以下、本発明に係る実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータおよび苛酷事象運転訓練シミュレーション方法について、図面を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複する説明は省略する。ここで説明する下記の実施形態はいずれも、原子力発電所などのプラントに用いられる苛酷事象運転訓練シミュレータの一例をとりあげて説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る苛酷事象運転訓練シミュレータの第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
第1の実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータは、プラントにおけるリソース(資源)の枯渇などを含む苛酷事象を模擬することができる、すなわち、苛酷事象運転訓練に対応するシミュレータである。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20aは、図1に示すように、シミュレーション操作端末1および操作模擬盤2とデータを送受信可能なように接続される。苛酷事象運転訓練シミュレータ20aは、シミュレーション操作端末1および操作模擬盤2を介して、運転訓練員に対する模擬プラントの運転訓練を実行する。
シミュレーション操作端末1は、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aに対し、訓練を開始するプラントの最初の状態を表すデータである初期値を設定、RUN(走行)/Freeze(停止)の切り替え、マルファンクション(異常状態)の設定、オルタレーション(機器状態の設定変更)等の各種のシミュレーション設定を行うための入力装置である。シミュレーション操作端末1は、例えば運転訓練を指示・管理するインストラクタなどにより、これらの設定や入力などが実行される。
また、シミュレーション操作端末1は、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aからシミュレーションデータなどの出力を入力可能である。
操作模擬盤2は、運転訓練員がプラント操作を実行するための実プラントの操作盤を模擬したものである。プラント操作は、例えばプラント内にあるポンプ等の機器の起動、停止、弁の開・閉・開度調整、自動化されたプラントにおける自動運転の指示等の操作である。操作模擬盤2におけるプラント操作機構は、例えば実機と同等のスイッチや計算機画面を操作する機構のものや、また、ソフトウェアで模擬された画面等で操作する機構のものであってもよく、その実施形態は限定されるものではない。
操作模擬盤2を介して入力されたプラント運転操作の指示は、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aに入力される。また、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aは、シミュレーションの進展に応じて、必要な模擬信号を操作模擬盤2へ出力する。模擬信号は、例えば操作盤の計器に表示するプロセス値、操作指示に対する応答(バルブ開の確認信号等)、警報表示信号などである。
次に、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aの構成について、図1を参照しながら説明する。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20aは、図1に示すように、シミュレーション操作入出力手段3、操作模擬盤入出力手段4、マルファンクション実行手段5、シミュレーションデータ記憶手段6、模擬演算手段7、リソース切替手段8およびリソースデータ記憶手段9を備えている。
シミュレーション操作入出力手段3は、シミュレーション操作端末1を介して入力された操作指示を入力する。シミュレーション操作入出力手段3に入力された操作指示は、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aの各機能部に対して、後述するような指示を与える。また、シミュレーション操作入出力手段3は、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aからシミュレーション操作端末1への出力をインタフェースする。
シミュレーション操作端末1から入力された操作指示は、シミュレーション操作入出力手段3を介し、該当する操作に対応した操作データとしてシミュレーションデータ記憶手段6へ記憶または更新、変更、削除等される。
操作模擬盤入出力手段4は、操作模擬盤2を介して入力された操作指示を入力する。操作模擬盤入出力手段4に入力された操作指示は、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aの各機能部に対して、後述するような指示を与える。また、また、操作模擬盤入出力手段4は、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aから操作模擬盤2への出力をインタフェースする。
前述した操作模擬盤2から入力された操作指示は、操作模擬盤入出力手段4を介し、該当する操作に対応した操作データとしてシミュレーションデータ記憶手段6へ記憶または更新、変更、削除等される。
シミュレーションデータ記憶手段6は、模擬演算手段7によりプラントモデルがシミュレーションされた結果であるシミュレーションデータを記憶する。また、シミュレーション操作端末1および操作模擬盤2により入出力された操作データとを記憶する。
模擬演算手段7は、ロジックモデル、プラントモデルなどを有する。ロジックモデルは、例えば制御システムの機能を模擬したモデルである。ロジックモデルは、例えば、機器ごとに圧力制御、温度制御、流量制御などに対する入力、出力、状態モデルなどの関係が予め定められる。
プラントモデルは、プラントの挙動を模擬するためのモデルであり、例えばプラントを構成する各機器の動作を物理モデルで模擬した機器モデルやロジックモデルなどが組み合わされたものを含む。プラントモデルは、予め用意され、例えば模擬演算手段7またはシミュレーションデータ記憶手段6などに格納されている。
