JP6051985B2 - 軸受部材及び軸受用鋼 - Google Patents

軸受部材及び軸受用鋼 Download PDF

Info

Publication number
JP6051985B2
JP6051985B2 JP2013054972A JP2013054972A JP6051985B2 JP 6051985 B2 JP6051985 B2 JP 6051985B2 JP 2013054972 A JP2013054972 A JP 2013054972A JP 2013054972 A JP2013054972 A JP 2013054972A JP 6051985 B2 JP6051985 B2 JP 6051985B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mns
formula
steel
content
bearing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013054972A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014181358A (ja
Inventor
孔明 牧野
孔明 牧野
浩行 水野
浩行 水野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Aichi Steel Corp
Original Assignee
Aichi Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aichi Steel Corp filed Critical Aichi Steel Corp
Priority to JP2013054972A priority Critical patent/JP6051985B2/ja
Publication of JP2014181358A publication Critical patent/JP2014181358A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6051985B2 publication Critical patent/JP6051985B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Rolling Contact Bearings (AREA)

Description

本発明は、軸受用鋼及びこれを用いて作製した軸受部材に関する。
自動車や産業機械には、多くの軸受部材が使用されている。軸受部材は、様々な形態のものがあるが、少なくとも、他の部材を接触させて転動させる転動面を備えている。そのため、軸受部材は優れた転動疲労寿命特性を備えることが求められている。さらに、軸受部材を製造するに当たっては、切削加工を施すことが必要である。そのため、素材である軸受用鋼には、優れた被削性が求められる。
これまでの軸受用鋼としては、例えば特許文献1のように、転動疲労寿命特性を確保することを優先し、清浄度が非常に高い鋼を採用し、S(硫黄)を添加せずに製造したものがある。これは、被削性向上に有効とされるSを単純に添加した場合に粗大なMnSが生成して転動疲労寿命特性に悪影響を与えることを回避したものである。
一方、特許文献2には、被削性と転動疲労寿命特性を両立させるために、微細なMnSを多数生成させた鋼が開示されている。この鋼は、Mn/Sの比を低めに設定することで、微細なMnSを多数生成させている。しかしながら、この鋼は、Sを多量に添加してMn/Sを低下させているため、微細なMnS以外にも粗大なMnSが多数生成すると考えられ、転動疲労寿命に悪影響を与える可能性があり、また、Mn/Sの比が低すぎるため、FeSが生成して熱間加工中にFeSが溶融し、充分な熱間加工性が得られないと考えられる。
特開平2−209452号公報 特開2003−293081
本発明は、かかる背景に基づいて成されたものであり、転動疲労寿命特性に優れ、かつ、その製造過程における被削性及び熱間加工性にも優れる軸受部材及びこれに用いる軸受用鋼を提供しようとするものである。
