以下に、第1実施形態に係る圧力炊飯器1について、図1乃至9を参照しながら詳細に説明する。
加熱調理器である圧力炊飯器1は、図1に示すように、誘導加熱コイル18によって加熱される調理鍋である鍋3を着脱可能に収容する炊飯器本体10と、該炊飯器本体10に対して開閉可能に配設された蓋体20と、を備えている。
炊飯器本体10は、筒形状をなす胴体12と、該胴体12の下端開口を閉塞する底体13と、胴体12の上端開口を覆うように取り付ける肩体14と、を有する外装体を備えている。肩体14の下部外周面には、鍋3の下部を加熱する加熱手段(例えば、誘導加熱コイルや加熱ヒータ)18と、鍋3の温度を検出するための鍋温度センサと、が配設されている。肩体14には、正面側で蓋体20のフック71と係合する係合穴72が設けられている。さらに、肩体14の正面上側には、複数の入力スイッチと、動作状況や操作状況を表示するための液晶表示パネルと、を有する表示・操作パネル15が配設されている。炊飯器本体10内には、制御基板(不図示)が配設され、この制御基板に実装されたマイコン(制御手段)によって、加熱手段18の加熱(通電)が制御されている。
蓋体20は、炊飯器本体10に対して閉じられたとき、炊飯器本体10の開口部を閉塞し、炊飯器本体10の外装体と共に外表面材を構成する上板21と、該上板21の底を閉塞する下板22と、を備えている。そして、下板22には、放熱板24と、蓋ヒータ(不図示)と、鍋3の上端開口を閉塞する内蓋30とが配設されている。また、蓋体20の内部には、鍋3内の温度を検出する蓋体温度センサ(不図示)が配設されている。
蓋体20は、上板21と下板22とを有する外装体を備え、鍋3の上部を覆っている。上板21の正面側には、蓋体20を開放するための開放操作部材23が配設され、その内部に炊飯器本体10への閉塞状態を維持するためのロック機構(不図示)が配設されている。下板22は、炊飯器本体10の背部に形成されたヒンジ接続部17に回転可能に装着されている。閉塞状態で鍋3の側に位置する下板22の下(内)側面には放熱板24が配設されている。そして、放熱板24の上側面には、鍋3内を加熱する蓋ヒータ(不図示)が配設されている。蓋ヒータは、各構成部品を配設するために形成された各種の孔を避けて迂回するように配設されている。
鍋3に対面する放熱板24の下(内)側面には、鍋3の上端開口を閉塞する内蓋30が着脱可能に配設されている。この内蓋30は、内蓋プレート34を備え、内蓋プレート34の外周には内蓋枠部材32が取り付けられている。鍋3の上端開口の内周部を密閉するシール部材33が内蓋枠部材32の下(内)側面に配設されている。下板22に設けられた被係合部と係合する係合部33A,33B(図2,3に図示)が、内蓋枠部材32に設けられていて、内蓋30が蓋体20に対して着脱可能になる構成になっている。なお、この発明では、内蓋30が蓋体20に対して着脱可能となる構成に限られず、内蓋30が蓋体20に対して離脱不可の一体化構成とすることができる。内蓋30が蓋体20に離脱不可の一体化構成では、後述する貯留装置80が、内蓋30の下面に、すなわち蓋体20の下面に、取り付けられる。
図2,4に示すように、内蓋30の上面側には、第1調圧弁35及び第2調圧弁36が配設され、当該第1調圧弁35及び第2調圧弁36によって鍋3内の圧力を大気圧よりも高い圧力に設定することを可能にしている。
第1調圧弁35及び第2調圧弁36は、蒸気通路中に設けられた調圧機構である。第1調圧弁35及び第2調圧弁36は、蓋体20の下板22に形成された第1調圧弁収容部(不図示),第2調圧弁収容部25(図1に図示)にそれぞれ収容されている。第1調圧弁35及び第2調圧弁36は、内蓋30に対して鍋3の側である下側から配設される弁座35B,36Bをそれぞれ備えている。各弁座35B,36Bには、鍋3の側と連通して蒸気通路の入口となる通気孔35C,36Cがそれぞれ設けられている。また、各弁座35B,36Bの下端には、円環状をなすように径方向外側に突出する第1調圧弁フランジ45,第2調圧弁フランジ46がそれぞれ設けられている。内蓋30の上側に配設される第1調圧弁35,第2調圧弁36の各本体部35A,36Aと、内蓋30の下側に配設される各弁座35B,36Bの第1調圧弁フランジ45,第2調圧弁フランジ46とが、内蓋30の内蓋プレート34及び弁座ベース板40を介して、内蓋30に固定される。第1調圧弁35及び第2調圧弁36の各本体部35A,36Aには、第1調圧弁収容部及び第2調圧弁収容部25のそれぞれと連通する連通孔35G,36Gがそれぞれに設けられている。
