JP6231141B2 - X線窓 - Google Patents

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Description

本発明は、一般的に電子衝撃X線源に関する。特に、本発明は、液体ジェット陽極を有するX線発生装置に使用するX線窓に関する。
液体金属のジェットを陽極として有しているX線源は、X線発生に最も関連する技術的なパラダイムの一つである。暴露期間と、空間分解能と、位相差画像法のような新しい画像検査法とに関連する利益をもたらす前記線源は、これら線源の優れた輝度によって特徴づけられる。
現在の技術水準において、この種のX線源は、真空チャンバの内に設けられた電子源及び液体のジェット(好ましくは、インジウム、スズ、ガリウム、鉛若しくはビスマス、若しくは鉛とビスマスの合金のような低融点の液体金属)を有する。より正確には、例えば、冷領域射出、熱領域射出及び熱電子の射出の原理によって、電子源が、作用する。液体ジェットを備えた手段は、ヒータ及びクーラのうち少なくとも一方、(機械的なポンプ若しくは化学不活性高圧ガスの線源のような)圧力手段、ノズル及びジェットの端部で液体を収集するための貯蔵槽(液体ダンプ)を有し得る。動作の間に、電子ビームによって衝突される液体ジェットの部分は、交差領域と称される。電子ビームと、液体ジェットとの間の交差点で生成されるX線放射線は、窓を通って真空チャンバから射出する。適用するX線源で、前記窓は、適切な材料の枠に入れられた薄い箔で構成されている。窓材料に要求されることは、高いX線透過度(つまり、低い原子番号)と周囲の圧力から真空を分離するための十分な機械的強度とが挙げられる。ベリリウムは、このような窓で広く使用されている。
X線源の通常の動作の間に、窓は、微粒子が沈着することによって徐々に覆い隠される。このような沈着された微粒子のX線の吸収が原因で平均フラックス(flux)が減少するだけでなく、大きな飛沫は、不均一な照明に起因する画像中にダークスポットとして飛沫自身を明示する。沈着物は、気体状で若しくは飛沫状で窓に輸送される液体ジェットの陽極からの材料により主に形成される。電子ビームが液体ジェットに衝突する領域で、微粒子は、(特にジェットノズルがオン若しくはオフの時に)ジェットノズルと、前記ジェットの終端部の貯蔵槽に収容された液体の表面と、での噴霧効果によって主に生成される。特許SE 530 094と比較すると、複数の工程は、微粒子の生成を減少させるためにされてきたが、それでもなお出力X線パワーと、微粒子生成の比率との間の正相関を妨げるものがある。
本発明の目的は、X線陽極への接触手段を改良し、維持間隔を増加させ液体X線源を提供することである。液体ジェット線源が、出力窓に沈着する微粒子、例えば、飛沫、蒸気及びその他の生成体、を生成する。沈着の比率は、特に、適用される出力と同様に、陽極と出力窓との間の距離に依存する。さらに、当業者の多くは、寿命が距離に変換される範囲では、設計のジレンマとして陽極と窓との間の距離を認識している。陽極と窓との間の短い距離は、発生させられたX線放射線の汎用的で、有効的な使用をもたらす。このために、装置の出力窓に近接するように陽極を配置する先行技術での試みがあった。しかし、従来の課題解決において、真空を開放せず、且つX線源を分解しないで沈着物から窓をクリーニングするための有効な方法がない。従って、出力窓と液体ジェットX線源の陽極との間の距離を減少することによって加速された微粒子の沈着に起因する時間経過に伴う劣化を軽減することが、明細書に開示された発明の目的である。
本発明者達は、真空チャンバでの低圧(典型的に10−7bar(10−2Pa))が、加熱による蒸発が出力窓から汚染物質を除去するための好適な方法であると理解した。一方で、利用可能な窓の材料、特にベリリウムは、高温で十分な性能を発揮せず、化学的に不安定になる傾向がある。しかし、もう一方で、熱に耐え、好ましいX線透過性を有するこのような既知の材料は、しばしば真空破壊部の機能を担うための十分な機械的強度を有していない。幾つかの材料、特に炭素箔は、大気ガス、特に酸素の存在するところで加熱されると酸化される。
これらの検討は、発明者を請求項1に記載された二重の窓構造の考えに導いた。
従って、本発明の第1の態様に従えば、以下の自己クリーニングX線窓構成体が提供される。このX線窓構成体は、中間の領域から周囲の圧力の領域を分離している第1のX線透過窓要素と、減圧の領域から中間の領域を分離している第2のX線輸送窓要素とを有している。汚染物質は、減圧の領域に面する第2の窓要素の側面に沈着することが予測される。前記の窓構成体は、第2の窓要素の部分に沈着された汚染物質を蒸発するために、少なくとも第2の窓要素の部分を加熱する熱源を具備している。この熱源は、専用のヒータ、若しくは発生する汚染物質の蒸発に関係した十分な熱が第2の窓要素に伝達される空間の近くの熱領域であり得る。
前記第2の窓要素は、汚染物質が存在する減圧の領域から、加熱によってクリーニングされることに適さない第1の窓要素を遮蔽する。本発明の特徴は、汚染物質が中間の領域に侵入する比率を減少させる、理想的には、汚染物質が、この領域へ侵入することから妨げられることに役立つ。一方で、耐圧性の第1の窓要素は、周囲の圧力の領域と減圧の領域との間の大きな圧力差にさらされる。前記減圧に比較的に近いか、同じ中間の領域の圧力に維持することにより、第2の窓要素への機械的応力が制限され得る。このことは、高温で第2の窓構成要素を損傷し得る潜在的な有毒ガス、特に酸素の部分的圧力を制限するというさらなる効果をもたらす。
本発明に係る窓構成体は、X線源の真空の、若しくは近真空のチャンバ(減圧の領域)の壁に設置されることが可能であり、必要な(近)真空状態を維持しながら発生させられたX線が、チャンバから射出されることを許容する。液体金属ジェットX線源の場合には、汚染物質は、陽極からの金属微粒子であり得る。これら微粒子は、X線源の通常の動作の間に第2の窓要素に蓄積されるかも知れないけれど、第2の窓要素は、X線源を分解するか、真空を解除することなく本発明に従って有効にクリーニングされ得る。第2の窓要素からの微粒子の除去が、特に、X線源の通常の動作の間でさえも実行され得ることは重要である。
本発明の付加的な特徴として、第2の窓要素は、少なくとも減圧の領域に面する窓要素の側面は、導電性である。この付加的な特徴を有する窓構成体は、電子衝突X線源のハウジングでの使用に特に適している。この第2の窓要素は、散乱された電子によって衝突される可能性があり、この結果、電荷が集積する危険性がある。部分的若しくは全てが導電性の第2の窓を設置することによって、電荷が、窓要素から逃がされ得る。
中間の領域及び減圧の領域は、また、少なくとも部分的に連通状態であり得る、例えば、大幅な圧力差が、生じないように、気体分子が、これらの領域の間を巡遊することが可能である。これは、中間の領域及び減圧の領域を連通する通路、即ちスリットのような、孔
を形成することによって実現され得る。このような孔が、低い流れ抵抗(これは、例えば、孔の直径と、長さと、曲がり状態とに依存する)を有するならば、圧力差を非常に早く無くすことができる。即ち、中間の領域と減圧の領域とは、自由な連通状態にあり、同一の圧力を有すると言った方が適切である。
さらに、汚染物質が蒸気、浮遊した粒子、若しくは浮遊した飛沫の形態で通路に存在する場合に、減圧の領域と中間の領域とは、汚染物質の沈着を促進するように与えられた通路によって連通され得る。従って、少なくともこの通路に侵入する汚染物質の幾らかは、通路を脱しないで、通路のある部分、例えば、内壁に拘束されることによって沈着して静止する。この沈着を促進する領域が在ることの効果によって、通路は、汚染物質が中間の領域に侵入するのを妨げる、そうでなければ、汚染物質は、沈着物を除去することが面倒な第1の窓要素の表面に沈着し得る。汚染物質の沈着を促進する通路の特徴は、以下の少なくとも1つを有し得る。
通路は、狭い及び細長いうちの少なくとも一方である。
通路は、分岐される。
通路は、入り組んでいる(曲がっている)。
通路の壁は、減圧の領域よりも低い温度で維持されている。
通路の内側は、粗面である。
通路の内側は、汚染物質沈着材料で被覆されている。
多孔質フィルタが、通路中に設けられている。
前記中間の領域の圧力は、動作の間に減圧の領域の圧力よりも高くなり得る。これは、これら領域間に自由な連通状態がない場合である可能性がある。この場合は例えば、中間の領域が、ガス気密性に密閉されているか、狭い入口の通路を備えている場合である。中間の領域をガス気密性に密封すること及び減圧の領域と比較して中間の領域を高い圧力に維持することの少なくとも一方を有する効果は、汚染物質が減圧の領域から中間の領域へ侵入することを非常に困難にさせていることである。
他の方法として、中間の領域と減圧の領域との圧力が、実質的に同一であり得る。これは、2つの領域が、もう一方と部分的に連通状態で、若しくは自由な連通状態である場合であり得る。この効果は、第2の窓要素への機械的応力が、少なくとも横断線(図面の表面に対して法線)方向に非常に低くなることである。なぜならば、この窓要素は、大幅な圧力差が生じないためである。
本発明の付加的な特徴として、第2の窓要素は、好ましくはしっかり装着されていない(non-rigidly secured)。この効果は、前記窓要素が、温度変化によって伸縮することを許容させることである。絶対的には(in absolute terms)、方向軸線上への長さの変化は、横断方向へよりも(表面に沿った)接線方向への方が比較的に大きくなる。即ち、第2の窓要素が、完全にしっかり装着された(rigidly secured)場合には、接線方向の機械的応力は、横断方向よりも大きくなり得る。従って、第2の窓要素は、接線方向において緩く効果的に装着され得る。
(前述の付加的な特徴を含む若しくは含まない)本発明のいずれかの実施の形態において、第2の窓要素の少なくとも一部分は、200マイクロメータ以下、好ましくは100マイクロメータ以下、さらに好ましくは60マイクロメータ以下の厚さを有するグラッシーカーボン(glassy carbon)箔により作成されている。しばしばアモルファス状若しくはガラス状の炭素(vitreous carbon)と称されるグラッシーカーボンは、第2の窓要素の要求を十分に満たす材料である。前述したように、これらの必要条件は、使用可能な厚さの値での熱耐久性及びX線透過性を含む。
前記液体ジェットが、(例えば、溶融金属及び溶融合金のような)低蒸気圧材料を含む場合には、少なくとも第2の窓要素が少なくともセ氏500度の温度に維持されるように、熱源が、好適に動作される。好ましくは、X線放射線の大部分が通過することが予測されるX線源の主光線の横断点の周辺の領域が、このような温度に維持され得る。第2の窓要素(の一部分)は、500度以上の一定の温度で維持され得るか、500度以下にならない時間変化する温度を有し得る。しかし、連続的な窓要素の自己クリーニングは必要とされない場合には、加熱は、断続的にも与えられ得ることが理解されるべきである。少なくともセ氏500度の温度は、微粒子の沈着を少なくするために、この金属の微粒子を十分な比率で蒸発することに適していることが実験的に判った。この微粒子が高い比率で蓄積する場合には、第2の窓要素は、蒸発の過程を加速するために高い温度に維持される必要があり得る。当業者は、種々の動作パラメータ、例えば、陽極の材料、陽極と窓の距離など、について適切な動作温度であると判るだろう。この詳細は、過去の定期的な実験によって、示され、受け入れられた。
オーム加熱源は、非常に好適である。この熱源は、第2の窓要素と熱的に接触する熱消散の電気的要素であり得る。しかし、好適には、第2の窓要素は、窓要素の2つの領域の間を流れる電流によって直接的に加熱される。窓要素の端部か、内部に配置され得る前記領域の各々に、導電性の部材が、設けられ得る。第2の窓要素は、全体を通して単位領域当たりで均一な抵抗を有し得る。しかし、最も好しくは、X線源の主光線の横断点の周辺部分が、単位領域当たりの比較的高い電気出力を消散するように与えられる。このことは、例えば、異なる材料を使用することと、この部分で窓要素の厚さを変えることとの少なくとも一方により成し得る。第1に、長時間の加熱は、第2の窓要素の経年劣化を加速し得る、第2に、第2の窓要素の一部分のみを加熱することは、断熱方法により窓要素を保護するための要求を緩和するので、X線ビームが通り抜ける第2の窓要素の一部分のみを加熱することは、好適である。
窓構成体にも有効である熱源は、赤外線源、マイクロウェーブ源、レーザ若しくは電子ビーム源を含む。この熱源は、複数の前記熱源の組み合わせでもあり得る。これらの熱源の各々の効果は、これらが、非接触の方法で第2の窓要素を加熱するためにエネルギを伝達することである。電子ビーム源は、X線生成に使用される電子源と同じ電子源である。即ち、好適には、射出された電子ビームの一部分は、第2の窓要素に直接衝突するために偏向される。特別な例として、熱源は、赤外線と散乱電子との両方を射出するような交差領域も含むことが判る。
付加的に、第2の窓要素は、以下の方法で保護され得る。導電性液体を収容している1若しくは複数の容器が、第2の窓要素の端部の周囲に設置されている。前記容器の壁には、1若しくは複数のスリットが、設けられ、一方で、伝導性液体の表面張力が、液体が容器から抜けることを防ぐために十分であり得る、一方で、このようなスリットに保持された第2の窓要素が、しっかりと固定されずに接線方向に伸縮し得るような寸法を有する。前述のように、他の好適な実施の形態は、各々の容器の中へスリットを通して各端部を挿入することによって第2の窓要素の端部の2つの対向している部分を装着することを含む。容器に大きな電位差を与えることにより、この結果、窓要素に直接のオーム加熱が発生され得る。
本発明の第2の態様に従えば、前述の自己クリーニングX線窓構成体を有するX線源が提供される。
特にX線源の実施の形態において、X線窓構成体の熱源は、電子源及び液体ジェットターゲットの動作データに基づいて制御される。例えば、(例えば、単位時間当たりの沈着される物質の質量として測定される)微粒子の蓄積の比率が陽極に衝突する電子ビームの強度に比例することが周知であるX線源において、このX線源は、電子ビームの強度に従う熱源の出力を調整するために好適であり得るので、蒸発のための好適なエネルギの量が、常に迅速に与えられる。
前述の及び他の本発明の態様は、以下に記述された実施の形態から明らかであり、また以下の実施の形態を参照して説明される。
本実施の形態で使用された全ての表現は、本実施の形態で他に明確に規定されていない限り、技術分野でこれらの通常の手段に関係すると解釈されることである。“[要素、装置、構成要素、手段、工程、など]”の説明は、他に明確に提示されない限り、要素、装置、構成要素、手段、工程、などの少なくとも一例を参照するとして明らかに解釈されるものである。
本発明は、以下に添付する図面を参照してさらに説明される。
図1は、本発明に係るX線窓構成体の主要部分の断面図である。 図2は、中間の領域及び減圧の領域が自由な連通の状態であるような本発明の実施の形態に係るX線窓構成体の断面図である。 図3は、本発明の一態様に係る第2の窓要素の装着状態を示す斜視図である。 図4は、本発明に係るX線窓を含むX線源の電子ビーム及び液体ジェットを平面で示す部分断面図である。
本発明の複数の実施の形態が、図面に示され、且つ本節に記述されている。しかし、本発明は、複数の異なる形態で構成され、本実施の形態において説明された実施の形態に限定するように構成されるべきではない。これらの実施の形態は、この開示が詳細で、完璧となり、且つ十分に発明の範囲を当業者に伝わるような方法の例により提供される。さらに、明細書全体を通して同じ符号は、同様の部材に付される。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るX線窓構成体100の主要部の断面図である。窓構成体100の意図された使用は、X線源のハウジングの耐真空X線開口部の提供である。X線源の主光線方向Rは、図面で水平な破線によって示されている。窓構成体100は、(X線発生のための手段を収容するハウジングの内側を)減圧の領域110と、周囲の圧力の領域114(環境)とに分離する。本実施の形態において、窓構成体100は、2つの実質上平行な窓の要素、即ち、第1の窓要素122と、第2の窓要素124とを有する。この第1の窓要素122と、第2の窓要素124とで、中間の領域112を囲む。汚染物質Cは、減圧の領域に面している第2の窓要素124の側面に沈着されることが予測される。汚染物質Cは、蒸気、浮遊した粒子、若しくは液滴、若しくは飛沫のような状態で第2の窓要素124に到達し得る。さらに、熱源120が、主光線方向Rの周囲の第2の窓要素124の領域に対して赤外線(IR)のビームを射出するように適用されている。図1に示されている好適な実施の形態において、熱源120は、IR光を射出することが可能であるような、放物面鏡の焦点の付近に配置されている電気抵抗を有している。従って、熱源120によって射出されたIRビームは、実質的にコリメートされるので、第2の窓要素124の加熱される領域は、単位体積当たりほぼ一定である熱力を受ける。熱源120は、主光線軸に配置されておらず、外側へ向かうX線放射線の通り道を塞がないように僅かにずらされるといことが判る。熱源の配置は、本発明の複数の実施の形態において同様の判断で選択されるべきである。
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るX線窓構成体200の断面図である。第1の実施の形態と同様に、相対的に小さな真空気密性の第1の窓要素222と、相対的に大きな熱耐性の第2の窓要素224とは、空間の3領域、即ち減圧の領域210と、中間の領域212と、周囲の領域214とを分離している。前述したように、第1の窓要素222に最適な材料は、ベリリウムを含み、第2の窓要素224に最適な材料は、グラッシーカーボン箔を含む。これらの2つの材料では、使用され得る厚さでX線が透過する。これらの窓要素222、224は、気密性のハウジング232に装着される。熱膨張を許容するために、この装着状態は、第2の窓要素224の各端部に間隙234,236が設けられている。つまり、同様の間隙が、図面の平面の外側にある第2の窓要素224の各端部に供給され得る。
窓構成体200は、さらに熱源を有する(図示せず)。前記間隙234、236の各々は、第2の窓要素224とハウジング232の間で断熱材としての役割もすることが判る。
さらに、窓構成体200を囲うハウジング232部分は、低い熱伝導率の材料で構成され得る。所定の温度に前記窓要素224(若しくは窓要素224の一部分)を維持するために供給されることが必要なエネルギを少なくするために、第2の窓要素224から離れる熱流速が低くなることが望ましい。これは、窓構成体200が設けられた領域でX線源を冷却する必要性も軽減している。
通路230が、気体分子に関して自由な連通状態である前記減圧の領域210と、中間の領域212とを連通している。所定の形状と、直径と、長さとを有する通路230によって、汚染物質が、第1の窓要素222に到達することは、困難となる。この場合、減圧の領域210から第1の窓要素222への微粒子の直接の衝突は、明らかに不可能である。蒸気及び浮遊した汚染物質について、少なくともフリーサイト(free sight)の直線に沿った沈着率は、線源から距離の逆2乗で減少することが実験的に開示されてきた。また、沈着率は、曲がり部及び他の障害物を導入することによって大幅に減少され得る。従って、減圧の領域210に存在している汚染物質源から第1の窓要素222の通り道は、真っ直ぐではなく、且つ第2の窓要素224への通り道よりもかなり長いために、第1の窓要素222での沈着率は、大きく減少させられている。この通り道の長さの効果的な相違は、さらに第2の窓要素224を拡大することによってさらに増加することが可能であることが判る。この拡大では、圧力差は変化しないので、第2の窓要素224への機械的応力を増大し得ない。
窓構成体200で前記通り道の長さの相違を増大させる他の方法は、複数の細い通路に、減圧の領域210及び中間の領域212の間の通路230を換えることである。各通路が細くされる場合には、この結果体積対面積比が増大し、汚染物質の輸送に対するさらなる障害物が、通路の内壁で沈着が促進される限り作り出される。通路230の内壁で沈着を促進するための他の方法は、以下のように通路を設置することである。この通路は、通路230の内壁を比較的低い温度で維持するように加熱される第2の窓要素224から十分な距離で分離される。さらに中間の領域212の中へ汚染物質の輸送をより困難にする他の方法は、通路230の内側表面を粗面化すること、若しくは汚染物質が沈着する傾向がある物質で通路230を被覆することである。
図3は、本発明に係るX線窓構成体の第2の窓要素310の好ましい装着状態を示している斜視図である。第2の窓要素310の2つの端部が、容器320、330の外壁に設けられた夫々のスリット322、332に挿入されている。これらスリット322、332は、第2の窓要素310に大幅な摩擦力を生じさせるのではなく、温度変化に対応して、この窓要素が、形状変化を伴わないで、少なくとも接線方向に、伸縮することが可能であることが判る。溶融金属のような電気的伝導性液体が、容器320、330に収容され、表面張力の効果によってスリット322、332でさえも容器320、330内に留保される。このために、スリット322、332の幅が、制限される。図3に示されている実施の形態は、汚染物質を蒸発するための熱源として直接オーム加熱を使用するのに特に適している。適切な接触手段を介して、容器320、330の各々に収容されている液体に電源を適用することによって、第2の窓要素310の各々の端部は、異なる電位差に接続される。窓から離れて電荷を逃がすために、容器の一方は、アースされている(図示せず)。
前述のより簡素な実施の形態として、図3に示されている装着状態を第2の窓要素310の一端部のみについて使用することも考えられる。その他端部は、例えば、クランプ及び電気的接触手段の組み合わせによって、固定されているけれど、それでもなお第2の窓要素は、熱膨張及び収縮を可能にしている。
その他の実施の形態として、2つ以上の側面が、開示されている方法により装着され得る。第2の窓要素310の境界部全体は、特に、導電性液体を収容している容器の複数のスリットへの挿入によって装着され得る。また、第2の窓要素は、窓要素の周囲全体を受けている1のスリットに挿入されている(フレーム枠に入っている)。このスリットは、1つの容器に設けられている。かくして、第2の窓要素310は、ハウジングに気密性に装着され得るので、このことは、中間の領域と、減圧の領域との間の物質の輸送を制限することが重要である実施の形態にとって効果的な特徴である。さらに、直接のオーム加熱によって第2の窓要素を加熱することが、望まれるならば、相互に電気的に絶縁されている複数の容器が、使用され得る。この方法では、異なる電位差は、窓要素の異なる端部部分に適用されることが可能である。前述で指摘されているように、電子が逃がされるように、窓要素の周囲部の少なくとも一部分が、アースされるべきである。
図4は、本発明の実施の形態に係るX線窓構成体を含む液体金属ジェットX線源400の部分断面図である。図面の平面は、電子ビームe-及び液体金属ジェットMを含んでいる。真空気密(気密)性のハウジング444と第1の窓要素422とで、減圧の領域410を囲んでいる。このX線源400の動作の間は、10−9乃至10−6bar(10−4乃至10−1Pa)のように真空若しくは近真空圧である。減圧の領域410から空気分子を排出するための手段が、簡単にするために図面から省略されている。X線源の陽極として機能する液体金属ジェットMは、動作の間にノズル432から連続的に噴出され、貯蔵槽436によって収容される。付加的な加熱手段438が、この貯蔵槽内に設けられて、この金属の融点以上に金属を維持するのに十分な加熱を与える。過度な加熱が発生させられるような、他の実施の形態では、液体金属を冷やすことが、必要であり得る。さらに、熱発生量が時間によって変化する場合では、一般的な温度制御手段が、貯蔵槽436に関連して設置され得る。ポンプ440は、液体金属を貯蔵槽436からダクト442を経由してノズル432へと再循環する。電子源450は、液体金属ジェットMに対して主光線方向に沿って電子e−のビームを射出し、このビームは交差領域434で液体金属のジェットMと交差する。この交差領域434は、X線放射線を射出する。この放射線の角度パターンは、電子ビーム及び液体金属ジェットの夫々の幅及び形状のような、幾つかのパラメータの関数で変化する。図4に示されている実施の形態は、主光線方向が、最も強く射出されるX線の強度であるという前提で考えられている。従って、X線窓構成体は、主光線方向と実質的にアライメントされている。交差領域434の下流へは、X線に加えて電子の輸送が起こり得る。
第1の窓要素422以外に、X線窓構成体400は、比較的にさらに大きな第2の窓要素424を備えている。この第2の窓要素424は、浮遊した粒子、飛沫及び蒸気の形態での汚染物質の拡散が、大部分で妨げられるように第1の窓要素に非常に近接に配置されている。しかし、2件の効果を得るために、第2の窓要素424は、ハウジング444にも第1の窓要素422にも、しっかりとフィットされていない。第1に、均圧化が容易にされ、且つ第2に、第2の窓要素424から離れる熱流束が制限される、このことによって単位時間に与えられる必要がある熱量が制限される。第2の窓要素424は、対向した両端部に配置されている電気的な接続点426、428を有している。アース電位は、一方の接続点428に与えられるのに対し、電圧源430は、他方の接続点426にアース電位でない電位に与えられる。第2の窓要素424は、抵抗材ではなく導電体により適切に製造されるので、電流は、図面で垂直方向に流れ、この結果窓要素424を加熱する。その上、上流方向から第2の窓要素424に衝突する電子は、窓要素424から遠方より輸送されるので、電荷は、蓄積しない。主光線軸に沿った電子は、第2の窓要素424の下流と、さらに、第1の窓要素の下流とには実質的に存在していない。従って、X線源400の出力として、X線放射線のビームが、第1の窓要素の外側の側面から射出されている。
前記電源430は、一定電圧、一定電流を供給するか、X線放射線の発生に関係した複数の量の関数として調整され得る。例えば、電圧は、沈着物生成の比率に関連づけられた電子ビームの強度の変化に従って変化し得る。電圧源430を抑制するための好ましい方法は、一定温度即ち温度範囲以内での誤差を許容する温度に第2の窓要素424の複数の点の温度を維持することである。適切な温度は、制御可能な真空若しくは近真空に関連して、液体金属ジェットで使用される金属の蒸気圧が、金属の蒸発がX線源の使用者によって満足な比率で起こるような非常に高い状態であり得る。例えば、第2の窓要素424で金属飛沫が頻繁に発生し、画質に対する要求が高いような装置では、第2の窓要素424の材料の経年劣化を加速させるかも知れないけれど、比較的に高温に第2の窓要素424を加熱し得る。理論上は、液体ジェットに使用されるいかなる材料の(温度の関数として)蒸気圧は、第2の窓要素が維持されるのに適した温度を決定する主要なパラメータである。例えば、低温度は、液化ガスを蒸発させるのに十分である。他に、油は、セ氏200乃至300度のような、中温度で適切に蒸発され、高融点の金属は、約セ氏500度のような、高温度を必要とする。溶解物質を含む液体(溶媒)を使用するような特別な場合では、第2の窓要素で予測された沈着物の蒸気圧は、十分な量であるので、この場合に溶媒の性質は、あまり重要でない。熱源における最後の言及として、特に、交差領域434と第2の窓要素424の距離が適切であるならば、交差領域434は、第2の窓要素424に単位時間当たりにかなりの熱量を伝達できることが判る。従って、図4に示されている実施の形態の熱源は、オーム加熱と、交差領域434とを含む2つの個々の手段である。
本発明の実施の形態に係る自己クリーニングX線窓は、図4に示された線源400と同一構造を有するX線源のみで使用され得るものではない。例えば、液体ジェットのターゲットに衝突する電子ビームとこの衝突により生成されたX線ビームとは、必ずしも平行及び同一直線上になく、任意の角度にすることが可能である。一例では、この角度は、90度である。液体ジェットのターゲットと交差せず、このターゲットの領域を越えるような電子ビームの一部分は、X線窓構成体に向けられないので、電子線生成で0角度以外に電子ビームを電子源から射出することは、好適であり得る。(この部分は、電子ビームが液体ジェットの端部に意図的に向けられている実施の形態においてかなり重要である。)従って、実質的に電子ビームとX線ビームとは、空間内に決して同時に存在しない。
他の方法として、本発明は、2つのチャンバに分割されている真空気密性のハウジングを有する液体ジェットX線源として具体化され得る。電子源及び液体ターゲットが、前述の第2の窓要素と同一の性質を有する第2の窓要素の手段によって第2のチャンバ(中間の領域)に光学的に接続されている第1のチャンバ(減圧の領域)中に設置されている。第1のチャンバで生成されるX線放射線は、第2の窓要素を介して第2のチャンバに入射し、その後、ハウジングに配置され且つ第2の窓要素に平行に並べられている第1の窓要素を通して雰囲気に到達する。これらチャンバは、ハウジングの外側に延びている通路を通って自由な連通状態にある。この通路は、ハウジングでガス気密性の連通手段を通ってチャンバの各々に接続されている。好ましくは、この通路は、チャンバよりも低い温度であり、十分な沈着が内側で起こるような長さを有し得る。さらに好ましくは、面倒な通路を詰まらせる微粒子の除去が、回避されるように、通路が、取り換えられることが可能である。
本発明は、図面及び前述に詳細に図示及び記述されているが、このような図示及び記述は、説明に役立ち若しくは例となり、且つ限定的でないように考慮される。本発明は、記述されている実施の形態に限定されない。例えば、液体ジェットの材料は、広範囲の材料から選択され得る。この材料は、窓構成体に個別の調整及び適用させることが必要であり得る。記述されている実施の形態に含まれている複数の構成要素は、任意であることが判る。特に、十分な熱出力が中間の領域で消散されるならば、X線窓構成体と組み合わされた専用の熱源は、過分であることが証明され得る。実際は、熱出力が非常に高ければ、代わりに冷却手段が、X線源及び窓構成体の構成要素の少なくとも1つを維持するために必要とされ得る。
他に開示されている実施の形態は、図面、記載及び添付された請求項で学ぶことから、請求されている発明を実施するように当業者によって理解されて、実施され得る。実施の形態の技術が互いに異なって依存する請求項に列挙されているという事実は、これらの技術の組み合わせが好適に使用され得ないということを示していない。請求項の参照符号が、権利範囲を限定するものではない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲の請求項を、参考のために付記として記載します。
付記1
中間の領域(112;212)から周囲の圧力領域(114;214)を分離している第1のX線透過窓要素(122;222)と、
汚染物質が、減圧の領域に面している第2のX線透過窓要素(124;224;310)の側面に沈着することが予測され、減圧の領域(110;210)から前記中間の領域を分離している前記第2のX線透過窓要素と、
前記第2のX線透過窓要素に沈着された汚染物質を結果として蒸発するために少なくとも前記第2の窓要素の一部分の加熱に適用されている熱源(120)とを具備する自己クリーニングX線窓構成体(100;200)。
付記2
前記減圧の領域に面している前記第2の窓要素の側面は、導電性である付記1の自己クリーニングX線窓構成体。
付記3
前記中間の領域と前記減圧の領域とは、少なくとも部分的に連通状態である付記1若しくは2の自己クリーニングX線窓構成体。
付記4
前記汚染物質が、前記中間の領域へ到達することから妨げられるために、前記通路が、前記汚染物質を沈着させるように、前記中間の領域と前記減圧の領域とを連通している圧力均一の通路(230)をさらに具備する付記3の自己クリーニングX線構成体。
付記5
前記中間の領域における圧力が、前記減圧の領域よりも大きい付記1若しくは2の自己クリーニングX線構成体。
付記6
前記中間の領域における圧力が、前記減圧の領域と実質的に等しい付記1乃至4のいずれか1の自己クリーニングX線構成体。
付記7
熱膨張を許容するために、前記第2の窓要素が、余裕をもって装着されている付記1乃至6のいずれか1の自己クリーニングX線構成体。
付記8
前記第2の窓要素の少なくとも一部分が、200マイクロメータ以下、好ましくは100マイクロメータ以下、さらに好ましくは60マイクロメータ以下の厚さを有するグラッシーカーボンで構成されている付記1乃至7のいずれか1の自己クリーニングX線構成体。
付記9
前記熱源(120)は、少なくともセ氏500度の温度で前記第2の窓要素を維持するように動作され得る付記1乃至8のいずれか1の自己クリーニングX線構成体。
付記10
前記熱源(120)は、前記第2の窓要素のオーム加熱を発生するために第2の窓要素の伝導性部分の複数の領域の間に電圧を印加するための手段(426、428、430)を有する付記1乃至9のいずれか1の自己クリーニングX線構成体。
付記11
前記熱源は、赤外線源と、マイクロ波源と、レーザと、電子ビーム源と、の少なくとも1つを有する付記1乃至10のいずれか1の自己クリーニングX線窓構成体。
付記12
前記第2の窓要素の少なくとも境界部分(310)は、導電性液体を収容する容器(320、330)においてスリット(322、332)へ挿入されることによって装着されている付記10の自己クリーニングX線窓構成体。
付記13
第2の窓要素の境界部分の2つの対向した部分が、付記12で規定されているように装着されている付記12の自己クリーニングX線窓構成体。
付記14
ガス気密性のハウジング(444)と、
このハウジング内に設けられている電子源(450)と、
前記ハウジング内に設けられている液体ジェット電子ターゲット(434)と、
前記ハウジングの外壁に設けられている付記1乃至13のいずれか1の自己クリーニングX線窓構成体とを具備するX線源。
付記15
前記電子源(450)及び液体ジェット電子ターゲット(434)のための動作データに基づいて前記自己クリーニングX線窓構成体の熱源を制御するための制御装置をさらに具備する付記14のX線源。

Claims (9)

  1. 減圧の領域(110;210)から周囲の圧力の領域(114;214)を分離し、X線が前記減圧の領域から射出することを許容する自己クリーニングX線窓構成体であって、中間の領域(112;212)から前記周囲の圧力領域(114;214)を分離している第1のX線透過窓要素(122;222)と、
    前記減圧の領域から前記中間の領域を分離している第2のX線透過窓要素であって、前記第2のX線透過窓要素は、当該第2のX線透過窓要素に沈着する汚染物質を受けるための側面を有し、前記側面は、前記減圧の領域に面している、前記第2のX線透過窓要素(124;224;310)と、
    前記第2のX線透過窓要素に沈着された汚染物質を蒸発するために、前記第2のX線透過窓要素の少なくとも一部分加熱するのに適用される熱源(120)とを具備し、
    前記中間の領域は、ガス気密性に密封されており、前記中間の領域の圧力は、前記減圧の領域の圧力よりも高い、自己クリーニングX線窓構成体。
  2. 前記減圧の領域に面している前記第2のX線透過窓要素の側面は、導電性である、請求項1に記載の自己クリーニングX線窓構成体。
  3. 熱膨張を許容するために、前記第2のX線透過窓要素の端部が、間隙を設けて装着されている、請求項1又は2に記載の自己クリーニングX線構成体。
  4. 前記第2のX線透過窓要素の少なくとも一部分が、200マイクロメータ以下の厚さを有するグラッシーカーボンで構成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自己クリーニングX線構成体。
  5. 前記熱源(120)は、少なくともセ氏500度の温度で前記第2のX線透過窓要素を維持するように動作され得る、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自己クリーニングX線構成体。
  6. 前記熱源(120)は、前記第2のX線透過窓要素のオーム加熱を発生するために前記第2のX線透過窓要素の伝導性部分の複数の領域の間に電圧を印加するための手段(426、428、430)を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自己クリーニングX線構成体。
  7. 前記熱源は、赤外線源と、マイクロ波源と、レーザと、電子ビーム源と、の少なくとも1つを有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自己クリーニングX線窓構成体。
  8. 少なくとも1つのスリット(322、332)を備え、導電性液体を収容する容器(320、330)を更に具備し、
    前記第2のX線透過窓要素の端部の少なくとも一端部は、前記少なくとも1つのスリットへ挿入されることによって装着されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自己クリーニングX線窓構成体。
  9. 前記第2のX線透過窓要素の2つの対向した端部が、前記スリット(322、332)にそれぞれ装着されている、請求項8に記載の自己クリーニングX線窓構成体。
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