以下、本発明に係る力検出装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1(a)は、本発明に係る力検出装置の第1実施形態を概略的に示す斜視図である。図1(b)は、本発明に係る力検出装置の第1実施形態を概略的に示す平面図である。図1(c)は、図1(b)に示すA線断面図である。なお、図1(b)においては、説明のため一部構成要素が省略されている。図2は、図1に示す力検出装置を概略的に示す回路図である。図3は、図1に示す力検出装置の電荷出力素子を概略的に示す断面図である。
図1に示す力検出装置1aは、せん断力(図1中のx軸、y軸への外力)および圧縮/引張力(図1中のz軸への外力)を検出する機能を有する。力検出装置1aは、第1基部(ベースプレート)2と、外力に応じて出力される電荷を電圧に変換して、該電圧から外力を検出する力検出素子3a、3b(第1の素子3aおよび第2の素子3b)と、第1基部2との間に、少なくとも第1の素子3aおよび第2の素子3bを設ける第2基部(カバープレート)4とを備える。
図1に示すように、第1基部2と第2基部4とは、対向するよう設けられている。素子3a、3bは、第1基部2と第2基部4との間に、第1基部2に対して傾斜した状態で挟持され(設けられ)ており、外力に応じて電圧を出力する。力検出素子3a、3bのそれぞれから出力された電圧は、外力検出回路5(図1中では図示せず、図2参照)に入力され、外力が検出される。なお、図2では、外力検出回路5は、素子3a、3bとは別の構成要素として表現されているが、本発明はこれに限られない。本発明の力検出素子1aでは、素子3a、3bが外力検出回路5をその構成要素として有していてもよい。
<第1基部>
図1に示す第1基部2は、力検出装置1aに対して加えられた外力を力検出素子3a、3bに伝達する機能を有する。第1基部2は、平面視において略円形の形状を成す平板状の部材である。第1基部2は比較的高い剛性を有する材料で構成されており、力検出装置1aに対して加えられた外力によって変形しない。そのため、力検出装置1aに対して加えられた外力を力検出素子3a、3bに伝達することができる。また、第1基部2は、第1基部2の第2基部4と対向する側の表面上に、その外周に設けられた第1の傾斜部21を有している。
第1の傾斜部21は、その傾斜面上に力検出素子3a、3bを固定的に載置する機能を有する。第1の傾斜部21は、平面視において略円筒状の形状を有している。図1(c)に示すように、第1の傾斜部21は、その傾斜面が第1基部2の外側を向くように設けられており、第1の傾斜部21の傾斜面は、第1基部2に対して角度φで傾斜している。角度φは、特に限定されず、0<φ<π/2の範囲で任意に設定される。なお、第1の傾斜部21は、第1基部2と同様に、比較的高い剛性を有する材料で構成されており、力検出装置1aに対して加えられた外力によって変形しない。第1基部2の構成材料と、第1の傾斜部21の構成材料は同じであっても、異なっていてもよい。
第1の傾斜部21の傾斜面上には、力検出素子3a、3bが固定的に配置されている。すなわち、本実施形態の力検出素子3a、3bは、第1基部2に対して傾斜した状態で配置されている。この場合、後述するように、力検出装置1aに対して加えられた外力を、直交する複数の方向(図1(a)中のx、y、z方向)に分解して検出することができる。
図示の構成では、第1の傾斜部21は、平面視において略円筒状の部材であるが、本発明はこれに限られない。第1の傾斜部21は、力検出素子3a、3bを第1基部2に対して傾斜した状態で固定的に載置できるものであれば、どのような構成でもよい。例えば、複数の(本実施例では2つの)非連続な第1の傾斜部21が、第1基部2上に設けられており、各第1の傾斜部21の傾斜面上に、それぞれ力検出素子3a、3bが固定的に配置されていてもよい。また、第1基部2と第1の傾斜部21は、それぞれ別の部材として形成されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
<第2基部>
図1に示す第2基部4は、第1基部2に対向して設けられており、力検出装置1aに対して加えられた外力を力検出素子3a、3bに伝達する機能を有する。第1基部2と同様に、第2基部4は、平面視において略円形の形状を成す平板状の部材である。第2基部4は比較的高い剛性を有する材料で構成されており、力検出装置1aに対して加えられた外力によって変形しない。そのため、力検出装置1aに対して加えられた外力を力検出素子3a、3bに伝達することができる。また、第2基部4は、第2基部4の第1基部2と対向する側の表面上に、その外周に対応するよう(沿って)設けられた第2の傾斜部41を有している。
第2の傾斜部41は、第1基部2上に設けられた第1の傾斜部21と共に、力検出素子3a、3bを挟持(保持)する機能を有する。第2の傾斜部41は、第1基部2上に設けられた第1の傾斜部21に対応する位置に設けられており、平面視において略円筒状の形状を有している。第2の傾斜部41は、その傾斜面が第2基部4の中心側を向くように設けられており、第2の傾斜部41の傾斜面は、第2基部4に対して角度φで傾斜している。そのため、第2基部4を第1基部2に対向するよう配置したとき、第2基部4上に設けられた第2の傾斜部41の傾斜面と、第1基部2上に設けられた第1の傾斜部21の傾斜面とは互いに平行になる。そのため、第1の傾斜部21の傾斜面上に固定的に配置された力検出素子3a、3bを、第1の傾斜部21の傾斜面と第2の傾斜部42の傾斜面との間に挟持(保持)することができる。
なお、第2の傾斜部41は、第2基部4と同様に、比較的高い剛性を有する材料で構成されており、力検出装置1aに対して加えられた外力によって変形しない。第2基部4の構成材料と、第2の傾斜部41の構成材料は同じであっても、異なっていてもよい。
図示の構成では、第2の傾斜部41は、平面視において略円筒状の部材であるが、本発明はこれに限られない。第2の傾斜部41は、第1の傾斜部21の傾斜面上に固定的に配置された力検出素子3a、3bを、第1の傾斜部21と共に挟持(保持)できるものであれば、どのような構成でもよい。例えば、複数の(本実施例では2つの)非連続な第2の傾斜部41が、力検出素子3a、3bに対応する位置に設けられていてもよい。また、第2基部4と第2の傾斜部41は、それぞれ別の部材として形成されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
<力検出素子(素子)>
図1に示す力検出素子3a、3b(第1の素子3aおよび第2の素子3b)は、加えられたせん断力に応じて電圧Vを出力する機能を有する。
図2に示すように、力検出素子3a、3bは、加えられたせん断力に応じて電荷Qを出力する電荷出力素子31と、電荷出力素子31から出力された電荷Qを電圧Vに変換する変換回路32とを有する。
<電荷出力素子>
図3に示す電荷出力素子31は、図3中のβ軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qを出力する機能を有する。電荷出力素子31は、2つのグランド電極層310と、2つのグランド電極層310との間に設けられたβ軸用センサ320を有する。なお、図3において、グランド電極層310およびβ軸用センサ320の積層方向をγ軸方向とし、γ軸方向に直交し且つ互いに直交する方向をそれぞれα軸方向、β軸方向としている。
図示の構成では、グランド電極層310と、β軸用センサ320は、全て等しい幅(図中の左右方向の長さ)を有しているが、本発明はこれに限られない。例えば、グランド電極層310の幅が、β軸用センサ320の幅よりも広くてもよいし、その逆であってもよい。
グランド電極層310は、グランド(基準電位点)に接地された電極である。グランド電極層310を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、金、クロム、チタニウム、アルミニウム、銅、鉄、ニッケルまたはこれらを含む合金が好ましい。
β軸用センサ320は、β軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qを出力する機能を有する。このβ軸用センサ320は、β軸の正方向に沿った外力に応じて正電荷を出力し、β軸の負方向に沿って加えられた外力に応じて負電荷を出力するよう構成されている。すなわち、β軸用センサ320は、β軸方向に沿って加えられた外力に応じて出力される電荷の分極軸(検出方向)Pβ(すなわち、β軸の正方向を向いた分極軸Pβ)を有する。
β軸用センサ320は、第1の結晶軸CA1を有する第1の圧電体層321と、第1の圧電体層321と対向して設けられ、第2の結晶軸CA2を有する第2の圧電体層323と、第1の圧電体層321と第2の圧電体層323との間に設けられ、電荷Qを出力する出力電極層322を有する。また、β軸用センサ320を構成する各層の積層順は、図3中の下側から、第1の圧電体層321、出力電極層322、第2の圧電体層323の順である。
第1の圧電体層321はβ軸の負方向に配向した第1の結晶軸CA1を有する圧電体によって構成されている。第1の圧電体層321の表面に対し、β軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第1の圧電体層321内に電荷が誘起される。その結果、第1の圧電体層321の出力電極層322側表面近傍には正電荷が集まり、第1の圧電体層321のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第1の圧電体層321の表面に対し、β軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第1の圧電体層321の出力電極層322側表面近傍には負電荷が集まり、第1の圧電体層321のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。
第2の圧電体層323は、β軸の正方向に配向した第2の結晶軸CA2を有する圧電体によって構成されている。第2の圧電体層323の表面に対し、β軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第2の圧電体層323内に電荷が誘起される。その結果、第2の圧電体層323の出力電極層322側表面近傍には正電荷が集まり、第2の圧電体層323のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第2の圧電体層323の表面に対し、β軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第2の圧電体層323の出力電極層322側表面近傍には負電荷が集まり、第2の圧電体層323のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。
このように、第1の圧電体層321の第1の結晶軸CA1の方向は、第2の圧電体層323の第2の結晶軸CA2の方向と反対方向を向いている。これにより、第1の圧電体層321または第2の圧電体層323のいずれか一方のみと、出力電極層322によってβ軸用センサ320を構成する場合と比較して、出力電極層322近傍に集まる正電荷または負電荷を増加させることができる。その結果、出力電極層322から出力される電荷Qを増加させることができる。
なお、第1の圧電体層321および第2の圧電体層323の構成材料としては、水晶、トパーズ、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等が挙げられる。これらの中でも特に、水晶が好ましい。水晶により構成された圧電体層は、広いダイナミックレンジ、高い剛性、高い固有振動数、高い対荷重性等の優れた特性を有するためである。また、第1の圧電体層321および第2の圧電体層323のように、層の面方向に沿った外力(せん断力)に対して電荷を生ずる圧電体層は、Yカット水晶により構成することができる。
出力電極層322は、第1の圧電体層321内および第2の圧電体層323内に生じた正電荷または負電荷を電荷Qとして出力する機能を有する。前述のように、第1の圧電体層321の表面または第2の圧電体層323の表面にβ軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層322近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層322からは、正の電荷Qが出力される。一方、第1の圧電体層321の表面または第2の圧電体層323の表面にβ軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層322近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層322からは、負の電荷Qが出力される。
