JP6237563B2 - 易重合性化合物の貯蔵タンク設備及び貯蔵方法 - Google Patents
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Description
尚、本明細書において、(メタ)アクリル酸類とは、(メタ)アクリル酸及びこれらの酸とアルコールとから得られる(メタ)アクリル酸エステルを総称するものであり、そのうち少なくとも一種を指す。
特許文献1には、熱重合性モノマーを冷却することの記載はあるが、タンク内の熱重合性モノマー全体をいかに均一に冷却するかについては記載も示唆もない。特許文献1における冷却パイプからの伝熱で冷却された周囲のタンク内保存液は、冷却に伴う液比重の増加によりタンク底部に沈降する。貯蔵タンクへの入熱は太陽光照射が最たるものであり、これによりタンク内液面付近の液が最も温められる。温められて比重の小さくなった液は液面付近に留まり、更に温められる。つまり保存液の温度差は拡大することとなる。冷却パイプをタンク内の高い位置にも設置することで、液面付近の冷却も可能だが、保存液量が少なくなると該冷却パイプ及びそれを固定する部材の一部がタンク内気相部に露出し、該露出部に付着した液がその長い滞留時間により重合物を生じることになる。特に揮発した重合性モノマーが該露出部で冷却された場合、凝縮液は重合防止剤を含んでおらず、より短時間で重合物を生じることになる。
また、以下において、易重合性化合物としてアクリル酸を貯蔵する態様について説明するが、本発明は、アクリル酸に限らず、(メタ)アクリル酸類等の易重合性化合物の貯蔵に適用することができる。
6は貯蔵液の受け入れライン、7は貯蔵液の送り出しラインであり、それぞれバルブ6A,7Aが設けられている。バルブ6Aの吐出側とバルブ7Aの吸入側直近で各々ライン6,7から分岐する第2の循環ライン5が設けられている。図1中、Lは貯蔵液の液面である。
以下、循環ライン2の循環配管2Aを経てタンク本体1から抜き出される液を「循環流出液」と称し、循環ライン2を経てタンク本体1に戻される液を「循環戻り液」と称す場合がある。
ここでいうジェットノズルとは、吐出液の流速を速める為の装置であり、該装置内におけるプロセス流体の圧力損失を運動エネルギー、つまり吐出速度に変換するものを指す。
また、第2の流出口12は、タンク本体1の底面から5〜60cm程度の高さ位置に設けることが好ましい。即ち、第2の流出口12は、この流出口12からの循環戻り液の流出で、タンク本体1内の貯蔵液中に撹拌効果に優れた旋回流を形成するために、タンク本体1内の貯蔵液の液面より下に位置する(即ち、液面が流出口12より上)ことが好ましい。貯蔵液量が少ない場合でも液面下に位置する為、第2の流出口12はより低位置の設置が望ましいが、底面に近づくことで床面と流出液との抵抗が増加し、効率が下がる為、ある程度の高さ位置に設けるか、あるいは流出口を、水平方向に対して30°未満の範囲で上方へ向けることが好ましい。旋回流形成時の上向きの運動ベクトルは、下向きのベクトルと干渉して局所的な混合に費やされてしまい、全体的な混合である旋回流形成の効率は下がる為である。
液滞留部を最小化する為、第1及び第2の流出口ともに単数が最良であるが、配管の太さやジェットノズルの大きさを下げる等の理由により分岐配管2Caや2Cbを2〜8の範囲で更に分岐してもよい。このとき、タンク本体内液に触れる分岐配管の合計長は、できるだけ短くすることが好ましい。
該流入口13の設置位置や形状を変えることで、旋回流の形成を更に高めることが可能であるが、循環ポンプ3の吸引側であるため許容圧力損失が小さく、吐出に比べて吸引で形成される流体のベクトルは拡散し易いため、流出口12に比べて得られる効果は限定的であり、採用の是非は経済性に照らし合わせて決められる。
タンク本体1の容量を大きくすることにより、貯蔵量に幅広く対応することが可能となる。また、その際に、貯蔵液量が変化して、タンク本体1内の液高が変化しても、本発明の貯蔵タンク設備であれば、それに応じて第1の流出口11からの吐出流量や流速を制御することにより、液高に応じた上昇流を形成することができる。
このようなことから、本発明によれば、液高によらず、タンク内液及びその液温の均一化を促進し、局所的な滞留部分の発生を抑制することにより重合反応を防止し、貯蔵液を長期間安定的に保存することが可能となる。
プロピレンを原料として、接触気相酸化反応を行う反応工程、反応工程で得られるアクリル酸含有ガスを水で吸収しアクリル酸水溶液を得る捕集工程、得られたアクリル酸水溶液から水、酢酸、無水マレイン酸、アクリル酸ダイマーなどの不純物を分離し、製品アクリル酸を得る精製工程からなるアクリル酸の製造工程により、純度99.8重量%のアクリル酸を得た。このアクリル酸を図1〜3に示すアクリル酸エステル製造用原料貯蔵タンク設備で貯蔵した。
循環ポンプ3は常時作動させてタンク本体1内のアクリル酸を冷却器4で冷却しながら循環ライン2及び5を経て循環させた。タンク本体1内の液量は平均550m3であり、タンク本体1内のアクリル酸の液高は7.1〜9.3mの範囲であった。
この貯蔵タンク設備の各部の仕様は次の通りである。
タンク本体1の底部中心部に鉛直上方を指向して開口する、先端にジェットノズルを具備する流出口。
吐出開口部:タンク本体1の底面から15cmの高さ位置
ジェットノズルの圧力損失:180kPa
流出口11からの吐出流量:12m3/h
<第2の流出口12>
