以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る車線変更支援装置について詳細に説明する。以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に示す第1実施形態に係る車線変更支援装置10は、自車両のドライバーによる隣車線への車線変更指示に応じて自車両の車線変更支援制御を行うための装置である。
車線変更支援制御とは、自車両の車線変更を支援する制御である。車線変更支援制御とは、例えば、自車両の車線変更の開始から終了までの全ての動作又は一部の動作において、ドライバーの運転操作によらずに自車両を隣車線に車線変更させるための走行制御を意味する。また、車線変更支援制御は、自車両の走行制御を行なうことなく、ドライバーに対して車線変更に必要な減速度、減速のタイミング、操舵量及び操舵のタイミング等の情報を提供するための制御を意味してもよい。また、車線変更制御は、自車両の走行制御を行なうことなく、自車両のステアリングホイール、ブレーキペダル、アクセルペダル等に設定された反力を与えることにより、自車両のドライバーに対して車線変更に必要な操作を促すための誘導制御を意味してもよい。
車線変更指示とは、例えば、自車両のドライバーの方向指示器等に対する入力操作等によって、ドライバーが車線変更支援装置10に隣車線への車線変更支援制御を行わせるための指示を意味する。車線変更指示は、ドライバーの音声入力、隣車線への顔向け動作の検出、及び視線検出(例えば、隣車線を写すサイドミラーの注視の検出)によって行なわれてもよい。
車線変更支援装置10は、前方ミリ波レーダ21、前方カメラ22、後方ミリ波レーダ23、ブレーキペダル操作量検出部24、速度センサ25、ナビゲーションシステム26、航行支援制御スイッチ27、方向指示器操作スイッチ28、車線変更支援スイッチ29、ECU30、ステアリングアクチュエータ41、アクセルアクチュエータ42及びブレーキアクチュエータ43を備える。
前方ミリ波レーダ21は、例えば、図2に示すように、自車両100の車体前端に設けられ、ミリ波を利用して自車両100の前方の検出範囲SA21内の障害物の位置及び相対速度を検出する。前方ミリ波レーダ21は、自車両100が走行する道路の形状を認識するためにも用いられる。後方ミリ波レーダ23は、例えば、図2に示すように、自車両100の車体後端に設けられ、ミリ波を利用して自車両100の後方の検出範囲SA23内の障害物の位置及び相対速度を検出する。
前方ミリ波レーダ21及び後方ミリ波レーダ23は、例えば、ミリ波を自車両100の前方及び後方にそれぞれ送信し、他車両等の障害物に反射したミリ波を受信することで障害物を検出する。前方ミリ波レーダ21及び後方ミリ波レーダ23は、検出した障害物に関する情報をECU30へ送信する。なお、前方ミリ波レーダ21及び後方ミリ波レーダ23に代えて、LIDAR[Laser Imaging Detection and Ranging]等を用いてもよい。
前方カメラ22は、例えば、自車両100のフロントガラスの裏面に設けられた撮像部を有している。前方カメラ22の撮像部は、例えば、図2に示すように、自車両100の前方の検出範囲SA22を撮像する。前方カメラ22が撮像した画像は、走行車線と隣車線とを区画する車線境界線を認識するために用いられる。また、前方カメラ22が撮像した画像は、道路の標識や道路形状を認識するために用いられる。また、前方カメラ22は、自車両100の周囲の他車両等の障害物を認識するために適用されてもよい。前方カメラ22は、撮像した自車両前方の画像の情報をECU30へ送信する。なお、前方カメラ22は、単眼カメラ及びステレオカメラのいずれも適用することができる。
ブレーキペダル操作量検出部24は、例えば、ブレーキペダルに対して設けられ、ブレーキペダルの踏込み量(ブレーキペダルの位置)を検出する。ブレーキペダル操作量検出部24は、ブレーキペダルの操作力(ブレーキペダルに対する踏力やマスタシリンダの圧力等)から、ブレーキペダルの踏込み量を検出してもよい。ブレーキペダル操作量検出部24は、検出したブレーキペダルの踏込み量や操作力に応じた信号をECU30へ出力する。
なお、車線変更支援装置10は、アクセルペダルの踏込み量や操作力を検出するアクセルペダルセンサを備えていてもよい。あるいは、車線変更支援装置10は、トランスミッションのシフト位置を検出するシフト位置センサを備えていてもよい。アクセルペダルセンサにより検出されたアクセルペダルの踏込み量や操作力及びシフト位置センサにより検出されたシフト位置は、ECU30へ出力される。
速度センサ25は、自車両100の車速を検出するためのセンサである。速度センサ25としては、例えば、車輪の回転速度を信号として検出する車輪速センサが用いられる。車輪速センサは、例えば、コイルと磁極で構成され、ドライブシャフト又はアクスルハブ等の車輪と一体に回転する部分に形成された歯車状のロータの外周と対向するように配置される。この車輪速センサでは、ロータの回転によりコイルを通過する磁束が変化するため、車輪の回転速度に応じた交流信号が出力される。速度センサ25は、車輪の回転速度に応じた信号をECU30に送信する。
ナビゲーションシステム26は、ドライバーによって設定された目的地まで自車両100のドライバーの案内を行う。また、ナビゲーションシステム26は、道路形状や道路の制限速度に関する情報を取得するために用いられる。ナビゲーションシステム26は、例えば、自車両100の位置を測定するためのGPS受信部と、地図情報を記憶した地図データベースを有している。GPS受信部は、例えば、3個以上のGPS衛星からの信号を受信することにより、自車両100の位置(例えば緯度経度)を測定する。地図データベースの地図情報には、例えば、道路の位置情報、道路の種別情報、交差点又は分岐点の位置情報、道路形状に関する情報及び道路の制限速度に関する情報等が含まれる。