このように、電荷出力素子31は、上述したグランド電極層310と、β軸用センサ320を有することにより、図3中のβ軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qを出力することができる。
なお、電荷出力素子31として、β軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qを出力する機能を有する例を説明したが、本発明はこれに限られない。第1の結晶軸CA1の配向方向が異なる第1の圧電体層321および第2の結晶軸CA2の配向方向が異なる第2の圧電体層323を用いることにより、α軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qを出力する電荷出力素子31を構成することが可能である。このような場合も、本発明の範囲内である。
<変換回路>
変換回路32は、電荷出力素子31から出力された電荷Qを電圧Vに変換する機能を有する。変換回路32は、オペアンプ33と、コンデンサ34と、スイッチング素子35とを有する。オペアンプ33の第1の入力端子(マイナス入力)は、電荷出力素子31の出力電極層322に接続され、オペアンプ33の第2の入力端子(プラス入力)は、グランド(基準電位点)に接地されている。また、オペアンプ33の出力端子は、外力検出回路5に接続されている。コンデンサ34は、オペアンプ33の第1の入力端子と出力端子との間に接続されている。スイッチング素子35は、オペアンプ33の第1の入力端子と出力端子との間に接続され、コンデンサ34と並列接続されている。また、スイッチング素子35は、駆動回路(図示せず)に接続されており、駆動回路からのオン/オフ信号に従い、スイッチング動作を実行する。
スイッチング素子35がオフの場合、電荷出力素子31から出力された電荷Qは、静電容量C1を有するコンデンサ34に蓄えられ、電圧Vとして外力検出回路5に出力される。次に、スイッチング素子35がオンになった場合、コンデンサ34の両端子間が短絡される。その結果、コンデンサ34に蓄えられた電荷Qは、放電されて0クーロンとなり、外力検出回路5に出力される電圧Vは、0ボルトとなる。スイッチング素子35がオンとなることを、変換回路32をリセットするという。
スイッチング素子35は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体スイッチング素子である。半導体スイッチング素子は、機械式スイッチと比べて小型および軽量であるので、力検出装置1aの小型化および軽量化に有利である。以下、代表例として、スイッチング素子35としてMOSFETを用いた場合を説明する。
スイッチング素子35は、ドレイン電極、ソース電極、およびゲート電極を有している。スイッチング素子35のドレイン電極またはソース電極の一方がオペアンプ33の第1の入力端子に接続され、ドレイン電極またはソース電極の他方がオペアンプ33の出力端子に接続されている。また、スイッチング素子35のゲート電極は、駆動回路(図示せず)に接続されている。
理想的な変換回路32から出力される電圧Vは、電荷出力素子31から出力される電荷Qの蓄積量に比例する。しかしながら、実際の変換回路32においては、スイッチング素子35からコンデンサ34に流入するリーク電流が発生する。このようなリーク電流は電圧Vに含まれる出力ドリフトDとなる。したがって、電荷Qの蓄積量に比例する電圧成分(真の値)をVtとすると、出力される電圧Vは、V=Vt+Dとなる。
出力ドリフトDは、測定結果に対する誤差となるので、リーク電流(出力ドリフトD)によって、力検出素子3a、3bの検出精度および検出分解能が低下してしまうという問題があった。また、リーク電流は、測定(駆動)時間に比例して累積されるので、力検出装置1aの測定時間を長くすることができないという問題があった。
このようなリーク電流は、ゲート絶縁膜の絶縁性の不足、プロセスルールの微細化、半導体中の不純物濃度のバラツキ等の半導体構造および温度、湿度等の使用環境に起因する。半導体構造起因のリーク電流は、スイッチング素子毎に固有の値となるので、予め半導体構造起因のリーク電流を測定しておくことにより、比較的容易に補償できる。しかしながら、使用環境起因のリーク電流は、使用環境(状況)に応じて変動するので、補償が困難である。本発明に係る力検出装置1aは、素子対をなす力検出素子(素子)3a、3bと、力検出素子3a、3bのそれぞれから出力された電圧V1、V2に基づき、外力を検出する外力検出回路5を用いて、リーク電流による影響(出力ドリフトD)を低減させることができる。
次に、図1を参照して、素子対をなす力検出素子3a、3bの位置関係を詳述する。なお、図1(b)においては、説明のため第2基部4が省略されている。また、図1(b)において、左右方向をx軸方向、x軸方向と直交する方向、すなわち上下方向をy軸方向とし、x軸およびy軸と直交する方向をz軸方向としている。さらに、図1(b)において力検出素子3a、3bの中心を通る直線をA線としている。図1(c)は、図1(b)のA線に沿った断面図である。
力検出素子3aは、上述したβ軸に沿った分極軸Pβ1を有し、β軸に沿った外力(せん断力)に応じて電圧V1を出力する。同様に、力検出素子3bは、上述したβ軸に沿った分極軸Pβ2を有し、β軸に沿った外力(せん断力)に応じて電圧V2を出力する。
力検出素子3a、3bは、それぞれ第1の傾斜部21の傾斜面上に固定的に配置され、第1の傾斜部21と第2の傾斜部41との間に挟持(保持)されている。すなわち、力検出素子3a、3bは、第1基部2に対して角度φで傾斜した状態で、第1基部2と第2基部4との間に設けられている。
力検出素子3aの分極軸Pβ1は、水平方向(xy平面)の角度θ1を有している。同様に、力検出素子3bの分極軸Pβ2は、水平方向の角度θ2を有している。なお、角度θ1、θ2は、図1(b)の基準座標系(x軸、y軸、z軸)のx軸からの角度である。さらに、図1(c)に示すように、力検出素子3a、3bの分極軸Pβ1、Pβ2は、それぞれ垂直方向(z軸方向を含む平面)の角度φを有している。なお、角度φは、図1(b)の基準座標系のxy平面に対する角度である。
図1(b)に示すように、力検出素子3a、3bは、力検出素子3aの分極軸Pβ1の水平成分(x、y成分)と、力検出素子3bの分極軸Pβ2の水平成分とが互いに反対方向を向くように配置されている。ここでいう「互いに反対方向を向く」とは、図1(b)のように、分極軸Pβ1の水平成分と分極軸Pβ2の水平成分が対向する場合、すなわち、角度θ1、θ2がθ1=θ2の関係を満たす場合に限られない。少なくとも、分極軸Pβ1の水平成分および分極軸Pβ2の水平成分のそれぞれを、直交するx軸方向のベクトル成分およびy軸方向のベクトル成分に分解したとき、分極軸Pβ1のx軸方向のベクトル成分と分極軸Pβ2のx軸方向のベクトル成分が逆方向である、または、分極軸Pβ1のy軸方向のベクトル成分と分極軸Pβ2のy軸方向のベクトル成分が逆方向であればよい。
また、力検出素子3a、3bは、分極軸Pβ1のx軸方向のベクトル成分と分極軸Pβ2のx軸方向のベクトル成分が逆方向、および、分極軸Pβ1のy軸方向のベクトル成分と分極軸Pβ2のy軸方向のベクトル成分が逆方向となるよう、すなわち、|θ1−θ2|<π/2の関係を満たすよう配置されることが好ましい。これにより、後述するせん断力Fx、Fyを検出することができる。以下の説明では、代表して、力検出素子3a、3bが、|θ1−θ2|<π/2の関係を満たすよう配置されている場合を説明する。
また、力検出素子3a、3bは、分極軸Pβ1の水平成分と分極軸Pβ2の水平成分が対向するよう、すなわち、θ1=θ2の関係を満たすよう配置されることがさらに好ましい。これにより、後述する外力検出回路5は、出力ドリフトDをさらに低減しつつ、せん断力Fx、Fyを検出することができる。
また、力検出素子3aの分極軸Pβ1の水平成分と、力検出素子3bの分極軸Pβ2の水平成分とが互いに反対方向を向くよう配置されていれば、力検出素子3a、3bの配置は特に限定されないが、図1(b)に示すように、力検出素子3aと、力検出素子3bが同一軸(A線)上に配置されていることが好ましい。これにより、第1基部2または第2基部4に加えられたせん断力(図中のx軸、y軸に沿った外力)を偏りなく検出することができる。
また、図1(b)の力検出素子3aの分極軸Pβ1の水平成分および力検出素子3bの分極軸Pβ2の水平成分は、第1基部2の外側(遠心方向)を向いているが、本発明はこれに限られない。すなわち、力検出素子3aの分極軸Pβ1の水平成分と、力検出素子3bの分極軸Pβ2の水平成分とが互いに反対方向を向くよう配置されていれば、力検出素子3aの分極軸Pβ1の水平成分および力検出素子3bの分極軸Pβ2の水平成分は、第1基部2の中心方向(向心方向)を向いていてもよい。
力検出素子3aの電荷出力素子31から出力される電荷Q1の蓄積量に比例する電圧成分(真の値)をVt1とし、力検出素子3bの電荷出力素子31から出力される電荷Q2の蓄積量に比例する電圧成分(真の値)をVt2とすると、力検出素子3aから出力される電圧V1および力検出素子3bから出力される電圧V2は、以下のようになる。
なお、力検出素子3aのスイッチング素子35と、力検出素子3bのスイッチング素子35は、同等の半導体スイッチング素子であり、そのリーク電流は実質的に等しい。したがって、電圧V1に含まれる出力ドリフトDと、電圧V2に含まれる出力ドリフトDは、実質的に等しい。こでいう「実質的に等しい」とは、比較する2つの値の差分を取ったときに、その差分が、元の値と比較して無視できるほど小さいことをいう。
また、力検出素子3a、3bは、力検出素子3aの分極軸Pβ1の水平成分と、力検出素子3bの分極軸Pβ2の水平成分とが互いに反対方向を向くように配置されているので、電圧V1に含まれる電圧成分Vt1の水平成分(すなわち、Vt1×cos(φ))と、電圧V2に含まれる電圧成分Vt2の水平成分の符号(すなわち、Vt2×cos(φ))は一致しない。例えば、電圧成分Vt1の水平成分の符号がプラスであれば、電圧成分Vt2の水平成分の符号はマイナスとなる。同様に、電圧成分Vt1の水平成分の符号がマイナスであれば、電圧成分Vt2の水平成分の符号はプラスとなる。したがって、力検出素子3aから出力される電圧V1の水平成分(すなわち、V1×cos(φ))と、力検出素子3bから出力される電圧V2の水平成分(すなわち、V2×cos(φ))の差分を取った場合、電圧成分Vt1の水平成分と電圧成分Vt2の水平成分との差分の絶対値は、減少しない。
一方、電圧V1の水平成分に含まれる出力ドリフトDと、電圧V2の水平成分に含まれる出力ドリフトDは、分極軸Pβ1、Pβ2の方向に依存しないので、電圧V1の水平成分に含まれる出力ドリフトDの符号と、電圧V2の水平成分に含まれる出力ドリフトDの符号は、一致する。したがって、力検出素子3aから出力される電圧V1の水平成分と、力検出素子3bから出力される電圧V2の水平成分との差分を取った場合、電圧V1の水平成分に含まれる出力ドリフトDと、電圧V2の水平成分に含まれる出力ドリフトDとの差分の絶対値は、減少する。
<外力検出回路>
外力検出回路5は、力検出素子3aから出力される電圧V1と、力検出素子3bから出力される電圧V2とに基づき、力検出装置1aに加えられたせん断力(図中のx軸、y軸に沿った外力)および圧縮/引張力Fzを検出する機能を有する。
外力検出回路5は、以下のように電圧V1、V2の差分を取ることにより、力検出装置1aに加えられたせん断力Fx、Fyを検出することができる。また、力検出素子3a、3bは、第1基部2に対して傾斜して設けられているので、外力検出回路5は、電圧V1、V2に基づき、力検出装置1aに加えられた圧縮/引張力Fzを検出することができる。
このように、力検出素子3aから出力される電圧V1の水平成分と、力検出素子3bから出力される電圧V2の水平成分の差分を取った場合、電圧成分Vt1の水平成分と電圧成分Vt2の水平成分の差分の絶対値は減少せず、出力ドリフトDの絶対値は減少する。そのため、せん断力Fx、Fyにおける出力ドリフトDを低減することができる。その結果、せん断力Fx、Fyにおいて、リーク電流(出力ドリフトD)に起因する検出誤差が相対的に小さくなり、力検出装置1aのせん断力Fx、Fyに対する検出精度および検出分解能を向上させることができる。また、上述した出力ドリフトDの低減方法は、測定時間が長くなった場合であっても有効なので、力検出装置1aの測定時間を長くすることができる。