第1調圧弁35には、本体部35Aに形成された通気孔35Cを閉塞するための弁体35Dと、この弁体35Dを閉塞位置(下向き)に移動させる作動受部材36Fと、これらの間に配設したスプリング35Eと、を備えている。弁体35Dは、ステッピングモータ(不図示)の駆動により作動受部材35Fが下向きに移動すると、スプリング35Eの付勢力が付加されながら、通気孔35Cを閉塞する。また、作動受部材35Fの移動量(スプリング35Eによる付勢力)を調節することにより、1.00〜1.30atmの範囲で、鍋3内の圧力を制御することができる。
第2調圧弁36には、本体部36Aの内部に通気孔36Cを開放可能に閉塞する球状部材36Dが転動可能に配設されている。球状部材36Dは、鍋3内の圧力が、例えば1.30atmに上昇すると、その蒸気の圧力で通気孔36C上から転動することにより離れる重量のものを使用している。また、球状部材36Dがソレノイド(不図示)で転動するように駆動されることにより、球状部材36Dの状態は、通気孔36Cから離れた開放状態と、通気孔36Cの上に位置する閉塞状態と、に切り換えることができる。
蓋体20の内部には、調理中に鍋3から発生した蒸気を外部に排気するための蒸気通路が形成されている。内蓋30に配設した第1調圧弁35及び第2調圧弁36のそれぞれに形成された各通気孔35C,36Cが、蒸気通路における蒸気の入口となる。鍋3からの蒸気は、第1調圧弁35及び第2調圧弁36の内に流入した後、第1調圧弁収容部,第2調圧弁収容部25の各下端開口から、放熱板24と内蓋30との間に形成された空隙部に流入する。そして、鍋3からの蒸気は、空隙部を通って上板21に配設された蒸気排出部29に流入する。そして、鍋3からの蒸気は、蒸気排出部29内を通って、蒸気排出部29に形成された排気口から外部へ排出される。
図3に示すように、内蓋30の下面側において、第1固定部材31Aが、内蓋枠部材32の第1係合部33Aの近くの内周部分に沿うように内蓋プレート34に取り付けられて、第2固定部材31Bが、内蓋枠部材32の第2係合部33Bの近くの内周部分に沿うように内蓋プレート34に取り付けられている。第1固定部材31A及び第2固定部材31Bの各外側縁には、一対の第1位置決め係合部31C,31C及び一対の第2位置決め係合部31D,31Dが配設されている。第1固定部材31Aでの第1位置決め係合部31C,31Cの間隔が、第2固定部材31Bでの第2位置決め係合部31D,31Dの間隔よりも小さいように構成している。これにより、後述する貯留装置80が内蓋30に対して誤って装着されることを防止している。
強火で調理物を調理すると、蒸気と粘性を有する液状物質及び泡状物質(以下、三者を合わせて、吹き出し物という)が鍋3から発生して、蓋体20に向けて吹き上がる。このような吹き出し物のうち、液状物質及び泡状物質は、粘性を有する煮汁であって、お米を炊飯する場合にはデンプン質の「おねば」と言われている。図5乃至7に示した貯留装置80は、内蓋30における鍋3内を臨む側(すなわち、蓋体20の下面の側)に装着されて、吹き出し物から蒸気及び液状物質を分離して、液状物質を貯留するためのものである。貯留装置80は、内蓋30において、内蓋プレート34の下面34Aとシール部材33の内周面とで形成された空間に収容される。貯留装置80は、調理後に、貯留された液状物質を取り除くために毎回洗浄されるべきものである。したがって、液状物質が接して貯留する部分には、衛生状態が保たれやすい素材(例えば、ステンレス)とすることが好ましい。