ナビゲーションシステム26は、GPS受信部の測定した自車両100の位置と地図データベースの地図情報とに基づいて、自車両100の走行する道路及び走行車線を認識する。ナビゲーションシステム26は、自車両100の位置から目的地に至るまでの経路を演算し、ディスプレイの表示及びスピーカからの音声出力によりドライバーに対して当該経路の案内を行う。また、ナビゲーションシステム26は、自車両100の位置情報、自車両100の走行車線および隣車線の形状に関する情報及び自車両100が走行する道路の制限速度に関する情報に関する情報をECU30へ送信する。
航行支援制御スイッチ27は、航行支援制御スイッチ27がオンにされることにより、例えば、自車両100の前方に先行車が存在しない場合は、ECU30は予め設定された設定速度で自車両100を定速走行させる定速制御を行い、自車両100の前方に先行車が存在する場合には、ECU30は先行車との車間距離に応じて自車両100の車速を調整する追従制御を行うためのものである。航行支援制御スイッチ27は、先行車と自車両100との車間距離に代えて、先行車と自車両100とのTTC[Time To Collision:衝突余裕時間]、又は先行車と自車両100とのTHW[Time Headway:車間時間]を用いてもよい。
TTCとは、自車両100の進行方向における自車両100と他車両との相対距離を当該進行方向における自車両100と他車両との相対速度で除して得られる時間を意味する。THWとは、自車両100の進行方向における自車両100と他車両との相対距離を他車両の速度で除して得られる時間を意味する。
なお、本実施形態の車線変更支援装置10は、航行支援制御スイッチ27がオンにされているときに、車線変更支援を行うことができる。また、車線変更支援装置10は、航行支援制御スイッチ27がオフにされているときに、車線変更支援を行ってもよい。また、本実施形態の車線変更支援装置10において、航行支援制御スイッチ27は必須の構成ではない。
方向指示器操作スイッチ28は、例えば、自車両100の方向指示器操作レバーに設けられ、ドライバーによる方向指示器操作レバーの操作を検出する。方向指示器操作スイッチ28は、ドライバーによる方向指示器操作レバーの操作が右側であるか左側であるかを検出する。方向指示器操作スイッチ28は、検出した方向指示器操作レバーの操作に関する情報をECU30へ送信する。本実施形態の車線変更支援装置10では、ドライバーの方向指示器操作レバーの操作による車線変更指示に応じて車線変更支援装置10はドライバーにより指示された方向の隣車線への車線変更支援制御を行うことができる。
車線変更支援スイッチ29は、自車両100のインストルメントパネル等に設置されているスイッチである。車線変更支援スイッチ29は、ドライバーによる車線変更支援スイッチ29の操作が右側であるか左側であるかを検出する。車線変更支援スイッチ29は、検出したドライバーの操作に関する情報をECU30に送信する。ドライバーの車線変更支援スイッチ29への操作による車線変更指示に応じて車線変更支援装置10はドライバーにより指示された方向の隣車線への車線変更支援制御を行うことができる。
なお、本実施形態の車線変更支援装置10は、方向指示器操作スイッチ28及び車線変更支援スイッチ29のいずれか一方のみを備えていてもよい。また、本実施形態の車線変更支援装置10は、ドライバーによる車線変更指示を検出する手段として、例えば、ドライバーの足による入力操作がなされるスイッチ、ドライバーの音声入力を受けるマイクロフォン、ドライバーの顔向きを検出するセンサ及びドライバーの視線方向等を検出するセンサ等を備えていてもよい。
ECU(electronic control unit)30は、走行支援装置1を制御するコンピュータである。ECU30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリ及び入出力インターフェイス等を備える。ECU30は、車線変更指示受付部31、走行環境認識部32、制限速度取得部35、推定減速度閾値演算部36、ブレーキ操作減速度演算部37及び制御部38を備える。走行環境認識部32は、障害物状況認識部33、道路形状取得部34及び制限速度取得部35により構成される。ECU30のハードウェアが予め定められたプログラムに従って動作することにより、ECU30のハードウェアが、車線変更指示受付部31、走行環境認識部32、推定減速度閾値演算部36、ブレーキ操作減速度演算部37及び制御部38として機能する。ECU30は、複数のECUから構成されていてもよい。
車線変更指示受付部31は、方向指示器操作スイッチ28又は車線変更支援スイッチ29からの情報により、自車両100のドライバーによる車線変更指示を受け付ける。車線変更指示受付部31は、例えば、ドライバーの足による入力操作がなされるスイッチ、ドライバーの音声入力を受けるマイクロフォン、ドライバーの顔向きを検出するセンサ及びドライバーの視線方向等を検出するセンサ等からの情報によってドライバーの車線変更指示を受け付けてもよい。
本実施形態の車線変更支援装置10においては、例えば、航行支援制御スイッチ27がオンにされており、自動車専用道路等で自車両100の定速制御又は追従制御がなされているときに、自車両100のドライバーにより方向指示器操作スイッチ28又は車線変更支援スイッチ29への操作があったときに、車線変更支援装置10は車線変更支援を行うことができる。また、本実施形態の車線変更支援装置10においては、航行支援制御スイッチ27のオン又はオフに関わらず、車線変更支援装置10は車線変更支援を行ってもよい。
走行環境認識部32は、自車両100周辺の走行環境を認識する。走行環境には、例えば、自車両周辺の障害物に関する障害物状況、自車両100が走行する道路の形状に関する道路形状及び自車両100が走行する道路の制限速度等が含まれる。
走行環境認識部32を構成する障害物状況認識部33は、例えば、前方ミリ波レーダ21又は後方ミリ波レーダ23からの情報に基づいて、自車両100周辺の障害物に関する障害物状況を認識する。障害物状況とは、例えば、走行中の他車両、駐停車中の他車両、工事用パイロン等を含む工事設備、歩行者及び壁等の障害物の位置、距離、速度、相対速度、移動方向等の状況を意味する。
