以下、本発明に係るコネクタについて、コネクタが適用可能な輸液セットとの関係に基づき詳細に説明する。なお、コネクタは、輸液セットへの適用に限定されないことは勿論である。
コネクタ10は、既述したように、患者に輸液を行う輸液ラインにおいて、複数のチューブ12同士を接続する機能を有しており、例えば、図1に示すような輸液セット14に適用される。この輸液セット14は、上流側が図示しない輸液バックに接続されるとともに、下流側が図示しない留置針に接続され、輸液バックから患者に輸液剤を投与する輸液ラインとして構築される。
輸液セット14を流通する輸液剤としては、薬液、補正用電解質液、生理食塩水等、生体に投与し得るあらゆる流体が含まれる。また、輸液剤が薬液である場合は、例えば、鎮静薬、静脈麻酔薬、麻酔系鎮痛薬、局所麻酔薬、非脱分極性筋弛緩薬、昇圧薬、降圧薬、冠血管拡張薬、利尿薬、抗不整脈薬、気管支拡張薬、止血剤、ビタミン剤、抗生剤、脂肪乳剤等の種々の薬剤を選択することができる。
輸液セット14のチューブ12には、例えば、輸液バックから供給される輸液剤の流量を視認可能な点滴筒16、輸液剤の流量を調整するクレンメ18、輸液ラインに存在する空気を排出(又は供給)するエアベントフィルター20、チューブ12を閉塞するクランプ22等が設けられる。なお、輸液セット14は、図1に示す構成に限定されないことは勿論であり、上述した部材以外にも、輸液ラインに配設される種々の部材(例えば、輸液ポンプや逆流防止弁等)を適用することができる。
輸液セット14のチューブ12は、可撓性を有する管体であり、輸液剤の流路を構成する。コネクタ10は、上記のような輸液セット14に適用される場合、例えば、クレンメ18とエアベントフィルター20の間に配置される。すなわち、コネクタ10は、点滴筒16から下流に延在する第1チューブ12aと、エアベントフィルター20の上流に延在する第2チューブ12bとの間を流通可能に接続する。また、コネクタ10は、第1チューブ12aと第2チューブ12bによって構成されるメインラインに対し、別ラインとして構成される第3チューブ12cが接続可能な3ポートコネクタとなっている。
なお、コネクタ10は、上記の配設位置に限定されず、輸液セット14の所望箇所に配設することが可能である。また、輸液セット14(輸液ライン)には、コネクタ10が1つ配設されるだけでなく、複数配設されてもよい。
以下、本実施形態に係るコネクタ10の具体的な構成について詳述していく。図2に示すように、コネクタ10は、メインラインを構成する第1チューブ12aが接続される第1ポート24と、同じくメインラインを構成する第2チューブ12bが接続される第2ポート26と、別ラインを構成する第3チューブ12cが接続される第3ポート28とを有する。第1及び第2ポート24、26は、輸液剤の流路を内部に有するハウジング30(筐体)に設けられている。第3ポート28は、ハウジング30と別の部材からなるキャップ32(蓋体)、支持体34(図4参照)及び弁体36によって構成され、各部材がハウジング30に組み付けられることで構築される。
ハウジング30とキャップ32は、互いに接続されることで、輸液剤の流路38a(図4参照)を内部に有するコネクタ10の本体38として構成される。支持体34及び弁体36は、この本体38内に収容され、弁体36の上面のみがキャップ32の開口部40から露出される。
コネクタ10は、成形加工の容易性や低コスト化等を考慮して、ハウジング30、キャップ32及び支持体34が樹脂材料により成形されている。この樹脂材料としては、チューブ12よりも剛性を有するものを適用することが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
図2及び図3に示すように、ハウジング30は、有底筒状のコネクタ基部42を中央部に有し、第1ポート24及び第2ポート26はこのコネクタ基部42の側周面に連結されている。第1ポート24は、略円筒状に形成され、コネクタ基部42からメインラインの上流に向かって直線状に延出している。この第1ポート24の内部には、輸液剤を流通可能な第1ポート流路44が軸方向に沿って延設されている。