S無添加の軸受用鋼に対して、他の添加成分組成を変更せずにSのみを添加すると、鋼中のMnSが増加して、被削性向上効果が得られる。MnSには、溶鋼から凝固する際に生じる粗大な晶出MnSと、凝固後に析出する微細な析出MnSとがあるが、上記のSの添加によるMnSの増加は、晶出MnSの増加によるものであって、析出MnSの増加はほとんどない。そのため、被削性向上効果は得られるものの、転動疲労特性は低下してしまう。
そこで、発明者らは、種々の実験を重ね、以下の知見を得て本願発明を完成させた。すなわち、第1の知見は、S無添加の軸受用鋼に対してSを添加することに加え、Mn含有量を低減させることによる有効性である。このS添加・Mn低減の有効性は、MnSの生成形態を変化させ、MnS全体量を増加させることができる一方、晶出MnS量の増加の抑制と、析出MnS量増加の促進を図ることができることである。
第2の知見は、S無添加の軸受用鋼に対してSを添加することに加え、C含有量を低減させることによる有効性である。このS添加・C低減の有効性は、凝固点を上昇させ、MnSが多量に晶出する前に凝固を終了させることによって、晶出MnS量の増加を抑制する一方、析出MnS量の増加の促進を図ることができることである。
本願発明は、上記第1の知見と第2の知見とを融合させ、すなわち、S添加に加え、Mn含有量の低減とC含有量の低減の両方を実施し、これらの3成分のバランスを図ったものである。そして、凝固点の上昇とMnS生成形態の変化による相乗的な効果を発揮させ、晶出MnS量が増加することなく析出MnS量を大幅に増加させることに成功したのである。なお、図1は、上記知見によるMnS生成形態の変化及び凝固点の上昇による効果を示す概念図である。
同図は、横軸に温度、縦軸にMnS生成量を取ったものである。横軸の右側に行くほど温度が高く、温度が徐々に低下して凝固点T1又はT2に到達した時点で凝固が完了する。この概念図において、まず、曲線Aが従来のS無添加の軸受用鋼におけるMnS生成形態を示す。この場合には、液層から晶出する晶出MnS量a1及び固相から析出する析出MnS量a2はいずれも比較的少なく、総MnS量も比較的少ない。
曲線Bは、曲線Aの場合に対して単純にSを添加した鋼のMnS生成形態を示す。この場合には、曲線Aの場合に比べて、固相から析出する析出MnS量b2はほとんど増加しないものの、液層から晶出する晶出MnS量b1が曲線Aの場合よりも増加し、その結果、総MnS量は増加する。この総MnS量の増加によって被削性が向上するものの、粗大な晶出MnS量の増加によって転動疲労寿命特性が低下する。
曲線Cは、曲線Bの場合に対してMn含有量を減少させた鋼のMnS生成形態を示す。すなわち、曲線Aの場合に対してSを添加すると共にMn含有量を減少させた例である。この場合も、曲線Bの場合に比べて、総MnS量はほとんど変化しないが、Mn含有量減少により、液層から晶出する晶出MnS量c1が曲線Bの場合よりも若干減少し、その分固相から析出する析出MnS量c2が若干増加する。これにより、曲線Bの場合とほぼ同様の被削性改善効果が得られるものの、曲線Aの場合よりも転動疲労寿命特性が大きくは改善されない。
曲線Dは、曲線Bの場合に対してC含有量を減少させた鋼のMnS生成形態を示す。すなわち、曲線Aの場合に対してSを添加すると共にC含有量を減少させた例である。この場合には、曲線Bの場合に比べて、総MnS量はほとんど変化しないが、C含有量減少による凝固点のT1からT2への上昇に伴い、MnSが多量に晶出する前に凝固を完了させることにより、液層から晶出する晶出MnS量d1が曲線Bの場合よりも若干減少し、その分固相から析出する析出MnS量d2が若干増加する。これにより、曲線Bの場合とほぼ同様の被削性改善効果が得られるものの、曲線Aの場合よりも転動疲労寿命特性は大きくは改善されない。
曲線Eは、曲線Bの場合に対してC含有量を減少させ、かつMn含有量を減少させた鋼のMnS生成形態を示す。すなわち、曲線Aの場合に対してSを添加すると共にC及びMnの含有量を減少させた例である。この場合は、曲線Bの場合に比べて、総MnS量はほとんど変化しないが、Mn含有量減少によるMnS生成形態の変化とC含有量減少による凝固点のT1からT2への上昇の効果が相俟って、液層から晶出する晶出MnS量e1が曲線Bの場合よりも大きく減少し、その分固相から析出する析出MnS量e2が大きく増加する。これにより、曲線Bの場合よりも被削性が改善し、かつ、優れた転動疲労寿命特性を曲線Aの場合と同様なレベルに維持することができる。