模擬演算手段7が、例えば定周期による時系列で各モデルを演算し、演算結果を用いてプラント状態を模擬(プラントモデルをシミュレーション)するごとに、各モデルの演算結果やプラント状態の模擬データなどを含むシミュレーションデータがシミュレーションデータ記憶手段6へ更新、保存等される。プラント状態の模擬データは、例えばプロセス値、警報値、警報状態、操作信号、操作模擬盤2への入力、出力信号などである。
また、操作模擬盤入出力手段4は、操作模擬盤2から入力された操作信号の指令などにより、シミュレーションデータ記憶手段6のうちの該当する操作信号の操作データを当該指令に応じて書き換える。これに応じて、模擬演算手段7が、操作信号の指令に応じた操作データを用いてプラント制御などを模擬する。
また、シミュレーション操作端末1から入力されたシミュレーション設定のうちのマルファンクション操作指示は、シミュレーション操作入出力手段3を介して、マルファンクション実行手段5に出力される。
マルファンクション実行手段5は、入力されたマルファンクション操作指示に応じて、予め定められたマルファンクションを模擬するための異常模擬モデルを模擬演算手段7に実行させる。異常模擬モデルは、例えばプラント内の常用電源(交流電源設備など)が出力断となる状態などを示すモデルであり、機器モデルやロジックモデルなどに条件付けされて、プラントモデルが模擬演算手段7によりシミュレーションされる。
シミュレーション操作入出力手段3を介してシミュレーション操作端末1から入力された上記以外のシミュレーション操作指令については、該当する操作指令に応じて、模擬演算手段7またはシミュレーションデータ記憶手段6に出力されて、該当する操作が実行される。なお、前述したように、シミュレーション操作端末1および操作模擬盤2に関する操作の操作データは、適宜、シミュレーションデータ記憶手段6に記憶される。
一方、模擬演算手段7では、プラントモデルのシミュレーションを実行する際に、例えば電力供給を受けて動作する機器(例えばポンプ、モータ、電動弁等)の機器モデルに対し、電力を供給する電源のリソースモデルRSが必要とされる。この電源(リソースの一つの種別)のリソースモデルRSについては、予め定義される。また、この他にも、水源、窒素供給源などのリソースモデルRSが予め定義される。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20aでは、模擬するプラントにおける苛酷事象の対象となる1以上のリソースを模擬可能なように、リソースデータ記憶手段9にリソースモデルRSを予め定義する。
ここで、リソース種別は、代替可能なリソース同士により区分される。例えば、電源を種別とするリソースには、常用電源(常用電源設備)、非常用電源(非常用DG、電源車など)が含まれる。リソース系統は、同一のリソース種別のうちで、リソースの供給可能な系統で区分される。
また、電力供給を受けて動作する機器の機器モデルは、例えばリソースが供給されている状態、あるいは、正しく供給されない状態を選択的に模擬できるモデルとして定義可能である。電源の機器モデルは、定義されたモデルにより、模擬演算手段7により模擬、演算等される。
実機プラントでは、電源として、例えば通常の状態にある時にプラント内に電力を供給する常用電源(第1リソース)と、常用電源に何らかの異常が生じた時に常用電源の代替電源として切り替えられて用いられる非常用電源(第2リソース)とが備えられている。代替電源は、例えば非常用DG(ディーゼル発電機)などである。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20aにおいて、電源のリソースとして、少なくともこの2つのリソース(常用電源、非常用電源)がモデル化される。このモデル化された電源のリソースは、リソースデータ記憶手段9に記憶される。リソースデータ記憶手段9は、複数の種類のリソースに関するモデル(前述したリソースモデル、代表してリソースモデルRSと記す)を記憶する。
リソースデータ記憶手段9は、複数の種類のリソースモデルRSについて、リソースモデルRSごとに、リソースデータ(複数のリソース定義データを含む)を格納している。例えば、リソースデータ格納領域9(1)にはリソースデータ#1が格納され、リソースデータ格納領域9(2)にはリソースデータ#2が格納されている。さらに、リソースデータ#1にはリソースモデルRS1が定義され、リソースデータ#2にはリソースモデルRS2が定義されている。
具体的には、リソースモデルRS1のリソースデータ格納領域9(1)には、図1に示すように、リソース定義データRS1A〜RS1Eが格納されている。例えば、リソース定義データRS1Aにはリソースの名称として「名称:常用電源」、リソース定義データRS1BおよびRS1Cにはリソースの仕様として「電圧:100V」および「電流:100A」が格納されている。また、リソース定義データRS1Dにはリソースの使用条件として常用で使用されることを示す「使用条件:通常」が格納されている。また、リソース定義データRS1Eにはリソースの定格電力での有効時間として「有効時間:∞」(無限時間の意)が格納されている。
また、リソースモデルRS2のリソースデータ格納領域9(2)についても、同様にリソース定義データRS2A〜RS2Eが格納されている。例えば、リソース定義データRS2Aにはリソースの名称として「名称:非常用DG」、リソース定義データRS2BおよびRS2Cにはリソースの仕様として「電圧:100V」および「電流:50A」が格納されている。また、リソース定義データRS2Dにはリソースの使用条件として、通常時には断であることを示す「使用条件:常用断」が格納されている。また、リソース定義データRS2Eにはリソースの使用可能な有効時間として、定格電力での有効時間として「有効時間:16h」が格納されている。
また、模擬演算手段7は、ロジックに基づいた自動切り替えの指令、または、操作模擬盤2を介して行われる運転訓練員による手動切り替えの指令などに基づいて、リソースモデルRSを切り替えるか否か判断する。模擬演算手段7は、リソースモデルRSを切り替えまたは選択する場合に、リソース切替手段8に対応するリソースデータを要求する。
