〈第1実施形態〉本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態は、画像データとして各画素のR値、G値、B値を出力するいわゆるRGBカメラと称されるデジタルカメラを用いた形態である。
図1に示すように、第1実施形態に係る評価装置10は、撮像部9と、撮像部9に接続された画像処理装置(画像処理部に相当。)7とから構成され、撮像部9は、外光遮蔽箱8と、外光遮蔽箱8の内部にそれぞれ配設された、画像計測装置(デジタル撮像装置に相当。)1と、白色光源3と、サンプルホルダ(支持部に相当。)4と、サンプル設置台5と、光吸収板6とから構成されている。
詳しくは、外光遮蔽箱8は、外光を遮断するように構成されて内面は2次反射が略無い(即ち、つやのない)黒色とされ、外光遮蔽箱8の底壁上面にサンプル設置台5が設置され、サンプル設置台5の上面に光吸収板6が敷設され、光吸収板6の上面にサンプルホルダ4が配置されている。光吸収板6の表面は、外光遮蔽箱8の内面と同じく、2次反射が略無い黒色とされている。サンプルホルダ4は、パール色を有する計測対象(対象物に相当。)2を支持するものであり、サンプルホルダ4の表面も、外光遮蔽箱8の内面と同じく、2次反射が略無い黒色とされている。なお、光吸収板6及びサンプルホルダ4においては、少なくとも白色光源3からの光が照射される面を、2次反射が略無い黒色とすればよい。また、サンプル設置台5は、計測対象2全体が画像計測装置1で捉えられるように、上下動するように構成してもよい。
画像計測装置1は、シャッタースピードを変えることにより露出(即ち、露光時間)を変更可能に構成されたRGBカメラであり、サンプルホルダ4に支持された計測対象2を略鉛直方向に沿って上方から撮像するように、配置されている。なお、画像計測装置1全体を外光遮蔽箱8内に配置しなくても、少なくとも、画像計測装置1のレンズ収納部分を外光遮蔽箱8内に配置すればよく、要するに、外光がレンズを介して画像計測装置1内に入射しないように配置すればよい。また、画像計測装置1の撮影角度を可変に構成してもよい。画像計測装置1は、画像処理装置7に接続され、撮像により取得した画像データを画像処理装置7に送信可能に構成されている。
白色光源3は、白色光を発するものであり、撮影方向(即ち、鉛直方向)に対して約45°の角度をなす斜め上方から、サンプルホルダ4に支持された計測対象2に光を照射するように配置されている。なお、照射角度を可変に構成してもよい。撮影方向と白色光源3からの光とがなす角度は、人が計測対象2を観察するときの視線と光源からの光とがなす角度に合わせることが好ましい。計測対象2は、本実施形態では真珠Pである。
画像処理装置7は、汎用のパーソナルコンピュータから構成され、画像計測装置1から送信された画像データを受信する受信手段(画像データを取得する画像データ取得手段に相当。)と、受信した複数の画像データのうち露出が最大の画像データの各画素値を所定の閾値と比較することにより、各画素値が処理対象領域内のものか否かを示す処理対象領域抽出情報を生成する処理対象領域抽出情報生成手段と、受信した複数の画像データを合成することにより、広DR画像データ(即ち、合成前の各画像データよりも輝度範囲が広い広輝度ダイナミックレンジの画像データ)を生成する広DR画像データ生成手段と、広DR画像データ内の各画素値と処理対象領域抽出情報とに基づいて、光沢の評価量として、広DR画像データの処理対象領域における輝度値の歪度を算出するとともに、色の評価量として、処理対象領域における色彩値のばらつき度を算出する評価値算出手段とを備えている。評価値算出手段は、算出した輝度値の歪度及び色彩値のばらつき度を、画像処理装置7が備える出力手段(本実施形態では、ディスプレイ装置。)に出力する。
以上のように構成された評価装置10を用いて、真珠Pの光沢及び色を評価する評価方法について、次に説明する。
評価装置10では、図2に示すような流れで、光沢及び色(即ち、色彩)の数値化を行なう。即ち、まず、撮像部9において画像計測装置1により真珠Pの画像撮影を行なう(ステップS101)。次に、画像計測装置1から受信した画像データ(以下、単に「画像」ともいう。)に基づいて、画像処理装置7が処理対象領域抽出マスク(処理対象領域抽出情報に相当。)を生成する(S102)。そして、画像処理装置7は、受信した画像データに基づいて広DR画像データを生成し(S103)、広DR画像データと処理対象領域抽出マスクとを用いて、光沢の評価量として、処理対象領域内の輝度値の歪度を算出する光沢の数値化処理を行い(S104)、色の評価量として、処理対象領域内の色彩値のばらつき度を算出する色彩の数値化処理を行う(S105)。本実施形態では、標準偏差に基いてばらつき度を算出するが、勿論、分散等の他の統計量に基づいてばらつき度を算出してもよい。なお、処理対象領域抽出マスク生成処理(S102)と広DR画像生成処理(S103)の順序は逆でもよく、光沢の数値化処理(S104)と色彩の数値化処理(S105)の順序は逆でもよい。画像撮影処理(S101)が画像データ取得ステップに、処理対象領域抽出マスク生成処理(S102)が処理対象領域抽出情報生成ステップに、広DR画像生成処理(S103)が広DR画像データ生成ステップに、光沢の数値化処理(S104)及び色彩の数値化処理(S105)が評価値算出ステップに、それぞれ相当する。
以下、ステップS101〜105の各処理について詳述する。
[画像撮影処理]画像撮影処理(S101)では、サンプルホルダ4に支持された真珠Pを白色光源3で照明し、真珠P全体ができるだけ鮮明に撮影できるように画像計測装置1のズーム等を調整する。そして、露出を変えつつ画像計測装置1で複数回撮像することにより、露出が異なる複数の画像データを取得する。なお、露出を変えつつ複数回の撮像を行なうのは、一回の撮像では捉えられない部分(即ち、白とびや黒つぶれ部分)が発生する虞があるためである。本実施形態では、露出を変えるために、シャッタースピード(以下、「S.S.」とも表記。)を変更する。撮影枚数は、画像計測装置1及び真珠Pのダイナミックレンジに依存して可変とし、白とびや黒つぶれ部分がなくなるまで、S.S.を変えて撮影を繰り返す。なお、画像計測装置1のズーム等の調整、S.S.の変更及び撮影は手動により行うが、勿論、自動で行なうように構成してもよい。
詳しくは、図3に示すように、まず、黒つぶれ部分が無いように十分遅いS.S.=tL0で、真珠Pを撮像し、画像L0(i,j)を取得する(S201)。なお、画像計測装置1は横にm画素、縦にn画素(m、nは正整数)を有するものとし、画像L0(i,j)というときは、各画素(i,j)の出力値(画素値)L0(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)からなる画像データという意である。以下、画像L0(i,j)を単に画像L0、後述する画像S1(i,j)を単に画像S1、…というように略す。
画像計測装置1は画像L0を画像処理装置7に送信し、画像処理装置7は、画像L0について有効露光域マスク生成処理を行う(S202)。有効露光域マスク生成処理について、詳説する。画像計測装置1から得られた画像は、各画素でDEV_MIN〜DEV_MAXの範囲を取る。但し、DEV_MIN、DEV_MAXはいずれも、画像計測装置1の性能から定められる値であり、DEV_MIN<DEV_MAXである。また、画像計測装置1によって有効露光域(有効露光範囲。「白とび」や「黒つぶれ」でない画素値の範囲。)も定まり、この範囲をTH_MIN〜TH_MAXとする。TH_MIN、TH_MAXはいずれも、画像計測装置1の性能から定められる値であり、DEV_MIN≦TH_MIN<TH_MAX≦DEV_MAXである。
有効露光域マスクとは、画像中の有効露光域内の信号を抽出するための有効露光域抽出情報であり、画像の各信号成分の有効露光域マスクの論理積をとったものを、その画像の有効露光域マスクとする。つまり、各画素において、全信号成分が有効露光域内にあるとき、その画素を有効露光域内にあるとする。図6に示すように、画像計測装置1がRGBカメラである場合には、各画素(i,j)から出力された画素値は、R値(R信号)、G値(G信号)、及び、B値(B信号)を成分として含むので、R値、G値、B値のそれぞれについて、有効露光域にあるか否かを判定して、有効露光域にあれば値1、なければ値0とすることにより、RGB信号の各成分について有効露光域マスクを生成し、それらの有効露光域マスクの論理積を取ったものを、その画像の有効露光域マスクとする。
本実施形態では、図7に示すように、処理対象とする画像中の各画素(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)について、R値R(i,j)が有効露光域内にあるか否か、即ち、TH_MIN<R(i,j)<TH_MAXを満たすか否かを判定し(S502)、満たさなければE(i,j)=0とし(S503)、満たせば、次に、G値G(i,j)が有効露光域内にあるか否か、即ち、TH_MIN<G(i,j)<TH_MAXを満たすか否かを判定し(S504)、満たさなければE(i,j)=0とし(S505)、満たせば、さらに、B値B(i,j)が有効露光域内にあるか否か、即ち、TH_MIN<B(i,j)<TH_MAXを満たすか否かを判定し(S506)、満たさなければE(i,j)=0とし(S505)、満たせばE(i,j)=1とする(S508)。即ち、R値、G値、B値の全てが有効露光域内にある画素については値1、そうでない画素については値0をとるような有効露光域マスクを生成する。
