図1は内燃機関50Aおよびその周辺の全体構成図である。図2は内燃機関50Aの概略構成図である。図3は可変動弁機構60Aの概略構成図である。図3ではカムシャフト65とともに可変動弁機構60Aを示す。内燃機関50Aは圧縮着火式の内燃機関であり、複数(ここでは4つ)の気筒51aを有している。内燃機関50Aは吸気系10や排気系20や排気還流系40とともに図示しない車両に搭載されている。内燃機関50Aは火花点火式の内燃機関であってもよい。
吸気系10はエアフロメータ11とインタークーラ12とインテークマニホールド13とを備えている。エアフロメータ11は吸入空気量を計測する。インタークーラ12は吸気を冷却する。インテークマニホールド13は内燃機関50Aの各気筒51aに吸気を分配する。
排気系20はエキゾーストマニホールド21と触媒22とを備えている。エキゾーストマニホールド21は各気筒51aからの排気を合流させる。触媒22は排気を浄化する。吸気系10および排気系20には過給機30が設けられている。過給機30は内燃機関50Aに吸気を過給する。
排気還流系40はEGR配管41とEGRクーラ42とEGRバルブ43とを備えている。EGR配管41は吸気系10と排気系20とを連通している。具体的にはEGR配管41はインテークマニホールド13の通路集合部分とエキゾーストマニホールド21の通路集合部分とを連通している。EGRクーラ42は還流される排気を冷却する。EGRバルブ43は還流される排気の量を調節する。
内燃機関50AはECU70Aのほか、シリンダブロック51と、シリンダヘッド52と、ピストン53と、吸気弁54と、排気弁55と、燃料噴射弁56と、可変動弁機構60Aと、カムシャフト65とを備えている。ピストン53や吸気弁54や排気弁55や燃料噴射弁56は気筒51a毎に設けられている。シリンダブロック51には気筒51aが形成されている。気筒51a内にはピストン53が収容されている。シリンダブロック51の上面にはシリンダヘッド52が固定されている。燃焼室Eはシリンダブロック51、シリンダヘッド52およびピストン53に囲まれた空間として形成されている。ピストン53は燃焼室Eに隣接している。
シリンダヘッド52には、燃焼室Eに吸気を導く吸気ポート52aと、燃焼室Eからガスを排気する排気ポート52bとが形成されている。また、吸気ポート52aを開閉する吸気弁54と、排気ポート52bを開閉する排気弁55とが設けられている。吸気弁54と排気弁55とは具体的にはともに気筒51a毎に複数(ここでは2つ)設けられている。燃料噴射弁56はシリンダヘッド52に設けられており、燃焼室Eに燃料を噴射する。
可変動弁機構60Aはシリンダヘッド52に設けられている。可変動弁機構60Aはカム切替式の可変動弁機構であり、第1のカムであるカムCa、第2のカムであるカムCb、および第3のカムであるカムCcのうちから吸気弁54の駆動に使用する使用カムを選択する。カムCa、CbおよびCcはカムシャフト65に設けられており、吸気弁54の駆動に使用される複数(ここでは3つ)のカムを構成している。複数のカムは3つ以上のカムとすることができる。
カムCa、CbおよびCcは具体的には複数の気筒51aそれぞれに対応させて設けられている。したがって、カムCa、CbおよびCcは具体的には複数の気筒51aそれぞれにおいて、吸気弁54の駆動に使用される。可変動弁機構60Aは具体的には複数の気筒51aそれぞれにおいて、カムCa、CbおよびCcのうちから吸気弁54の駆動に使用する使用カムを選択する。
可変動弁機構60Aはカム当接部61とバルブ駆動部62とロッカーアーム部63とロッカーアームシャフト64とを備えている。カム当接部61、バルブ駆動部62およびロッカーアーム部63は気筒51a毎に設けられており、ユニットUを構成している。
カム当接部61はカムフォロアであり、カムCa、CbおよびCcに合わせて複数(ここでは3つ)設けられている。カム当接部61aは複数のカム当接部61のうちカムCaに当接するカム当接部を示す。カム当接部61bはカムCbに、カム当接部61cはカムCcに当接するカム当接部をそれぞれ示す。複数のカム当接部61それぞれはロッカーアーム部63に設けられている。
バルブ駆動部62はロッカーアーム部63に設けられている。バルブ駆動部62は気筒51a毎に設けられている吸気弁54の数(ここでは2つ)に合わせて複数設けられており、吸気弁54に動力を伝達する。バルブ駆動部62には具体的には例えばスクリュータペットを適用できる。バルブ駆動部62はロッカーアーム部63の一部であってもよい。
ロッカーアーム部63は動力仲介部であり、カム当接部61およびバルブ駆動部62とともにカムシャフト65から吸気弁54に伝達する動力を仲介する。ロッカーアーム部63にはロッカーアームシャフト64が挿通される。ロッカーアームシャフト64はロッカーアーム部63を揺動可能に支持する。ロッカーアームシャフト64は気筒51a毎に設けられているユニットUそれぞれに共通のシャフトとなっている。ロッカーアームシャフト64はカムシャフト65の延伸方向に沿って設けられている。
ロッカーアーム部63は具体的には複数の揺動部である揺動部63a、63b、63cを備えている。揺動部63a、63b、63cはカムシャフト65の延伸方向に沿って揺動部63b、63a、63cの順に並んで配置されている。揺動部63a、63bおよび63cはカムCa、CbおよびCcのカムプロフィールに応じて個別に揺動するとともに、カムシャフト65から吸気弁54に伝達する動力を仲介する。
第1の揺動部である揺動部63aにはカム当接部61aが設けられている。このため、揺動部63aはカムCaに応じて揺動する。第2の揺動部である揺動部63bにはカム当接部61bが、第3の揺動部である揺動部63cにはカム当接部61cがそれぞれ設けられている。このため、揺動部63bはカムCbに応じて、揺動部63cはカムCcに応じてそれぞれ揺動する。