リソース切替手段8は、模擬するリソース系統ごとに、プラントモデルで用いるリソースモデルRSをリソースデータ記憶手段9から選択し、当該選択したリソースモデルRSを抽出または当該選択したリソースモデルRSに切り替える。
このために、リソース切替手段8は、模擬演算手段7から要求されたリソースの使用条件などを入力する。リソース切替手段8は、必要なリソースの使用条件などに応じて、リソースデータ記憶手段9に記憶されている複数のリソースモデルRSのうちからリソースモデルを選択する。
リソース切替手段8は、模擬演算手段7がプラントモデルに用いるリソースモデルRSを選択したリソースモデルRSに切り替える場合に、この切り替えるリソースモデルRSに関するリソースデータを抽出して模擬演算手段7に提供する。なお、リソースモデルRSをはじめに選択する場合にも、リソース切替手段8を介して、リソースデータ記憶手段9から当該リソースモデルRSのリソースデータが抽出されて模擬演算手段7に提供される。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20aにおいて、通常状態(マルファンクションが実行されていない状態)では、電源から電力供給を受ける機器モデルは、常用電源のリソースモデルRS1に接続され、常用電源から供給される電力で動作している状態を模擬する。
一方、その通常状態から何らかの異常状態(マルファンクション実行手段5によりマルファンクションが実行された状態)に遷移して、電源から電力供給を受ける機器モデルが常用電源から電力供給されないとする。
例えば、図1に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20aでは、マルファンクション実行手段5によりリソースモデルRS1に「常用電源断」のマルファンクションが模擬された場合に、模擬演算手段7は、リソースの使用条件が「使用条件:通常」から「使用条件:常用断」になったことをリソース切替手段8に通知する。リソース切替手段8は、「使用条件:常用断」に対応するリソースモデルRS2に切り替え可能であることを模擬演算手段7に応答する。
これにより、模擬演算手段7は、リソース切替手段8からリソースモデルRS2のリソースデータ#2を受けて、プラントモデルに用いる電源のリソースをリソースモデルRS2に切り替える。これにより、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aは、模擬プラントにおいて、電源を常用電源から非常用DGに切り替える模擬動作を行うことができる。
以上のように、常用電源から非常用電源に切り替えられることを模擬するため、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aでは、例えばリソースデータ記憶手段9に記憶された常用電源のリソースモデルRS1から非常用電源のリソースモデルRS2に切り替えることができる。
図1に示す実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータ20aでは、非常用電源(例えば非常用DG)のリソースモデルRS2に、電力供給できる時間(有効時間)に関するデータ(リソース定義データRS2E)を持たせ、その有効時間が経過すると、当該非常用電源から電力供給が停止する状態を模擬することができる。これにより、その非常用電源から電力供給されて動作していた機器が停止する状態を模擬することができる。
なお、このような非常用電源における有効時間については、例えばプラントに備わるディーゼル発電機では、ディーゼル発電機が保有する初期の燃料量と、時間当たりの燃料消費量で定義され、演算される。
例えば、運転訓練員は、非常用電源から電力供給される限られた時間内に、常用電源を復旧させ、あるいは、さらなるバックアップ用の非常用電源を準備する模擬運転操作や模擬連絡等により、このような苛酷事象に対応する運転訓練を実施することができる。これにより、プラント全体がより深刻な事態に陥らないようにするための運転訓練を実施させることができる。
次に、図2に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20aに用いられる苛酷事象運転訓練シミュレーション処理フローを説明する。
図2に示す苛酷事象運転訓練シミュレーション処理フローは、例えば苛酷事象運転訓練シミュレータ20aのパワーオン後、以下のステップS1の処理が開始される。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20aのリソース切替手段8が、模擬するリソース系統ごとに、プラントモデルで用いるリソースモデルRSをリソースデータ記憶手段9から選択する(ステップS1)。
次に、模擬演算手段7が、マルファンクション実行手段4によりマルファンクションが発生したか否か判断する(ステップS2)。
マルファンクションが発生した場合(ステップS2のYes)、模擬演算手段7が、リソース系統ごとに、リソースモデルRSを切り替えるか否か判断する(ステップS3)。
リソースモデルRSを切り替える場合(ステップS3のYes)、リソース切替手段8が、切り替えるリソースモデルRSを抽出し、抽出したリソースモデルRSに切り替える(ステップS4)。一方、リソースモデルRSを切り替えない場合(ステップS3のNo)、ステップS5の処理へ進める。
次に、模擬演算手段7は、リソースモデルRS、操作データおよび発生したマルファンクションに応じて、プラントモデルをシミュレーションする(ステップS5)。ステップS5の後、ステップS7へ処理を進める。
マルファンクションが発生しなかった場合(ステップS2のNo)、模擬演算手段7は、リソースモデルRSおよび操作データに応じてプラントモデルをシミュレーションする(ステップS6)。
次に、模擬演算手段7は、シミュレーションデータと、シミュレーション操作端末1および操作模擬盤2により入出力された操作データと、をシミュレーションデータ記憶手段6に記憶する(ステップS7)。ステップS7の後、ステップS2に処理を戻し、以降はステップS2〜S7に従って処理を繰り返す。