次に、画像処理装置7は、画像L0の全ての画素が有効露光域内か否か、すなわち、画像L0の全画素(i,j)についてE(i,j)=1か否かを判断し(S203)、全画素(i,j)についてE(i,j)=1であれば、画像撮影処理を終えるが、1つでもE(i,j)=0の画素があれば、画像処理装置7は、画像計測装置1にtL0より速いS.S.での撮影を行わせる。画像計測装置1は、撮影枚数カウンタの値kを0とし(S204)、kを1増加させて(S205)、S.S.=tL0では捉えられなかった部分(輝度が画像計測装置1の能力を超えて飽和状態となっている部分。即ち、白とび部分)を捉えられるように、S.S.をtL0より速いtS1に変更して、真珠Pを撮像し、画像S1(i,j)を取得する(S206)。撮影枚数カウンタは、画像S1以降の撮影枚数をカウントすることとなる。
画像計測装置1は画像S1を画像処理装置7に送信し、画像処理装置7は、画像S1について、画像L0の場合と同様にして、有効露光域マスク生成処理を行う(S207)。そして、画像S1の全画素が有効露光域内か否かを判定し(S208)、全画素が有効露光域内であれば、画像撮影処理を終え、そうでなければ、kを1増加させて(S205)、S.S.=tL0及びS.S.=tS1では捉えられなかった部分を捉えられるように、S.S.をtS1より速いtS2に変更して、画像計測装置1により真珠Pを撮像し、画像S2(i,j)を取得して(S206)、画像S2について有効露光域マスク生成処理を行う(S207)。同様に、全画素が有効露光域内にある画像Skが得られるまで、段々とS.S.を早くしつつ(即ち、露光時間を短くしつつ)真珠Pを撮像し、画像S1(i,j),…,SN(i,j)を取得するとともに、それらの有効露光域マスクを生成する(S205〜208)。画像S1,S2,…,SNを取得したときのS.S.は、それぞれ、tS1,tS2,…,tSNであり、tL0>tS1>tS2>…>tSNである。また、画像SNの全画素は有効露光域内にある。
[処理対象領域抽出マスク生成処理]処理対象領域抽出マスク生成処理(S102)では、画像処理装置7は、各画素値が処理対象領域内のものか否かを示す処理対象領域抽出マスクを生成する。処理対象領域とは、画像において処理対象とすべき領域、即ち、真珠Pとされる領域をいい、以下、真珠領域ともいう。真珠領域は略円形である。画像が、真珠P以外の背景部分等、処理対象とすべきでない部分を含む場合には、画像中の各画素が処理対象領域に入っているか否かを判定する必要があるため、この判定に用いる処理対象領域抽出マスクを生成する。
詳しくは、上記画像撮影処理で取得した複数の画像のうち、最も露光時間が長い画像L0を用い、図4に示すように、各画素値L0(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)について、画素値L0(i,j)と所定の閾値TH_TGTとを比較し、閾値TH_TGTより大きい場合にはTGT(i,j)=1とし、大きくない場合にはTGT(i,j)=0とする処理を行なう(S301〜305)。これにより、処理対象領域抽出マスクTGT(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)が生成される。即ち、処理対象領域抽出マスクは、各画素値と所定の閾値との比較結果を0,1で示すものである。なお、ステップS301及びS305のループは、i、jの値を変えつつ、その間の処理を繰り返すことを示している。以下のフローチャートでも同様である。
閾値TH_TGTは、背景として扱うべき信号の最大値である。したがって、TGT(i,j)=1であれば画素(i,j)は処理対象領域内に、TGT(i,j)=0であれば画素(i,j)は処理対象領域外にあるといえる。画像計測装置1においては、背景はサンプルホルダ4または光吸収板6であり、2次反射の無い黒色であるので、閾値TH_TGTは0に近い小さい値となる。また、画像L0を用いたのは、取得した画像L0,S1,…,SNの中で最も露光時間が長く、信号(画素値)が最も大きい画像であるため、真珠Pの部分に相当する画素であるにもかかわらず信号が小さいために背景部分として扱われてしまうような虞が少ないからである。
[広DR画像生成処理]広DR画像生成処理(S103)では、画像処理装置7は、画像L0,S1,…,SNについての有効露光域マスクを用いて、広DR画像結合処理を行なう(S401)。以下、画像L0,S1,…,SNについて生成した有効露光域マスクの各画素値を、それぞれ、E_L0(i,j)、E_S1(i,j)、…、E_SN(i,j)と表記する。例えば、E_L0(i,j)は、画像L0の画素(i,j)に対する有効露光域マスクの画素値であり、E_L0(i,j)=1であれば、画像L0の画素(i,j)が有効露光域内にあり、0であれば有効露光域内にないことを示している。
図8に示すように、生成しようとする広DR画像の各画素値をW(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)としたとき、画像処理装置7は、まず、画素値W(i,j)を0とする(S602)。次に、画像処理装置7は、最もS.S.が長い画像L0の画素(i,j)が有効露光域内にあるか否か、即ち、E_L0(i,j)=1を満たすか否かを判定し(S603)、満たせば、W(i,j)をL0(i,j)/tL0とし(S604)、満たさなければ、次にS.S.が長い画像S1の画素(i,j)が有効露光域内にあるか否か、即ち、E_S1(i,j)=1を満たすか否かを判定する(S605)。そして、満たせば、W(i,j)をS1(i,j)/tS1とし(S606)、満たさなければ、次にS.S.が長い画像S2の画素(i,j)が有効露光域内にあるか否か、即ち、E_S2(i,j)=1を満たすか否かを判定する(S607)、という処理を、S.S.が長い画像から順に行なう。なお、E_SN-1(i,j)=1を満たさない画素(i,j)については、W(i,j)をSN(i,j)/tSNとする(S611)。上述したように、画像SNの全画素は有効露光域内にあることから、E_SN(i,j)=1を満たさない画素は存在しないので、E_SN(i,j)=1を満たすか否かは判定しない。そして、かかる処理を各画素(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)について行うことにより、画素値W(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)からなる広DR画像を生成する。
即ち、画像処理装置7は、有効露光域内にある画素値であって、かつ、S.S.が長い(即ち、露出が大きい)画像の画素値を優先的に採用することにより、広DR画像を生成する。なお、ある画像の画素値を採用するときには、画素値からS.S.の影響を排除するため、その画像の撮像時のS.S.で画素値を除算することにより、単位時間当たりの画素値とする。
図9を用いて、撮影枚数が4枚の場合の広DR画像生成について説明する。図9の(a)〜(e)において黒色部分は、有効露光域外であることを示す。まず、画像L0については、(a)に示すように、その有効露光域内で(図中、白色部分で示す)の各画素値をS.S.で除算した値、L0(i,j)/tL0を広DR画像の画素値(以下、「広DR画素値」という。)とする。これにより、(a)の白色部分について広DR画素値が決まる。次に、画像S1については、その有効露光域は(b)の斜線部分に示す部分であるが、(a)の白色部分と重なる部分については(a)の白色部分の方を優先するので、(b)の斜線部分中、(a)の白色部分と重ならない部分について、各画素値をS.S.で除算した値、S1(i,j)/tS1を広DR画素値とする。同様に、画像S2の有効露光域を示す(c)の斜線部分中、(b)の斜線部分と重ならない部分について、S2(i,j)/tS2を広DR画素値とし、画像S3の有効露光域を示す(d)の横線部分中、(c)の斜線部分と重ならない部分について、S3(i,j)/tS3を広DR画素値とする。これにより、(e)に示すように広DR画像が生成される。(e)に示された各斜線部分及び横線部分は、(b)〜(d)に示された同様の斜線部分及び横線部分よりも範囲が狭くなっている。これは、露出の大きい方の画素値を優先して採用しているからである。
[光沢の数値化処理]光沢の数値化処理(S104)では、画像処理装置7は、図10に示すように、まず、広DR画像の各画素値W(i,j)から各画素の輝度値Y(i,j)を計算する(S701)。詳しくは、各画素値W(i,j)はR値、G値、及び、B値を有するので、これらの値から、CCIR(国際無線通信諮問委員会)が勧告する規格601‐1に則った次式[数1]を用いて、輝度値Y(i,j)を計算する。なお、以下の式において、R、G、Bは、それぞれR値、G値、B値を表す。
次に、画像処理装置7は、処理対象領域抽出マスクを用いて、広DR画像の各画素の輝度値から処理対象領域内の画素の輝度値を抽出する(S702〜705)。詳しくは、各画素(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)について、その画素に対応する処理対象領域抽出マスクの値TGT(i,j)が1か否かを判定し(S703)、1であれば、処理対象輝度値(処理対象領域内の画素の輝度値)の数hを1加算して、その画素の輝度値Y(i,j)を処理対象輝度値P(h)として採用する(S704)。なお、hの初期値は0とする。一方、TGT(i,j)=1でなければ、その画素の輝度値は処理対象輝度値として採用しない。
画像処理装置7は、抽出した処理対象輝度値P(h)(但し、h=1,2,…,H)から、光沢の評価量として、次式[数2]により、処理対象輝度値の3次統計量である歪度Skを算出する(S706)。
なお、[数2]において、Pは、処理対象輝度値P(h)からなるベクトル(P(1),P(2),…,P(H))であり、μは、P(1),P(2),…,P(H)の平均、σはP(1),P(2),…,P(H)の標準偏差である。