障害物状況認識部33は、前方カメラ22が撮像した自車両前方の画像の情報に基づいて、自車両100の前方の撮像画像の解析により、自車両100周辺の障害物状況を認識してもよい。障害物状況認識部33は、例えば、前方ミリ波レーダ21、後方ミリ波レーダ23からの情報に基づいて、認識した他車両と自車両との車間距離及び相対速度を認識する。障害物状況認識部33は、他車両と自車両との車間距離及び相対速度に基づいて、他車両と自車両とのTTCを認識してもよい。障害物状況認識部33は、TTCに代えて、他車両と自車両とのTHWを認識してもよい。
走行環境認識部32を構成する道路形状取得部34は、自車両が走行する道路の道路形状を取得する。道路形状とは、道路の曲率、勾配、カント及び2本の車線境界線の間隔等を意味する。道路形状取得部34は、例えば、前方カメラ22が撮像した自車両100前方の画像の情報に基づいて、走行車線及び隣車線を区画する2本の車線境界線を認識することにより、道路形状を取得することができる。また、道路形状取得部34は、前方ミリ波レーダ21、後方ミリ波レーダ23からの情報に基づいて、道路形状を取得してもよい。あるいは、道路形状取得部34は、ナビゲーションシステム26により、道路形状を取得してもよい。
走行環境認識部32を構成する制限速度取得部35は、自車両100が走行する道路の制限速度を取得する。制限速度取得部35は、例えば、前方カメラ22が撮像した自車両前方の画像の情報に基づいて、道路標識が表示する自車両100が走行する道路の制限速度を取得することができる。また、制限速度取得部35は、ナビゲーションシステム26により、自車両100が走行する道路の制限速度を取得することができる。あるいは、制限速度取得部35は、光ビーコン等の路側施設から、路車間通信により自車両100が走行する道路の制限速度を取得してもよい。
推定減速度閾値演算部36は、走行環境認識部32により認識された走行環境に基づいて自車両100の推定減速度に応じた推定減速度閾値を演算する。推定減速度とは、走行環境に対して必要であると推定される自車両100の減速度を意味する。なお、減速度が大きいとは、時間に対して自車両100の車速が低下する割合が大きいことを意味する。推定減速度には、例えば、障害物状況に基づいて、自車両100が障害物と予め設定された距離未満になることを避けるための障害物用減速度を用いて演算される減速度が含まれる。障害物用減速度とは、自車両100が障害物と予め設定された距離未満になることを避けるための減速度であり、例えば、自車両100が他車両と予め設定された車間距離未満になることを避けるための減速度を含む。推定減速度閾値とは、ドライバーのブレーキ操作によるブレーキ操作減速度と比較することにより、車線変更支援をキャンセルするか否かを判定するための閾値である。すなわち、車線変更支援装置10は、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上である場合、ドライバーが認識する走行環境が車線変更支援装置10の認識する走行環境と大きく異なっている可能性が高いことから、車線変更支援をキャンセルする。
例えば、推定減速度閾値演算部36は、自車両100が隣車線に車線変更をした場合に、障害物状況認識部33により認識された他車両に対して自車両100が設定された車間距離、衝突余裕時間及び車間時間のいずれかで追従走行するために必要な障害物用減速度を演算する。推定減速度閾値演算部36は、例えば、自車両100が他車両と予め設定された車間距離未満となることを避けるための障害物用減速度を下式(1)により演算することができる。下式(1)において、K1及びK2は制御ゲインである。例えば、現在の車間距離と設定された車間距離とが等しく、かつ相対速度が0m/sであれば、障害物用減速度は0m/s2となる。
障害物用減速度
=(設定された車間距離−現在の車間距離)×K1+相対速度×K2 …(1)
また、推定減速度閾値演算部36は、道路形状取得部34が取得した道路形状に応じて、自車両100が道路を走行するために必要な推定減速度である道路形状用減速度を演算する。推定減速度閾値演算部36は、例えば、道路の曲率、カント、勾配及び2本の車線境界線の間隔等と、自車両100が道路を走行することが可能な速度とが予め対応付けて記憶されているデータベース、テーブル又はマップを有している。推定減速度閾値演算部36は、例えば、道路形状取得部34が取得した自車両100が走行する道路の曲率、カント、勾配及び2本の車線境界線の間隔等に対応した自車両100が道路を走行することが可能な速度を当該データベース等から抽出することができる。推定減速度閾値演算部36は、自車両100が道路を走行することが可能な速度と、速度センサ25によって検出された自車両100の現在の速度とから、道路形状用減速度を演算することができる。
また、推定減速度閾値演算部36は、制限速度取得部35が取得した道路の制限速度に応じて、自車両100が道路を制限速度以下で走行するために必要な推定減速度である制限速度用減速度を演算する。推定減速度閾値演算部36は、例えば、制限速度取得部35が取得した道路の制限速度と、速度センサ25によって検出された自車両100の現在の速度とから、制限速度用減速度を演算することができる。
推定減速度閾値演算部36は、演算された障害物用減速度、道路形状用減速度及び制限速度用減速度を用いて推定減速度を演算する。推定減速度閾値演算部36は、障害物用減速度、道路形状用減速度及び制限速度用減速度の中で最も大きい減速度を推定減速度として演算することができる。なお、推定減速度閾値演算部36は、障害物用減速度、道路形状用減速度及び制限速度用減速度から選択されるいずれか一つ又は二つの減速度のみを演算し、当該減速度を用いて推定減速度を演算してもよい。障害物用減速度、道路形状用減速度及び制限速度用減速度から選択されるいずれか二つの減速度を用いる場合も、推定減速度閾値演算部36は、選択された減速度の中で最も大きい減速度を推定減速度として演算することができる。
推定減速度閾値演算部36は、推定減速度に応じた閾値である推定減速度閾値を演算する。推定減速度閾値演算部36は、例えば、推定減速度に予め設定された許容加算値を加えた値を推定減速度閾値として演算する。許容加算値とは、例えば、ドライバーのブレーキ操作が走行環境認識部32により認識された走行環境に応じた速度調整の範囲であるか否かの指標となる値である。許容加算値は、固定値としてもよく、走行環境等に応じて変動する値としてもよい。許容加算値は、例えば、軽微な速度調整の範囲の値である0.1〜0.2m/s2の範囲で設定することができる。また、許容加算値は0m/s2としてもよい。