貯留装置80は、その外周部に配設される大略円環状の貯留枠部材82と、貯留枠部材82の外径サイズよりもわずかに小径の大略円板形状をしたプレート84と、を備えている。図7に示すように、プレート84の上端突片が貯留枠部材82の下壁部82Aの穴部に嵌入されて、プレート84が貯留装置80における底面部分の一部分を成している。図示した貯留装置80では、貯留枠部材82の下壁部82Aと、プレート84とによって貯留装置80の底面部分が構成されている。
貯留枠部材82は、大略円環状をなし、下壁部82Aの外周部分において立ち上がって上方に延びる外周壁部85を有する。外周壁部85は、貯留装置80の外周を形成する。外周壁部85の上端部には、略円環状の上端リブ87が形成されている。上端リブ87は、上端面87Aを有する。なお、上端リブ87は、後述するように、上端面87Aが部分的に切り欠かれて上端面87Aよりも凹んでいる第3切欠部88を有することができる。
図5において、貯留枠部材82の上側部分には、下壁部82Aよりも盛り上がった膨出部82Dが形成されている。膨出部82Dの外周部分には、図示しないスプリングによって弾性的に径方向外側に付勢されて径方向に出没可能に構成された係合部材83Aが配設されている。膨出部82Dの径方向反対側に位置する外周壁部85には、径方向外側に突出する係合部83Bが配設されている。貯留装置80の係合部材83Aは、第1固定部材31Aでの第1位置決め係合部31C,31Cに係合する。貯留装置80の係合部83Bは、第2固定部材31Bでの第2位置決め係合部31D,31Dに係合する。
下壁部82Aの中央部分には、下壁部82Aよりも盛り上がった平坦なトラック形状をした底壁台部91が形成されている。図8に示すように、貯留装置80が内蓋30に装着された内蓋セット90では、底壁台部91が第1調圧弁35及び第2調圧弁36の各フランジ45,46と弁座ベース板40とに対向して重なるように、底壁台部91が配置される。底壁台部91の高さは、上端リブ87の高さよりも低い。すなわち、貯留枠部材82において、上端リブ87の上端面87Aが最も上方に位置している。
図5,7において、液状物質を貯留するための貯留空間86が、外周壁部85の内周面と、下壁部82Aの上面と、プレート84の上面と、膨出部82Dの内側面と、底壁台部91の下側面と、で囲まれた空間によって形成されている。貯留空間86は、図5の平面視では、下壁部82Aとプレート84との間での僅かな段差部分によって複数の貯留部屋を有するように見えている。しかしながら、下壁部82Aとプレート84との間での段差部分の高さが低くて各貯留部屋が互いに連通しているので、貯留空間86では、貯留された液状物質が自由に流動することができる。
図5,6に示すように、下壁部82Aと外周壁部85とが交わる下壁部82Aの最外周部分においては、下壁部82Aを貫通する還流孔89が複数個形成されている。また、図5,11に示すように、各還流孔89の径方向内側には、ガイド通路89Bがそれぞれ形成されている。ガイド通路89Bは、還流孔89の近傍にある下壁部82Aの縁部89Aが、径方向外側に向けて略V字状に尻窄まりとなる形状を取ることによって構成されている。ガイド通路89Bは、貯留空間86の貯留された液状物質を還流孔89の方に寄せ集めてガイドする機能を有する。
図8を参照しながら、貯留装置80が内蓋30に装着された内蓋セット90について説明する。
前述したように、貯留装置80の係合部材83A及び係合部83Bが、それぞれ、内蓋30の第1固定部材31A及び第2固定部材31Bに係合する。該係合構造により、内蓋セット90においては、貯留装置80が内蓋30に対して着脱可能に取り付けられている。
貯留装置80が内蓋30に取り付けられた内蓋セット90では、蓋体20と貯留装置80との間であって、貯留装置80の外周壁部85には、上下方向に或る外側間隙高さを持った外側隙間G1が形成されている。すなわち、内蓋プレート34の下面34Aと、上端リブ87の上面である上端面87Aとの間には、外側隙間G1が形成されている。また、外側隙間G1は、上端リブ87に沿って外周壁部85の周方向に形成されている。外側隙間G1の外側間隙高さは、或る調理物を鍋3の中で調理しているときに鍋3から発生する吹き出し物のうち、蒸気及び液状物質の通過を許容するものの、泡状物質の通過を規制するように寸法構成されている。外側隙間G1の間隙高さが高くなると、泡状物質が通過してしまうので、ふきこぼれの防止性能が低下する。外側隙間G1の外側間隙高さが低くなると、目詰まりが起こりやすくなるので、液状物質の貯留性能が低下する。
