(カンゾウ属植物株)
本発明の実施形態に係るカンゾウ属植物株は、薬効成分として有用なグリチルリチン酸を根部に多量に含有するカンゾウ属植物株であり、継代し増殖し得る株である。
本明細書において「カンゾウ属(Glycyrrhiza)植物」は、根部にグリチルリチン酸を含有する植物であるが、根部以外の茎部、葉などにグリチルリチン酸を含有する植物でもよい。例えば、ウラルカンゾウ(G. uralensis)、スペインカンゾウ(G. glabra)、チョウカカンゾウ(G. inflata)、G. acanthocarpa、G. aspera、G. astragalina、G. bucharica、G. echinata、G. eglandulosa、G. foetida、G. foetidissima、G. gontscharovii、G. iconica、G. korshinskyi、G. lepidota、G. pallidiflora、G. squamulosa、G. triphylla、G. yunnanensis、これらカンゾウ属植物の変種などが適用可能であり、ウラルカンゾウ及びスペインカンゾウが好適であり、ウラルカンゾウがより好適である。
根部(地下部)は、根・ストロンなどを、茎部(茎葉部、地上部)は茎・頂芽・シュート・節・葉などを広く包含する。茎部の切片は、二以上の節を含むように2〜20cm程度の長さに調製することが好ましい。切片の調製は、例えば、鋏・カッター・メスなど、公知の切断手段などを用いて行うことができる。
本カンゾウ属植物株として、例えば、ウラルカンゾウGu2−3−2株、GuIV1株、GuIV2株、Gu#11株のいずれかが挙げられる。本出願人は、これらの株を、独立行政法人医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター筑波研究部育種生理研究室(所在地:日本国茨城県つくば市八幡台1−2)内において自己寄託し、維持・保存している。本出願人は、日本国特許法施行規則第27条の3各号に該当する場合、各法令の遵守を条件に、第三者に分譲することを保証する。
ウラルカンゾウGu2−3−2株、GuIV1株、GuIV2株、Gu#11株は、SQS(スクアレン合成酵素)2遺伝子のエキソン1〜エキソン3部分における塩基配列、CYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2部分、エキソン3〜イントロン4部分における塩基配列を有する。SQS2遺伝子のエキソン1〜エキソン3部分における塩基配列、CYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列、及び、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2、エキソン3〜イントロン4部分における塩基配列は、グリチルリチン酸を含む二次代謝物(リキリチン、イソリキリチン、グリシクマリン等)を根部に多量に含有させ、株を継代し増殖し得る植物に必要な配列である。
配列表の配列番号1、2の配列は、SQS2遺伝子のエキソン1〜エキソン3部分における塩基配列の部分配列である。また、配列表の配列番号3〜6の配列は、CYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列の部分配列である。配列表の配列番号7〜9の配列は、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2部分、エキソン3〜イントロン4部分を含むエキソン1〜エキソン5部分における塩基配列である。配列番号1〜9の配列は、カンゾウ属植物株の遺伝子に、SQS2遺伝子のエキソン1〜エキソン3部分における塩基配列の部分配列、CYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列の部分配列、及び/又は、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2、エキソン3〜イントロン4部分における塩基配列を有するか否かを判別するために有用な配列であり、遺伝子に配列番号1〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株は、根部に多量のグリチルリチン酸を含有する株であると判別できる。
本カンゾウ属植物株は、SQS2遺伝子のエキソン1〜エキソン3部分における塩基配列の部分配列、CYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列の部分配列、又は、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2、エキソン3〜イントロン4部分における塩基配列を有する株であり、これらの部分配列である配列番号1〜9のいずれかの配列を有する。
本カンゾウ属植物株は、SQS2遺伝子のエキソン1〜エキソン3部分における塩基配列、CYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列、又は、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2、エキソン3〜イントロン4部分における塩基配列の相同性が、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である塩基配列を有してもよい。
以上のように、配列番号1〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株は、グリチルリチン酸の含有割合が高い株であり、配列番号1〜9の配列を検出することにより、グリチルリチン酸の含有割合が高い株を識別することができる。