第1ポート24は、延出端に向かって緩やかに縮径する雄型のルアーテーパとして構成され、第1チューブ12aの管内(内腔)に挿入される。また、第1ポート24のコネクタ基部42近くの外周面には、周方向に沿って突起部46が形成されている。この突起部46を越えるまで第1チューブ12aを進入させることで、第1チューブ12aと第1ポート24が液密に接続される。
一方、第2ポート26は、コネクタ基部42を挟んだ第1ポート24の反対側で第1ポート24と同形状に形成され、コネクタ基部42からメインラインの下流に向かって直線状に延出している。この第2ポート26の内部には、輸液剤を流通可能な第2ポート流路48が軸方向に沿って延設されている。すなわち、第1及び第2ポート24、26は、互いの軸心が一致し直線状に一列に並ぶように形成され、これにともない第1及び第2ポート流路44、48も直線状に連通している。コネクタ10は、この直線状に連なる第1及び第2ポート流路44、48をメインラインの流路(以下、メインライン流路50という)とし、メインライン流路50を流れる第1輸液剤をスムーズに流通可能としている。
有底円筒状のコネクタ基部42は、その側周面において第1及び第2ポート24、26を連結支持する厚みを有する。コネクタ基部42の内部には、第1ポート流路44と第2ポート流路48の間を連通する内部流路52が形成されている。内部流路52は、メインライン流路50の一部を担い、メインライン流路50を直線状に結ぶように延設されている。また、内部流路52の軸方向中央部には、第1輸液剤の流通を上下方向(キャップ32の接続方向)に誘導する案内壁部54が形成されている。この案内壁部54については、後に詳述する。
一方、コネクタ基部42の上部側は、キャップ32及び支持体34を取り付けるための取付部56として構成されている。取付部56は、コネクタ基部42の上面を円形状に切り欠かれて形成されており、中心部分にて内部流路52を露出する円形状の露出口58と、平坦状に形成され露出口58の周囲を囲う配置部60と、配置部60の外側で第1及び第2ポート24、26の根本部上に形成された引掛壁62及び溝部64とを含む。配置部60には支持体34が配置され、引掛壁62にはキャップ32の係止爪66が係止されるように構成されている。
露出口58の直径は、内部流路52の幅よりも大きく形成されており、内部流路52は、この露出口58の中央部を溝状に切り欠くように延在している。内部流路52を構成する一対の側壁52a、52aと露出口58の口縁の間には、所定角度に傾斜したストッパ部59が形成されている。ストッパ部59は、第3ポート28にオスコネクタ100が挿入される際に、弁体36の所定以上の弾性変形を規制することで、オスコネクタ100が弁体36のスリット86を貫通することを防止する機能を有している。
第3ポート28は、上述したようにキャップ32、支持体34及び弁体36により構成される接続端子であり、取付部56に固定接続されることで、第1及び第2ポート24、26の軸方向に対し直交方向に設けられる。すなわち、コネクタ10は、メインライン流路50に対し第3ポート28の分岐角度が90°となるTポートコネクタとして構成される。第3ポート28には、第3チューブ12cのオスコネクタ100(挿入体)が接続される。
図2及び図4に示すように、キャップ32は、弁体36を内部に収容し、第3チューブ12cのオスコネクタ100と接続可能な外形に形成されている。このキャップ32は、コネクタ基部42に接続される下部側のフランジ部68と、フランジ部68から上方向に所定長さ延出する端子部70とを有する。
フランジ部68は、コネクタ基部42の配置部60を覆う外径に形成されている。端子部70を挟んだフランジ部68の周縁の所定の対称位置には、径方向外側に突出する一対の係止爪66が連設されている。一対の係止爪66は、互いの間隔が一対の引掛壁62よりも若干短い鈎状に形成され、コネクタ基部42の溝部64に嵌め込まれることで、引掛壁62に引っ掛かるように構成されている。
端子部70は、フランジ部68より小さい直径を有する筒状に形成され、その内部には軸方向(上下方向)に沿って孔部72が形成されている。この孔部72の上部側には、径方向内側に狭まった開口部40が形成され、開口部40の下側には、開口部40より大径に形成され、支持体34及び弁体36を収容可能な収容部74が設けられている。