[色彩の数値化処理]色彩の数値化処理(S105)では、画像処理装置7は、図11に示すように、処理対象領域抽出マスクを用いて、広DR画像の各画素の画素値(色彩値)から処理対象領域内の画素の色彩値を抽出する(S801〜804)。詳しくは、各画素(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)について、その画素に対応する処理対象領域抽出マスクの値TGT(i,j)が1か否かを判定し(S802)、1であれば、処理対象色彩値(処理対象領域内の画素の色彩値)の数lを1加算し、その画素の画素値W(i,j)を処理対象色彩値Q(l)として採用する(S803)。なお、lの初期値は0とする。一方、TGT(i,j)=1でなければ、その画素の色彩値は処理対象色彩値として採用しない。
画像処理装置7は、抽出した処理対象色彩値Q(l)(但し、l=1,2,…,L)から、色彩の評価量として、次式[数3]により色彩値のばらつき度(本実施形態では、2次統計量である標準偏差)Cvを算出する(S805)。
なお、[数3]において、Qは、処理対象色彩値Q(l)からなるベクトル(Q(1),Q(2),…,Q(L))であり、μは、Q(1),Q(2),…,Q(L)の平均、σはQ(1),Q(2),…,Q(L)の標準偏差である。
色彩値Q(l)はR値、G値、及び、B値を有するので、本実施形態の色彩値のばらつき度は、次の(i)〜(iii)のように求める。
(i) 色彩値Q(l)のR値、G値、及び、B値を次式[数4]で正規化し、正規化信号R´、G´、B´を得る。
(ii)正規化信号R´、G´、B´についてそれぞれ標準偏差CvR、CvG、CvBを求める。
(iii)CvR、CvG、CvBをRGB色空間(3次元空間)内のベクトルとして、次式[数5]によりユークリッド距離を計算し、色彩値のばらつき度とする。
画像処理装置7は、以上のように算出した広DR画像の処理対象領域内の輝度値の歪度、及び、色彩値のばらつき度をディスプレイ装置に表示する。上記非特許文献1から、輝度値の歪度が正であれば人間は光沢があると感じ、かつ、輝度値の歪度が大きい程光沢が強いと感じることが分かっている。したがって、輝度値の歪度から光沢を評価することができる。また、色彩値のばらつき度が大きい程、干渉色が豊富であり、パール色として優れているといえる。したがって、色彩値のばらつき度から色を評価することができる。
《試験例1》以下、第1実施形態の評価を行なった試験例1について説明する。試験例1では、図12に示すように、画像計測装置1としてRGBカメラ(ここでは、ヤマハ社製YWD001)、計測対象2として真珠P、白色光源3として太陽光の特性を模擬した人工太陽灯、サンプルホルダ4としてつやのない黒色板、サンプル設置台5として机、光吸収板6として暗幕、画像処理装置7として汎用パーソナルコンピュータを備えた評価装置10を用いた。また、外光遮蔽箱8として暗室を用い、画像処理装置7は外光遮蔽箱8内に設置した。
画像計測装置1の出力値の分解能は12bit(0〜4095)であり、即ち、DEV_MIN=0、DEV_MAX=4095である。また、画素数は、横m=320、縦n=240である。また、TH_MIN=0、TH_MAX=4095とした。また、試験例1では、TH_TGTは、固定値ではなく、各真珠Pについての処理の度に、広DR画像の左上30×30ピクセルの領域の平均輝度とその標準偏差σを算出し、TH_TGT=平均輝度+3σとした。左上30×30ピクセルの領域を採用したのは、各真珠Pの広DR画像において略黒色となる領域、すなわち、まず間違いなく背景となる領域であり、この領域の平均輝度+3σ以下であれば背景として扱ってよいからである。なお、この平均輝度+3σが約15となったことから、TH_TGT=15と固定値にしてもよい。また、後述する大津の閾値選択により、TH_TGTを定めてもよい。計測対象2としては、専門家の目視評価によりA〜Cの3段階に分類された真珠Pを用いた。Aランクは15個、Bランクは18個、Cランクは17個である。広DR化(広輝度ダイナミックレンジ化)のための撮影枚数は、各真珠Pで4枚ずつとし、各真珠Pについて画像L0、S1、S2、S3を得た。なお、tL0、tS1、tS2、tS3は表4に示すとおりである。
画像処理装置7は、画像計測装置1から取得した各真珠Pの画像L0を用いて、各真珠Pについて、処理対象抽出マスクを生成した。また、各真珠Pについて、それぞれ画像L0、S1、S2、S3に対する有効露光域マスクを生成し、それらの有効露光域マスクを用いて、画像L0、S1、S2、S3から広DR画像を生成した。そして、各真珠Pについて、広DR画像から輝度値の歪度と色彩値のばらつき度とを算出した。算出された各真珠Pの輝度値の歪度と色彩値のばらつき度とを、表1に示す。表1において、A−1、A−2、…の記号は、各真珠Pに付されたランクとランク内での番号を示す。また、上段の「光沢」は輝度値の歪度であり、下段の「色の多様性」は色彩値のばらつき度である。
表2は、表1に示す各真珠Pの光沢及び色の多様性を、ランク毎に平均したものである。また、図13は、光沢を横軸、色の多様性を縦軸として、表1に示す各真珠Pの光沢及び色の多様性を図示するとともに、表2に示すランク毎の平均を図示したものである。
表2及び図13から、光沢の評価は、Cランク、Bランク、Aランクの順に高くなっており、色の多様性の評価は、Bランク、Cランク、Aランクの順に高くなっており、専門家による評価に略合致していることが分かる。
なお、色の多様性については、BランクとCランクとの間で、専門家による評価と逆転しているが、図14は、各ランクの数値のばらつきに統計的有意差があるか否かを、分散分析による有意差検定(p<0.05)で検定した結果を示すものである。図14の右上は光沢、左下は色の多様性に関する検定結果を示し、○は有意差あり、×は有意差なしを示す。図14に示すように、光沢についてはいずれのランク間でも有意差があるが、色の多様性については、AランクとBランクとの間、AランクとCランクとの間には、有意差があるものの、BランクとCランクとの間には有意差がない。即ち、試験例1における色の多様性についてのB,Cランク間の評価の逆転に統計的意味は無く、BランクとCランクとは色の多様性については同等であるといえる。したがって、光沢において優れているBランクの真珠Pの方が、全体としてCランクの真珠Pよりも優れていると評価できる。
試験例1から、第1実施形態によれば、真珠Pについて、専門家による評価に合致した正しい評価を行なうことが可能であることが分かる。
第1実施形態では、画像L0の各画素値と閾値TH_TGTとの比較結果を示す処理対象領域抽出マスクを生成し、その処理対象領域抽出マスクを用いて、処理対象領域内と判定される画素値のみを抽出して、抽出された画素値により評価量を算出しているので、画像データに背景部分が入ってしまう場合にも、画像データから背景以外の部分(即ち、対象物に相当する部分)を処理対象領域として抽出することが可能となり、背景部分の影響を除去できて、正しい評価を行うことが可能である。
また、第1実施形態では、露出が異なる複数の画像を合成して広DR画像を生成し、その広DR画像から、輝度値の歪度と色彩値のばらつき度とを算出して、光沢と色とを評価しているので、撮像装置の制約に起因する白とびや黒つぶれによる情報の欠落を防止できる。したがって、広DR画像を用いない場合よりも正確に、輝度値の歪度及び色彩値のばらつき度を算出でき、真珠の光沢と色について、より正しい評価を行なうことが可能である。
また、第1実施形態では、広DR画像を生成するときに、有効露光範囲にある画素値であって、かつ、露出が大きい方の画素値を優先的に用いている。露出が大きい画像データの方が露出が小さい画像データよりも、信号が大きく、対象物の色彩をより正確に捉えているので、第1実施形態によれば、かかる広DR画像を用いない場合よりも正確に、輝度値の歪度と色彩値のばらつき度を計算できる。
さらに、第1実施形態では、画像計測装置1として比較的安価なRGBカメラを用いているので、コストを低減できる。
〈第2実施形態〉次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。以下、第1実施形態の評価装置10の構成要素に対応する第2実施形態の構成要素については、第1実施形態の評価装置10の構成要素の符号にBを付し、適宜その説明を省略する。
第2実施形態に係る評価装置10Bは、画像計測装置1BがRGBカメラではなく、マルチスペクトルカメラとも称される分光画像計測装置である点を除き、図1に示す第1実施形態と同様の構成を有している。
分光画像計測装置は、波長毎に光の強度を捉えることができるデジタル撮像装置である。図15は、分光画像計測装置が取得する画像のイメージであるが、1回の撮影で、波長λ毎の画像(以下、「分光画像」という。)(x,y)が得られ、これら複数の分光画像(x,y)で1つの画像が形成される。例えば、可視光である波長420nm〜720nmの範囲の光を、10nm刻みで計測するとすれば、31枚の分光画像が得られることとなる。分光画像計測装置では、(1)分光画像から分光反射率を求めるプロセス、及び、(2)ある光源下での色彩値を計算で求めるプロセスが必要となる。なお、分光反射率は、光を略すべて反射する標準白色板を計測した画像と割り算することで求める。また、広DR化処理は分光反射率レベルで行う。
第2実施形態に係る評価装置10Bを用いて、計測対象2である真珠Pの光沢及び色を評価する評価方法について、次に説明する。
第2実施形態に係る評価装置10Bにおいても、第1実施形態に係る評価装置10と同じく、図2に示すように、画像データ取得ステップに相当する画像撮影処理(S101)、処理対象領域抽出情報生成ステップに相当する処理対象領域抽出マスク生成処理(S102)、広DR画像データ生成ステップに相当する広DR画像生成処理(S103)、及び、評価値算出ステップに相当する光沢の数値化処理(S104)及び色彩の数値化処理(S105)を実行する。但し、画像撮影処理(S101)に上記プロセス(1)が、広DR画像生成処理に上記プロセス(2)が入る。以下、これらの処理について説明する。
