に対応する評価用のスペクトル分布(第1のスペクトル分布)の比を算出する。参照用のスペクトル分布に対する評価用のスペクトル分布の比を算出するとは、2つのスペクトル分布において対応する位置のスペクトルの比を算出することである。
具体的には、相対スペクトル分布作成部21Cが、式(1)で表される演算を実行する。
Mr(u,v)=Fr(u,v)/F(u,v)・・・(1)
比Mr(u,v)は、評価用光学フィルム31及び参照用光学フィルム32が貼付された支持体としての画像表示装置11のスペクトルへの影響が取り除かれたスペクトルを表す。換言すれば、Mr(u,v)を算出することによって、Fr(u,v)で表されるスペクトルから、評価用光学フィルム31の表面特性を抽出している。更に、参照用光学フィルム32として、表面処理が施されていない光学フィルム、すなわち、グレアフィルムを用いた場合、比Mr(u,v)は、表面処理が施された評価用光学フィルム31固有の空間周波数特性を示す。従って、Mr(u,v)は、評価用光学フィルム31の伝達関数MTF(Modulation Transfer Function)に対応する。Mr(u,v)は、式(1)より、参照用光学フィルム32に対するスペクトルからの変化率でもある。
図7は、図6(a)及び図6(b)に示したスペクトル分布から、相対スペクトル分布を算出した結果を示す図面である。図7に示された相対スペクトル分布を表すための座標系は、図6(a)及び図6(b)の場合と同様である。図7の輝点の明るさは、相対スペクトルの大きさ(強度)を示している。輝点の明るさがグレースケールで示されているのは、図6(a)及び図6(b)の場合と同様である。
(評価データ作成工程S12D)
評価データ作成工程S12Dでは、評価データ作成部21Dが、相対スペクトル分布作成工程S12Cで作成された相対スペクトル分布において、同じ空間周波数に対する複数の相対スペクトルに対して方位角依存性をなくすように平均値を算出する。同じ空間周波数とは、(u,v)で表される空間周波数ベクトルの大きさが同じことを意味する。この場合、同じ空間周波数に対する複数の相対スペクトルは、原点Oに対して、同一円周上にある複数の相対スペクトルである。
上記平均値は、原点Oに対して、同一円周上にある全ての相対スペクトルの平均値を算出すればよい。ただし、例えば、u軸を基準にして、u軸から180度以下の角度、すなわち、図7に示した矢印の範囲における平均値を算出してもよい。これは、スペクトル分布における対称性のためである。なお、図7では、u軸を基準にして説明しているが、原点Oに対して所定方向を基準して、その方向から180度以下の角度範囲における平均値を算出してもよい。
評価データ作成部21Dが、上記平均値を算出することにより、低周波から高周波に渡る空間周波数それぞれに対して平均値が得られる。各空間周波数に対する平均値が評価データ値である。
図8は、空間周波数に対して、評価データ値をプロットしたグラフである。図8は、評価用光学フィルム31の映り込み特性を示す。横軸は、空間周波数を示し、縦軸は、評価データ値を示している。横軸及び縦軸は共に対数で表されている。この図8における評価データ値の分布状態が、光学フィルム31における表面処理の特性を表している。図8に示した評価データ値の分布を利用して、光学フィルム31の表面処理特性を解析可能である。
図8において、実線Rは、DC成分に対する評価データ値を示している。DC成分は、図7における原点、すなわち、u=v=0でのMr(u,v)である。DC成分に対する評価データ値の大きさは評価用光学フィルム31による反射強度を示す。すなわち、DC成分に対する評価データ値は、評価用光学フィルム31の反射特性を示している。
DC成分に対する評価データ値から、ある空間周波数に対する評価データ値までの距離Dは、ボケの程度、換言すれば、評価用光学フィルム31の防眩性を示している。従って、図8を解析することによって、反射特性及び防眩性を数値化できる。その結果、評価データを利用して評価用光学フィルム31を定量的に評価できる。距離Dを防眩性評価値Dとも称す。図8では、防眩性評価値Dとして、低周波領域における防眩性評価値D1と、高周波領域における防眩性評価値D2を模式的に示している。防眩性評価値D1は、空間周波数2.5cycle/deg近傍の空間周波数に対する評価データ値の平均値とDC成分に対する評価データ値との差である。防眩性評価値D2は、空間周波数9.5cycle/deg近傍の空間周波数に対する評価データ値の平均値と、DC成分の評価データ値との差である。防眩性評価値D1,D2を得るために使用する上記平均値の算出方法は特に限定されない。所定の空間周波数近傍の空間周波数に対する評価データ値の平均値の算出方法の例は、相乗平均及び相加平均等を含み、好ましくは、相乗平均である。
