JP6249267B2 - 既設コンクリート構造物の補修方法 - Google Patents

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Description

本発明は、埋設型枠を用いた既設コンクリート構造物の補修方法に関する。
コンクリート構造物はプレキャスト版を型枠として残存(埋設)して本体(コンクリート構造物躯体)と一体に構築したり補修したりする場合がある。このようなプレキャスト版を残存させる工法(残存型枠施工方法)は工期の短縮や工費削減を目的としたり、残存するプレキャスト版に耐久性の高い材料を用いることによりコンクリート構造物全体を耐久性の高いものにすることを目的とするものである。
例えば、高速道路等の道路橋や高架橋の橋梁の床版部の幅員最端部には、主として自動車の視線誘導や交通騒音防止のため、または自動車が橋面外へ逸脱するのを防止する目的でコンクリート構造物の一つである壁高欄が設置されている。
この種の壁高欄は、従来は一般に現場打ちコンクリートによって構築され、その補修・補強も現場打ちコンクリートや現場打ち補修モルタルでなされることが多かったが、最近では、安定した品質、強度や耐久性の向上、省力化、工期短縮、施工環境改善等を考慮して、工場で製作されるプレキャスト版を用いた施工方法が採用されている。
その中で、プレキャスト版からなる残存(埋設)型枠を用いた施工方法も幾つか知られている。
例えば、特許文献1には、「橋梁の床版に構築された橋梁の壁高欄において、前記床版の外端部に立設された残存型枠と、前記残存型枠の内側面に一体的に接合され、前記残存型枠と前記残存型枠の内側に配置した内側型枠との間にコンクリートを打設することによって形成されたコンクリート壁と、を具備し、前記残存型枠は、前記床版の外端部に立設され、コンクリートからなる型枠本体と、前記型枠本体に埋設され、表面に防食塗装が施されてあって、前記型枠本体を補強する網状体と、前記網状体に接合され、一部分が前記型枠本体の内側面から露出し、表面に防食塗装が施された鋼材と、を具備したことを特徴とする橋梁の壁高欄」が開示されている。
また、特許文献2には、「セメントプレキャスト板からなるセキ板の打設コンクリートから離隔する表面又は内部に係止部位を設け、この係止部位に連結する締結部材でセキ板自重を保持しながら型枠支保材に取り付け、この型枠支保材を固定した後コンクリートを打設し、コンクリート硬化後にセキ板を埋設したまま型枠支保材を撤去することを特徴とするプレキャスト埋設型枠を用いたコンクリート構造物の構築方法」が開示されている。
一方、土木・建築施工において、種々のプレキャスト版からなる残存型枠が使われている。その中で、プレキャスト版の補強、後打ちコンクリートとの付着性の向上といった観点から、型枠内面となる裏面に、突起や格子状体を設けたものも知られている。
例えば、特許文献3には、プレキャストパネルの裏面に立体金網を設けたものが開示されている。また、特許文献4には、プレキャストコンクリート版の裏面に格子構造のリブからなる補強体を設けたものが開示されている。また、特許文献5には、プレキャスト繊維モルタルボードの裏面に多数の突起を設けたものが開示されている。
また一方、接合部分における接合強度、耐久性を向上させるため、繊維補強ネットを用いたものが知られている。例えば、特許文献6には、プレキャストコンクリート版の接合端面に縦方向に沿って一対の可撓性のある高引張り強度の繊維素材からなる繊維補強ネットを突出配置したものが開示されている。
このような中で、例えば、コンクリート構造物の一つである壁高欄においては、高速道路を建設してから数十年経過した道路橋や高架橋では壁高欄の老朽化が進みこのままでは自動車の衝突に十分耐えられなくなってくる可能性があるなど、耐久性に問題が生じつつある。また、高速道路においては、冬季凍結防止用の塩化カルシウム路面散布が常であり、雨等で通行時に塩分を含むはねが壁高欄に付着し、それが浸透し鉄筋の腐食を起すなど、壁高欄の劣化促進に繋がっている。
壁高欄の劣化補修は、従来法では、壁高欄における劣化した躯体表面をはつった後、はつり面を断面修復材を用いたコテ仕上げにより修復し、表面を樹脂などで塗装することが一般的に行われてきた。最近では、交通遮断期間をできるだけ短くすべく急速施工の観点から、プレキャストコンクリート版(RC版)を用いた補修工法も開発されてきている。
この工法では、残存(埋設)型枠としてのプレキャストコンクリート版設置後、裏面にモルタルを流し込んで壁高欄として一体構造にする。また、プレキャストコンクリート版とモルタルとの付着性を高めるため、金属製のコネクターが用いられることもある。
特開2009−243237号公報 特開平11−36234号公報 特開平7−229222号公報 特開2003−105911号公報 特開2011−26849号公報 実開平04−95402号公報
上記の通り、コンクリート構造物の土木・建築施工において、種々のプレキャスト版からなる残存(埋設)型枠(以下、「埋設型枠」と称す)が使われており、コンクリート構造物の一つである壁高欄の補修においてもプレキャストコンクリート版(RC版)を用いた補修工法も開発されてきているが、この工法ではプレキャストコンクリート版が厚くなり、鉄筋配置、コンクリートかぶりから建築限界を犯す可能性がある。
また、薄くできたとしても、付着性を良くするためにコネクターが用いられていると、該コネクターが配筋されている鉄筋と接触する可能性がある。従来から一般的に用いられているコネクターは金属製であるため、該コネクターが鉄筋と接触すると、躯体補修面とプレキャストコンクリート版との間に打設される補修モルタルの充填性が低下する虞がある。
また、コンクリート構造物躯体が上記例の壁高欄躯体の場合、プレキャスト版と裏面のコンクリートやモルタルとの一体性が十分確保されていないと、車両等の衝突によってプレキャスト版と前記コンクリートやモルタルとの界面が剥離し易くなるとともに、外部から浸透した雨水等の水分の凍結融解によって界面剥離が助長されることも起り易くなるばかりか、海岸付近や塩化カルシウムが散布された道路では、塩分浸透による劣化促進も懸念される。
