図2は、下りリンクにおける非直交多重アクセス(NOMA)の説明図である。図2では、無線基地局BSによって形成されるセルの中央部(以下、セル中央部という)にユーザ端末UE1が位置し、当該セルの端部(以下、セル端部という)にユーザ端末UE2が位置する場合が示される。セル内のパスロスは、セル中央部からセル端部に向かうにつれて増加する。このため、図2に示すように、パスロスが大きいセル端部に位置するユーザ端末UE2の受信SINR(Received Signal to Interference plus Noise Ratio)は、パスロスが小さいセル中央部に位置するユーザ端末UE1の受信SINRよりも低くなる。
NOMAでは、受信SINRなどの干渉推定情報(後述)の相違に応じて送信電力を異ならせることで、同一の無線リソースに対して複数のユーザ端末UEを多重する。例えば、図2では、受信SINRが異なるユーザ端末UE1及びUE2に対する下り信号が同一の無線リソースに多重される。また、受信SINRが高いユーザ端末UE1に対する下り信号が相対的に小さい送信電力で送信され、受信SINRが低いユーザ端末UE2に対する下り信号が相対的に大きい送信電力で送信される。
また、NOMAでは、SIC(Successive Interference Cancellation)により受信信号から干渉信号を除去することで、自端末に対する下り信号が抽出される。具体的には、自端末より受信SINRが低い他のユーザ端末に対する下り信号を除去することで、自端末に対する下り信号が抽出される。
例えば、図2において、ユーザ端末UE2の受信SINRはユーザ端末UE1よりも低いので、ユーザ端末UE2に対する下り信号は、ユーザ端末UE1に対する下り信号より大きい送信電力で送信される。このため、ユーザ端末UE1は、ユーザ端末UE2に対する下り信号を干渉信号として受信してしまうが、当該干渉信号は、SICにより適切に除去される。この結果、ユーザ端末UE1は、自端末に対する下り信号を抽出して適切に復号できる。
一方、ユーザ端末UE1の受信SINRはユーザ端末UE2よりも高いので、ユーザ端末UE1に対する下り信号は、ユーザ端末UE2に対する下り信号より小さい送信電力で送信される。このため、ユーザ端末UE2は、ユーザ端末UE1に対する下り信号による干渉を無視でき、SICによる干渉除去を行う必要はない。
このように、下りリンクにおいてNOMAを適用する場合、同一の無線リソースに対して、受信SINRが異なる複数のユーザ端末UE1及びUE2を多重できるので、周波数利用効率を向上させることができる。一方、将来の無線通信システムでは、飛躍的なトラヒック増大が見込まれるため、更なる周波数利用効率の改善が望まれる。そこで、下りリンクにおいてNOMAに加えて多入力多出力(MIMO:Multiple-Input and Multiple-Output)を適用することが検討されている。
図3は、下りリンクにおけるNOMAとマルチユーザ多入力多出力(MU−MIMO)とを用いた送信法(以下、NOMA/MU−MIMO)の説明図である。図3では、ユーザ端末UE1及びUE2は、無線基地局BSから同一方向で受信SINR(ビームレベルSINR)が異なる位置に位置する。同様に、ユーザ端末UE3及びUE4は、無線基地局BSから同一方向で受信SINRが異なる位置に位置する。
NOMA/MU−MIMOでは、異なる指向性を有する複数のビームにより複数のユーザ端末UEに対する下り信号がそれぞれ送信される。また、各ビームにおいて、受信SINRが異なる複数のユーザ端末UEに対する下り信号が送信される。一方、受信側では、IRC(Interference Rejection Combining)により干渉ビームを抑制することで、自端末に対するビームが抽出される。また、抽出されたビームからSICにより干渉信号を除去することで、自端末に対する下り信号が抽出される。
例えば、図3では、無線基地局BSは、ビームB1により、ユーザ端末UE1及びUE2に対する下り信号を送信する。ユーザ端末UE2の受信SINRはユーザ端末UE1よりも低いので、ユーザ端末UE2に対する下り信号は、ユーザ端末UE1に対する下り信号よりも大きい送信電力で送信される。また、無線基地局BSは、ビームB2により、ユーザ端末UE3及びUE4に対する下り信号を送信する。ユーザ端末UE4の受信SINRはユーザ端末UE3よりも低いので、ユーザ端末UE4に対する下り信号は、ユーザ端末UE3に対する下り信号よりも大きい送信電力で送信される。
図3において、ユーザ端末UE1及びUE2は、IRCにより干渉ビーム(ここでは、ビームB2)を抑制して、自端末に対するビームB1を抽出する。また、ユーザ端末UE1は、SICによりユーザ端末UE2に対する下り信号を除去して、ユーザ端末UE1に対する下り信号を抽出して復号する。なお、ユーザ端末UE2では、ユーザ端末UE1に対する下り信号による干渉を無視できるため、SICは省略される。
同様に、ユーザ端末UE3及びUE4は、IRCにより干渉ビーム(ここでは、ビームB1)を抑制することで、自端末に対するビームB2を抽出する。また、ユーザ端末UE3は、SICによりユーザ端末UE4に対する下り信号を除去して、ユーザ端末UE3に対する下り信号を抽出して復号する。なお、ユーザ端末UE4では、ユーザ端末UE3に対する下り信号による干渉を無視できるため、SICは省略される。
このように、NOMA/MU−MIMOでは、無線基地局BSからの複数のビームに対してそれぞれ異なるユーザ端末UEが空間分割多重(SDM)されるとともに、同一ビーム内に受信SINRが異なるユーザ端末UEが非直交多重(NOM)される。このため、同一の無線リソースに対してより多くのユーザ端末UEを多重可能となり、周波数利用効率が向上する。
以上のように、下りリンクにおいてNOMA/MU−MIMOを適用する場合、周波数利用効率の更なる向上が見込まれる。一方で、NOMA/MU−MIMOを適用する無線通信システムにおいても、種々の条件に応じて、NOMA/MU−MIMO以外の送信法をサポートすることが望まれる。
図4及び図5を参照し、NOMA/MU−MIMOが適用される無線通信システムにおいて、サポートすべき種々の送信法を説明する。なお、図4及び図5では、無線基地局BSが2送信アンテナを備える場合を示すが、送信アンテナ数はこれに限られない。