評価データを得るために、参照用スペクトル分布に対する評価用スペクトル分布の比を算出している。そのため、評価データ作成部21Dが作成した評価データは、評価用スペクトル分布から支持体としての画像表示装置11の影響を取り除いた評価用光学フィルム31のデータである。そのため、評価データを利用して評価用光学フィルム31の表面処理特性を定量的に評価できる。
特に、参照用スペクトルとして、表面処理が施されていない光学フィルム32を使用している場合、評価データは、評価用光学フィルム31が有する表面特性固有の周波数特性を表す。よって、評価データを利用して、評価用光学フィルム31の表面処理特性を、より正確に評価できる。更に、評価データが、評価用光学フィルム31が有する表面特性固有の周波数特性を表している場合、映り込みに使用した画像を変えた場合において、他の画像に対する映り込み画像をシミュレーションにより再現することも可能である。
更に、相対スペクトル分布において同じ空間周波数に対する角度周りの平均値を算出し、その平均値を評価データ値として使用する。同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの平均値を算出することによって、相対スペクトル分布における方位角依存性が除去される。
方位角依存性があると、光学フィルム30に映り込ませる所定画像を変えた場合に、評価が異なる場合が生じる。これに対して、上記のように方位角依存性を除去することによって、光学フィルム30に映り込ませる所定画像に依存せずに、評価用光学フィルム31の表面特性を評価可能である。
図2を利用して説明した評価データ作成方法の一実施形態では、参照用スペクトルとして、表面処理が施されていない光学フィルム32を使用している場合を例示して説明した。しかしながら、例えば、参照用スペクトルとして既知の所定のスペクトル、すなわち、周波数特性が既知の参照用の光学フィルム32を使用した場合も、例えば、評価データとして、評価用光学フィルム31の表面処理特性を得ることができる。
作成される評価データは、評価用光学フィルム31に映り込んだ画像を実際に撮影した2次元画像を元に作成されている。そのため、評価用光学フィルム31の評価を、評価用光学フィルム31が実際に使用された状況で且つユーザからの視点により近い状態で定量的に行うことができる。その結果、得られた評価は、所望の表面処理特性を有する光学フィルム30の製造に寄与しやすい。前述したように、評価データは、反射特性と防眩性との観点から評価し得る。この点でもユーザによる官能評価に近い評価を定量的に行うことができる。
カメラ13からの信号データを輝度データに変換して画像データを作成する形態では、実際の映り込み画像の輝度情報をより反映した評価データを得ることができる。その結果、評価用光学フィルム31を正確に評価し得る。同じ映込み画像をカメラ13が異なる露出量で撮影して得られる複数の信号データを処理する形態では、実際の映り込み画像の輝度情報をより正確に反映した評価データを得ることができる。その結果、より一層、評価用光学フィルム31を正確に評価し得る。
図1に示した評価データ作成システム1では、光学フィルム31,32に対向して配置される画像表示装置12に映し出した所定画像を擬似外光としながら、その所定画像が、光学フィルム31,32に映し込んだ画像をカメラ13で撮影している。そのため、例えば、光学フィルム31として表面処理の異なる複数枚のフィルムを評価する場合又は参照用光学フィルム32の映り込み画像を撮影する場合に、同じ条件で撮影が可能である。その結果、撮影環境(季節及び撮影時間等)の影響が評価に対して低減され得る。
以下、実験例を参照しながら図1に示した評価データ作成装置20及びそれを用いた評価データ作成方法により作成された評価データで、光学フィルム30を評価できることについて更に説明する。実験では、光学フィルム30として次の光学フィルムE1〜E6を使用した。光学フィルムE1は、参照用光学フィルム32である。光学フィルムE2〜E6は、評価用光学フィルム31である。