[画像撮影処理]画像撮影処理(S101)では、図16に示すように、まず、画像計測装置1Bにより、S.S.=tL0で標準白色板を撮影して、画像wL0を取得する(S1001)。なお、画像計測装置1Bは横にm画素、縦にn画素(m、nは正整数)を有し、可視光の範囲で等間隔に設定された波長λ1,λ2,…,λKの各光の強度を捉えられるものとする。したがって、画像wL0は、画素値wL0(i,j,λk)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n、k=1,2,…,K)からなる画像となる。
次に、画像計測装置1BによりS.S.=tL0で真珠Pを撮影して、画素値pL0(i,j,λk)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n、k=1,2,…,K)からなる画像pL0を取得する(S1002)。なお、tL0は、真珠Pの撮影時に黒つぶれ部分(露出不足部分)がないような遅いシャッタースピードとする。
さらに、画像計測装置1Bにより、tL0より速いS.S.=tS1で標準白色板を撮影して、画素値wS1(i,j,λk)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n、k=1,2,…,K)からなる画像wS1を取得し(S1003)、画像計測装置1BによりS.S.=tS1で真珠Pを撮影して、画素値pS1(i,j,λk)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n、k=1,2,…,K)からなる画像pS1を取得する(S1004)。なお、tS1は、S.S.=tL0による真珠Pの撮影時に生じた白とび部分(露出過剰部分)を捉えられるようなシャッタースピードとする。
なお、本実施形態では、撮影枚数は標準白色板と真珠Pとでそれぞれ2枚とするが、勿論、画像計測装置1の性能に応じて撮影枚数は変更可能である。但し、標準白色板と真珠Pとで撮影枚数は同じとする。また、標準白色板と真珠Pの撮影順序は任意である。
画像計測装置1Bにより取得された画像wL0、pL0、wS1、pS1は、画像処理装置7Bに送信される。画像処理装置7Bは、画像wL0及び画像pL0から、式rL0(i,j,λk)=pL0(i,j,λk)/wL0(i,j,λk)により、S.S.=tL0のときの分光反射率rL0(i,j,λk)を求める(S1005)。分光反射率rL0(i,j,λk)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n、k=1,2,…,K)からなる画像を、以下、分光反射率画像rL0という。
また、画像処理装置7Bは、画像wS1及び画像pS1から、式rS1(i,j,λk)=pS1(i,j,λk)/wS1(i,j,λk)により、S.S.=tS1のときの分光反射率rS1(i,j,λk)を求める(S1006)。分光反射率rS1(i,j,λk)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n、k=1,2,…,K)からなる画像を、以下、分光反射率画像rS1という。
[処理対象領域抽出マスク生成処理]処理対象領域抽出マスク生成処理(S102)では、画像処理装置7Bは、分光反射率画像rL0の各画素(i,j)において全波長λ1,λ2,…,λKでの分光反射率を平均した平均反射率画像を対象に、閾値TH_TGT=0.1として、処理対象領域抽出マスクを生成する。即ち、分光反射率画像rL0の各画素(i,j)について、その平均反射率が0.1より大きければTGT(i,j)=1、0.1より大きくなければTGT(i,j)=0として、処理対象領域抽出マスクTGT(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)を生成する。
[広DR画像生成処理]広DR画像生成処理(S103)では、図17に示すように、画像処理装置7Bは、広DR画像生成を行なった後(S1101)、色彩値変換を行う(S1102)。広DR画像生成では、まず、分光反射率画像rL0、rS1の各々に対して、閾値TH_MIN=0、TH_MAX=1として、有効露光域マスクを生成する。なお、上述したように、tL0を、真珠Pの撮影時に黒つぶれ部分がないようなシャッタースピードとし、tS1は、S.S.=tL0による真珠Pの撮影時に生じた白とび部分をカバーできるようなシャッタースピードとしたので、閾値TH_MIN=0とする(即ち、反射率が低い方は全て有効露光域内とする)。また、閾値TH_MAX=1としたのは、分光反射率画像rL0、rS1における反射率は、真珠Pの反射率を標準白色板の反射率で割ったものであり、1より大きい場合は、標準白色板の反射率を超えており、白とび部分(有効露光域外)であると考えられるからである。
詳しくは、図18に示すように、分光反射率画像rL0、rS1は、それぞれ、波長λ1,λ2,…,λKの反射率画像からなるので、これら波長毎の反射率画像について、それぞれ、有効露光域マスクを取得し、それらの論理積を取る。有効露光域マスクの取得について、図19を用いて説明すると、ある波長の反射率画像中の各画素(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)について、その反射率I(i,j)が有効露光域内にあるか否か、即ち、TH_MIN<I(i,j)<TH_MAXを満たすか否かを判定し(S1202)、満たさなければE(i,j)=0とし(S1203)、満たせばE(i,j)=1とする(S1204)。これにより、その波長での有効露光域マスクが取得される。このような有効露光域マスクの取得を、波長λ1,λ2,…,λKの各々について行い、それら各波長の有効露光域マスクの論理積を取ったものを、その分光反射率画像の有効露光域マスクとする。
次に、画像処理装置7Bは、分光反射率画像rL0、rS1と、上記のように分光反射率画像rL0、rS1のそれぞれについて生成した有効露光域マスクとを用いて、第1実施形態と同様に、有効露光域内にある画素値であって、かつ、S.S.が長い画像の画素値を優先的に採用する(即ち、本実施形態では、分光反射率画像rL0の画素値を分光反射率画像rS1の画素値よりも優先的に採用する)ことにより、広DR画像を生成する。なお、ある画像の画素値を採用するときには、その画像の撮像時のS.S.で画素値を除算することにより、単位時間当たりの画素値とする。このとき生成された広DR画像は、広DR化された分光反射率画像であるので、以下、広DR分光反射率画像という。この広DR分光反射率画像の各画素値を、rW(i,j,λk)と表記する。但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n、k=1,2,…,Kである。
次に、画像処理装置7Bは、色彩値変換(S1102)を行なう。詳しくは、画像処理装置7Bは、まず、色彩値を計算するために仮定した光源の分光分布特性E(λk)と、広DR分光反射率画像とを用いて、仮定した光源で照明したときの真珠Pからの反射スペクトルS(λk)を、式S(λk)=E(λk)*rW(λk)により算出する。なお、この式において、rW(λk)=rW(i,j,λk)であり、各画素(i,j)について、その反射スペクトルS(λk)が得られることとなる。本実施形態では、仮定の光源として、真珠の鑑定を行う際に用いられる北窓光の分光分布特性を模擬した、C光源と呼ばれる色温度6740[K]の光源(JIS Z 8720で制定したものに相当。)を用いる。図20に、C光源の分光分布特性を示す。このようにして得た各画素(i,j)の反射スペクトルS(λk)からなる画像、即ち、画素値S(i,j,λk)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n、k=1,2,…,K)からなる画像を、以下、広DR画像という。
次に、画像処理装置7Bは、次式[数6]を用いて、広DR画像の各画素(i,j)の反射スペクトルS(λk)を、CIE(国際照明委員会)が勧告するCIE1931表色系の三刺激値(X,Y,Z)に変換する。
なお、[数6]において、x(λk),y(λk),z(λk)は、図21に示すようなCIE1931等色関数の値であり、予め分かっている。即ち、[数6]により、広DR画像の各画素(i,j)について、その三刺激値(X,Y,Z)が得られる。
次に、画像処理装置7Bは、広DR画像の各画素(i,j)について、その三刺激値(X,Y,Z)を、次式[数7]により輝度値Y´と色彩値(x,y)とに変換する。後述する光沢の数値化処理においては、輝度値として、[数7]で求めたY´を用いるが、[数6]で求めたYを用いてもよい。
さらに、画像処理装置7Bは、広DR画像の各画素(i,j)について、CIE1931表色系の三刺激値(X,Y,Z)または色彩値(x,y)から、CIEが勧告するCIE1976表色系の色彩値(u´,v´)を算出する。
ここで、CIE1976表色系の色彩値を算出するのは、CIE1976表色系は、CIE1931表色系とは異なり、2つの色彩値があったとき、その数値の差分が色空間全体において人が感じる色の差(色差)に対応した均等色空間とも呼ばれる色空間だからである。したがって、後述する色彩の数値化処理においては、CIE1976表色系の色彩値(u´,v´)を用いるが、この点を考慮しなければ、CIE1931表色系の色彩値(x,y)を用いてもよい。
[光沢の数値化処理]第2実施形態では、上記色彩値変換処理(S1102)で算出したCIE1931表色系の輝度値Y´を用いて、光沢の評価量として、輝度値の歪度を算出する。