図4Aでは、NOMA/MU−MIMOが示される。上述のように、NOMA/MU−MIMOでは、無線基地局BSから送信される複数のビームに対して、異なるユーザ端末UEに対する下り信号が空間多重される。また、同一のビーム内において、複数のユーザ端末UEに対する下り信号が非直交多重される。NOMA/MU−MIMOでは、周波数利用効率が向上する。
また、図4Bでは、NOMAとシングルユーザ多入力多出力(SU−MIMO)とを用いた送信法(以下、NOMA/SU−MIMOと略する)が示される。NOMA/SU−MIMOでは、図4Bに示すように、無線基地局BSから送信される複数のビームに対して、同一のユーザ端末UEに対する下り信号が空間多重される。また、同一のビーム内において、複数のユーザ端末UEに対する下り信号が非直交多重される。NOMA/SU−MIMOでは、複数のビーム(レイヤ)により同一のユーザ端末UEに対する下り信号が送信されるので、ピークレートが向上する。
また、図4Cでは、NOMAと送信ダイバーシチとを用いた送信法(以下、NOMA/送信ダイバーシチと略する)が示される。NOMA/送信ダイバーシチでは、図4Bに示すように、複数のビームを用いずに、複数のユーザ端末UEに対する下り信号が非直交多重されて送信される。具体的には、STBC(Space-Time Block Coding)やSTTC(Space-Time Trellis Coding)を用いて、複数のユーザ端末UEに対する下り信号が時空間符号化され、異なる送信電力で送信される。NOMA/送信ダイバーシチは、MIMOによるプリコーディングゲインが小さい環境下において有効である。
なお、送信ダイバーシチは、ユーザ端末UEからのフィードバック情報を用いる閉ループ(CL)送信ダイバーシチと、ユーザ端末UEからのフィードバック情報を用いない開ループ(OL)送信ダイバーシチとを含んでもよい。
また、非直交多重の対象となる複数のユーザ端末UEが存在しない場合を想定し、図5に示すように、NOMAを前提としない送信法をサポートすることも望まれる。
図5Aでは、NOMAを用いずにSU−MIMOを用いた送信法(以下、SU−MIMOと略する)が示される。SU−MIMOでは、図5Aに示すように、無線基地局BSから送信される複数のビームに対して、単一のユーザ端末UEに対する下り信号が空間多重される。SU−MIMOは、NOMAの対象となる他のユーザ端末UEが存在しない場合に、有効である。
図5Bでは、閉ループ(CL)送信ダイバーシチ又は開ループ(OL)送信ダイバーシチを用いた送信法が示される。CL送信ダイバーシチ又はOL送信ダイバーシチでは、図5Bに示すように、STBCやSTTCを用いて単一のユーザ端末UEに対する下り信号が時空間符号化されて送信される。CL送信ダイバーシチやOL送信ダイバーシチは、NOMAの対象となる他のユーザ端末UEが存在せず、MIMOによるプリコーディングゲインが小さい環境下において有効である。
以上のように、下りリンクにおいてNOMA/MU−MIMOが適用される無線通信システムでは、NOMAを前提する送信法(例えば、NOMA/MU−MIMO、NOMA/SU−MIMO、NOMA/CL送信ダイバーシチ、NOMA/OL送信ダイバーシチ)や、NOMAを前提としない送信法(例えば、SU−MIMO、CL送信ダイバーシチ、OL送信ダイバーシチ)など、多様な送信法をサポートすることが望まれる。
しかしながら、下りリンクにおいてNOMA/MU−MIMOが適用される無線通信システムにおいて、多様な送信法を動的にサポートしようとすると、制御負荷が増大する恐れがある。そこで、本発明者らは、複数の送信法をグループ化した送信モードを規定することで、制御負荷を増大せずに、多様な送信法をサポートするという着想を得て、本発明に至った。
以下、本発明に係る無線通信方法を詳細に説明する。なお、以下の本発明の第1態様及び第2態様に係る無線通信方法は、単独で用いられてもよいし、適宜組み合わせて用いられてもよい。また、以下において、干渉推定情報とは、受信SINR、パスロス、CQI(Channel Quality Indicator)、SNR、CSI(Channel State Information)など、ユーザ端末UEにおける干渉量やチャネル品質を示すどのような情報であってもよい。
(第1態様)
第1態様に係る無線通信方法では、無線基地局BSは、NOMA/MU−MIMOを含む複数の送信法がグループ化される第1送信モードと、NOMA/OL送信ダイバーシチを含む複数の送信法がグループ化される第2送信モードと、を含む複数の送信モードの一つをユーザ端末UEに対して設定(configure)する。無線基地局BSは、設定された送信モードに基づいて、下り信号を送信する。ユーザ端末UEは、設定された送信モードを示す送信モード情報に基づいて、下り信号の受信処理(例えば、復調、復号など)を行う。
ここで、第1送信モードでグループ化される複数の送信法には、上述のNOMA/MIMOに加えて、CL送信ダイバーシチ(NOMAを用いず、シングルユーザCL送信ダイバーシチと呼ばれてもよい)、SU−MIMO(NOMAを用いない)、NOMA/CL送信ダイバーシチ、NOMA/SU−MIMOの少なくとも一つが含まれてもよい。
また、第2送信モードでグループ化される複数の送信法には、上述のNOMA/OL送信ダイバーシチに加えて、OL送信ダイバーシチ(NOMA用いず、シングルユーザOL送信ダイバーシチと呼ばれてもよい)、SU−MIMO(NOMAを用いない)、NOMA/OL送信ダイバーシチ、NOMA/SU−MIMOの少なくとも一つが含まれてもよい。
なお、第1送信モード及び第2送信モードでそれぞれグループ化される送信法は、上記に限られない。また、第1送信モード及び第2送信モードの区別も上記に限られるものではない。例えば、ユーザ端末UEからのフィードバック情報を要する送信法であるか否かによって、第1送信モード及び第2送信モードの送信法がグループ化されてもよい。また、MIMOであるか、送信ダイバーシチであるかによって、第1送信モード及び第2送信モードの送信法がグループ化されてもよい。