バルブ駆動部62は揺動部63bと揺動部63cとに設けられている。したがって、ロッカーアーム部63では具体的には揺動部63a、63bおよび63cのうち揺動部63b、63cが吸気弁54を駆動する。揺動部63a、63bおよび63cそれぞれはロッカーアームシャフト64によって個別に揺動可能に支持されている。
ロッカーアーム部63はさらに複数の連結機構である連結機構631、632を備えている。連結機構631、632はともに油圧式であり、揺動部63a、63bおよび63cのうち2つの揺動部の連結と連結解除とを行う。具体的には、第1の連結機構である連結機構631は揺動部63b、63cの連結と連結解除とを行い、第2の連結機構である連結機構632は揺動部63a、63cの連結と連結解除とを行う。連結機構632はさらに揺動部63a、63b間の連結と連結解除とを行う。
なお、揺動部63aにはカムCaが吸気弁54を駆動することが可能な範囲内で、カム当接部61aをカムCaに向かって付勢する付勢部材(例えばリターンスプリング)が設けられている。このため、揺動部63aは連結が解除されている状態において、カム当接部61aがカムCaに当接するようになっている。
図4は連結機構631および632の説明図である。連結機構631は具体的には保持部H11、H12と、ピンPn11、Pn12と、スプリングSp1とを備えている。保持部H11は揺動部63bに、保持部H12は揺動部63cにそれぞれ設けられている。保持部H11、H12それぞれは吸気弁54がリフトしていない場合にカムシャフト65の延伸方向に沿って並ぶように設けられている。保持部H11、H12それぞれは有底円筒状の形状を有しており、互いに同一の内径を有している。同一であることは製造誤差の範囲内で互いに異なる場合を含む。これは以下でも同様である。
ピンPn11は保持部H11、H12のうち少なくとも保持部H11に保持される。ピンPn12は保持部H11、H12のうち保持部H12に保持される。ピンPn11、Pn12それぞれは円柱状の形状を有しており、互いに同一の外径を有している。ピンPn11、Pn12それぞれの外径は保持部H11、H12それぞれの内径よりも摺動クリアランスの分だけ小さく設定されている。
保持部H11の底部とピンPn11と間にはスプリング室G11が形成されている。スプリング室G11は同時に油圧室になっている。保持部H12の底部とピンPn12との間には油圧室G12が形成されている。スプリングSp1はスプリング室G11に設けられている。スプリングSp1はピンPn11を付勢する。
連結機構631にはOCV(オイルコントロールバルブ)81が接続されている。OCV81は油路R11を介してスプリング室G11に接続されるとともに、油路R12を介して油圧室G12に接続されている。OCV81はOFFである場合に油圧室G12から油圧を開放すると同時に、スプリング室G11に油圧Pinを伝達する。OCV81はONである場合に油圧室G12に油圧Pinを伝達すると同時に、スプリング室G11から油圧を開放する。油圧Pinは連結機構631、632に共通の連結機構631、632への供給油圧であり、OCV81、82を介して連結機構631、632に伝達される。油圧Pinはメインギャラリの油圧とすることができる。
連結機構631はOCV81がOFFである場合に、揺動部63b、63c間の連結を行う。具体的にはこの場合、吸気弁54がリフトしていない状態において、スプリングSp1、およびOCV81を介してスプリング室G11に伝達される油圧PinがOCV81を介して油圧室G12から開放される油圧に抗してピンPn11、Pn12をともに移動させる。結果、ピンPn11が保持部H11およびH12に保持されることで、揺動部63b、63c間の連結が行われる。OCV81がOFFのとき、連結機構631は油圧Pinが発生していない場合でも、スプリングSp1でピンPn11、Pn12をともに移動させることで、揺動部63b、63c間の連結を行うことができる。
連結機構631はOCV81がONである場合に、揺動部63b、63c間の連結解除を行う。具体的にはこの場合、吸気弁54がリフトしていない状態において、OCV81を介して油圧室G12に伝達される油圧PinがスプリングSp1の付勢力およびOCV81を介してスプリング室G11から開放される油圧に抗してピンPn11、Pn12をともに移動させる。結果、ピンPn11が保持部H11に保持されることで、揺動部63b、63c間の連結解除が行われる。
連結機構632は具体的には保持部H21、H22、H23と、ピンPn21、Pn22、Pn23と、スプリングSp2とを備えている。保持部H21は揺動部63bに、保持部H22は揺動部63aに、保持部H23は揺動部63cにそれぞれ設けられている。保持部H21、H22、H23それぞれは吸気弁54がリフトしていない場合にカムシャフト65の延伸方向に沿って並ぶように設けられている。保持部H21、H23は有底円筒状の形状を有しており、保持部H22は円筒状の形状を有している。保持部H21、H22、H23は互いに同一の内径を有している。
ピンPn21は保持部H21、H22のうち少なくとも保持部H21に保持される。ピンPn22は保持部H22、H23のうち少なくとも保持部H22に保持される。ピンPn23は保持部H23に保持される。ピンPn21、Pn22、Pn23それぞれは円柱状の形状を有しており、互いに同一の外径を有している。ピンPn21、Pn22、Pn23それぞれの外径は保持部H21、H22、H23それぞれの内径よりも摺動クリアランスの分だけ小さく設定されている。
保持部H21の底部とピンPn21との間には油圧室G21が形成されている。保持部H23の底部とピンPn23との間にはスプリング室G22が形成されている。スプリングSp2はスプリング室G22に設けられている。スプリングSp2はピンPn23を付勢する。連結機構632にはOCV82が接続されている。OCV82は油路R2を介して油圧室G21に接続している。OCV82はONである場合に油圧室G21に油圧Pinを伝達し、OFFである場合に油圧室G21から油圧を開放する。