開口部40は、端子部70の上縁部から下側に突出するリング状の突起部70aに囲まれることで、所定の内径(弁体36が挿入可能な内径)を有するように構成される。また、端子部70の外周面には、ルアーロック方式のオスコネクタを螺合するための螺旋状の突条70bが形成されている。
ここで、輸液セット14の別ラインとして、コネクタ10に接続される第3チューブ12cのオスコネクタ100について、図4を参照して説明する。このオスコネクタ100は、例えば、ISOにより規格化されたスリップルアー方式のオスコネクタが適用される。具体的には、オスコネクタ100は、コネクタ10(キャップ32)内部に挿入される挿入筒102を有する。
挿入筒102は、軸方向に直線状に延在し、コネクタ10との接続時には、先端部(図4中の下端部)が弁体36のスリット86を押し広げる構成となっている。この挿入筒102の内部には、第3チューブ12cから供給される第2輸液剤を流通可能な流通路104が形成されている。つまり、流通路104は、別ラインの流路(以下、別ライン流路110という)として構成されている。
また、挿入筒102の外周面は、先端部に向かって縮径するテーパ面102aに形成されている。すなわち、挿入筒102は、コネクタ10内に所定量挿入した位置の胴体部の外径がキャップ32の開口部40の内径に一致し、先端部の外径が胴体部よりも若干小径に形成されている。挿入筒102は、コネクタ10内への進出にともないテーパ面102aが開口部40に嵌合することで、第3ポート28(キャップ32、支持体34、弁体36)との接続がなされる。
なお、第3ポート28に接続されるオスコネクタは、上記のスリップルアー方式のオスコネクタ100に限定されないことは勿論である。例えば、図4において破線で示すように、挿入筒102の周囲を囲う接続筒106が設けられ、接続筒106の内周面に設けられた螺旋状の突起108がキャップ32の突条70bに螺合されるルアーロック方式のオスコネクタ100Aを適用してもよい。
一方、第3ポート28の支持体34は、内部流路52から弁体36を所定間隔離間した位置に支持する機能を有する。すなわち、第3ポート28とオスコネクタ100の接続においては、オスコネクタ100(挿入筒102)を一定以上挿入する分の空間部が必要となる。支持体34は、その上部において弁体36を支持するとともに、上下に延在する貫通孔76により前記空間部を構築している。
支持体34は、コネクタ基部42の配置部60に配置される鍔部78と、この鍔部78の上面から上方に突出した支持筒80とを有する。また、支持筒80の上部の外径は、胴体部分よりも小径に形成された保持部82に構成されており、この保持部82の外側に弁体36の固定部84が嵌められるようになっている。
貫通孔76は、鍔部78及び支持筒80の内部を貫通形成されている。この貫通孔76は、支持体34が配置部60に配置された状態で露出口58に連通する。貫通孔76は、第3ポート28内の流路として構成され、別ライン流路110からメインライン流路50に第2輸液剤を流通させる。つまり、本体38内の流路38aは、第1及び第2ポート流路44、48、内部流路52、及びこの貫通孔76によって構成される。また、貫通孔76は、挿入筒102の挿入にともない、該挿入筒102と弾性変形した弁体36とが移動可能となっており、貫通孔76及び開口部40は弁体36の変位を許容可能な空間として構成されている。
第3ポート28の弁体36は、他の部材と異なり弾性材料により成形されることで、オスコネクタ100の挿入にともない弾性変形可能な弾性力を有している。弁体36を構成する弾性材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系等の合成ゴムやポリイソプレン等の天然ゴム、又はウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、或いは他のエストラマー等が挙げられる。
弁体36は、オスコネクタ100の挿入及び離脱に基づき開閉するスリット86を中央部に備え、このスリット86の開閉により別ライン流路110を連通及び遮断する機能を有している。弁体36は、比較的厚い膜厚を有する円盤状に形成され、キャップ32及び支持体34に挟持される外側の固定部84と、固定部84に連設された内側の変形部88とを備える。変形部88の上部には、開口部40内に挿入される上部膨出部88aが形成されている。