本発明は、上記コンセプトに基づいて完成させたものである。本発明の一態様は、対向する部材を接触させて転動させる転動面を有する軸受部材であって、
質量%で、C:0.70%〜1.10%、Si:0.01%〜2.00%、Mn:0.03%〜0.20%、S:0.015%〜0.048%、Cr:0.01〜2.00%、Al:0.001〜0.050%を含有すると共に、式1及び式2を満足し、
式1:90S+2C+5√Mn<7.5、
式2:1.5<Mn/S<13.4、
(式1及び式2中における元素記号は、当該元素の含有量(質量%)の値を意味する)
残部がFeおよび不可避不純物からなる軸受用鋼からなり、
上記転動面直下の位置において当該転動面に平行な断面を観察した場合に、10mm2の観察面内に存在するMnSのうち、円相当径が10μm以上のMnSが5個以下であることを特徴とする軸受部材にある(請求項1)。
本発明の他の態様は、質量%で、C:0.70%〜1.10%、Si:0.01%〜2.00%、Mn:0.03%〜0.20%、S:0.015%〜0.048%、Cr:0.01〜2.00%、Al:0.001〜0.050%を含有すると共に、式1及び式2を満足し、
式1:90S+2C+5√Mn<7.5、
式2:1.5<Mn/S<13.4、
(式1及び式2中における元素記号は、当該元素の含有量(質量%)の値を意味する)
残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼にある(請求項5)。
上記軸受部材は、上記特定の成分組成を有する上記軸受用鋼を用いて製造されている。この軸受用鋼は、上記式1及び式2の両方の関係式を満足するように、Mn、S及びCの含有量が規制されている。熱間加工及び切削加工を経て製造される上記軸受部材は、上記式1が満たされることにより、上記転動面直下の位置において当該転動面に平行な断面を観察した場合に、10mm2の観察面内に存在するMnSのうち、円相当径が10μm以上のMnSを5個以下とすることができる。これにより、上記軸受部材は、非常に優れた転動寿命特性を有するものとなる。
また、上記軸受用鋼が式2を満たしていることにより、微細なMnSの生成の促進と、FeS生成の抑制を図ることができ、上記軸受部材の製造過程における被削性及び熱間加工性を向上させることができる。そのため、上記軸受部材は、生産性にも優れたものとなる。
S添加、Mn含有量減少及びC含有量減少によるMnS生成形態を示す説明図。 実施例における、転動疲労寿命特性試験用試験片採取位置を示す説明図。 試料1のMnS観察結果を示す図面代用写真。 試料15のMnS観察結果を示す図面代用写真。
上記軸受用鋼における必須化学成分組成の限定理由を説明する。
C:0.70%〜1.10%、
C(炭素)は、転動疲労寿命特性を向上させるために必須の元素である。Cの含有によって、焼入れ及び焼戻しを行なった後の硬度を向上させることができる。Cの含有量が上記上限値よりも多い場合には、球状化焼鈍後の硬さが高くなり過ぎて切削性が悪化するおそれがある。一方、Cの含有量が上記下限値よりも少ない場合には、C含有による効果が十分に得られないおそれがある。
Si:0.01%〜2.00%、
Si(ケイ素)は、製鋼時の脱酸材として不可欠な元素である。Siの含有により、焼入れ性を向上させることができる。Siの含有量が上記上限値よりも多い場合には、球状化焼鈍後の硬さが高くなり過ぎて切削性が悪化するおそれがある。一方、Siの含有量が上記下限値よりも低い場合には、Si含有による効果が十分に得られないおそれがある。
Mn:0.03%〜0.20%、
Mn(マンガン)は、焼入れ性向上に有効であると共に、Sと結合しMnSを生成し被削性の向上を図るために有効な元素である。Mn含有量が上記上限値よりも多い場合には、MnSが粗大化しやすく転動疲労寿命特性が低下するおそれがある。一方、Mn含有量が上記下限値よりも低い場合には、FeSが生成し、熱間加工性が低下するおそれがある。
S:0.015%〜0.048%、