連結機構632はOCV82がONである場合に、揺動部63a、63c間の連結を行う。具体的にはこの場合、吸気弁54がリフトしていない状態において、OCV82を介して油圧室G21に伝達される油圧PinがスプリングSp2の付勢力に抗してピンPn21、Pn22、Pn23をともに移動させる。結果、ピンPn22が保持部H22および保持部H23に保持されることで、揺動部63a、63c間の連結が行われる。連結機構632はOCV82がONである場合に、揺動部63a、63b間の連結も行う。揺動部63a、63b間の連結はピンPn21が保持部H21および保持部H22に保持されることで行われる。
連結機構632はOCV82がOFFである場合に、揺動部63a、63c間の連結解除を行う。具体的にはこの場合、吸気弁54がリフトしていない状態において、スプリングSp2がOCV82を介して油圧室G21から開放される油圧に抗してピンPn21、Pn22、Pn23をともに移動させる。結果、ピンPn21が保持部H21に保持されるとともにピンPn22が保持部H22に保持されることで、揺動部63a、63c間の連結解除が行われる。連結機構632はOCV82がOFFである場合に、揺動部63a、63b間の連結解除も行う。揺動部63a、63b間の連結解除は、ピンPn21が保持部H21に保持されることで行われる。
このように連結機構631では具体的にはピンPn11が揺動部63b、63cの連結と連結解除とを行う。また、連結機構632ではピンPn22が揺動部63a、63cの連結と連結解除とを行う。ピンPn11、Pn22はともにロック部材に相当する。ピンPn11は第1のロック部材、ピンPn22は第2のロック部材とすることができる。連結機構632では、ピンPn22の代わりに揺動部63a、63bの連結と連結解除とを行うピンPn21をロック部材としてもよい。連結機構632では、ピンPn21、Pn22のうち少なくともいずれかをロック部材とすることができる。油路R11、R12、R2それぞれはロッカーアームシャフト64を介して連結機構631、632のうち対応する連結機構に接続するように設けることができる。
図5(a)から図5(c)はカム切替状態の説明図である。図5(a)はカムCbを使用カムとする場合を示す。図5(b)はカムCb、Ccを使用カムとする場合を示す。図5(c)はカムCaを使用カムとする場合を示す。図5(a)から図5(c)ではユニットUとともにカムシャフト65とリフト曲線La、Lb、Lcとを示す。リフト曲線Laは吸気弁54がカムCaのカムプロフィール通りに駆動する場合に得られるリフト曲線である。リフト曲線Lbは吸気弁54がカムCbのカムプロフィール通りに駆動する場合に、リフト曲線Lcは吸気弁54がカムCcのカムプロフィール通りに駆動する場合に得られるリフト曲線である。
図5(a)に示すように、可変動弁機構60Aでは連結機構631で揺動部63b、63cの連結を行い、且つ連結機構632で揺動部63a、63cの連結解除と、揺動部63a、63bの連結解除とを行っている状態で、カムCbを使用カムとすることができる。また、図5(b)に示すように、連結機構631で揺動部63b、63cの連結解除を行い、且つ連結機構632で揺動部63a、63cの連結解除と、揺動部63a、63bの連結解除とを行っている状態で、カムCb、Ccを使用カムとすることができる。また、図5(c)に示すように、連結機構631で揺動部63b、63cの連結を行い、且つ連結機構632で揺動部63a、63cの連結と、揺動部63a、63bの連結とを行っている状態で、カムCaを使用カムとすることができる。
カムCa、Cb、Ccはカムシャフト65の延伸方向に沿ってカムCb、Ca、Ccの順に並んで配置されている。カムCa、CbおよびCcは互いに異なるカムプロフィールを有している。リフト曲線La、Lb、Lcが示すように、カムCa、Cb、CcのカムプロフィールはカムCaのほうがカムCbよりも、カムCbのほうがカムCcよりも吸気弁54のリフト量が大きくなるように設定されている。換言すれば、カムCa、Cb、Ccのカムプロフィールはリフト曲線La内にリフト曲線Lbが、リフト曲線Lb内にリフト曲線Lcが含まれるように設定されている。
可変動弁機構60Aはカム切替モードとして複数のモードを有している。カム切替モードは使用カムの切替態様毎に区別されている。使用カムの切替態様は複数存在する使用カムの使用パターンのうちいずれか2つの使用パターン間における一方の使用パターンから他方の使用パターンへの切替というかたちで特定できる。使用カムの使用パターンには具体的には使用カムをカムCbとする第1のパターンと、使用カムをカムCb、Ccとする第2のパターンと、使用カムをカムCaとする第3のパターンとの計3つのパターンが存在する。
カム切替モードは具体的には次に示す第1から第3のモードを含む。第1のモードは使用カムの切替態様がカムCbからカムCb、Ccへの切替である場合である。第2のモードは使用カムの切替態様がカムCbからカムCaへの切替である場合である。第3のモードは使用カムの切替態様がカムCb、CcからカムCaへの切替である場合である。可変動弁機構60Aがカム切替モードとして有する複数のモードは具体的にはここでは第1から第3のモードと、使用カムの切替態様が第1から第3のモードとは逆の態様となる第4から第6のモードそれぞれとの計6つのモードとなっている。