第1態様に係る無線通信方法において、無線基地局BSは、ユーザ端末UEからの干渉推定情報に基づいて、複数の送信モードの一つをユーザ端末UEに対して設定してもよい。また、無線基地局BSは、ユーザ端末UEからの干渉推定情報に基づいて、ユーザ端末UEに設定される送信モードを切り替えてもよい。なお、送信モードの設定及び切り替えは、上位レイヤシグナリング(例えば、RRCシグナリング)を用いて行われてもよい。これにより、送信モードを準静的(Semi-static)に切り替え可能となる。
また、無線基地局BSは、ユーザ端末UEからの干渉推定情報に基づいて、設定された送信モードでグループ化される複数の送信法のうち、ユーザ端末UEに対する下り信号に適用される送信法を設定してもよい。また、無線基地局BSは、ユーザ端末UEからの干渉推定情報に基づいて、設定された送信モードにおいて、ユーザ端末UEに対する下り信号に適用される送信法を切り替えてもよい。なお、送信法の設定及び切り替えは、上位レイヤシグナリングよりも下位レイヤのシグナリング(例えば、MACシグナリング)や、L1/L2制御チャネル(例えば、下り制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel))を用いて行われてもよい。これにより、送信モード内の送信法を動的(Dynamic)に切り替え可能となる。
また、第1態様に係る無線通信方法において、上述の第1送信モード及び第2送信モードに基づいて送信される下り信号は、下り共有チャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)であってもよい。
ここで、PDSCHの送信モードとしては、単一アンテナポートをサポートする送信モード1、送信ダイバーシチをサポートする送信モード2、開ループ空間多重をサポートする送信モード3、閉ループ空間多重をサポートする送信モード4、MU−MIMOをサポートする送信モード5、単一レイヤの閉ループ空間多重をサポートする送信モード6、ユーザ端末UE固有の参照信号(例えば、DM−RS:Demodulation Reference Signal)を用いたレイヤ送信をサポートする送信モード7−9、CoMP(Coordinated Multipoint Transmission)をサポートする送信モード10などが規定されている。
そこで、PDSCHの送信モードとして、上述の第1送信モード及び第2送信モードを追加して、NOMA/MIMOによるPDSCHの送信を実現してもよい。かかる場合、例えば、上述の第1送信モード、第2送信モードが、それぞれ送信モード11、12として規定されてもよい。
また、第1態様に係る無線通信方法において、第1送信モード及び第2送信モードでグループ化される各送信法では、ユーザ端末UE間で共通又は/及びレイヤ(ビーム)間で直交の参照信号が無線基地局BSから送信されてもよい。図6を参照し、各送信法で送信される下り信号の復調に用いられる参照信号(以下、復調用参照信号という)を説明する。なお、図6では、横軸は無線リソース(時間、周波数)を示し、縦軸は送信電力を示す。また、図6では、復調用参照信号が、連続する2リソースエレメントに配置されるが、これに限られない。
図6Aに示すように、1送信アンテナ(1Tx)によるNOMAを用いた送信法では、各ユーザ端末UE(ここでは、ユーザ端末UE1−UE3)に対する下り信号は、同じ無線リソースにおいて異なる送信電力で送信される。この場合、復調用参照信号として、各ユーザ端末UEに共通のDM−RS(Demodulation Reference Signal)を用いることができる。
また、図6Bに示すように、複数の送信アンテナ(ここでは、アンテナTx1,Tx2)によるSU−MIMOでは、単一のユーザ端末UE(ここでは、ユーザ端末UE1)に対する複数(2)レイヤの下り信号が同じ無線リソースに多重される。この場合、復調用参照信号として、例えば、レイヤ間で直交するDM−RSを用いることができる。
また、図6Cに示すように、複数の送信アンテナ(ここでは、アンテナTx1,Tx2)によるNOMA/SU−MIMOでは、各ユーザ端末UE(ここでは、ユーザ端末UE1−UE3)に対する複数(2)レイヤの下り信号が同じ無線リソースに多重される。ここで、ユーザ端末UEに対する下り信号は、異なる送信電力で送信される。この場合、復調用参照信号として、例えば、同一レイヤ内のユーザ端末UE間で共通し、レイヤ間では直交するDM−RSを用いることができる。
また、図6Dに示すように、複数の送信アンテナ(ここでは、送信アンテナTX1,TX2)によるNOMA/MU−MIMOでは、各ユーザ端末UE(ここでは、ユーザ端末UE1−6)に対する下り信号が同じ無線リソースに多重される。同一レイヤ(ビーム)内では、各ユーザ端末UEに対する下り信号が異なる送信電力で送信される。この場合、復調用参照信号として、例えば、同一レイヤ(ビーム)内のユーザ端末UE間で共通し、レイヤ(ビーム)間で直交するDM−RSを用いることができる。
このように、ユーザ端末UE間で共通の復調用参照信号が用いられる場合、各ユーザ端末UEに対する下り信号の送信電力比が、無線基地局BSから通知されてもよい。これにより、共通の復調用参照信号が用いられる場合であっても、各ユーザ端末UEが、自端末に対する下り信号を適切に復調できる。なお、図6では、ユーザ端末UE間で共通の復調用参照信号を用いる場合を示したが、ユーザ端末UE固有の復調用参照信号が用いられてもよい。
以上の第1態様に係る無線通信方法によれば、非直交多重アクセス(NOMA)を利用可能な無線通信システムにおいて、NOMA/MU−MIMOに対応した送信モードが規定されるので、周波数利用効率を向上させることができる。NOMA/MU−MIMOを含む複数の送信法をグループ化した第1送信モードと、NOMA/開ループ送信ダイバーシチを含む複数の送信方法をグループ化した第2送信モードとが規定されるので、制御負荷を増大せずに、多様な送信法をサポートできる。
(第2態様)
第2態様に係る無線通信方法では、ユーザ端末UEにおける干渉の推定に用いられる参照信号(以下、推定用参照信号という)の送信方法を詳述する。
図7及び図8を参照し、閉ループ(CL)型ビームフォーミングと開ループ(OL)型ビームフォーミングについて説明する。図7は、CL型ビームフォーミングの説明図である。図8は、OL型ビームフォーミングの説明図である。なお、OL型ビームフォーミングは、ランダムビームフォーミング、Opportunisticビームフォーミングなどと呼ばれてもよい。