なお、図1に示すシミュレーション操作端末1、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aなどの主な機器構成として、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、キーボード、マウス、モニタなどを備える構成(コンピュータ)であってもよい。
また、例えば前述したような苛酷事象運転訓練シミュレーション処理などを実行するプログラムが苛酷事象運転訓練シミュレータ20aに備えられ、CPU、RAM等により当該プログラムに従って、苛酷事象運転訓練シミュレータ20aの各々の処理部(図1に示す各処理部)における処理を実行することになる。
また、シミュレーション操作端末1の構成例の場合に、インストラクタがキーボード、マウスなどからシミュレーション操作入力(例えば模擬事故の要求などのシミュレーション操作指令等)を行ってもよい。また、シミュレーション操作端末1がLAN等を介して、外部から入力する構成であってもよい。
第1の実施形態によれば、模擬プラントをリソース種別のリソース系統ごとに、リソースを切り替えることができる。例えば、模擬プラントを常用電源(第1リソース)から非常用電源(第2リソース)に切り替える事象を模擬することができる。さらに、非常用電源からの電力を使い切った後の電源の枯渇に至る事象を模擬することができ、すなわち、プラントにおける苛酷事象を模擬することができる。これにより、運転訓練員に対して、より高度な運転訓練を提供することができる。
[第2の実施形態]
図3は、本発明に係る苛酷事象運転訓練シミュレータの第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
第2の実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータは、非常用電源の有効時間を模擬する処理機能を有する。その他については、第1の実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータと同様なため、ここではそれらの説明については省くものとする。また、以降の実施形態の説明についても同様とする。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20bは、シミュレーション操作端末1および操作模擬盤2を介して、運転訓練員の訓練を実行する。図3に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20bは、図1に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20aの構成に加え、補機DB12bをさらに備えている。また、模擬演算手段7が、リソース消費量演算手段71を有している。
補機DB(データベース)12bには、リソースごとに各リソース系統に接続される機器(補機類)の仕様を含む補機データが格納されている。補機DB12bに格納されるデータは、予め作成され、補機DB12bに格納される。
図3に示す補機DB12bは、例えば電源のリソースについて、各電源系統に接続されるM/C(Metal−Clad Switch Gear)、P/C(Power Center)、MCC(Motor Control Center)等の補機類の仕様(電力消費量を含む)を含む補機データを格納し、データベース化されている。
図3に示す補機DB12bは、例えばitemA〜itemIの補機データを含むデータベースの例である。なお、図3に示す補機DB12bは、リソースに電源を一つのリソース種別として有する場合の補機類および電源系統に関する補機データを含むデータベースの例である。また、補機DB12bが、この他にもリソースに水源、窒素供給源等のリソース種別を有する場合には、それらの補機類および水源系統、窒素供給系統などのリソース系統を含む補機データもデータベース化される。
具体的には、itemAにはBUS(M/Cバス)に接続される補機としてM/Cが格納され、itemBおよびCにはM/Cに接続されるP/Cおよび電動機A(500W)が格納される。また、itemDにはBUS(P/Cバス)に接続される補機としてP/Cが格納され、itemE、FおよびGにはP/Cに接続されるMCC、電動弁A(50W)および電動弁B(50W)が格納される。また、itemHにはBUS(MCCバス)に接続される補機としてMCCが格納され、itemIにはMCCに接続される電灯A(20W)が格納される。
リソース消費量演算手段71は、補機DB12bを参照して、非常用ディーゼル発電機(Diesel Generator:DG)の有効時間を定義するリソース定義データ(非常用DGの燃料保存量に相当)に基づき、非常用DGと電源系統を介して接続される機器(補機類)の数およびその機器の動作状態に応じて、リソース消費量を演算する。これにより、非常用DGのリソース量(燃料保存量の残量)が「ゼロ」(枯渇)となった時点で、その非常用DGを電源としていた場合には、電源が枯渇した状態となる。すなわち、プラントモデルでは、電力供給が途絶える状態となる。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20bにおいて、例えばある電源系統への電力供給が常用電源から非常用電源(例えば非常用DG)に切り替えられると、当該電源系統に接続される補機類は、非常用DGから電力供給を受けて動作するように模擬される。
これにより、非常用電源として非常用DGを使用している状況において、非常用DGから電力供給を受けている機器の動作状況に応じたより詳細な電力の消費状況を模擬することができる。また、運転訓練において、電源が枯渇するまでの事象を模擬することができるため、例えば非常用DGに接続されている機器の中でも必須でない機器を、操作模擬盤2を介して停止させ、電源の電力消費を抑えるような運転訓練も実施することができる。
第2の実施形態によれば、模擬プラントを常用電源から非常用電源(非常用DG)に切り替える事象、および、非常用電源からの電力を使い切った後の電源の枯渇に至る事象を模擬できるだけでなく、例えば非常用DGに接続されている機器の中でも必須でない機器を停止させて、電源の電力消費を抑えるような事象を模擬することができる。すなわち、プラントにおける苛酷事象を模擬することができる。これにより、運転訓練員に対して、より高度な運転訓練を提供することができる。
