JP6237186B2 - 被削性と転動疲労寿命特性に優れる機械構造用鋼 - Google Patents
被削性と転動疲労寿命特性に優れる機械構造用鋼 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6237186B2 JP6237186B2 JP2013256498A JP2013256498A JP6237186B2 JP 6237186 B2 JP6237186 B2 JP 6237186B2 JP 2013256498 A JP2013256498 A JP 2013256498A JP 2013256498 A JP2013256498 A JP 2013256498A JP 6237186 B2 JP6237186 B2 JP 6237186B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- mns
- steel
- fatigue life
- rolling fatigue
- content
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
質量%で、C:0.40%〜0.70%、Si:0.01%〜2.00%(0.05%以下を除く)、Mn:0.03%〜0.40%、S:0.015%〜0.048%、Cr:0.01〜2.00%、Al:0.001〜0.050%を含有すると共に、式1及び式2を満足し、
式1:90S+2C+5√Mn<7.5、
式2:1.5<Mn/S<13.4、
(式1及び式2中における元素記号は、当該元素の含有率(質量%)の値を意味する)
残部がFeおよび不可避不純物からなり、
高周波焼入及び焼もどし後における10mm 2 の観察面内に存在する円相当径が10μm以上のMnSが5個以下であり、1mm 2 の観察面内に存在するMnSの総数が2000個以上であることを特徴とする被削性と高周波焼入後の転動疲労寿命特性の優れた機械構造用鋼にある(請求項1)。
C:0.40%〜0.70%、
C(炭素)は、転動疲労寿命特性を向上させるために必須の元素である。Cの含有によって、高周波焼入れ及び焼戻しを行なった後の硬度を向上させることができる。また、本発明鋼は熱間鍛造により部品を製造する場合があるが、Cの含有率が高すぎると、鍛造後の硬さが高くなり、鍛造ままでは必要な被削性を確保できなくなるおそれがある。さらに、C含有率が高いと高周波焼入し、焼もどし後において、部品内部(高周波焼入の影響が及んでいない内部)の靭性が低下するおそれがある。一方、Cの含有率が上記下限値よりも低い場合には、高周波焼入及び焼もどし後の硬度を十分に高めることができず、転動疲労寿命特性を十分に高めることができないおそれがある。
Si(ケイ素)は、製鋼時の脱酸材として不可欠な元素である。Siの含有により、焼入性を向上させることができる。Siの含有率が上記上限値よりも高い場合には、C含有率の範囲の説明で記載したのと同様に、鍛造ままの状態の硬さが上昇し、必要な被削性を確保できないおそれがある。一方、Siの含有率が上記下限値よりも低い場合には、Si含有による効果が十分に得られないおそれがある。
Mn(マンガン)は、必要な焼入性確保に不可欠な元素であるため、通常高周波焼入用鋼では、0.60%程度以上含有するのが普通である。また、Mnは、Sと結合しMnSを生成し被削性の向上を図るために有効な元素でもある。しかし、本発明鋼は、凝固時に晶出する粗大なMnSを極力少なくすることにより転動疲労寿命特性を改善することを特徴としており、そのために上限を公知の高周波焼入用鋼に比較して低くする必要がある。そのため、上限を0.40%とした。好ましくは、上限を0.30%とするのがよい。一方、Mn含有率が上記下限値よりも低い場合には、FeSが生成し、熱間加工性が低下するおそれがある。
S(硫黄)は、Mnと結合しMnSを生成し、被削性を向上させる効果を有する。S含有率が上記上限値よりも高い場合には、MnSが粗大化しやすく転動疲労寿命特性が低下するおそれがある。一方、S含有率が上記下限値よりも低い場合には、S含有による効果が十分に得られないおそれがある。好ましくは、S含有率は、0.026%以上とするのがよい。
Cr(クロム)は、焼入性を高める効果を発揮する元素である。特に本発明では、焼入性向上に効果的な元素であるMnを低減しているため、その焼入性の低下分をCr等の焼入性向上元素の添加により補う必要が生じる。しかし、添加しすぎると、鋳造時に粗大な炭化物が生成しやすくなるので、上限を2.00%とした。一方、Cr含有率が上記下限値よりも低い場合には、Cr含有による効果が十分に得られないおそれがある。