図7Aに示すように、CL型ビームフォーミングでは、タイミングT−Δにおいて、無線基地局BS1に接続するユーザ端末UEは、無線基地局BS2のビームフォーミング行列M2(T−Δ)に基づいて、無線基地局BS2から受ける干渉量を推定する。ユーザ端末UEは、推定された干渉量を示す干渉推定情報(例えば、SINR)と、当該干渉推定情報に対応するビームフォーミング行列M1(T)とを、無線基地局BS1にフィードバックする。
図7Bに示すように、タイミングTにおいて、無線基地局BS1は、ユーザ端末UEからフィードバックされたビームフォーミング行列M1(T)を、チャネル行列H1に乗算して送信する。ここで、タイミングTにおいて、ユーザ端末UEは、無線基地局BS2のビームフォーミング行列M2(T)を知らない。CL型ビームフォーミングでは、スケジューリング等の結果により、一般的に、タイミングT−Δ及びタイミングTにおいて、無線基地局BSで用いられるビームフォーミング行列M2(T−Δ)及びM2(T)は異なる。このため、タイミングT−Δ及びタイミングTにおける干渉量の推定結果には、誤差が生じる恐れがある。
一方、OL型ビームフォーミングでは、各無線基地局BSは、各時刻において、予め定められたビームフォーミング行列M又はランダムなビームフォーミング行列Mを、チャネル行列Hに乗算して送信する。すなわち、OL型ビームフォーミングでは、ユーザ端末UEからフィードバックされるビームフォーミング行列Mではなく、既知のビームフォーミング行列Mを用いる。
そこで、OL型ビームフォーミングでは、タイミングT−Δにおいて、タイミングT−Δよりも後のタイミングTにおけるビームフォーミング行列M(T)を用いることで、タイミングT−Δ及びタイミングTにおける干渉量の推定結果の誤差を軽減することが考えられる。
例えば、図8Aでは、タイミングT−Δにおいて、無線基地局BS1及びBS2は、それぞれ、タイミングTにおけるビームフォーミング行列M1(T)及びM2(T)を、チャネル行列H1及びH2に乗算して送信する。無線基地局BS1に接続するユーザ端末UEは、タイミングTにおけるビームフォーミング行列M2(T)に基づいて、無線基地局BS2から受ける干渉量を推定する。ユーザ端末UEは、推定された干渉量を示す干渉推定情報(例えば、SINR)を、無線基地局BS1にフィードバックする。
また、図8Bに示すように、無線基地局BS1は、ユーザ端末UEからフィードバックされた干渉推定情報に基づいて、スケジューリングを行う。このように、タイミングT−Δにおいて、タイミングT−Δより後のタイミングTのビームフォーミング行列M2(T)を用いることで、タイミングT−Δ及びタイミングTにおける干渉量の推定誤差を軽減できる。
以上のように、第2態様に係る無線通信方法では、各無線基地局BSは、推定用参照信号が送信されるタイミング(T−Δ)(第1タイミング)のビームフォーミング行列M1(T−Δ)及びM2(T−Δ)の代わりに、当該推定用参照信号による干渉推定情報に基づいて下り信号が送信されるタイミングT(第2タイミング)のビームフォーミング行列M1(T)及びM2(T)を用いて、当該推定用参照信号を送信する。これにより、ユーザ端末UEにおける干渉量の推定誤差を軽減できる。
ここで、ユーザ端末UEにおいて推定される干渉推定情報について詳述する。なお、以下では、干渉推定情報が、SINRであるものとするが、これに限られない。
無線基地局BS1に接続するユーザ端末UEの受信信号ベクトルyは、下記式(1)で表わされる。
ここで、H
1m
1,bは、1番目の無線基地局BS(ユーザ端末UEが接続する無線基地局BS1)からのb番目のビームによる受信信号(すなわち、希望信号)を示す。また、H
km
k,bは、k番目の無線基地局BSからのb番目のビームによる受信信号(すなわち、干渉信号)を示す。また、Wは、雑音を示す。また、m
k,bは、k番目の無線基地局BSからのb番目のビームのビームフォーミング行列である。
また、1番目の無線基地局BSからのb番目のビーム(1,b)を受信するときの受信フィルタベクトルをV
1,b(||V
1,b||=1)とすると、b番目のビーム(1,b)の受信SINRは、下記式(2)で表わされる。
ここで、R
1,bは、1番目の無線基地局BSからのb番目のビームによる受信信号電力(すなわち、希望信号電力)を示す。また、R
k,b’は、k番目の無線基地局BSからのb’番目のビームによる受信信号電力(すなわち、干渉信号電力)を示す。また、N
0は、雑音電力である。
ところで、タイミングT−Δより後のタイミングTにおけるビームフォーミング行列M(T)を用いてビームフォーミングされた推定用参照信号を送信する場合(図8参照)、当該推定用参照信号をどの無線リソースに配置(マッピング)するかが問題となる。
図9は、推定用参照信号の配置例の説明図である。例えば、図9では、無線基地局BS1−BS3(セル1−3)から送信される推定用参照信号は、それぞれ、衝突しないリソースエレメントにマッピングされる。また、各無線基地局BS(セル)内において、異なるビームで送信される推定用参照信号は、異なるリソースエレメントにマッピングされる。このように、図9では、各ビームの干渉推定情報の推定(チャネル推定)に用いられる推定用参照信号が、セル内で直交してセル間で衝突しないように、配置される。
また、図9では、自セルの推定用参照信号は、他セルのデータ信号と衝突するようにマッピングされる。自セルの推定用参照信号のマッピング位置において他セルのデータ信号を配置しない完全直交化を行う場合、オーバヘッドが大きいためである。なお、他セルのデータ信号は、自セルの推定用参照信号とは異なるビームフォーミングが施されているため、ユーザ端末UEは、自セルの推定用参照信号と他セルのデータ信号とを区別可能である。
また、図9において、k番目の無線基地局BSからのb’番目のビーム(k,b’)のi(i=1,…,L)番目のリソースエレメントにマッピングされる推定用参照信号をp
k,b’,iとすると、当該推定用参照信号p
k,b’,iの受信フィルタリング後の受信信号ベクトルy
k,b’(長さL)は、下記式(3)で表わされる。
ここで、{p
k,b’,i}は独立である。また、||p