S(硫黄)は、Mnと結合しMnSを生成し、被削性を向上させる効果を有する。S含有量が上記上限値よりも高い場合には、MnSが粗大化しやすく転動疲労寿命特性が低下するおそれがある。一方、S含有量が上記下限値よりも低い場合には、S含有による効果が十分に得られないおそれがある。好ましくは、S含有量は、0.026%以上とするのがよい。
Cr:0.01〜2.00%、
Cr(クロム)は、炭化物を安定化させると共に、焼入れ性を高める効果を発揮する。Cr含有量が上記上限値よりも多い場合には、鋳造時に粗大な炭化物が生成しやすくなる。一方、Cr含有量が上記下限値よりも低い場合には、Cr含有による効果が十分に得られないおそれがある。
Al:0.001〜0.050%、
Al(アルミニウム)は、脱酸材として必要な元素である。Al含有量が上記上限値よりも多い場合には、酸化物系介在物が生成しやすいという問題がある。一方、Al含有量が上記下限値よりも少ない場合には、Alによる脱酸効果が十分に得られないおそれがある。
式1:90S+2C+5√Mn<7.5、
式1における各元素記号は、当該元素の含有量(質量%)の値を意味するものである。この式1が満たされることによって、粗大なMnSの生成を抑制し、生成されるMnSを微細化することができ、一方、式1が満たされない場合には、粗大なMnSが生成されやすくなり、転動疲労寿命特性が低下するおそれがある。
式2:1.5<Mn/S<13.4、
式2における各元素記号は、当該元素の含有量(質量%)の値を意味するものである。この式2が満たされることにより、優れた被削性と熱間加工性を得ることができる。一方、Mn/Sが13.4以上の場合には、微細MnSの生成量が少なくなり、被削性向上効果が低下し、Mn/Sが1.5以下の場合には、FeSが生成することによる熱間加工性が低下し、割れが発生しやすくなるおそれがある。
上記軸受部材は、上述したごとく、上記転動面直下の位置において当該転動面に平行な断面を観察した場合に、10mm2の観察面内に存在するMnSのうち、円相当径が10μm以上のMnSが5個以下である。MnSの観察面は、転動面を約1mm以内の研磨量の範囲で鏡面研磨して得られた転動面直下の面とした。この観察面をレーザー顕微鏡により観察することによりMnSを確認することができる。なお、円相当径は、レーザー顕微鏡により写真を撮影後、その写真を画像解析することによってMnS面積を測定して算出する。円相当径は、2×(MnS面積/π)0.5の式により求めることができる。
上記10mm2の観察面内に存在する円相当径が10μm以上のMnSが、5個以下であることにより、転動面の転動疲労寿命特性を良好に保つことが可能である。一方、上記10mm2の観察面内に存在するMnSのうち、円相当径が10μm以上のMnSが、5個を超える場合には、転動面の転動疲労寿命特性が十分に保てないおそれがある。なお、上記特定の成分組成を備えた軸受用鋼を用いることにより、従来と同様に塑性加工(熱間加工)と切削加工とを施して上記軸受部材を作製する限り、上記のMnSの条件を具備させることは容易である。
また、素材としての上記軸受用鋼においては、最終製品としての軸受部材への加工が完了していない場合であっても、軸受部材を作製する場合と同等の塑性加工を施すことにより、上記と同様の評価を行うことができる。すなわち、上記軸受用鋼に対して、少なくとも最終製品を得る場合と同等の塑性加工を加えた加工品を得、その塑性加工による伸展方向(例えば圧延加工の場合には圧延方向)に平行な断面を得る。この断面は、その加工品の厚み方向の1/4の位置とし、この断面を鏡面研磨して上記と同様にレーザー顕微鏡により観察する。ここで加工品の厚み方向1/4の位置の観察位置は、例えば、伸展方向に直交する断面形状が円形の場合には、中心から1/2rの位置(rは半径)、断面形状が正方形の場合には、一辺の長さをLとして、表面から1/4Lの位置を選択すればよい。なお、厚み方向1/4の位置を選択する理由は、上記軸受部材の転動面を作製する場合の切削代をある程度考慮するためである。
そして、上記軸受用鋼の上記観察位置での10mm2の観察面内に存在するMnSのうち、円相当径が10μm以上のMnSが、5個以下であることを確認することにより、最終製品である軸受部材における転動面の転動疲労寿命特性が良好であることを判定することが可能である。
また、上記軸受用鋼は、更に、質量%で、B:0.0005%〜0.0050%、及びTi:0.01%〜0.20%を含有してもよい(請求項2、6)。これにより、さらに転動疲労寿命特性の向上を図ることができる。