(識別マーカー)
本発明の実施形態に係る識別マーカーは、グリチルリチン酸の含有割合が高いカンゾウ属植物株を識別するマーカーである。本識別マーカーを用いて、カンゾウ属植物株から抽出するDNAを鋳型として、PCR(Polymerase Chain Reaction)法により該当する領域を増幅し、その増幅産物を解析することにより、薬効成分として有用なグリチルリチン酸を根部に多量に含有するカンゾウ属植物株を識別できる。
本識別マーカーは、配列表の配列番号10、11の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列、配列表の配列番号12、及び、配列表の配列番号13及び/又は14の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列、配列表の配列番号15、及び、配列表の配列番号16及び/又は17の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列、又は、配列表の配列番号18、19の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列、からなる。ここで、相補的とは、各塩基のa(アデニン)とt(チミン)とを、g(グアニン)とc(シトシン)とを入れ換えた状態をいう。また、逆相補的とは、塩基配列の5’末端と3’末端とを入れ換えた状態をいう。
配列番号10、11の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列からなる識別マーカーは、SQS2遺伝子のイントロン1〜イントロン2を増幅し得る配列からなるプライマーである。配列番号10の配列は、フォワードプライマーに相当し、配列番号11の配列は、リバースプライマーに相当する。この識別マーカーにより、配列表の配列番号2の配列を有するカンゾウ属植物株を検出することができる。
配列番号12、及び、配列番号13及び/又は14の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列からなる識別マーカーは、CYP88D6遺伝子のイントロン7を増幅し得る配列からなるプライマーである。配列番号12の配列は、フォワードプライマーに相当し、配列番号13、14の配列は、リバースプライマーに相当する。この識別マーカーにより、配列表の配列番号3〜6のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株を検出することができる。なお、リバースプライマーに相当する配列表の配列番号13、14の配列については、どちらか一方を使用してもよく、また、両方使用してもよい。
配列番号15、及び、配列番号16及び/又は17の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列からなる識別マーカーは、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2を増幅し得る配列からなるプライマーであり、配列番号18、19の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列からなる識別マーカーは、CYP72A154遺伝子のエキソン3〜イントロン4を増幅し得る配列からなるプライマーである。配列番号15、18の配列は、フォワードプライマーに相当し、配列番号16、17、19の配列は、リバースプライマーに相当する。この識別マーカーにより、配列表の配列番号7〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株を検出することができる。なお、リバースプライマーに相当する配列表の配列番号16、17の配列については、どちらか一方を使用してもよく、また、両方使用してもよい。
配列番号1〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株は、上述したように、グリチルリチン酸の含有割合が高いカンゾウ属植物株である。PCR法により、本識別マーカーを用いて、これらグリチルリチン酸の含有割合が高いカンゾウ属植物株のDNAを増幅できるため、グリチルリチン酸の含有割合が高いカンゾウ属植物株と他のカンゾウ属植物株とを区別することができる。これにより、本識別マーカーを用いることにより、簡易かつ高精度に、グリチルリチン酸の含有割合が高いカンゾウ属植物株を検出することができる。
PCR法によりDNAを増幅する方法は、通常公知の方法を用いることができる。例えば、リアルタイム−PCR法、PCR−SSP(Sequence Specific Primers)法、PCR−SSCP(Single Strand Conformation Polymorphism)法、PCR−RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法などの通常公知の方法を用いることができる。また、PCRした後の増幅産物については、アガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動などの通常公知の方法を用いて、増幅産物を検出できる。また、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認してもよい。また、PCR法の反応条件(温度、時間等)は、DNA含有量、及び、酵素の種類・量によって変化するものであり、任意である。
カンゾウ属植物株からDNAを抽出する方法は、フェノール法、市販の核酸抽出用のキット、装置を用いる通常公知の方法を用いることができる。