スリット86は、変形部88の上下に貫通形成され、上部膨出部88aが開口部40に収容された状態(弾性変形していない状態)で閉塞状態となる。このスリット86は、オスコネクタ100の押し込みに従って、変形部88が固定部84と相対的に変位(弾性変形)することで徐々に開口していく。
第3ポート28は、オスコネクタ100が挿入されていない状態では、変形部88下側の貫通孔76が空洞状となり、プライミング前の空気やメインライン流路50を流通する第1輸液剤等が貫通孔76に滞留する停滞流体を生じさせる。そのため、コネクタ10は、内部流路52上に案内壁部54を備えることで、第1ポート流路44から流入する第1輸液剤を貫通孔76側に案内し、停滞流体を排出するように構成されている。以下、この内部流路52と案内壁部54の構成について、より具体的に説明していく。
図3及び図5A〜図5Cに示すように、内部流路52は、断面略方形状に形成され軸方向に延在する通路であり、コネクタ基部42内まで延在する断面円形状の第1及び第2ポート流路44、48に連なるとともに、露出口58により上部側が開口している。この内部流路52は、軸方向に沿って延在する一対の側壁52a、52a及び底壁52bを有し、軸方向両端に第1及び第2ポート流路44、48との境界部となる端壁52c、52cを有する。内部流路52の端壁52cは、第1及び第2ポート流路44、48の断面積よりも広い面積を有し、その中央部に第1及び第2ポート流路44、48が形成(穿設)されている。
案内壁部54は、内部流路52を軸方向(すなわち、上流及び下流)に分断するように形成されている。この案内壁部54は、内部流路52の軸方向中央部から第1ポート24側に肉厚に形成された膨出部90によって構成される。膨出部90は、内部流路52を構成する一対の側壁52a、52a、底壁52bに連設されている。また、膨出部90は、底壁52bから第1及び第2ポート流路44、48の穿設位置を越えて上方に突出する。そして、ストッパ部59の中央底部が、膨出部90の上面にちょうど連なるように形成されている。
膨出部90の第1ポート流路44側には、第1ポート流路44から流入される第1輸液剤を貫通孔76に案内する上流側壁面92が立設され、第2ポート流路48側には、貫通孔76に流入した第1輸液剤又は停滞流体を第2ポート流路48に案内する下流側壁面94が形成されている。また、上流側壁面92には、幅方向中央部を上方に向かって切り欠いた切り欠き溝96(切り欠き部)が形成されている。
上流側壁面92は、第1ポート流路44と内部流路52の境界(端壁52c)近くに立設されている。この上流側壁面92は、切り欠き溝96を囲む平坦状に形成され、第1ポート流路44の軸心に対し直交している。従って、内部流路52の第1ポート流路44との連通箇所には、一対の側壁52a、52a、底壁52b、端壁52c及び上流側壁面92により構成され、容積が充分に小さい流入空間53が形成される。
流入空間53は、第1ポート流路44と貫通孔76間に介在する第1輸液剤用の流路であり、第1ポート流路44の断面積S1に対し流入空間53の断面積S2が狭いことで、第1輸液剤を貫通孔76に勢いよく流動させる機能を有する。つまり、膨出部90の上流側壁面92は、端壁52cの近傍位置に立設されることで、流入空間53の断面積S2を充分に狭いものとしている。特に、上流側壁面92の上部側は、第1ポート流路44の形成高さよりも突出することで、端壁52cに対向しており、流入空間53の貫通孔76寄りの断面積S2が狭くなっている。
第1ポート流路44の断面積S1と流入空間53の断面積S2の比は、特に限定されるものではないが、例えば、断面積S1に対する断面積S2の割合が75%以下に設定されるとよい。例えば、第1ポート流路44の内径φ(直径)が2mmに形成されたコネクタ10の場合、端壁52cと上流側壁面92の間隔Dを、約0.8mmに設定する。この設定では、第1ポート流路44の断面積S1は3mm2以上となり、流入空間53の断面積S2は約2mm2となる。このような関係が成立することにより、第1ポート流路44から流入空間53に流入した第1輸液剤をつまらせることなく、その流速を充分に速めることができ、流入空間53から貫通孔76内に導かれる第1輸液剤の勢いが大きく増す。