B:0.0005%〜0.0050%、
B(ホウ素)は、鋼中に固溶することで焼入れ性を高めることができる元素であり、上記下限値以上の添加によりこの効果を得ることができる。一方、B添加量が上記上限値を超える場合には、靱性低下の可能性があり、好ましくない。
Ti:0.01%〜0.20%、
Ti(チタン)は、Nと結合してTiNを形成し、BNの生成を抑制することができ、Bを固溶状態にすることで焼入れ性を高めることができる元素であり、上記下限値以上の添加によりこの効果を得ることができる。一方、Ti含有量が上記上限値を超えるとTi含有による上記効果が飽和し、コストが上昇するだけとなる。
また、上記軸受用鋼は、更に、質量%で、Nb:0.01%〜1.00%と、V:0.01%〜1.00%の少なくとも一方を含有してもよい(請求項3、7)。これにより、さらに転動疲労寿命特性の向上を図ることができる。
Nb:0.01%〜1.00%、
Nb(ニオブ)は、微細な炭化物を生成し、焼入れ時のオーステナイト粒を微細化し、靭性を向上させる効果を発揮する元素であり、上記下限値以上の添加によりこの効果を得ることができる。一方、Nb含有量が上記上限値を超えるとNb含有による上記効果が飽和し、コストが上昇するだけとなる。
V:0.01%〜1.00%、
V(バナジウム)も、微細な炭化物を生成し、焼入れ時のオーステナイトト粒を微細化し、靭性を向上させる効果を発揮する元素であり、上記下限値以上の添加によりこの効果を得ることができる。一方、V含有量が上記上限値を超えるとV含有による上記効果が飽和し、コストが上昇するだけとなる。
また、上記軸受用鋼は、更に、質量%で、Mo:0.01%〜1.00%を含有してもよい(請求項4、8)。これにより、さらに転動疲労寿命特性の向上を図ることができる。
Mo:0.01%〜1.00%、
Mo(モリブデン)は、焼入れ性を高める元素であり、上記下限値以上の添加によりこの効果を得ることができる。一方、Mo含有量が上記上限値を超えるとMo含有による上記効果が飽和し、コストが上昇するだけとなる。
上記軸受用鋼に係る実施例につき、比較例と共に説明する。本例では、表1に示すごとく、成分組成が異なる複数種類の試料を準備して、最終製品である軸受部材を作製する場合を想定した加工を加えて各種評価を行った。なお、軸受部材の製造方法は、本実施例に記載の方法に限定されるものではなく、公知の種々の方法に変更可能である。
<熱間加工性試験>
熱間加工性試験に用いる試験片は次のように作製した。まず、各試料の原料の溶解、精錬及び鋳込みをVIM(Vacuum Induction Melting:真空誘導溶解装置)を用いて行い、30kgの鋼塊を得た。この鋼塊の表層から試験片を切り出した。試験片は、直径10mmφ×長さ120mmの丸棒形状とした。
熱間加工性は、グリーブル試験機を用いた熱間引張試験によって評価した。熱間引張試験の条件は、加熱温度:1200℃、歪速度:50mm/secとした。評価は、熱間引張試験の結果から、絞りの値を求め、この値が95%以上の場合を合格、95%未満の場合を不合格とする基準により行った。
<被削性試験>
被削性試験に用いる試験片は次のように作製した。まず、各試料の原料の溶解、精錬及び鋳込みをVIMを用いて行い、30kgの鋼塊を得た。この鋼塊に熱間鍛造を施し、直径65mmφの丸棒を得た。この丸棒に、球状化焼鈍処理を施した後、切削加工を施して、直径60mmφ×長さ390mmの試験片を得た。
被削性は、旋盤により切削する場合の切削工具の摩耗量によって評価した。上記旋盤としては、森精機製SL−25旋盤を用い、上記切削工具としては、タンガロイ製SNMG120408−サーメットNS530を用いた。試験条件は、切削速度200m/sec、送り速度0.3mm/sec、切り込み:1.5mm、切削時間:8分の条件とした。試験後に切削工具の摩耗量を測定し、その値が0.3mm以下の場合を合格、0.3mmを超える場合を不合格と判定した。
<転動疲労寿命特性試験>