光学フィルムE1としては表面処理が施されていないフィルムを使用した。光学フィルムE1は、凸版印刷株式会社製のハードコートである。
光学フィルムE2としてLow-Reflection(LR)フィルムを使用した。光学フィルムE2は、凸版印刷株式会社製のLRである。光学フィルムE2の反射率は1〜2%である。
光学フィルムE3としてAnti-glare, Low-reflection(AGLR)フィルムを使用した。光学フィルムE3は、大日本印刷株式会社製のHLAG2である。光学フィルムE3の反射率は2.3%であり、ヘイズは1.8%である。
光学フィルムE4としてAnti―Glare(AG)フィルムを使用した。光学フィルムE4は、凸版印刷株式会社製のVH01である。光学フィルムE4の反射率は4.4%であり、ヘイズは0.6%である。
光学フィルムE5としてAGフィルムを使用した。光学フィルムE5は、富士フィルム株式会社製のCVLU3である。光学フィルムE4の反射率は3.7%であり、ヘイズは0.5%である。
光学フィルムE6としてAGフィルムを使用した。光学フィルムE6は、大日本印刷株式会社製のDS20Sである。光学フィルムE6の反射率は4.4%であり、ヘイズは2.6%である。
各光学フィルムE1〜E6を画像表示装置11の画面11aに貼付して、図2に示したフローチャートに沿って評価データを作成した。画像表示装置12で表示した所定画像は、各光学フィルムE1〜E6に対して同じである。撮影に使用したカメラ13の撮像素子はCMOSイメージセンサであり、画素数は、5616×37444であった。
実験では、各光学フィルムE1〜E6それぞれに対して、露出量を4段階に変えて所定画像の映り込んだ画像を撮影した。そのため、画像データ作成工程S12Aでは、各光学フィルムE1〜E6における映込み画像の4つの信号データそれぞれを輝度データに変換した後、4つの輝度データを合成して処理用の画像データを作成した。露出量の分割の仕方は、光学フィルムE1〜E6間で同じである。
図9は、画像撮影工程で撮影した光学フィルムE1〜E6の映り込み画像を示す図面である。具体的には、図9(a)〜図9(e)の画像は、同じ露出量で撮影された光学フィルムE1〜E6の映り込み画像を示している。
図10は、光学フィルムE2〜E6の評価データを示す図面である。図10から理解されるように、評価データ値の空間周波数に対する変化傾向が、空間周波数領域によっては、光学フィルムE2〜E6間で異なる傾向がある。この点について図11及び図12を参照して説明する。
図11は、光学フィルムE4と、光学フィルムE5の評価データを抜粋した図面である。光学フィルムE4では、評価データ値が低周波領域から高周波領域にかけて実線Iのように直線的に減少するのに対して、光学フィルムE5では、実線IIで示すように、ある空間周波数領域を境に減少傾向が緩やかになっている。すなわち、光学フィルムE4と光学フィルムE5の表面処理特性の性質(特に、防眩性)が、低周波領域と、高周波領域とで異なっている。
図12は、光学フィルムE4の評価データを、光学フィルムE5の評価データで除した結果を示すグラフである。ある評価データを他の評価データで除するとは、同じ空間周波数に対する対応する評価データの比を算出することである。
図12の横軸は、空間周波数を示し、縦軸は、光学フィルムE4の評価データと、光学フィルムE5の評価データの比を示している。比が1のときは、ある空間周波数に対する光学フィルムE4の評価データ値と、光学フィルムE5の評価データ値が同じであることを意味する。従って、比が1となる空間周波数である約4.5cycle/degを境に、光学フィルムE4の表面処理特性の傾向と、光学フィルムE5の表面処理特性の傾向とが反転している。図12中の破線は、光学フィルムE4の表面処理特性の傾向と、光学フィルムE5の表面処理特性の傾向が反転する位置を示している。