Al(アルミニウム)は、脱酸材として必要な元素である。しかし、Al含有率が上記上限値よりも高い場合には、酸化物系介在物が生成しやすくなるという問題がある。一方、Al含有率が上記下限値よりも低い場合には、Alによる脱酸効果が十分に得られないおそれがある。
式1における各元素記号は、当該元素の含有率(質量%)の値を意味するものである。この式1が満たされることによって、粗大なMnSの生成を抑制し、生成されるMnSを微細化することができ、一方、式1が満たされない場合には、粗大なMnSが生成されやすくなり、転動疲労寿命特性が低下するおそれがある。
式2における各元素記号は、当該元素の含有率(質量%)の値を意味するものである。この式2が満たされることにより、MnSの生成のために適したMn含有率とS含有率のバランスが保てられるため、必要とするMnSを生成させることが可能となり、優れた被削性と熱間加工性を得ることができる。一方、Mn/Sが13.4以上の場合には、微細MnSの生成量が少なくなり、被削性向上効果が低下し、Mn/Sが1.5以下の場合には、FeSが生成することによる熱間加工性が低下し、熱間鍛造時等に割れが発生しやすくなるおそれがある。
B(ホウ素)は、鋼中に固溶することで焼入性を高めることができる元素であり、上記下限値以上の添加によりこの効果を得ることができる。一方、B含有率が上記上限値を超える場合には、靱性低下の可能性があり、好ましくない。
Ti(チタン)は、Nと結合してTiNを形成し、BNの生成を抑制することができ、Bを固溶状態にすることでBの焼入性向上効果が喪失するのを防止するために必要な元素であり、Bと共に上記下限値以上の添加によりこの効果を得ることができる。一方、Ti含有率が上記上限値を超えるとTi含有による上記効果が飽和し、コストが上昇するだけとなる。
Mo(モリブデン)は、焼入性を高める元素であり、上記下限値以上の添加によりこの効果を得ることができる。一方、Mo含有率が上記上限値を超えるとMo含有による上記効果が飽和し、コストが上昇するだけとなる。なお、Mo添加に必要なフェロモリブデンは価格変動が大きく高騰することがあるため、狙いの焼入性が確保できさえすれば、その量を超えて添加するのは、仮に上記範囲内であっても、好ましくなく、必要な焼入性を確保できる範囲で、少なめに添加するよう設計することが好ましい。
Nb(ニオブ)、V(バナジウム)は、微細な炭化物を生成し、焼入れ時のオーステナイト粒を微細化し、転動疲労寿命特性及び靭性を向上させる効果を発揮する元素であり、少なくとも一方を上記下限値以上添加することによりこの効果を得ることができる。一方、Nb、Vともに上記上限値を超えて含有させても上記効果が飽和し、コストが上昇するだけとなる。
Ca(カルシウム)は、被削性の改善に有効であるが、その効果を得たい場合には、0.0005%以上の含有が必要である。但し、含有させすぎてもその効果が飽和するとともに、粗大な酸化物系介在物が生成しやすくなって転動疲労寿命特性低下の原因となるため、上限を0.0050%とした。
まず、各試料の原料の溶解、精錬及び鋳込みをVIM(Vacuum Induction Melting:真空誘導溶解装置)を用いて行い、30kgの鋼塊を得た。この鋼塊から後述に示す方法で試験片を得た。
前記VIM溶解で得た鋼塊の表層から試験片を切り出した。試験片は、直径10mmφ×長さ120mmの丸棒形状とした。
前記VIM溶解で得た鋼塊に熱間鍛造を施し自然放冷して、直径65mmφの丸棒を得た。この丸棒に、切削加工を施して、直径60mmφ×長さ390mmの試験片を得た。
前記VIM溶解で得た鋼塊に熱間鍛造を施し自然放冷して、一辺の長さLが65mmの断面正方形の角棒1を得た。この角棒1に、切削加工を施し、直径45mmφ×厚さ12mmの円盤状試験片2を得た後、高周波焼入れ・焼戻し処理を施した。円盤状試験片2の採取位置は、図2に示すごとく、上記角棒1の一辺の長さLが65mmの正方形断面において、表面から1/4Lの位置が円形の試験面となるように、幅方向中央部(1/2L)が中心となる円盤状に切り出して採取した。なお、上記高周波焼入れ・焼戻し処理の焼入れは、上記の通り切り出した円盤状試験片2を1000℃に加熱し、狙いの硬化深さが2.5mmとなるよう加熱深さを調節し、水冷する条件で行った。また、焼戻しは、上記被処理材を180℃に加熱して60分保持した後、空冷する条件で行った。
MnS観察用の試料は、上述した転動疲労寿命特性試験の場合と同様に作製した円盤状試験片2を用いた、MnSの観察面は、円盤状試験片2の表面を鏡面研磨して形成した。
試料13は、C含有率が低すぎることにより、硬度向上効果が十分に得られず、転動疲労寿命特性が劣る結果となった。