さらに、角度θ1、θ2がθ1=θ2を満たす場合、すなわち、力検出素子3a、3bが、分極軸Pβ1の水平成分と分極軸Pβ2の水平成分が対向するように配置されている場合は、上記算出式は単純化され、以下のようになる。
この場合、せん断力Fx、Fyにおける出力ドリフトDを除去(さらに低減)することができる。その結果、力検出装置1aのせん断力Fx、Fyに対する検出精度および検出分解能をさらに向上させることができる。また、力検出装置1aの測定時間をさらに長くすることができる。
このように、本発明に係る力検出装置1aは、力検出素子3aの分極軸Pβ1の水平成分と、力検出素子3bの分極軸Pβ2の水平成分とが互いに反対方向を向くように配置された力検出素子3a、3bと、力検出素子3aから出力される電圧V1の水平成分と、力検出素子3bから出力される電圧V2の水平成分との差分を取ることにより、力検出装置1aに加えられたせん断力Fx、Fyを検出する外力検出回路5を有しているので、変換回路32のスイッチング素子35のリーク電流に起因する出力ドリフトDを低減することができる。その結果、力検出装置1aのせん断力Fx、Fyに対する検出精度および検出分解能を向上させることができる。また、上述した出力ドリフトDの低減方法は、測定時間が長くなった場合であっても有効なので、力検出装置1aの測定時間を長くすることができる。さらに、本発明に係る力検出装置1aでは、逆バイアス回路のような出力ドリフトDを低減するための回路が不要なので、力検出装置1aを小型化できる。
さらに、力検出素子3a、3bは、第1基部2に対して傾斜して設けられているので、力検出素子3aから出力される電圧V1の垂直成分(すなわち、V1×sin(φ))と、力検出素子3bから出力される電圧V2の垂直成分(すなわち、V2×sin(φ))とに基づき、力検出装置1aに加えられた圧縮/引張力Fzを検出することができる。
なお、本実施形態の力検出装置1aは、1対の力検出素子3a、3bを有しているが、本発明はこれに限られない。力検出装置1aは、複数対の力検出素子3a、3bを有していてもよく、そのような場合もまた本発明の範囲内である。
<第2実施形態>
次に図4に基づき、本発明の第2実施形態を説明する。以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。図4(a)は、本発明に係る力検出装置の第2実施形態を概略的に示す斜視図である。図4(b)は、本発明に係る力検出装置の第2実施形態を概略的に示す断面図である。
第2実施形態の力検出装置1aは、第1の傾斜部21の第1基部2に対する角度φおよび第2の傾斜部41の第2基部に対する角度φがπ/2であること、および、力検出素子3aの分極軸Pβ1と、力検出素子3bの分極軸Pβ2とが垂直方向(第1基部2および第2基部4の積層方向)において反対を向くよう、力検出素子3a、3bが配置されていることを除き、前述の第1実施形態の力検出装置1aと同様の構成を有している。
本実施形態では、第1の傾斜部21の第1基部2に対する角度φおよび第2の傾斜部41の第2基部4に対する角度φがπ/2である。すなわち、力検出素子3a、3bは、第1基部2に対して垂直な状態で設けられている。この場合、第1の傾斜部21および第2の傾斜部41は、円筒状部材となる。力検出素子3a、3bは、第1の傾斜部21の外周部と第2の傾斜部41の内周部との間に挟持(保持)されている。
図4(b)に示すように、力検出素子3a、3bは、力検出素子3aの分極軸Pβ1と、力検出素子3bの分極軸Pβ2の垂直成分とが、垂直方向において反対方向を向くように配置されている。
力検出素子3a、3bは、力検出素子3aの分極軸Pβ1と、力検出素子3bの分極軸Pβ2とが垂直方向において反対方向を向くように配置されているので、電圧V1に含まれる電圧成分Vt1と、電圧V2に含まれる電圧成分Vt2の符号は一致しない。例えば、電圧成分Vt1の符号がプラスであれば、電圧成分Vt2の符号はマイナスとなる。同様に、電圧成分Vt1の符号がマイナスであれば、電圧成分Vt2の符号はプラスとなる。したがって、力検出素子3aから出力される電圧V1と、力検出素子3bから出力される電圧V2の差分を取った場合、電圧成分Vt1と電圧成分Vt2の差分の絶対値は、減少しない。
外力検出回路5は、以下のように力検出素子3aから出力される電圧V1、力検出素子3bから出力されるV2の差分を取ることにより、力検出装置1aに加えられた圧縮/引張力Fzを検出することができる。
このように、本実施形態の力検出装置1aは、力検出素子3aの分極軸Pβ1と、力検出素子3bの分極軸Pβ2とが垂直方向において反対方向を向くように配置された力検出素子3a、3bと、力検出素子3aから出力される電圧V1と、力検出素子3bから出力される電圧V2との差分を取ることにより、力検出装置1aに加えられた圧縮/引張力Fzを検出する外力検出回路5を有しているので、変換回路32のスイッチング素子35のリーク電流に起因する出力ドリフトDを低減することができる。その結果、力検出装置1aの圧縮/引張力Fzに対する検出精度および検出分解能を向上させることができる。
なお、図示の構成では、力検出素子3aの分極軸Pβ1が図4中下側を向いており、力検出素子3bの分極軸Pβ2が図4中上側を向いているが、本発明はこれに限られない。例えば、力検出素子3aの分極軸Pβ1が図4中上側を向いており、力検出素子3bの分極軸Pβ2が図4中下側を向いていてもよい。
<第3実施形態>
次に図5、図6および図7に基づき本発明の第3実施形態を説明する。以下、第3実施形態について、前述した第1および第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図5(a)は、本発明に係る力検出装置の第2実施形態を概略的に示す斜視図である。図5(b)は、本発明に係る力検出装置の第2実施形態を概略的に示す平面図である。図5(c)は、図5(b)に示すA1線に沿った断面図である。図5(d)は、図5(b)に示すA2線に沿った断面図である。図6は、図5に示す力検出装置を概略的に示す回路図である。図7(a)は、図5に示す第1の力検出装置の電荷出力素子を概略的に示す断面図である。図7(b)は、図5に示す第2の力検出装置の電荷出力素子を概略的に示す断面図である。
図5に示す力検出装置1bは、6軸力(x、y、z軸方向の並進力成分およびx、y、z軸周りの回転力成分)を検出する機能を有する。力検出装置1bは、第1基部2と、第1基部2に対向する第2基部4と、第1基部2と第2基部4との間に、第1基部2に対して傾斜または垂直な状態で設けられ、外力に応じて電圧Vα、Vβ、Vγを出力する力検出素子(素子)30a、30b、30c、30dと、力検出素子30a、30b、30c、30dのそれぞれから出力された電圧Vα、Vβ、Vγに基づき、6軸力を検出する外力検出回路50(図5中では図示せず、図6参照)とを有している。
なお、第1基部2の第2基部4と対向する側の表面上に設けられた第1の傾斜部21および第2基部4の第1基部2と対向する側の表面上に設けられた第2の傾斜部42は、次の点を除き、前述した第1実施形態と同様の構成を有する。すなわち、第1実施形態では、第1の傾斜部21の傾斜面が第1基部2に対して有する角度φ(第2の傾斜部41の傾斜面が第2基部4に対して有する角度φ)が0<φ<π/2の範囲で任意に設定されるのに対し、本実施形態では、角度φは0≦φ≦π/2の範囲で任意に設定される。
換言すれば、本実施形態には、前述した第1実施形態のように、後述する力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して傾斜した状態で配置された場合(0<φ<π/2の場合)に加え、力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して平行な状態で配置された場合(φ=0の場合)、および前述した第2実施形態のように、力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して垂直な状態で配置された場合(φ=π/2の場合)も含まれる。
力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して平行な状態で配置された場合(φ=0の場合)では、力検出装置1bの高さを低く抑えることができるので、力検出装置1bの小型化に有利である。また、力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して傾斜した状態で配置された場合(0<φ<π/2)も、力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して垂直な状態で配置された場合(φ=π/2)と比較して、力検出装置1bの高さを低く抑えることができる。
一方、力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して傾斜または垂直な状態で配置された場合(0<φ<π/2、および、φ=π/2の場合)では、後述のように、力検出素子30a、30b、30c、30dのそれぞれから出力された電圧Vα、Vβに加え、電圧Vγを用いて、せん断力(Fx、Fy)を算出することができ、さらに、電圧Vγに加え、電圧Vβを用いて圧縮/引張力(Fx)を算出することができるので、より正確に6軸力を検出することができる。
さらに、力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して傾斜または垂直な状態で配置された場合(0<φ<π/2、および、φ=π/2の場合)では、第1実施形態と同様、各出力素子から出力される電圧Vβから、圧縮/引張力(Fx)を算出することができる。そのため、各力検出素子から出力された電圧Vα、Vβのみを用いて、6軸力を検出することができる。このように、各力検出素子から出力された電圧Vα、Vβのみを用いることにより、第1基部2および第2基部4の温度変化等に起因する変形による力検出素子30a、30b、30c、30dに対する与圧変化の影響を低減しつつ、6軸力を検出することができる。
すなわち、第1基部2および第2基部4が温度変化等により変形した場合、力検出素子30a、30b、30c、30dに対する与圧が変化する。この与圧変化がノイズ成分として、電圧Vα、Vβ、Vγ(電荷Qα、Qβ、Qγ)に含まれてしまう。後述するように、力検出素子30a、30b、30c、30dのそれぞれから出力される電圧Vγ(電荷Qγ)は、電圧Vα、Vβ(電荷Qβ、Qγ)と比較して小さいので、電圧Vγに対する温度変化に起因するノイズ成分の影響は大きくなる。
そのため、各力検出素子のそれぞれから出力された電圧Vα、Vβのみを用いることにより、第1基部2および第2基部4の温度変化等に起因する変形による力検出素子30a、30b、30c、30dに対する与圧変化の影響を低減しつつ、6軸力を検出することができる。
また、第1基部2と第2基部4との間は、与圧ネジ等の接続器具により接続され、力検出素子30a、30b、30c、30dに与圧を加えることとなる。この際、力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して垂直な状態で配置された場合(φ=π/2の場合)では、各力検出素子が第1基部2に対して完全に垂直になるため、一般的の接続器具の剛性が低い方向(例えば、与圧ネジのネジ方向に対して垂直な方向)に対して、外力が加わることが多くなる。そのため、接続器具の剛性の観点からは、力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して平行または傾斜した状態で配置された場合(φ=0、および0<φ<π/2の場合)のほうが有利である。
<力検出素子(素子)>
力検出素子30a、30b、30c、30dは、互いに直交する3軸(α軸、β軸、γ軸)に沿った外力のそれぞれに応じて電圧Vα、Vβ、Vγを出力する機能を有する。また、力検出素子30a、30cは、第1の素子対を構成し、力検出素子30b、30dは、第2の素子対を構成する。第1の素子対に属する力検出素子30a、30cは、互いに同様の構成を有する。第2の素子対に属する力検出素子30b、30dは、互いに同様の構成を有する。