上記のような劣化助長された壁高欄に車両が衝突すると壁高欄の損傷が大きくなり、補修コストが大きくなるとともに補修期間の長期化による交通の混乱期間も長くなってしまう。
上記壁高欄以外のコンクリート構造物でも同様であり、塩害、腐食、機械的作用などによる劣化によりプレキャスト版と裏面部(コンクリート構造物躯体、充填コンクリート、充填モルタル等)との定着部が剥離することにより耐久性や使用に問題が生じ易くなることが懸念される。
本願発明は、上述のような課題の解決を図ったものであり、コネクター付きプレキャスト版による埋設型枠を用いた既設コンクリート構造物の補修方法において、プレキャスト版とこれに接して打設される裏面のコンクリートやモルタルとの界面の剥離が生じ難く、プレキャスト版裏面でのコネクターと配鉄筋との接触による該裏面に打設されるコンクリートやモルタルの打設性能低下の改善を図った、コネクター付きプレキャスト版による埋設型枠を用いた既設コンクリート構造物の補修方法を提供することを目的とする。
本願発明者等は、上記課題について鋭意検討した結果、プレキャスト版からなる埋設型枠と、変形能力を持たせたコネクターを用いてコンクリート構造物の構築や補修等の埋設型枠施工をすれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
本願発明の一つは、「コネクター付きプレキャスト版からなる埋設型枠を用いたコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法であって、既設コンクリート構造物躯体の劣化部分をはつり、所定の間隔で該躯体のはつり面に対向させて、対向面に、変形可能な非金属繊維メッシュ状体からなるコネクターを、該非金属繊維メッシュ状体の網目面が版面に対して略直角方向になるように立設させたプレキャスト版からなる埋設型枠を設置し、前記はつり面と前記埋設型枠との間にセメント系無収縮モルタルを打設して前記埋設型枠を定着し前記既設コンクリート構造物を補修することを特徴とするコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法」である。
本願発明でのコンクリート構造物は、その構築や補修をプレキャスト版からなる埋設型枠を用いて施工できれば特に限定されない。例えば、壁高欄、トンネル、橋脚、ボックスカルバート、建築構造物などである。
埋設型枠を用いて新規壁高欄等の新規コンクリート構造物を構築する方法は増えつつあるが、例えば、既設壁高欄等の既存のコンクリート構造物の補修に埋設型枠を用いる方法は未だ数少ない。補修に埋設型枠を用いることによって施工効率の向上による施工期間の短縮化が図れるので、既設壁高欄の補修においては通行遮断等の交通障害期間を短くできる。また、埋設型枠は工場で製造されるので、劣化状況に応じた補修性能の向上も図れる。
本願発明を用いた既設コンクリート構造物の補修でも、従来と同様、まずコンクリート構造物躯体の劣化部分をはつる。はつる方法は特に限定されないが、ウォータージェットによる方法が好ましい。
はつり後、所定の間隔で前記躯体のはつり面に対向させてプレキャスト版からなる埋設型枠を設置するが、本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法では、プレキャスト版の裏面(はつり面の対向面)となる一面に変形可能な非金属繊維メッシュ状体(コネクター)を、該非金属繊維メッシュ状体の網目面が版面に対して略直角方向になるように立設させたものを用いることを特徴とする。このようなコネクターを用いることによって、プレキャスト版と該版に接して後打ちされる補修モルタルとの界面の付着強度を向上させることができ、例えば、コンクリート構造物が壁高欄である場合には、車両衝突時の衝撃や界面への水分浸透による凍結融解作用による界面剥離を防ぐことができる。
本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法では、上記の通り、プレキャスト版に立設する硬さを有しかつ変形可能な柔軟性を有する非金属繊維メッシュ状体からなるコネクターを用いる。ここで言う「変形可能な」とは、例えば、該コネクターが壁高欄等のコンクリート構造物に配筋されている鉄筋に接触すると鉄筋を押すことなく接触部分とその近傍が柔軟に折れ曲がったり湾曲したりする変形性能を有することを示す。該コネクターが変形することにより、コンクリート構造物の補修においては、埋設型枠を定着させコンクリート構造物躯体と一体化するために、コンクリート構造物躯体補修面と埋設型枠との間に打設される補修モルタルや補修コンクリートの充填性が低下するのを防げる。
また、コネクターを非金属繊維メッシュ状体に限定するのは、金属製や金属繊維製であると引張耐力等の耐久性を維持しつつ変形性能を持たしたメッシュ状体にすることが難しいこと、また、金属製であれば発錆の可能性があり、劣化要因となるからである。非金属繊維としては変形可能なメッシュ状体にすることができる耐久性の高いものであれば特に限定されない。例えば、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の有機合成繊維が挙げられる。
有機合成繊維は、概して引張耐力等の耐久性があり、前記立設可能な適度な硬さと変形性能を有するものが多いので好ましい。中でも、硬質ポリプロピレン繊維は耐熱性、耐薬品性に優れる性質があるのでより好ましい。なお、ここで言う「メッシュ状体」とは、メッシュ、網、格子体、編体などの総称を意味する。
本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法では、非金属繊維メッシュ状体からなるコネクターを、この網目面がプレキャスト版面に対して略直角方向になるように立設させて用いる。該立設により、非金属繊維メッシュ状体の一部(下部)をプレキャスト版に埋設し、一部(上部)がプレキャスト版の版面から略垂直に突出した状態となる。このような立設は非金属繊維メッシュ状体の縦(高さ)方向より横(長さ)方向が長くなるようにして行うが、該立設の数や配置形態は特に限定されない。例えば、プレキャスト版の縦方向に複数立設させたり、横方向に複数立設させたり、複数の枠形状に立設したりすることができる。また、プレキャスト版面に対して必ずしも均一な配置形態にする必要はなく、剥離し易いと予想される箇所の立設密度を高めた不均一な配置形態にしてもよい。