そこで、実験では、4.5cycle/degを境として、各光学フィルムE2〜E5の防眩性をそれぞれ評価した。ただし、境界ラインとしての4.5cycle/degは、特定の光学フィルムE4,E5に対する数値であるため、4.5cycle/degの周辺、3cycle/deg以上5cycle/deg以下の領域は、評価対象から外した。そして、3cycle/deg未満の空間周波数領域の防眩性(低周波領域の防眩性)を、空間周波数2.5cycle/deg近傍の空間周波数に対する評価データ値の平均値を利用して表した。これは、図8における防眩性評価値D1で3cycle/deg未満の空間周波数領域の防眩性(低周波領域の防眩性)を評価していることに対応する。5cycle/degより大きい空間周波数領域の防眩性(高周波領域の防眩性)を、空間周波数9.5cycle/deg近傍の空間周波数に対する評価データ値の平均値を利用して表した。これは、図8における防眩性評価値D2で5cycle/degより大きい空間周波数領域の防眩性を評価していることに対応する。なお、評価データ値の平均の取り方は、光学フィルムE2〜E6の評価データ値に対して同じである。
図13は、光学フィルムE2〜E6に対する反射特性を示す図面である。具体的には、光学フィルムE2〜E6においてDC成分(空間周波数が0)の評価データ値を棒グラフで表したものである。図13において、横軸は、各光学フィルムE2〜E6を示しており、図13において左側の縦軸は、DC成分の評価データ値を示している。図13における折れ線は、各光学フィルムE2〜E6の映り込み画像を目視した際の官能評価を示している。具体的には、図13における折れ線グラフは、目視による明るさを示している。折れ線グラフで示される明るさは、図13の右側の縦軸に示すように、図13において上側が明るい。
図14は、光学フィルムE2〜E6に対する防眩性を示すグラフである。図14において、白抜きの棒グラフは、低周波領域の防眩性を示し、ハッチングが施された棒グラフは、高周波領域の防眩性を示している。図14において、横軸は、各光学フィルムE2〜E6を示している。図14の左側の縦軸は、防眩性評価値を示している。
図14の破線及び一点鎖線で示した折れ線グラフは、各光学フィルムE2〜E6の映り込み画像を目視した際の官能評価を示している。具体的には、図14の破線及び一点鎖線で示した折れ線グラフはボケの程度を示している。折れ線グラフで示されるボケの程度は、図14の右側の縦軸に示すように、図14において上側でボケが大きく、下側でボケが小さい。目視による低周波領域の防眩性、すなわち、低周波領域の防眩性は、図15に示した領域Aの目視に基づいており、図14では、破線で示している。目視による高周波領域の防眩性、すなわち、高周波領域の防眩性は、図15に示した領域Bの目視に基づいており、図14では一点鎖線で示している。
図13及び図14から理解されるように、光学フィルムE2〜E6の評価データ値から得られる反射特性並びに低周波及び高周波領域の防眩性の数値は、目視結果と相関がある。そのため、図1に示した評価データ作成装置20及びその装置を用いた評価データ作成方法で作成された評価データによって、表面処理フィルムとしての光学フィルム31の特性を定量的に評価できる。
以上、本発明の種々の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態及び実験例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、評価データ作成装置20は、画像データ作成部21Aを備えている。しかしながら、画像データ作成部21Aで作成される画像データを、予め撮影可能な撮像装置で、映り込み画像を撮影した場合には、画像データ作成部21Aを備え無くてもよい。具体的には、光量に対して信号値が比例しており(図5の破線で示す特性を有する)且つ所望の明るさの範囲を一度に撮影できる撮像装置で、映込み画像を撮影した場合には、画像データ作成部21Aを備え無くてもよい。或いは、画像データ作成部21Aに対応する処理を、撮像装置側が備えている場合にも、画像データ作成部21Aを備えなくてよい。
更に前述したように、画像データ作成部21Aを備えている場合であっても、露出量を変えて映込み画像を複数回撮影していない場合には、画像データ作成部21Aは、工程2を実施しなくてもよい。或いは、所望の明るさの範囲を一度に撮影できる撮像装置で、映込み画像を撮影した場合には、工程2を実施しなくてもよい。
画像データ作成部21Aが、工程1と工程2とを実施する場合、工程1と工程2の順番で行っている形態を説明したが、先に、複数の信号データを合成した後に、その合成されたデータを輝度データに変換してもよい。