転動疲労寿命特性試験に用いる試験片は次のように作製した。まず、各試料の原料の溶解、精錬及び鋳込みをVIMを用いて行って、30kgの鋼塊を得た。この鋼塊に熱間鍛造を施し、一辺の長さLが65mmの断面正方形の角棒1を得た。この角棒1に、球状化焼鈍処理を施した後、粗切削加工を施し、焼入れ・焼戻し処理を施した後、仕上げ切削加工を施して、直径45mmφ×厚さ12mmの円盤状試験片2を得た。円盤状試験片2の採取位置は、図2に示すごとく、上記角棒1の一辺の長さLが65mmの正方形断面において、表面から1/4Lの位置が円形の試験面となるように、幅方向中央部(1/2L)が中心となる円盤状に切り出して採取した。なお、上記焼入れ・焼戻し処理の焼入れは、上記角棒1を粗切削加工した被処理材を840℃に加熱して35分保持した後、油冷する条件で行った。また、焼戻しは、上記被処理材を170℃に加熱して90分保持した後、空冷する条件で行った。
転動疲労寿命特性試験は、森式スラスト型転動疲労試験機を用い、最大接触面圧:5.3GPa、回転数:1500rpm、潤滑油:マシン油#30、ボールサイズ3/8インチ、ボール個数3個、温度:室温という条件で行った。転動疲労寿命の評価は、ワイブル分析により折損しない確率が90%と定義されるB10寿命が15×106以上の場合を合格、15×106未満の場合を不合格と判定した。
<MnS観察>
MnS観察用の試料は、上述した転動疲労寿命特性試験の場合と同様に作製した円盤状試験片2を用いた、MnSの観察面は、円盤状試験片2の表面を鏡面研磨して形成した。
MnSの観察は、レーザー顕微鏡を用いて2段階で行った。第1の段階では、200倍で観察し、10mm2の観察範囲内に存在するMnSのうち、円相当径が10μm以上のMnSの個数を確認した。円相当径は、レーザー顕微鏡により写真を撮影後、その写真を画像解析することによってMnS面積を測定して算出した。円相当径が10μm以上のMnSの個数が5個以下の場合を合格、5個を超える場合を不合格と判定した。
第2の段階の観察では、上記レーザー顕微鏡の倍率を1000倍とし、1mm2相当の観察範囲内に存在する全てのMnSの個数(総数)を確認した。上記総数が2000個以上の場合を好ましい範囲と判断し、2000個未満の場合を好ましくない範囲と判断した。
上記各試験の結果を表2に示す。
表2から知られるように、試料1〜10については、化学成分組成が適正な範囲にあり、かつ、上記式1及び式2を具備することにより、全ての評価項目において合格となり、転動疲労寿命特性に優れ、かつ、その製造過程における被削性及び熱間加工性にも優れることがわかった。
試料11は、C含有量が高すぎることにより、硬度が高くなりすぎて被削性が劣る結果となった。
試料12は、C含有量が低すぎることにより、硬度向上効果が十分に得られず、転動疲労寿命特性が劣る結果となった。
試料13は、Mn含有量が高すぎることにより、式1を満足せず、円相当径が10μmを超えるMnSの個数が5個を超え、転動疲労寿命特性が劣る結果となった。
試料14は、Mn含有量が低すぎることにより、式2を満足せず、FeS生成に起因すると考えられる熱間加工性の低下が生じた。
試料15は、S含有量が高すぎることにより、式1を満足せず、円相当径が10μmを超えるMnSの個数が5個を超え、転動疲労寿命特性が劣る結果となった。
試料16は、S含有量が低すぎることにより、式2を満足せず、MnSの総数が少なくなりすぎ、被削性が劣る結果となった。
試料17は、Si含有量が高すぎることにより、硬度が高くなりすぎて被削性が劣る結果となった。
試料18は、Al含有量が高すぎることにより、介在物増加に起因すると考えられる転動疲労寿命特性の低下が生じた。
MnS観察結果の代表的なものとして、試料1及び試料15のレーザー顕微鏡観察時に撮影した写真を図3及び図4に示す。同図の写真において示された黒い粒状のものがMnSである。同図から知られるように、試料1の場合には、非常に微細なMnSが多数観察されるものの、円相当径が10μmを超えるMnSはこの写真の視野内では観察されていない。試料1は、10mm2の観察面内では、表2に示すごとく、円相当径が10μmを超えるMnSは4個のみ観察された。
一方、試料15の場合には、上述したごとく式1を満足していないものであるが、図4中に示す符号aに代表されるような円相当径が10μmを超えるMnSが観察された。試料15は、10mm2の観察面内では、表2に示すごとく、円相当径が10μmを超えるMnSは21個観察された。
1 角棒
2 転動疲労寿命特性用試験片