プレキャスト版は、コンクリート版、モルタル版、樹脂板等いずれでもよく特に限定されないが、中でも、耐久性能や価格の面からして高強度繊維モルタルからなるモルタル版が好ましく、特に、JIS A 1108による圧縮試験での圧縮強度が50N/mm以上の高強度モルタル版が好ましい。繊維モルタルにすることによって靭性が高められ、高強度モルタルにすることによって圧縮強度や付着強度が高まるので版厚を薄くでき建築限界の問題が解決される。プレキャスト版の版厚は15〜25mmが好ましい。15mm未満では品質・性能が良く安定したものが得難くなる。25mmを超えると建築限界の問題が生じる虞がある。
また、前述の通り、コンクリート構造物の一つである壁高欄の劣化は冬季凍結防止用の塩化カルシウム路面散布等による塩害によっても促進される。したがって、様々なコンクリート構造物の構築や補修への適用を可能とすべく、プレキャスト版やこれに好適なモルタルは遮塩性の高い高耐久ものが好ましい。遮塩性能としては、コンクリート標準示方書設計編における塩害に対する照査方法による性能を満たせばよい。
塩害に対する照査方法は、土木学会基準JSCE−G571−2007「電気泳動によるコンクリート中の塩化物イオンの実行拡散係数試験方法(案)」またはJSCE−G572−2007「浸せきによるコンクリート中の塩化物イオンの見掛の拡散係数試験方法(案)」により求めたプレキャスト版の塩化物イオンの拡散係数を求めて、フィックの第2法則として知られる拡散方程式を用いて、鋼材位置における塩化物イオンが鋼材腐食発生限界濃度(0.3〜2.4kg/m)に構造物係数を乗じた値以下であることを照査すればよい。
本願発明では、高強度・高耐久繊維モルタルプレキャスト版を用いるのが最も好ましく、前記本願発明のコネクターを備えたこのプレキャスト版からなる埋設型枠を用いて壁高欄等のコンクリート構造物の補修を行えば、前記本願発明の目的が容易に達成でき、補修後の塩害防止効果も期待できる。
前記高強度繊維モルタルとしては、「セメント55〜85重量%と、石灰石微粉末または高炉スラグ微粉末5〜50重量%と、シリカフューム3〜15重量%とからなるセメント組成物(A)と、前記セメントに対し外割りで1〜5重量%の膨張材(B)及び/又はセメントに対し外割りで0.5〜5.0重量%の収縮低減剤(C)と、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.05〜0.30重量%の有機系保水剤(D)と、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.07〜0.10重量%の高性能減水剤(E)と、混練水に対し体積置換率で5〜20体積%の尿素(F)と、前記セメント組成物(A)100重量部に対し50〜150重量部の細骨材(G)と、モルタル全体積に対し0.05〜0.7体積%の繊維(H)とを含み、前記セメント組成物(A)と前記膨張材(B)と前記収縮低減剤(C)の合量に対する混練水(W)の割合が重量比で混練水(W)/(セメント組成物(A)+膨張材(B)+収縮低減剤(C))=0.15〜0.35の無収縮繊維モルタル」が好ましい。
また、この無収縮繊維モルタルにおいて、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.0005〜0.05重量%消泡剤(I)が添加されているのは強度増進と収縮低減の観点からして更に好ましい。
このモルタルは無収縮繊維モルタルであり、特開2010−13343に開示される「チクソトロピー性を有する断面修復材」に準じたものである。この断面修復材は、コテ仕上げ性、乾燥収縮、強度の改善を目的に開発されたモルタルであるが、本願発明者等は、プレキャスト化しプレキャスト版として用いると、壁高欄等のコンクリート構造物の補修に用いられていた従来のコンクリートプレキャスト版より薄くできるとともに寸法安定性や遮塩性能も得られることを見出し本願発明における一つの技術要素に到達した。
このモルタルはチクソトロピー性と無収縮性を有し、薄いプレキャスト版を製作する際にもセルフレベリング性、寸法安定性、保形性を保持できるため薄いプレキャスト版が製作し易い。また、繊維モルタルであるため、曲げ抵抗性、収縮抵抗性に優れ、薄く成形した場合もひび割れが発生し難い。以上の通り、本願発明者等は、コテ仕上げ性等が改善されたチクソトロピー性を有する断面修復材として知られていたモルタルをプレキャスト化すると、薄版にしても成形し易い高強度・高耐久(高遮塩性)の無収縮繊維モルタルからなる前記高強度・高耐久繊維モルタルプレキャスト版が容易に得られることを見出し、更に、これを埋設型枠を用いたコンクリート構造物の構築や補修における埋設型枠として用いれば施工効率を高められるだけでなく施工後の性能維持も図れることを見出し本願発明の達成を大きく前進させた。
本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法では、コンクリート構造物における前記躯体のはつり面と所定の間隔で設置された前記プレキャスト版からなる埋設型枠との間にセメント系無収縮モルタルを打設して埋設型枠を定着させ、該躯体と該埋設型枠とを一体化して補修する。
このセメント系無収縮モルタルは、充填性(流動性)と付着性能が良ければ従来からあるものでよく特に限定されない。例えば、特開平10−17342、特開平11−60316、特許第4638651号、特許第4910200号、特許第4938244号などに記載されるものである。
また、これらのいずれかに高炉スラグ微粉末を15重量%程度添加し、流動性能、遮塩性能を高めたものを用いることは好ましい。遮塩性能を有する高強度モルタルとしては特開平05−345652に記載されるものがあるが、これを用いることもできる。