水平方向に対して15°上方を指向して、タンク本体1の内周面から、タンク本体1の半径の1/12の位置に開口するように、タンク本体1の底面から10cmの高さ位置に設けられた、先端にジェットノズルを具備する流出口。
ジェットノズルの圧力損失:120kPa
流出口12からの吐出流量:30m3/h
交差角度θ1:5゜
流入口との角度θ3:10゜
<流入口13>
開口部の上端が床面から10cmに設けられた、先端側ほど拡開する扇型の流入口。
交差角度θ2:0゜
実施例1と同様にして、但し第1の流出口を閉止し、第2の流出口のみから循環戻り液を吐出流量42m3/h(実施例1の双方の流出量に相当する分)で流出させたところ、最も上位の温度センサと最も下位の温度センサとで、液温の差は一時間毎の平均データとして最大で2.4℃、平均で1.4℃であり、タンク本体1内のアクリル酸の液温は実施例1に比べ不均一であることが確認された。尚、該期間中の日中最高気温は31℃であった。
実施例1と同様にして、但し3日間、第2の流出量を1/5の6m3/hとし、第1の流出量を2倍の24m3/hとしたところ、全循環液量が実施例1の約70%と少なかったため、各温度センサによる液温の差異は一時間毎の平均データとして最大で1.8℃、平均で0.9℃であり、実施例1よりも劣るものとなったが、比較例1よりも改善されていた。尚、該期間中の日中最高気温は31℃であった。
2 循環ライン(第1の循環ライン)
3 循環ポンプ
4 冷却器(熱交換器)
5 第2の循環ライン
11 第1の流出口
12 第2の流出口
13 流入口
Claims (15)
- 易重合性化合物の液を貯蔵するための貯蔵タンク設備であって、
円筒状のタンク本体と、
該タンク本体内の液を流入口から吸引し、少なくとも1つの流出口から該タンク本体内に流出させる循環ラインと、
該循環ライン内に設けられたポンプ及び冷却器と
を有する貯蔵タンク設備において、
前記流出口として、前記タンク本体の底部において上方を指向して開口する第1の流出口と、前記タンク本体の内周面近傍に配置された第2の流出口とを備えており、
該第2の流出口は、前記液をタンク本体の内周面に沿う方向に流出させる方向を指向して開口していることを特徴とする易重合性化合物の貯蔵タンク設備。 - 前記第1の流出口はタンク本体の底部の中心部に設置されている請求項1に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 前記第1の流出口はジェットノズルを具備する請求項1又は2に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 前記タンク本体に、設置高さが異なる複数の温度センサが設置されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 前記タンク本体の容量が500m3以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 前記易重合性化合物が(メタ)アクリル酸である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 前記第2の流出口の指向方向は水平方向であり、かつ該第2の流出口の先端と前記タンク本体の中心とを結ぶ線の延長線が該タンク本体内周面に交わる点における該タンク本体内周面の接線と、該第2の流出口からの液の流出方向との交差角度が−30°〜30°である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 前記第2の流出口はジェットノズルを具備する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 前記流入口と前記第2の流出口とは前記タンク本体の周方向において互いに逆方向に開口しており、該流入口の先端と前記タンク本体の中心とを結ぶ線と、該第2の流出口の先端と該タンク本体の中心とを結ぶ線との交差角度が90°以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 前記流入口の指向方向は水平方向であり、かつ該流入口の先端と前記タンク本体の中心とを結ぶ線の延長線が該タンク本体内周面に交わる点における該タンク本体内周面の接線と、該流入口への液の流入方向との交差角度が−30°〜30°である請求項9に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 前記流入口は、先端側ほど拡開した構造である請求項9又は10に記載の易重合性化合物の貯蔵タンク設備。
- 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の貯蔵タンク設備によって、前記タンク本体内の易重合性化合物の液を前記循環ラインで循環させながら貯蔵する易重合性化合物の貯蔵方法であって、該タンク本体内の易重合性化合物の液面が前記第2の流出口よりも上にある易重合性化合物の貯蔵方法。
- 前記タンク本体内の易重合性化合物の液高に応じて、前記第1の流出口における流出量を調整する請求項12に記載の易重合性化合物の貯蔵方法。
- 前記第1の流出口はジェットノズルを具備するものであり、該ジェットノズル出口における圧力損失が30〜500kPaである請求項12又は13に記載の易重合性化合物の貯蔵方法。
- 前記易重合性化合物が(メタ)アクリル酸である請求項12乃至14のいずれか1項に記載の易重合性化合物の貯蔵方法。
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