また、推定減速度閾値演算部36は、推定減速度に予め設定された許容増加率を乗じた値を推定減速度閾値として演算してもよい。許容増加率とは、例えば、ドライバーのブレーキ操作が走行環境認識部32により認識された走行環境に応じた速度調整の範囲であるか否かの指標となる値である。許容増加率は、固定値としてもよく、走行環境等に応じて変動する値としてもよい。許容増加率は、例えば、速度調整の範囲の値である1.05倍〜1.2倍の範囲で設定することができる。また、許容増加率は1倍としてもよい。なお、推定減速度閾値演算部36は、推定減速度の値を推定減速度閾値として演算してもよい。
また、航行支援制御スイッチ27がオンにされているときに、自車両100の前方に先行車が存在しない場合は、推定減速度閾値演算部36は、予め設定された設定速度で自車両100を定速走行させる定速制御を行うための推定減速度を演算してもよい。また、自車両100の前方に先行車が存在する場合には、推定減速度閾値演算部36は、先行車との車間距離に応じて自車両100の車速を調整する追従制御を行うための推定減速度を演算してもよい。しかし、航行支援制御スイッチ27について上述したように、上記の定速制御及び追従制御のための構成は必須ではない。また、推定減速度閾値演算部36は、必ずしも推定減速度を演算する必要はなく、自車両周囲の走行環境から推定減速度閾値を直接的に求めてもよい。具体的に、推定減速度閾値演算部36は、自車両周囲の走行環境と推定減速度閾値とを関連付けたマップデータを用いて、自車両周囲の走行環境から直接的に推定減速度閾値を求めてもよい。
ブレーキ操作減速度演算部37は、自車両100のドライバーのブレーキ操作によるブレーキ操作減速度を演算する。ブレーキ操作減速度とは、ドライバーのブレーキ操作により生じると推定される減速度を意味する。ドライバーのブレーキ操作には、ブレーキペダルへの操作、アクセルペダルへの操作によるエンジンブレーキの操作及びトランスミッションのシフトダウンによるエンジンブレーキの操作が含まれる。あるいは、ドライバーのブレーキ操作には、排気ブレーキ等の補助ブレーキの操作が含まれる。
ブレーキ操作減速度演算部37は、例えば、ブレーキペダルの踏込み量や操作力と自車両100の減速度とが対応付けられて記憶されているデータベース、マップ又はテーブルを有する。ブレーキ操作減速度演算部37は、ブレーキペダル操作量検出部24により検出されたブレーキペダルの踏込み量や操作力に対応した自車両100のブレーキ操作減速度を当該データベース等より抽出することにより、ブレーキペダルの踏込み量や操作力に対応した自車両100のブレーキ操作減速度を検出することができる。
なお、ブレーキ操作減速度演算部37は、例えば、ブレーキ操作減速度として、上記のブレーキペダルへの操作によるブレーキ操作減速度と同様に、アクセルペダルセンサにより検出されたアクセル量を減少させる操作や、シフト位置センサにより検出されたシフトダウンの操作によるブレーキ操作減速度を検出してもよい。
制御部38は、自車両100のドライバーによる隣車線への車線変更指示に応じて自車両100の車線変更支援制御を行う。制御部38は、自車両100のドライバーよる隣車線への車線変更指示があったときに、推定減速度閾値演算部36により演算された推定減速度で自車両100を減速させつつ、自車両100を隣車線に車線変更させる。制御部38は、ステアリングアクチュエータ41、アクセルアクチュエータ42及びブレーキアクチュエータに制御信号を送信する。制御部38は、アクセルアクチュエータ42及びブレーキアクチュエータ43を駆動させて推定減速度閾値演算部36により演算された推定減速度で自車両100を減速させる。制御部38は、ステアリングアクチュエータ41を駆動させて自車両100の舵角を隣車線の方向に変更することにより、自車両100を隣車線に車線変更させる。
後述するように、制御部38は、車線変更支援制御中にブレーキ操作減速度演算部37によりブレーキ操作減速度が演算された場合は、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であるか否かを判定する。
制御部38は、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値未満であるときは、自車両100の隣車線への車線変更支援制御を続行する。一方、制御部38は、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上のときは、自車両の隣車線への車線変更支援制御をキャンセルする。なお、車線変更支援制御のキャンセルとは、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上のときに車線変更支援制御を即時に中止することと、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上のときに予め設定された時間が経過した後に車線変更支援制御を中止することとを含む。
ステアリングアクチュエータ41は、例えば、自車両100の電動パワーステアリングシステム[EPS:Electric Power Steering]を制御する電子ユニットである。ステアリングアクチュエータ13は、電動パワーステアリングシステムのうち、自車両100の操舵トルクをコントロールするアシストモータを駆動させることにより、自車両の操舵角を制御する。ステアリングアクチュエータ41は、ECU30の制御部38からの制御信号に応じて操舵角を制御する。
アクセルアクチュエータ42は、自車両100のアクセル量を制御する電子ユニットである。アクセルアクチュエータ42は、例えば、エンジンに対する燃料の供給量及び空気の供給量を調整することで自車両100の駆動力を制御する。なお、アクセルアクチュエータ42は、自車両100がハイブリッド車又は電気自動車である場合には、動力源として駆動するモータへの電力量を調整することで自車両100の駆動力を制御する。アクセルアクチュエータ42は、ECU30の制御部38からの制御信号に応じて自車両100の駆動力を制御する。