上述の通り、上記本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法は、既設壁高欄等の既設コンクリート構造物の補修方法であるが、本願発明のコネクター付きプレキャスト版からなる埋設型枠を用いたコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法は必ずしも補修に限定されるものではなく、コンクリート構造物の新設施工にも用いることができる。
コンクリート構造物の新設施工における本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法は、従来から行われている埋設型枠を用いたコンクリート構造物の構築方法と同様であり、従来の埋設型枠に代えて本願発明のコネクター付きプレキャスト版からなる埋設型枠を用いればよい。この埋設型枠の設置は、補修施工に限定した上記本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法に準じて行えばよい。
例えば、壁高欄の新設施工は次のようにして行う。まず、本願発明のコネクター付きプレキャスト版からなる埋設型枠を用いて製作したプレキャスト壁高欄を床板とアンカー金具で固定してすべての壁高欄の架設終了後に調整ジャッキにて高さを調整してボルトで固定する。次に、床板と壁高欄の接合部に無収縮モルタルを注入充填して埋設型枠を定着させ床板と壁高欄とを一体化する。また、このような施工方法によらず、例えば、本願発明のコネクター付きプレキャスト版からなる埋設型枠を床板に設置し、場所打ちコンクリートを打設して施工してもよい。
本願発明の他の一つは、「埋設型枠内面にセメント系材料を打設しコンクリート構造物を構築又は補修する際に用いる前記埋設型枠の版材である埋設型枠用プレキャスト版であって、前記埋設型枠内面となる前記プレキャスト版の裏面に、変形可能な非金属繊維メッシュ状体からなるコネクターを、該非金属繊維メッシュ状体の網目面が版面に対して略直角方向になるように立設させたことを特徴とする埋設型枠用プレキャスト版」である。
このプレキャスト版は、埋設型枠を用いてコンクリート構造物を構築あるいは補修する際に埋設型枠として用いるものであり、埋設型枠の裏面(内面)にモルタルやコンクリート等のセメント系材料を打設することにより埋設型枠が定着してコンクリート構造物と一体化されコンクリート構造物に取付けられる。
プレキャスト版の版自体は、コンクリート版、モルタル版、樹脂板等いずれでもよく特に限定されないが、中でも、耐久性能や価格の面からして高強度繊維モルタルからなるモルタル版が好ましく、特に、JIS A 1108による圧縮試験での圧縮強度が50N/mm以上の高強度モルタル版が好ましい。繊維モルタルにすることによって靭性が高められ、高強度モルタルにすることによって圧縮強度や付着強度が高まるので版厚を薄くでき建築限界の問題が生じなくなる。プレキャスト版の版厚は15〜25mmが好ましい。15mm未満では品質・性能が良く安定したものが得難くなる。25mmを超えると施工場所によっては建築限界の問題が生じる虞がある。
また、施工対象や施工場所によっては塩害の問題があるので、プレキャスト版を遮塩性の高い高耐久のものにしておくのは好ましい。遮塩性能としては、前述の通りであり、コンクリート標準示方書設計編における塩害に対する照査方法による性能を満たせばよい。
このような遮塩性を備えた高強度繊維モルタルとしては特に限定されず従来からある高強度・高耐久繊維モルタルが使用できるが、上記壁高欄の補修方法において例示した「セメント55〜85重量%と、石灰石微粉末または高炉スラグ微粉末5〜50重量%と、シリカフューム3〜15重量%とからなるセメント組成物(A)と、前記セメントに対し外割りで1〜5重量%の膨張材(B)及び/又はセメントに対し外割りで0.5〜5.0重量%の収縮低減剤(C)と、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.05〜0.30重量%の有機系保水剤(D)と、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.07〜0.10重量%の高性能減水剤(E)と、混練水に対し体積置換率で5〜20体積%の尿素(F)と、前記セメント組成物(A)100重量部に対し50〜150重量部の細骨材(G)と、モルタル全体積に対し0.05〜0.7体積%の繊維(H)とを含み、前記セメント組成物(A)と前記膨張材(B)と前記収縮低減剤(C)の合量に対する混練水(W)の割合が重量比で混練水(W)/(セメント組成物(A)+膨張材(B)+収縮低減剤(C))=0.15〜0.35の無収縮繊維モルタル」が好ましい。
また、この無収縮繊維モルタルにおいて、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.0005〜0.05重量%消泡剤(I)が添加されているのは強度増進と収縮低減の観点からして更に好ましい。これらの詳細は前述の通りであるので、繰返し記載するのは省略する。
本願発明の埋設型枠用プレキャスト版では、型枠内面となるプレキャスト版裏面に、変形可能な非金属繊維メッシュ状体からなるコネクターが、該非金属繊維メッシュ状体の網目面が版面に対して略直角方向になるように立設されていることを特徴とする。この非金属繊維メッシュ状体はコネクターの一種であり、付着強度を増大させてプレキャスト版裏面の界面付近が剥離するのを防止する役目をする。この非金属繊維メッシュ状体からなるコネクターの構成材料は立設可能な適度な硬さと変形性能を有するものであれば特に限定されないが、耐久性能や価格や品揃えの点から有機合成繊維が好ましい。その他の詳細は、上記コンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法のところで述べた通りであるので、繰返し記載するのは省略する。