図6に示すように、第1の素子対に属する力検出素子30a、30cは、互いに直交する3軸(α軸、β軸、γ軸)に沿って加えられた外力に応じて、電荷Qα、Qβ、Qγを出力する第1の電荷出力素子301aと、第1の電荷出力素子301aから出力された電荷Qαを電圧Vαに変換する変換回路32aと、第1の電荷出力素子301aから出力された電荷Qγを電圧Vγに変換する変換回路32bと、第1の電荷出力素子301aから出力された電荷Qβを電圧Vβに変換する変換回路32cとを有する。第2の素子対に属する力検出素子30b、30dは、第1の電荷出力素子301aと構造の異なる第2の電荷出力素子301bを有する点を除き、第1の素子対に属する力検出素子30a、30cと同様の構成を有する。
<電荷出力素子>
図7(a)に示す第1の電荷出力素子301aは、図7中の互いに直交する3軸(α軸、β軸、γ軸)に沿った外力のそれぞれに応じて電荷Qα、Qβ、Qγを出力する機能を有する。図7(a)に示すように、第1の電荷出力素子301aは、グランド(基準電位点)に接地された4つのグランド電極層310と、β軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qβを出力する第1のβ軸用センサ320と、γ軸に平行な外力(圧縮/引張力)に応じて電荷Qγを出力する第1のγ軸用センサ330と、α軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qαを出力する第1のα軸用センサ340とを有し、グランド電極層310と各センサ320、330、340は交互に積層されている。なお、図7において、グランド電極層310および各センサ320、330、340の積層方向をγ軸方向とし、γ軸方向に直交し且つ互いに直交する方向をそれぞれα軸方向、β軸方向としている。
図示の構成では、図7中の下側から、第1のβ軸用センサ320、第1のγ軸用センサ330、第1のα軸用センサ340の順で積層されているが、本発明はこれに限られない。各センサ320、330、340の積層順は任意である。
第1のβ軸用センサ320は、β軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qβを出力する機能を有する。第1のβ軸用センサ320は、上述した第1実施形態のβ軸用センサ320と同様の構造および機能を有している。
第1のγ軸用センサ330は、γ軸に平行な外力(圧縮/引張力)に応じて電荷Qγを出力する機能を有する。第1のγ軸用センサ330は、γ軸の正方向に沿った外力に応じて正電荷を出力し、γ軸の負方向に沿って加えられた外力に応じて負電荷を出力するよう構成されている。すなわち、第1のγ軸用センサ330は、図7中のγ軸方向に沿って加えられた外力に応じて出力される電荷の分極軸(検出方向)Pγ(すなわち、図7中のγ軸の正方向を向いた分極軸Pγ)を有する。
第1のγ軸用センサ330は、第3の結晶軸CA3を有する第3の圧電体層331と、第3の圧電体層331と対向して設けられ、第4の結晶軸CA4を有する第4の圧電体層333と、第3の圧電体層331と第4の圧電体層333との間に設けられ、電荷Qγを出力する出力電極層332を有する。また、第1のγ軸用センサ330を構成する各層の積層順は、図7中の下側から、第3の圧電体層331、出力電極層332、第4の圧電体層333の順である。
第3の圧電体層331は、γ軸の正方向に配向した第3の結晶軸CA3を有する圧電体によって構成されている。第3の圧電体層331の表面に対し、γ軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第3の圧電体層331内に電荷が誘起される。その結果、第3の圧電体層331の出力電極層332側表面近傍には正電荷が集まり、第3の圧電体層331のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第3の圧電体層331の表面に対し、γ軸の負方向に沿って加えられた外力が加えられた場合、第3の圧電体層331の出力電極層332側表面近傍には負電荷が集まり、第3の圧電体層331のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。
第4の圧電体層333は、γ軸の負方向に配向した第4の結晶軸CA4を有する圧電体によって構成されている。第4の圧電体層333の表面に対し、γ軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第4の圧電体層333内に電荷が誘起される。その結果、第4の圧電体層333の出力電極層332側表面近傍には正電荷が集まり、第4の圧電体層333のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第4の圧電体層333の表面に対し、γ軸の負方向に沿って加えられた外力が加えられた場合、第4の圧電体層333の出力電極層332側表面近傍には負電荷が集まり、第4の圧電体層333のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。
第3の圧電体層331および第4の圧電体層333の構成材料としては、第1の圧電体層321および第2の圧電体層323と同様の構成材料を用いることができる。また、第3の圧電体層331および第4の圧電体層333のように、層の面方向に垂直な外力(圧縮/引張力)に対して電荷を生ずる圧電体層は、Xカット水晶により構成することができる。
出力電極層332は、第3の圧電体層331内および第4の圧電体層333内に生じた正電荷または負電荷を電荷Qγとして出力する機能を有する。前述のように、第3の圧電体層331の表面または第4の圧電体層333の表面にγ軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層332近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層332からは、正の電荷Qγが出力される。一方、第3の圧電体層331の表面または第4の圧電体層333の表面にγ軸の負方向に沿って加えられた外力が加えられた場合、出力電極層332近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層332からは、負の電荷Qγが出力される。
第1のα軸用センサ340は、α軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qαを出力する機能を有する。第1のα軸用センサ340は、α軸の正方向に沿った外力に応じて正電荷を出力し、α軸の負方向に沿って加えられた外力に応じて負電荷を出力するよう構成されている。すなわち、第1のα軸用センサ340は、図7中のα軸方向に沿って加えられた外力に応じて出力される電荷の分極軸(検出方向)Pα(すなわち、図7中のα軸の正方向を向いた分極軸Pα)を有する。
第1のα軸用センサ340は、第5の結晶軸CA5を有する第5の圧電体層341と、第5の圧電体層341と対向して設けられ、第6の結晶軸CA6を有する第6の圧電体層343と、第5の圧電体層341と第6の圧電体層343との間に設けられ、電荷Qαを出力する出力電極層342を有する。また、第1のα軸用センサ340を構成する各層の積層順は、図7中の下側から、第5の圧電体層341、出力電極層342、第6の圧電体層343の順である。
第5の圧電体層341は、α軸の負方向に配向した第5の結晶軸CA5を有する圧電体によって構成されている。第5の圧電体層341の表面に対し、α軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第5の圧電体層341内に電荷が誘起される。その結果、第5の圧電体層341の出力電極層342側表面近傍には正電荷が集まり、第5の圧電体層341のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第5の圧電体層341の表面に対し、α軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第5の圧電体層341の出力電極層342側表面近傍には負電荷が集まり、第5の圧電体層341のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。
第6の圧電体層343は、α軸の正方向に配向した第6の結晶軸CA6を有する圧電体によって構成されている。第6の圧電体層343の表面に対し、α軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第6の圧電体層343内に電荷が誘起される。その結果、第6の圧電体層343の出力電極層342側表面近傍には正電荷が集まり、第6の圧電体層343のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。同様に、第6の圧電体層343の表面に対し、α軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第6の圧電体層343の出力電極層342側表面近傍には負電荷が集まり、第6の圧電体層343のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。
第5の圧電体層341および第6の圧電体層343の構成材料としては、第1の圧電体層321および第2の圧電体層323と同様の構成材料を用いることができる。また、第5の圧電体層341および第6の圧電体層343のように、層の面方向に沿った外力(せん断力)に対して電荷を生ずる圧電体層は、第1の圧電体層321および第2の圧電体層323と同様に、Yカット水晶により構成することができる。
出力電極層342は、第5の圧電体層341内および第6の圧電体層343内に生じた正電荷または負電荷を電荷Qαとして出力する機能を有する。前述のように、第5の圧電体層341の表面または第6の圧電体層343の表面にα軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層342近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層342からは、正の電荷Qαが出力される。一方、第5の圧電体層341の表面または第6の圧電体層343の表面にα軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層342近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層342からは、負の電荷Qαが出力される。
第1のβ軸用センサ320、第1のγ軸用センサ330、および第1のα軸用センサ340は、第1のβ軸用センサ320の分極軸Pβの方向と、第1のγ軸用センサ330の分極軸Pγの方向と、第1のα軸用センサ340の分極軸Pαの方向とが互いに直交するように積層されている。これにより、第1の電荷出力素子301aは、3つの分極軸Pα、Pβ、Pγを有することができ、3軸(α軸、β軸、γ軸)に沿った外力のそれぞれに応じて3つの電荷Qα、Qβ、Qγを出力することができる。
次に、図7(b)を参照し、第2の素子対に属する力検出素子30b、30dが有する第2の電荷出力素子301bについて詳述する。図7(b)に示す第2の電荷出力素子301bは、図7中の互いに直交する3軸(α軸、β軸、γ軸)に沿った外力のそれぞれに応じて電荷Qα、Qβ、Qγを出力する機能を有する。図7(b)に示すように、第2の電荷出力素子301bは、グランド(基準電位点)に接地された4つのグランド電極層310と、β軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qβを出力する第2のβ軸用センサ350と、γ軸に平行な外力(圧縮/引張力)に応じて電荷Qγを出力する第2のγ軸用センサ360と、α軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qαを出力する第2のα軸用センサ370とを有し、グランド電極層310と各センサ350、360、370は交互に積層されている。
したがって、第2の電荷出力素子301bは、第1のβ軸用センサ320と構造の異なる第2のβ軸用センサ350と、第1のγ軸用センサ330と構造の異なる第2のγ軸用センサ360と、第1のα軸用センサ340と構造の異なる第2のα軸用センサ370を有する点を除き、第1の電荷出力素子301aと同様の構造を有する。なお、図7において、グランド電極層310および各センサ350、360、370の積層方向をγ軸方向とし、γ軸方向に直交し且つ互いに直交する方向をそれぞれα軸方向、β軸方向としている。