図1等に示すECU70Aは電子制御装置であり、ECU70AにはEGRバルブ43や、燃料噴射弁56や、OCV81、82が制御対象として電気的に接続されている。また、エアフロメータ11や、クランク角度θを検出するためのクランク角センサ91や、内燃機関50Aに対する加速要求を行うアクセル開度センサ92や、油圧P1、P2を検知する油圧センサ93、94がセンサ・スイッチ類として電気的に接続されている。油圧P1はスプリング室G11の油圧であり、油圧P2は油圧室G21の油圧である。油圧P1はスプリング室G11から、油圧P2は油圧室G21から油圧検出用の油路を介してそれぞれ検出することができる。ECU70Aではクランク角センサ91の出力に基づきエンジン回転数である回転数NEが検出される。
ECU70AではCPUがROMに格納されたプログラムに基づき、必要に応じてRAMの一時記憶領域を利用しつつ処理を実行することで、例えば以下に示す判定部や決定部が実現される。なお、これらの構成は例えば複数の電子制御装置において実現されてもよい。
判定部は使用カムの切替に応じて変化する油圧の変化態様に基づき、ロック部材としてのピン(具体的にはここではピンPn11、Pn22のうち少なくともいずれか)の状態を判定する。具体的には、判定部は連結機構631、632のうち使用カムの切替時に連結或いは連結解除を行う連結機構において吸気弁54がリフトしていない間にロック部材としてのピンの移動に応じて変化する油圧(以下、対象油圧と称す)に基づき、ロック部材としてのピンの状態を判定する。対象油圧は判定に用いる油圧であり、具体的にはここでは油圧P1、P2のうち少なくともいずれかである。
決定部はカム切替モードに基づき、油圧P1、P2のうち少なくともいずれかに対象油圧を決定する。対象油圧はカム切替モードに応じて油圧P1、P2のうち少なくともいずれかに予め特定しておくことができる。対象油圧は時間的要素とともに検出される油圧となっている。対象油圧は具体的には例えばクランク角度θに応じて得られる油圧とすることができる。
判定部は具体的には、対象油圧が油圧P1である場合に、油圧P1に基づきピンPn11の状態を判定する。また、対象油圧が油圧P2である場合に、油圧P2に基づきピンPn22の状態を判定する。また、対象油圧が油圧P1、P2である場合にピンPn11、Pn21の状態を判定する。
判定部は具体的には、対象ピンが作動したか否か(より具体的には作動を開始したか否か)を判定する第1の判定を行う。対象ピンは連結機構631、632のうち使用カムの切替時に連結或いは連結解除を行う連結機構におけるロック部材としてのピンであり、具体的にはピンPn11、Pn22のうち少なくともいずれかである。また、判定部は使用カムの切替が完了したか否かを判定する第2の判定を行う。第2の判定を行うにあたり、判定部は具体的には吸気弁54がリフトしていない間に検出およびストアされた対象油圧の値および変化幅に基づき、対象ピンの動作完了を判定する。
図6は判定についての説明図である。図6では使用カム切替時の対象油圧の変化の一例を吸気弁54のリフト量およびOCV81のON、OFFとともに示す。図6では対象油圧とOCV81のON、OFFとを実線で、吸気弁54のリフト量を破線でそれぞれ示す。図6ではカム切替モードが第4のモード(すなわち、使用カムの切替態様がカムCb、CcからカムCbへの切替)であり、対象油圧が油圧P1である場合を示す。図6では油圧室G12の油圧である油圧P1´も併せて示す。所定値α1は使用カムの切替に応じた対象油圧の変化開始を検出するための値である。
第1の判定につき、この例で判定部は具体的には、吸気弁54がリフトしていない間に検出およびストアされた対象油圧において、初期値iniと最小値minとの差分の大きさが、所定値α3よりも大きい場合に対象ピンが作動したと判定する。吸気弁54がリフトしていない間とは具体的にはベース円区間であり、ベース円区間は使用カムのベース円部が吸気弁54のリフト量を決定する区間である。所定値α3は対象ピンの移動開始によって発生する圧力変化(具体的にはこの例では圧力低下)を検出するための値である。
このように第1の判定を行う判定部は、使用カムの切替に応じて変化する油圧の変化態様であって、対象ピンの作動開始時の変化態様に基づき、対象ピンが作動したか否かを判定する。判定部はさらに所定時間が経過するまでの間に対象ピンが作動したか否かを判定することで、対象ピンがロックしているか否かを判定する。所定時間は例えば正常時における使用カムの切替完了許容時間とすることができる。
第2の判定につき、この例で判定部は具体的には吸気弁54がリフトしていない間に検出およびストアされた対象油圧の最小値minおよび変化幅max−minに基づき、対象ピンの動作が完了したか否かを判定する。そして、最小値minが所定値α2よりも大きく、且つ変化幅max−minが所定値βよりも小さい場合に、対象ピンの動作が完了したと判定する。
変化幅max−minは対象油圧の最大値maxと最小値minとの差分の大きさである。所定値βは対象油圧の変動が収束したか否かを判定するための値である。所定値α2は対象油圧が対象ピンの動作完了後に通過しなくなる値に設定されている。このように第2の判定を行う判定部は、使用カムの切替に応じて変化する油圧の収束態様に基づき、対象ピンの動作完了を判定する。第2の判定を行うにあたり、対象油圧はベース円区間毎にストアすることができる。
所定値α1、α2、α3、βの具体的な値は例えば対象油圧が油圧P1である場合と、対象油圧Pが油圧P2である場合とで互いに異なっていてよい。また、所定値α1、α2、α3、βの具体的な値は例えば油圧Pinに応じて変更されてよい。
対象油圧はこの例で供給圧となる油圧P1の代わりに、この例で背圧となる油圧P1´であってもよい。この場合、判定部は例えばカム切替モードが第4のモードである場合には、吸気弁54がリフトしていない間に検出およびストアされた油圧P1´において、初期値iniと最大値maxとの差分の大きさが、所定値α3´よりも大きい場合に対象ピンが作動したと判定できる。また、最大値maxが所定値α2´よりも小さく、且つ変化幅max−minが所定値β´よりも小さい場合に、対象ピンの動作が完了したと判定できる。