本願発明の埋設型枠用プレキャスト版は、埋設型枠を用いたコンクリート構造物の新設施工や、埋設型枠を用いた既設コンクリート構造物の補修施工に好適に用いることができる。該新設施工については前述の通りである。また、該補修施工については、本願発明との一つとして示す、上記コンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法のところで述べた通りである。
本願発明のコネクター付きプレキャスト版からなる埋設型枠を用いたコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法は、該プレキャスト版を埋設型枠として用いる施工なので、現場施工を簡略化して施工期間を短縮することができ、壁高欄補修工事等供用中の道路内でコンクリート構造物の構築又は補修を行う場合は、通行止め等の交通障害期間を短くできる。
また、前記プレキャスト版の裏面にはコネクターが設けられているので、壁高欄等の道路内コンクリート構造物においては、万が一車両等が補修個所に衝突しても、衝撃によって該プレキャスト版とこれに接して後打ちされるモルタルやコンクリートとの界面の剥離が生じ難くなる。また、該プレキャスト版を高強度化して薄くすることにより建築限界の問題も解消できる。
更に、前記コネクターは変形可能な非金属繊維メッシュ状体からなる特殊なものなので、コネクターとコンクリート構造物躯体等からの配鉄筋とが接触しても配鉄筋に影響を与えることはなく、プレキャスト版を固定し施工対象のコンクリート構造物の躯体もしくは部材と一体化するために前記プレキャスト版の裏面側(型枠内面側)に該プレキャスト版に接して後打ちされるコンクリートやモルタルの充填性を低下させることもない。
また、本願発明の埋設型枠用プレキャスト版は、型枠内面となるプレキャスト版裏面に、変形可能な非金属繊維メッシュ状体からなるコネクターを、該非金属繊維メッシュ状体の網目面が版面に対して略直角方向になるように立設させたものなので、該プレキャスト版裏面(型枠内面)に該プレキャスト版に接して打設されるモルタルやコンクリート等の充填材料との付着性が良い。
そして、コネクターは変形可能な柔軟性材料でできているので、該コネクターがコンクリート構造物躯体等からの配鉄筋に接触しても配鉄筋の位置をずらしたり配鉄筋を損傷するといった悪影響を与えることはない。したがって、配鉄筋の多いコンクリート構造物の施工においても配鉄筋への影響を気にすることなく用いることができる。
本願発明の埋設型枠用プレキャスト版の構造の一例を示す側面図である。 非金属繊維メッシュ状体からなるコネクター3のプレキャスト版2への配置形態例を示す埋設型枠用プレキャスト版1裏面の平面図である。(a)は縦方向のコネクター(非金属繊維メッシュ状体)3を密にした場合の配置形態、(b)は横方向のコネクター(非金属繊維メッシュ状体)3を密にした場合の配置形態である。 ポリプロピレン繊維メッシュ状体が鉄筋に強く接触した時の変形状況を示す図である。 プレキャスト版の厚み(深さ)方向との関係での遮塩性能を示す図である。 深さ30mm位置での塩分増加量を経過年数との関係で示した予想図である。 本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法で補修した補修後の壁高欄の構造の一例を示す側面図である。
以下、本願発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本願発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
(1)埋設型枠用プレキャスト版
(a) 構造
図1は、本願発明の埋設型枠用プレキャスト版の構造の一例を示す側面図である。
本願発明の埋設型枠用プレキャスト版1はコネクター付きプレキャスト版であり、プレキャスト版2の裏面(型枠内面)側となる一面に非金属繊維メッシュ状体からなるコネクター3が該非金属繊維メッシュ状体の網目面が版面に対して略直角方向になるようにして立設している。
プレキャスト版2の寸法は、縦800〜1500mm、横1000〜2500mm、厚さ15〜25mm程度である。コネクター3は、下部が版厚程度プレキャスト版2の中に埋め込まれ、上部20〜30mmが版面から突出している。
図2は、非金属繊維メッシュ状体からなるコネクター3のプレキャスト版2への配置形態例を示す埋設型枠用プレキャスト版1裏面の平面図である。(a)は縦方向のコネクター(非金属繊維メッシュ状体)3を密にした場合の配置形態、(b)は横方向のコネクター(非金属繊維メッシュ状体)3を密にした場合の配置形態である。
図2(a)では、縦方向のコネクター(非金属繊維メッシュ状体)3の配置間隔は概ね100mmとし横方向のコネクター(非金属繊維メッシュ状体)3の配置間隔は概ね350mmとしている。また、図2(b)では、逆に、縦方向のコネクター(非金属繊維メッシュ状体)3の配置間隔を概ね350mmとし横方向のコネクター(非金属繊維メッシュ状体)3の配置間隔を概ね100mmとしている。
これら、コネクター(非金属繊維メッシュ状体)3の使用数、配置形態、配置間隔等は限定されるものではなく、現場の環境条件や施工条件によって適宜決めれば良い。また、図2の例では、いずれも均一な配置形態としているが、必ずしも均一である必要はなく、特に付着性や剥離防止性を強化したい箇所があれば、そこを密にした不均一な配置形態とすることもできる。
(b) コネクター
コネクター3は図1に示すように立設し、かつ、可撓性等の変形能力のある非金属繊維メッシュ状体からなるものであれば特に限定されないが、価格、耐久性、品揃え等からして硬質な有機合成繊維からなるものが好ましい。「硬質」とは、メッシュ状体にしたときに図1に示すように立設でき、かつ、手で容易に変形できる程度の柔軟性を有する硬さのものをいう。有機合成繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。具体的には、例えば、ポリプロピレン繊維では、萩原工業株式会社の「メルタッククロスFR;商品名」が挙げられる。
図3は、ポリプロピレン繊維メッシュ状体が鉄筋に強く接触した時の変形状況を示す図である。接触箇所が変形しているのがわかる。本願発明での「変形可能な」とは、このような変形が可能であることを言う。