以上のように、配列表の配列番号10、11の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列からなる識別マーカーは、配列表の配列番号1又は2の配列を有するカンゾウ属植物株を識別(区別)することができる。また、配列表の配列番号12、及び、配列表の配列番号13及び/又は14の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列からなる識別マーカーは、配列表の配列番号3〜6のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株を検出することができる。また、配列表の配列番号15、及び、配列表の配列番号16及び/又は17の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列からなる識別マーカーは、配列表の配列番号7、8のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株を検出することができ、配列表の配列番号18、19の配列と同一、相補的又は逆相補的な配列からなる識別マーカーは、配列表の配列番号9の配列を有するカンゾウ属植物株を検出することができる。配列番号1〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株は、グリチルリチン酸を含む二次代謝物の含有割合が高い株であるため、配列番号10〜19の配列を有する識別マーカーを用いることにより、二次代謝物の含有割合が高いカンゾウ属植物株を検出することができる。
(増殖方法)
本発明の実施形態に係る植物体の増殖方法は、植物体の茎を挿し穂として、挿し床に挿すことにより、植物体の個体数を増やす方法である。本増殖方法では、炭酸ガス施肥、特定波長域の光源、発根促進剤が含まれた液体培地などを必要としないため、安価で、かつ、簡単な操作で、植物体を増殖することができる。
まず、植物体の茎葉部(地上部)を(親)株の根元より切除し、茎葉部の根元を直ちに純水に浸ける。次に、茎葉部からすべての葉を切除して2節を含む約3〜10cm長の茎切片を調製し、茎切片を直ちに純水に浸ける。次に、純水を流しながら(流水処理しながら)茎切片を、閉鎖温室内(25℃、16時間明期、相対湿度60%)で1時間、静置する。次に、鉢に充填したバーミキュライトを純水で良く湿潤させて中央に穴を開け、静置した茎切片を挿し木する。そして、挿し木した茎切片を、1日1回10分間、灌水しながら、グロースチャンバー室内(25℃、16時間明期、相対湿度60%、照度25,000〜30,000 lux)で栽培する。
以上の手順で植物体を栽培することにより、同一クローン由来の株を多数栽培できるため、植物体の大量増殖に有用である。また、炭酸ガス施肥、特定波長域の光源、特定の液体培地などを必要としないため、安価で、かつ、簡単な操作で、植物体を増殖することができる。さらに、これらの手順は、全て閉鎖温室内で行うことができるため、気候の影響などを受けずに栽培でき、また、一年を通じての収穫が可能になるという利点がある。
本植物体は、配列番号1〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株からなる植物であるが、これらのカンゾウ属植物に限定されず、マオウ属植物のシナマオウなどの薬用植物であってもよい。また、葉を切除する植物体の茎切片長は、植物体、栽培環境などによって適宜変更できる。
親株の植え付け材料は、特に限定されない。例えば、種子から苗を育成し、その苗を増殖(栽培)に供してもよいし、水耕栽培・圃場栽培・組織培養などにより得られたカンゾウ属植物株を栽培に供してもよいし、それらの株から所定長の茎切片を調製し、その茎切片を栽培に供してもよい。
温度、湿度、照度、照明時間などの栽培環境は、植物体によって適宜変更でき、また、流水処理時間も任意である。また、茎切片を洗浄する水は、純水に限定されず、窒素分、リン分、カリウム分、金属成分などの植物の生長に必要な成分を含有する水溶液を用いることもできるし、水道水あるいは井戸水を用いることもできる。また、茎切片を純水に浸漬する時間は、植物体によって適宜変更できる。
茎切片は、任意の節数を含むものを用いることができ、例えば、1節でも良いし、3節以上でも良い。茎切片を、2以上の節を含むように2〜20cm程度の長さに調製することが好ましく、より好ましくは3〜10cm程度の長さに調製することである。茎切片の調製は、例えば、鋏・カッター・メスなど、公知の切断手段などを用いて行うことができる。
挿し木に用いる土(支持体)は、バーミキュライトに限定されず、公知の支持体を用いることができる。例えば、ロックウール、ハイドロボール、ココピート、パミスサンド、オアシス及び、これらの混合物を用いることもできる。また、養液肥料、オーキシンなどの発根促進剤、メネデールなどの植物活力素を用いてもよい。
植物体を栽培するための養液は、水、又は、窒素分、リン分、カリウム分、金属成分などの植物の生長に必要な成分を含有する水溶液であればよく、公知のものを用いることができる。
(水耕栽培装置)
本発明の実施形態に係る水耕栽培装置100について、図1を参照して説明する。水耕栽培装置100は、主として根を薬用部位とする薬用植物の栽培に適しており、植物を支持するためにパミスサンドなどの支持体を有さないため、より簡便に、低コストで、植物体を栽培できる装置である。
水耕栽培装置100は、養液槽110、上板部120、筒状部130、支持部140、養液150、水位変動手段(図示せず)を備える。
養液槽110は、養液150を貯留するための槽である。養液槽110の上端開口部には、上板部120が載置される。