撮像装置が備える撮像素子の例はCMOSセンサーに限定されない。例えば、撮像素子としては、例えば、CCDが使用されてもよい。
支持体として画像表示装置11を例示したが、光学フィルム30を支持できれば特に限定されない。画像表示装置11を利用することで、光学フィルム30が実際に使用される状況により近い状況で光学フィルム30を評価できる。
図2に示した評価データ作成方法では、参照用光学フィルム32に映り込んだ画像に対しても、評価用光学フィルム31に対する処理と同様に、処理用画像データを作成すると共に、2次元フーリエ変換をして参照用スペクトルを作成している。しかしながら、参照用スペクトルは、予め評価データ作成装置20の記憶部などに記録しておけば、画像データ作成部21A及びフーリエ変換部21Bは、参照用光学フィルム32に対応するデータの処理を実施しなくてもよい、或いは、初回に一回だけ、実施すればよい。相対スペクトル分布作成部S21Dは、記憶部に格納されている参照用スペクトルを読み出して利用すればよい。
図9〜図14で示した実験結果に基づく評価データの解析方法は一例であり、解析方法は、上記方法に限定されない。特に、低周波及び高周波の防眩性を分ける境界領域の特定方法等は、限定されない。
1…評価データ作成システム、11…画像表示装置(支持体)、13…カメラ(撮像装置)、20…評価データ作成装置、21…データ受付部、22…データ処理部21A…画像データ作成部、22B…フーリエ変換部、22C…相対スペクトル算出部、22D…評価データ作成部、30…光学フィルム、31…評価用光学フィルム(第1の光学フィルム)、32…参照用光学フィルム(第2の光学フィルム)

Claims (8)

  1. 画像表示装置の画面に貼付される光学フィルムを評価する評価データを作成する評価データ作成装置であって、
    支持体に貼付された第1の光学フィルムに所定画像が映り込むことによって前記第1の光学フィルムの表面に現れる第1の映込み画像を撮像装置が撮影して得られる信号データを処理するデータ処理部を備え、
    前記データ処理部は、
    前記信号データに基づく前記第1の映込み画像に対応する第1の画像データを2次元フーリエ変換して第1のスペクトル分布を算出するフーリエ変換部と、
    参照用の第2のスペクトル分布と、前記第1のスペクトル分布との比を演算することによって、相対スペクトル分布を算出する相対スペクトル分布作成部であって、
    前記第2のスペクトル分布は、前記支持体に貼付された参照用の第2の光学フィルムに前記所定画像が映り込んで前記第2の光学フィルムの表面に現れる第2の映込み画像に対応する第2の画像データを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル分布である、
    前記相対スペクトル分布作成部と、
    前記相対スペクトル分布内の同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの平均値を算出して評価データを作成する評価データ作成部と、
    を有する、
    評価データ作成装置。
  2. 前記データ処理部は、
    前記信号データを輝度データに変換することによって、前記第1の画像データを作成する画像データ作成部を、
    更に有し、
    前記フーリエ変換部は、前記画像データ作成部で作成された前記第1の画像データを2次元フーリエ変換する、
    請求項1記載の評価データ作成装置。
  3. 前記画像データ作成部は、複数の信号データをそれぞれ前記輝度データに変換し、変換された前記輝度データを合成することによって、前記第1の画像データを作成し、
    前記複数の信号データは、前記撮像装置における露出量が異なっている前記第1の映込み画像に対応する信号データである、
    請求項2記載の評価データ作成装置。
  4. 画像表示装置の画面に貼付される光学フィルムを評価する評価データを作成する評価データ作成プログラムであって、
    コンピュータに、
    支持体に貼付された第1の光学フィルムに所定画像が映り込むことによって前記第1の光学フィルムの表面に現れる第1の映込み画像を撮像装置が撮影して得られる信号データを処理するデータ処理工程を、
    実行せしめ、