まず、画像処理装置7Bは、処理対象領域抽出マスクを用いて、広DR画像の各画素の輝度値Y´から処理対象領域内の画素の輝度値を抽出する。詳しくは、第1実施形態のステップS702〜706と同様に、広DR画像の各画素(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)について、その画素に対応する処理対象領域抽出マスクの値TGT(i,j)が1か否かを判定し、1であれば、処理対象輝度値の数h(初期値は0)を1加算して、その画素の輝度値Y´(i,j)を処理対象輝度値P(h)として採用し、1でなければ採用しない。なお、第1実施形態のステップS701で行なった輝度値の計算は、上記ステップS1102で既に行なっているので、ここでは行なわない。
画像処理装置7Bは、抽出した処理対象輝度値P(h)(但し、h=1,2,…,H)から、光沢の評価量として、上記[数2]により処理対象輝度値の歪度Skを算出する。
[色彩の数値化処理]第2実施形態では、上記色彩変換処理(S1102)で算出したCIE1976表色系の色彩値(u´,v´)を用いて、色の評価量として、色彩値のばらつき度を算出する。
まず、画像処理装置7Bは、処理対象領域抽出マスクを用いて、各画素の色彩値から処理対象領域内の画素の色彩値を抽出する。詳しくは、第1実施形態のステップS801〜804と同様に、広DR画像の各画素(i,j)(但し、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)について、その画素に対応する処理対象領域抽出マスクの値TGT(i,j)が1か否かを判定し、1であれば、処理対象輝度値の数l(初期値は0)を1加算して、その画素の色彩値(u´,v´)を処理対象色彩値Q(l)として採用し、1でなければ採用しない。
画像処理装置7Bは、抽出した処理対象色彩値Q(l)(但し、l=1,2,…,L)から、色彩の評価量として、上記[数3]により色彩値のばらつき度Cvを算出する。
各色彩値Q(l)はu´値及びv´値を有するので、本実施形態の色彩値のばらつき度は、次の(i)〜(iii)のように求める。
(i) 各色彩値Q(l)について、u´値の標準偏差CvA、及び、v´値の標準偏差CvBを求める。
(ii)CvA、CvBを色平面(2次元平面)内のベクトルとして、次式[数9]でユークリッド距離を計算し、色彩値のばらつき度とする。
画像処理装置7Bは、以上のように算出した広DR画像の処理対象領域内の輝度値の歪度、及び、色彩値のばらつき度をディスプレイ装置に表示する。
《試験例2》以下、第2実施形態の評価を行った試験例2について説明する。試験例2では、試験例1と同じく図12に示すように構成された評価装置10Bを用いる。但し、画像計測装置1Bとして分光画像計測装置(ここでは、Cambridge Research & Instrumentation,Inc.社製Nuance VI-3042)を用い、計測対象2として真珠Pを計測する。また、標準白色板の計測を真珠Pと同じ条件下で行ない、色彩値を計算するときには、仮定光源として上記C光源を用いる。
画像計測装置1の出力値の分解能は12bit(0〜4095)であり、即ち、DEV_MIN=0、DEV_MAX=4095である。また、画素数は、横m=456、縦n=344であり、波長420〜720nmの範囲を10nm間隔で計測する(即ち、K=31)。また、上述したように、TH_MIN=0、TH_MAX=1、TH_TGT=0.1とした。計測対象2としては、専門家の目視評価により第1実施形態と同様にA〜Cの3段階に分類された各ランク2個ずつ計6個の真珠Pを用いた。広DR化のための撮影枚数は、各真珠PでS.S.=tL0、S.S.=tS1の2枚ずつとし、各真珠Pについて分光反射率画像L0、S1を得た。なお、試験例2では、波長毎に表5に示すようにS.S.が異なっている。この波長毎にS.S.を変化させる機能は、波長全域にわたってS/N比を向上させるために、画像計測装置1が有している機能である。試験例2では、tL0は標準白色板が飽和しないように、tS1は真珠Pのハイライト部分が飽和しないように、画像計測装置1が決定している。
画像処理装置7Bは、画像計測装置1Bから取得した各真珠Pの分光反射率画像L0を用いて、各真珠Pについて、処理対象抽出マスクを生成した。また、各真珠Pについて、それぞれ画像L0、S1に対する有効露光域マスクを生成し、それらの有効露光域マスクを用いて、画像L0、S1から広DR分光反射率画像を生成した。そして、各真珠Pについて、広DR分光反射率画像に対して色彩値変換を行って広DR画像を生成し、処理対象抽出マスクを用いて、処理対象領域内の輝度値の歪度と色彩値のばらつき度とを算出した。なお、輝度値にはCIE1931表色系のYを用い、色彩値にはCIE1976表色系の(u´,v´)を用いた。
算出された各真珠Pの輝度値の歪度と色彩値のばらつき度とを、表3に示す。表3において、A−1、A−2、…の記号は、各真珠Pに付されたランクとランク内での番号を示す。また、上段の「光沢」は輝度値の歪度であり、下段の「色の多様性」は色彩値のばらつき度である。また、図22は、光沢を横軸、色の多様性を縦軸として、表3に示す各真珠Pの光沢及び色の多様性を図示したものである。表3及び図22から、光沢と色の多様性のいずれについても、Cランク、Bランク、Aランクの順に評価量が高くなっており、専門家による評価に合致していることが分かる。
試験例2から、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、真珠Pについて正しい評価を行なうことが可能であることが分かる。
さらに、第2実施形態では、画像計測装置1として分光画像計測装置を用いているので、装置に依存しない色空間での輝度値及び色彩値が取得可能であり、真珠Pについて正しい評価を行なうことが可能である。
〈第3実施形態〉本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。以下、第1実施形態の評価装置10の構成要素に対応する第3実施形態の構成要素については、第1実施形態の評価装置10の構成要素の符号にCを付し、適宜その説明を省略する。
図23(a)に示すように、第3実施形態の評価装置10Cは、撮像部9Cと、撮像部9Cに接続された画像処理装置(画像処理部に相当。)7Cとから構成され、撮像部9Cは、外光遮蔽箱8Cと、画像計測装置(デジタル撮像装置に相当。)1Cと、白色光源3Cと、サンプルホルダ(支持部に相当。)4Cと、狭帯域光源11とから構成されている。白色光源3C及びサンプルホルダ4Cは、外光遮蔽箱8Cの内部に配設されている。白色光源3Cは白色光源3と同じ構成であり、外光遮蔽箱8Cは外光遮蔽箱8と同じ構成である。計測対象2は真珠Pである。画像計測装置1Cは画像処理装置7Cに接続されている。
画像処理装置7Cは、画像処理装置7と同じく汎用のパーソナルコンピュータであり、画像処理装置7と同じく、画像データ取得手段と、処理対象領域抽出情報生成手段と、広DR画像データ生成手段と、評価値算出手段とを備えているが、評価値算出手段において色彩値のばらつき度は算出しない。また、画像データ取得手段は、各選別光に対する透過画像データも、受信により取得する。さらに、画像処理装置7Cは、各選別光に対する透過画像データの真珠領域の画素値を正規化して、各選別光に対する正規化画像データを生成する正規化画像データ生成手段と、各選別光に対する正規化画像データについて、平均画像データとの差を表す干渉色判定用画像データを生成する干渉色判定用画像生成手段と、各選別光に対する干渉色判定用画像データに基づいて、カラー画像を生成する干渉色可視化手段と、各選別光に対する干渉色判定用画像データにおける中心部と周辺部とのコントラストを表すコントラスト値を算出する干渉色数値化手段とを備えている。
ここで、透過画像データとは、光を計測対象2の一面側から透過させて、計測対象2の他面側を撮像した画像データをいう。なお、このときの光は、計測対象2を透過することなく直接計測対象2の他面側に漏れることがないようにする。また、正規化画像データとは、透過画像データにおける処理対象領域を正規化した画像データをいう。
狭帯域光源11は、多波長可変光源(本実施形態では、Nikon社製ELS-VIS)であり、420〜720nmの波長域内で10nm間隔で中心波長を変えて、帯域幅約20nmの狭帯域光を発光可能である。なお、後述するように、520nm、580nm、及び、650nmをそれぞれ中心波長とする光を、選別光とする。サンプルホルダ4Cには、上下方向に貫通する円形の孔41が設けられて、真珠Pは孔41の上端縁に支持される。図23(b)は、サンプルホルダ4Cの平面図である。狭帯域光源11からの光は、孔41に導入されて、孔41に支持された真珠Pを下方から照明する。孔41の直径は、真珠Pの直径よりも小径とされるとともに、真珠Pを支持している状態で狭帯域光源11からの光が直接(即ち、真珠Pを透過することなく)サンプルホルダ4Cの上面側に漏れることがないような径とされる。本実施形態では、真珠Pの直径は約7mmであり、孔41の直径は5.5mmとされている。
画像計測装置1Cは、モノクロカメラ(本実施形態では、浜松ホトニクス社製ORCA-ER-1394)であり、レンズ収納部分が外光遮蔽箱8Cの内部に配置されて、孔41に支持された真珠Pを、略鉛直方向に沿って上方から撮像するように構成されている。即ち、画像計測装置1Cは、狭帯域光源11に対向するように配置され、狭帯域光源11により照明される真珠Pの一面側(本実施形態では下面側)とは反対側の真珠Pの他面側(本実施形態では上面側)を撮像する。なお、白色光源3Cは、真珠Pを斜め上方(望ましくは、真珠Pの真上方向に対して約30〜45°傾斜した方向)から照明する。したがって、画像計測装置1Cは、白色光源3Cによって照明された真珠Pを撮像するときは、真珠Pが反射した反射光を捉えるのに対し、狭帯域光源11によって照明された真珠Pを撮像するときは、真珠Pを透過した透過光を捉えることとなる。
