JP6231653B2 - 重質炭化水素の水素化転化のための微粉及び粗粒添加剤の導入方法 - Google Patents

重質炭化水素の水素化転化のための微粉及び粗粒添加剤の導入方法 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
[背景]
1.発明の分野
本発明は、重質炭化水素系原料の熱的水素化転化のための方法に関する。
2.関連技術の説明
原油の世界的な供給がより重質になり、より高いレベルの硫黄を含むため、軽質の、高品質な、低硫黄の輸送燃料に対する高まりつつある需要を満たすという課題が存在している。重質炭化水素系原料の改質は、この需要を満たすのに役立つ可能性がある。重質炭化水素系原料を改質するために有用なプロセスがいくつかある。このようなプロセスの1つとして知られているのは、スラリー床水素化分解である。スラリー床水素化分解は、鉱物油、合成油、石炭、生物学的プロセスなどに由来する水素及び炭素含有原料などや、減圧残油(VR)、常圧残油(AR)、脱れきボトム油、コールタールなどの炭化水素残油を、例えば、約750°F(400°C)から約930°F(500°C)、かつ、約1450psig(10,000kPa)から約4000psig(27,500kPa)、又はそれ以上の高温高圧下において、水素の存在下で転化する。反応中にコークス化が行き過ぎないようにするために、炭素、鉄塩、又は他の材料から作られた微粉末化添加剤粒子が、液体原料に添加されてもよい。反応器の内部では、液体/粉末混合物は、添加剤粒子のサイズが小さいため、単一の均一相として理想的に挙動する。実際には、反応器は、気相に寄与する水素メイクアップ及び軽質の反応生成物と、固相に寄与するより大きな添加剤粒子、液相に寄与するより小さな添加剤粒子、原料及び重質の反応生成物により3つの相を有し、添加剤及び液体の組み合わせがスラリーを含む、上昇流気泡塔型反応器又は循環式沸騰床型反応器などとして作動させてもよい。スラリー床水素化分解では、90%を超える原料が貴重な転化生成物に転化されることが可能であり、減圧残油が原料である場合には95%を超える原料を転化可能である。
スラリー床水素化分解の一例として知られているのは、Veba Combi−Cracking(登録商標)(VCC(商標))技術である。この技術はワンススルー方式で行われ、そのプロセスの一実施形態では、独自の粒子状添加剤をVRなどの重質原料に添加してスラリーフィードを形成する。スラリーフィードに水素を充填し、反応温度まで加熱して、減圧残油をより軽質の生成物に分解する。気化した転化生成物は、第二段固定床触媒反応器内でさらに水素化処理及び/又は水素化分解されてもよいが、そのようにされなくてもよい。減圧軽油、中間留分(例えば、ディーゼル等)、ナフサ及び軽質ガスを含む広範囲の蒸留生成物が生成される。
スラリー床水素化分解用の粒子状添加剤に広範囲の材料が含まれ得ることは様々な文献に開示されている。報告によると、これらの材料としては、触媒、赤泥、鉄(III)酸化物、高炉ダスト、硬質炭又は亜炭からの活性コークス、カーボンブラック(すす)、原油のガス化プロセスにより生じた灰、酸化ケイ素、及びラテライトやリモナイトなどの鉄を含有するその他の無機鉱物が挙げられるが、これらに限定されない。粒子状添加剤は、0.1〜2000ミクロンの広い粒度分布を有し、その範囲の下のほうから中央に向かって優勢であることが報告されている。サイズが100ミクロンを超える粒子が10〜40wt%(重量%)で、残りの粒子はサイズが100ミクロン未満で含有されることが望ましいことが報告されている。プロセスに導入される添加剤の粒度分布をより精密に制御するために、原料を収容する混合タンクに、微粉径範囲の添加剤及び粗粒径範囲の添加剤を別個に導入し、原料に混入される添加剤の相対的なサイズ分布をより精密に制御できるようにするシステムが提案されている。スラリー原料は、次に水素とともに高圧予熱トレインに導入され、反応器に導入される。参照により本明細書に組み込まれる、例えば、Kretschmarらの米国特許第4,851,107号明細書を参照されたい。
重質炭化水素を改質するために利用可能な様々なプロセス及び代替方法があるにもかかわらず、既存のプロセスを改善し、単位操作の経済性、効率性及び有効性をもたらす必要性が依然として存在している。
[概要]
上昇流気泡塔型反応器を含む反応器における重質炭化水素系原料のスラリー床水素化分解のためのプロセスは、2つのサイズ範囲の添加剤を原料に別個に導入することを含む。微細なサイズ範囲の粒子添加剤は、相対的に大きなサイズ範囲の粒子添加剤の上流でプロセスに導入される。該プロセスは、第1の添加剤を原料に導入して、原料装入ポンプの下流で微粉充填原料を形成することを含む。微粉添加剤は、平均粒度分布が20〜500ミクロンであり、表面積が100m/g〜800m/gの粒子を含むことができる。これとは別に、第2の添加剤は、原料装入ポンプの下流であって、かつ、水素分解上昇流気泡塔型反応器の上流又はその中の微粉充填原料に導入される。第2の添加剤は、400〜2,000ミクロンのメジアン径を有する粗粒子を含むことができる。反応生成物は、更なる処理のために、上昇流気泡塔型反応器などの反応器から取り出される。
本発明の一実施形態を示すスラリー床水素化分解処理装置の簡略化したプロセスフロー図である。
[好適な実施形態の詳細な説明]
上昇流気泡塔型反応器を含むがこれに限定されない任意の反応器構成を用いるスラリー床水素化分解プロセスでは、1つ以上の添加剤が原料に導入されてもよく、その結果、いくつかの有益な効果がもたらされる。本明細書に例示の目的で提供されるいかなる理論にも束縛されることなく、多孔質粒子などの表面積が大きい添加剤は、原料の発熱性水素化熱分解反応の間に形成されるアスファルテンコーク前駆体の吸着を可能にすると考えられている。これにより、コーク前駆体を、予熱トレインにおける交換器及び加熱炉などの装置の内部構造物上及び反応器内表面上に堆積させることを可能にするのではでなく、反応生成物を有する添加剤上のコーク前駆体の除去を可能にする。この有益な効果のために、添加剤粒子の表面積は、好ましくは1グラム当たり100平方メートル(m/g)より大きく、又はより好ましくは200m/gより大きい。
また、十分に大きな粒径の添加剤は、上昇流気泡型反応器を含むがこれに限定されない反応器の流体力学を改善すると考えられている。大きな粒子は、反応器内の乱逆流渦再循環を維持するのに役立ち、より良好な混合及びより均一な反応速度を達成すると考えられている。より大きなサイズの添加剤粒子はまた、反応器内で形成され得る泡の分解を助け、反応器の性能を向上させると考えられている。反応器中でのこの有益な効果のために、大きな添加剤粒子のメジアン径は、約400ミクロン〜2000ミクロンであることが好ましい。したがって、あらゆる有益な効果のための理想的な添加剤は、重量当たりの表面積が比較的大きく、流動特性及び反応器の流体力学的性能を改善するためにサイズ及び密度の範囲が広いことが好ましい。しかしながら、粒子は、原料予熱トレインや反応器を通って流れるスラリーフィードから沈殿するほど大きいもの又は高密度のものであるべきではない。
1つの理想的な添加剤を使用するよりも、異なる特性を有する2つの添加剤を使用した方が有用である場合がある。2つの添加剤は、粒子の属性を利用するために供給回路内の別々の箇所で導入されて、初期原料装入とともにすべての添加剤を導入する際に起こり得る欠点を最小限にする。「微粉添加剤」と呼ばれ、「微粉粒子」又は「微粉添加剤粒子」と呼ばれるより小さなメジアン径を有し、高多孔質で、内部表面積が大きい第1の添加剤は、原料に最初に導入される。微粉添加剤は、原料混合容器に導入してもよいし、あるいは、原料の一部であり得るスラリー油や、ライトサイクルオイル、ヘビーサイクルオイル、又はVCC減圧タワーなどからのリサイクル重質減圧軽油(VGO)などの高芳香族油などの任意の他の液体含有流と混合してもよい。微粉添加剤は、原料予熱トレインのすぐ上流の主供給回路に、原料装入ポンプの上流又は下流のいずれかで、導入されてもよい。微粉添加剤は、加熱と水素化分解反応の間に生成されるアスファルテンコーク前駆体の吸着のために最適化されてもよい。微粉添加剤粒子の表面積は、重要な変数であると考えられている。
その後、「粗粒添加剤粒子」と呼ばれるより大きなメジアン径を有する、「粗粒添加剤」と呼ばれる第2の添加剤が、原料予熱トレインに沿った1つ以上の位置で微粉充填原料に導入される。原料予熱トレインは、スラリー水素化分解反応器の上流に、1つ以上の原料熱交換器、ガス熱交換器、原料−流出物熱交換器、原料予熱炉を含むことができる。粗粒添加剤は、原料熱交換器又はガス熱交換器の前、間、又は後に、あるいは原料−流出物熱交換器の前、間、又は後に導入されてもよい。粗粒添加剤は、原料予熱炉の前又は後に導入されてもよい。粗粒添加剤はまた、あるいは代わりに、微粉充填原料とともに反応器の入口に導入されてもよい。粗粒添加剤は、原料予熱炉の後で導入されることが好ましい。粗粒添加剤は、反応器の流体力学的性能を改善し、泡を最小化するために最適化されてもよい。反応器の中に又は反応器のすぐ上流で粗粒添加剤を導入することにより、粗粒添加剤の注入及び反応器の性能を調整する間の遅延時間が低減される。また、密度、硬さなどの粗粒添加剤の性質に応じて、予熱トレイン装置の下流で粗粒添加剤を導入することにより、添加剤粒子の沈殿及び装置の侵食が回避され得る。
微粉添加剤粒子は、粗粒添加剤粒子よりも小さい粒径範囲を有していてもよく、単位重量当たりの表面積を、より小さく、同じに、又はより大きくしてもよい。微粉添加剤の粒径分布は、20ミクロン〜500ミクロンであることが好ましい。このサイズ未満であると、より小さな粒子は高温分離器内のサイクロン分離器によって除去することが困難な場合があると考えられている。一態様では、粒径の上限値は重要ではないが、制御された場合には有益である。微粉添加剤の大きなサイズ範囲と粗粒添加剤の小さなサイズ範囲とにいくらか重複する部分があってもよい。しかしながら、第1の添加剤粒子が大きすぎる場合、原料予熱トレイン交換器中の粒子の沈殿が起きる可能性があると考えられる。微粉添加剤は、公称400ミクロンの最大粒径を有することができることが好ましい。換言すると、微粉添加剤は400ミクロンより大きな粒子を留めるために篩を通過させられ得るが、個々の添加剤粒子の不規則な形状のために、400ミクロンの篩を通過する全粒子の最大5wt%は、一次元寸法において400ミクロンよりも大きくてもよい。450ミクロン又は500ミクロンほどの大きな粒子は、おそらくこのようなスクリーニング操作によって通過することができる可能性があると考えられる。10wt%までの微粉粒子が400ミクロンより大きくてもよいが、約450ミクロンでカットオフがあることが好ましい。微粉添加剤の粒度分布の大きい側の端が多すぎる、又は大きすぎる場合、より大きな添加剤粒子が原料予熱装置内で沈殿する問題を引き起こす可能性があり、あるいは、遠心供給ポンプと、おそらく熱交換器において侵食の問題を引き起こすと考えられている。好ましくは、微粉添加剤粒子は25ミクロンよりも大きい。より好ましくは、微粉添加剤粒子は50ミクロンよりも大きい。微粉添加剤粒子は、最小サイズと最大サイズとの間の公称サイズ分布が広く、いずれかの端でショートテール又は鋭いカットオフを有し、約100ミクロン、約150ミクロン、又は約200ミクロンにおいて、あるいは好ましくは約100ミクロン〜約200ミクロンのどこかにピーク(又はメジアン径)を有することが予期される。
微粉添加剤粒子は、コーク前駆体アスファルテン分子を吸着するのに十分な表面積を提供する多孔性を有することが好ましい。過去にスラリー床水素化分解プロセスにおける添加剤について報告されているように、微粉添加剤粒子は少なくとも100m/g、好ましくは少なくとも200m/gの平均表面積を提供するのに十分な多孔性を有するべきであると考えられている。
粗粒添加剤粒子は、微粉粒子添加剤と比較して、より大きな粒径範囲を有していてもよい。粗粒添加剤粒子の粒径は、最小で400ミクロン、最大で2000ミクロンであってもよい。一態様では、粒径の下限値は重要ではないが、制御された場合には有益である。小さなサイズ範囲で微粉添加剤の大きなサイズといくらか重複する部分があってもよい。しかしながら、粗粒添加剤が小さすぎると、反応器において流体力学的に有益な効果を提供しないと考えられている。したがって、小さすぎる粗粒添加剤粒子を扱うのに追加のエネルギーが費やされる。同様に、大きすぎる又は重すぎる添加剤粒子は、反応器内で沈殿し、反応器サイズに直接関係すると考えられている有益な流体力学的効果を提供しない可能性がある。したがって、粗粒添加剤粒子のメジアン径は、より小さい実用炉(一日あたりの供給量が約10,000バレル以下)で約800ミクロン、中サイズの実用炉(一日あたりの供給量が約20,000バレル)で約1200ミクロン、大サイズの実用炉(一日あたりの供給量が約30,000バレル以上)で約1600ミクロン、又はそれ以上であることが好ましい。しかしながら、実際の最適なメジアン径は、反応器の空間速度、粗粒添加材料特性(例えば密度)、原料、ポンプ取り扱い上の制限、他の操作変数にも依存する。
粗粒添加剤に対する微粉添加剤の割合は、最適な動作のために調整されてもよい。好ましくは、粗粒添加剤の量は、プロセスに導入される複合添加剤の総重量に基づいて10wt%〜40wt%である。より好ましくは、粗粒子の量が複合添加剤の15wt%〜25wt%である。さらにより好ましくは、粗粒子の量が複合添加剤の約20wt%である。上昇流気泡塔型反応器を含むスラリー反応器全体で所望のスラリー密度及び圧力差を維持するために、オペレータによって調整が行われるにつれて、粗粒添加剤の量が時間とともに変動してもよい。
好ましくは、微粉添加剤の量は、プロセスに導入される複合添加剤の60wt%〜90wt%である。より好ましくは、微粉粒子の量は、複合添加剤の75wt%〜85wt%である。さらにより好ましくは、微粉粒子の量は、定常状態動作における複合添加剤の約80wt%である。
微粉添加剤は、全原料の約0.1wt%〜5wt%の量で、原料混合タンクを介して原料中に、又は直接主供給ラインに導入されてもよい。好ましくは、2.5wt%未満の微粉添加剤が導入される。より好ましくは、約2wt%以下の微粉添加剤が原料に導入される。好ましくは、0.1wt%以上の微粉添加剤が導入される。主供給ラインに直接導入される場合、微粉添加剤は、液体、好ましくはスラリードラム内の油と予め混合され、添加剤スラリーを形成する。微粉添加剤スラリーは、混合ドラム内に0.1wt%〜60wt%の全固形分を含有することができる。好ましくは、微粉添加剤スラリーは、10wt%〜50wt%の全固形分を含有し、より好ましくは、添加剤混合ドラム内に30wt%〜50wt%の全固形分を含有する。
粗粒添加剤は、全原料の約0.05wt%〜5wt%の量で、原材料混合タンクを介して原料中に、又は直接プロセスに導入されてもよい。好ましくは、2.5wt%未満の粗粒添加剤が導入される。より好ましくは、約2wt%以下の粗粒添加剤が原料に導入される。好ましくは、0.05wt%以上の粗粒添加剤が導入される。プロセスに直接導入される場合、粗粒添加剤は、液体、好ましくはスラリードラム内の油と予め混合され、添加剤スラリーを形成する。粗粒添加剤スラリーは、混合ドラム内に0.1wt%〜60wt%の全固形分を含有してもよい。好ましくは、粗粒添加剤スラリーは10wt%〜50wt%の全固形分を含有し、より好ましくは、添加剤混合ドラム内に30wt%〜50wt%の全固形分を含有する。
添加剤は、そのいくつかは当業者に公知であり、スラリー床水素化分解に関連する文献に記載されている以下の材料で作ることができる。スラリー床水素化分解のための粒子状添加剤は、広範囲の材料を含むことができることが開示されている。これらの材料は、微粉添加剤及び粗粒添加剤の上記の特性を満たすように改質され得ることが予期される。微粉添加剤用に選択される材料は、粗粒添加剤用に選択される材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。報告によると、これらの材料には、水素化処理触媒、使用済み触媒、ゼオライト、赤泥、鉄(III)酸化物、高炉ダスト、硬質炭又は亜炭からの活性コークス、ガス化プロセスにより生じた灰、及び鉄を含有するその他の無機鉱物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、微粉添加剤粒子は、炭素を含む材料から選択される。好ましくは、大きな粒子は、粒子の沈殿を避けるために、その見かけ密度を制限する多孔性をいくらか有する。好ましくは、活性炭などの活性炭系材料は、微粉添加剤及び粗粒添加剤の両方について選択することができる。
原料としては、鉱油及び合成油、重油、残油、廃油、シェールオイル、使用済み油、タールサンドオイル、石炭熱分解から得られる油などの石炭油、石炭液化から得られるタールなどのコールタール、減圧残油、常圧残油、脱れきボトム油、粉砕石炭、又は、石油及びその混合物などの任意の供給源に由来するその他の重質油、ならびにリグニン及び熱分解油を含むバイオマス由来材料が挙げられ得る。リグニンは加熱によって液化し、30wt%まで減圧残油などの重質油原料と混合することができる。好ましくは、原料は、500°Cを超える沸点を有する減圧残油を含み得る。
図1を参照すると、簡略化された水素化処理ユニットのプロセスフロー図は、本発明の一実施形態を示している。減圧残油原料10は、スラリーフィードサージドラム12に導入される。フィードサージドラムからの原料は、供給ポンプ14により取り込まれ、高圧供給回路16に導入される。微粉添加剤18は、スラリー混合タンク20に導入される。この微粉添加剤スラリーは、0.1重量%〜60重量%の添加剤、好ましくは10wt%〜50wt%、より好ましくは約30wt%〜50wt%の添加剤を含むことができ、残余は、スラリー油22、又は原料として使用されている場合には減圧残油などの重質油キャリアである。微粉添加剤固形分は、スラリーポンプ24を介して、原料高圧供給回路16に導入される。あるいは、微粉添加剤は、好ましくは原材料重量の2wt%未満の量で、供給ポンプ16の上流で導入されてもよい。この場合、粒径が小さく固形分濃度が低いため、供給ポンプ16は、遠心ポンプであってもよい。高圧供給回路16内の微粉添加剤を有する原料は、原料予熱交換器26に導入される。予熱交換器26は、1つ以上の熱交換器を含むことができる。プロセスの熱効率の改善のために、これらの予熱交換器は原料−流出物交換器であり、これにより、第2段触媒水素化処理反応器の流出物、高温分離器の塔頂流出物、又は処理ユニットの内部もしくは外部の他の高温エネルギー源から熱が回収される。予熱交換器26の上流では、再循環ガス28とメイクアップガス30が、高圧供給回路に導入される。水素がメイクアップガス圧縮機32に導入され、その後、高圧メイクアップ水素30が、まず再循環ガス28に導入されて、高圧供給回路16に導入される前に処理ガスを形成してもよい。
添加材料の別の流れは、スラリー油36、又は原料として使用される場合には減圧残油などの重油キャリアと所定範囲の粗粒径添加剤34とを混合してスラリーとされる。粗粒添加剤スラリーは、0.1重量%〜60重量%の添加剤、好ましくは10wt%〜50wt%、より好ましくは約30wt%〜50wt%の添加剤を含有することができ、残余は、スラリー油、又は原料として使用する場合には減圧残油などの重油キャリアである。粗粒添加剤の割合は、粗粒添加剤ポンプ38の固形分装入能力に応じて変更することができる。粗粒添加剤ポンプ38は、スラリー対応のピストンポンプであってもよいが、実用上可能な限り、固形分装入度を高くすることが望ましい。粗粒添加剤スラリーを、予熱交換器26の上流においてライン40を介して微粉充填原料に添加してもよい。あるいは、粗粒添加剤スラリーを予熱交換器26の後ろかつ炉46の上流のライン42を介して、又は炉の後ろのライン44を介して第一段気相反応器48の入口に直接、又は反応器48に直接添加してもよい。粗粒添加剤スラリーは、原料予熱トレインに沿った任意の場所に導入されてもよい。原料予熱トレインは複数の交換器と炉とを含むため、粗粒添加剤スラリーが導入され得る場所は複数ある。コーク前駆体は、減圧残油の加熱が開始されるとすぐに形成されるため、粗粒添加剤スラリーを予熱トレインの上流で導入することが望ましい場合がある。あるいは、交換器及び熱交換器又は炉の侵食を最小限にするために、装置は、粗粒添加剤スラリーを後から導入し、粗粒添加剤注入点の上流側で形成されたコーク前駆体を吸着するために微粉添加剤に依存することが望ましい場合がある。
スラリー床反応器48からの流出流50は、高温分離器52に導入される。反応生成物54は、高温分離器52の上部から取り出され、水素化処理及び/又は水素化分解などのさらなる処理のため、第二段触媒水素化処理反応器などの第二段反応器56に導入される。主に非転化残油であり得る、高温分離器からのボトム分58は、減圧塔60に導入される。減圧塔の塔頂の生成物流は、ポンプ62に導入された後、第二段反応器56に供給される。減圧塔の塔底流64は、この装置の原料にリサイクルすることができる重質の減圧残油であってもよく、又はピッチ、アスファルトのような他の製品のために使用されてもよい。第二段反応器からの流出物66は、冷温分離器68に導入される。水素、オフガス、硫黄及び他の気体は、冷温分離器の頂部からライン70を介して回収され、ガス浄化装置72に導入される。オフガス、硫黄化合物及び他の望ましくない成分は、ライン74を介して取り出され、さらなる処理又は廃棄のために送られる。水素及び他の軽質ガスは、再循環ガスとしてライン76を介して再循環ガス圧縮機78に送られ、原料に再循環される。
冷温分離器68からのボトム流80は、精留塔82に送られる。精留塔82では、様々な生成物留分を取り出すことができ、例えば、プロパン及び他の同種のガスはライン84を介して、ナフサはライン86を介して、中間留分はライン88を介して、減圧ガスオイルはライン90を介して精留塔の塔底から取り出すことができる。
本プロセスは、添加剤供給制御システムが別々であるために、より精密なレベルの制御を伴う、複数の原料について最適化された異なる添加剤を用い、反応器に直接、又は微粉添加剤が導入される場所よりも反応器に近い上流に、粗粒添加剤を注入することによって遅延時間が低減されるように、改変してもよい。より大きな粒径の添加剤は、遠心ポンプと共に使用するには侵食性が高すぎるため、本発明の実施形態ではまた、遠心ポンプを微粉充填原料について使用し、より小型のピストンポンプを粗粒添加剤スラリーについて使用することができるという利点を提供することができる。このことは、混合原料タンクで使用される単一の広範囲の粒径添加剤が微粉及び粗粒の粒径分布の両方を包含しているときに、単一の大型の供給ピストンポンプを用いる場合と比較して、経済的に有利である。
当業者であれば、本明細書の教示に基づいて、上述した実施形態の他の利点及び変形例を理解し得るであろう。しかしながら、上述した実施形態は、例示の目的で示されるにすぎない。本発明は、上記した説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。

Claims (22)

  1. スラリー床水素化分解反応器において重質炭化水素系原料をスラリー床水素化分解するための方法であって、
    予熱交換器の上流の原料に、500ミクロン未満の粒度分布を有する微粉粒子を含む第1の添加剤を導入して、微粉充填原料を形成する工程と、
    前記微粉充填原料に、400ミクロン〜2,000ミクロンのメジアン径を有する粗粒子を含む第2の添加剤を、前記予熱交換器の下流において別途導入する工程と、
    前記スラリー床水素化分解反応器からの反応生成物を取り出す工程と
    を含む方法。
  2. 前記スラリー床水素化分解反応器が上昇流気泡塔型反応器である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記スラリー床水素化分解反応器が循環式沸騰床型反応器である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記重質炭化水素系原料が、鉱油、合成油、重油、残油、廃油、シェールオイル、使用済み油、タールサンドオイル、石炭油、コールタール、減圧残油、常圧残油、脱れきボトム油、粉砕石炭、バイオマス由来材料、及びこれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記重質炭化水素系原料が減圧残油を含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記第1の添加剤が、原料混合容器内の原料に導入される、請求項1に記載の方法。
  7. 前記第1の添加剤が、原料装入ポンプの下流の原料に導入される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記第1の添加剤が、前記微粉充填原料の0.1〜5wt%を占める、請求項1に記載の方法。
  9. 前記第1の添加剤が、前記微粉充填原料の2.5wt%未満を占める、請求項1に記載の方法。
  10. 前記第1の添加剤が、前記微粉充填原料の1wt%未満を占める、請求項1に記載の方法。
  11. 前記第1の添加剤が、20ミクロン〜450ミクロンの粒度分布を含む、請求項1に記載の方法。
  12. 前記第1の添加剤が、50ミクロン〜400ミクロンの粒度分布を含む、請求項1に記載の方法。
  13. 前記第1の添加剤が、100ミクロン〜200ミクロンのメジアン径を備える、請求項1に記載の方法。
  14. 前記第1の添加剤が活性炭を含む、請求項1に記載の方法。
  15. 前記第1の添加剤が改質活性炭を含む、請求項1に記載の方法。
  16. 前記第2の添加剤が活性炭を含む、請求項1に記載の方法。
  17. 前記第2の添加剤が改質活性炭を含む、請求項1に記載の方法。
  18. 前記第1の添加剤が、水素化処理触媒、使用済み触媒、赤泥、鉄(III)酸化物、高炉ダスト、硬質炭又は亜炭からの活性コークス、カーボンブラック(すす)、原油のガス化プロセスによって生じた灰、シリコン酸化物、及びその他の無機鉱物、ならびにそれらの混合物のうち1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
  19. 前記第2の添加剤が、水素化処理触媒、使用済み触媒、赤泥、鉄(III)酸化物、高炉ダスト、硬質炭又は亜炭からの活性コークス、カーボンブラック(すす)、原油のガス化プロセスによって生じた灰、シリコン酸化物、及びその他の無機鉱物、ならびにそれらの混合物のうち1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
  20. 前記第2の添加剤は、800ミクロン〜1200ミクロンのメジアン径を備える、請求項1に記載の方法。
  21. 前記第1の添加剤が、第1及び第2の添加剤の合計の60wt%〜90wt%を占める、請求項1に記載の方法。
  22. 前記重質炭化水素系原料が、減圧残油と、1wt%〜30wt%のリグニンとを含む、請求項1に記載の方法。
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