ブレーキアクチュエータ43は、自車両100のブレーキシステムを制御する電子ユニットである。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。ブレーキアクチュエータ43は、液圧ブレーキシステムに付与する液圧を調整することで、自車両100の車輪へ付与する制動力をコントロールする。ブレーキアクチュエータ43は、ECU30の制御部38からの制御信号に応じて車輪への制動力を制御する。なお、ブレーキアクチュエータ43は、自車両100が回生ブレーキシステムを備えている場合、液圧ブレーキシステム及び回生ブレーキシステムの両方を制御してもよい。
なお、車線変更支援装置10は、ディスプレイ及びスピーカ等を備えていてもよい。ECU30の制御部38は、ディスプレイ及びスピーカ等を用いて、自車両100のドライバーに対して車線変更に必要な減速度、減速のタイミング、操舵量及び操舵のタイミング等の情報を提供する車線変更支援制御を行ってもよい。また、車線変更支援装置10は、自車両100のステアリングホイール、ブレーキペダル、アクセルペダルに設定された反力を与える反力アクチュエータを備えていてもよい。ECU30の制御部38は、反力アクチュエータを用いて、自車両100のドライバーに対して車線変更に必要な操作を促す車線変更支援制御を行ってもよい。
以下、本実施形態の車線変更支援装置10の動作について説明する。まず、車線変更支援制御のメインフローについて説明する。以下の説明では、自動車専用道路等において航行支援制御スイッチ27がオンにされた状態で自車両100が走行している状況を想定する。
図3に示すように、方向指示器操作スイッチ28又は車線変更支援スイッチ29が自車両100のドライバーによって操作されることにより、ECU30の車線変更指示受付部31が隣車線への車線変更指示を受け付けると(S101)、ECU30の走行環境認識部32は自車両100周辺の走行環境を認識する(S102)。走行環境認識部32の障害物状況認識部33は、隣車線を走行する他車両等を認識する。
走行環境認識部32の道路形状取得部34は、自車両100が走行する道路の道路形状を取得する。図4に示すように、自車両100が走行する道路300がカーブである場合に、道路形状取得部34は、道路300の道路形状として道路300の曲率、勾配、カントを取得することができる。また、道路形状取得部34は、道路300の道路形状として走行車線301及び隣車線302をそれぞれ区画する2本の車線境界線303の間隔を取得することができる。
ECU30の制限速度取得部35は、自車両100が走行する道路300の制限速度を取得する。例えば、図5に示すように、道路300の制限速度が、標識401が示す80km/hから標識402が示す50km/hに変った場合に、制限速度取得部35は当該制限速度に関する情報を取得する。
ECU30の推定減速度閾値演算部36は、走行環境に基づいて、自車両の推定減速度及び推定減速度閾値を演算する(S103)。推定減速度閾値演算部36は、障害物状況認識部33が認識した障害物状況に基づいて、障害物用減速度を演算する。推定減速度閾値演算部36は、道路形状取得部34が認識した道路形状に基づいて道路形状用減速度を演算する。推定減速度閾値演算部36は、制限速度取得部35が取得した制限速度用減速度を演算する。推定減速度閾値演算部36は、演算された障害物用減速度、道路形状用減速度及び制限速度用減速度を用いて推定減速度を演算する。なお、上述したように、推定減速度閾値演算部36は、障害物用減速度等から選択されるいずれか一つ又は二つの減速度のみを演算し、当該減速度を用いて推定減速度を演算してもよい。
推定減速度閾値演算部36は、演算した推定減速度に応じた推定減速度閾値を演算する。推定減速度閾値演算部36は、例えば、推定減速度に予め設定された許容加算値を加えた値を推定減速度閾値として演算する。
ECU30の制御部38は、自車両100のドライバーによる隣車線302への車線変更指示に応じて自車両100の車線変更支援制御を行う(S104)。制御部38は、自車両100のドライバーよる隣車線302への車線変更指示があったときに、推定減速度閾値演算部36により演算された推定減速度で自車両100を減速させつつ、自車両100を隣車線302に車線変更させる。車線変更支援制御は、制御部38からの制御信号により、ステアリングアクチュエータ41、アクセルアクチュエータ42及びブレーキアクチュエータ43が駆動されることにより行われる。
なお、車線変更支援制御は、制御部38からの制御信号により、ディスプレイ及びスピーカ等から自車両100のドライバーに対して車線変更に必要な減速度、減速のタイミング、操舵量及び操舵のタイミング等の情報が提供されることにより行われてもよい。また、車線変更支援制御は、制御部38からの制御信号により駆動された反力アクチュエータが、自車両100のステアリングホイール、ブレーキペダル、アクセルペダルに反力を与えることにより、自車両100のドライバーに対して車線変更に必要な操作を促すことにより行われてもよい。
制御部38は、自車両100の車線変更が完了したとき又は車線変更支援制御がキャンセルされたときは(S105)、処理を終了する。制御部38は、自車両100の車線変更が完了したとき又は車線変更支援制御がキャンセルされるまで、上述したS102〜S104の処理を続行する。
次に、車線変更支援制御をキャンセルする処理について説明する。図2に示すように、前方ミリ波レーダ21、前方カメラ22及び後方ミリ波レーダ23は検出範囲SA21〜SA23をそれぞれ有している。しかし、自車両100の周囲には、前方ミリ波レーダ21、前方カメラ22及び後方ミリ波レーダ23により検出することが不可能な死角DAが存在する。そのため、車線変更支援中に死角DA内に他車両が存在しており、自車両100のドライバーは当該他車両を認識していた場合に、車線変更支援装置10が当該他車両について必要な減速を行わずに車線変更支援制御を続行すると、当該他車両を認識しているドライバーに違和感を与えるような動作が行われる可能性がある。