《波長の選択》ここで、選別光の決定(波長の選択)について説明する。真珠における干渉は、真珠層の各層の厚さ及び一様性に依存しており、厚さが一様で(即ち、でこぼこが無く)薄い層が多数形成された真珠は、干渉に強弱が生じ、干渉色が豊富となる。したがって、真珠を透過したときの干渉に強弱が(平均を外れて大きく)生じるような波長を中心波長とする狭帯域光を、真珠のランク毎に決定して、選別光とする。すなわち、真珠のランク毎に干渉の強弱が最も顕著になるような波長を選択して、選別光の中心波長とする。波長の選択は、図24に示すような流れで行う。波長の選択の場合も、真珠の評価の場合と同じく評価装置10Cを用いる。以下、波長の選択で用いる真珠を、真珠サンプルともいう。
[画像の計測処理]まず、ランクが分かっている真珠サンプルを、上述したようにサンプルホルダ4Cに支持させて狭帯域光源11で下方から照明し、狭帯域光源11から発する光の波長(中心波長)を変えつつ、画像計測装置1Cで撮像する。すなわち、各真珠サンプルにつき、波長λ1,λ2,…,λNの光で撮像し、N枚の画像(透過画像データに相当。)を得る(図24のステップS1301)。これらの画像を、画像処理装置7Cに入力する。真珠サンプルは、直径約7mmで、Aランク、Bランク、Cランクのそれぞれについて10個ずつとした。なお、真珠鑑定士の目視評価により、評価の高い方からAランク、Bランク、Cランクにランク分けした。また、比較のために、直径8mmの模造真珠2個、及び、ジルコニア製の直径6.35mmのボールベアリング4個も同様に計測とした。
[背景マスクの生成処理]画像処理装置7Cは、真珠領域を抽出するための背景マスクを生成する(図24のS1302)。詳しくは、まず、上記N枚の画像から選択した真珠と背景とが明確に区分される1枚の画像を対象に、または、上記N枚の画像を平均した画像を対象に、真珠領域と背景とを分離するための閾値を選択する。閾値の選択は、大津の閾値選択を用いる。大津の閾値選択は、下記参考文献(1)に記載されており、周知であるので詳説しないが、対象とした画像I(i,j)(但し、iは横方向の変数、jは縦方向の変数であり、i=1,2,…,m、j=1,2,…,n)の各画素が採りうる値0〜IMAXに対し、ある閾値ITHを設定し、0≦I(i,j)<ITH、ITH≦I(i,j)≦IMAXの2群に画素値群を分類し、各群内の画素値のばらつきよりも群間の画素値のばらつきが最大となる閾値ITHを求めるものである。本実施形態では、画像計測装置1Cは、W256×H336ピクセル、画像出力は12ビットであるので、m=256、n=336、IMAX=4095であり、ITHは真珠毎に大津の閾値選択により選択した。そして、図25に示すように、対象とした画像I(i,j)の各画素値が、閾値ITHより小さければ画素値を0、小さくなければ画素値を1として、背景マスクM(i,j)を生成する。M(i,j)=1であれば真珠領域、M(i,j)=0であれば背景(真珠領域外)であることを示す。
[信号の正規化処理]次に、画像処理装置7Cは、上記N枚の画像について、カメラ感度や光源強度等のアーチファクトを軽減するために、信号の正規化を行う(図24のS1303)。図26に基づいて詳述する。波長λkの狭帯域光で撮像したときの画像をI(i,j,k)(但し、kは波長方向の変数であり、k=1,2,…,N)と表記する。なお、波長λkという代わりに、波長kということもある。まず、図26の「ループ1」に示すように、画像I(i,j,k)に基づいて、波長毎の平均画素値P(k)を計算する。詳しくは、波長kを固定しておいて、平均画素値P(k)及び加算回数Cを0とし(S1501)、画像I(i,j,k)について、背景マスクM(i,j)により、真珠領域内の画素値を抽出してP(k)に加算するとともに、加算回数を数える(図26の「ループ2」参照)。そして、真珠領域内の全画素値の合計P(k)が得られたら、そのP(k)を加算回数で除算することにより、波長kについて平均画素値P(k)を生成する(S1504)。これを、全ての波長kについて繰り返し、波長k毎に平均画素値P(k)を得る。次に、図26の「ループ3」に示すように、画像I(i,j,k)の真珠領域内の各画素値を、平均画素値P(k)で除算することにより、正規化画像(正規化画像データに相当。)In(i,j,k)を生成する(S1505、S1506)。なお、正規化画像In(i,j,k)において、真珠領域外の画素値は0とする(S1507)。
[干渉色による空間的信号変化の抽出処理]画像処理装置7Cは、各正規化画像In(i,j,k)に基づいて、干渉色による空間的信号変化の抽出を行う(図24のS1304)。図27に基づいて詳述する。画像処理装置7Cは、各正規化画像In(i,j,k)の各画素について、その画素値を波長方向に合計し(図27の「ループ2」参照)、加算回数Cでその合計を除算することにより、平均画素値S(i,j)を生成する。これを、全画素(i,j)について繰り返し、平均画像(平均画像データに相当。)S(i,j)を生成する(図27の「ループ1」参照)。そして、正規化画像In(i,j,k)から平均画像S(i,j)を減算することにより、平均的な画像強度変化を除去した画像(干渉色判定用画像データに相当。)Inn(i,j,k)を生成する(図27の「ループ3」参照)。画像Inn(i,j,k)は、平均画像S(i,j)との差、即ち、平均的な強度変化パターンからの外れを反映するものであり、その外れを2次元空間上のパターンとして可視化できるものであるので、空間パターン可視化画像ともいう。
図28の(a)はAランクの真珠サンプルの背景マスク済みのカメラ画像、(b)は同真珠サンプルの空間パターン可視化画像であり、(c)はBランクの真珠サンプル、(d)はCランクの真珠サンプル、(e)は模造真珠、(f)はボールベアリングの空間パターン可視化画像である。また、それぞれ上から順に、波長520、580、650nmの光を透過させたときの画像である。図28(b)〜(d)から、波長520nmのとき、Aランクでは周辺部が暗く中心部が明るくなるが、B、Cランクでは周辺部が明るく中心部が暗くなる等、波長と真珠のランクによってパターンが異なることが分かる。また、模造真珠やボールベアリングでは、本物の真珠のように周辺部と中心部とで明暗が分かれるようなパターンにはならないことが分かる。したがって、ランクによってパターンの差異がよく出るような波長を選択すれば、空間パターン可視化画像によって真珠をランク分けできることが分かる。但し、空間パターン可視化画像のままでは波長の選択が容易でないので、以下のように、空間パターン可視化画像から、真珠の中心部と周辺部とのコントラストを表すコントラスト値(空間コントラスト)を計算することする。
[空間コントラストの計算処理]画像処理装置7Cは、画像Inn(i,j,k)に基づいてコントラスト値を計算する(図24のS1305)。図29に基づいて詳述する。図29において、C(k)は中心コントラスト変数、S(k)は周辺コントラスト変数、CSC(k)はコントラスト値、CNTはカウンタ、FC(i,j)は真珠領域の中心部が周辺部よりも重くなるように設定された重みづけ数、FS(i,j)は真珠領域の周辺部が中心部よりも重くなるように設定された重みづけ係数である。これらの重みづけ係数の決定方法については後述する。
画像処理装置7Cは、波長k毎に、画像Inn(i,j,k)について、図29の「ループ1」に示す処理を行う。即ち、最初にC(k)、S(k)、CSC(k)、及び、CNTを0とし(S1701)、画像Inn(i,j,k)の真珠領域の各画素値に対して、重みづけ係数FC(i,j)を乗算してC(k)に加算するとともに、重みづけ係数FS(i,j)を乗算してS(k)に加算し、加算回数をCNTでカウントする(図29の「ループ2」参照)。画像Inn(i,j,k)の真珠領域の全画素値に対してかかる処理を行ったら、C(k)からS(k)を減算したものをCNTで除算することにより、CSC(k)を求める。CSC(k)は、波長kによる空間パターン可視化画像Inn(i,j,k)の真珠領域における中心部と周辺部とのコントラストを表す値となり、CSC(k)が正であれば中心部が周辺部よりも明るく、負であれば周辺部が中心部よりも明るいことを示し、CSC(k)の絶対値が大きいほど中心部と周辺部とのコントラストが強いことを示している。
ここで、重みづけ係数の決定方法について説明する。まず、画像処理装置7Cは、図30に示すフローチャートにしたがって、真珠領域の位置と大きさとを検出する。図30において、xは画像全体の右端の座標、yは画像全体の下端の座標、x1、y1、x2、y2は、それぞれ真珠領域の左端、上端、右端、下端の座標を求めるための変数であり、xcは真珠領域の左右方向における中心座標、ycは真珠領域の上下方向における中心座標、cは真珠領域の直径である。
次に、画像処理装置7Cは、図31に示すフローチャートにしたがって、重みづけ係数を計算する。図31において、scは中心部が重み大の場合の重みの総和、ssは周辺部が重み大の場合の重みの総和、fc(i,j)は中心部が重み大の場合の重み係数行列、fs(i,j)は周辺部が重み大の場合の重み係数行列、N([i,j],μ,σ)は、平均ベクトルμをμ=[xc,yc](但し、xc,ycは真珠領域の中心座標)、分散共分散行列Sを次式[数10]で表される行列とした2次元正規分布である。[数10]におけるcは、真珠領域の直径である。
決定した重みづけ係数の模式図を図32に示す。図32(a)は中心部が重み大の場合、図32(b)は周辺部が重み大の場合を示す。
[波長の選択処理]上記のようにして計算したコントラスト値に基づいて、選別光の波長を選択する(図24のS1306)。図33は、計算したコントラスト値を、横軸を狭帯域光源11の波長、縦軸をコントラスト値として示したものであり、(a)はAランクの真珠、(b)はBランクの真珠、(c)はCランクの真珠、(d)は模造真珠、(e)はボールベアリングのコントラスト値を示し、(a)〜(e)において、細線は個々のサンプルのコントラスト値を示し、エラーバー付きの太線は平均を示す。また、(f)は(a)〜(e)における平均を取り出したものである。