養液槽110は、例えば、外寸:幅55.1cm×奥行39.9cm×高さ30.7cmからなるポリプロピレン製コンテナであるが、公知のものを広く利用でき、特に限定されない。また、材質は、特に限定されないが、長期間、養液150を貯留しても劣化の少ないものが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂(高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂など)製のもの、発泡性樹脂(発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリウレタンなど)製のものなどを利用できる。
上板部120は、植物体を定植するための1又は複数の穴121が形成され、穴121には、支持部140により支持(固定)された植物体が設置される。
上板部120の材質は、公知のものを用いることができ、特に限定されないが、一定の強度を有し、外力によって変形せず、耐水性があり、長期間の栽培によっても溶解・腐食しない素材が好ましい。例えば、発泡性樹脂(発泡スチロール、ポリスチレンフォーム、発泡ポリプロピレン、硬質発泡ウレタンなど)製のもの、軽量プラスチック、木材、同形状のポリタンクなどは、比較的安価で、目的の形状に成形・加工しやすく、耐久性にも優れ、好適である。
筒状部130は、植物体の根部をその筒内で伸長させ、また、管内の根の過度の乾燥を防ぎ、養液を根に供給するためのものであり、筒状部130の上端開口部に植物体が設置される。筒状部130は、上板部120の穴121から挿入され、養液槽110内で略鉛直方向に形成されるよう設置される。筒状部130は、例えば、不織布からなり、養液150を吸収し、毛細管現象により、植物体の根部に養液150を供給する。筒状部130の下端開口部、養液150を吸収する側面部から、養液150が自由に出入りでき、養液槽110内の水位と筒状部130内の水位がほぼ同じになるように形成されている。
筒状部130の長さ・径の大きさは、植物種や根部の太さ・長さに応じて、適宜設定できる。例えば、筒状部130の長さは10cm〜1m、孔径は直径2〜20cmが好適である。また、筒状部130の材質は、吸水性および通気性が高く略筒型形状を有する公知のものを用いることができる。
支持部140は、植物体(の基部、根部)を支持するためのものであり、例えば、水分を吸収するスポンジ状の部材から形成される。植物体の基部、根部に支持部140が巻き付けられ、支持部140が巻き付けられた植物体が上板部120の穴121から差し込まれることにより、植物体が筒状部130に固定され、設置される。
支持部140の長さ・径の大きさは、植物種や根部の太さ・長さに応じて、適宜設定できる。また、支持部140の材質は、合成樹脂製の板状物など、公知のものを用いることができる。
養液150は、水若しくは肥料・各種栄養素などが溶解した水であり、養液槽110に貯留される。養液150は、栽培する植物種などに応じて、公知のものを適宜利用できる。
水位変動手段は、養液槽110に貯留される養液150の水位を調節するものである。水位変動手段は、例えば、供給ポンプ、排水ポンプ、水位センサー、植物体感知センサー、タイマーなどから構成され、養液150の量(水位)、養液150の給排水速度、タイミングなどを制御する。
水位変動手段は、植物体が水耕栽培装置100に設置(定植)されてから、植物体の根部の先端が、養液槽110の上端位置(開口部)と下端位置(底面部)との中間位置(または、筒状部130の上端位置と下端位置との中間位置)に達するまで、養液150の水位をこの中間位置より上の位置になるように設定し、植物体の根部の先端がこの中間位置に達した後は、養液150の水位を中間位置より下の位置になるように設定する。より好ましくは、水位変動手段は、植物体の根部の先端が中間位置に達するまで、養液150の水位を、養液槽110の上端位置から1〜10cm下の位置、または、5cm下に設定し、植物体の根部の先端が中間位置に達した後は、養液150の水位を、養液槽110の下端位置から1〜10cm上の位置、または、5cm上に設定する。
養液150の水位は、植物体の根部の大きさ(長さ)、養液槽110の大きさ(深さ)に応じて、適宜設定できるものであり、植物体の根部(特に細根)に養液150を供給できればよいため、植物体の根部の伸長に合わせて、逐次設定変更できる。また、養液150の水位を変動(設定変更)した場合、また、定期的に、植物体の根部から生長した細根を切除することもできる。
水耕栽培装置100で栽培する植物体の種類は特に限定されないが、カンゾウ属植物体、配列表の配列番号1〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物体に適用できる。また、水耕栽培装置100は、グロースチャンバー室、閉鎖温室、ガラス温室、ビニールハウス、培養庫など、植物の生育に必要な環境を提供できる任意の場所に設置される。例えば、水耕栽培装置100は、グロースチャンバー室内に設置され、グロースチャンバー室内において、温度、湿度、照明時間が適宜設定変更され、植物体を栽培するのに適した環境が提供される。
以上のように、水耕栽培装置100を用いることにより、植物体の収穫部位(地下部組織)を肥大させることができる。また、水耕栽培装置100では、植物体を支持するためにパミスサンドなどの支持体を使用していないため、より簡便に、低コストで、効率的に植物体を栽培できる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、実施例は本発明を限定するものでない。
(カンゾウ属植物の検出)