非金属繊維メッシュ状体の網目は、2〜10mm程度が好ましい。粗すぎると付着性の向上効果が得られ難くなり、また、細かすぎると、例えば、補修施工(本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法)でのセメント系無収縮モルタル打設時に該セメント系無収縮モルタルがメッシュ状の網目に詰まる場合がある。
メッシュ状体を構成する繊維の太さは、0.5〜2mm程度が好ましい。繊維は単繊維(モノフィラメント)でも細い繊維を編んだ複合繊維(マルチフィラメント)のどちらでもよい。
(c) プレキャスト版
プレキャスト版2は、価格や製造のし易さからして、モルタルやコンクリートなどのセメント系材料からなるものが好ましく、中でも、高強度、高耐久(高遮塩性、高凍結融解抵抗性、高耐硫酸塩性、低乾燥収縮、低中性化など)、高靭性などの特性を備えたものがより好ましい。
このような条件を満たすものであれば従来から知られているプレキャスト版で良いが、本願発明者等は、コテ仕上げ性、乾燥収縮、強度の改善を目的に開発された特開2010−13343に開示される「チクソトロピー性を有する断面修復材」のモルタルに準じたものをプレキャスト化しプレキャスト版を作製すると、高強度で寸法安定性や遮塩性能にも優れた高耐久性のものになることを見出し本願発明における一つの技術要素に到達した。
この高強度繊維モルタルは、「セメント55〜85重量%と、石灰石微粉末または高炉スラグ微粉末5〜50重量%と、シリカフューム3〜15重量%とからなるセメント組成物(A)と、前記セメントに対し外割りで1〜5重量%の膨張材(B)及び/又はセメントに対し外割りで0.5〜5.0重量%の収縮低減剤(C)と、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.05〜0.30重量%の有機系保水剤(D)と、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.07〜0.10重量%の高性能減水剤(E)と、混練水に対し体積置換率で5〜20体積%の尿素(F)と、前記セメント組成物(A)100重量部に対し50〜150重量部の細骨材(G)と、モルタル全体積に対し0.05〜0.7体積%の繊維(H)とを含み、前記セメント組成物(A)と前記膨張材(B)と前記収縮低減剤(C)の合量に対する混練水(W)の割合が重量比で混練水(W)/(セメント組成物(A)+膨張材(B)+収縮低減剤(C))=0.15〜0.35の無収縮繊維モルタル」である。必要に応じて、消泡剤(I)を上記セメント組成物(A)に対し外割りで0.0005〜0.05重量%添加しても良い。
上記の通り、このモルタルはセメント組成物(A)と、膨張材(B)及び/又は収縮低減剤(C)と、有機系保水剤(D)と、高性能減水剤(E)と、尿素(F)と、細骨材(G)と、繊維(H)と、必要に応じて添加される消泡剤(I)とからなる特殊配合のものである。
(イ)セメント組成物(A)
セメント組成物(A)は、セメント55〜85重量%と、石灰石微粉末または高炉スラグ微粉末5〜50重量%と、シリカフューム3〜15重量%とからなるものである。セメント組成物(A)は、配合の考え方で便宜上示されるもので、必ずしも一体的組成物になっている必要はない。
セメントは普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメントであればよい。55重量%未満では強度不足となり易い。また、85重量%を超えると作業性に問題が生じ易くなる。
石灰石微粉末や高炉スラグ微粉末は流動性や粘性を調整する目的で添加される。高炉スラグ微粉末は組織の緻密化による耐久性の向上も期待できるので好ましい。これらは、5重量%未満では十分な効果が得られない。50重量%を超えると初期強度の確保が難しくなる。
シリカフュームは、強度の向上、流動性や粘性の付与、チクソトロピー性の付与、組織の緻密化による耐久性の向上などの目的で添加される。3重量%未満では十分な効果が得られない。15重量%を超えると作業性が悪くなってくる。
(ロ)膨張材(B)
膨張材(B)はモルタルを無収縮性のとしプレキャスト版の寸法安定性を確保する目的で、セメントに対し外割りで1〜5重量%添加される。1重量%未満では十分な効果が得られない。5重量%を超えると膨張材の種類によっては膨張し過ぎて寸法安定性が悪くなったり膨張ひび割れを発生し易くなったりする。膨張材(B)は石灰系膨張材、CSA系膨張材のいずれでもよい。
(ハ)収縮低減剤(C)
収縮低減剤(B)は主として乾燥収縮の低減を目的にセメントに対し外割りで0.5〜5.0重量%添加される。単独で使用しても良いが上記膨張材(B)との併用も可能である。0.5重量%未満では十分な効果が得られない。5.0重量%を超えると粘性の増加により作業性が悪くなる虞がある。収縮低減剤(C)としては、アルキレンオキシド系のもの、ポリエーテル系のもの、グリコールエーテル系のもの、低級アルコール系のもの、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系のもの、アミノアルコール系のものなどが挙げられる。
(ニ)有機系保水剤(D)
有機系保水剤は主として初期乾燥によるひび割れを低減することを目的として前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.05〜0.30重量%添加している。0.05重量%未満では十分な効果が得られない。0.30重量%を超えると粘性が増加し作業性が悪くなる。有機系保水剤(D)としては、天然コーンスターチ、ポリグルタミン酸架橋物、メチルセルロースなどが挙げられる。
(ホ)高性能減水剤(E)
高性能減水剤(E)は使用水量を減らして組織の緻密化、強度向上、良好なフレッシュ性状の確保等を目的として前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.07〜0.10重量%添加している。0.07重量%未満では十分な効果が得られない。0.10重量%を超えると良好なフレッシュ性状が得難くなる。高性能減水剤(E)としては、ポリカルボン酸系のものが好ましい。