[第3の実施形態]
図4は、本発明に係る苛酷事象運転訓練シミュレータの第3の実施形態の構成を示すブロック図である。
第3の実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータは、非常用電源の有効時間を模擬する処理機能を有する。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20cは、シミュレーション操作端末1および操作模擬盤2を介して、運転訓練員の訓練を実行する。図4に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20cは、図3に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20bの構成のうちのリソースデータ記憶手段9に格納されるリソースデータ#1および#2に加えて、リソースデータ#3を格納している。すなわち、苛酷事象運転訓練シミュレータ20cは、非常用電源(第2リソース)として、さらにDCバッテリ(蓄電池)を備えている。その他の構成については、図3に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20bの構成と同様である。
図4に示す補機DB12cは、各電源系統に接続されるM/C、P/C、MCC等の補機類の仕様(電力消費量を含む)を含む補機データを格納し、データベース化されている。補機DB12cは、例えばitemA〜itemLの補機データを含むデータベースである。
リソース消費量演算手段71は、補機DB12cを参照して、DCバッテリの有効時間を定義するリソース定義データRS3E(DCバッテリの蓄電量に相当)に基づき、DCバッテリと電源系統を介して接続される機器(補機類)の数およびその機器の動作状態に応じて、リソース消費量を演算する。これにより、DCバッテリの蓄電量が「ゼロ」(枯渇)となった時点で、そのDCバッテリを電源としていた場合には、電源が枯渇した状態となる。すなわち、プラントモデルでは、電力供給が途絶える状態となる。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20cにおいて、例えば、リソース切替手段8によりある電源系統への電力供給が常用電源から非常用電源(例えばDCバッテリ)に切り替えられると、当該電源系統に結合される補機類は、DCバッテリから電力供給を受けて動作するように模擬される。
これにより、非常用電源(第2リソース)としてDCバッテリを使用している状況において、DCバッテリから電力供給を受けている機器の動作状況に応じたより詳細な電力の消費状況を模擬することができる。また、運転訓練において、電源が枯渇するまでの事象を模擬することができるため、例えばDCバッテリに接続されている機器の中でも必須でない機器を停止して、電源の電力消費を抑えるような運転訓練も実施することができる。
第3の実施形態によれば、模擬プラントを常用電源から非常用電源(DCバッテリ)に切り替える事象、および、非常用電源からの電力を使い切った後の電源の枯渇に至る事象を模擬できるだけでなく、例えばDCバッテリに接続されている機器の中でも必須でない機器を停止させて、電源の電力消費を抑えるような事象を模擬することができる。すなわち、プラントにおける苛酷事象を模擬することができる。これにより、運転訓練員に対して、より高度な運転訓練を提供することができる。
[第4の実施形態]
図5は、本発明に係る苛酷事象運転訓練シミュレータの第4の実施形態の構成を示すブロック図である。
第4の実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータは、第3の実施形態の構成と比べて、非常用電源の種類を複数持たせたものである。苛酷事故が発生して、常用電源および常設非常用電源が使えなくなった場合に、電源車等の非常設の電力供給に切り替え可能とする電源構成を模擬するものである。
例えば、図5に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20dは、図4に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20cの構成に加えて、リソース追加手段10および補機DB編集手段13をさらに備えている。また、補機DB12dは、例えばitemA〜itemLの補機データを含むデータベースであるとする。なお、後述するように、itemM、OおよびPは追加、変更される補機データである。
リソースデータ記憶手段9にリソースに追加される動作について図5を参照しながら説明する。
ここで、追加するリソースを、例えば電源車として説明する。リソースモデルRSXは、リソースとして電源車を定義したモデルとする。リソースデータ#Xには、リソースモデルRSXが定義されるものとする。
リソースデータ#Xは、シミュレーション操作端末1により入力(データ編集、設定等)される。この入力されたリソースデータ#Xは、シミュレーション操作入出力手段3を介して、リソース追加手段10に出力される。
リソース追加手段10は、リソースデータ記憶手段9に追加するリソースについて、リソースデータ格納領域9(X)を確保する。リソース追加手段10は、定義されたリソースデータ#Xをリソースデータ格納領域9(X)に格納する。
具体的には、リソースモデルRSXのソースデータ格納領域9(X)には、図5に示すように、リソース定義データRSXA〜RSXFが格納されている。例えば、リソース定義データRSXAにはリソースの名称として「名称:電源車」、リソース定義データRSXBおよびRSXCにはリソースの仕様として「電圧:100V」および「電流:50A」が格納されている。また、リソース定義データRSXDには、リソースの使用条件として非常用電源が断で使用されることを示す「使用条件:非常断」が格納されている。また、リソース定義データRSXEには、リソースの定格電力での有効時間として「有効時間:8h」(8時間)が格納されている。リソース定義データRSXFには、接続バスとしてP/Cであることを示す「接続BUS:P/C」が格納されている。