図示の構成では、図7中の下側から、第2のβ軸用センサ350、第2のγ軸用センサ360、第2のα軸用センサ370の順で積層されているが、本発明はこれに限られない。各センサ350、360、370の積層順は任意である。
第2のβ軸用センサ350は、β軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qβを出力する機能を有する。第2のβ軸用センサ350は、β軸の正方向に沿った外力に応じて負電荷を出力し、β軸の負方向に沿って加えられた外力に応じて正電荷を出力するよう構成されている。すなわち、第2のβ軸用センサ350は、図7中のβ軸方向に沿って加えられた外力に応じて出力される電荷の分極軸(検出方向)Pβ(すなわち、図7中のβ軸の負方向を向いた分極軸Pβ)を有する。したがって、第2のβ軸用センサ350の分極軸Pβの方向は、第1のβ軸用センサ320の分極軸Pβの方向と反対方向を向いている。
第2のβ軸用センサ350は、第2の結晶軸CA2を有する第2の圧電体層323と、第2の圧電体層323と対向して設けられ、第1の結晶軸CA1を有する第1の圧電体層321と、第2の圧電体層323と第1の圧電体層321との間に設けられ、電荷Qβを出力する出力電極層322を有する。また、第2のβ軸用センサ350を構成する各層の積層順は、図7中の下側から、第2の圧電体層323、出力電極層322、第1の圧電体層321の順である。したがって、第2のβ軸用センサ350は、第2の圧電体層323、出力電極層322、第1の圧電体層321の積層順を除き、第1のβ軸用センサ320と同様の構造を有する。
第2の圧電体層323の表面に対し、β軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第2の圧電体層323内に電荷が誘起される。その結果、第2の圧電体層323の出力電極層322側表面近傍には負電荷が集まり、第2の圧電体層323のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。同様に、第2の圧電体層323の表面に対し、β軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第2の圧電体層323の出力電極層322側表面近傍には正電荷が集まり、第2の圧電体層323のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。
第1の圧電体層321の表面に対し、β軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第1の圧電体層321内に電荷が誘起される。その結果、第1の圧電体層321の出力電極層322側表面近傍には負電荷が集まり、第1の圧電体層321のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。同様に、第1の圧電体層321の表面に対し、β軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第1の圧電体層321の出力電極層322側表面近傍には正電荷が集まり、第1の圧電体層321のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。
このように、第1の圧電体層321の表面または第2の圧電体層323の表面にβ軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層322近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層322からは、負の電荷Qγが出力される。一方、第1の圧電体層321の表面または第2の圧電体層323の表面にγ軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層322近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層322からは、正の電荷Qγが出力される。
第2のγ軸用センサ360は、γ軸に平行な外力(圧縮/引張力)に応じて電荷Qγを出力する機能を有する。第2のγ軸用センサ360は、γ軸の正方向に沿った外力に応じて負電荷を出力し、γ軸の負方向に沿って加えられた外力に応じて正電荷を出力するよう構成されている。すなわち、第2のγ軸用センサ360は、図7中のγ軸方向に沿って加えられた外力に応じて出力される電荷の分極軸(検出方向)Pγ(すなわち、図7中のγ軸の負方向を向いた分極軸Pγ)を有する。したがって、第2のγ軸用センサ360の分極軸Pγの方向は、第1のγ軸用センサ330の分極軸Pγの方向と反対方向を向いている。
第2のγ軸用センサ360は、第4の結晶軸CA4を有する第4の圧電体層333と、第4の圧電体層333と対向して設けられ、第3の結晶軸CA3を有する第3の圧電体層331と、第4の圧電体層333と第3の圧電体層331との間に設けられ、電荷Qγを出力する出力電極層332を有する。また、第2のγ軸用センサ360を構成する各層の積層順は、図7中の下側から、第4の圧電体層333、出力電極層332、第3の圧電体層331の順である。したがって、第2のγ軸用センサ360は、第4の圧電体層333、出力電極層332、第3の圧電体層331の積層順を除き、第1のγ軸用センサ330と同様の構造を有する。
第4の圧電体層333の表面に対し、γ軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第4の圧電体層333内に電荷が誘起される。その結果、第4の圧電体層333の出力電極層332側表面近傍には負電荷が集まり、第4の圧電体層333のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。同様に、第4の圧電体層333の表面に対し、γ軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第4の圧電体層333の出力電極層332側表面近傍には正電荷が集まり、第4の圧電体層333のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。
第3の圧電体層331の表面に対し、γ軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第3の圧電体層331内に電荷が誘起される。その結果、第3の圧電体層331の出力電極層332側表面近傍には負電荷が集まり、第3の圧電体層331のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。同様に、第3の圧電体層331の表面に対し、γ軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第3の圧電体層331の出力電極層332側表面近傍には正電荷が集まり、第3の圧電体層331のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。
このように、第3の圧電体層331の表面または第4の圧電体層333の表面にγ軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層332近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層332からは、負の電荷Qγが出力される。一方、第3の圧電体層331の表面または第4の圧電体層333の表面にγ軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層332近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層332からは、正の電荷Qγが出力される。
第2のα軸用センサ370は、α軸に平行な外力(せん断力)に応じて電荷Qαを出力する機能を有する。第2のα軸用センサ370は、α軸の正方向に沿った外力に応じて負電荷を出力し、α軸の負方向に沿って加えられた外力に応じて正電荷を出力するよう構成されている。すなわち、第2のα軸用センサ370は、図7中のα軸方向に沿って加えられた外力に応じて出力される電荷の分極軸(検出方向)Pα(すなわち、図7中のα軸の負方向を向いた分極軸Pα)を有する。したがって、第2のα軸用センサ370の分極軸Pαの方向は、第1のα軸用センサ340の分極軸Pαの方向と反対方向を向いている。
第2のα軸用センサ370は、第6の結晶軸CA6を有する第6の圧電体層343と、第6の圧電体層343と対向して設けられ、第5の結晶軸CA5を有する第5の圧電体層341と、第6の圧電体層343と第5の圧電体層341との間に設けられ、電荷Qαを出力する出力電極層342を有する。また、第2のα軸用センサ370を構成する各層の積層順は、図7中の下側から、第6の圧電体層343、出力電極層342、第5の圧電体層341の順である。したがって、第2のα軸用センサ370は、第6の圧電体層343、出力電極層342、第5の圧電体層341の積層順を除き、第1のα軸用センサ340と同様の構造を有する。
第6の圧電体層343の表面に対し、α軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第6の圧電体層343内に電荷が誘起される。その結果、第6の圧電体層343の出力電極層342側表面近傍には負電荷が集まり、第6の圧電体層343のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。同様に、第6の圧電体層343の表面に対し、α軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第6の圧電体層343の出力電極層342側表面近傍には正電荷が集まり、第6の圧電体層343のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。
第5の圧電体層341の表面に対し、α軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、圧電効果により、第5の圧電体層341内に電荷が誘起される。その結果、第5の圧電体層341の出力電極層342側表面近傍には負電荷が集まり、第5の圧電体層341のグランド電極層310側表面近傍には正電荷が集まる。同様に、第5の圧電体層341の表面に対し、α軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、第5の圧電体層341の出力電極層342側表面近傍には正電荷が集まり、第5の圧電体層341のグランド電極層310側表面近傍には負電荷が集まる。
このように、第5の圧電体層341の表面または第6の圧電体層343の表面にα軸の正方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層342近傍には、負電荷が集まる。その結果、出力電極層342からは、負の電荷Qαが出力される。一方、第5の圧電体層341の表面または第6の圧電体層343の表面にα軸の負方向に沿った外力が加えられた場合、出力電極層342近傍には、正電荷が集まる。その結果、出力電極層322からは、正の電荷Qαが出力される。
第2のβ軸用センサ350、第2のγ軸用センサ360、および第2のα軸用センサ370は、第2のβ軸用センサ350の分極軸Pβの方向と、第2のγ軸用センサ360の分極軸Pγの方向と、第2のα軸用センサ370の分極軸Pαの方向とが互いに直交するように積層されている。また、第2のβ軸用センサ350の分極軸Pβの方向は、第1のβ軸用センサ320の分極軸Pβの方向と反対方向を向いている。また、第2のγ軸用センサ360の分極軸Pγの方向は、第1のγ軸用センサ330の分極軸Pγの方向と反対方向を向いている。同様に、第2のα軸用センサ370の分極軸Pαの方向は、第1のα軸用センサ340の分極軸Pαの方向と反対方向を向いている。
また、Yカット水晶によって構成される第1のβ軸用センサ320、第2のβ軸用センサ350、第1のα軸用センサ340および第2のα軸用センサ370の単位力当たりの電荷発生量は、例えば、8pC/Nである。一方、Xカット水晶によって構成される第1のγ軸用センサ330および第2のγ軸用センサ360の単位力当たりの電荷発生量は、例えば、4pC/Nである。このように、通常、第1の電荷出力素子301aおよび第2の電荷出力素子301bのγ軸に平行な外力(圧縮/引張力)に対する感度は、第1の電荷出力素子301aおよび第2の電荷出力素子301bのα軸またはβ軸に平行な外力(せん断力)に対する感度以下となる。そのため、通常、第1の電荷出力素子301aおよび第2の電荷出力素子301bから出力される電荷Qγは、第1の電荷出力素子301aおよび第2の電荷出力素子301bから出力される電荷Qαおよび電荷Qβ以下となる。