貯留装置80が内蓋30に取り付けられた内蓋セット90では、内蓋プレート34の下面34Aの側に形成されて、貯留装置80の外周壁部85よりも径方向内側と、外周壁部85に最も近い側にある通気孔35C,36Cよりも径方向外側との間においては、上下方向に或る内側間隙高さを持った内側隙間G2が形成されている。すなわち、内蓋プレート34の下面34Aには、弁座ベース板40が取り付けられていて、下端リブ40Cの下端面40Dと、底壁台部91の上面91Aとの間には、内側隙間G2が形成されている。内側隙間G2は、ある幅を持った線状であって、例えば、平面視で、内蓋30の軸を中心に回転対称となっているトラック形状で延びている。内側隙間G2が貯留装置80の上部に配設されているので、貯留空間86に貯留された液状物質が、内側隙間G2に入り込みにくくなっている。
図示するように、複数の通気孔35C,36Cが内蓋30に設けられている場合、それらが、内蓋30の軸に対して等距離に位置しているとは限らない。そこで、径方向において外周壁部85に最も近い側にある通気孔を基準とすることで、蒸気や泡状物質は、いずれかの通気孔35C,36Cに到達する前に、内側隙間G2を必ず通過することが必要になる。したがって、内側隙間G2は、蒸気や泡状物質が通気孔35C,36Cを通過する前のフィルターとして機能する。内側隙間G2が径方向において外周壁部85に最も近い側にある通気孔の周辺に配設されることにより、貯留装置80において、液状物質を貯留する貯留空間86を大きく確保することができる。なお、図3に示すように、内蓋30は、他にも孔34Cを有するが、この孔34Cは、鍋3内の圧力が異常に上がったときのみ圧力を外に逃がすためのものであり、平常時に弁の開閉により連通する通気孔35C,36Cには該当しない。
複数の通気孔35C,36Cの全てが、内側隙間G2で囲まれて内側隙間G2の径方向内側に位置するように内側隙間G2の形状を構成することによって、内側隙間G2は、蒸気の通過を許容するフィルターとして機能することができる。平面視での内側隙間G2の形状は、上述したような内蓋30の軸を中心に回転対称となっているトラック形状に加えて、複数の通気孔35C,36Cの全てを囲い込むような、円形状や楕円形状の曲線形状、矩形形状や三角形形状等の多角形形状等の様々な形状とすることもできる。
弁座ベース板40の下端リブ40Cは、弁座ベース板40の周縁部分の下端において、下側に向けて突出したトラック形状をしている。第1調圧弁35及び第2調圧弁36の各通気孔35C,36Cが、トラック形状をした弁座ベース板40の円弧部分での略中心に位置している。したがって、内側隙間G2は、下端リブ40Cに沿って、通気孔35C,36Cの周辺に形成されている。下端リブ40Cには、トラック形状のうちの直線部分が部分的に切り欠かれて下端面40Dよりも凹んでいる第1切欠部40Eが形成されている。第1切欠部40Eの切欠深さは、内側隙間G2の内側間隙高さと同じとすることができる。第1切欠部40Eを設けることにより、下端リブ40Cの下端面40Dが底壁台部91の上面91Aに接した場合でも、上下方向に代替の内側隙間を確保することができる。
内側隙間G2の内側間隙高さは、或る調理物を鍋3の中で調理しているときに鍋3から発生する吹き出し物のうち、前記蒸気の通過を許容するものの、前記泡状物質の通過を規制するように寸法構成されている。内側隙間G2の内側間隙高さが高くなると、泡状物質が通過してしまうので、ふきこぼれの防止性能が低下する。内側隙間G2の内側間隙高さが低くくなると、目詰まりが起こりやすくなるので、蒸気の通過性能が低下する。なお、吹き出し物には、蒸気、液状物質及び泡状物質が含まれるが、それらの比重は、蒸気、泡状物質、液状物質の順で大きくなる。最も比重の大きい液状物質は、貯留空間86において内側隙間G2に到達する過程で自重によって落下して、内側隙間G2に入る前にその大部分が貯留空間86の中で捕捉されてしまい、内側隙間G2に入ることはほとんどない。液状物質に次いで比重の大きい泡状物質は、内側隙間G2を通過することができず、内側隙間G2に入ることはない。したがって、蒸気や泡状物質のうち、蒸気だけが内側隙間G2を通過することができる。