一方、ドライバーのブレーキ操作があった場合に一律に車線変更支援制御がキャンセルされると、ドライバーが軽微な速度調整のためのブレーキ操作を行っていた場合も車線変更支援制御がキャンセルされるため、ドライバーに違和感を与える。そこで、本実施形態の車線変更支援装置10では、ドライバーに与える違和感が少なくなるように、車線変更支援制御をキャンセルするか否かを判定するために以下の動作が行われる。
図6に示すように、車線変更支援制御中に、自車両100のドライバーによるブレーキ操作があったときは(S201)、ECU30のブレーキ操作減速度演算部37はブレーキ操作減速度を演算する(S202)。車線変更支援制御中にブレーキ操作減速度演算部37によりブレーキ操作減速度が演算された場合は、制御部38はブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であるか否かを比較する。ブレーキ操作減速度が、推定減速度閾値未満であるときは(S203)、制御部38は、自車両100の隣車線302への車線変更支援制御を続行する。一方、ブレーキ操作減速度が、推定減速度閾値以上であるときは(S203)、制御部38は、自車両100の隣車線302への車線変更支援制御をキャンセルする(S204)。
以下、自車両100周辺の障害物状況ごとの車線変更支援装置10の動作を説明する。図7に示すように、隣車線302に他車両が存在しない状況を想定する。この場合は、障害物状況認識部33により他車両が認識されていないため、推定減速度閾値演算部36は、障害物用減速度に応じて、例えば0.1m/s2未満の小さい推定減速度及び当該推定減速度に応じた推定減速度閾値を演算する。また、この場合は、隣車線302に他車両が存在しないため、自車両100のドライバーによるブレーキ操作は軽微である。そのため、ブレーキ操作減速度演算部37は、推定減速度閾値未満のブレーキ操作減速度を演算する。
図7の状況では、ドライバーのブレーキ操作は推定減速度閾値演算部36が演算した必要な推定減速度を自らのブレーキ操作により得ようとする単なる速度調整であると考えられる。車線変更支援装置10による車線変更支援制御とドライバーのブレーキ操作とはほぼ一致し、車線変更支援制御を続行してもドライバーに与える違和感は少ないことが予想される。そこで、図7の状況では、制御部38は車線変更支援制御を続行する。
次に、図8に示すように、死角DAの中に他車両201が存在する状況を想定する。この場合は、障害物状況認識部33により他車両201が認識されていないため、推定減速度閾値演算部36は、図7の状況と同様に、例えば、0.1m/s2未満の小さい推定減速度及び当該推定減速度に応じた推定減速度閾値を演算する。一方、ドライバーは他車両201を認識しており、他車両201に自車両100が接近することを避けるために、ドライバーによるブレーキ操作は大きくなる。そのため、ブレーキ操作減速度演算部37は、推定減速度閾値以上のブレーキ操作減速度を演算する。
図8の状況では、障害物状況認識部33が認識していない他車両201が存在するために、ドライバーが推定減速度以上のブレーキ操作減速度となるブレーキ操作を行っている。車線変更支援装置10による車線変更支援制御とドライバーのブレーキ操作とは一致しないため、車線変更支援制御を続行すると、ドライバーに違和感を与えることが予想される。そこで、図8の状況では、制御部38は車線変更支援制御をキャンセルする。
また、図9に示すように、死角DAの外に他車両202が存在する状況を想定する。この場合は、障害物状況認識部33により他車両202が認識されているため、推定減速度閾値演算部36は、例えば、上述した式(1)等により、車線変更後に他車両202に対して自車両100が設定された車間距離を取るために必要な推定減速度(障害物用減速度)及び当該推定減速度に応じた推定減速度閾値を演算する。また、この場合は、ドライバーは他車両202を認識しており、他車両202に自車両100が設定された車間距離未満に接近することを避けるために、ドライバーによるブレーキ操作がなされることがある。ブレーキ操作減速度演算部37は、推定減速度閾値と同じ程度の大きさのブレーキ操作減速度を演算する。ブレーキ操作減速度は推定減速度閾値未満となる。
図9の状況では、車線変更支援装置10及びドライバーのいずれも他車両202を認識しており、ドライバーのブレーキ操作は推定減速度閾値演算部36が演算した必要な推定減速度を自らのブレーキ操作により得ようとする単なる速度調整であると考えられる。車線変更支援装置10による車線変更支援制御とドライバーのブレーキ操作とはほぼ一致し、車線変更支援制御を続行してもドライバーに与える違和感は少ないことが予想される。そこで、図9の状況では、制御部38は車線変更支援制御を続行する。
また、図10に示すように、死角DAの外に他車両202が存在し、死角DAの中に他車両201が存在する状況を想定する。この場合は、障害物状況認識部33により他車両202が認識されているため、推定減速度閾値演算部36は、図9の状況と同様に、車線変更後に他車両202に対して自車両100が設定された車間距離を取るために必要な推定減速度及び当該推定減速度に応じた推定減速度閾値を演算する。しかし、障害物状況認識部33により他車両201が認識されていないため、推定減速度閾値演算部36は、車線変更後に他車両201に対して自車両100が設定された車間距離を取るために必要な推定減速度及び当該推定減速度に応じた推定減速度閾値を演算しない。一方、ドライバーは他車両201を認識しており、他車両201に自車両100が接近することを避けるために、ドライバーによるブレーキ操作は大きくなる。そのため、ブレーキ操作減速度演算部37は、推定減速度閾値よりも十分に大きなブレーキ操作減速度を演算する。したがって、ブレーキ操作減速度は推定減速度閾値以上となる。
図10の状況では、障害物状況認識部33が認識していない他車両201が存在するために、ドライバーが推定減速度閾値以上のブレーキ操作減速度となるブレーキ操作を行っている。車線変更支援装置10による車線変更支援制御とドライバーのブレーキ操作とは一致しないため、車線変更支援制御を続行すると、ドライバーに違和感を与えることが予想される。そこで、図10の状況では、制御部38は車線変更支援制御をキャンセルする。なお、以上の説明における死角DAは、雨天等の天候の影響又はセンサ故障により生じたセンサの死角であってもよい。