また、切り欠き溝96は、側面視(図5B参照)で、その上部側が内部流路52の軸方向中央部付近まで膨出部90を切り欠いて形成され、膨出部90の上面から滑らかな曲面を描いて上流側壁面92の下部に連なっている。すなわち、切り欠き溝96は、膨出部90の上面に開口96aを有するとともに、上流側壁面92に開口96bを有する。この切り欠き溝96は、コネクタ10とオスコネクタ100の接続状態において、流入空間53に流入された第1輸液剤を挿入筒102の流通路104内に導く機能を有している。
上流側壁面92に連なる切り欠き溝96の幅Wは、コネクタ10のサイズや第1輸液剤の流量等を勘案して適宜設定されることが好ましく、特に、第1ポート流路44の開口(内径φ)よりも狭く形成されるとよい(図5C参照)。これにより、切り欠き溝96内の断面積が狭くなり、コネクタ10とオスコネクタ100の未接続状態では、第1ポート流路44から流入空間53に流入された第1輸液剤の一部が切り欠き溝96に向かうものの、この一部は切り欠き溝96に沿って流速が速められる。また、第1輸液剤の他部は、流入空間53(上流側壁面92)により流速が速められる。そのため、第1輸液剤は、貫通孔76に勢いよく案内される。
また、粘性が高い第1輸液剤をコネクタ10に流通させた場合、第1輸液剤は、第1ポート流路44において軸心側の速度が速く、内面側の速度が遅く流動する。しかしながら、第1ポート流路44の内面側を流れる第1輸液剤は、流入空間53に流入されると、上流側壁面92にちょうど対向(衝突)することになり、流入空間53の狭い断面積S2によって、その流速が容易に速められる。
一方、上流側壁面92の反対側に設けられる膨出部90の下流側壁面94は、テーパ状に形成されており、貫通孔76又は挿入筒102の流通路104から流動する第1又は第2輸液剤をスムーズに第2ポート流路48に案内可能となっている。なお、下流側壁面94の形状は、特に限定されないことは勿論であり、例えば、第2ポート流路48の軸線に直交する壁面に形成されていてもよい。
本実施形態に係るコネクタ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。先ず、図4を参照して、第3チューブ12cを接続せずに、第1及び第2チューブ12a、12bのみをコネクタ10に接続した場合について詳述する。
つまり、コネクタ10は、第1ポート24に第1チューブ12aが接続され、第2ポート26に第2チューブ12bが接続されており、第3ポート28は、弁体36により閉塞状態となっている。このため、第3ポート28内の貫通孔76は、弁体36下側の空間部の容積が大きくなっている。
メインラインを流通する第1輸液剤は、第1チューブ12aから第1ポート24に流入される。この第1輸液剤は、第1ポート流路44を通してコネクタ基部42内を直線的に移動し、内部流路52の上流側の流入空間53に流入される。そして、内部流路52上に立設されている上流側壁面92によって、その移動が上方向(第3ポート28側)に案内される。
上述したとおり、流入空間53の断面積S2は、第1ポート流路44の断面積S1よりも狭く形成されている。このため、第1ポート流路44から流入空間53に流入された第1輸液剤は、流入空間53において流速が速められる。よって、第1輸液剤は、流入空間53から貫通孔76に向かって勢いよく流れ込むことになり、貫通孔76の流体(第1輸液剤及び停滞流体を含む)全体に大きな流動(流体の乱れ)を生じさせる。
すなわち、貫通孔76に勢いよく流入した第1輸液剤は、貫通孔76内に満遍なく流動し、内部の流体の撹拌を促す。そのため、仮に貫通孔76に停滞流体が存在しても、停滞流体が撹拌され、第1輸液剤に簡単に混合される。この第1輸液剤は、停滞流体を含んだ状態で貫通孔76から膨出部90を越えた内部流路52の下流側に移動する。これにより、停滞流体が貫通孔76から容易に排出される。
貫通孔76から内部流路52に移動された第1輸液剤は、傾斜する下流側壁面94に沿って第2ポート流路48にスムーズに流動する。そして、第1輸液剤は、第2ポート流路48内を介して第2チューブ12b内に供給され、第2チューブ12bから患者に投与される。