内側隙間G2の内側間隙高さは、鍋3の中で調理される調理物や調理条件に依存するが、例えば、約1mmが好適である。上述のように、下端リブ40Cが第1切欠部40Eを有するので、内側隙間G2の内側間隙高さが0mmで、貯留装置80が内蓋30に対して完全に密着していてもよい。逆に、内側隙間G2の内側間隙高さを大きめにすると、泡状物質が内側隙間G2を通過して、ふきこぼれが発生しやすくなるため、内側隙間G2の内側間隙高さは、最大でも約3mmである。また、外側隙間G1の外側間隙高さは、内側隙間G2の内側間隙高さと同じにすることができる。内側隙間G2の内側間隙高さ及び外側隙間G1の外側間隙高さは、あくまでも例示であって、当該数値に限定されるものでは無い。
図5,6に示すように、貯留装置80は、還流孔89を備えることができる。還流孔89は、貯留空間86に貯留された液状物質を鍋3に戻すために設けられている。図8に示すように、第1調圧弁35及び第2調圧弁36が、内蓋30の中央部分に配設されている。還流孔89が第1調圧弁35及び第2調圧弁36のそれぞれに形成された各通気孔35C,36Cの近傍にあると、吹き出し物が各通気孔35C,36Cにダイレクトに入る可能性がある。このことを防止するために、還流孔89は、各通気孔35C,36Cのうち外周壁部85に最も近い側にある通気孔よりも径方向外側に配設されていることが好ましい。すなわち、還流孔89は、各通気孔35C,36Cのうち外周壁部85に最も近い側にある通気孔よりも径方向内側には配設されていない。さらに、還流孔89は、各通気孔35C,36Cのうち外周壁部85に最も近い側にある通気孔と外周壁部85との間での径方向長さの半分の位置よりも、径方向外側に位置するように配設されるのが好ましい。
次に、図9を参照しながら、内蓋セット90における吹き出し物の流れについて説明する。
調理中の鍋3からは、吹き出し物として、蒸気と粘性を有する液状物質及び泡状物質が発生して、鍋3の内を上昇する。上昇した吹き出し物は、上昇流F1として、シール部材33と外周壁部85とで形成された径方向隙間G0に達する。吹き出し物のうち蒸気及び液状物質は、第1間隙流F2として、内蓋プレート34と上端リブ87との間に形成された外側隙間G1を通過するが、泡状物質は外側隙間G1を通過することができずに外側隙間G1において取り除かれる。
外側隙間G1を通過した蒸気及び液状物質が、貯留空間86の中を通過する過程で、比重の大きな液状物質が自重で落下することにより、貯留空間86の中に貯留される。蒸気が、第2間隙流F3として、弁座ベース板40と底壁台部91との間に形成された内側隙間G2を通過して、第1調圧弁35の通気孔35Cに至る。同様に、蒸気が、第3間隙流F4として、弁座ベース板40と底壁台部91との間に形成された内側隙間G2を通過して、第2調圧弁36の通気孔36Cに至る。すなわち、貯留空間86の中にある吹き出し物のうち、実質的に蒸気だけが、弁座ベース板40での下端リブ40Cの下端面40Dと、底壁台部91の上面91Aとの間に形成された内側隙間G2を通過する。
第1調圧弁35の通気孔35Cを通過した蒸気は、第4間隙流F5として、第1調圧弁35の連通孔35Gを通過し、第1調圧弁収容部に至る。同様に、第2調圧弁36の通気孔36Cを通過した蒸気は、第5間隙流F6として、第2調圧弁36の連通孔36Gを通過し、そのあと、第6間隙流F7として、第2調圧弁36の連通孔36Gを通過し、第2調圧弁収容部25に至る。連通孔35G,36Gを通過した蒸気は、蓋体20の放熱板24と内蓋30の内蓋プレート34との間に形成された空隙部に流入する。そして、蒸気は、空隙部を通って上板21に配設された蒸気排出部29に流入したあと、蒸気排出部29に形成された排気口から外部へ排出される。
次に、図10乃至12を参照しながら、第2実施形態を説明する。該第2実施形態は、上述した第1実施形態との比較で、突出壁部51が、貯留枠部材82の下壁部82Aの上に形成されていることが相違している。