k,b’,i||
2=P
k,b’である。また、p
k,b’=[p
k,b’,1,…,p
k,b’,L]
Tである。また、他セルのデータ信号による干渉のため、雑音電力N
0の代わりに、z
k,b’が考慮される。なお、z
k,b’は、下記式(4)で表わされる。
また、k番目の無線基地局BSからのb’番目のビームによる干渉信号電力R
k,b’は、下記式(5)で表わされる。
しかしながら、図9に示すように、セル内で直交してセル間で衝突しないように推定用参照信号を配置する場合、以下の問題点がある。第1に、無線基地局BSは、周辺セルにおいて推定用参照信号が配置される無線リソース(リソースエレメント)と、当該推定用参照信号系列を把握している必要がある。第2に、距離の離れた周辺セルからの干渉信号電力Rk,b’の推定値には、大きな誤差が含まれる。第3に、周辺セルのデータ信号からの干渉が推定用参照信号に含まれるため、雑音電力N0の測定が困難となる。
そこで、第2態様に係る無線通信方法では、図10に示すように、全セルの全ビームの推定用参照信号を同一の無線リソースに配置することで、上記問題点を解決する。図10は、第2態様に係る無線通信方法における推定用参照信号の配置例の説明図である。
例えば、図10では、全無線基地局BS1−BS3(セル1−3)の全ビームの推定用参照信号が、同一のリソースエレメントにマッピングされる。図10において、全無線基地局BSの全ビームの推定用参照信号は、同一のリソースエレメントに符号分割多重される。かかる符号分割多重には、CAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列やWALSH符号などが用いられてもよい。なお、図10に示す配置は、全無線基地局BS1−BS3が同期すること(セル間同期)が前提となる。
図10において、k番目の無線基地局BSからのb’番目のビーム(k,b’)のi(i=1,…,F)番目のリソースエレメントにマッピングされる推定用参照信号をq
k,b’,iとすると、当該推定用参照信号q
k,b’,iの受信フィルタリング後の受信信号ベクトルy
OL(長さF)は、下記式(6)で表わされる。
ここで、{q
k,b’,i}は独立である。また、E
i[q
k,b’,i]=0である。また、||q
k,b’,i||
2=P
k,b’である。また、q
k,b’=[q
k,b’,1,…,q
k,b’,F]
Tである。また、下記式(7)の関係が成り立つ。
図10において、q
k,b’,iがi間で平均0、k,b,i間で独立(略直交)となるように設計される場合、Fが十分大きければ、同一のリソースエレメントに多重された推定用参照信号の総受信電力と雑音電力N
0との和が、下記式(8)で表わされる。
第2態様に係る無線通信方法において、タイミングT−Δより後のタイミングTにおけるビームフォーミング行列Mを用いてビームフォーミングされ、図10に示すように同一の無線リソースに多重される推定用参照信号が用いられる場合、ユーザ端末UEは、当該推定用参照信号に基づいて干渉推定情報を推定する(チャネル推定を行う)。かかる場合、ユーザ端末UEは、当該推定用参照信号と、既存参照信号に基づいて、干渉推定情報(例えば、SINR)を推定してもよい。
(1)既存参照信号を用いてSINRを推定する場合
かかる場合、ユーザ端末UEは、既存参照信号に基づいて希望信号電力を推定し、上述の推定用参照信号に基づいて干渉信号電力を推定してもよい。既存参照信号としては、例えば、CSI−RS(Channel State Information-Reference Signal)などが用いられてもよい。1番目の無線基地局BSからのb番目のビームのSINR
1、bは、式(9)で表わされる。
式(9)の分子では、既存参照信号(例えば、CSI−RS)の希望信号電力が表わされる。また、式(9)の分母では、式(8)で示される同一のリソースエレメントに多重された推定用参照信号の総受信電力と雑音電力N
0との和から、既存参照信号の希望信号電力が減算される。これにより、図10に示すように同一リソースに多重される推定用参照信号と、既存参照信号とに基づいて、SINRを推定できる。
(2)既存参照信号を用いずにSINRを推定する場合
かかる場合、ユーザ端末UEは、上述の推定用参照信号に基づいて、希望信号電力と干渉信号電力との双方を推定してもよい。推定用参照信号に基づいて推定される希望信号電力は、式(10)で表わされる。
或いは、推定用参照信号に基づいて推定される希望信号電力は、式(11)で表わされてもよい。なお、式(11)は、ユーザ端末UEが、k番目の無線基地局BSからのb’番目のビームの推定用参照信号q
k,b’の少なくとも一つを既知である場合を想定したものである。かかる場合、デコリレータも可能である。
図11を参照し、第2態様に係る無線通信方法の動作を詳細に説明する。図11は、第2態様に係る無線通信方法を示すフローチャートである。以下では、無線基地局BS1と当該無線基地局BS1に接続するユーザ端末UEの動作を中心に説明する。なお、図11では、推定用参照信号が、OL型ビームフォーミングによりビームフォーミング(プリコーディング)されて送信される。
図11のステップS101において、無線基地局BS1は、タイミングT−Δ(第1タイミング)の次のタイミングT(第2タイミング)において下り信号(例えば、PDSCH)の伝送に用いられるビームフォーミング行列M1(T)(プリコーディング行列)を予め決定する。ここで、タイミングTにおけるビームフォーミング行列は、予め定められていてもよいし、ランダムであってもよい。
ステップS102において、無線基地局BS1は、タイミングT−Δにおいて、次のタイミングTにおけるビームフォーミング行列M1(T)を用いて、ビーム(ストリーム、レイヤ)数分の推定用参照信号をプリコーディングして送信する。同様に、周辺セルの各無線基地局BSも、同様に、次のタイミングTにおけるビームフォーミング行列M(T)を用いて、ビーム数分の推定用参照信号をプリコーディングして送信する。
また、ステップS102において、無線基地局BS1は、図10に示すように、自局からの全ビームの推定用参照信号を、周辺セルの全ビームの推定用参照信号と同一の無線リソースにマッピングする。これにより、図9に示すように、自局からの推定用参照信号をセル内で直交しセル間で重複しないようにマッピングする場合と比べて、干渉量の推定精度を向上させることができる。