配列表の配列番号10〜19の配列からなる識別マーカー(プライマー)を用いて、配列番号1〜9の配列を有するカンゾウ属植物体を検出した。まず、各カンゾウ属植物体から葉1枚を採取し、採取した葉及びステンレスビーズ(φ4.8mm)2個を2.0mL滅菌凍結保存チューブ(アシスト製)に取り、ビーズ破砕装置(トミー精工製Micro Smash MS-100) を用いて葉を破砕し、DNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN製) を用いて各カンゾウ属植物体のゲノムDNAを調製した。
調製したゲノムDNAの溶液をそのまま、または、DNase free水を加え、10 ng/μLになるように希釈し、これを鋳型にGoTaq Green Master Mix(Promega製)またはExTaq(タカラバイオ製)を用いて、SQS2遺伝子のエキソン2を含むイントロン1〜イントロン2、CYP88D6遺伝子のイントロン7、及び、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2、エキソン3〜イントロン4の部分配列を増幅した。増幅により得られたPCR増幅産物は、1%アガロースゲルで電気泳動し、増幅バンドのパターンを比較した。
SQS2遺伝子のイントロン1〜イントロン2の部分配列を増幅するプライマーには、配列番号10の配列からなるフォワードプライマー、配列番号11の配列からなるリバースプライマーを用いた。また、イントロン7の部分配列を増幅するプライマーには、配列番号12の配列からなるフォワードプライマー、配列番号13、14の配列からなるリバースプライマーを用いた。また、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2の部分配列を増幅するプライマーには、配列番号15の配列からなるフォワードプライマー、配列番号16、17の配列からなるリバースプライマーを用い、CYP72A154遺伝子のエキソン3〜イントロン4の部分配列を増幅するプライマーには、配列番号18の配列からなるフォワードプライマー、配列番号19の配列からなるリバースプライマーを用いた。
SQS2遺伝子のイントロン1〜イントロン2の部分配列を増幅するPCR機器には、iCycler(Bio-Rad製)を、PCR酵素には、Go Taq Green Master Mix(Promega製)を、それぞれ用いた。イントロン1〜イントロン2の部分配列を増幅するPCR条件として、1サンプル当たりのPCR反応液を、Go Taq Green Master Mix 3μL、forward primer (10 μM) 1μL、reverse primer (10 μM) 1 μL、鋳型ゲノムDNA 1μL (total 6μL)に調製し、94℃ 5 min(分) → [94℃ 30 sec(秒) → 58℃ 30 sec → 72℃ 1 min]×30サイクル → 72℃ 10 min → 4℃ ∞の条件でPCRを行った。
また、CYP88D6遺伝子のイントロン7の部分配列を増幅するPCR機器には、2720 Thermal Cycler(ABI製)を、PCR酵素には、ExTaq(タカラバイオ製)を、それぞれ用いた。イントロン7の部分配列を増幅するPCR条件として、1サンプル当たりのPCR反応液を、ExTaq 0.1μL、10 × ExTaq buffer 2μL、dNTPs 1.6μL、forward primer (10 μM) 1μL、reverse primer (10 μM) 1μL、ddH2O 12.3μL、genome DNA (10 ng/μL) 2μLに調製し、94℃ 2 min → [94℃ 30 sec → 60℃ 30 sec → 72℃ 45 sec]×30サイクル → 72℃ 5 min → 4℃ ∞の条件でPCRを行った。
また、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2、エキソン3〜イントロン4の部分配列を増幅するPCR機器には、2720 Thermal Cycler(ABI製)を、PCR酵素には、GoTaq Green Master Mix(Promega製)を、それぞれ用いた。イントロン1〜イントロン2の部分配列を増幅するPCR条件として、1サンプル当たりのPCR反応液を、Go Taq Green Master Mix 3μL、forward primer (10μM) 1μL、reverse primer (10μM)、鋳型ゲノムDNA 1μL (total 6μL) に調製し、94℃ 2 min → [94℃ 30 sec → 62℃ 30sec → 72℃ 45 sec]×30サイクル → 72℃ 5 min → 4℃ ∞ の条件でPCRを行った。また、エキソン3〜イントロン4の部分配列を増幅するPCR条件として、1サンプル当たりのPCR反応液を、Go Taq Green Master Mix 3μL、forward primer (10μM) 1μL、reverse primer (10μM) 1μL、鋳型ゲノムDNA 1μL、ddH2O 4.5μL (total 15μL)に調製し、94℃ 2 min → [94℃ 30 sec → 60℃ 30sec → 72℃ 1 min]×30サイクル → 72℃ 5 min → 4℃ ∞の条件でPCRを行った。
図2は、CYP88D6遺伝子のPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動した結果を示す図である。図2中において、λ/PstIはマーカーであり、1〜32はGuTS71−08系統実生クローンを区別するための名称であり、Gu232−6#6はGuTS71−08系統以外の実生クローンの名称である。同図に示すように、配列表の配列番号12、13の識別マーカー(プライマー)を用いた場合、GuIV1株、GuIV2株の両方又は一方の配列を有するカンゾウ属植物体を検出できた。このGuIV1株、GuIV2株は配列番号3〜6の配列を含むため、配列番号12〜14の識別マーカーは、配列番号3〜6の配列を有するカンゾウ属植物体を識別できる識別マーカーであることが明らかとなった。
なお、配列番号12、14のプライマーセットではイントロン7配列を増幅可能であるのに対し、配列番号12、13のプライマーセットではGuIV1株及びGuIV2株に特徴的なイントロン7配列のみの増幅が可能であった。また、GuIV1株とGuIV2株では増幅されるイントロン7配列の長さが異なるため、お互いに区別が可能であった。
図3は、SQS2遺伝子のPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動した結果を示す図である。図3中において、λ/PstIはマーカーであり、#1〜#3はウラルカンゾウ株を区別するための名称であり、#1はGuIV2株、#2はGu2−3−2株、#3はGuTS71−08系統実生クローンの株識別番号11の株(Gu#11株)である。同図に示すように、配列表の配列番号10、11の識別マーカー(プライマー)を用いた場合、GuIV2株タイプの配列を有するカンゾウ属植物体を検出できた。また、#3であるGu#11株は、GuIV1株タイプの配列を有するカンゾウ属植物体であるため、配列表の配列番号10、11の識別マーカーは、GuIV1株タイプの配列を有するカンゾウ属植物体を検出できた。また、配列番号10、11の識別マーカーを用いた場合、Gu2−3−2株では、PCR産物を与えないため(#2)、配列番号10、11の識別マーカーを用いることにより、GuIV1株、GuIV2株タイプの配列と、Gu2−3−2株タイプの配列とを識別(区別)できた。
図4は、CYP72A154遺伝子のPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動した結果を示す図である。図4中において、λ/PstIはマーカーであり、#1〜#4はウラルカンゾウ株を区別するための名称であり、#1はGu2−3−2株、#2はGuIV2株、#3はGuIV1株、#4はGu#11株であり、#5は水である。同図に示すように、配列表の配列番号15、16の識別マーカー(プライマー)を用いた場合、Gu2−3−2株及びGu#11株の配列を有するカンゾウ属植物体を検出できた。また、配列表の配列番号15、17の識別マーカー(プライマー)を用いた場合、GuIV1株及びGuIV2株の配列を有するカンゾウ属植物体を検出できた。また、配列表の配列番号18、19の識別マーカー(プライマー)を用いた場合、GuIV1株、GuIV2株及びGu#11株の配列を有するカンゾウ属植物体を検出できた。このため、配列番号15〜19の識別マーカーを用いることにより、GuIV1株、GuIV2株タイプの配列、Gu2−3−2株タイプの配列、Gu#11株タイプの配列をそれぞれ識別(区別)できた。
以上の結果から、配列番号10、11の識別マーカーは、SQS2遺伝子のエキソン1〜エキソン3部分における塩基配列を有するGu2−3−2株、GuIV1株及びGuIV2株、つまり、配列番号1、2の配列を有するカンゾウ属植物株を識別できた。また、配列番号12〜14の識別マーカーは、CYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列を有するGu2−3−2株、GuIV1株及びGuIV2株、つまり、配列番号3〜6のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株を識別できた。また、配列番号15〜17の識別マーカーは、CYP72A154遺伝子のイントロン1〜イントロン2部分における塩基配列、配列番号18、19の識別マーカーは、CYP72A154遺伝子のエキソン3〜イントロン4部分における塩基配列を有するGu2−3−2株、GuIV1株、GuIV2株及びGu#11株、つまり、配列番号7〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株を識別できた。
(グリチルリチン酸量の測定)
Gu#11株、及び、CYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列においてGuIV1株及び/又はGuIV2株タイプの配列を有するGuTS71−08系統実生クローン株から植出した植物体に含まれるグリチルリチン酸量を測定した。
Gu#11株について、培養苗を径3cmのジフィーセブン水でふくらむタネまき土ポット(サカタのタネ製)に植出し、培養庫(25℃、14時間明期、相対湿度40%)で29日間馴化後、ハイドロボールを支持体とする養液栽培装置に移植した。養液栽培装置に移植した培養苗を、グロースチャンバー室(25℃、16時間明期、相対湿度60%)で200日間、さらに閉鎖温室(25℃、14時間明期、相対湿度55%)で162日間(計362日間)養液栽培(マツザキ1号及びマツザキ2号、栽培206日後までは標準濃度の25%、その後は標準濃度の50%)した後、植物体を収穫し、植物体の根の収量及び二次代謝物含量を測定した。図5は、養液栽培362日後のGu#11株の植物体を示す図である。図5に示す植物体について、根の収量及び二次代謝物含量を測定した。