以下、自車両100が走行する道路300の道路形状ごとの車線変更支援装置10の動作を説明する。図4に示すように、自車両100が走行する道路300がカーブである状況を想定する。上述したように、道路形状取得部34は、道路300の道路形状として道路300の曲率、勾配、カント及び車線境界線303の間隔等を取得する。推定減速度閾値演算部36は、道路形状取得部34が取得した道路形状に応じて、道路形状用減速度を演算する。推定減速度閾値演算部36は、道路形状用減速度に応じた推定減速度及び当該推定減速度に応じた推定減速度閾値を演算する。
車線変更支援制御中にブレーキ操作減速度演算部37によりブレーキ操作減速度が演算された場合であって、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値未満であるときは、車線変更支援装置10及びドライバーのいずれも道路300の道路形状を認識しており、ドライバーのブレーキ操作は推定減速度閾値演算部36が演算した必要な推定減速度を自らのブレーキ操作により得ようとする単なる速度調整であると考えられる。そこで、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値未満であるときは、制御部38は車線変更支援制御を続行する。
一方、車線変更支援制御中にブレーキ操作減速度演算部37によりブレーキ操作減速度が演算された場合であって、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であるときは、例えば、急カーブ等の道路形状取得部34により取得されていない道路形状が存在するために、ドライバーが推定減速度閾値以上のブレーキ操作減速度となるブレーキ操作を行っていることが考えられる。そこで、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であるときは、制御部38は車線変更支援制御をキャンセルする。
以下、自車両100が走行する道路300の制限速度に応じた車線変更支援装置10の動作を説明する。図5に示すように、自車両100が走行する道路300の制限速度が、標識401が示す80km/hから標識402が示す50km/hに変った状況を想定する。上述したように、制限速度取得部35は、道路300の制限速度を取得する。推定減速度閾値演算部36は、制限速度取得部35が取得した道路の制限速度に応じて、制限速度用減速度を演算する。推定減速度閾値演算部36は、制限速度用減速度に応じた推定減速度及び当該推定減速度に応じた推定減速度閾値を演算する。
車線変更支援制御中にブレーキ操作減速度演算部37によりブレーキ操作減速度が演算された場合であって、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値未満であるときは、車線変更支援装置10及びドライバーのいずれも道路300の制限速度の変化を認識しており、ドライバーのブレーキ操作は推定減速度閾値演算部36が演算した必要な推定減速度を自らのブレーキ操作により得ようとする単なる速度調整であると考えられる。そこで、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値未満であるときは、制御部38は車線変更支援制御を続行する。
一方、車線変更支援制御中にブレーキ操作減速度演算部37によりブレーキ操作減速度が演算された場合であって、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であるときは、制限速度取得部35により取得されていない制限速度の変化があるために、ドライバーが推定減速度閾値以上のブレーキ操作減速度となるブレーキ操作を行っていることが考えられる。そこで、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であるときは、制御部38は車線変更支援制御をキャンセルする。
なお、本実施形態では、上述した障害物用減速度を用いて推定減速度を演算する態様、道路形状用減速度を用いて推定減速度を演算する態様及び制限速度用減速度を用いて推定減速度を演算する態様のいずれか一つのみが実行されてもよい。また、上記の態様の二つ以上が組み合わせて実行されてもよい。
本実施形態では、車線変更支援制御中にドライバーのブレーキ操作によるブレーキ操作減速度が演算された場合であって、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値未満であるときは、制御部38は車線変更支援制御を続行し、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であるときは、制御部38は車線変更支援制御をキャンセルする。したがって、車線変更支援制御をキャンセルするか否かの判定において、ドライバーのブレーキ操作が考慮されない装置や、ドライバーのブレーキ操作により一律に車線変更支援制御がキャンセルされる装置に比べて、ドライバーに与える違和感が少なくなるように、車線変更支援制御をキャンセルするか否かを判定することができる。
また、本実施形態では、制御部38により、自車両100周辺の障害物に関する障害物状況に基づいて、自車両100が障害物と予め設定された距離未満になることを避けるための障害物用減速度が演算され、障害物用減速度を用いて推定減速度が演算される。このため、例えば、走行環境認識部32の障害物状況認識部33が認識していない他車両201等の障害物が存在するためにドライバーが推定減速度閾値以上にブレーキ操作を行ったときには、制御部38により車線変更支援制御がキャンセルされる。このため、車線変更支援制御中において、障害物状況認識部33が認識していない障害物を認識しているドライバーに与える違和感が少なくなるように、車線変更支援制御をキャンセルするか否かを判定することができる。