ステップS103において、ユーザ端末UEは、無線基地局BS1からの各ビームについて干渉推定(チャネル推定)を行い、各ビーム(ストリーム、レイヤ)の干渉推定情報(例えば、SINR)を無線基地局BS1にフィードバックする。ここで、ユーザ端末UEは、式(9)に示されるように、既存参照信号(例えば、CSI−RS)と上述の推定用参照信号とに基づいてSINRを推定してもよい。或いは、ユーザ端末UEは、式(11)に示されるように、既存参照信号を用いずに、上述の推定用参照信号に基づいてSINRを推定してもよい。
ステップS104において、無線基地局BS1は、ユーザ端末UEからフィードバックされた各ビームの干渉推定情報に基づいて、各ビーム(ストリーム、レイヤ)に適切なユーザ端末UEをスケジューリングする。例えば、無線基地局BS1は、各ビームのSINRが最も高いユーザ端末UEを選択して、各ビームに割り当てる。
ステップS105において、無線基地局BS1は、ステップS104によるスケジューリング結果に基づいて、今回のタイミングTにおける下り信号(例えば、PDSCH)をプリコーディングして送信する。
なお、ステップS105において、下り信号は、第1態様に係る無線通信方法において、ユーザ端末UEに設定される送信モードに基づいて、送信されてもよい。また、かかる送信モードは、ステップS103でフィードバックされる干渉推定情報に基づいて準静的に変更されてもよい。また、送信モードでサポートされる複数の送信法も、ステップS103でフィードバックされる干渉推定情報に基づいて動的に変更されてもよい。
以上の第2態様に係る無線通信方法によれば、推定用参照信号による干渉推定情報に基づいて下り信号が送信されるタイミングTのビームフォーミング行列M1(T)及びM2(T)を用いてビームフォーミングされるとともに、周辺セルの全ビームの推定用参照信号と同一の無線リソースに多重されて、推定用参照信号が送信されるため、干渉推定情報の精度を向上できる。
以上の第2態様に係る無線通信方法は、無線基地局BSがユーザ端末UEに対する下り信号を送信する無線通信システムにおける無線通信方法であって、無線基地局BSにおいて、ユーザ端末UEにおける干渉推定情報の推定に用いられる推定用参照信号を、周辺の無線基地局BSと同一の無線リソースにマッピングする工程と、当該推定用参照信が送信される第1タイミングのビームフォーミング行列の代わりに、当該推定用参照信号による干渉推定情報に基づいて下り信号が送信される第2タイミングのビームフォーミング行列を用いて、当該推定用参照信号を送信する工程と、を有する。
(無線通信システムの構成)
以下、本実施の形態に係る無線通信システムの構成について説明する。この無線通信システムでは、上述の無線通信方法(第1態様、第2態様を含む)が適用される。図12−図15を参照し、本実施の形態に係る無線通信システムの概略構成を説明する。
図12に示すように、無線通信システム1は、無線基地局10(10A,10B)、及び複数のユーザ端末20(20A,20B)を含んでいる。無線基地局10は、上位局装置30と接続され、この上位局装置30は、コアネットワーク40と接続される。各ユーザ端末20は、セルC1,C2において無線基地局10と通信を行うことができる。この無線通信システム1において、ユーザ端末20は、移動端末でも良いし固定端末でもよい。なお、上位局装置30には、例えば、アクセスゲートウェイ装置、無線ネットワークコントローラ(RNC)、モビリティマネジメントエンティティ(MME)等が含まれるが、これらに限定されない。
無線通信システム1においては、無線アクセス方式として、下りリンクにOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が適用され、上りリンクにSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)が適用される。OFDMAは、周波数帯域を複数の狭い周波数帯域(サブキャリア)に分割し、各サブキャリアにデータをマッピングして通信を行うマルチキャリア伝送方式である。SC−FDMAは、システム帯域を端末毎に1つ又は連続したリソースブロックからなる帯域に分割し、複数の端末が互いに異なる帯域を用いることで、端末間の干渉を低減するシングルキャリア伝送方式である。この無線通信システム1の下りリンクには、必要に応じてNOMAが適用される。
ここで、図12に示す無線通信システム1で用いられる通信チャネルについて説明する。下りリンクの通信チャネルは、各ユーザ端末20で共有される下り共有チャネルとしてのPDSCH(Physical Downlink Shared CHannel)と、下りL1/L2制御チャネル(PDCCH、PCFICH、PHICH、EPDCCH)とを有する。PDSCHにより、ユーザデータ及び上位制御情報が伝送される。PDCCH(Physical Downlink Control CHannel)により、PDSCH及びPUSCHのスケジューリング情報などが伝送される。PCFICH(Physical Control Format Indicator CHannel)により、PDCCHに用いるOFDMシンボル数が伝送される。PHICH(Physical Hybrid-ARQ Indicator CHannel)により、PUSCHに対するHARQのACK/NACKが伝送される。
上りリンクの通信チャネルは、各ユーザ端末20で共有される上り共有チャネルとしてのPUSCH(Physical Uplink Shared CHannel)と、上りリンクの制御チャネルであるPUCCH(Physical Uplink Control CHannel)とを有する。このPUSCHにより、ユーザデータや上位制御情報が伝送される。また、PUCCH又はPUSCHにより、下りリンクの干渉推定情報(CQI、SINRなど)、送達確認情報(ACK/NACK/DTX)などが伝送される。
図13は、本実施の形態に係る無線基地局の概略構成図である。無線基地局10は、ビームフォーミングのための複数の送受信アンテナ101と、アンプ部102と、送受信部103と、ベースバンド信号処理部104と、呼処理部105と、伝送路インターフェース106とを備えている。