Claims (8)

  1. 対向する部材を接触させて転動させる転動面を有する軸受部材であって、
    質量%で、C:0.70%〜1.10%、Si:0.01%〜2.00%、Mn:0.03%〜0.20%、S:0.015%〜0.048%、Cr:0.01〜2.00%、Al:0.001〜0.050%を含有すると共に、式1及び式2を満足し、
    式1:90S+2C+5√Mn<7.5、
    式2:1.5<Mn/S<13.4、
    (式1及び式2中における元素記号は、当該元素の含有量(質量%)の値を意味する)
    残部がFeおよび不可避不純物からなる軸受用鋼からなり、
    上記転動面直下の位置において当該転動面に平行な断面を観察した場合に、10mm2の観察面内に存在するMnSのうち、円相当径が10μm以上のMnSが5個以下であることを特徴とする軸受部材。
  2. 請求項1に記載の軸受部材において、上記軸受用鋼は、上記残部のFe及び不可避不純物の一部に代えて、更に、質量%で、B:0.0005%〜0.0050%、及びTi:0.01%〜0.20%を含有することを特徴とする軸受部材。
  3. 請求項1又は2に記載の軸受部材において、上記軸受用鋼は、上記残部のFe及び不可避不純物の一部に代えて、更に、質量%で、Nb:0.01%〜1.00%と、V:0.01%〜1.00%の少なくとも一方を含有することを特徴とする軸受部材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸受部材において、上記軸受用鋼は、上記残部のFe及び不可避不純物の一部に代えて、更に、質量%で、Mo:0.01%〜1.00%を含有することを特徴とする軸受部材。
  5. 質量%で、C:0.70%〜1.10%、Si:0.01%〜2.00%、Mn:0.03%〜0.20%、S:0.015%〜0.048%、Cr:0.01〜2.00%、Al:0.001〜0.050%を含有すると共に、式1及び式2を満足し、
    式1:90S+2C+5√Mn<7.5、
    式2:1.5<Mn/S<13.4、
    (式1及び式2中における元素記号は、当該元素の含有量(質量%)の値を意味する)
    残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼。
  6. 請求項5に記載の軸受用鋼において、上記残部のFe及び不可避不純物の一部に代えて、更に、質量%で、B:0.0005%〜0.0050%、及びTi:0.01%〜0.20%を含有することを特徴とする軸受用鋼。
  7. 請求項5又は6に記載の軸受用鋼において、上記残部のFe及び不可避不純物の一部に代えて、更に、質量%で、Nb:0.01%〜1.00%と、V:0.01%〜1.00%の少なくとも一方を含有することを特徴とする軸受用鋼。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の軸受用鋼において、上記残部のFe及び不可避不純物の一部に代えて、更に、質量%で、Mo:0.01%〜1.00%を含有することを特徴とする軸受用鋼。
JP2013054972A 2013-03-18 2013-03-18 軸受部材及び軸受用鋼 Expired - Fee Related JP6051985B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013054972A JP6051985B2 (ja) 2013-03-18 2013-03-18 軸受部材及び軸受用鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013054972A JP6051985B2 (ja) 2013-03-18 2013-03-18 軸受部材及び軸受用鋼