    前記データ処理工程は、
    前記信号データに基づく前記第1の映込み画像に対応する第1の画像データを2次元フーリエ変換して第1のスペクトル分布を算出するフーリエ変換工程と、
    参照用の第2のスペクトル分布と、前記第1のスペクトル分布との比を演算することによって、相対スペクトル分布を算出する相対スペクトル分布作成工程であって、
    前記第2のスペクトル分布は、前記支持体に貼付された参照用の第2の光学フィルムに前記所定画像が映り込んで前記第2の光学フィルムの表面に現れる第2の映込み画像に対応する第2の画像データを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル分布である、
    前記相対スペクトル分布作成工程と、
    前記相対スペクトル分布内の同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの平均値を算出して評価データを作成する評価データ作成工程と、
    を有する、
    評価データ作成プログラム。
  5. 前記データ処理工程は、前記信号データを輝度データに変換することによって、前記第1の画像データを作成する画像データ作成工程を、更に有し、
    前記フーリエ変換工程は、前記画像データ作成工程で作成された前記第1の画像データを2次元フーリエ変換する、
    請求項4記載の評価データ作成プログラム。
  6. 前記画像データ作成工程は、複数の信号データをそれぞれ輝度データに変換し、変換された輝度データを合成することによって、前記第1の画像データを作成し、
    前記複数の信号データは、前記撮像装置における露出量が異なっている前記第1の映込み画像に対応する信号データである、
    請求項5記載の評価データ作成プログラム。
  7. 画像取得部と、
    請求項1〜3の何れか一項記載の評価データ作成装置と、
    を備え、
    前記画像取得部は、
    第1の光学フィルムが貼付される支持体、
    前記支持体と対向して配置され前記第1の光学フィルムに映り込ませる前記所定画像を表示する画像表示装置、及び、
    前記支持体と、前記画像表示装置との間に配置され前記所定画像が前記第1の光学フィルムに映り込むことによって前記第1の光学フィルムの表面に現れる第1の映込み画像を撮影して、前記第1の映込み画像に対応する信号データを得る撮像装置と、
    を有し、
    前記評価データ作成装置の前記データ処理部は、前記画像取得部が有する前記撮像装置からの信号データを処理する、
    評価データ作成システム。
  8. 画像表示装置の画面に貼付される光学フィルムを評価する評価データを作成する評価データ作成方法であって、
    支持体に貼付された第1の光学フィルムに所定画像が映り込むことによって前記第1の光学フィルムの表面に現れる第1の映込み画像を、前記第1の光学フィルムに対向して配置された撮像装置で撮影する撮影工程と、
    評価データ作成装置が、前記撮像装置から前記第1の映込み画像に対する信号データの入力を受け付けるデータ受付け工程と、
    前記データ作成装置が、前記データ作成装置に入力された前記信号データを処理するデータ処理工程と、
    を備え、
    前記データ処理工程は、
    前記データ作成装置が、前記信号データに基づく前記第1の映込み画像に対応する画像データを2次元フーリエ変換して第1のスペクトル分布を算出するフーリエ変換工程と、
    参照用の第2のスペクトル分布と、前記第1のスペクトル分布との比を演算することによって、相対スペクトル分布を作成する相対スペクトル分布作成工程であって、
    前記第2のスペクトル分布は、前記支持体に貼付された参照用の第2の光学フィルムに前記所定画像が映り込んで前記第2の光学フィルムの表面に現れる第2の映込み画像に対応する第2の画像データを2次元フーリエ変換して得られるスペクトル分布である、前記相対スペクトル分布作成工程と、
    前記相対スペクトル分布に含まれる同じ空間周波数に対する複数のスペクトルの平均値を算出して評価データを作成する評価データ作成工程と、
    を有する、
    評価データ作成方法。
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