下りリンクにおいて無線基地局10からユーザ端末20に送信されるユーザデータは、上位局装置30から伝送路インターフェース106を介してベースバンド信号処理部104に入力される。
ベースバンド信号処理部104は、入力されたユーザデータに対して、PDCPレイヤの処理、ユーザデータの分割・結合、RLC(Radio Link Control)再送制御の送信処理などのRLCレイヤの送信処理、MAC(Medium Access Control)再送制御、例えば、HARQの送信処理、スケジューリング、伝送フォーマット選択、チャネル符号化、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理、プリコーディング処理などを行い、各送受信部103に転送する。また、下りリンクの制御情報に対してチャネル符号化やIFFT処理などの送信処理を行い、各送受信部103に転送する。
また、ベースバンド信号処理部104は、報知チャネルにより、ユーザ端末20に対して、在圏セルにおける通信のための制御情報を通知する。在圏セルにおける通信のための情報には、例えば、上りリンク又は下りリンクにおけるシステム帯域幅などが含まれる。
各送受信部103は、ベースバンド信号処理部104からアンテナ毎にプリコーディングして出力されたベースバンド信号を無線周波数帯に変換する。アンプ部102は、周波数変換された無線周波数信号を増幅して送受信アンテナ101より送信する。
一方、上りリンクによりユーザ端末20から無線基地局10に送信されるデータは、各送受信アンテナ101で受信されてアンプ部102に入力される。アンプ部102は、各送受信アンテナ101から入力される無線周波数信号を増幅して各送受信部103に送る。増幅された無線周波数信号は、各送受信部103でベースバンド信号に変換され、ベースバンド信号処理部104に入力される。
ベースバンド信号処理部104は、入力されたベースバンド信号に含まれるユーザデータに対して、高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)処理、逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)処理、誤り訂正復号、MAC再送制御の受信処理、RLCレイヤ、PDCPレイヤの受信処理などを行い、伝送路インターフェース106を介して上位局装置30に転送する。呼処理部105は、通信チャネルの設定や解放などの呼処理、無線基地局10の状態管理、無線リソースの管理などを行う。
図14は、本実施の形態に係るユーザ端末の概略構成図である。ユーザ端末20は、複数の送受信アンテナ201と、アンプ部202と、送受信部203と、ベースバンド信号処理部204と、アプリケーション部205とを備えている。
下りリンクのデータは、複数の送受信アンテナ201で受信されてアンプ部202に入力される。アンプ部202は、各送受信アンテナ201から入力される無線周波数信号を増幅して各送受信部203に送る。増幅された無線周波数信号は、各送受信部203でベースバンド信号に変換され、ベースバンド信号処理部204に入力される。ベースバンド信号処理部204では、入力されたベースバンド信号に対してFFT処理、誤り訂正復号、再送制御の受信処理などが行われる。下りリンクのデータに含まれるユーザデータは、アプリケーション部205に転送される。アプリケーション部205は、物理レイヤやMACレイヤより上位のレイヤに関する処理などを行う。また、下りリンクのデータに含まれる報知情報もアプリケーション部205に転送される。
一方、上りリンクのユーザデータは、アプリケーション部205からベースバンド信号処理部204に入力される。ベースバンド信号処理部204は、入力されたユーザデータに対して、再送制御の送信処理、チャネル符号化、プリコーディング、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)処理、IFFT処理などを行い、各送受信部203に転送する。各送受信部203は、ベースバンド信号処理部204から出力されたベースバンド信号を無線周波数帯に変換する。その後、アンプ部202は、周波数変換された無線周波数信号を増幅して送受信アンテナ201より送信する。
次に、図15を参照し、無線基地局10及びユーザ端末20の機能構成について詳述する。図15は、本実施の形態に係る無線基地局及びユーザ端末の機能構成図である。なお、図15に示す機能構成は、ベースバンド信号処理部104、204などにより構成される。また、図15では、構成の一部のみを示しているが、無線基地局10及びユーザ端末20は、必要な構成を不足なく備えているものとする。
図15に示すように、無線基地局10は、スケジューリング部111、送信モード設定部112、下り制御情報(DCI)生成部113、下りデータ生成部114、参照信号生成部115、プリコーディング部116を具備する。
スケジューリング部111は、ユーザ端末20からの干渉推定情報に基づいて、スケジューリングを行う。上述のように、干渉推定情報は、受信SINR、パスロス、CQI、SNR、CSIなど、ユーザ端末UEにおける干渉量やチャネル品質を示すどのような情報であってもよい。具体的には、スケジューリング部111は、干渉推定情報に基づいて、空間多重又は及び非直交多重されるユーザ端末20を決定して無線リソースを割り当てる。また、スケジューリング部111は、非直交多重されるユーザ端末20の送信電力を決定してもよい。
送信モード設定部112(設定部)は、複数の送信法がグループ化される第1送信モードと、複数の送信法がグループ化される第2送信モードと、を含む複数の送信モードの一つを、ユーザ端末20に対して設定(configure)する。また、送信モード設定部112は、上位レイヤシグナリング(例えば、RRCシグナリング)を用いて、前記ユーザ端末に対して設定された送信モードを切り替える。また、送信モード設定部112は、上位レイヤシグナリングよりも下位レイヤのシグナリング(例えば、MACシグナリング)又はDCIを用いて、送信モードでグループ化される複数の送信法のうち下り信号に適用される送信法を切り替える。