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014181358A JP2014181358A (ja) 2014-09-29
JP6051985B2 true JP6051985B2 (ja) 2016-12-27

Family

ID=51700374

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013054972A Expired - Fee Related JP6051985B2 (ja) 2013-03-18 2013-03-18 軸受部材及び軸受用鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6051985B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6350156B2 (ja) * 2014-09-12 2018-07-04 愛知製鋼株式会社 クランクシャフト及びクランクシャフト鋼材

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4812288B1 (ja) * 1969-06-21 1973-04-19
JPS4926167B1 (ja) * 1970-04-04 1974-07-06
JPH05255810A (ja) * 1991-03-05 1993-10-05 Aichi Steel Works Ltd 軸受用鋼

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014181358A (ja) 2014-09-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5135918B2 (ja) マルテンサイト系快削ステンレス鋼
JP6474348B2 (ja) 高速度工具鋼およびその製造方法
KR100740414B1 (ko) 재질 이방성이 작고 강도, 인성 및 피삭성이 우수한비조질 강 및 그의 제조 방법
JP7417091B2 (ja) 鋼材
JP6760378B2 (ja) 機械構造用鋼
JP6760375B2 (ja) 機械構造用鋼
JP5260460B2 (ja) 肌焼鋼部品およびその製造方法
JP6529234B2 (ja) 高い靭性と軟化抵抗性を有する高速度工具鋼
JP6729686B2 (ja) 高周波焼入れ用非調質鋼
JP6620490B2 (ja) 時効硬化性鋼
US9890435B2 (en) Cold work tool material and method of manufacturing cold work tool
JP6465959B2 (ja) 時効硬化性鋼及び時効硬化性鋼を用いた部品の製造方法
JP6477382B2 (ja) 快削鋼
JP6051985B2 (ja) 軸受部材及び軸受用鋼
JP5576895B2 (ja) 工具寿命に優れたbn快削鋼
JP6477383B2 (ja) 快削鋼
JP6237186B2 (ja) 被削性と転動疲労寿命特性に優れる機械構造用鋼
JP2011080100A (ja) 機械構造用鋼およびその製造方法
JP5314509B2 (ja) 機械構造用鋼
JP5837837B2 (ja) 工具寿命に優れた硬度が300hv10以上の高硬度bn系快削鋼
JP5768757B2 (ja) 機械構造用鋼
JP2016222985A (ja) 高周波焼入れ用非調質鋼
JP4687617B2 (ja) 機械構造用鋼材
JP6350156B2 (ja) クランクシャフト及びクランクシャフト鋼材
JP6299321B2 (ja) 被削性と疲労強度に優れ、硬さばらつきの小さい省v型熱間鍛造非調質部品及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151109

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160930

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161101

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161114

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6051985

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees