本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。本実施の形態の画像処理装置は、屋外の監視領域を撮像した画像を処理する。そして、本実施の形態の画像処理装置は、監視領域の外部から監視領域の内部に侵入してきた人物を検出する。
なお、本実施の形態では、監視領域に植栽揺れと日照変動という2種類の背景の変化(背景変化)が生じる場合を例に説明する。
図1は、本発明の実施形態における画像処理装置1の構成を示した図である。画像処理装置1は、画像取得部20、記憶部30、画像処理部40を含んで構成されている。本実施の形態では、画像処理装置1として各部を一体的に説明するが、画像取得部20・記憶部30・画像処理部40とを別筐体とし、通信技術を駆使して必要な制御信号等を通信するようにしてもよい。また、本実施の形態では、撮像装置2および出力部3を画像処理装置1と別筐体としているが、画像処理装置1の筐体に組み込んでもよい。なお、これに限らず、その他の筐体構成を採用してもよい。
撮像装置2は、監視領域を撮像する。撮像装置2は、光学系、CCD素子又はC−MOS素子等の撮像素子、光学系部品、アナログ/デジタル変換器等を含んで構成される。撮像装置2は、固定設置され、視野は一定に保たれる。撮像装置2は、一定の時間間隔(例えば、1/5秒)で順次撮像する。画像は、例えば、各画素値が0〜255の画素値を有するデジタル画像として表現される。なお、撮像装置2は、カラー画像を生成するものでもよい。
画像取得部20は、撮像装置2で撮像された画像を順次取得するインターフェースである。取得された画像は入力画像として記憶部30に記憶される。入力画像が画像処理部40での処理対象とされる。本実施の形態では、画像取得部20は、撮像装置2と接続されている。
なお、本実施の形態では、画像取得部20は、撮像装置2に接続され、撮像装置2の撮像タイミングに合わせて順次画像を取得する。しかし、これに限らず、画像取得部20を画像処理装置1の外部に設けた記憶装置(図示しない)に接続し、当該記憶装置に記憶されている撮像装置2で撮像された画像を順次取得するようにしてもよい。
記憶部30は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、ハードディスク等のメモリ装置で構成される。記憶部30は、画像処理部40からアクセス可能である。記憶部30に記憶される主な情報として、前回入力画像31、注意領域データ32、前回基準画像33、背景データ34がある。なお、図示していないが、記憶部30には、画像処理装置1の各処理を実現するための各種プログラムやパラメータなども記憶する。
ここで、記憶部30に記憶する主な情報について簡単に説明する。先ず、前回入力画像31は、後述する注意領域設定手段41にて現在の入力画像とのフレーム間差分値を算出するために用いる画像である。本実施の形態では、前回入力画像31は、現在、処理の対象になっている入力画像の1フレーム前の入力画像としているが、所定のフレーム数前の入力画像としてもよい。注意領域データ32は、後述する注意領域設定手段41にて注意領域を設定する際に用いるデータである。本実施の形態では、画素毎に設定される注意領域カウンタの値が注意領域データ32である。注意領域カウンタについては後述する。前回基準画像33は、後述する基準画像生成手段42にて1フレーム前に生成された基準画像である。前回基準画像33は、後述する基準画像生成手段42にて演算画素値を算出する際に用いる。背景データ34は、後述する基準画像生成手段42にて基準画像を生成する際に用いる。背景データ34は、入力画像の撮像時刻よりも過去の時点に撮像された画像(過去画像)の画素値を含んだデータである。ここで、背景データ34としては、入力画像の画素毎にそれぞれ撮像時刻が異なる複数の過去画像の画素値が記憶されている。本実施の形態では、入力画像の画素毎に5個の過去画像の画素値が対応付けて記憶されている例について説明する。ただし、これに限定されるものでなく、過去画像の画素値の個数は変更してもよい。背景データ34は、後述する背景データ更新手段45にて適宜更新される。
画像処理部40は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)又はMCU(Micro Control Unit)等の演算装置により構成され、記憶部30に記憶している各種プログラムを読み出して実行する。画像処理部40は、画像取得部20が取得した入力画像を順次処理する。なお、入力画像は、1フレーム毎に撮影時間順に処理してもよいし、数フレームおきに処理を行ってもよい。
画像処理部40は、図1に示すように、注意領域設定手段41、基準画像生成手段42、変化領域抽出手段43、人物判定手段44、背景データ更新手段45の各モジュールから構成されている。
注意領域設定手段41は、画像取得部20にて取得した入力画像中から植栽揺れのような時間的に速い画素値の変化が生じる領域を注意領域として設定する。注意領域設定手段41は、設定した注意領域を基準画像生成手段42に出力する。
ここで、時間的に速い画素値の変化が生じる領域とは、異なる時刻に取得された複数の入力画像において、互いに対応する1つの画素の画素値が日照変動よりも頻繁に変化する領域を意味する。日照変動は、監視領域に陽が差したり、曇ったりすることによって生じる画素値の変化である。
例えば、注意領域設定手段41は、監視領域に在る植栽が風等によって揺れること(植栽揺れ)によって画素値が変化する領域を注意領域として抽出する。具体的に説明すると、植栽は、風に揺れると、葉の部分が反復移動をする。このため、植栽揺れが撮像された領域は、画像上では時間的な画素値の変化が頻繁に生じるという特徴を有する。
注意領域設定手段41は、入力画素の画素毎に、画素値の時間的変化があるか否かを判定する。具体的には、注意領域設定手段41は、入力画像の画素毎に、その画素値と記憶部30に記憶されている前回入力画像31の対応する画素の画素値との差分絶対値を求める。そして、算出された差分絶対値が所定の差分閾値以上となる画素を「フレーム間の差分がある画素」と判定する。例えば、入力画像の輝度レンジが0〜255である場合、差分閾値は8以上に設定することが好適である。なお、注意領域設定手段41は、本処理を実行するために、前回入力画像31として記憶部30に入力画像を記憶し、前回入力画像31を順次更新する。具体的には、入力画像についてフレーム間差分を求めた後、記憶部30に記憶されている前回入力画像31を入力画像で更新する。
そして、注意領域設定手段41は、「フレーム間差分が所定の差分閾値以上」という条件を頻繁に満たす画素を注意領域として抽出する。具体的には、注意領域設定手段41は、画素毎に、「フレーム間差分が所定の差分閾値以上」であるか否かを判定し、「フレーム間差分が所定の差分閾値以上」という条件を満たすときに当該画素の注意領域カウンタをN(例えば、20)カウントアップする。ただし、注意領域カウンタは、最大値N_MAX1(例えば、100)を上限とし、カウントアップすることによって最大値N_MAX1を超える場合には最大値N_MAX1に制限する。また、注意領域設定手段41は、判定の対象になっている画素が「フレーム間差分が所定の差分閾値未満」である場合、当該画素の注意領域カウンタをM(M<Nであり、例えば、1)カウントダウンする。ただし、注意領域カウンタは、0を下限とし、カウントダウンすることによって0を下回るときには0に制限する。ここで、注意領域設定手段41は、画素毎に注意領域カウンタの値を注意領域データ32として記憶部30に記憶させる。
注意領域設定手段41は、記憶部30の注意領域データ32を参照し、注意領域カウンタが所定のカウント閾値以上であるか否かを画素毎に判定する。例えば、カウント閾値は、40に設定する。注意領域設定手段41は、注意領域カウンタが所定のカウント閾値以上であると判定された画素の集合を注意領域として設定する。
以上の処理によれば、注目画素の注意領域カウンタは、注意領域の条件(フレーム間差分が所定の差分閾値以上)を満たす状態がある程度連続して生じたときにカウント閾値以上となり、注目画素は注意領域として抽出される。すなわち、注意領域カウンタは、注意領域の条件を満たすときには大きなカウントアップ値でカウントアップされ、注意領域の条件を満たさなくなったときにはカウントアップ値よりも小さいカウントダウン値でカウントダウンされて徐々に小さくなる。これにより、注意領域設定手段41は、注目画素の画素値の変化が一時的に収まったとしても、過去に注意領域の条件を満たす状態が続いていた場合には、注目画素を注意領域に含めるものとする。
例えば、植栽揺れにより画素値の変化が生じている場合、風が一時的に止んで植栽揺れが一時的に収まっても、過去に注意領域の条件を連続して満たしていた領域はしばらくの間注意領域として抽出される。これにより、注意領域設定手段41は、一時的に植栽揺れが収まっただだけの場合は、再び風が吹いて植栽揺れが生じるタイミングにおいて注意領域として維持される。
なお、注意領域として抽出する変化は、植栽揺れに限定されるものではなく、旗揺れ(主に旗の縁部の揺れ)、揺れる植栽の影、揺れる植栽から漏れる日の光、イルミネーションの点滅等による画素値の変化であってもよい。
また、植栽揺れの場合、複数の葉が重なり合っているため、画像上では、重なり合う葉の部分が細かな模様として写るという特徴をさらに有する。そこで、画素値の変化が頻繁に生じ、かつ、細かな模様が写っている領域を注意領域として抽出する処理としてもよい。
この場合、注意領域設定手段41は、入力画像の画素毎に、細かな模様として撮像されているか否かを判定する。具体的には、注意領域設定手段41は、入力画像において、強いエッジを有する画素が密集している(エッジ密度が高い)か否かを判定する。先ず、注意領域設定手段41は、入力画像のエッジ画像(以下、入力エッジ画像と呼ぶ)を生成する。入力エッジ画像は、ソーベルフィルタ等の空間微分フィルタを用いて計算したエッジ強度を所定のエッジ閾値以上で二値化することで求めることができる。例えば、エッジ閾値は10以上に設定することが好適である。そして、注意領域設定手段41は、求めた入力エッジ画像の画素毎に、当該画素の所定範囲(例えば、5×5画素)の平均値が所定のエッジ密度閾値以上となるか否かを判定する。注意領域設定手段41は、求めた平均値がエッジ密度閾値以上となる画素を「エッジ密度が高い画素」と判定する。例えば、エッジ密度閾値は10以上に設定することが好適である。
そして、注意領域設定手段41は、「フレーム間差分が所定の差分閾値以上」かつ「エッジ密度が高い画素」という条件を頻繁に満たす画素を注意領域として抽出する。具体的には、注意領域設定手段41は、画素毎に、「フレーム間差分が所定の差分閾値以上」かつ「エッジ密度が高い」か否かを判定し、これらの条件を満たすときに当該画素の注意領域カウンタをK(例えば、20)カウントアップする。ただし、注意領域カウンタは、最大値N_MAX2(例えば、100)を上限とし、カウントアップすることによって最大値N_MAX2を超える場合には最大値N_MAX2に制限する。また、注意領域設定手段41は、判定の対象になっている画素が「フレーム間差分が所定の差分閾値以上」又は「エッジ密度が高い」という条件を満たさなかった場合、当該画素の注意領域カウンタをL(L<Kであり、例えば、1)カウントダウンする。ただし、注意領域カウンタは、0を下限とし、カウントダウンすることによって0を下回るときには0に制限する。ここで、注意領域設定手段41は、画素毎に注意領域カウンタの値を注意領域データ32として記憶部30に記憶させる。
注意領域設定手段41は、記憶部30の注意領域データ32を参照し、注意領域カウンタが所定のカウント閾値以上であるか否かを画素毎に判定する。例えば、カウント閾値は、40に設定する。注意領域設定手段41は、注意領域カウンタが所定のカウント閾値以上であると判定された画素の集合を注意領域として設定する。
以上の処理によれば、画素値の変化が頻繁に生じている画像領域のみならず、細かな模様が写っている画像領域も考慮して、植栽揺れが撮像された画像領域を注意領域として高い確度で抽出することができる。
なお、本実施の形態では、注意領域設定手段41は、画像特徴に基づいて注意領域を設定したが注意領域の設定方法はこれに限られるものではない。例えば、利用者が手動で注意領域を設定するようにしてもよい。この場合、利用者が入力画像中の注意領域に相当する画像領域を選択するための操作入力部(図示しない)を新たに設ける。そして、操作入力部は、利用者が選択した領域を注意領域設定手段41に出力する。注意領域設定手段41は、利用者が選択した領域を注意領域として設定する。その後、注意領域設定手段41は、設定された注意領域を記憶部30に記憶する。この場合、後述する基準画像生成手段42は、記憶部30から注意領域を読み出すようにすればいい。また、本実施の形態では、「画素値の変化が頻繁に生じ、かつ細かな模様が写っている」ことを注意領域の条件としたが、「細かな模様が写っている」ことを注意領域の条件としてもよい。
基準画像生成手段42は、記憶部30に記憶された背景データ34を用いて、基準画像を生成する。具体的には、基準画像生成手段42は、注意領域設定手段41で設定された注意領域内については、類似画素値を適用して基準画像を生成する。すなわち、注意領域内については、植栽揺れのように時間的に速い変化に適した基準画像を生成する。また、基準画像生成手段42は、注意領域以外の領域については、類似画素値とは異なる演算画素値を用いて基準画像を生成する。すなわち、注意領域以外の領域については、日照変動のように時間的に緩やかな変化に適した基準画像を生成する。
以下に、本実施の形態における基準画像の生成方法を説明する。先ず、基準画像生成手段42は、記憶部30に記憶された背景データ34を読み出す。そして、基準画像生成手段42は、入力画像と背景データ34とを参照して、入力画像の各画素値に対応する複数個の過去画像の画素値のうち、当該対応する入力画像の画素値に最も近い値となる画素値を類似画素値として特定する。具体的には、基準画像生成手段42は、複数個の過去画像の画素値の各々と、対応する入力画像の画素値との差分絶対値をそれぞれ求める。そして、基準画像生成手段42は、求められた差分絶対値が最小になる過去画像の画素値を類似画素値として特定する。ここで、基準画像生成手段42は、注意領域設定手段41にて設定された注意領域内の画素について類似画素値を求める。すなわち、基準画像生成手段42は、植栽揺れのように時間的に速い変化が生じる可能性が高い注意領域について、背景データ34から入力画像の画素値になるべく近い画素値を特定する。
なお、類似画素値は、入力画像の画素値になるべく近い画素値であればよく、過去画像の画素値と入力画像の画素値との差分絶対値が最小になる過去画像の画素値でなくてもよい。例えば、過去画像の画素値と入力画像の画素値との差分絶対値が2番目に小さい過去画像の画素値を類似画素値としてもよい。
次に、基準画像生成手段42は、背景データ34を参照して、過去画像の画素値を用いて演算画素値を算出する。演算画素値は、現在処理対象となっている入力画像を用いず、過去画像の画素値を演算することで日照変動のような時間的に緩やかな変化に追従させた画素値である。
具体的には、基準画像生成手段42は、入力画像の画素毎に、リカーシブフィルタを施した値を演算画素値として算出する。リカーシブフィルタによる演算画素値は以下の式で求める。
演算画素値=前回基準画像の画素値×R+最新の過去画像の画素値×(1−R)
ここで、本式で用いられる「前回基準画像の画素値」は、処理の対象となっている入力画像の画素の位置に対応する前回基準画像33の画素値である。このため、基準画像生成手段42は、本処理を実行するために、前回基準画像33を記憶部30に記憶し、さらに更新する。具体的には、基準画像生成手段42は、基準画像を生成した後に、記憶部30に記憶してある前回基準画像33を今回生成した基準画像で更新する。また、「最新の過去画像の画素値」は、処理対象となっている入力画像の画素値に対応付いた背景データ34のうち最新の過去画像の画素値である。
基準画像生成手段42は、注意領域設定手段41にて設定された注意領域外の画素について、演算画素値を算出する。すなわち、基準画像生成手段42は、植栽揺れのように時間的に速い変化ではなく、日照変動のように時間的に緩やかな変化が生じる可能性が高い領域について、背景データ34を用いて時間的に緩やかな変化に追従させた画素値を演算画素値として算出する。
なお、本実施の形態では、リカーシブフィルタを適用して演算画素値を算出するものとしたが、これに限るものではなく、入力画像の画素毎に、背景データ34として記憶部30に記憶された複数個の過去画像の画素値の平均値を算出し、当該平均値を演算画素値としてもよい。日照変動のように時間的に緩やかな変化であれば、複数個の過去画像の画素値の平均値をその変化に追従させた画素値として採用することができる。
次に、基準画像生成手段42は、類似画素値および演算画素値を用いて、基準画像を生成する。具体的には、基準画像生成手段42は、類似画素値を注意領域設定手段41にて設定された注意領域内の基準画像の画素値にする。さらに、基準画像生成手段42は、演算画素値を注意領域設定手段41にて設定された注意領域外の基準画像の画素値にする。基準画像生成手段42は、これらの処理を全ての画素について行うことで基準画像を生成する。
入力画像と基準画像を比較して検出対象による変化領域を高い確度で抽出するためには、基準画像は、入力画像で生じる可能性のある背景変化(植栽揺れ、日照変動)が変化として抽出されないようにした画像であることが好ましい。このような基準画像を生成するため、基準画像生成手段42は、植栽揺れのような時間的に速い変化が起こる可能性が高い領域を注意領域として特定し、注意領域内は時間的に速い変化を吸収した基準画像を生成する。また、基準画像生成手段42は、注意領域外では、日照変動のような時間的に緩やかな変化を吸収した基準画像を生成する。これにより、植栽揺れのような時間的に速い変化や日照変動のような時間的に緩やかな変化を含む入力画像であっても、検出対象による変化領域を高い確度で抽出可能とする基準画像を生成することができる。
具体的に説明すると、植栽揺れは、監視領域内の植栽自体の位置は動かず、葉の部分が風によって反復移動するという時間的に速く繰り返される変化であるため、過去に類似の画素値が画像に撮像されている可能性が高い。したがって、類似画素値を用いることにより植栽揺れに対して適切な基準画像を生成できる。これに対して、日照変動は、時間的により緩やかな変化であるため、リカーシブフィルタ等の時系列フィルタによって変化の予測が容易である。このため、演算画素値を用いることにより日照変動のような時間的に緩やかな変化に対して適切な基準画像を生成できる。
なお、本実施の形態では、注意領域以外の画素については演算画素値とした基準画像を生成したが、注意領域以外の少なくとも一部の画素について日照変動のような時間的に緩やかな変化がみられる領域のみ演算画素値を適用した基準画像としてもよい。例えば、何らかの物体によって常に影になっており、時間的にほとんど変化がみられない領域については、入力画像や背景画像の画素値をそのまま基準画像の画素値としてもよい。
また、本実施の形態では、注意領域と注意領域以外で類似画素値と演算画素値を使い分けて基準画像を生成したが、注意領域によらず類似画素値にて基準画像を生成してもよい。
変化領域抽出手段43は、画像取得部20が取得した入力画像と、基準画像生成手段42が生成した基準画像を比較して、変化領域を抽出する。本実施の形態では、変化領域抽出手段43は、画素毎に、判定の対象となる画素とその周辺の画素の画素値のパターンについて、入力画像と基準画像の類似性を正規化相関により算出する。そして、変化領域抽出手段43は、相関の有無に基づいて変化のある画素(変化画素)か否かを判定する。そして、変化画素と判定された画素の集合を変化領域として抽出する。具体的には、変化領域抽出手段43は、判定の対象となる画素を中心とする5画素×5画素の範囲の25画素について、入力画像と基準画像の正規化相関値Cを算出する。正規化相関値Cは次式のように計算する。
C=(Σ((I(x)−Ia)×(B(x)−Ba)))/(Id×Bd)
ここで、I(x)は25画素のうちのインデックスxであらわされる画素に対応する入力画像の画素値、Iaは25画素の入力画像の画素値の平均値、B(x)は25画素のうちのインデックスxであらわされる画素に対応する基準画像の画素値、Baは25画素の基準画像の画素値の平均値、Idは25画素の入力画像の画素値の標準偏差、Bdは25画素の基準画像の画素値の標準偏差である。正規化相関値Cは、入力画像と基準画像の25画素の画素値パターンの類似度合いを表し、−1〜1の値をとる。正規化相関値Cが1に近いほど比較する対象のパターンが似ていて、正規化相関値Cが1から離れるほどパターンが異なる。正規化相関値Cが−1の場合は完全に反転している状態になる。
変化領域抽出手段43は、判定の対象となっている画素について求めた正規化相関値Cが所定の相関閾値より低いとき、当該画素を変化画素であると判定する。変化領域抽出手段43は、判定の対象となっている画素について求めた正規化相関値Cが所定の相関閾値より高いとき、当該画素を変化画素でないと判定する。本実施の形態では、正規化相関値Cが相関閾値よりも低いときは、人物等による大きな変化が入力画像に生じていることを意味する。また、正規化相関値Cが相関閾値よりも高いときは、入力画像が変化していない、若しくは、人物による変化よりも小さな変化が入力画像に生じていることを意味する。また、変化画素の抽出に用いる基準画像は、検出対象による変化以外の植栽揺れや日照変動等による変化は変化領域として抽出されないように生成されたものである。このため、植栽揺れや日照変動等による変化が生じた場合も、正規化相関値Cは相関閾値よりも高くなる。相関閾値は、例えば、0.7に設定することが好適である。
変化領域抽出手段43は、同様に、全ての画素について変化画素であるか否かを判定する。そして、変化画素であると判定された画素の集合を変化領域とする。変化領域抽出手段43は、抽出された変化領域を人物判定手段44および背景データ更新手段45に出力する。
なお、本実施の形態では、変化領域抽出手段43は、正規化相関を利用して、判定対象となる画素とその周辺の画素の画素値のパターンの類似性に基づき、変化領域の抽出を行った。しかし、これに限らず、変化領域抽出手段43は、入力画像と基準画像を比較して変化領域を抽出するものであればよい。例えば、入力画像と基準画像を差分二値化する処理によって変化領域を抽出してもよい。また、変化領域抽出手段43は、正規化相関による抽出処理と差分二値化処理による抽出処理を併用してもよい。
人物判定手段44は、変化領域抽出手段43にて抽出された変化領域について、人物であるか否かを判定する。人物判定手段44は、変化領域に対して、人物である可能性を示す特徴量を算出する。
本実施の形態では、算出する特徴量は、変化領域の「実面積」、「長短軸比」、「長軸角度絶対値」とする。変化領域の「実面積」は、当該変化領域の人物の大きさとしての妥当性を示す特徴量である。人物判定手段44は、変化領域に外接する矩形について、その画像内の位置と撮像装置2の設置高や俯角情報等のパラメータに基づいて、実空間での高さと幅を求め、高さと幅の積を実面積として算出する。「長短軸比」は、変化領域の人物の形状としての妥当性を示す特徴量である。人物判定手段44は、変化領域を楕円近似し、当該楕円の短軸長と長軸長との比(短軸長÷長軸長)を長短軸比として算出する。「長軸角度絶対値」は、変化領域の人物の姿勢としての妥当性を示す特徴量である。人物判定手段44は、変化領域を楕円近似したときに、垂直方向(Y軸方向)を0度とした場合の長軸の傾きの絶対値を長軸角度絶対値として算出する。
なお、本実施の形態では、説明を簡単にするために、3つの特徴量にて説明したが、これに限られるものではなく、種々の特徴量を利用してもよい。
次に、人物判定手段44は、算出した特徴量に基づいて変化領域が人物によるものか否かを判定する。本実施の形態では、算出された3つの特徴量である「実面積」、「長短軸比」、「長軸角度絶対値」の値が人物として妥当な値であるか否かを判定する。具体的には、「実面積」が6000平方センチメートル以上である場合に人物であり、そうでない場合に人物でないと判定する。また、「長短軸比」が0.5以下である場合に人物であり、そうでない場合に人物でないと判定する。また、「長軸角度絶対値」が15度以下である場合に人物であり、そうでない場合に人物でないと判定する。
そして、人物判定手段44は、「実面積」、「長短軸比」、「長軸角度絶対値」の全てにおいて変化領域が人物によるものであると判定された場合に、最終的に当該変化領域を人物によるものであると判定する。人物判定手段44は、変化領域が人物であると判定されると、その旨の判定結果を出力部3に出力する。
なお、本実施の形態では、監視領域の外部から監視領域の内部に進入してきた人物を検出対象として検出する例で説明した。しかし、これに限定されるものではなく、人物以外を検出対象としてもよい。例えば、画像処理装置1は、監視領域の外部から監視領域の内部に持ちこまれた物品を検出対象として検出するものとしてもよい。また、画像処理装置1は、監視領域の外部から監視領域の内部に進入してきた車両を検出対象として検出するものとしてもよい。この場合、人物判定手段44に変えて、各々の検出対象の特徴を表す特徴量を用いて検出対象について判定する手段を設ければよい。
背景データ更新手段45は、基準画像生成手段42で用いられる背景データ34を記憶部30に記憶及び更新する。記憶部30の説明にて前述したように、背景データ34は、入力画像の撮像時刻よりも過去の時点に撮像された過去画像の画素値を含んだ画像データである。
背景データ更新手段45は、先ず、入力画像の画素毎に、変化領域抽出手段43にて変化画素と判定された画素であるか否かを確認する。そして、背景データ更新手段45は、変化領域抽出手段43にて変化画素でないと判定された画素について、当該画素値を対応する背景データ34の最新の過去画像の画素値として記憶部30に記憶する。このとき、既に記憶部30に記憶されている過去画像の画素値のうち、最も古い過去画像の画素値を削除する。また、背景データ更新手段45は、変化領域抽出手段43にて変化画素と判定された画素については、背景データ34を更新しない。
すなわち、背景データ更新手段45は、人物等によって画素値に大きな変化が生じている領域については、背景データ34を更新しない。また、背景データ更新手段45は、変化がない領域、人物による変化より小さな変化が生じている領域、植栽揺れや日照変動が生じている領域については、背景データ34を更新する。
なお、画像処理装置1の起動直後には、背景データ34として過去画素値が5個記憶されていない。このため、背景データ更新手段45は、画像処理装置1を起動した後、各画素に5個ずつ過去画像の画素値が記憶されるまでの間、画像取得部20が取得した入力画像の画素値を順次最新の過去画素値として記憶する処理を行う。
なお、本実施の形態では、背景データ34として、画素毎に5個の過去画像の画素値を記憶するものとしたが、過去画像の画素値の個数は複数個であればよい。
また、本実施の形態では、背景データ更新手段45は、変化領域抽出手段43にて変化領域でないと判定された領域について背景データ34を更新するものとしたが、これに限られない。背景データ更新手段45は、人物判定手段44にて、人物と判定された変化領域以外の領域について背景データ34を更新し、それ以外の領域について背景データ34を更新しないようにしてもよい。この場合、人物判定手段44は、変化領域抽出手段43を介して、人物と判定された変化領域を背景データ更新手段45へ出力する。そして、背景データ更新手段45は、入力画像の画素毎に、人物と判定された変化領域でない画素について背景データ34を更新すればよい。
出力部3は、人物判定手段44から変化領域が人物である旨の信号を入力すると、異常信号を警報部(図示しない)に出力し、ブザーの鳴動や警告灯の表示などにより周囲に異常の発生を通知する。また、インターネット等の通信網を介して遠隔の監視センタ(図示しない)に異常信号を出力することによって、異常の発生を監視センタに通知する構成としてもよい。
次に、図2および図3を参照して、本実施形態の画像処理装置1による画像処理を説明する。図2は、本実施の形態における注意領域と基準画像の生成方法を説明する図である。図3は、本実施形態における画像処理のフローチャートである。
ステップS1では、画像取得部20にて撮像装置2が撮像した画像を入力画像として取得する。
ステップS2では、注意領域設定手段41にて、入力画像における注意領域を設定する。図2の例では、注意領域設定手段41にて設定された注意領域を、白色の領域35で示している。
ステップS3からS7では、基準画像生成手段42による基準画像の生成処理が行われる。基準画像生成手段42は、画像に含まれる画素を順次着目画素として、ステップS4、S5、S6の処理を画像に含まれるすべての画素に対して繰り返し、基準画像に含まれる各画素の画素値を決定する。すなわち、ステップS3からS7の処理は、基準画像の全ての画素について順次実行される。
ステップS4では、基準画像生成手段42にて処理の対象となっている着目画素が注意領域内であるか否かを判定する。注意領域内である場合は、ステップS5へ処理を移行させ、注意領域外である場合は、ステップS6へ処理を移行させる。
ステップS5では、基準画像生成手段42にて、入力画像及び背景データ34を用いて類似画素値を求める。そして、基準画像生成手段42は、類似画素値を処理対象となっている基準画像の画素の画素値とする。図2の例では、入力画像の画素である画素aは、注意領域内の画素である。また、背景データ34aとして、画素aに対応する5個の過去画像の画素値が記憶されている。基準画像生成手段42は、背景データ34aのうち画素aの画素値と最も類似する画素値としてa2を特定し、当該画素値を類似画素値とする。
ステップS6では、基準画像生成手段42にて、背景データ34に含まれる複数の画素値を用いて演算画素値を算出する。本実施の形態では、背景データ34に含まれる複数の画素値に対してリカーシブフィルタを適用して演算画素値を算出する。そして、基準画像生成手段42は、算出された演算画素値を基準画像の着目画素の画素値とする。図2の例では、入力画像の画素である画素bは、注意領域外の画素である。また、背景データ34bとして、画素bに対応する5個の過去画像の画素値が記憶されている。基準画像生成手段42は、背景データ34bの着目画素に対応する画素を用いて演算画素値を算出する。具体的には、リカーシブフィルタの式に、過去画像の画素値のうち最新の画素値であるb5の画素値および前回基準画像33において画素bの位置に対応する画素33bの画素値b33を代入して演算画素値を算出する。
ステップS3からステップS7までの処理によって基準画像が生成されると、ステップS8へ処理を移行させる。
ステップS8では、変化領域抽出手段43にて、ステップS1で取得した入力画像と基準画像を比較し、画素毎に変化画素であるか否かを判定する。そして、変化領域抽出手段43は、変化画素の集合を変化領域として抽出する。
ステップS9では、人物判定手段44にて、ステップS8で抽出した変化領域について人物であるか否かを判定する。
ステップS10およびステップS11では、ステップS9で人物と判定された場合に判定結果を外部の出力部3に出力し、ステップS12へ処理を移行させる。ステップS9で人物と判定されなかった場合は、外部の出力部3への出力をすることなく、ステップS12へ処理を移行させる。
ステップS12では、背景データ更新手段45にて、ステップS8で変化画素と判定されなかった画素について、当該画素に対応する背景データ34の画素を更新する。変化画素と判定されなかったすべての画素について背景データ34の更新処理が終了すると、ステップS1に処理を戻し、新たな入力画像に対する処理を開始する。
以上のように、本実施の形態によれば、監視領域を撮像した入力画像から人物等の検出対象に起因した変化領域を高い確度で検出することができる。