所定値α1´、α2´、α3´、β´は所定値α1、α2、α3´、βと同様にして設定できる。最大値maxは油圧P1´が対象油圧である場合の対象油圧の値に相当する。したがって、対象油圧の値は具体的には、対象油圧が供給圧である場合には最小値min、対象油圧が背圧である場合には最大値maxとすることができる。判定部は使用カムの切替要求があった場合に、ロック部材としてのピンの状態を判定することができる。
次にECU70Aが行う制御である第1の制御の一例を図7に示すフローチャートを用いて説明する。図7では第4のモードで使用カムの切替が開始された場合について示す。本フローチャートは使用カムの切替要求があった場合に開始することができる。ECU70Aは油圧P1を検出し(ステップS1)、検出した油圧P1が所定値α1を上回ったか否かを判定する(ステップS2)。
ステップS2で否定判定であれば、ECU70AはタイマーをONにし(ステップS3)、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。そして、否定判定であればステップS1に戻り、肯定判定であればOCV81に異常があると判定する(ステップS5)。ステップS5の後にはステップS1に戻る。ステップS5の後には本フローチャートを終了してもよい。
ステップS2で肯定判定であれば、ECU70Aはベース円区間であるか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11で肯定判定であれば、ECU70Aは油圧P1[i]をストアする(ステップS12)。油圧P1[i]はi番目のベース円区間の油圧P1であることを示す。番号iはベース円区間が新たなベース円区間になる毎に更新される番号であり、初期値は1である。ステップS12の後にはステップS1に戻る。この場合、その後のルーチンにおいて、ステップS11で否定判定されるまでの間、ステップS12で油圧P1[i]がストアされることになる。
ステップS11で否定判定であれば、ECU70AはフラグFがOFFであるか否かを判定する(ステップS21)。フラグFは対象ピンが作動したと判定したことを示すフラグである。肯定判定であれば、ECU70Aはストアした油圧P1[i]において、初期値iniと最小値minとの差分の大きさが、所定値α3よりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。肯定判定であれば、ECU70Aは対象ピンが作動したと判定し、フラグFをONにする(ステップS23)。ステップS23の後には、ストアした油圧P1[i]をクリアし(ステップS29)、ステップS1に戻る。
ステップ22で否定判定であれば、ECU70Aは所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS24)。所定時間が経過したか否かは、例えば番号iが所定数よりも大きいか否かで判定できる。所定数は例えば機関運転状態に応じて設定されてよい。ステップS24で肯定判定であれば、ECU70Aは対象ピンがロックしていると判定する(ステップS25)。ステップS25の後にはステップS1に戻る。ステップS25の後には本フローチャートを終了してもよい。ステップS24で否定判定であれば、ステップS29に進む。
ステップS21で否定判定であれば、ECU70Aはストアした油圧P1[i]において、変化幅max−minが所定値βよりも小さいか否かを判定する(ステップS26)。また、ステップS21の肯定判定に続き、ストアした油圧P1[i]において、最小値minが所定値α2よりも大きいか否かを判定する(ステップS27)。ステップS26またはS27で否定判定であれば、ステップS29に進む。
ステップS26およびS27で肯定判定であれば、ECU70Aは対象ピンの動作が完了したと判定する(ステップS28)。ステップS28の後にはステップS1に戻る。ステップS28の後には本フローチャートを終了してもよい。
次に内燃機関50Aの主な作用効果について説明する。内燃機関50Aは使用カムの切替に応じて変化する油圧の変化態様に基づき、ロック部材としてのピンの状態を判定することで、可変動弁機構60Aによる使用カムの切替状態を例えば判定精度の面で好適に判定できる。具体的には、内燃機関50Aは吸気弁54がリフトしていない間に検出およびストアされた対象油圧の値および変化幅max−minに基づき、対象ピンの動作完了を判定することで、使用カムの切替完了をタイミング面で好適に判定できる。
内燃機関50Aは使用カムの切替に応じて変化する油圧の変化態様であって、対象ピンの作動開始時の変化態様に基づき、対象ピンが作動したか否かを判定することで、対象ピンの作動開始タイミングを判定することもできる。また、所定時間が経過するまでの間に対象ピンが作動したか否かを判定することで、対象ピンがロックしているか否かを判定することもできる。
内燃機関50Aは具体的には吸気弁54がリフトしていない間に検出およびストアされた対象油圧において、対象油圧が供給圧である場合には初期値iniと最小値minとの差分の大きさが所定値α3よりも大きい場合に、対象油圧が背圧である場合には初期値iniと最大値maxとの差分の大きさが所定値α3´よりも大きい場合に、対象ピンが作動したと判定することで、対象ピンが作動したか否かを判定することができる。
本実施例にかかる内燃機関は次に示す点以外、図2に示す内燃機関50Aと実質的に同一である。実施例2に係る内燃機関は、図2において、可変動弁機構60Aに代えて別の可変動弁機構を有し(以下、可変動弁機構60Bと言う)、ECU70Aに代えて別のECUを有している(以下、ECU70Bと言う)。また、実施例2に係る内燃機関は、図2に示す油圧センサ93、94に代えて別の油圧センサを有している(以下、油圧センサ95という)。このように構成された実施例2の内燃機関を以下、内燃機関50Bと言う。
可変動弁機構60BはユニットUの代わりに後述するユニットU´を備える点以外、可変動弁機構60Aと実質的に同一である。ECU70Bは実施例1で前述した判定部の代わりに後述する判定部が実現される点と、決定部が実現されない点と、油圧センサ93、94の代わりに油圧センサ95がセンサ・スイッチ類として電気的に接続される以外、ECU70Aと実質的に同一である。なお、内燃機関50Aにさらに変更を加えることで、内燃機関50Aに内燃機関50Bの構成要件をさらに付加することも可能である。
図8はユニットU´を示す図である。ユニットU´は連結機構631、632に油圧を供給する油路R11、R12およびR2とは異なる油路である油路R3がさらに設けられている点以外、ユニットUと実質的に同一である。なお、ここでは油路R3の有無によるロッカーアーム部63の違いについては符号で特に区別していない。また、図8では油路R11、R12およびR2については図示省略している。油路R3は吸気弁54がリフトしていない状態で揺動部63a、63b、63cを貫通するように設けられている。油路R3は吸気側において複数の気筒51間でロッカーアーム部63によって共有されている。油路R3は潤滑のためのオイル供給を行う潤滑系油路を兼ねている。潤滑系油路は具体的にはラッシュアジャスタへのオイル供給を行う油路となっており、可変動弁機構60Bではバルブ駆動部62が具体的にはラッシュアジャスタとなっている。
油路R3には油圧センサ95が設けられている。油圧センサ95は具体的には油路R3のうち複数の揺動部63a、63bおよび63cよりも下流側の部分に設けられている。このため、油圧センサ95は油路R3が伝達する油圧P3を検知する。油圧P3は具体的には、複数の揺動部63a、63bおよび63cから油路R3によって伝達される油圧である。ECU70Bでは油圧P3に基づき、使用カムの切替状態を判定する判定部が実現される。
図9(a)から図9(d)は油圧P3に基づく判定方法の説明図である。図9(a)は使用カムがカムCaの場合における油圧P3の変化を示す。図9(b)は使用カムがカムCbの場合における油圧P3の変化を示す。図9(c)は使用カムがカムCb,Ccの場合における油圧P3の変化を示す。図9(d)はリフト曲線La、Lb、Lcを示す。図9(a)から図9(d)において、横軸のクランク角度は共通となっている。
使用カムがカムCaの場合には、連結機構631がピンPn11で揺動部63b、63cを連結するとともに、連結機構632がピンPn22で揺動部63a、63cを連結する。このためこの場合には、揺動部63a、63b、63cが一体となってカムCaに応じて揺動する。結果、図9(a)に示すように油圧P3は変化しない。
使用カムがカムCbの場合には、連結機構631がピンPn11で揺動部63b、63cを連結するとともに、連結機構632がピンPn22で揺動部63a、63cを非連結にする。このためこの場合には、揺動部63b、63cが一体となってカムCbに応じて揺動する一方、揺動部63aはカムCaに応じて揺動する。この場合、揺動方向において揺動部63aと揺動部63b、63cとの間にずれが生じることで、油路R3が遮断される。結果、図9(b)に示すように揺動方向において揺動部63aと揺動部63b、63cとの間にずれが生じている間、油圧P3が低下する。
使用カムがカムCb、Ccの場合には、連結機構631がピンPn11で揺動部63b、63cを非連結にするとともに、連結機構632がピンPn22で揺動部63a、63cを非連結にする。このためこの場合には、揺動部63aはカムCaに応じて、揺動部63bはカムCbに応じて、揺動部63cはカムCcに応じてそれぞれ揺動する。この場合、揺動方向において揺動部63a、63b間にずれが生じることで、油路R3が遮断されるとともに、揺動部63a、63c間にずれが生じることで、油路R3が遮断される。結果、図9(c)に示すように揺動部63a、63b間および揺動部63a、63c間にずれが生じている間に油圧P3が低下する。
このため、判定部は具体的には油圧P3の低下の有無を含む低下態様に基づき、ロック部材としてのピンの状態に応じた使用カムの切替状態を判定する。低下態様は例えば低下期間である。低下態様は例えば油圧P3の低下期間、低下タイミングおよび回復タイミングのうち少なくともいずれかであってもよい。このようにして使用カムの切替状態を判定するにあたり、判定部は具体的には使用カムがカムCa、Cb、Ccのうちいずれのカムであるかを判定する。かかる判定部は具体的には、使用カムの切替状態として使用カムを判定する。
次にECU70Bが行う制御である第2の制御の一例を図10に示すフローチャートを用いて説明する。ECU70Bは油圧P3を検出し(ステップS21)、検出した油圧P3が低下したか否かを判定する(ステップS22)。肯定判定であれば、ECU70Bは油圧P3の低下期間の計測を開始する(ステップS23)。続いてECU70Bは油圧P3が回復したか否かを判定する(ステップS24)。否定判定であればステップS24に戻る。
ステップS24で肯定判定であれば、ECU70Bは油圧P3の低下期間の計測を終了し(ステップS25)、油圧P3の低下期間が所定期間(ここでは使用カムがカムCbである場合における油圧P3の低下期間)であるか否かを判定する(ステップS26)。肯定判定であれば、ECU70Bは使用カムがカムCbであると判定する(ステップS28)。否定判定であれば、ECU70Bは使用カムがカムCb、Ccであると判定する(ステップS29)。ステップS28、S29の後にはステップS21に戻る。
ステップS22で否定判定であれば、ECU70Bは1燃焼サイクルの間、継続して油圧P3の低下がないか否かを判定する(ステップS27)。否定判定であればステップS21に戻る。肯定判定であればECU70Bは使用カムがカムCaであると判定する(ステップS30)。ステップS30の後にはステップS21に戻る。
次に内燃機関50Bの主な作用効果について説明する。内燃機関50Bは油圧P3の低下の有無を含む低下態様に基づき、使用カムの切替状態として使用カムを判定する。この場合、内燃機関50Bは油路R3に油圧センサ95を設けることで、使用カムの切替状態を判定することができる。このため、内燃機関50Bは使用カムの切替状態をコストや搭載性の面で好適に判定できる。
内燃機関50Bは具体的には吸気側において複数の気筒51間でロッカーアーム部63が油路R3を共有する構成であることで、1つの油圧センサ95で気筒51毎の使用カムを判定できる。すなわち、使用カムの切替状態をコストや搭載性の面で好適に判定するにあたって、内燃機関50Bは具体的にはかかる構成とすることができる。
内燃機関50Bは油路R3が潤滑のためのオイル供給を行う潤滑系油路を兼ねる構成であることで、油路を確保するためのロッカーアーム部63の大型化を防止或いは抑制できる。また、油路R3が潤滑系油路を兼ねることは、潤滑系油路であれば、揺動部63aから63cの揺動に応じた油路R3の遮断によって、オイル供給が間欠供給となっても特段支障がない点でも好適である。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば上述した実施例ではバルブが吸気弁54である場合について説明した。しかしながら、本発明においては必ずしもこれに限られず、バルブは例えば排気弁であってもよい。また、可変動弁機構は例えば吸気側および排気側にそれぞれ設けられてもよい。この場合、吸気側および排気側においてロッカーアーム部が複数の気筒間で油路R3相当の油路を共有するとともに、可変動弁機構が吸気側および排気側の間で油路R3相当の油路を共有することで、吸気側および排気側間で油圧センサの共通化を図ることもできる。結果、その分コスト面で有利な構成とすることもできる。バルブが排気弁である場合の可変動弁機構は例えば次の通りである。
図11は可変動弁機構の他の例である可変動弁機構60´の要部を示す第1の図である。図12は可変動弁機構60´の要部を示す第2の図である。図13(a)、図13(b)はカムシャフト65´を示す図である。図13(a)はカムシャフト65´の全体図であり、図13(b)は図13(a)に示すA−A断面でカムCa´、Cb´、Cc´を見た図である。図11ではカムシャフト65´とともに可変動弁機構60´を示す。図12ではOCV81´、82´とともに可変動弁機構60´を示す。
可変動弁機構60´はカムCa´、カムCb´およびカムCc´のうちから排気弁55の駆動に使用する使用カムを選択する。カムCa´、Cb´およびCc´はカムシャフト65´に設けられている。カムCa´、Cb´およびCc´は排気弁55の駆動に使用される複数(ここでは3つ)のカムを構成している。カムCa´、Cb´およびCc´はこの順に配置されている。
カムCa´、Cb´およびCc´は互いに異なるカムプロフィールを有している。カムCa´、Cb´のカムプロフィールそれぞれは排気行程および吸気行程のうち少なくとも排気行程(ここでは排気行程)で排気弁55を駆動するように設定されている。カムCa´、Cb´のカムプロフィールは具体的にはカムCa´に応じた排気弁55の開弁期間内にカムCb´に応じた排気弁55の開弁期間が含まれ、且つカムCa´のほうがカムCb´よりも排気弁55のリフト量が大きくなるように設定されている。
カムCc´のカムプロフィールはカムCa´またはカムCb´と異なるタイミングで排気弁55を駆動するように設定されている。カムCc´のカムプロフィールは具体的には吸気弁54の開弁期間に排気弁55が開弁するように設定されている。カムCc´はカムCb´とともに用いられるカムとなっている。カムCc´はカムCa´とともに用いることも可能なカムとなっている。
可変動弁機構60´はロッカーアーム部63´と、油圧式の連結機構631´、632´とを備えている。ロッカーアーム部63´はカムCa´、Cb´およびCc´のカムプロフィールに応じて個別に揺動するとともに、カムシャフト65´から排気弁55に伝達する動力を仲介する揺動部63a´、63b´および63c´を有して構成されている。
揺動部63a´にはカム当接部61a´が、揺動部63b´にはカム当接部61b´が、揺動部63c´にはカム当接部61c´がそれぞれ設けられている。カム当接部61a´は複数のカム当接部61´のうちカムCa´に当接するカム当接部を示す。カム当接部61b´はカムCb´に、カム当接部61c´はカムCc´に当接するカム当接部をそれぞれ示す。
連結機構631´、632´は連結機構631、632と同様の仕組みで連結および連結解除を行う。このため、連結機構631´、632´の具体的な構造については説明を省略する。連結機構631´にはOCV81´が、連結機構632´にはOCV82´がそれぞれ接続されている。OCV81´はONである場合に連結機構631´に油圧Pinを伝達し、OFFである場合に連結機構631´から油圧を開放する。OCV82´はONである場合に連結機構632´に油圧Pinを伝達し、OFFである場合に連結機構632´から油圧を開放する。
連結機構631´はOCV81´がONである場合に、揺動部63a´、63b´間の連結を行う。具体的にはこの場合、排気弁55がリフトしていない状態において、OCV81´を介して伝達される油圧PinがスプリングSp1´の付勢力に抗してピンPn11´、Pn12´をともに移動させる。結果、ピンPn11´が保持部H11´および保持部H12´に保持されることで、揺動部63a´、63b´間の連結が行われる。