(ヘ)尿素(F)
尿素(F)は収縮低減を目的に混練水に対し体積置換率で5〜20体積%添加される。
5体積%未満では十分な効果が得られない。20体積%を超えると、硬化後に尿素が結晶化した場合、組織が膨張破壊する虞がある。
(ト)細骨材(G)
細骨材(G)は強度向上、収縮低減の目的で前記セメント組成物(A)100重量部に対し50〜150重量部の割合で添加する。50重量部未満では十分な効果が得られない。150重量部を超えると寸法安定性、保形性が悪くなるとともに十分な強度の確保が難しくなる。細骨材の種類は特に限定されない。例えば,6号珪砂などである。
(チ)繊維(H)
繊維(H)は曲げ強度、引張強度、付着強度等の向上とひび割れ防止の目的でモルタル全体積に対し0.05〜0.7体積%添加する。0.05体積%未満では十分な効果が得られない。0.7体積%を超えると作業性が悪くなり、品質の安定したプレキャスト版が得難くなる。繊維としては、金属繊維、非金属無機繊維、有機繊維のいずれでもよいが、ポリアミド系繊維等の有機合成繊維が好ましい。
(リ)混練水(W)
混練水(W)は前記セメント組成物(A)と前記膨張材(B)と前記収縮低減剤(C)の合量に対し重量比で混練水(W)/(セメント組成物(A)+膨張材(B)+収縮低減剤(C))=0.15〜0.35の割合で添加される。0.15未満では作業性が悪くなるとともに十分な強度が得られ難くなる。0.35を超えると十分な強度が得られ難くなるとともに乾燥収縮が大きくなりひび割れが発生したり寸法安定性が悪くなったりする。
(ヌ)消泡剤(I)
消泡剤(I)は、必要に応じて、主として強度向上、収縮低減を目的として前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.0005〜0.05重量%添加する。0.0005重量%では十分な効果が得られない。0.05重量%を超えると作業性が悪くなる。消泡剤としては市販のシリコーン系のもの、アルコール系のもの、グリセリン脂肪酸エステル系のものなどが挙げられる。
本願発明者等は、上記材料と配合による無収縮繊維モルタル(高強度繊維モルタル)が遮塩性能が優れたものであり、プレキャスト化すると高強度・高耐久の繊維モルタル版になり、塩害防止を考慮した土木・建築施工に使われる埋設型枠用プレキャスト版として好適なものであることを見出した。
図4は、プレキャスト版の厚み(深さ)方向との関係での遮塩性能を示す図である。試験方法は、土木学会基準JSCE−G572−2007「浸せきによるコンクリート中の塩化物イオンの見掛けの拡散係数試験方法(案)」に準拠して、360日浸漬した試料における表面から0.25cm、1.05cm、1.85cm、3.05cm、3.85cmの塩化物イオン濃度をJIS A 1154「硬化コンクリート中の塩化物イオンの分析方法」により求めた。ごく表面層には塩化物が存在していても内部にはほとんど拡散浸透せず優れた遮塩性能を有することがわかる。
図5は、深さ30mm位置での塩分増加量を経過年数との関係で示した予想図である。図に示す塩分浸透履歴曲線は、耐久性が50年以上あることを確認するために求めた推定曲線であり厳密なものではない。
この結果から、上記材料と配合によるモルタルを用いれば、耐久性(遮塩性)が50年以上ある高強度・高耐久埋設型枠用プレキャスト版が得られることが期待できる。なお、許容塩分量とは鋼材腐食発生限界濃度であり、一般的に0.3〜2.4kg/mである。図5に示す許容塩分量では、表面下30mmの位置での鋼材腐食発生限界濃度を2.4kg/mとした。
また、上記図4、図5を求めるに当たり、解析は次のようにして行った。すなわち、360日浸漬した試料における表面から0.25cm、1.05cm、1.85cm、3.05cm、3.85cmの塩化物イオン濃度の各値から塩化物イオンの見掛けの拡散係数を求め、フィックの第2法則として知られる拡散方程式を用いて曲線のプロファイルを求めた。
(d) 埋設型枠プレキャスト版の製造方法
本願発明の埋設型枠プレキャスト版の製造は、次のようにして行った。まず、製作するプレキャスト版の大きさに型枠を組み、長手方向にマッチキャスト方式で数枚並べて、混練水(W)/(セメント組成物(A)+膨張材(B)+収縮低減剤(C))=0.17の割合で練り混ぜた前記高強度繊維モルタルを打設した。次に、側面のみ即時脱型を行い、コネクターの配置位置に予めスリットを設け、所定の位置にコネクター下部が版厚程度埋まるような位置までコネクターを垂直方向に挿入した。コネクター挿入後に型枠に付けたバイブレーターでモルタルに振動を与えコネクターを埋め込み、材齢7日まで湿空養生し、その後脱型してプレキャスト版を得た。
(e) コンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法
本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法を用いた既設コンクリート構造物の補修施工の一例を示す。この例では、コンクリート構造物は壁高欄である。
本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法を用いた壁高欄の補修は、上述の本願発明の埋設型枠プレキャスト版を用いて行う。その方法の概略は、「まず壁高欄における躯体の劣化部分をはつり、その後、所定の間隔で該躯体のはつり面に対向させて、対向面に変形可能な非金属繊維メッシュ状体からなるコネクターを、該非金属繊維メッシュ状体の網目面が版面に対して略直角方向になるように立設させて埋設型枠プレキャスト版を設置し、前記はつり面と前記埋設型枠プレキャスト版との間にセメント系無収縮モルタルを打設し埋設型枠を定着させる」というものである。
図6は、本願発明のコンクリート構造物における埋設型枠の定着方法で補修した補修後の壁高欄の構造の一例を示す側面図である。
壁高欄5の内部には鉄筋4が配筋されている。ウォータージェットではつりしたはつり面7に対向して、本願発明の埋設型枠用プレキャスト版1からなる埋設型枠6がはつり面7に対して所定の間隔で設置されている。