なお、上述の通り、第1送信モード及び第2送信モードにおける送信法のグループ化は、ユーザ端末UEからのフィードバック情報を要する送信法であるか否か(閉ループか、開ループか)によって行われてもよいし、MIMOであるか送信ダイバーシチであるかによって行われてもよい。また、第1送信モード及び第2送信モードの双方に重複する送信法が含まれてもよい。
DCI生成部113は、PDCCH又はEPDCCHで伝送される下り制御情報(DCI)を生成して送信処理(例えば、符号化、変調、無線リソースへのマッピングなど)を行う。DCIには、PDSCH/PUSCHの割り当て情報などが含まれる。また、DCIには、非直交で多重された信号の受信処理に必要な各種の情報が含まれる。また、DCIには、ユーザ端末20に設定(configure)される送信モード内での送信法の切り替え情報が含まれてもよい。
下りデータ生成部114は、PDSCHで伝送される下りユーザデータ及び上位レイヤ制御情報を生成し、送信モード設定部112によって設定される送信モードに基づいて送信処理(例えば、符号化、変調、無線リソースへのマッピングなど)を行う。上位レイヤ制御情報には、上位レイヤシグナリング(例えば、RRCシグナリング)や、上位レイヤシグナリングよりも下位レイヤのシグナリング(例えば、MACシグナリング)で伝送される制御情報が含まれる。また、上位レイヤ制御情報には、ユーザ端末UEに対する送信モードの設定情報や切り替え情報が含まれてもよい。また、MACシグナリングによる制御情報には、上述の送信法の切り替え情報が含まれも良い。
参照信号生成部115は、CRS(Cell-specific Reference Signal)、CSI−RS、DM−RS(図6)、推定用参照信号(図10)などの参照信号を生成して送信処理(例えば、符号化、変調、無線リソースへのマッピングなど)を行う。図6で説明したように、復調用参照信号として用いられるDM−RSは、ユーザ端末20間で共通であってもよい。また、図10で説明したように、推定用参照信号は、ユーザ端末20における干渉推定情報の推定に用いられる参照信号であり、周辺の無線基地局10及び全ビーム(ストリーム、レイヤ)間で同一の無線リソース(リソースエレメント)にマッピングされてもよい。
プリコーディング部116は、下りデータ生成部114から出力される下り信号と参照信号生成部115から出力される参照信号をプリコーディング(ビームフォーミング)して送信する。具体的には、プリコーディング部116は、下り信号に対応したビームフォーミング行列を用いてDM−RSをプリコーディングして送信する。
また、プリコーディング部116は、推定用参照信号が送信されるタイミングT−Δ(第1タイミング)におけるビームフォーミング行列M(T−Δ)の代わりに、該参照信号による干渉推定情報に基づいて下り信号が送信されるタイミング(第2タイミング)におけるビームフォーミング行列M(T)を用いて、推定用参照信号を送信する。
図15に示すように、ユーザ端末20は、干渉推定部211、DCI受信処理部212、下りデータ受信処理部213、送信モード設定部214を備えている。
干渉推定部211は、無線基地局10からの推定用参照信号に基づいて、干渉推定情報を推定する(チャネル推定を行う)。干渉推定部211は、式(9)に示されるように、当該推定用参照信号と、既存参照信号(例えば、CSI−RS)に基づいて、干渉推定情報(例えば、SINR)を推定してもよい。或いは、干渉推定部211は、式(10)に示されるように、既存参照信号(例えば、CSI−RS)を用いずに、推定用参照信号を用いて、干渉推定情報を推定してもよい。
DCI受信処理部212は、無線基地局10からのDCIをブラインド復号して、受信処理(例えば、デマッピング、復調、復号など)を行う。上述のように、DCIには、ユーザ端末20に設定される送信モード内での送信法の切り替え情報が含まれてもよい。
下りデータ受信処理部213は、無線基地局10からの下りデータ(上位レイヤ制御情報を含む)の受信処理(例えば、IRC、SIC、デマッピング、復調、復号など)を行う。IRCなどの線形フィルタリングにより、干渉ビームが除去されて、自端末に対するビームが抽出される。また、SICにより、同一ビームに多重された他のユーザ端末20に対する下り信号(干渉信号)が除去されて、自端末に対する下り信号が抽出される。
また、下りデータ受信処理部213は、ユーザ端末20間で共通のDM−RSとユーザ端末20間の送信電力比に基づいて、下りデータを復調してもよい。また、上述のように、上位レイヤ制御情報には、ユーザ端末20に設定される送信モードの設定情報又は切り替え情報が含まれてもよい。
送信モード設定部214は、上述の送信モードの設定情報又は切り替え情報に基づいて、ユーザ端末UEの送信モードを設定し、当該送信モードに基づいて下りデータの受信処理を行うよう、下りデータ受信処理部213を制御する。また、送信モード設定部214は、ユーザ端末20に設定される送信モード内での送信法の切り替え情報に基づいて、送信法に応じた下りデータの受信処理を行うよう、下りデータ受信処理部213を制御してもよい。
以上のように、本実施の形態に係る無線通信システム1によれば、非直交多重アクセス(NOMA)を利用可能な無線通信システムにおいて、NOMA/MU−MIMOに対応した送信モードが規定されるので、周波数利用効率を向上させることができる。NOMA/MU−MIMOを含む複数の送信法をグループ化した第1送信モードと、NOMA/開ループ送信ダイバーシチを含む複数の送信方法をグループ化した第2送信モードとが規定されるので、制御負荷を増大せずに、多様な送信法をサポートできる(第1態様)。
また、本実施の形態に係る無線通信システム1によれば、推定用参照信号による干渉推定情報に基づいて下り信号が送信されるタイミングTのビームフォーミング行列M1(T)及びM2(T)を用いてビームフォーミングされるとともに、周辺セルの全ビームの推定用参照信号と同一の無線リソースに多重されて、推定用参照信号が送信されるため、干渉推定情報の精度を向上できる(第2態様)。
本発明は、その趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施できる。つまり、本明細書の記載は、例示を目的とするものに過ぎず、本発明に対して制限を加えるものではない。