次に、図6を参照して、第1〜第3チューブ12a〜12cがコネクタ10に接続されている場合について詳述する。第3ポート28とオスコネクタ100の接続状態では、挿入筒102が弁体36の変形部88を貫通孔76の下側に押し込む。これにより、変形部88は、膨出部90上部のストッパ部59により規制されるまで弾性変形(変位)する。そのため、変形部88の底面が膨出部90の近接位置まで変位しており、流入空間53の上部は変形部88により略閉塞状態となる。一方、変形部88に形成されているスリット86は、変形部88の弾性変形により、内部流路52の軸方向中央部において開口状態となる。
膨出部90の軸方向中央部まで切り欠かれた切り欠き溝96は、その上面側の開口96aがスリット86に部分的に重なる(対向する)。このため、第1ポート流路44から流入空間53に流入された第1輸液剤は、上流側壁面92の開口96bから切り欠き溝96に入り込み、切り欠き溝96に沿って挿入筒102の流通路104に流入される。この際、切り欠き溝96は、第1ポート流路44よりも幅狭に形成されていることで、第1輸液剤の流速を速めることができ、第1輸液剤を流通路104に勢いよく流入させる。
流通路104には、第3チューブ12cを介して第2輸液剤が供給されているため、第1輸液剤と第2輸液剤は流通路104内において容易に合流する。そして、混合した第1及び第2輸液剤は、流体の流動に基づき、流通路104から内部流路52の下流側に流動し、下流側壁面94に沿って第2ポート流路48にスムーズに案内され、さらに第2チューブ12bを介して患者に投与される。
以上のように、本実施形態に係るコネクタ10によれば、貫通孔76寄りの断面積S2を第1ポート流路44の断面積S1よりも狭くする上流側壁面92を備えることで、断面積S2が狭い流入空間53から貫通孔76に向かう第1輸液剤の勢いを増加させることができる。このため、貫通孔76内では、勢いが増した第1輸液剤により流体の流動を促進し、停滞流体を貫通孔76から容易に排出することができる。これにより、コネクタ10は、輸液の安全性を大きく高めることができ、輸液剤を患者に良好に投与することができる。
この場合、上流側壁面92が第1ポート流路44に対向していることで、コネクタ10内(内部流路52)の形状等を大きく変更することなく、内部流路52上に断面積が狭くなった流入空間53を簡単に形成することができる。そして、上流側壁面92が第1ポート流路44の軸方向に対し略直交方向に対向していることで、第1ポート流路44の近くに上流側壁面92を配置することができるため、第1ポート流路44から流出された第1輸液剤を貫通孔76に容易に導くことができる。
また、コネクタ10は、上流側壁面92に連なるとともに内部流路52の軸方向中央部に向かって切り欠かれた切り欠き溝96を有することで、上流側壁面92により流入空間53を形成しても、切り欠き溝96を介してオスコネクタ100の別ライン流路110とメインライン流路50(内部流路52)を容易に連通することができる。これにより、コネクタ10にオスコネクタ100を接続した状態においても、第1ポート24から流入した第1輸液剤を第2ポート26へスムーズに流通させることができる。
さらに、上流側壁面92が内部流路52の底壁52bから貫通孔76を変位した弁体36の底面付近まで延設されることで、第3ポート28にオスコネクタ100が接続され弁体36が変位した状態では、流入空間53が弁体36により実質的に閉塞される。このため、流入空間53に流入された第1輸液剤は、切り欠き溝96により流速が速められて流通路104にスムーズに導かれる。
なお、本実施形態に係るコネクタ10に設けられる案内壁部54は、上述した構成に限定されるものではなく、種々の構成を適用できることは勿論である。例えば、図7に示すように、案内壁54Aは、本実施形態に係る切り欠き溝96よりも浅い切り欠き溝97を膨出部90に形成してもよい。すなわち、膨出部90の上面側の切り欠き溝97の開口97aは、本実施形態に係る開口96aと同位置に形成されるが、上流側壁面92に形成される切り欠き溝97の開口97bは、上流側壁面92の高さ方向略中間部まで切り欠かれる。従って、上流側壁面92の平坦部分を広くとることができ、第1ポート流路44から流入される第1輸液剤を、上流側壁面92にて良好に受けて上方に流動させることが可能となる。これにより、流入空間53に流入される第1輸液剤を貫通孔76に一層勢いよく導くことができる。
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。