<変換回路>
変換回路32a、32cは、第1実施形態の変換回路32と同様の構成を有している。変換回路32bは、コンデンサ34の静電容量を除き、第1実施形態の変換回路32と同様の構成を有している。変換回路32aは、第1の電荷出力素子301aまたは第2の電荷出力素子301bから出力された電荷Qαを電圧Vαに変換する機能を有する。変換回路32bは、第1の電荷出力素子301aまたは第2の電荷出力素子301bから出力された電荷Qγを電圧Vγに変換する機能を有する。変換回路32cは、第1の電荷出力素子301aまたは第2の電荷出力素子301bから出力された電荷Qβを電圧Vβに変換する機能を有する。
各変換回路32a、32b、32cのスイッチング素子35には、同一の駆動回路が接続されていてもよいし、それぞれ異なる駆動回路が接続されていてもよい。各スイッチング素子35には、駆動回路から、全て同期したオン/オフ信号が入力される。これにより、各変換回路32a、32b、32cのスイッチング素子35の動作が同期する。すなわち、各変換回路32a、32b、32cのスイッチング素子35のオン/オフタイミングは一致する。
また、変換回路32a、32b、32cのような電圧変換機能を有する回路において、コンデンサ34の静電容量を小さくすると、電圧変換感度が向上するが、飽和電荷量が小さくなる。上述のように、通常、第1の電荷出力素子301aおよび第2の電荷出力素子301bから出力される電荷Qγは、第1の電荷出力素子301aおよび第2の電荷出力素子301bから出力される電荷Qαおよび電荷Qβ以下である。したがって、電荷Qγに対する感度の観点からは、変換回路32bのコンデンサ34の静電容量C2は、変換回路32a、cのコンデンサ34の静電容量C1以下であることが好ましい。これにより、電荷Qγを正確に電圧Vγに変換することができる。
また、各変換回路32a、32b、32cのスイッチング素子35は互いに同等の半導体スイッチング素子であり、各スイッチング素子35のリーク電流は実質的に等しい。したがって、各スイッチング素子35の出力ドリフトDも実質的に等しい。
次に、図5(b)、(c)、(d)を参照して、第1の素子対をなす力検出素子30a、30cおよび第2の素子対をなす力検出素子30b、30dの位置関係を詳述する。なお、図5(b)においては、説明のため第2基部4が省略されている。また、図5(b)において、左右方向をx軸方向、x軸方向と直交する方向、すなわち上下方向をy軸方向、x軸方向およびy軸方向に直交する方向をz軸方向としている。さらに、図5(b)において力検出素子30a、30cの中心を通る直線をA1線とし、力検出素子30b、30dの中心を通る直線をA2線としている。図5(c)は、図5(b)のA1線に沿った断面図である。図5(d)は、図5(b)のA2線に沿った断面図である。
力検出素子30aは、分極軸Pα1、Pβ1、Pγ1を有し、α軸、β軸、γ軸のそれぞれに沿った外力に応じて電圧Vα1、Vβ1、Vγ1を出力する。力検出素子30bは、分極軸Pα2、Pβ2、Pγ2を有し、α軸、β軸、γ軸のそれぞれに沿った外力に応じて電圧Vα2、Vβ2、Vγ2を出力する。力検出素子30cは、分極軸Pα3、Pβ3、Pγ3を有し、α軸、β軸、γ軸のそれぞれに沿った外力に応じて電圧Vα3、Vβ3、Vγ3を出力する。同様に、力検出素子30dは、分極軸Pα4、Pβ4、Pγ4を有し、α軸、β軸、γ軸のそれぞれに沿った外力に応じて電圧Vα4、Vβ4、Vγ4を出力する。また、各力検出素子30a、30b、30c、30dが出力する各電圧Vα、Vβ、Vγには、それぞれ、コンデンサ34に蓄積される電荷量に比例する電圧成分(真の値)Vαt、Vβt、Vγt、およびスイッチング素子35のリーク電流に起因する出力ドリフトDが含まれる。
力検出素子30a、30b、30c、30dは、第1の傾斜部21の傾斜面上に固定的に配置され、第1の傾斜部21と第2の傾斜部41との間に挟持(保持)されている。すなわち、力検出素子30a、30b、30c、30dは、第1基部2と第2基部4との間に、第1基部2に対して平行(φ=0)、傾斜(0<φ<π/2)または垂直な状態(φ=π/2)で設けられている。
力検出素子30aの分極軸Pβ1は、水平方向(xy平面)の角度θ1を有している。力検出素子30bの分極軸Pβ2は、水平方向の角度θ2を有している。力検出素子30cの分極軸Pβ3は、水平方向の角度θ3を有している。力検出素子30dの分極軸Pβ4は、水平方向の角度θ4を有している。なお、角度θ1、θ2、θ3、θ4は、図5(b)の基準座標系(x軸、y軸、z軸)のx軸からの角度である。さらに、力検出素子30a、30b、30c、30dの各分極軸Pβは、それぞれ垂直方向(z軸方向を含む平面)の角度φを有している。なお、角度φは、図5(b)の基準座標系のxy平面に対する角度である。
図5(b)、(c)に示すように、第1の素子対をなす力検出素子30a、30cは、力検出素子30aの分極軸Pβ1の水平成分(x、y成分)と、力検出素子30cの分極軸Pβ3の水平成分とが、反対方向を向くよう配置されている。さらに、力検出素子30a、30cは、力検出素子30aの分極軸Pα1と、力検出素子30cの分極軸Pα3とが、反対方向を向くように配置されている。
同様に、図5(b)、(d)に示すように、第2の素子対をなす力検出素子30b、30dは、力検出素子30bの分極軸Pβ2の水平成分と、力検出素子30dの分極軸Pβ4の水平成分とが、反対方向を向くように配置されている。さらに、力検出素子30b、30dは、力検出素子30bの分極軸Pα2と、力検出素子30dの分極軸Pα4とが、反対方向を向くよう配置されている。
また、図5(c)、(d)に示すように、第1の素子対をなす力検出素子30a、30cの分極軸Pγ1、Pγ3の垂直成分(z成分)と、第2の素子対をなす力検出素子30b、30dの分極軸Pγ2、Pγ4の垂直成分とが、互いに反対方向を向いている。
図5(c)に示すように、力検出素子30a、30cは、力検出素子30aの分極軸Pβ1の水平成分(すなわち、Pβ1×cos(φ))と、力検出素子30cの分極軸Pβ2の水平成分(すなわち、Pβ3×cos(φ))とが互いに反対方向を向くように配置されている。そのため、電圧Vβ1に含まれる電圧成分Vβt1の水平成分(すなわち、Vβt1×cos(φ))と、電圧Vβ3に含まれる電圧成分Vβt3の水平成分(すなわち、Vβt3×cos(φ))の符号は一致しない。したがって、力検出素子30aから出力される電圧Vβ1の水平成分と、力検出素子30cから出力される電圧Vβ3の水平成分との差分を取った場合、電圧成分Vβt1の水平成分と電圧成分Vβt3の水平成分との差分の絶対値は、減少しない。
同様に、図5(c)に示すように、力検出素子30a、30cは、力検出素子30aの分極軸Pα1の方向と、力検出素子30cの分極軸Pα2の方向とが互いに反対方向を向くように配置されているので、電圧Vα1に含まれる電圧成分Vαt1と、電圧Vα3に含まれる電圧成分Vαt3の符号は一致しない。したがって、力検出素子30aから出力される電圧Vα1と、力検出素子30cから出力される電圧Vα3の差分を取った場合、電圧成分Vαt1と電圧成分Vαt3の差分の絶対値は、減少しない。
また、図5(d)に示すように、力検出素子30b、30dは、力検出素子30bの分極軸Pβ2の水平成分(すなわち、Pβ2×cos(φ))と、力検出素子30dの分極軸Pβ4の水平成分(すなわち、Pβ4×cos(φ))とが互いに反対方向を向くように配置されている。そのため、電圧Vβ2に含まれる電圧成分Vβt2の水平成分(すなわち、Vβt2×cos(φ))と、電圧Vβ4に含まれる電圧成分Vβt4の水平成分(すなわち、Vβ4×cos(φ))の符号は一致しない。したがって、力検出素子30bから出力される電圧Vβ2の水平成分と、力検出素子30dから出力される電圧Vβ4の水平成分との差分を取った場合、電圧成分Vβt2と電圧成分Vβt4の差分の絶対値は、減少しない。
同様に、図5(d)に示すように、力検出素子30b、30dは、力検出素子30bの分極軸Pα2の方向と、力検出素子30dの分極軸Pα4の方向とが互いに反対方向を向くように配置されているので、電圧Vα2に含まれる電圧成分Vαt2と、電圧Vα4に含まれる電圧成分Vαt4の符号は一致しない。したがって、力検出素子30bから出力される電圧Vα2と、力検出素子30dから出力される電圧Vα4の差分を取った場合、電圧成分Vαt2と電圧成分Vαt4の差分の絶対値は、減少しない。
さらに、図5(c)、(d)に示すように、力検出素子30a、30c、30b、30dは、力検出素子30a、30cの分極軸Pγ1、Pγ3の垂直成分(すなわち、Pγ1×sin(π/2−φ)およびPγ3×sin(π/2−φ))と、力検出素子30b、30dの分極軸Pγ2、Pγ4の垂直成分(すなわち、Pγ2×sin(π/2−φ)およびPγ4×sin(π/2−φ))とが互いに反対方向を向くように構成されているので、電圧Vγ1、Vγ3に含まれる電圧成分Vγt1、Vγt3の垂直成分(すなわち、Vγt1×sin(π/2−φ)およびVγt3×sin(π/2−φ))と、電圧Vγ2、Vγ4に含まれる電圧成分Vγt2、Vγt4の垂直成分(すなわち、Vγt2×sin(π/2−φ)およびVγt4×sin(π/2−φ))の符号は一致しない。したがって、力検出素子30a、30cから出力される電圧Vγ1、Vγ3の垂直成分と、力検出素子30b、30dから出力される電圧Vγ2、Vγ4の垂直成分との差分を取った場合、それらの差分の絶対値は、減少しない。
一方、各力検出素子30a、30b、30c、30dから出力される電圧Vα、Vβ、Vγに含まれる出力ドリフトDは、分極軸Pα、Pβ、Pγの方向に依存しないので、各電圧Vα、Vβ、Vγに含まれる出力ドリフトDの符号は、一致する。したがって、各出力ドリフトDの差分を取った場合、その差分の絶対値は、減少する。
また、第1の素子対を構成する力検出素子30a、30cは、分極軸Pβ1の水平成分と分極軸Pβ3の水平成分が対向するよう、すなわち、θ1=θ3の関係を満たすよう配置されることが好ましい。同様に、第2の素子対を構成する力検出素子30b、30dは、分極軸Pβ2の水平成分と分極軸Pβ4の水平成分が対向するよう、すなわち、θ2=θ4の関係を満たすよう配置されることが好ましい。これにより、後述する外力検出回路50は、出力ドリフトDを低減しつつ、6軸力を検出することができる。
また、力検出素子30a、30b、30c、30dは、第1の素子対を構成する力検出素子30a、30cの分極軸Pβ1、Pβ3の水平成分と、第2の素子対を構成する力検出素子30b、30dの分極軸Pβ2、Pβ4の水平成分とが直交するよう配置されることがさらに好ましい。これにより、後述する外力検出回路50は、出力ドリフトDをさらに低減しつつ、6軸力を検出することができる。
また、力検出素子30aの分極軸Pβ1の水平成分と、力検出素子30cの分極軸Pβ3の水平成分とが互いに反対方向を向くよう配置されていれば、第1の素子対をなす力検出素子30a、30cの配置は特に限定されないが、図4(b)に示すように、力検出素子30aと、力検出素子30cが同一軸A1上に配置されていることが好ましい。同様に、力検出素子30bの分極軸Pβ2の水平成分と、力検出素子30dの分極軸Pβ4の水平成分とが互いに反対方向を向くよう配置されていれば、第2の素子対をなす力検出素子30b、30dの配置は特に限定されないが、図4(b)に示すように、力検出素子30bと、力検出素子30dが同一軸A2上に配置されていることが好ましい。これにより、第1基部2または第2基部4に加えられた6軸力を偏りなく検出することができる。
また、第1の素子対と第2の素子対の位置関係は、特に限定されないが、図4(b)に示すように、第1の素子対に属する力検出素子30aの中心と力検出素子30cの中心とを結ぶ直線A1と、第2の素子対に属する力検出素子30bの中心と力検出素子30dの中心とを結ぶ直線A2とが、直交するよう第1の素子対と第2の素子対を配置することが好ましい。これにより、第1基部2または第2基部4に加えられた外力(図中のx軸、y軸、z軸に沿った外力)を偏りなく検出することができる。
また、力検出素子30a、30b、30c、30dは、第1基部2または第2基部4の周方向に沿って、等角度間隔に配置されていることが好ましく、第1基部2または第2基部4の中心点を中心とした同心円状に、等間隔に配置されていることがさらに好ましい。これにより、第1基部2または第2基部4に加えられた外力(図中のx軸、y軸、z軸に沿った外力)を偏りなく検出することができる。