連結機構631´はOCV81´がOFFである場合に、揺動部63a´、63b´間の連結解除を行う。具体的にはこの場合、排気弁55がリフトしていない状態において、スプリングSp1´がOCV81´を介して開放される油圧に抗してピンPn11´、Pn12´をともに移動させる。結果、ピンPn11´が保持部H11´に保持されることで、揺動部63a´、63b´間の連結解除が行われる。このため、連結機構631´は揺動部63a´、63b´の連結と連結解除とをピンPn11´によって行う。
連結機構632´は連結機構631´と同様、揺動部63b´、63c´の連結と連結解除とをピンPn21´によって行う。このため、連結機構631´、632´は揺動部63a´、63b´および63c´のうち2つの揺動部同士の連結と連結解除とをピンPn11´やピンPn21´によって行う。
可変動弁機構60´では、バルブ駆動部62´それぞれが揺動部63b´に設けられている。したがって、可変動弁機構60´では揺動部63a´、63b´および63c´のうち揺動部63b´が排気弁55を駆動する。可変動弁機構60´によって実現される使用カムの使用パターンは次の通りである。
図14(a)から図14(c)は使用カムの使用パターンの説明図である。図14(a)は第1のパターンを、図14(b)は第2のパターンを、図14(c)は第3のパターンをそれぞれ示す。破線で示す揺動部63a´や揺動部63c´は連結が解除された状態にあることを示す。
第1のパターンは使用カムをカムCa´とする場合である。この場合、連結機構631´は揺動部63a´、63b´間の連結を行い、連結機構632´は揺動部63b´、63c´間の連結を解除する。この場合、連結態様上は排気弁55がカムCa´、Cb´に応じて駆動可能な状態になる。一方、カムCa´、Cb´のカムプロフィールそれぞれは前述の通り、各位相においてカムCa´のほうがカムCb´よりも排気弁55のリフト量が大きくなるように設定されている。このためこの場合には、カムCa´に応じて排気弁55が駆動する。
第2のパターンは使用カムをカムCb´とする場合である。この場合、連結機構631´は揺動部63a´、63b´間の連結を解除し、連結機構632´は揺動部63b´、63c´間の連結を解除する。この場合、揺動部63a´から揺動部63b´に動力は伝達されない。同様に揺動部63c´から揺動部63b´に動力は伝達されない。このためこの場合には、カムCb´に応じて排気弁55が駆動する。
第3のパターンは使用カムをカムCb´、Cc´とする場合である。この場合、連結機構631´は揺動部63a´、63b´間の連結を解除し、連結機構632´は揺動部63b´、63c´間の連結を行う。結果、カムCb´、Cc´に応じて排気弁55が駆動する。
図15は可変動弁機構60´における油圧P3に基づく判定方法の説明図である。図15(a)は使用カムがカムCa´の場合における油圧P3の変化を示す。図15(b)は使用カムがカムCb´の場合における油圧P3の変化を示す。図15(c)は使用カムがカムCb´,Cc´の場合における油圧P3の変化を示す。図15(d)はカムCa´、Cb´、Cc´に応じた吸気弁54のリフト曲線La´、Lb´、Lc´を示す。図15(a)から図15(d)において、横軸のクランク角度は共通となっている。
ここで、可変動弁機構60´では判定精度向上の観点から油路R3が次のように設けられている。すなわち、油圧P3が揺動部63b´、63c´間で揺動部63a´、63b´間よりも大きなずれで低下するように設けられている。このため、揺動部63a´、63b´間でずれが生じる場合には揺動部63b´、63c´間でずれが生じる場合よりも、油圧P3の低下期間が長くなるようになっている。
使用カムがカムCa´の場合には、連結機構631´が揺動部63a´、63b´を連結するとともに、連結機構632´が揺動部63b´、63c´を非連結にする。このためこの場合には、揺動部63a´、63b´が一体となってカムCa´に応じて揺動する一方、揺動部63c´はカムCc´に応じて揺動する。この場合、揺動方向において揺動部63a´、63b´と揺動部63c´との間にずれが生じることで、油路R3が遮断される。結果、図15(a)に示すように揺動方向において揺動部63b´、63c´間にずれが生じている間、油圧P3が低下する。
使用カムがカムCb´の場合には、連結機構631´が揺動部63a´、63b´を非連結にするとともに、連結機構632´が揺動部63b´、63c´を非連結にする。このためこの場合には、揺動部63a´はカムCa´に応じて、揺動部63b´はカムCb´に応じて、揺動部63c´はカムCc´に応じてそれぞれ揺動する。この場合、揺動方向において揺動部63a´、63b´間にずれが生じることで油路R3が遮断されるとともに、揺動部63b´、63c´間にずれが生じることで油路R3が遮断される。結果、図15(b)に示すように揺動部63a´、63b´間および揺動部63b´、63c´間にずれが生じている間に油圧P3が低下する。
使用カムがカムCb´、Cc´の場合には、連結機構631´が揺動部63a´、63b´を非連結にするとともに、連結機構632´が揺動部63b´、63c´を連結する。このためこの場合には、揺動部63a´がカムCa´に応じて揺動する一方、揺動部63b´、63c´は一体となってカムCb´およびCc´に応じて揺動する。この場合、揺動方向において揺動部63a´、63b´間にずれが生じることで、油路R3が遮断される。結果、図15(c)に示すように揺動部63a´、63b´間にずれが生じている間に油圧P3が低下する。
図15(a)から図15(c)に示すように、この場合でも油圧P3の低下態様が使用カムによって異なってくる。このためこの場合でも、判定部は油圧P3の低下態様に基づき、使用カムの切替状態(具体的には使用カム)を判定することができる。なお、ここでは使用カムをカムCa´、Cc´とする場合を使用カムの使用パターンから除外しているが、この場合については油圧P3が低下しないことを以って、使用カムがカムCa´、Cc´であることを判定できる。