以上により、リソース追加手段10によって、リソースモデルRS1〜RS3に加えて、リソースデータ記憶手段9にリソースモデルRSXが追加して定義されたことになる。
また、例えばシミュレーション操作端末1の表示画面に電源系統図101dが表示され、その表示された電源系統図101dにより追加するリソースによる電力供給範囲を指定可能とする。例えば、図5に示す電源系統図101dでは、電動機MおよびMCCの電源をP/Cバスから電源車とする切り替えが可能であることを示す。
シミュレーション操作端末1の表示画面において、電源系統図101dの電動機MおよびMCCの電源を電源車とする切り替えのシミュレーション設定が完了すると、補機DB編集手段13は、電源をP/Cバスから電源車へと変更するように、補機DB12dを編集する。すなわち、補機DB編集手段13は、補機DB12dにおいて、itemE「MCC」およびitemG2「電動機M:50W」を削除して(図5に示す斜線部)、itemM「BUS:電源車」、itemO「MCC」と、itemP「電動機M:50W」を追加して、補機DB12dを更新する。
リソース消費量演算手段71は、この更新されたリソースと補機との関係を含む補機DB12dを参照し、かつ、リソース切替手段8を介して電源車の仕様を定義したリソースデータ#Xを参照して、電動機MおよびMCCの電力消費量(リソース消費量)や、電源車の電源枯渇までの有効時間を演算する。
以上説明したように、リソース追加手段10によりリソースを容易に追加できるため、様々な苛酷事象に対する運転訓練のシナリオに対応することができる。例えば、模擬プラントの常用電源および常設非常用電源の枯渇時においても、例えば電源車等の非常設電源から電力供給を受ける運転訓練を実施することができる。さらに、苛酷事故発生後の電源車の移動時間や、電源車の発電開始時間を予め定め、当該発電開始可能時間後に電源車へリソース切り替え可能とすることで、より実際の状況を模擬することができる。
第4の実施形態によれば、模擬プラントの常用電源および常設非常用電源の枯渇時においても、例えば電源車等の非常設電源から電力供給を受けて、各機器の動作状況に応じた詳細な電力消費を模擬できる。すなわち、プラントにおける苛酷事象を模擬することができる。これにより、運転訓練員に対して、より高度な運転訓練を提供することができる。
[第5の実施形態]
図6は、本発明に係る苛酷事象運転訓練シミュレータの第5の実施形態の構成を示すブロック図である。
第5の実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータは、第4の実施形態の構成と比べて、窒素供給系統に関するリソースを設けた構成である。例えば、図6に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20eは、図5に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20dの構成と比べて、リソースデータ#4(リソースが窒素)をさらに備え、また、補機DB12eのデータベースが相違する。
以下、苛酷事象運転訓練シミュレータ20eにおける窒素供給の有効時間(窒素資源枯渇までの時間)を模擬する動作について、図6を参照しながら説明する。
補機DB12eは、各電源系統に接続されるM/C、P/C、MCC等の補機類の仕様に加えて、弁等の駆動機器に必要となる窒素供給系統や窒素消費量を含む補機データを格納し、データベース化されている。
図6に示す補機DB12eは、例えばitemA〜itemQの補機データを含むデータベースの例である。itemA〜itemLが電源系統およびそれに接続される機器の仕様である。また、itemM〜itemQが窒素供給系統およびそれに接続される機器の仕様である。
窒素消費量について、プラントの状態が通常時の条件(例えばitemNおよびP)や事故が発生した時の条件(例えばitemOおよびQ)などに応じて、個別に消費量を補機DB12eに定義可能である。
例えば、図6に示す補機DB12eにおいて、itemMには窒素供給系統Aが格納され、itemNには窒素供給系統Aに接続される駆動弁aの通常時の使用条件(1回あたりの消費量:0.1m3/回)が格納されている。また、itemOには窒素供給系統Aに接続される駆動弁aの事故時の使用条件(1回あたりの消費量:1.5m3/回)が格納されている。また、同様に、itemPには窒素供給系統Aに接続される駆動弁bの通常時の使用条件(1回あたりの消費量:0.8m3/回)が格納されている。また、itemQには窒素供給系統Aに接続される駆動弁bの事故時の使用条件(1回あたりの消費量:5.2m3/回)が格納されている。
例えば、図6に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20eでは、マルファンクション実行手段5によりリソースモデルRS4に「事故時」のマルファンクションが模擬された場合に、模擬演算手段7は、リソースの使用条件が「使用条件:通常」から「使用条件:事故時」になったことをリソース切替手段8に通知する。リソース切替手段8は、「使用条件:事故時」に対応するリソースモデルRSがないことから、リソースモデルRS4のままであることを模擬演算手段7に応答する。
また、模擬演算手段7は、補機DB12eを参照し、窒素供給系統Aに接続された補機類の仕様に基づいて、駆動弁aの通常時の使用条件(1回あたりの消費量:0.1m3/回)から事故時の使用条件(1回あたりの消費量:1.5m3/回)に切り替えると判断する。また、駆動弁bについても同様である。
以上説明したように、苛酷事象運転訓練シミュレータ20eにおいて、補機DB12eに示される窒素供給系統に接続される機器類は、当該窒素供給源から窒素の供給を受けて動作するように模擬される。
リソースデータ記憶手段9には、窒素供給源のリソースとして、リソースモデルRS4が格納されている。さらに、リソースデータ格納領域9(4)には、そのリソースモデルRS4を定義するためのリソースデータ#4が格納されている。
具体的には、リソースモデルRS4のリソースデータ格納領域9(4)には、図6に示すように、リソース定義データRS4A、RS4BおよびRS4Dが格納されている。例えば、リソース定義データRS4Aにはリソースの名称として「名称:窒素常用タンク」、リソース定義データRS4Bにはリソースの仕様(例えばタンク容量)として「容量:1m3」が格納されている。また、リソース定義データRS4Dにはリソースの使用条件として常用で使用されることを示す「使用条件:通常」が格納されている。