はつり面7と埋設型枠6との間隔は、30mm程度である。はつり面7と埋設型枠6との間にはセメント系無収縮モルタル8が打設され、壁高欄5の躯体と埋設型枠6とが一体化している。埋設型枠6を設置する際、埋設型枠6の裏面に設けられている非金属繊維メッシュ状体からなるコネクター(図示省略)が鉄筋4に接触しても、図3に示すようにコネクターは変形するので、鉄筋4に位置をずらすなどの悪影響を与えることはない。
次に、本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法を用いた既設壁高欄の補修の一例の工程概要を示す。
(1) 壁高欄5における劣化表面をウォータージェットによりはつり、鉄筋4を露出させる。
(2) はつり面7と埋設型枠6におけるプレキャスト版2の裏面との間隔が30mm程度となるように埋設型枠6(本願発明の埋設型枠用プレキャスト版1)を設置する。コネクター3は、はつり面7とプレキャスト版2裏面との間の空間に、はつり面7に向かって立設している。なお、コネクター3は、露出した鉄筋4と接触している箇所は一部変形している。コネクター3が変形するので露出した鉄筋4に変化はない。
(3) はつり面7と埋設型枠6におけるプレキャスト版2の裏面との間の空間にセメント系無収縮モルタル8を流し込んで壁高欄として一体構造にする。上記の通り、コネクター3と露出した鉄筋4とが接触してもコネクター3は変形し露出した鉄筋4に変化はないので、流し込んだセメント系無収縮モルタル8の充填性が悪くなることはない。
上記本願発明のコンクリート構造物施工における埋設型枠の定着方法での補修施工期間は施工範囲(補修範囲)により異なるが、例えば、補修長さ30m、補修高さ80cmの施工では、ウォータージェットによるコンクリートの劣化表面はつりで約2日、露出させた鉄筋の防錆処理と本願発明の埋設型枠(埋設型枠用プレキャスト版)の建て込みで約1.5日、はつり面と埋設型枠との間の空間へのセメント系無収縮モルタルの打設で約0.5日、目地処理工で約0.5日の全工程約4.5日であり、従来の壁高欄の補修施工期間に比べ短い。
本願発明の壁高欄の補修では、埋設型枠を用いた方法であるので、上記の通り、効率良い短期補修施工が可能となる。また、埋設型枠は本願発明の埋設型枠用プレキャスト版を用いたものであってコネクター付き埋設型枠であるので、埋設型枠のプレキャスト版の剥離が生じ難い。更に、コネクターが変形可能な非金属繊維メッシュ状体からなるものなので、はつり面と埋設型枠のプレキャスト版裏面との間に打設されるセメント系無収縮モルタルの充填性が悪くなることはない。
1…埋設型枠用プレキャスト版、2…プレキャスト版、3…コネクター(非金属繊維メッシュ状体)、4…鉄筋、5…壁高欄、6…埋設型枠、7…はつり面、8…セメント系無収縮モルタル、9…路面

Claims (7)

  1. 鉄筋が配筋されている既設コンクリート構造物の補修方法であっ
    て、前記既設コンクリート構造物躯体の劣化部分をはつり、所定の間隔で該躯体のはつり面に対向させて、対向面に、前記鉄筋との接触に対し変形可能な非金属繊維メッシュ状体からなるコネクターを、該非金属繊維メッシュ状体の網目面が版面に対して略直角方向になるように立設させたプレキャスト版からなる埋設型枠を設置し、前記はつり面と前記埋設型枠との間にセメント系無収縮モルタルを打設して前記埋設型枠を定着し前記既設コンクリート構造物を補修することを特徴とする既設コンクリート構造物の補修方法。
  2. 前記プレキャスト版が高強度繊維モルタルからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の既設コンクリート構造物の補修方法。
  3. 前記高強度繊維モルタルが、セメント55〜85重量%と、石灰石微粉末または高炉スラグ微粉末5〜50重量%と、シリカフューム3〜15重量%とからなるセメント組成物(A)と、前記セメントに対し外割りで1〜5重量%の膨張材(B)及び/又はセメントに対し外割りで0.5〜5.0重量%の収縮低減剤(C)と、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.05〜0.30重量%の有機系保水剤(D)と、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.07〜0.10重量%の高性能減水剤(E)と、混練水に対し体積置換率で5〜20体積%の尿素(F)と、前記セメント組成物(A)100重量部に対し5〜150重量部の細骨材(G)と、モルタル全体積に対し0.05〜0.7体積%の繊維(H)とを含み、前記セメント組成物(A)と前記膨張材(B)と前記収縮低減剤(C)の合量に対する混練水(W)の割合が重量比で混練水(W)/(セメント組成物(A)+膨張材(B)+収縮低減剤(C))=0.15〜0.35の無収縮繊維モルタルであることを特徴とする請求項2に記載の既設コンクリート構造物の補修方法。
  4. 前記無収縮繊維モルタルにおいて、前記セメント組成物(A)に対し外割りで0.0005〜0.05重量%消泡剤(I)が添加されていることを特徴とする請求項3に記載の既設コンクリート構造物の補修方法。
  5. 前記非金属繊維メッシュ状体が有機合成繊維からなるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の既設コンクリート構造物の補修方法。
  6. 前記プレキャスト版の厚さが15〜25mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の既設コンクリート構造物の補修方法。
  7. 前記鉄筋が配筋されている既設コンクリート構造物が橋梁の壁高欄であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の既設コンクリート構造物の補修方法。
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