また、図4(b)の構成では、力検出素子30a、30cの分極軸Pβ1、Pβ3が第1基部2の外側(遠心方向)を向き、力検出素子30b、30dの分極軸Pβ2、Pβ4が第1基部2の内側(向心方向)を向いているが、本発明はこれに限られない。すなわち、力検出素子30aの分極軸Pβ1の方向と、力検出素子30cの分極軸Pβ3の方向とが互いに反対方向を向き、かつ、力検出素子30bの分極軸Pβ2の方向と、力検出素子30dの分極軸Pβ4の方向とが互いに反対方向を向くよう配置されていれば、力検出素子30a、30cの分極軸Pβ1、Pβ3が第1基部2の内側(向心方向)を向き、力検出素子30b、30dの分極軸Pβ2、Pβ4が第1基部2の外側(遠心方向)を向いていてもよい。
<外力検出回路>
外力検出回路50は、力検出素子30a、30b、30c、30dのそれぞれから出力された電圧Vα、Vβ、Vγの差分を取ることにより、x軸方向の並進力成分(せん断力)Fx、y軸方向の並進力成分(せん断力)Fy、z軸方向の並進力成分(圧縮/引張力)Fz、x軸周りの回転力成分Mx、y軸周りの回転力成分My、z軸周りの回転力成分Mzの6軸力を演算する機能を有する。各力成分は、以下の式により求めることができる。なお、式の単純化のため、力検出素子30a、30b、30c、30dは、図4(b)に示すように、第1基部2または第2基部4の中心点を中心とした半径Lの同心円状に配置されているものとするが、本発明はこれに限られない。
ここでLは、定数である。
このように、各力検出素子30a、30b、30c、30dから出力された各電圧Vα(すなわち、Vαt+D)、Vβ(すなわち、Vβt+D)、Vγ(すなわち、Vγt+D)の差分を取ることにより、コンデンサ34に蓄積される電荷量に比例する電圧成分(真の値)Vαt、Vβt、Vγtの差分の絶対値は減少させず、出力ドリフトDの絶対値は減少させることができる。その結果、出力ドリフトDを低減することができ、力検出装置1bの検出精度および検出分解能を向上させることができる。また、上述した出力ドリフトDの低減方法は、測定時間が長くなった場合であっても有効なので、力検出装置1bの測定時間を長くすることができる。
また、上記式からわかるように、角度φ=0の場合を除き、各力検出素子30a、30b、30c、30dから出力されたVγが全てVγ=0である場合であっても、6軸力(Fx、Fy、Fz、Mx、My、Mz)を算出することができる。すなわち、角度φ=0の場合を除き、各力検出素子30a、30b、30c、30dから出力された電圧Vα、Vβのみを用いて、6軸力を算出することができる。
上述のように、力検出素子30a、30b、30c、30dのそれぞれから出力される電圧Vα、Vβに対する第1基部2および第2基部4の温度変化に起因するノイズ成分の影響は、電圧Vγに対する温度変化に起因するノイズ成分の影響よりも小さい。そのため、力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して傾斜または垂直な状態で配置された場合(0<φ<π/2、および、φ=π/2の場合)に、各力検出素子のそれぞれから出力された電圧Vα、Vβのみを用いて、6軸力を検出することにより、第1基部2および第2基部4の温度変化等に起因する変形による各力検出素子に対する与圧変化の影響を低減しつつ、6軸力を検出することができる。
力検出素子30a、30b、30c、30dが第1基部2に対して傾斜または垂直な状態で配置された場合(0<φ<π/2、および、φ=π/2の場合)に、外力検出回路50が各出力素子からそれぞれ出力された電圧Vα、Vβのみを用いて6軸力を算出するか、電圧Vα、Vβ、Vγを用いて6軸力を算出するかは、ユーザーが任意に設定することができる。
第1基部2および第2基部4の温度変化等による第1基部2および第2基部4の変形による電圧Vγの変動が、電圧Vγの真の値Vγtに対して無視できないほど大きい環境下で力検出装置1bが用いられる場合には、外力検出回路50が電圧Vα、Vβのみを用いて6軸力を算出するよう設定することにより、第1基部2および第2基部4の変形の影響を低減し、より正確に6軸力を検出することができる。
一方、第1基部2および第2基部4の温度変化等による第1基部2および第2基部4の変形による電圧Vγの変動が、電圧Vγの真の値Vγtに対して無視できるほど小さい環境下で力検出装置1bが用いられる場合には、外力検出回路50が電圧Vα、Vβ、Vγを用いて6軸力を算出するよう設定することにより、前述の場合より多くの入力(電圧Vα、Vβ、Vγ)を用いて6軸力を検出することとなるので、より正確に6軸力を検出することができる。
角度θ1、θ2、θ3、θ4がθ1=θ3、θ2=θ4を満たす場合、上記算出式は単純化され、以下のようになる。
この場合、出力ドリフトDを除去することができる。その結果、力検出装置1bの検出精度および検出分解能をさらに向上させることができる。また、力検出装置1bの測定時間をさらに長くすることができる。
さらに、角度θ1、θ2、θ3、θ4がθ1=θ3=π/2、θ2=θ4=0を満たす場合、上記算出式はさらに単純化され、以下のようになる。
さらに、角度φ=0を満たす場合、上記算出式はさらに単純化され、以下のようになる。
また、さらに、角度φ=π/2を満たす場合、上記算出式は、以下のようになる。
このように、外力検出回路50は、各力検出素子30a、30b、30c、30dから出力された各電圧Vα、Vβ、Vγの差分を取ることにより、変換回路32a、32b、32cのスイッチング素子35のリーク電流に起因する出力ドリフトDを低減しつつ、6軸力を検出することができる。その結果、リーク電流(出力ドリフトD)に起因する検出誤差が相対的に小さくなり、力検出装置1bの検出精度および検出分解能を向上させることができる。また、上述した出力ドリフトDの低減方法は、測定時間が長くなった場合であっても有効なので、力検出装置1bの測定時間を長くすることができる。さらに、本発明に係る力検出装置1bでは、逆バイアス回路のような出力ドリフトを低減するための回路が不要なので、力検出装置1bを小型化できる。
なお、本実施形態の力検出装置1bは、第1の素子対をなす力検出素子30a、30cおよび第2の素子対をなす力検出素子30c、30dの2対の素子対を有しているが、本発明はこれに限られない。力検出装置1bが図5(b)のように第1の素子対および第2の素子対の2対の素子対の2対の素子対を有する場合、上述のように非常に単純な演算によって6軸力を求めることができるので、外力検出回路50を簡略化することができる。また、力検出装置1bが3対以上の素子対を有する場合、より高い精度で6軸力を検出することができる。
<第4実施形態>
次に、図8に基づき、本発明の第4実施形態である単腕ロボットを説明する。以下、第4実施形態について、前述した第1、第2および第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図8は、本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)を用いた単腕ロボットの1例を示す図である。図8の単腕ロボット500は、基台510と、アーム連結体520と、アーム連結体520の先端側に設けられたエンドエフェクタ530と、アーム連結体520とエンドエフェクタ530との間に設けられた本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)とを有する。
基台510は、アーム連結体520を回動させるための動力を発生させるアクチュエーター(図示せず)およびアクチュエーターを制御する制御部(図示せず)等を収納する機能を有する。また、基台510は、例えば、床、壁、天井、移動可能な台車上などに固定される。
アーム連結体520は、第1のアーム521、第2のアーム522、第3のアーム523、第4のアーム524および第5のアーム525を有しており、隣り合うアーム同士を回動自在に連結することにより構成されている。アーム連結体520は、制御部の制御によって、各アームの連結部を中心に複合的に回転または屈曲することにより駆動する。
エンドエフェクタ530は、対象物を把持する機能を有する。エンドエフェクタ530は、第1の指531および第2の指532を有している。アーム連結体520の駆動によりエンドエフェクタ530が所定の動作位置まで到達した後、第1の指531および第2の指532の離間距離を調整することにより、対象物を把持することができる。
力検出装置1は、エンドエフェクタ530に加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する外力を基台510の制御部にフィードバックすることにより、単腕ロボット500は、より精密な作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する6軸力によって、単腕ロボット500は、エンドエフェクタ530の障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行うことができ、単腕ロボット500は、より安全に作業を実行することができる。さらに、本発明に係る力検出装置1では、逆バイアス回路のような出力ドリフトを低減するための回路が不要なので、力検出装置1を小型化できる。そのため、単腕ロボット500を小型化することができる。
なお、図示の構成では、アーム連結体520は、合計5本のアームによって構成されているが、本発明はこれに限られない。アーム連結体520が、1本のアームに構成されている場合、2〜4本のアームによって構成されている場合、6本以上のアームによって構成されている場合も本発明の範囲内である。
<第5実施形態>
次に、図9に基づき、本発明の第4実施形態である複腕ロボットを説明する。以下、第5実施形態について、前述した第1、第2、第3および第4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図9は、本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)を用いた複腕ロボットの1例を示す図である。図9の複腕ロボット600は、基台610と、第1のアーム連結体620と、第2のアーム連結体630と、第1のアーム連結体620の先端側に設けられた第1のエンドエフェクタ640aと、第2のアーム連結体630の先端側に設けられた第2のエンドエフェクタ640bと、第1のアーム連結体620と第1のエンドエフェクタ640a間および第2のアーム連結体630と第2のエンドエフェクタ640bとの間に設けられた本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)を有する。
基台610は、第1のアーム連結体620および第2のアーム連結体630を回動させるための動力を発生させるアクチュエーター(図示せず)およびアクチュエーターを制御する制御部(図示せず)等を収納する機能を有する。また、基台610は、例えば、床、壁、天井、移動可能な台車上などに固定される。
第1のアーム連結体620は、第1のアーム621および第2のアーム622を回動自在に連結することにより構成されている。第2のアーム連結体630は、第1のアーム631および第2のアーム632を回動自在に連結することにより構成されている。第1のアーム連結体620および第2のアーム連結体630は、制御部の制御によって、各アームの連結部を中心に複合的に回転または屈曲することにより駆動する。
第1のエンドエフェクタ640aおよび第2のエンドエフェクタ640bは、対象物を把持する機能を有する。第1のエンドエフェクタ640aは、第1の指641aおよび第2の指642aを有している。第2のエンドエフェクタ640bは、第1の指641bおよび第2の指642bを有している。第1のアーム連結体620の駆動により第1のエンドエフェクタ640aが所定の動作位置まで到達した後、第1の指641aおよび第2の指642aの離間距離を調整することにより、対象物を把持することができる。同様に、第2のアーム連結体630の駆動により第2のエンドエフェクタ640bが所定の動作位置まで到達した後、第1の指641bおよび第2の指642bの離間距離を調整することにより、対象物を把持することができる。