リソース消費量演算手段71は、例えばリソースモデルRS4に定義される容量および補機DB12eで定義される1回あたりの窒素消費量との関係に基づいて、動作回数の制限を演算する。具体的には、リソース消費量演算手段71は、窒素供給を定義するリソース定義データRS4B「容量:1m3」に基づいて、当該窒素供給系統に接続される機器の数およびその機器の動作状態に応じて、窒素の消費量(リソース消費量)を演算する。そして、窒素のリソースが各機器を駆動するための一定量より少なくなった時点で、その窒素のリソースが枯渇して各機器が動作不能となる状態を模擬することができる。
これにより、苛酷事故等が発生して、減圧や冷却のために、駆動弁等の機器を使用している状況において、当該供給源から窒素の供給を受けている機器の動作状況に応じたより詳細な窒素の消費状況を模擬でき、窒素のリソースが枯渇するまでの事象を模擬して、当該供給系統に接続されている機器の中でも必須ではない機器を停止して窒素の消費時間を延長する操作等の運転訓練を実施することができる。
第5の実施形態によれば、模擬プラントにおいて窒素供給源からの窒素を使い切って窒素供給源の枯渇に至る時間を詳細に模擬できる。すなわち、プラントにおける苛酷事象を模擬することができる。これにより、運転訓練員に対して、より高度な運転訓練を提供することができる。
[第6の実施形態]
図7は、本発明に係る苛酷事象運転訓練シミュレータの第6の実施形態の構成を示すブロック図である。
第6の実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータは、第5の実施形態の構成と比べて、給水系統に関するリソースを設けた構成である。例えば、図7に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20fは、図6に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20eの構成と比べて、リソースデータ#5(リソースが水源)および補機DB12fが相違する。
以下、苛酷事象運転訓練シミュレータ20fにおける給水の有効時間(水源枯渇までの時間)を模擬する動作について、図7を参照しながら説明する。
図7に示すリソースデータ記憶手段9には、水源のリソースとして、リソースモデルRS5が格納されている。さらに、リソースデータ格納領域9(5)には、そのリソースモデルRS5を定義するためのリソースデータ#5が格納されている。
具体的には、リソースモデルRS5のリソースデータ格納領域9(5)には、図7に示すように、リソース定義データRS5A、RS5BおよびRS5Dが格納されている。例えば、リソース定義データRS5Aにはリソースの名称として「名称:給水タンク」、リソース定義データRS5Bにはリソースの仕様(例えばタンク容量)として「容量:20m3」が格納されている。また、リソース定義データRS5Dにはリソースの使用条件として常用で使用されることを示す「使用条件:通常」が格納されている。
図7に示す補機DB12fは、各電源系統に接続されるM/C、P/C、MCC等の補機類の仕様に加えて、プラントを冷却する給水(水源)系統およびそれらに接続される補機類を含む補機データを格納し、データベース化されている。
補機DB12fは、例えばitemA〜itemRの補機データを含むデータベースである。itemA〜itemLが電源系統およびそれに接続される機器(補機類)の仕様である。また、itemM〜itemOが窒素供給系統およびそれに接続される機器の仕様である。また、itemP〜itemRが水源系統およびそれに接続される機器の仕様である。
以下、シミュレーション操作端末1を介して、リソースモデルRSXを追加するシミュレーション設定の動作処理を説明する。
シミュレーション操作端末1により、図7に示すようなリソースモデルRSXを追加するシミュレーション設定が入力可能とする。リソースモデルRSXは、図7に示すように、リソース定義データRSXA〜RSXFが格納されている。
例えば、リソース定義データRSXAにはリソースの名称として「名称:給水車」、リソース定義データRSXBおよびRSXCにはリソースの仕様として「容量:5m3」および「流量:1m3/min」が格納されている。また、リソース定義データRSXDには、リソースの使用条件として非常用水源が断で使用されることを示す「使用条件:非常断」が格納されている。また、リソース定義データRSXEには、リソースの水源の有効時間として「有効時間:1h」(1時間)が格納されている。リソース定義データRSXFには、給水系統Aを示す「接続:給水系統A」が格納されている。
リソース追加手段10は、シミュレーション操作端末1から入力されたリソースモデルRSXについて、リソースデータ記憶手段9に追加して、更新する。以上により、リソースデータ記憶手段9に、リソースモデルRS1〜RS5に加えて、リソースモデルRSXが追加して定義されたことになる。
また、例えばシミュレーション操作端末1の表示画面に水源(給水)系統図101fが表示され、その表示された給水系統図101fにより追加するリソースによる給水供給範囲を指定可能とする。例えば、図7に示す給水系統図101fでは、給水タンクから給水車へ水源を切り替えが可能であることを示す。
シミュレーション操作端末1の表示画面において、給水系統図101fの給水タンクから給水車へ水源の切り替えのシミュレーション設定が完了すると、補機DB編集手段13は、水源の供給元を給水タンクから給水車へと変更するように、補機DB12fを編集する。すなわち、補機DB編集手段13は、補機DB12fを更新する。
苛酷事象運転訓練シミュレータ20fにおいて、ある水源系統へ通常状態では給水タンク(リソースモデルRS5:第1リソース)から水供給(給水)が行われ、非常状態では非常用水源である給水車(リソースモデルRSX:第2リソース)に切り替えられると、当該給水(水源)系統に接続されている機器類は給水車から水供給を受けて動作するように模擬される。