二次代謝物含量を測定する際の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を以下のように設定した。HPLCのカラムに、TSKgel ODS-100V(径4.6mm×長さ250mm、粒径5μm、東ソー株式会社製)を、ガードカラムに、TSKguardgel ODS-100V(径3.2mm×長さ15mm、粒径5μm、東ソー株式会社製)を用いた。移動相に、アセトニトリル(溶媒A)と1%酢酸(溶媒B)とを混合して用いた。溶出開始から0〜21分間は溶媒Aの混合比率を20〜76%に直線的に上げ、21〜22分間は溶媒Aの混合比率を76〜100%に直線的に上げ、22〜24分間は溶媒Aの混合比率を100%にし、24〜25分間は溶媒Aの混合比率を100〜25%に直線的に下げ、流速1.0mL/min、カラム温度40℃に設定した。定量検出はUV254nmで、定性検出(検出ピークの同定)はUV200〜400nmで行った。
その結果、Gu#11株の根(径1mm以上)の乾燥重量:4.82 g、グリチルリチン酸収量:129.2 mgであり、Gu#11株の乾燥根の二次代謝物含量は、グリチルリチン酸:2.68%乾燥重量、リキリチン:1.70%乾燥重量、イソリキリチン:0.15%乾燥重量、グリシクマリン:0.11%乾燥重量であった。このため、Gu#11株は、高二次代謝物生産能を有することが明らかとなった。
また、CYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列においてGuIV1株及び/又はGuIV2株タイプの配列を有するGuTS71−08系統実生クローン株について、Gu#11株と同様に、グロースチャンバー室(25℃、16時間明期、相対湿度60%)で84〜96日間、養液栽培した後、植物体の根における二次代謝物含量を測定した。二次代謝物含量を測定する際のHPLC条件は以下のように設定した。HPLCのカラムに、ACQUITY UPLC BEH C18(径2.0mm×長さ50mm、粒径1.7μm、waters製)を用いた。移動相に、0.1%ギ酸(溶媒A)とアセトニトリル(溶媒B)とを混合して用いた。溶出開始から0〜0.45分間は溶媒Aの混合比率を80%に、0.45〜6.5分間は溶媒Aの混合比率を80〜30%に直線的に下げ、6.5〜6.75分間は溶媒Aの混合比率を30〜0%に直線的に下げ、6.75〜7分間は溶媒Aの混合比率を80%にし、流速0.8mL/min、カラム温度40℃に設定した。定量検出は、グリチルリチン酸はUV254nmで、リキリチン及びイソリキリチンは316nmで、グリシクマリンは350nmで行った。
図6は、GuIV1株及び/又はGuIV2株タイプの配列を有するGuTS71−08系統実生クローン株の植物体において、二次代謝物含量を測定した結果を示す図である。図6中において、IV1はCYP88D6遺伝子のイントロン7部分における塩基配列においてGuIV1株タイプの配列を有するGuTS71−08系統実生クローン株であり、IV2は同塩基配列においてGuIV2株タイプの配列を有するGuTS71−08系統実生クローン株であり、IV1+IV2は、同塩基配列においてGuIV1株、GuIV2株の両タイプの配列を有するGuTS71−08系統実生クローン株である。また、71#1〜71#32は、GuTS71−08系統実生クローン株を区別するための名称である。同図に示すように、GuIV1株、GuIV2株タイプの配列を有するGuTS71−08系統実生クローン株の植物体は、二次代謝物含量が高いことが明らかとなり、特にGuIV1株タイプの配列を有するクローンでは71#12が、GuIV2株タイプの配列を有するクローンでは71#1が、GuIV1株とGuIV2株の両方のタイプを有するクローンでは71#31が、二次代謝物含量割合が高い優良カンゾウ属植物株であることが明らかとなった。
以上の結果から、GuIV1株、GuIV2株タイプの配列を有する植物体、つまり、配列表の配列番号1〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物株は、グリチルリチン酸を含む二次代謝物含量割合が高いカンゾウ属植物株であることが明らかとなった。
(カンゾウ属植物の挿し木による増殖)
高含量のグリチルリチン酸を生産する、Gu#11株、GuIV1株及びGuIV2株を親株として、カンゾウ属植物の地上茎の挿し木による増殖を行った。
Gu#11株及びGuIV1株については228日間、GuIV2株については236日間、グロースチャンバー室(25℃、16時間明期、相対湿度60%)でパミス(登録商標)を支持体とする養液栽培(大塚ハウス1号6g+大塚ハウス2号4g/8L、標準濃度の50%)した後、各株からなるカンゾウ属植物の地上茎(茎葉)を株の根元より切除し、直ちに純水を張った2Lポリビーカーに茎の根元を浸けた。全ての葉を茎より切除して2節を含む約3〜10cm長の茎切片を調製し、直ちに2Lポリビーカー中の純水に浸け、閉鎖温室内(25℃、16時間明期、相対湿度60%)で1時間、純水による流水処理(水流の下に茎切片の入った2Lポリビーカーを置き、そのまま水を流しながら静置)を行った。シロイヌナズナ用屋内育成・種子回収キットアラシステム(ビーエム機器株式会社製)にバーミキュライト(有限会社タカムラ製)を充填し、純水で良く湿潤させて中央にピンセットで穴を開け、流水処理が完了した茎切片を挿し(挿し木し)、1日1回10分間、アラトレイ(水受けトレイ)に灌水しながら、グロースチャンバー室内(25℃、16時間明期、相対湿度60%、光源:岩崎電気社製メタルハライドランプ セラルクス、照度25,000〜30,000 lux)で栽培管理した。
図7(a)〜(c)は、挿し木から31日後のGu#11株、GuIV1株及びGuIV2株を示す図である。また、表1は、挿し木から37日後のGu#11株及び38日後のGuIV1株、GuIV2株の発根率の結果である。さらに、図8は、発根した挿し木苗を水耕栽培装置に移植した後のGu#11株、GuIV2株を示す図である。
図7(a)〜(c)に示すように、カンゾウ属植物の地上茎を挿し木することにより、カンゾウ属植物株を増殖できた。また、表1に示すように、各株の発根率は、Gu#11株:60.0%、GuIV1株:61.3%、GuIV2株:62.6%であった。さらに、図8に示すように、挿し木苗は、発根後も生育し続けることが明らかとなった。
以上の結果から、カンゾウ属植物を堀上収穫してストロンを調製することなく、カンゾウ属植物の地上茎を挿し木することにより増殖が可能であり、さらに、挿し木苗も水耕栽培によりに旺盛に生育する。このため、Gu#11株、GuIV1株、及び、GuIV2株、つまり、配列表の配列番号1〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物は、容易にかつ指数的に増殖可能な株であることが明らかとなった。
(水耕栽培装置)
支持体を使用していない水耕栽培装置を用いて、Gu#11株、GuIV1株、及び、GuIV2株を栽培した。
ストロン挿しにより増殖させたGuIV1株のストロン部、及び、地上茎挿し木により増殖させたGu#11株、GuIV2株の茎の基部を、予め水で湿らせたアクアサプライヤfマットSR180(幅3cm×長さ17.5cm)で包み、予め水で湿らせたフロートミニ用苗床スポンジ(径5.1cm)に挟み、径4cmの穴を有する本実施形態の水耕栽培装置に設置した。また、同苗の基部を予め水で湿らせたフロートミニ用苗床スポンジ(径5.1cm)に挟み、その周りを予め水で湿らせたアクアサプライヤfマットSR180(幅12.5cm×17.5cmで円筒型に成型)で包み、径4cmの穴を有する実施形態に係る水耕栽培装置(養液槽の外寸cm:縦68.4×横42.3×高さ16、養液面が高い状態に相当)に設置した。肥料養液(大塚ハウス1号6g+大塚ハウス2号4g/8L:標準濃度の50%)をタンクに入れ、水面の高さを苗床スポンジがある水耕栽培装置の上面から約5cm下(または、苗の基部から約10cm下)に保ちながら水耕栽培を行った。
図9(a)、(b)は、水耕栽培を開始してから1週間後、5週間後のGu#11株、GuIV2株を示す図である。同図に示すように、支持体を使用していない水耕栽培装置を用いても、カンゾウ属植物株を栽培することができた。
次に、水耕栽培装置を用いて水耕栽培開始25〜78日後に、Gu#11株、GuIV1、GuIV2株の地上茎を切除して植物体を穴から抜き取り、苗床スポンジとアクアサプライヤfマットSR180を取り除いて根の最大根幅を計測した。
図10(a)、(b)は、水耕栽培を開始してから71日後のGu#11株、GuIV2株を示す図である。同図に示すように、各株の根の気相部分(養液面より上の部分)が肥大し、細根(養液面より下の部分)が発達した。
次に、各株の細根を切除して、再び苗の基部を予め水で湿らせたフロートミニ用苗床スポンジ(径5.1cm)に挟み、その周りを予め水で湿らせたアクアサプライヤfマットSR180(幅12.5cm×30cmの上下2ヶ所をホッチキスでとめ、円筒型に成型)で包み、径4cmの穴を有する本実施形態の水耕栽培装置(養液槽の外寸cm:縦55.1×横39.9×高さ30.7、養液面が低い状態に相当)に設置した。養液槽の水面の高さを、水耕栽培装置の下面から5〜15cm(または、苗の基部から15〜25cm)を維持するように肥料養液(大塚ハウス1号6g+大塚ハウス2号4g/8L:標準濃度の50%)を供給しながら、グロースチャンバー室(25℃、16時間明期、相対湿度60%)で、さらに水耕栽培を行った。水耕栽培53〜66日後(はじめの水耕栽培から91〜142日後)に植物体の地下部を収穫し、根の生育、収量及び二次代謝物含量の調査を行った。
図11(a)、(b)は、実施形態に係る水耕栽培装置(養液面が低い状態に相当)に移植した直後、移植してから13日後のGu#11株、GuIV2株を示す図である。また、図12(a)、(b)は、実施形態に係る水耕栽培装置を用いて水耕栽培を開始してから137日後(養液面が低い状態の装置に移植してから66日後)のGu#11株、142日後(養液面が低い状態の装置に移植してから66日後)のGuIV2株を示す図である。また、図13は、水耕栽培を行ったGu#11株、GuIV1株、GuIV2株の植物体において、根の収量、グリチルリチン酸収量及び二次代謝物含量を測定した結果を示す図である。また、表2は、実施形態に係る水耕栽培装置を用いて水耕栽培を開始してから137〜142日後(養液面が低い状態の装置に移植してから64〜66日後)のGu#11株、GuIV1株、GuIV2株の生育結果である。
図11(a)、図11(b)、図12(a)、図12(b)、表2に示すように、Gu#11株、GuIV1株、GuIV2株は、支持体を使用していない水耕栽培装置を用いても生育し、すべての株で根の肥大が認められた。特にGu#11株は、最大根幅が1cm以上であり、径2mm以上の根の長さも最大であった。また、図13に示すように、水耕栽培後のGu#11株、GuIV1株及びGuIV2株の根(径2mm以上)のグリチルリチン酸含量は、Gu#11株:0.83%、GuIV1株:1.26%、GuIV2株:1.05%と高く、他の二次代謝物も多く生産されていた。
以上の結果から、支持体を使用していない水耕栽培装置を用いても、カンゾウ属植物を効率的に栽培でき、栽培したカンゾウ属植物の根部からグリチルリチン酸を含む二次代謝物を効率的に生産できることが明らかとなった。また、水耕栽培装置において支持体を使用していないため、より簡便で、低コストで、単位面積あたりの栽培株数の増加が可能である。また、配列表の配列番号1〜9のいずれかの配列を有するカンゾウ属植物は、水耕栽培でも効率的に栽培が可能である。