図33から、真珠サンプルのランクによって、コントラスト値の平均が高くなる波長が異なることが分かる。したがって、各ランクについて、コントラスト値の平均が他のランクに比して突出して高く(或いは低く)なるような波長を、選別光の波長とすれば、真珠をランク分けできる。本実施形態では、Aランクについては520nm、Bランクについては580nm、Cランクについては650nmを、他のランクよりもコントラスト値の平均が高くなる波長として選択し、選別光の波長とした。図33(a)〜(f)の縦の太線は、これら選択された波長を示す。
《真珠の評価》評価装置10Cを用いて、真珠Pの光沢及び色を評価する評価方法について説明する。
評価装置10Cを用いて真珠Pの光沢を評価する場合、第1実施形態と同様にして、白色光源3Cで照明して、露出を変えつつ真珠Pを複数回撮像することにより、露出の異なる複数枚の画像を得る。そして、それらの画像から広DR画像を生成し、広DR画像から真珠領域における輝度の歪度を求めて、歪度が正で大きい程、光沢がよいと評価する。なお、画像計測装置1Cはモノクロカメラであるので、画像計測装置1Cから出力された画素値は、輝度値と線形の関係にあり、そのまま輝度値として使用できる。すなわち、第3実施形態では、第1実施形態のようにRGB値から輝度値を計算する必要はない。
次に、評価装置10Cを用いて真珠Pの色を評価する場合について、図34に基づいて説明するが、ステップS1801〜S1804の処理は、上述した波長の選択におけるステップS1301〜S1304の処理と同様であるので、適宜説明を省略する。なお、ステップS1801が透過画像データ取得ステップに、ステップS1802及びS1803が正規化画像データ生成ステップに、ステップS1804が干渉色判定用画像生成ステップに、ステップS1805が干渉色可視化ステップに、ステップS1806及びS1807が干渉色数値化ステップに、それぞれ相当する。
[画像の計測処理]真珠Pを、上述したようにサンプルホルダ4Cに支持させて、狭帯域光源11から波長(中心波長)520nm、580nm、650nmの各選別光を照射して、画像計測装置1Cで撮像する(図34のステップS1801)。すなわち、真珠Pにつき3枚の画像を得て、画像処理装置7Cに入力する。
[背景マスクの生成処理]画像処理装置7Cは、真珠領域を抽出するための背景マスクを生成する(図34のS1802)。ここでは、上記3枚の画像を平均した画像を対象に、真珠領域と背景とを分離するための閾値ITHを、大津の閾値選択により選択し、図25に示すようにして背景マスクM(i,j)を生成する。
[信号の正規化処理]次に、画像処理装置7Cは、上記3枚の画像について、図26に示すようにして信号の正規化を行い、正規化画像In(i,j,k)を生成する(図34のS1803)。なお、k=1,2,3であり、k=1は波長520nm、k=2は波長580nm、k=3は波長650nmを表す。
[干渉色による空間的信号変化の抽出]画像処理装置7Cは、各正規化画像In(i,j,k)に基づいて、図27に示すようにして干渉色による空間的信号変化の抽出を行い、空間パターン可視化画像Inn(i,j,k)を生成する(図34のS1804)。ここでの平均画像S(i,j)は、3つの正規化画像In(i,j,k)(k=1,2,3)の平均である。生成した空間パターン可視化画像を、真珠サンプルから得られた空間パターン可視化画像(図28(a)〜(c)参照)と目視で比較することにより、真珠Pのランクを決定可能であるが、ランク付けを容易にするために、以下に説明するように、空間パターン可視化画像に基づいて、干渉色の可視化あるいは数値化を行う。
[干渉色の可視化処理]画像処理装置7Cは、各選別光による空間パターン可視化画像を、1枚のカラー画像に置換することにより、干渉色の可視化を行う(図34のS1805)。図35は、波長の選択における各サンプルの各選別光に対するコントラスト値を、プロットしたものであり、(a)は520nmと580nm、(b)は580nmと650nm、(c)は650nmと520nmに対するものである。図中、黒丸はAランクの真珠、黒い四角はBランクの真珠、黒い菱形はCランクの真珠、黒い上向きの三角は模造真珠、黒い下向きの三角はボールベアリングを示し、各図形中の番号はサンプルに付された番号である。図35(c)から、波長520nmと650nmに対するコントラスト値には強い相関性があることが分かる。そこで、これら2つの選別光のうちいずれか一方は削減可能であり、本実施形態では650nmを削減し、520nmと580nmの2波長による空間パターン可視化画像を用いて、次のようにRGB値を決定して可視化を行うこととする。
画像処理装置7Cは、真珠領域の各画素(i,j)について、画素値Inn(i,j,1)あるいはInn(i,j,2)を、−TH〜+TH(TH;正規化後最大値)までの所定範囲に収まるように正規化した値を、灰色(R,G,B)=(0.5,0.5,0.5)に対して加算することにより、RGB値を決定する。図36に基づいて説明すると、画像処理装置7Cは、まず、正規化係数MXを決定する(S1901)。そして、真珠領域にある画素(i,j)について(S1902でYES)、波長580nmの画素値Inn(i,j,2)に正規化係数MXを乗じたものを0.5に加算してR値(RGB(i,j,1))とし、波長520nmの画素値Inn(i,j,1)に正規化係数MXを乗じたものを0.5に加算してG値(RGB(i,j,2))とし、波長580nmの画素値Inn(i,j,2)に正規化係数MXを乗じたものを0.5に加算してB値(RGB(i,j,3))とする(S1903)。即ち、灰色(R,G,B)=(0.5,0.5,0.5)から、Inn(i,j,1)でG値を変化させ、Inn(i,j,2)でR値及びB値を同量変化させることにより、画素(i,j)の色を決定する。
そして、画像処理装置7Cは、色域判定を行う(S1904)。色域判定では、ステップS1902で算出したR値、G値、B値が、それぞれ0.0以上1.0以下であるか否かを判定し、0.0未満であれば0.0、1.0を超えていれば1.0とする。すなわち、RGB値をそれぞれ0.0〜1.0の範囲に収める。正規化後最大値THを0.5より大きくすると、一定以上のコントラスト値を持つ画素は、最大強度値で強調表示されることとなる。また、正規化後最大値THが0.5以下であれば、RGB値は0.0〜1.0の範囲を超えないので、色域判定は不要である。なお、本実施形態では、正規化後最大値TH=0.5とし、色域判定は不要とする。
一方、画像処理装置7Cは、真珠領域にない画素(i,j)については(S1901でNO)、RGB値を全て0.0とする(S1905)。
ここで、正規化係数MXの決定方法を、図37に基づいて説明する。画像処理装置7Cは、正規化係数MXを固定とするか、計測する真珠P毎に決定するかを、正規化方針フラグの値FLAGにより判断する(S2001)。なお、FLAG=1のとき固定、FLAG=0のとき真珠P毎に決定とする。
画像処理装置7Cは、FLAG=0のとき、波長520nmと580nmに対する空間パターン可視化画像からの各画素値Inn(i,j,k)から最大画素値を抽出する(図37の「ループ1」参照)。そして、正規化後最大値THをその最大画素値で除算したものを、正規化係数MXとする(S2006)。このように、真珠P毎に正規化係数MXを定めれば、真珠P毎に可視化の画像強度を調整可能である。
一方、画像処理装置7Cは、FLAG=1のとき、予め設定された正規化係数CMXを正規化係数MXとする(S2007)。正規化係数CMXは、例えば、多数の真珠サンプルについて、上記FLAG=0のときと同様にして正規化係数MXを求めておき、その平均とすることができる。本実施形態では、正規化係数MXは固定とし、MX=1.2879とする。
図28に示したA〜Cランクの真珠、模造真珠及びボールベアリングの空間パターン可視化画像から、図36の可視化処理により生成されたカラー画像を、白黒で図38に示す。図38では、上から順に、Aランクの真珠、Bランクの真珠、Cランクの真珠、模造真珠、ボールベアリングの画像が示され、左から順に、波長520nmの空間パターン可視化画像、波長580の空間パターン可視化画像、及び、それらから生成されたカラー画像を白黒で表した白黒画像が示されている。これらの白黒画像において、色の濃い部分はカラー画像ではマゼンダの濃い部分であり、色の薄い部分はカラー画像では緑色が濃い部分である。図38から、Aランクの真珠のカラー画像では、周辺部に濃いマゼンダが、中央部に濃い緑色が現れ、Bランクの真珠のカラー画像では、周辺部にマゼンダが、中央部に緑色が現れるが、Aランクの場合よりもそれらの色が薄くなるとともに、周辺部のマゼンダの部分がAランクの場合よりも中央部に入り込んでおり、Cランクの真珠のカラー画像では、周辺部に緑色が、中央部にマゼンダが現れていることが分かる。
図39に、波長の選択で用いた各サンプルについて、上記可視化処理により生成したカラー画像を白黒で示す。但し、図38とは異なり、背景を白にしている。これらの画像からも、Aランクの真珠のカラー画像の多くは、周辺部にマゼンダが中央部に緑色が現れるパターンであり、Cランクの真珠のカラー画像の多くは、周辺部に緑色が中央部にマゼンダが現れるパターンであり、Bランクの真珠のカラー画像では両方のパターンが混在していることが分かる。したがって、波長520nmと580nmの選別光による空間パターン可視化画像から、上述したようにカラー画像を生成すれば、そのカラー画像における色のパターンによって、真珠Pのランクを判別可能であることが分かる。