力検出装置1は、第1のエンドエフェクタ640aまたは第2のエンドエフェクタ640bに加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する外力を基台610の制御部にフィードバックすることにより、複腕ロボット600は、より精密に作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する6軸力によって、複腕ロボット600は、第1のエンドエフェクタ640aまたは第2のエンドエフェクタ640bの障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行うことができ、複腕ロボット600は、より安全に作業を実行することができる。さらに、本発明に係る力検出装置1では、逆バイアス回路のような出力ドリフトを低減するための回路が不要なので、力検出装置1を小型化できる。そのため、複腕ロボット600を小型化することができる。
なお、図示の構成では、アーム連結体は合計2本であるが、本発明はこれに限られない。複腕ロボット600が3本以上のアーム連結体を有している場合も、本発明の範囲内である。
<第6実施形態>
次に、図10、11に基づき、本発明に係る第6実施形態である電子部品検査装置および電子部品搬送装置を説明する。以下、第6実施形態について、前述した第1、第2、第3、第4および第5実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図10は、本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)を用いた電子部品検査装置および電子部品搬送装置の1例を示す図である。図11は、本発明に係る力検出装置を用いた電子部品搬送装置の1例を示す図である。
図10の電子部品検査装置700は、基台710と、基台710の側面に立設された支持台720とを有する。基台710の上面には、検査対象の電子部品711が載置されて搬送される上流側ステージ712uと、検査済みの電子部品711が載置されて搬送される下流側ステージ712dとが設けられている。また、上流側ステージ712uと下流側ステージ712dとの間には、電子部品711の姿勢を確認するための撮像装置713と、電気的特性を検査するために電子部品711がセットされる検査台714とが設けられている。なお、電子部品711の例として、半導体、半導体ウェハー、CLDやOLED等の表示デバイス、水晶デバイス、各種センサ、インクジェットヘッド、各種MEMSデバイス等などが挙げられる。
また、支持台720には、基台710の上流側ステージ712uおよび下流側ステージ712dと平行な方向(Y方向)に移動可能にYステージ731が設けられており、Yステージ731からは、基台710に向かう方向(X方向)に腕部732が延設されている。また、腕部732の側面には、X方向に移動可能にXステージ733が設けられている。また、Xステージ733には、撮像カメラ734と、上下方向(Z方向)に移動可能なZステージを内蔵した電子部品搬送装置740が設けられている。また、電子部品搬送装置740の先端側には、電子部品711を把持する把持部741が設けられている。また、電子部品搬送装置740の先端と、把持部741との間には、本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)が設けられている。更に、基台710の前面側には、電子部品検査装置700の全体の動作を制御する制御装置750が設けられている。
電子部品検査装置700は、以下のようにして電子部品711の検査を行う。最初に、検査対象の電子部品711は、上流側ステージ712uに載せられて、検査台714の近くまで移動する。次に、Yステージ731およびXステージ733を動かして、上流側ステージ712uに載置された電子部品711の真上の位置まで電子部品搬送装置740を移動させる。このとき、撮像カメラ734を用いて電子部品711の位置を確認することができる。そして、電子部品搬送装置740内に内蔵されたZステージを用いて電子部品搬送装置740を降下させ、把持部741で電子部品711を把持すると、そのまま電子部品搬送装置740を撮像装置713の上に移動させて、撮像装置713を用いて電子部品711の姿勢を確認する。次に、電子部品搬送装置740に内蔵されている微調整機構を用いて電子部品711の姿勢を調整する。そして、電子部品搬送装置740を検査台714の上まで移動させた後、電子部品搬送装置740に内蔵されたZステージを動かして電子部品711を検査台714の上にセットする。電子部品搬送装置740内の微調整機構を用いて電子部品711の姿勢が調整されているので、検査台714の正しい位置に電子部品711をセットすることができる。次に、検査台714を用いて電子部品711の電気的特性検査が終了した後、今度は検査台714から電子部品711を取り上げ、Yステージ731およびXステージ733を動かして、下流側ステージ712d上まで電子部品搬送装置740を移動させ、下流側ステージ712dに電子部品711を置く。最後に、下流側ステージ712dを動かして、検査が終了した電子部品711を所定位置まで搬送する。
図11は、本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)を含む電子部品搬送装置740を示す図である。電子部品搬送装置740は、把持部741と、把持部741に接続された力検出装置1と、力検出装置1を介して把持部741に接続された回転軸742と、回転軸742に回転可能に取り付けられた微調整プレート743を有する。また、微調整プレート743は、ガイド機構(図示せず)によってガイドされながら、X方向およびY方向に移動可能である。
また、回転軸742の端面に向けて、回転方向用の圧電モーター744θが搭載されており、圧電モーター744θの駆動凸部(図示せず)が回転軸742の端面に押しつけられている。このため、圧電モーター744θを動作させることによって、回転軸742(および把持部741)をθ方向に任意の角度だけ回転させることが可能である。また、微調整プレート743に向けて、X方向用の圧電モーター744xと、Y方向用の圧電モーター744yとが設けられており、それぞれの駆動凸部(図示せず)が微調整プレート743の表面に押しつけられている。このため、圧電モーター744xを動作させることによって、微調整プレート743(および把持部741)をX方向に任意の距離だけ移動させることができ、同様に、圧電モーター744yを動作させることによって、微調整プレート743(および把持部741)をY方向に任意の距離だけ移動させることが可能である。
また、力検出装置1は、把持部741に加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する外力を制御装置750にフィードバックすることにより、電子部品搬送装置740および電子部品検査装置700は、より精密に作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する外力によって、把持部741の障害物への接触等を検知することができる。そのため、従来の位置制御では困難だった障害物回避動作、対象物損傷回避動作等を容易に行うことができ、電子部品搬送装置740および電子部品検査装置700は、より安全な作業を実行可能である。さらに、本発明に係る力検出装置1では、逆バイアス回路のような出力ドリフトを低減するための回路が不要なので、力検出装置1を小型化できる。そのため、電子部品搬送装置740および電子部品検査装置700を小型化することができる。
<第7実施形態>
次に、図12に基づき、本発明の第7実施形態である部品加工装置を説明する。以下、第7実施形態について、前述した第1、第2、第3、第4、第5および第6実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図12は、本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)を用いた部品加工装置の1例を示す図である。図12の部品加工装置800は、基台810と、基台810の上面に起立形成された支柱820と、支柱820の側面に設けられた送り機構830と、送り機構830に昇降可能に取り付けられた工具変位部840と、工具変位部840に接続された本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)と、力検出装置1を介して工具変位部840に装着された工具850を有する。
基台810は、被加工部品860を載置し、固定するための台である。支柱820は、送り機構830を固定するための柱である。送り機構830は、工具変位部840を昇降させる機能を有する。送り機構830は、送り用モーター831と、送り用モーター831からの出力に基づいて工具変位部840を昇降させるガイド832を有する。工具変位部840は、工具850に回転、振動等の変位を与える機能を有する。工具変位部840は、変位用モーター841と、変位用モーター841に連結された主軸(図示せず)の先端に設けられた工具取付け部843と、工具変位部840に取り付けられ主軸を保持する保持部842とを有する。工具850は、工具変位部840の工具取付け部843に、力検出装置1を介して取り付けられ、工具変位部840から与えられる変位に応じて被加工部品860を加工するために用いられる。工具850は、特に限定されないが、例えば、レンチ、プラスドライバー、マイナスドライバー、カッター、丸のこ、ニッパ、錐、ドリル、フライス等である。
力検出装置1は、工具850に加えられる外力を検出する機能を有する。力検出装置1が検出する外力を送り用モーター831や変位用モーター841にフィードバックすることにより、部品加工装置800は、より精密に部品加工作業を実行することができる。また、力検出装置1が検出する外力によって、工具850の障害物への接触等を検知することができる。そのため、工具850に障害物等が接触した場合に緊急停止することができ、部品加工装置800は、より安全な部品加工作業を実行可能である。さらに、本発明に係る力検出装置1では、逆バイアス回路のような出力ドリフトを低減するための回路が不要なので、力検出装置1を小型化できる。そのため、部品加工装置800を小型化することができる。
<第8実施形態>
次に、図13に基づき、本発明の第8実施形態である移動体を説明する。以下、第8実施形態について、前述した第1、第2、第3、第4、第5、第6、および第7実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図13は、本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)を用いた移動体の1例を示す図である。図13の移動体900は、与えられた動力により移動することができる。移動体900は、特に限定されないが、例えば、自動車、バイク、飛行機、船、電車等の乗り物、2足歩行ロボット、車輪移動ロボット等のロボット等である。
移動体900は、本体910(例えば、乗り物の筐体、ロボットのメインボディ等)と、本体910を移動させるための動力を供給する動力部920と、本体910の移動により発生する外力を検出する本発明に係る力検出装置1(1aまたは1b)と、制御部930を有する。
動力部920から供給された動力によって本体910が移動すると、移動に伴い振動や加速度等が生じる。力検出装置1は、移動に伴い生じた振動や加速度等による外力を検出する。力検出装置1によって検出された外力は、制御部930に伝達される。制御部930は、力検出装置1から伝達された外力に応じて動力部920等を制御することにより、姿勢制御、振動制御および加速制御等の制御を実行することができる。さらに、本発明に係る力検出装置1では、逆バイアス回路のような出力ドリフトを低減するための回路が不要なので、力検出装置1を小型化できる。そのため、移動体900を小型化することができる。
また、本発明に係る力検出装置1(1a、1b)は、振動計、加速度計、重力計、動力計、地震計または傾斜計等の各種測定機器にも適用可能であり、本発明に係る力検出装置1を用いた各種測定機器も本発明の範囲内である。
本発明に係る力検出装置1(1a、1b)では、最大検出荷重は250N、最大検出モーメントは180Nm、最小検出モーメントは、0.00016Nm、破壊荷重は1000N以上、ヒステリシス特性は2%以下である高性能を有する。
以上、本発明に係る力検出装置、並びに該力検出装置を用いたロボット、電子部品搬送装置、電子部品検査装置、部品加工装置および移動体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。