試料15は、Mn含有率が低すぎることにより、式2の値が低くなりすぎて、FeS生成に起因すると考えられる熱間加工性の低下が生じた。
試料17は、S含有率が低すぎることにより、式2を満足せず、微細な析出MnSの総数が少なくなりすぎ、被削性が劣る結果となった。
試料19は、Al含有率が高すぎることにより、介在物増加に起因すると考えられる転動疲労寿命特性の低下が生じた。
試料20は、従来高周波焼入用として使用されていたJISのS55Cであるが、S含有率が低くMn含有率が高いため、MnSの個数が少なく、被削性が大きく劣るものであった。なお、今回用いた従来鋼はSが0.005%と比較的少ない鋼であったため被削性が悪く転動疲労寿命は悪い結果は得られなかったが、S55CでもSが多くなった場合には、被削性は改善するものの、転動疲労寿命が低下すると考えられる。
2 転動疲労寿命特性用試験片
Claims (4)
- 質量%で、C:0.40%〜0.70%、Si:0.01%〜2.00%(0.05%以下を除く)、Mn:0.03%〜0.40%、S:0.015%〜0.048%、Cr:0.01〜2.00%、Al:0.001〜0.050%を含有すると共に、式1及び式2を満足し、
式1:90S+2C+5√Mn<7.50、
式2:1.5<Mn/S<13.4、
(式1及び式2中における元素記号は、当該元素の含有率(質量%)の値を意味する)
残部がFeおよび不可避不純物からなり、
高周波焼入及び焼もどし後における10mm 2 の観察面内に存在する円相当径が10μm以上のMnSが5個以下であり、1mm 2 の観察面内に存在するMnSの総数が2000個以上であることを特徴とする被削性と高周波焼入後の転動疲労寿命特性の優れた機械構造用鋼。 - 請求項1に記載の機械構造用鋼において、上記機械構造用鋼は、上記残部のFe及び不可避不純物の一部に代えて、更に、質量%で、B:0.0005%〜0.0050%とTi:0.01%〜0.20%の2種及び/又はMo:0.01%〜1.00%を含有することを特徴とする機械構造用鋼。
- 請求項1又は2に記載の機械構造用鋼において、上記機械構造用鋼は、上記残部のFe及び不可避不純物の一部に代えて、更に、質量%で、Nb:0.01%〜1.00%と、V:0.01%〜1.00%の少なくとも一方を含有することを特徴とする機械構造用鋼。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械構造用鋼において、上記機械構造用鋼は、上記残部のFe及び不可避不純物の一部に代えて、更に、質量%で、Ca:0.0005%〜0.0050%を含有することを特徴とする機械構造用鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013256498A JP6237186B2 (ja) | 2013-12-11 | 2013-12-11 | 被削性と転動疲労寿命特性に優れる機械構造用鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013256498A JP6237186B2 (ja) | 2013-12-11 | 2013-12-11 | 被削性と転動疲労寿命特性に優れる機械構造用鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015113493A JP2015113493A (ja) | 2015-06-22 |
JP6237186B2 true JP6237186B2 (ja) | 2017-11-29 |
Family
ID=53527589
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2013256498A Active JP6237186B2 (ja) | 2013-12-11 | 2013-12-11 | 被削性と転動疲労寿命特性に優れる機械構造用鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6237186B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6350156B2 (ja) * | 2014-09-12 | 2018-07-04 | 愛知製鋼株式会社 | クランクシャフト及びクランクシャフト鋼材 |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6021358A (ja) * | 1983-07-15 | 1985-02-02 | Nippon Steel Corp | 冷間鍛造用強靭鋼 |