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上のときに、車線変更支援制御の保留処理が行われる。保留処理とは、車線変更支援制御を予め設定された時間が経過するまで中断し、車線変更支援制御をキャンセルするか否かの判定を当該時間が経過するまでは行わない処理を意味する。本実施形態の車線変更支援装置10は、図1に示した上記第1実施形態と同様の構成を有する。本実施形態では、図6に示した上記第1実施形態と同様のメインフローが実行される。
図11に示すように、車線変更支援制御中に、自車両100のドライバーによるブレーキ操作があったときは(S301)、ECU30のブレーキ操作減速度演算部37はブレーキ操作減速度を演算する(S302)。車線変更支援制御中にブレーキ操作減速度演算部37によりブレーキ操作減速度が演算された場合は、制御部38はブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であるか否かを比較する。ブレーキ操作減速度が、推定減速度閾値未満であるときは(S303)、制御部38は、自車両100の隣車線302への車線変更支援制御を続行する。一方、ブレーキ操作減速度が、推定減速度閾値以上であるときは(S303)、制御部38は、自車両100の隣車線302への車線変更支援制御の保留処理を行う(S304)。
以下、保留処理から車線変更支援制御の復帰及びキャンセルの処理について説明する。図12に示すように、保留処理の開始後も、自車両100のドライバーによる隣車線302への車線変更指示が継続している場合は(S401)、制御部38は以下の処理を行う。車線変更指示が継続していない場合は、ドライバーによる車線変更支援制御の継続の意思が無くなったと考えられるため、制御部38は車線変更支援制御をキャンセルする(S402)。
図3のメインフローと同様に、走行環境認識部32は自車両100周辺の走行環境を認識する(S403)。推定減速度閾値演算部36は、走行環境に基づいて、自車両の推定減速度を演算する(S404)。保留処理中に、ドライバーによるブレーキ操作がなくなったときは(S405)、制御部38は車線変更支援制御に復帰する(S406)。復帰とは、保留処理中の車線変更支援制御を再度行うことを意味する。
例えば、保留処理の開始時に、図8に示すように死角DA内に他車両201が位置していた場合であっても、保留処理の開始後にドライバーのブレーキ操作やその他の走行環境の変化により、図9に示すように死角DA外に他車両201が位置するようになる場合がある。この場合は、ドライバーによる車線変更支援制御の継続の意思があり、ドライバーのブレーキ操作が無いことから、車線変更支援制御に復帰してもドライバーに与える違和感は少ないことが予想される。そのため、制御部38は、車線変更支援制御に復帰する。
保留処理中に、ドライバーによるブレーキ操作があるときは(S405)、図11の保留処理と同様に、ブレーキ操作減速度演算部37はブレーキ操作減速度を演算する(S407)。ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値未満であるときは(S408)、制御部38は車線変更支援制御に復帰する(S406)。
例えば、保留処理の開始後に図8の状況から図9の状況に走行環境が変化した場合において、ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値未満であるときは、車線変更支援装置10及びドライバーのいずれも他車両202を認識しており、ドライバーのブレーキ操作は推定減速度閾値演算部36が演算した必要な推定減速度を自らのブレーキ操作により得ようとする単なる速度調整であると考えられる。さらに、ドライバーによる車線変更支援制御の継続の意思があることから、車線変更支援制御に復帰してもドライバーに与える違和感は少ないことが予想される。そのため、制御部38は、車線変更支援制御に復帰する。
ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であり(S408)、保留処理の開始から予め設定された時間が経過していない場合には(S409)、車線変更支援装置10は、上述したS401〜S409の処理を繰り返す。通常の車線変更の動作は1分間以内で終了する。そのため、上記の予め設定された時間は例えば、1秒〜60秒、3秒〜30秒、5秒〜15秒の範囲の時間に設定することができる。ブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上であり(S408)、保留処理の開始から予め設定された時間が経過した場合には(S409)、制御部38は車線変更支援制御をキャンセルする(S410)。
保留処理の開始から予め設定された時間が経過するまでの間にブレーキ操作減速度が推定減速度閾値以上である場合は、例えば、通常の車線変更の動作が行われる時間内に、図8に示したような状況に変化が無かったことが考えられる。さらに、図8に示したような状況で制御部38が車線変更支援制御に復帰すると、ドライバーに違和感を与える動作が行われる可能性がある。そのため、制御部38は、車線変更支援制御をキャンセルする。
本実施形態では、例えば、走行環境認識部32が認識していない他車両201が存在するためにドライバーが推定減速度閾値以上にブレーキ操作を行い、制御部38により車線変更支援制御がキャンセルされた場合であっても、予め設定された時間が経過するまでの間は制御部38により車線変更支援制御の保留処理が行われる。保留処理の開始後もドライバーによる車線変更指示が継続している場合であって、例えば走行環境の変化等によりブレーキ操作減速度が推定減速度閾値未満になったときは、制御部38は車線変更支援制御へ復帰する。このため、ドライバーの車線変更支援制御を継続する意図をより反映させるように、車線変更支援制御をキャンセルするか否かを判定することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。上記第1実施形態及び上記第2実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。