[干渉色の数値化処理]画像処理装置7Cは、コントラスト値を計算することにより(S1806)、干渉色を数値化する(S1807)。以下、詳述する。まず、画像処理装置7Cは、波長の選択の場合と同様に、真珠Pの空間パターン可視化画像Inn(i,j,k)に基づいて、図29に示すようにして、コントラスト値を計算する。なお、上述したように、520nmと650nmの選別光によるコントラスト値間には強い相関性があることから、数値化処理においても、650nmの選別光によるコントラスト値は用いず、520nmと580nmの選別光によるコントラスト値を計算する。
図40は、波長の選択で用いた各サンプルのコントラスト値を、横軸(X軸)を520nmの選別光に対するコントラスト値、縦軸(Y軸)を580nmの選別光に対するコントラスト値としたXY平面に、プロットしたものであり、(a)はAランクの真珠サンプル、(b)はBランクの真珠サンプル、(c)はCランクの真珠サンプル、(d)は模造真珠、(e)はボールベアリング、(f)は全サンプルを示す。なお、図中の図形は、図35と同様に定めたものである。
図40から、横軸を520nmの選別光に対するコントラスト値、縦軸を580nmの選別光に対するコントラスト値としたときの原点(0,0)に対し、Aランクの真珠サンプルのコントラスト値の多くは、右下方向に存在し、Bランクの真珠サンプルのコントラスト値の多くは、上方向に存在し、Cランクの真珠サンプルのコントラスト値の多くは、左方向に存在することが分かる。すなわち、原点からの方位は、干渉の良さを表している。また、原点からの距離は、干渉の強さを表している。したがって、真珠Pのコントラスト値を、図40に示すようなXY平面にプロットすれば、その原点からの距離と方位とで、真珠Pのランクが判別可能であることが分かる。すなわち、コントラスト値に基づいて、真珠Pのランクを判定することができる。
第3実施形態によれば、色の評価において、それぞれが、真珠を透過したときの干渉に強弱(コントラスト)が生じるような波長を、中心波長とする狭帯域の複数の選別光を、真珠Pに透過させる。そして、その透過光を捉えた画像における、平均的な強度変化パターンからの外れを表す空間パターン可視化画像に基づいて、色を評価するので、強度変化が大きいか否か、即ち、干渉色が豊富か否かを評価することができて、真珠Pについて正しく色の評価を行える。
そして、第3実施形態では、ランクが分かっている複数の真珠サンプルについて、それぞれ中心波長が異なる複数の狭帯域光を透過させて、空間パターン可視化画像を生成して、コントラスト値を計算し、各ランクについて、コントラスト値の平均値が他のランクに比して突出して高く或いは低くなる狭帯域光を選択して、その中心波長を選別光の中心波長としている。すなわち、真珠のランク毎に干渉の強弱が最も顕著になるような波長を選択して、選別光の中心波長としており、具体的には、選別光は、ランクによって、空間パターン可視化画像における中心部と周辺部とのコントラストの状態が大きく異なるような波長の光とされている。したがって、各選別光を真珠Pに透過させて空間パターン可視化画像を生成すれば、その干渉の強弱、具体的には、中心部と周辺部とのコントラストの状態により、真珠Pのランクを判別できる。
また、干渉色判定用画像データに基づいて、干渉色の発現を視覚化したカラー画像を生成するので、視覚的に干渉色の発現状態が分かり易い。
また、コントラスト値を算出することにより、干渉色の発現状態を数値化できるので、真珠Pの色の評価が容易となる。
〈変形例〉以下、変形例について説明する。
(1)画像処理装置7、7B、7Cにおいて、輝度値の歪度、及び、色彩値のばらつき度若しくはコントラスト値に基づいて、所定のルールで計測対象2のグレードを判定し、そのグレードを表示するようにしてもよい。
(2)画像計測装置1、1B、1Cと画像処理装置7、7B、7Cとを接続しない形態とすることもできる。かかる場合には、画像計測装置1、1B、1Cにおいて画像データを着脱可能な記録媒体に記録し、画像処理装置7、7B、7Cにその記録媒体の読取り装置(画像データ取得手段に相当。)を設けて、その記録媒体から画像処理装置7、7B、7Cが画像データを読み取るように構成すればよい。
(3)計測対象2の大きさが不変であって処理対象領域の範囲が予め決まっている場合や、計測対象2の一部分を撮像して評価を行なうため画像に背景を含まない場合(即ち、画像全体が処理対象領域内である場合)等には、処理対象領域抽出情報を生成する必要は無く、処理対象領域内の画素値を抽出する処理も不要である。
(4)画像計測装置1、1B、1Cが、計測対象2に対して、1回の撮影で白とび部分も黒つぶれ部分もない画像を取得可能な性能を有するものであれば、撮影枚数は1枚としてもよい。かかる場合には、有効露光域マスクを生成する必要はなく、広DR画像生成処理も不要である。また、撮影枚数を複数とした場合であっても、画像L0の全画素が有効露光域内にある場合(有効露光域マスクの生成において、全画素がE(i,j)=1となった場合)には、画像L0のみを用いるものとし、画像S1以降は用いなくてよい。すなわち、評価に用いる画像の枚数は、撮影枚数と同じでなくてもよく、先に十分な枚数の撮影を行っておいてから、S.S.の遅い画像から順に有効露光域マスクを生成し、全画素が有効露光域内にある画像が見つかった時点で、それよりもS.S.が早い画像を用いないこととしてもよい。
(5)サンプルホルダ4、4B、4C、4C´、光吸収板6、6B、及び、外光遮蔽箱8、8B、8Cの内面を、2次反射が略無い灰色としてもよい。即ち、背景色は、ある閾値で計測対象2との分離が可能な程度に出力信号が小さくなるような色であればよい。なお、2次反射は全く無いことが望ましいが、評価装置10、10B、10Cの評価精度に影響を与えない程度の2次反射は許容される。
(6)画像処理装置7、7B、7Cを、汎用パーソナルコンピュータではなく、専用機器としてもよい。
(7)S.S.ではなく、絞り(F値)の変更等、他の方法で露出を変更してもよい。
(8)画素値からCIE1976表色系の(Y,u´,v´)の輝度値Yを算出して用いる等、上記輝度値や色彩値以外の輝度値や色彩値を算出して用いることとしてもよい。
(9)第3実施形態のように3つのランクに真珠を分ける場合、選別光の中心波長は、510〜530nm、570〜590nm、640〜660nmの範囲からそれぞれ任意に選択できる。これらの範囲であれば、ランクによってコントラスト値に差が出てくるからである(図33参照)。また、選別光の帯域幅は狭帯域光源11の性能に依存するものであり、上記帯域幅に限られないことは勿論である。さらに、ランク分けの数により、選別光の数を増減することも可能である。
(10)狭帯域光源11は、発光ダイオードやレーザーダイオードであってもよい。
(11)サンプルホルダ4Cの代わりに、図41に示すようなサンプルホルダ4C´を用いれば、画像計測装置1Cにおいて複数の真珠Pを同時に計測できる。図41(a)は複数の真珠Pを載置した状態のサンプルホルダ4C´の平面図、(b)はその縦断面図である。サンプルホルダ4C´には、孔41と同様の孔41´が複数設けられており、各孔41´にそれぞれ真珠Pを支持させて、各孔41´に狭帯域光源11からの光を下方から導入することにより、複数の真珠Pを同時に計測可能である。
(12)第3実施形態では、波長の選択の場合には、(I)420〜720nmの範囲の10nm間隔の分光画像を正規化して波長方向に平均したもの、真珠Pの色の評価の場合には、(II)選択した3波長の画像を正規化して波長方向に平均したものを、平均画像S(i,j)としたが、いずれの場合にも、広帯域の白色光を透過させた画像に対して信号の正規化を行ったもの(以下、「白色光画像」という。)を、平均画像S(i,j)としてもよい。白色光は全波長の光を含むことから、白色光画像は正規化画像の波長方向の平均に相当するからである。詳しくは、狭帯域光源11を白色光源に置き換えて真珠P(波長の選択の場合は真珠サンプル)を撮像し、白色光画像を得る。そして、白色光画像の真珠領域の全画素値の合計を求めて、白色光画像の真珠領域の画素数でその合計を除算することにより、白色光画像の真珠領域の平均画素値を求める。そして、白色光画像の真珠領域の各画素値を、求めた平均画素値で除算することにより、白色光画像を正規化し、平均画像とする。なお、平均画像における真珠領域以外の画素値は0とする。
図42の(a)は上記(I)、(b)は上記(II)、(c)は擬似白色光を用いた白色光画像を平均画像とした場合の、各選別光に対するコントラスト値のランク平均である。なお、図中の図形は、図35と同様に定めたものである。この図から、白色光画像を平均画像としてもよいことが分かる。
白色光画像を平均画像S(i,j)に用いれば、650nmの選別光は、空間パターン可視化画像の生成の際も不要となることから、選別光は520nm及び580nmの2つでよいこととなる。このように、ランクの数と選別光の数とは必ずしも一致しない。
(13)第3実施形態では、520nmと580nmの2波長を用いて、干渉色の可視化処理を行ったが、520nmと580nmと650nmの3波長を用いて、干渉色の可視化処理を行ってもよい。かかる場合には、例えば、図36のステップS1903において、波長580nmの画素値Inn(i,j,2)に正規化係数MXを乗じたものを0.5に加算してR値とし、波長520nmの画素値Inn(i,j,1)に正規化係数MXを乗じたものを0.5に加算してG値とし、波長650nmの画素値Inn(i,j,2)に正規化係数MXを乗じたものを0.5に加算してB値とする。即ち、灰色(R,G,B)=(0.5,0.5,0.5)から、Inn(i,j,1)でG値を変化させ、Inn(i,j,2)でR値を変化させ、Inn(i,j,3)でB値を変化させることにより、画素(i,j)の色を決定する。
以下に、本明細書で引用した参考文献(1)を示す。
参考文献(1) Otsu,N."A Threshold Selection Method from Gray-level Histograms",IEEE Transaction on System,Man,and Cybernetics,Vol.9,No.1,
1979,pp.62-66