リソース切替手段8は、例えば苛酷事故発生などのマルファンクションが実行されて通常水源が使用できなくなった場合に、給水車等の外部の水源のリソースモデルRSに切り替えを行い、機器への水源系統を構成することができる。さらに、リソース消費量演算手段71は、当該機器の水消費量(リソース消費量)を演算し、外部からの水供給時間を演算することができる。
リソース消費量演算手段71は、この更新されたリソースと補機との関係を含む補機DB12fを参照し、かつ、リソース切替手段8を介して給水車の仕様を定義したリソースモデルRXに関するリソースデータ#Xを参照して、給水消費量や、給水車の水源枯渇までの有効時間を演算する。
これにより、通常の水源のリソースである給水タンクの枯渇時においても、給水車等の外部の水源から水の供給およびその供給を受けている機器の動作状況に応じた詳細な水の消費状況を模擬できる。さらに、給水車の移動時間や、給水開始可能になるまでの時間を予め定め、当該給水可能時間後に給水車へリソース切り替えすることで、より実際の状況を模擬できる。
第6の実施形態によれば、模擬プラントにおいて水源からの水を使い切って水源の枯渇に至る事象を詳細に模擬できる。すなわち、プラントにおける苛酷事象を模擬することができる。これにより、運転訓練員に対して、より高度な運転訓練を提供することができる。
[第7の実施形態]
図8は、本発明に係る苛酷事象運転訓練シミュレータの第7の実施形態の構成を示すブロック図である。また、図9は、リソース消費量演算に使用するデータの変更およびシミュレーション結果の表示例を示す図である。
第7の実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータは、例えば第4の実施形態の構成と比べて、リソース消費量演算に使用するリソースデータの変更処理およびリソース消費量演算結果の視覚化処理を行う構成を設けたものである。例えば、図8に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20gは、図5に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20dの構成の一部(リソース追加手段10)に換えて、リソース変更手段14を備えている。
リソースデータ記憶手段9に記憶されたリソースデータが変更される動作について図8を参照しながら説明する。ここで、変更対象のリソースを、例えば非常用DGとして説明する。リソースモデルRS2は、リソースとして非常用DGを定義したモデルとする。リソースデータ#2は、リソースモデルRS2が定義されるものとする。
図8に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20gでは、シミュレーション操作入出力手段3を介して、リソース消費量演算手段71で演算された結果(シミュレーション結果)をシミュレーション操作端末1に出力する。シミュレーション操作端末1では、リソース消費量演算手段71で演算された結果として、例えば図9に示すような「非常用DG使用状況」の表示画面102aを表示する。
例えば、「非常用DG使用状況」の表示画面102aにおいて、使用状況表示111には、常用電源と非常用DGとの電源使用率(%)を示す。また、使用状況表示112には、時刻ごとの所内使用電力を示す。使用状況表示113には非常用DGの発電電力を示し、使用状況表示114には非常用DGの燃料を示す。
また、シミュレーション操作端末1において、例えば図9に示すような「非常用DG性能変更」の表示画面102bを表示し、リソースモデルRSに定義するリソースデータの設定値を変更するシミュレーション設定が可能である。
具体的には、図9に示す「非常用DG性能変更」の表示画面102bでは、リソースデータ記憶手段9に記憶されたリソースモデルRS2についての設定値を変更可能としている。例えば、リソースモデルRS2の変更前には、図8に示すように、リソース定義データRS2A「名称:非常用DG」、リソース定義データRS2B「電圧:100V」、リソース定義データRS2C「電流:50A」、また、リソース定義データRS2D「使用条件:常用断」が格納されている。また、リソース定義データRS2E「燃料貯蔵量:0」、リソース定義データRS2F「発電効率:0」が格納されていたとする。
そして、シミュレーション操作端末1において、図9に示す「非常用DG性能変更」の表示画面102bのように、「電圧:6900V」、「電流:1000A」、「燃料貯蔵量:2000L」、「発電効率:0.25VAH/L」と変更する設定値などのシミュレーション設定が入力されたとする。
これらの設定値の入力後、表示画面102bに示す変更要求ボタンが押下されると、シミュレーション設定が確定し、リソース変更手段14が、シミュレーション操作入出力手段3を介して、これらの変更された設定値を受ける。リソース変更手段14は、リソースデータ記憶手段9のリソースモデルRS2に対応するリソースデータ#2を変更する。すなわち、リソースデータ格納領域9(2)には、リソース定義データRS2A「名称:非常用DG」、リソース定義データRS2B「電圧:6900V」、リソース定義データRS2C「電流:1000A」、リソース定義データRS2D「使用条件:常用断」、リソース定義データRS2E「燃料貯蔵量:2000L」、リソース定義データRS2F「発電効率:0.25VAH/L」が格納される。
以上説明したように、苛酷事象運転訓練シミュレータ20gでは、図9の表示画面102aに示すように、リソース消費状況をシミュレーション操作端末1によって容易に確認可能である。また、図9の表示画面102bに示すように、シミュレーション操作端末1を介して、リソースモデルRSのリソースデータなどのシミュレーション設定を容易に変更できるため、リソース消費量の調整を効率的に実施することができる。
第7の実施形態によれば、模擬プラントにおいてリソース消費量の挙動を運転訓練に応じてリソースデータを変更し、また、運転訓練ごとにリソースの設定を容易に変更することができる。すなわち、プラントにおける苛酷事象を容易に模擬することができる。これにより、運転訓練員に対して、より高度な運転訓練を提供することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。