DE69430835T2 (de) * | 1993-03-12 | 2003-02-13 | Nippon Steel Corp | Stahlmaterial für induktionsgehärteten schaftteil und damit hergestellter schaftteil |
JP3620935B2 (ja) * | 1996-02-09 | 2005-02-16 | Jfeスチール株式会社 | 冷間鍛造性、高周波焼入れ性および転動疲労特性に優れた機械構造用鋼 |
JP3842888B2 (ja) * | 1998-01-30 | 2006-11-08 | 新日本製鐵株式会社 | 冷間加工性と高強度特性を兼備した高周波焼入れ用鋼材の製造方法 |
-
2013
- 2013-12-11 JP JP2013256498A patent/JP6237186B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2015113493A (ja) | 2015-06-22 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6860532B2 (ja) | 黒鉛鋼用鋼材および被削性が向上した黒鉛鋼 | |
JP7417091B2 (ja) | 鋼材 | |
JP6760378B2 (ja) | 機械構造用鋼 | |
WO2015050152A9 (ja) | 時効硬化性鋼 | |
JP6729686B2 (ja) | 高周波焼入れ用非調質鋼 | |
JP6620490B2 (ja) | 時効硬化性鋼 | |
KR20190034273A (ko) | 기계 구조용 강 | |
JP6238114B2 (ja) | 高速度工具鋼、刃先用材料および切断工具、ならびに、刃先用材料の製造方法 | |
JP6465959B2 (ja) | 時効硬化性鋼及び時効硬化性鋼を用いた部品の製造方法 | |
JP6477382B2 (ja) | 快削鋼 | |
JP2012052153A (ja) | 高周波焼入れ用鋼及びそれを用いて製造されるクランクシャフト | |
JP6237186B2 (ja) | 被削性と転動疲労寿命特性に優れる機械構造用鋼 | |
JP6828591B2 (ja) | 軸受用鋼及び軸受部品 | |
JP6477383B2 (ja) | 快削鋼 | |
JP6051985B2 (ja) | 軸受部材及び軸受用鋼 | |
JP2011080100A (ja) | 機械構造用鋼およびその製造方法 | |
CN105814224A (zh) | 钢锻件用高强度钢以及钢锻件 | |
WO2015050151A1 (ja) | 時効硬化性鋼 | |
JP5837837B2 (ja) | 工具寿命に優れた硬度が300hv10以上の高硬度bn系快削鋼 | |
JP2016222985A (ja) | 高周波焼入れ用非調質鋼 | |
JP6350156B2 (ja) | クランクシャフト及びクランクシャフト鋼材 | |
JP6299321B2 (ja) | 被削性と疲労強度に優れ、硬さばらつきの小さい省v型熱間鍛造非調質部品及びその製造方法 | |
JP5706765B2 (ja) | 被削性に優れた高周波焼入れ用鋼、及びその製造方法 | |
JP7205066B2 (ja) | 高周波焼入れ用非調質鋼 | |
JP7205067B2 (ja) | 高周波焼入れ用非調質鋼 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20160902 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20170523 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20170718 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20170822 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20171003 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20171016 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6237186 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |