JP5015838B2 - 煙検出装置 - Google Patents

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Description

この発明は、監視カメラが撮像して得られる画像を画像処理することにより煙の発生を検出する煙検出装置に関する。
トンネル内などにカメラを設置し、そのカメラの撮像画像を画像処理装置で処理して煙を検出する火災検出装置がある。画像処理装置では、一般的に、基準となる画像(基準画像)を記憶しておき、最新の撮像画像と基準画像との差分することで、変化の生じた領域を抽出するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3909665号公報
監視対象となる場所がトンネルであって、そのトンネルの道路の進行方向を撮像するように、カメラをトンネル壁面に設置すると、その撮像された画像は、特許文献1の図2に示すように、奥行きのある画像となる。
このような奥行きのある監視画像において、煙が発生した場合、その煙の発生した位置が、カメラ近傍では大きく映るが、カメラから離れた所で煙が発生した場合には、その煙の大きさが同じ程度の煙であったとしても、画像内で映し出される煙の領域は、非常に小さくなる。
このように、カメラからの距離が大きく異なる箇所を監視する場合、実際には同じ位の大きさの煙が発生しているにも係わらず、画面奥と画面の手前側では映り方が全く異なり、同じ判断基準で煙を検出することが困難であるという問題がある。
この発明の目的は、カメラからの距離が遠近のある箇所を監視する際、どの場所で煙が発生しても正確に煙を検出できる煙検出装置を提供することである。
この発明に係る煙検出装置は、撮影された画像をマトリクス状に縦横複数の検出領域に分割する検出領域設定手段と、検出領域設定手段によって分割された検出領域毎に、煙検出判定要素の特徴量を演算する演算手段と、煙検出判定要素の特徴量に基づいて、検出領域内における煙の有無を判定する判定手段とを備え、検出領域設定手段は、大検出領域及び小検出領域の少なくとも大小2つの大きさの異なる検出領域で、画像を小検出領域に分割した後、画像を小検出領域の大きさの2のN乗倍(Nは1以上の整数)の大検出領域に分割し、演算手段は、小検出領域で演算された煙検出判定要素の特徴量をもとに、小検出領域の煙検出判定要素の特徴量と同じ特徴量である、大検出領域の煙検出判定要素の特徴量を演算し、判定手段は、同じ判定基準で、小検出領域内における煙の有無および大検出領域内における煙の有無を判定することで、カメラからの距離が異なる箇所での煙の発生を検出することを特徴とするものである。
この発明に係る煙検出装置の効果は、検出領域設定手段が、撮影された画像をマトリクス状に縦横複数の検出領域に分割する。この際、画像は、まず検出領域の大きさが小さい小検出領域によって分割され、その分割された検出領域毎に煙検出判定要素の特徴量を演算手段が演算することで、カメラから離れた遠方における煙を検出できるようにしてある。
また、小検出領域で分割した後は、画像は、検出領域の大きさが大きい大検出領域によって分割され、その分割された大検出領域毎に煙検出判定要素の特徴量を演算手段が演算することで、カメラから近い近傍における煙を検出できるようにしてある。このようにして、カメラからの距離が遠近のある箇所を監視する際、どの場所で煙が発生しても正確に煙を検出することができる。
また、検出領域設定手段によって、画像は小検出領域に分割された後、大検出領域に分割され、演算手段は、小検出領域で演算された煙検出判定要素の特徴量をもとに、大検出領域の煙検出判定要素の特徴量を演算する。このため、大検出領域における煙検出判定要素の特徴量の演算を容易に短時間で処理することができる。
A:煙検出の原理について
まず、本実施の形態の煙検出装置を説明する前に、どのような原理に基づいて画像から煙を検出するかについて図1〜図3を用いて説明する。室内を撮像した図1において、図1(a)、図1(b)は、監視カメラで撮影した原画像を示し、図1(a)は煙のない状態、図1(b)は、検出領域に煙が入った状態を示している。また、図2(a)、図2(b)は、横軸が輝度、縦軸が画素数で示される検出領域内における輝度分布を示しており、それぞれ、図1(a)、図1(b)に対応した図面となっている。また、図3において、図3(a)、図3(b)は、検出領域W1の微分処理の結果を示しており、それぞれ図1(a)、図1(b)に対応した図面となっている。
ここで検出領域とは、図1(a)、図1(b)で示した監視領域である室内において、窓ガラスの周辺を矩形で囲んだ領域W1をさし、室内において、煙の発生を監視する領域(エリア)である。図2(a)において、室内に煙がない状態においては、輝度は高い値から低い値まで、広い範囲にわたって、その画素が分布していることが分かる。各画素の輝度値を足し算して、全画素数で割った値である輝度値の平均(平均輝度値)を求めると、当然、その平均値からのずれである分散は大きな値を示すことになる。
これに対して、図1(b)の検出領域内に煙が入ると、その領域は、視界がぼやけた感じになってくる。このことを図2(b)の輝度の分布図でみると、煙のない状態に比べ、輝度のとりうる範囲は、狭くなってくる。ここでも同様に、輝度値の平均値を求め、分散を演算すると、平均値とのずれ(分散)は小さくなることがわかる。このような煙の流入に伴い、輝度の分布範囲が狭くなることは、煙が黒煙、白煙どちらの場合でも言えることであるが、黒煙の場合は、輝度値が低下する方向にシフトし、白煙の場合は、輝度値が上昇する方向にシフトする。また、検出領域が完全に、煙で充満された状態になれば、輝度の分布範囲は、更に狭くなり、ほぼ特定の輝度値に収束するものと考えられる。
また、窓ガラスを含んだ検出領域W1は、外の明るい部分と、室内の暗い部分は、輝度の差が大きく、微分処理(エッジ処理)を行うと、窓ガラス部分の輪郭に対応した、大きなエッジができる(図3(a)参照)。しかし、煙の入った状態において、微分処理を行っても、煙のない通常状態に比べ、輝度の差は大きくなく、エッジはあまりでない(図3(b)参照)。つまり、煙が発生する場合には、検出領域におけるエッジ量が変化するものと考えられる。
更に、煙のゆらぎは小さく、周波数分析を行うと、低周波帯域が高周波帯域よりも大きくなることが確認された。
このような観点に基づき、本出願の発明者は、煙が発生すると、
(1)視界がぼやけ透過率又はコントラストが低下すること、
(2)輝度値がある値に収束すること、
(3)輝度分布の範囲が狭まり輝度の分散が小さくなること、
(4)輝度の平均値が、通常の煙のない状態から変化すること、
(5)検出領域において、エッジの総和量が変化すること、
(6)低周波帯域の強度が高周波帯域の強度よりも大きいこと、
を導きだした。これらを総合的に判断して煙の検出を可能なものとした。
B:本発明の基本構成
図4は、この発明の実施の形態に係る煙検出装置の構成図である。この発明の実施の形態に係る煙検出装置は、図4に示すように、火災(煙)発生監視範囲を例えば1秒間に30枚の割合で撮影してフレーム毎の画像データを出力するカメラ2および画像データを処理して煙の発生を検出しそれに基づいて警報を発する検出装置3を備える。このカメラ2は、例えばCCDカメラまたはCMOSカメラから構成される。
検出装置3は、中央演算装置(CPU)4、ROM5、RAM6、内蔵タイマ7、入出力インターフェース(I/O)8からなり、フレームグラバー9と外部記憶装置10とが内蔵されているコンピュータから構成されている。
フレームグラバー9は、カメラ2が出力した、NTSC方式の映像信号から、画像データを取得する。画像データは、例えば1ライン640画素、1フレーム480ラインからなり、画素は、256階調の輝度で表される。ROM5には、CPU4で行う処理演算の手順がプログラムとして記憶されており、CPU4はプログラムを読み出し、それに基づいて処理演算の手順を進める。
図5は、この発明の実施の形態に係る検出装置3のROM5とRAM6に確保されている各種記憶部である。
検出装置3には、図5に示すように、フレームグラバー9が取得した画像に関する輝度データ(以下、最新画像データと称す)を記憶する画像記憶部11、基準画像に関する輝度データ(以下、基準画像データと称す)を記憶する基準画像記憶部12、基準画像の各検出領域における基準データを記憶する基準データ記憶部13、検出領域に関する情報を記憶する検出領域記憶部14、時系列的に検出領域の輝度の平均と分散を記憶する輝度平均分散記憶部15、煙検出手順の度に、煙有りと判断された検出領域の数を記憶する検出数記憶部16が記憶領域として設定されている。
検出装置3の大まかな構成は、図6に示すように、検出装置3を新たに設置するとき初期設定を行う初期設定手段21、カメラ2から出力される画像データを画像記憶部11に記憶する画像記憶手段22、煙を検出する検出手段23、煙を検出したとき火災判別を行う煙判別手段24、および基準画像データを更新する基準画像更新手段25と、基準画像データを置き換える基準画像置換手段26とから構成されている。
ここで、まず、本実施の形態の画像処理方法について詳細に説明する前に、画像処理を行う前段階で実行する検出準備について説明する。初期設定手段21は、検出領域設定手段27、明暗輝度値算出手段28、基準データ演算手段29を備えている。
検出装置3において、検出領域から異常発生領域となる煙発生領域を抽出する手段としては、基準画像と最新画像との画像間の差分処理を基本としている。そこで、基準となる基準画像を用意し、それと現時点の画像とを差分処理する。
初期の基準画像は、例えば図1(a)のように、煙検出装置を新たに設置し且つ何も異常が発生していない状態において撮影された画像である。
検出領域設定手段27について説明する。検出領域設定手段27は、検出処理を開始する前に実行され、監視カメラ2が撮像(撮影)した基準画像や最新の画像において、画像のどの部分の領域を、検出領域として設定するかを決めるものである。画像全体を監視しようとすると、画像処理の演算量が膨大となって大変である。そこで本実施の形態では、検出領域設定手段27は、少なくとも大きさの異なる大小2つの検出領域で、画像を分割して、検出領域毎に、平均輝度などの煙検出判定要素の特徴量の演算を行う。
つまり、図7(a)のように複数の小領域、例えば縦64×横64の画素領域をまとめて一つの小検出領域とし、また図7(b)のように複数の大領域、例えば縦128×横128の画素領域をまとめて一つの大検出領域とし、この小検出領域および大検出領域を画像内に縦横複数個マトリクス状に設定(分割)し、その任意の領域を検出領域とする。このように、画像全体でなく、一部の領域を検出領域として取り扱うことにより、演算量を少なくすることができ、且つノイズの影響を小さくすることができる。
なお、小・大検出領域の大きさは限定されないが、大検出領域の大きさを小検出領域の大きさの2のN乗倍(Nは1以上の整数)にすると、周波数解析などを行う際に、都合がよい。また、小検出領域で演算した特徴量を用いて大検出領域の特徴量を演算することができるので全体の演算量を小さくすることができる。即ち図7の状態では、図7(b)の大検出領域一つは縦横2個の計4つ小検出領域をまとめたものであり、小検出領域4つの演算をすませれば、それらの4つの値を合算、又は合算して四で除算するだけで対応する大検出領域の演算を処理できる。また、2つ以上の検出領域を連結して、1つの検出領域として扱ってもよい。
また、この実施の形態では大検出領域と小検出領域のように大きさの異なる2種類の検出領域を設定するが、検出領域の大きさを変えて3種類以上の検出領域を設定しても良い。
ここで、図1に戻って、図1(a)では検出領域が、W1、W2で示されている。検出領域W1は、窓ガラスを囲んだ矩形の領域であり、W2は、部屋の床側の隅を矩形で囲んだ領域である。ここで、検出領域Wは、画像のどの部分にも、その大きさ、形状を変えて設定することが可能であるが、望ましくは、検出対象となる煙が発生する場所であり、煙が検知しやすい場所に設定すべきである。
また、検出領域は、検出感度を考慮して設定することが望ましく、輝度の変化の大きな領域を検出領域としている。これは、図1、図2の煙検出原理で説明したように、煙の流入に伴い、その領域は、輝度の分布範囲が狭くなる。即ち、何もない通常状態のときから、輝度分布が狭い領域では、煙が入っても、変化が乏しく、煙を検出しにくい。これに対し、窓ガラスの領域W1は、外光が入っており、部屋の隅のW2の領域に比べれば、輝度分布が広いので、煙が入ると、輝度の分布の変化が検出しやすい。検出領域設定手段27は、具体的には、準備段階において煙など検出精度に影響を与える可能性のあるものがないことを確認してから撮影した初期の基準画像データを検出領域毎に空間微分処理し空間微分値の大きな領域、つまり輝度の分布範囲が大きい領域を検出領域として設定する。
また、検出領域設定手段27は、基準画像データのうち、輝度の飽和の影響を防止するため、所定の輝度以上を除外するようにしてもよい。例えば、輝度が250以上である画素を除いて空間微分処理して空間微分値を求め、空間微分値の総和の最も大きな領域を1つの検出領域として設定する。
初期の基準画像データを小検出領域、例えば縦64×横64、計4096画素からなる領域毎に、その領域全体に亘って走査して各領域の空間微分値の総和を求める。それから、最も空間微分値の総和の大きい領域を第1の小検出領域と設定し、次に、第1の小検出領域と重ならない領域のうち最も空間微分値の総和の大きい領域を第2の小検出領域と設定する。この操作を繰り返して、全ての小検出領域を空間微分値の総和の大きい順に記憶し、空間微分値の総和の小さすぎる領域を除いて所定の個数の小検出領域を煙検出の領域として設定し、設定された小検出領域の情報を検出領域記憶部14に記憶する。
また、初期の基準画像データを大検出領域、例えば縦128×横128、計16384画素からなる領域毎に、その領域全体に亘って走査して各領域の空間微分値の総和を求める。それから、最も空間微分値の総和の大きい領域を第1の大検出領域と設定し、次に、第1の大検出領域と重ならない領域のうち最も空間微分値の総和の大きい領域を第2の大検出領域と設定する。この操作を繰り返して、全ての大検出領域を空間微分値の総和の大きい順に記憶し、空間微分値の総和の小さすぎる領域を除いて所定の個数の大検出領域を煙検出の領域として設定し、設定された大検出領域の情報を検出領域記憶部14に記憶する。なお、この検出領域の設定においては、空間微分値(エッジ量ともいう)で、検出領域に適した領域であるか否かを判断しているが、透過率で判断してもよく、空間微分値、又は透過率について少なくとも一方が低い場合には、マスクをかけて検出領域として使用しないことが望ましい。
このようにサイズが異なる2種類の検出領域を用いることにより写り方が異なるような煙の発生でも同じ判断基準で煙の発生を検出できる。すなわち、図8(a)に示すように奥行きがある範囲を撮影した画像においては、奥側で発生した煙と手前側で発生した煙とは同じ大きさの煙が発生したとしても写り方が全く異なり、同じ判断基準で煙の有無を判断することが難しい。つまり奥行きのある画像では、カメラから遠くで発生した煙S1は、画像内において、その煙の大きさが非常に小さく現れ、反対に、カメラの近くで発生する煙S2は、同じ大きさであったとしても、非常に大きく現れる。そこで、図8(b)に示すように手前側、つまりカメラの近くで発生した煙S2はサイズの大きな大検出領域を用い、図8(c)に示すように奥側、つまりカメラの遠くで発生した煙S1はサイズの小さな小検出領域を用いるようにすれば、カメラからの距離を無視して、どちらも同じ判断基準で煙の発生を検出できる。
このように同じ大きさの煙でも監視する箇所を写した画像上では全く異なる大きさに写る煙をサイズが異なる2つの検出領域により分担することにより、このような奥行きのある箇所を撮影した画像から安定して煙を検出することができる。
なお、本実施の形態においてはサイズが異なる2種類の検出領域を用いて手前側をサイズの大きな検出領域、奥側をサイズの小さな検出領域で分担するようにしているが、必ずしも2種類の検出領域に限るものではなく、3種類以上の検出領域を用いて適切な箇所を分担するようにしても良い。
また、初期設定手段21は、明暗輝度値算出手段28を備える。この明暗輝度値算出手段28は、明輝度値算出手段と、暗輝度値算出手段とから構成され、明輝度値算出手段は、検出領域内の画素を輝度値の大きさ順に並べて、輝度値の大きい方から、所定数の画素の輝度値を抜き出して平均したものを明輝度値として算出する。そして、暗輝度値算出手段は、検出領域内の画素を輝度値の大きさ順に並べて、輝度値の小さい方から、所定数の画素の輝度値を抜き出して平均したものを暗輝度値として算出するものである。
なお、明暗輝度値算出手段28は、検出領域が新たに設定されたときと基準画像更新手段25又は基準画像置換手段26により基準画像データが更新または置き換えられたときにも撮像した画像から明輝度群および暗輝度群を抜き出し、抜き出した明輝度群および暗輝度群から明輝度値および暗輝度値を算出して基準データ記憶部13に記憶する。
明暗輝度値算出手段28は、各検出領域における明るい輝度の代表値(明輝度値)と、暗い輝度の代表値(暗輝度値)とを演算するもので、これらは、あとで、透過率を演算する際に利用される。
詳細に説明すると、明暗輝度値算出手段28は、図9に示すように基準画像データの大検出領域毎に領域内の画素を輝度値の大きさの順に輝度バッファに並べるものであり、最も明るい側の数画素と、最も暗い側の数画素を使わずに、明輝度群と暗輝度群をぬき出す。即ち、輝度順に並べたとき最も大きい輝度から輝度が小さくなる方向に数えて所定の順番の輝度からそれに輝度が小さくなる方向に連なる所定の数の輝度を抜き出し明輝度群として上位輝度レジスタに記憶する。そして、上位輝度レジスタに記憶されている輝度の平均を求め、それをその大検出領域の基準の明輝度値として基準データ記憶部13に記憶する。
ここで具体的な例(図9)を示して説明する。大検出領域が例えば縦128×横128、計16384画素から構成され、この16384画素の輝度を大きい方から小さい方に並べ、最も大きい輝度から10番目の輝度までを除外し、第1順番としての11番目の輝度から第30順番としての40番目の輝度までを抜き出し明輝度群として上位輝度レジスタに記憶する。それから、上位輝度レジスタに記憶されている明輝度群の輝度の平均値を求めて大検出領域の基準の明輝度値とする。
また、明暗輝度値算出手段28は、画素を輝度の大きさの順に並べたとき、最も小さい輝度から大きい方向に数えて所定の順番の輝度からそれに輝度が大きくなる方向に連なる所定の数の輝度を抜き出し暗輝度群として下位輝度レジスタに記憶する。そして、下位輝度レジスタに記憶されている暗輝度群の輝度の平均を求め、それをその大検出領域の基準の暗輝度値として基準データ記憶部13に記憶する。
ここで具体的な例(図9)を示して説明する。大検出領域が縦128×横128、計16384画素から例えば構成され、この16384画素の輝度を大きい方から小さい方に並べ、最も小さい輝度から10番目に暗い輝度までを除外し、第1順番としての11番目に暗い輝度から第30順番としての40番目に暗い輝度までを抜き出し暗輝度群として下位輝度レジスタに記憶する。それから、下位輝度レジスタに記憶されている暗輝度群の輝度の平均値を求めて大検出領域の基準の暗輝度値とする。つまり明輝度群、暗輝度群いずれも最も明るい輝度又は最も暗い輝度から数えて11〜40番目までの30個の画素の輝度値のデータを取り出して平均値を記憶するものである。
また、明暗輝度値算出手段28は、基準画像データの小検出領域毎に大検出領域と同じ処理を繰り返して、小検出領域毎に明輝度群のデータと暗輝度群のデータを取り出して、それぞれ平均値を、明輝度値、暗輝度値として記憶する。この演算は、煙領域として設定されている全ての大・小の検出領域に対して行う。
このように明暗輝度値算出手段28は、検出領域毎に検出領域の基準画像データの画像の輝度を大きさ順に並べた輝度の配列から最も大きい方の10個の輝度を除外し、その10個に続く30個の輝度の平均を明輝度値とする。そして、最も小さい方の10個の輝度を除外し、その除外した10個に続く30個の輝度の平均を暗輝度値としている。このようにある画像において、画素の位置(座標)を考慮せずに、輝度のデータを集めることで、その画像が持つ全体の明るさを把握するようにしている。このため、撮影される箇所に例えば水面が含まれていて光源からの光が時間によって位置が変わる波で反射されるような状況を撮像する場合において、その反射光を誤報要因から除外することができる。
このことを図10を用いて説明する。図10(a)は、水面で反射した光を撮影した画像であり、図中、十字状で示した2つの部分が、反射した光の部分であり、撮影された画像のうち最も輝度値の大きい部分となっている。図10(b)は、図10(a)とは異なる時刻において、図10(a)と同じ場所で撮影された画像である。この図10(b)においても、十字状の部分は、反射光の部分である。
図10のように、水面に波が発生しているときには、光源からの光が反射した波の位置は、時間の経過と共に変わるので、結果として最も大きい輝度の画素(十字状の部分)は、この図10(a)と図10(b)の関係のように、画像内を転々とする。
ここで例えば、両者をそのまま差分すると、その差分画像(図10(c))では、十字状で示した反射光の部分の2つがそれぞれ変化領域として抽出され、その全て(4つ)が、差分画像(図10(c))で、変化領域として現れる。このため、このような反射光が転々と移動しうるような環境下での撮像画像は差分処理をするのは適してない。なお、このことは、差分処理だけでなく、基準画像と最新画像とを利用して、検出領域毎に透過率を演算する場合にもいえることである。
ところで、このような画像は、反射光のような明るい領域の位置が変化したとしても、画像全体が有する明るさ自体にはほとんど変化がない。したがって、明暗輝度値算出手段28によって、画素の位置座標は無視して、画像の有する輝度情報を輝度順に並べてみると、図10の(a)(b)とも、ほぼ同じ明輝度値、暗輝度値を有することになる。よって、輝度順に並べて求めた明輝度値、暗輝度値を使用することで、基準画像と最新画像とにおける正しい透過率を演算することが可能になる。
なお、本実施の形態においては輝度の配列から最も大きい方から10個と最も小さい方から10個を除外しているが、撮影する箇所により一方からだけ除外しても良いし、除外する数も適宜設定すれば良い。
また、本実施の形態において輝度の配列の大きい方の11番目から40番目までの30個と小さい方の11番目から40番目までの30個とをそれぞれ抜き出し、抜き出した輝度からそれぞれ明輝度値と暗輝度値を算出しているが、抜き出す数はこれに限るものではない。
再び図6に戻って、初期設定手段21は、基準データ演算手段29を備える。基準データ演算手段29は、大または小検出領域毎に基準画像データから大または小検出領域の基準平均輝度、基準分散を求めて基準データ記憶部13に記憶する。
次に、画像記憶手段22の構成について説明する。画像記憶手段22は、輝度補正手段31、現画像記憶手段32を備えている。
輝度補正手段31は、カメラ2から入力された画像データを逆ガンマ補正して輝度を補正する。逆ガンマ補正する理由は、カメラ2が撮影し出力する画像データに、画像データをモニタに表示したとき人間の視感度に合うようにガンマ補正が施されているためで、また、ガンマ補正が施された画像データをそのまま画像処理すると、処理結果にガンマ補正による歪みが含まれるからである。
現画像記憶手段32は、予め定められた取込周期毎に輝度補正された画像データを画像記憶部11に記憶するものである。現画像記憶手段32は、輝度補正手段31で輝度補正された画像データを例えば3秒毎に抜き出し、例えば90フレーム分記憶し、さらに新しい画像を記憶するときも古い画像データから先に削除していくファーストインファーストアウト手順で現画像データを更新する。
次に、検出手段23の構成について説明する。検出手段は、検出領域毎に煙検出判定要素となる特徴量を演算する手段の総称である。検出手段23は、図11に示すように、輝度平均分散演算手段41、判定手段42を備える。
輝度平均分散演算手段41は、画像を取り込む度に、設定された検出領域の大きさ(大検出領域、小検出領域)毎に、その検出領域全体の平均輝度および分散を演算して求める。この演算された検出領域の平均輝度及び分散は、判定手段42によって判定される。つまり、判定手段42は、検出領域毎に、演算した平均輝度と基準画像における平均輝度の比が所定の範囲内にあるか否かを判定する。また、検出領域毎に、演算した分散が基準画像の分散に対して所定の範囲の割合内にあるか否かを判定する。
また、検出手段23は、平均輝度周波数分析手段43を備える。
平均輝度周波数分析手段43は、画像を取り込む度に、設定された検出領域の大きさ(大検出領域、小検出領域)毎に、その検出領域の最新の画像データの平均輝度と、先だって所定の複数、画像記憶部11に記憶された、例えば63個の画像データの当該検出領域の平均輝度を算出し、64個の平均輝度を周波数分析して平均輝度周波数スペクトルを作成する。そして、判定手段42は、平均輝度周波数スペクトルの強度が所定の強度以上か否かを判断する。また、判定手段42は、平均輝度周波数スペクトルを複数の周波数帯に分け、低周波数帯の強度の積分値ほど大きいか否かを判定する。
大または小検出領域の輝度の平均の時系列データに関する周波数スペクトルの一例を図12に示す。検出領域に煙が存在しない場合は、図12(a)に示すように強度が所定の閾値以上にはなることはない。また、図12(b)は、検出領域に煙が存在する場合であるが、ここでは、周波数に関して2つの周波数(2Hz、8Hz)を用いて、低、中、高の3つの周波数帯に分けると、周波数の小さな低周波数帯ほど強度の積分値が大きくなることがわかる。これに対し人工光源では、中又は高の周波数帯が大きく、この周波数の特性を検出することにより、人工光源の周期的な変動と煙とを識別することができる。
また、検出手段23は、明暗輝度値算出手段44、透過率演算手段45、収束輝度値演算手段46を備えている。なお、明暗輝度値算出手段44は、初期設定手段21の明暗輝度値算出手段28と処理手順は同様である。
異なる点は、処理を行う対象となる画像が、基準画像データではなく、最新の画像データであり、最新の画像データを取り込む度に、検出領域の大きさ(大検出領域、小検出領域)毎に、明輝度群の平均値(明輝度値)と暗輝度群の平均値(暗輝度値)とを演算する点である。
透過率演算手段45は、最新の画像データを取り込む度に、設定された検出領域の大きさ(大検出領域、小検出領域)毎に、透過率を式(1)により算出する。
透過率=(現在の明輝度値−現在の暗輝度値)/(基準画像の明輝度値−基準画像の暗輝度値)・・・(1)
なお、透過率の演算においては、明輝度値または暗輝度値のいずれか一方だけを使用して、現在と基準画像との比率から透過率を演算するようにしてもよい。
収束輝度値演算手段46は、最新の画像データを取り込む度に、設定された検出領域の大きさ(大検出領域、小検出領域)毎に、収束輝度値を式(2)により算出する。
収束輝度値={現在の明輝度値−(基準の明輝度値×透過率)/(基準の明輝度値−基準の暗輝度値)・・・(2)
式(1)で表される透過率は、煙が検出領域に入ると、小さくなる。これは、煙が入ったときの明輝度値と暗輝度値の差が煙が入る前の、つまり基準画像の明輝度値と暗輝度値の差より小さくなるからである。しかし、透過率の減少は照明が暗くなったときにも起こる場合がある。
式(2)で表される収束輝度値は、極めて黒い黒煙以外の煙が検出領域に入ると、煙が入る前の、つまり基準画像の収束輝度値に対して増減するが、所定の閾値以下には減少しない。一方、照明が暗くなったときには、所定の閾値以下に減少する。この特性を利用すると白色に近い煙と照明が暗くなったことを、識別することができる。
判定手段42は、演算された透過率が所定値以下であるか否かを判定する。また判定手段42は、演算された収束輝度値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
検出手段23の判定手段42において、最新画像の平均輝度と基準画像の平均輝度の比が所定の範囲内にあり、且つ分散が基準画像の分散に対して所定の範囲の割合内にあり、且つ平均輝度周波数スペクトルの強度が所定の強度以上または低周波帯の強度の積分値が大きい場合に煙の発生の可能性が高いとして判別する。
または、平均輝度周波数スペクトルの強度が所定の強度以上または低周波帯の強度の積分値ほど大きい、且つ透過率が所定の閾値以下且つ収束輝度値が所定の閾値以上の場合に、煙の発生の可能性が高いとして判別する。
以上説明したように、本実施の形態では、複数の煙検出用の演算手段41〜46を備えた。特に、煙検出判定要素は、透過率、収束輝度値、周波数スペクトル、平均輝度の平均値、平均輝度の分散からなり、それらの演算された値が、煙検出判定要素の特徴量となる。
これら演算手段は、全てを使用して、全ての演算手段が判定手段42の条件を満足したときに、検出領域内に煙が発生したものと判別することが、一番、精度良く煙検出が可能となる。しかし、これら、演算手段は、適宜2つ以上、組み合わせて使用するだけでも、単一の演算処理に比べ、十分に煙検出の精度を高めることができ、人工光源の光量の変化や移動物体などを誤って煙と認識することを防止できる。
再び、図6に戻って、煙判別手段24は、検出数記憶部16に記憶した煙有りの検出領域の数に基づいて、画像内に煙があるかどうかを判別する。検出手段23の演算手段41〜46により、検出領域毎の煙の有無を判定手段42で判定し、煙の発生と判別された一画面における検出領域の数が、検出数記憶部16に記憶されている。そして、煙判別手段24は、検出数記憶部16から以前に撮像された画像における煙有りと判定された検出領域の数を時系列データとして読み出し、一定期間の検出数が所定の上限値以上を所定の回数連続するとき、言い換えれば、画像内において、煙有りと判定された検出領域の密度が所定値以上になったとき、煙と判別する。
図6において基準画像更新手段25は、定期的に基準となる基準画像データを更新するための手段である。この手段は、画像記憶部11に記憶されている最新の画像データと基準画像記憶部12に記憶されている基準画像データとを読み出し、これら両画像を利用して、以下の(3)式に基づいて更新用の基準画像データを作成する。
この基準画像更新手段25は、基準画像データを更新または置換する際には、ある評価値を演算し、その評価値に基づいて、基準画像データを更新するか、最新の画像で置き換えるかを決める判別手段を有する。つまり、基準画像更新手段25は、図示しない評価値演算手段を有しており、その評価値演算手段について説明する。
評価値演算手段は、2つの評価値(第1評価値、第2評価値)を演算するものである。第1評価値は、基準画像データと最新の画像データとを差分手段で差分し、全画面の輝度差分の総量によって求められる。また、基準画像データと、最新の画像データを読み出した後、画面を上側の領域と下側の領域とに二分割する分割手段によって、それら画像は、上下に2つの領域(区域)に分けられ、領域毎に最新の画像データと基準画像データとの輝度に関する差分の総量が算出されて、第2評価値の演算にその値が利用される。つまり、下の領域の輝度の差分の総量に対する上の領域の輝度の差分の総量の比を第2評価値として算出する。
なお、第1の評価値は、上下の領域毎に最新の画像と基準画像との差分の総量を算出して、それらの差分の総量の和から、全画面における差分の総量を演算してもよい。このように、評価値演算手段は、分割手段により分割された上下の領域毎に、基準画像との差分を行って、領域毎の差分の総量を評価値として演算する。
基準画像置換手段26は、第1評価値が所定の閾値以上且つ第2評価値が所定の範囲内のとき、カメラ2がずれたと判断する。そして、基準画像置換手段26が最新の画像データで基準画像データを置き換えて基準画像記憶部12に記憶する。
また、判別手段は、第1評価値が所定の閾値未満または第2評価値が所定の範囲外のとき、カメラ2のずれは起こっていないと判断する。そして、基準画像更新手段25が、基準画像データおよび最新の画像データを用いて式(3)により算出した画像データで基準画像データを更新して基準画像記憶部12に記憶する。
更新基準画像データ=基準画像データ×α+最新画像データ(1−α) (3)
以下、具体例を用いて基準画像の更新または置き換えについて説明する。
窓などからの光の入射や照明の程度による変化を反映するために、基準画像の更新時期が到来する度、例えば数秒から数十秒毎に基準画像をIIRフィルタで更新する。この更新では、最新の画像データが基準画像データに対して僅かしか違わないので、更新係数をαとして、式(3)により最新の画像データを基準画像データに反映する。αは0.05〜0.5程度である。
図13(a)は、誤ってカメラ2にずれが生じたとき撮影した最新の画像を基準画像に重ね合わせて表示したものである。
入射する光や照明の明るさなどのように除々に変化するものであれば、IIRフィルタで更新した基準画像データと最新の画像データとを比較することはできる。しかし、誤ってカメラ2にずれが生じたときには、図13(a)に示すように、基準画像データと最新の画像データとの輝度に関して、変化した領域が多くなる。つまり、両画像を差分手段により差分を行うと、差分量が大きく、煙が発生していないも関わらず誤検出することがあると共に正確な煙検出を行えなくなってしまう。
誤ってカメラ2にずれが生じたとき、基準画像データと最新の画像データとの輝度に関する差分の総量は大きくなるが、他にも基準画像データと最新の画像データとの輝度に関する差分の総量が大きくなる場合がある。
ここで、図14(a)は、カメラ2にずれが生じていないときに輝度に関する差分の総量が大きくなる一例で、特に、画像上部領域に変化が生じる場合である。図14(b)は、カメラ2にずれが生じていないときに輝度に関する差分の総量が大きくなる他の一例で、特に、画像下部領域に変化が生じる場合である。
図14(a)は、煙が発生したときの画像であり、発生した煙は画面の上側に片寄って漂ったりする。このときにおいて、画像を上下に分割して、評価値を演算してみる。
まず、最新の画像データと基準画像データとの差分による全画面の輝度差分の総量である第1評価値は、所定の閾値よりも大きくなる。しかし、煙が漂う上部区域の輝度の差分の総量だけが大きくなり、下部区域における差分の変化量はほとんどないことから、下の区域の輝度に関する差分の総量に対する上の区域の輝度の差分の総量の比(第2評価値)は、大きな値をとることになり、所定の範囲外になる。
また、図14(b)は、人が入り込んできたときの画像であり、人は画面の下側に片寄っている。このときにおいて、画像を上下に二分割して、評価値を演算してみる。まず、最新の画像データと基準画像データとの差分による全画面の輝度差分の総量である第1評価値は、所定の閾値よりも大きくなる。しかし、人が入り込んだ下部区域の輝度の差分の総量だけが大きくなり、上部区域における差分の変化量はほとんどないことから、下の区域の輝度に関する差分の総量に対する上の区域の輝度の差分の総量の比(第2評価値)は、小さな値をとることになり、所定の範囲外になる。
一方、誤ってカメラ2にずれが生じたときは、図13(a)に示すように、ずれは画面全体に発生する。つまり、画面分割手段によって上下に分割された図13(b)の上部区域と、図13(c)の下部区域ともに、変化している領域が存在する。したがって、図14の場合と同様に、最新の画像データと基準画像データとの差分による全画面の輝度差分の総量である第1評価値は、所定の閾値よりも大きくなる。
そして、下の区域の輝度に関する差分の総量に対する上の区域の輝度の差分の総量の比(第2評価値)は、上部区域、下部区域の差分の総量がともに大きくなるので、その比は、所定の範囲内になる。
このように基準画像を更新する時期が到来する度に、画像を上下の2つの領域に分割し、区域毎に最新の画像データと基準画像データとの輝度に関する差分の総量をそれぞれ算出し、その上下の区域の輝度に関する差分の総量の和(=全体画面の差分の総量)を第1評価値とし、下の区域の輝度に関する差分の総量に対する上の区域の輝度の差分の総量の比を第2評価値として演算する。そして、第1評価値が所定の閾値以上且つ第2評価値が所定の範囲内のときカメラ2にずれが生じていると判断し最新の画像データで基準画像データを置き換える。つまり、今までの基準画像は使用しないで、最新画像データをそのまま基準画像とする。このため、カメラ2にずれが生じても、誤検出をおこすことを防止でき、正確な煙検出を行うことができる。
なお、本実施の形態では画像の上側の部分と下側の部分をそのまま2つの領域として輝度に関する差分の総量を算出しているが、上側の部分と下側の部分の一部分を2つの区域として輝度に関する差分の総量を算出しても良い。
次に、煙検出装置で行われる火災検出手順について図15から図21を参照して説明する。火災検出手順が始まると、図15に示すように、画像記憶手順(S101)が実行され、次に煙検出手順(S102)、火災判別手順(S103)、基準画像更新手順(S104)が順次実行されて1回の火災検出手順が終わり、火災検出手順が繰り返し実行される。なお、ここでは、火災時に発生する煙を検出することで、火災を判別するようにしている。
まず、画像記憶手順について図16のフローチャートを参照して説明する。
画像記憶手順が開始されると、ステップS201で、カメラ2から画像データが入力されたか否かを判断し、入力されていないときステップS201を繰り返し、入力されているときステップS202に進む。
ステップS202で、画像取込時期が到来しているか否かを判断し、到来しているときステップS203に進み、到来していないときステップS201に戻る。
ステップS203で、入力されている画像データを最新の画像データとし、最新の画像データを逆ガンマ補正することにより輝度補正する。
ステップS204で、輝度補正された最新画像データを現画像記憶部12にFIFOで記憶する。
次に、煙検出手順について図17、図18のフローチャートを参照して説明する。
煙検出手順は、図17、図18のフローチャートで示す手順を全ての検出領域に行う。つまり、まずはじめに小検出領域において、演算手段41〜47に基づき、検出領域の平均輝度、分散、周波数分析、明輝度値・暗輝度値、透過率、収束輝度値に関する演算を行い、判定手段42により、その検出領域における煙の有無が判定される。
それぞれの判定要素にて、煙有りと判定されれば、対応するフラグを1に設定し、煙無しと判定されれば、そのフラグを0に設定する。この手順を順次、全ての小検出領域に行い、全ての小検出領域において、その手順が終了すると、次に、検出領域のサイズを大にして、大検出領域で同じ手順を行う。つまり、大検出領域において、順次、演算手段41〜47に基づき、検出領域の平均輝度、分散、周波数分析、明輝度値・暗輝度値、透過率、収束輝度値に関する演算を行い、判定手段42により、その検出領域における煙の有無の判定を行う。ただし、この際、大検出領域は、4つの小検出領域で構成されていることから、演算に関しては、小検出領域で演算した演算値を利用して演算が行われる。例えば、ある大検出領域における平均輝度値は、4つの小検出領域のそれぞれの平均輝度値を合算して、4で除算することで求められるのである。このように、予め小検出領域の演算を済ませておくことで、その演算値を使用して大検出領域における判定要素の演算値を求めるようにすると、演算処理が簡単になり、短い処理時間で計算を済ますことが可能となる。
煙検出手順が開始されると、ステップS301で、検出領域として領域サイズが小さい小検出領域を設定し、検出領域フラグの設定を1にする。また、煙検出レジスタをリセットする。
ステップS302で、判定の結果を残す各種フラグ類の設定を0にする。
ステップS303で、設定された検出領域フラグの値に対応する検出領域の検出領域記憶部14に記憶されている情報に基づいて、まだ煙検出の処理を行っていない検出領域を1つ指定する。
ステップS304で、画像記憶部11から最新の画像データを読み出し、指定された検出領域の輝度の平均および分散を算出し、輝度平均分散記憶部15に記憶する。
ステップS305で、輝度平均分散記憶部15から指定された検出領域の最近のデータを含み直近の複数回の煙検出手順の度に記憶された輝度の平均および分散を読み出し、平均輝度の移動平均および分散の移動平均を算出する。
ステップS306で、平均輝度の移動平均が基準画像の平均に対して所定の範囲内で変動しているとき平均フラグに1を設定する。
ステップS307で、輝度分散の移動平均が基準画像の分散に対して所定の範囲内で減少しているとき分散フラグに1を設定する。
ステップS308で、画像記憶部11から指定された検出領域の最新の画像データを含み直近の複数回の画像記憶手順の度に記憶された画像データを読み出し、それぞれの輝度の平均を算出し、平均輝度に関する時系列データの周波数分析をして周波数スペクトルを生成する。
ステップS309で、周波数スペクトルから0Hz周辺及び10Hz周辺(撮影している場所が商用電源60Hzの場合0Hz、50Hzの場合10Hz)の成分を除外して周波数スペクトルを修正する。
ステップS310で、周波数スペクトルを2つの周波数2Hzと周波数8Hzにより3つの周波数帯のスペクトルに分割し、各周波数帯の強度を積分した値が低周波数帯ほど大きいとき、周波数フラグに1を設定する。
ステップS311で、図9に示したように、指定された検出領域内の最新の画像データの輝度を大きさに従って並べ、明輝度群を上位輝度レジスタに記憶し、また、暗輝度群を下位輝度レジスタに記憶する。
ステップS312で、上位輝度レジスタに記憶されている明輝度群の輝度の平均を求め、それを現在の明輝度値とし、また、下位輝度レジスタに記憶されている暗輝度群の輝度の平均を求め、それを現在の暗輝度値とし、ノードAを経由してステップS313に進む。
ステップS313で、基準データ記憶部13から指定された検出領域の基準の明輝度値および基準の暗輝度値を読み出し、透過率を式(1)に従って演算する。また、収束輝度値を式(2)に従って演算する。
ステップS314で、透過率が所定値以下であるとき透過率フラグに1を設定する。
ステップS315で、収束輝度値が所定の閾値以上であるとき収束輝度フラグに1を設定する。
ステップS316で、平均フラグ、分散フラグおよび周波数フラグに1が設定されているか、または周波数フラグ、透過率フラグおよび収束輝度フラグに1が設定されているか判断し、平均フラグ、分散フラグおよび周波数フラグに1が設定されている、または周波数フラグ、透過率フラグおよび収束輝度フラグに1が設定されている場合ステップS317に進み、それ以外の場合ステップS318に進む。
ステップS317で、煙の発生の可能性があるとして煙検出レジスタをインクリメントしてステップS320に進む。
ステップS318で、周波数フラグおよび透過率フラグに1が設定されているか否かを判断し、周波数フラグおよび透過率フラグに1が設定されている場合、ステップS319に進み、それ以外の場合、ステップS320に進む。
ステップS319で、警告信号を発して、黒煙の発生の可能性があることを警報して、ステップS320に進む。
ステップS320で、設定された検出領域フラグに対応する検出領域の全てが指定されたか否かを判断し、指定されていないときノードBを経由してステップS303に戻り、指定されているときステップS321に進む。つまり、画像には、煙を検出すべき検出領域が複数設定されているので、これら検出領域に対して、一つづつ順次、煙検出手順による煙検出を行うようにしてある。
ステップS321で、検出領域フラグに1が設定されているか否かを判断し、検出領域フラグに1が設定されているときステップS322に進み、ステップS322で、検出領域フラグに0を設定してノードBを経由してステップS303に戻る。また、ステップ321で、検出領域フラグに0が設定されているとき煙検出手順を終了する。
ただし、小検出領域の煙検出手順が終了しても、大検出領域における煙検出手順はまだなので、今度は、ステッS301で、小の代わりに大を設定し、大検出領域を選択して、今まで説明した同様な手順で、全ての大検出領域に関して、煙の有無の判定を行う。
今までの説明では、画像内における一つの検出領域内に煙があるのどうかを判定するためのステップ(手順)について、説明してきた。次に、複数個の検出領域からなる画像全体において、煙があるのかどうかを判定するための手順について説明する。
以下、図20を用いて、煙判別手段24における火災判別の手順について説明する。
図20において、画像内には、複数、ここでは、便宜上、A〜Iまでの9つの検出領域が複数設定されているものとする。この図においては、時間t〜tにおいて、カメラで撮影される室内に煙が充満していく様子を示している。
煙検出装置における火災判別の閾値は、例えば、6/9と設定されている。この「9」は検出領域の数を示し、「6」は、その検出領域のうち、煙検出手段において煙が検出され、煙有りと判断された検出領域の数を表す。
今、時間tにおいて、検出領域Eのみが煙ありと判別されている。ここで、火災判別するにあたって、3フレーム分の煙有りと判別された検出領域の個数の合計値を利用する。つまり、t〜tの3フレーム分の煙有りの検出領域の合計値であるから、「2」となる。この「2」は、閾値の6より小さいので、火災と判別されない。
順次、同じように計算すると、tでは「5」、tでは「5」、tでは「6」(=3+1+2)となる。即ち、このような煙の発生の場合には、tおいて、火災が判別されることになる。
この火災判別の方法は、ある時間での煙有りの検出領域の個数、そして所定時間内における煙有りの検出領域の個数を考慮していることになり、言い換えれば、画像内における煙有りの検出領域の密度(時間的空間的密度)が、所定値を越えた時に、煙の発生をとらえるものである。煙の場合、常に、その大きさ(領域)は変動しているので、例えば、時間tで検出領域Hで煙有りと判断されても、時間tでは、煙が検出領域Eに移動して、検出領域Hからなくなるということがある。また、煙は、時間が経過すれば、必ず、空間的に広がって、検出される領域の個数は増加する傾向にあるから、このような判別方法は、煙検出にあたって、有効な判別の仕方と考えられる。
なお、この時間的空間的密度の観点で、判別する手法は、この最後の火災判別だけでなく、煙検出手段で使用される各ステップ、例えば、透過率や平均値と閾値との判断に使用するようにしてもよい。例えば、単に透過率が所定値より下回った時に、フラグを設定するのではなく、複数個、例えば4回分の検出データにおいて、3回以上、所定値以下を検出したとき、即ち、継続した減少が見られる場合に、はじめてフラグを設定するようにしてもよい。
次に、火災判別手順について図19のフローチャートを参照して説明する。
火災判別手順が開始されると、ステップS401で、煙検出レジスタに設定された数、つまり煙ありと判断された検出領域の数(以下、煙検出数という)を読み出し、検出数記憶部16に記憶する。
ステップS402で、最新の煙検出数が所定の閾値(個数)以上であるか否かを判断し、最新の煙検出数が所定の閾値以上のときステップS403に進み、所定の閾値未満のとき火災判別手順を終了する。
ステップS403で、検出数記憶部16に直近の複数回の火災判別手順の度に記憶された煙検出数を読み出す。
ステップS404で、所定の個数以上の最新の煙検出数に関する直近の所定の回数の火災判別手順で記憶された値が連続して所定の閾値以上であるか否かを判断し、連続して所定の閾値以上であるときステップS405に進み、それ以外のとき火災判別手順を終了する。
このように火災か否かの判別は、ある時点における、煙ありと判別された検出領域の数が所定値以上であって、空間的に見て、煙があると判別でき、更に、煙ありと判別された検出領域の数が、連続する時間において、所定回数以上あって、時間的に見ても、煙があると判別できる時、つまり所定期間内における煙ありの検出領域の数が高いときに、火災発生と判別する。
ステップS405で、火災が発生したと判別して警報を発して火災判別手順を終了する。
次に、基準画像更新手順について図21に示すフローチャートを参照して説明する。
基準画像更新手順を開始すると、ステップS501で、基準画像更新時期が到来したか否かを判断し、到来していないとき基準画像更新手順を終了し、到来しているときステップS502に進む。
ステップS502で、画像記憶部11から最新の画像データと基準画像記憶部13から基準画像データとを読み出す。
ステップS503で、画像を上下に2つの区域に分け、区域毎に最新の画像データと基準画像データとの輝度に関する差分の総量を算出する。
ステップS504で、上下の区域の輝度に関する差分の総量の和を第1評価値、下の区域の輝度に関する差分の総量に対する上の区域の輝度の差分の総量の比を第2評価値として算出する。
ステップS505で、第1評価値が所定の閾値以上且つ第2評価値が所定の範囲内か否かを判断し、第1評価値が所定の閾値以上且つ第2評価値が所定の範囲内のときステップS506に進み、第1評価値が所定の閾値未満または第2評価値が所定の範囲外のときステップS507に進む。
ステップS506で、基準画像置換手段26が、最新画像データで基準画像データを置き換えて基準画像記憶部13に記憶する。
ステップS507で、基準画像更新手段25が、基準画像データおよび最新画像データを用いて式(3)により算出した画像データで基準画像データを更新して基準画像記憶部13に記憶する。
ステップS508で、検出領域として領域サイズが小さい小検出領域を設定し、検出領域フラグの設定を1にする。
ステップS509で、設定された検出領域フラグの値に対応する検出領域の検出領域記憶部14に記憶されている情報に基づいて明暗輝度値の算出を行っていない検出領域を1つ指定する。
ステップS510で、基準画像記憶部12から指定された検出領域の基準画像データを読み出し、基準画像データの画素の輝度の大きさの順に並べ、明輝度群を上位輝度レジスタに記憶し、また、暗輝度群を下位輝度レジスタに記憶する。
ステップS511で、上位輝度レジスタに記憶されている明輝度群の輝度の平均を求め、それを基準の明輝度値として基準データ記憶部13に記憶する。また、下位輝度レジスタに記憶されている暗輝度群の輝度の平均を求め、それを基準の暗輝度値として基準データ記憶部13に記憶する。
ステップS512で、設定された検出領域フラグに対応する検出領域の全てが指定されたか否かを判断し、指定されていないときステップS509に戻り、指定されているときステップS513に進む。
ステップS513で、検出領域フラグに1が設定されているか否かを判断し、検出領域フラグに1が設定されているときステップS514に進み、ステップS514で検出領域フラグを0に設定してステップS509に戻る。ステップS513で、検出領域フラグに0が設定されているときは、大検出領域が指定されたか否かを判断し(ステップS515)、まだであれば、ステップS508に戻って、選択している検出領域を小から大にして、大検出領域を選択する。そして、ステップS508からステップS514の手順を同様に繰り返す。最後に、ステップS513で検出領域フラグが1であれば、今度は、基準画像更新手順を終了する。
なお、上述の実施の形態においては、煙検出装置は、火災時に発生する煙を検出するものとして説明したが、煙は、例えば煙突や配管やプラント機器又は電子機器などから発生する煙を検出するようにしてもよい。
この発明における煙検出の原理を説明する図である。 この発明における煙検出の原理を説明する図である。 この発明における煙検出の原理を説明する図である。 この発明の実施の形態に係る煙検出装置の構成図である。 実施の形態に係る煙検出装置に確保される各種記憶部である。 実施の形態に係る煙検出装置の機能ブロック図である。 サイズの異なる2種類の検出領域を設定することを説明する図である。 奥行きのある箇所で発生した煙を撮影した画像である。 検出領域における画素の輝度を大きさの順に並べ、その中から明輝度値および暗輝度値を求める様子を示す図である。 波が起こっている光源からの光を反射する水面を撮影した画像である。 実施の形態に係る煙検出手段の機能ブロック図である。 検出領域の輝度平均の時系列データを周波数分析して得られた周波数スペクトルのグラフである。 カメラにずれが生じたときの画像に基準画像を重ね合わせた図である。 カメラにずれが生じていないときに輝度に関する差分の総量が大きくなる2つの例である。 実施の形態に係る火災検出手順を示すフローチャートである。 実施の形態に係る画像記憶手順を示すフローチャートである。 実施の形態に係る煙検出手順の前半を示すフローチャートである。 実施の形態に係る煙検出手順の後半を示すフローチャートである。 実施の形態に係る火災判別手順を示すフローチャートである。 実施の形態に係る火災判別の仕方を説明する図面である。 実施の形態に係る基準画像更新手順を示すフローチャートである。
符号の説明
2 カメラ、3 煙検出装置、4 中央演算装置(CPU)、5 ROM、6 RAM、7 内蔵タイマ、8 入出力インターフェース(I/O)、9 フレームグラバー、10 外部記憶装置、11 画像記憶部、12 基準画像記憶部、13 基準データ記憶部、14 検出領域記憶部、15 輝度平均分散記憶部、16 検出数記憶部、21 初期設定手段、22 画像記憶手段、23 検出手段、24 煙判別手段、25 基準画像更新手段、26 基準画像置換手段、27 検出領域設定手段、28 明暗輝度値算出手段、29 基準データ演算手段、31 輝度補正手段、32 現画像記憶手段、41 輝度平均分散演算手段、42 判定手段、43 平均輝度周波数分析手段、44 明暗輝度値算出手段、45 透過率演算手段、46 収束輝度値演算手段。

Claims (2)

  1. カメラで撮影して得られた画像を画像処理することにより、撮影された範囲内での煙の発生を検出する煙検出装置において、
    前記撮影された画像をマトリクス状に縦横複数の検出領域に分割する検出領域設定手段と、
    該検出領域設定手段によって分割された前記検出領域毎に、煙検出判定要素の特徴量を演算する演算手段と、
    該煙検出判定要素の特徴量に基づいて、前記検出領域内における煙の有無を判定する判定手段とを備え、
    前記検出領域設定手段は、大検出領域及び小検出領域の少なくとも大小2つの大きさの異なる検出領域で、前記画像を前記小検出領域に分割した後、前記画像を前記小検出領域の大きさの2のN乗倍(Nは1以上の整数)の前記大検出領域に分割し、
    前記演算手段は、前記小検出領域で演算された煙検出判定要素の特徴量をもとに、前記小検出領域の煙検出判定要素の特徴量と同じ特徴量である、前記大検出領域の煙検出判定要素の特徴量を演算し、
    前記判定手段は、同じ判定基準で、前記小検出領域内における煙の有無および前記大検出領域内における煙の有無を判定することで、前記カメラからの距離が異なる箇所での煙の発生を検出する
    ことを特徴とする煙検出装置。
  2. 前記演算手段は、前記煙検出判定要素の前記特徴量として、前記検出領域の輝度平均および分散、周波数分析、明暗輝度値、透過率、収束輝度値に関する演算を行うことを特徴とする請求項1記載の煙検出装置。
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