図10乃至12に示した第2実施形態では、上方に突出する突出壁部51が、貯留枠部材82の下壁部82Aの上に形成されている。突出壁部51は、第1実施形態での底壁台部91の上面91Aに形成された周縁部分に対応する位置に形成されている。突出壁部51は、弁座ベース板40の下端リブ40Cに対応したトラック形状をしている。そして、貯留装置80が内蓋30に取り付けられた内蓋セット90では、突出壁部51の上端面52が、弁座ベース板40の下端リブ40Cの下端面40Dに対面して重なるように構成されている。したがって、内蓋セット90では、ある幅を持った線状の内側隙間G2が、平面視で、トラック形状に形成されている。なお、下端リブ40Cには第1切欠部40Eが配設されていることにより、突出壁部51の上端面52が下端リブ40Cの下端面40Dに接した場合でも、上下方向に代替の内側隙間を確保することができる。別の調理物をパック内に入れて炊飯と同時に調理を行うパッククッキングが誤って行われることで貯留装置80が内蓋30の側に押し上げられて、突出壁部51の上端面52が下端リブ40Cの下端面40Dに接した場合でも、第1切欠部40Eによる蒸気通路を確保することができる。
また、突出壁部51と下壁部82Aとが交わる直線状の境界部分には、下壁部82Aを貫通する貫通穴54が形成されている。貫通穴54により、貯留空間86と追加貯留空間56とが連通することができる。
突出壁部51の内周面と下壁部82Aの上面とで囲まれた空間は、液状物質を追加的に貯留する追加貯留空間56として用いられる。追加貯留空間56を備えることにより、貯留装置80を大型化することなく、貯留装置80における蒸気と液状物質を分離して吹きこぼれの防止性能を向上させることができる。
なお、例えば、同心円状の複数の突出壁部51によって、ある幅を持った線状の内側隙間G2が、貯留装置80の外周壁部85よりも径方向内側と、外周壁部85に最も近い側にある通気孔35C,36Cよりも径方向外側との間で、径方向に複数段にわたって形成されていてもよい。この場合、周方向に延在する内側隙間G2が、径方向においては複数個形成されている。複数個の内側隙間G2は、相似的形状であっても、非相似的形状であってもよい。
図13乃至15を参照しながら、第3実施形態を説明する。該第3実施形態は、上述した第1実施形態との比較で、プレート84によってプレート台部58が形成されていることが相違している。
プレート84の中央部分には、プレート84の下壁部よりも盛り上がった平坦でトラック形状をした上面59を有するプレート台部58が形成されている。すなわち、下壁部82Aの中央部分には、平坦な上面59を有するプレート台部58が形成されている。図15に示すように、貯留装置80が内蓋30に装着された内蓋セット90では、プレート台部58が第1調圧弁35及び第2調圧弁36の各フランジ45,46と弁座ベース板40とに対向して重なるように、プレート台部58が配置される。プレート84の上端突片が貯留枠部材82の下壁部82Aの穴部に嵌入されて、プレート84が貯留枠部材82に取り付けられている。貯留装置80の底面部分が、実質的にプレート84によって構成されている。第1実施形態の貯留装置80では、プレート84の上面と、底壁台部91及び下壁部82Aとの間で形成される微小間隙に、液状物質が入り込み易い。これに対して、第3実施形態の貯留装置80のプレート台部58では、液状物質が入り込むような微小間隙が形成されないため、お手入れ性が向上する。
第3実施形態の内蓋セット90では、内側隙間G2が、プレート台部58の上面59と、弁座ベース板40での下端リブ40Cの下端面40Dとによって形成されている。したがって、第1実施形態と同様に、内側隙間G2によって、前記蒸気の通過を許容するものの、前記泡状物質の通過を規制することができる。また、弁座ベース板40の下端リブ40Cには第1切欠部40Eが配設されていることにより、プレート台部58の上面59が下端リブ40Cの下端面40Dに接した場合でも、第1切欠部40Eによって、上下方向に代替の内側隙間を確保することができる。別の調理物をパック内に入れて炊飯と同時に調理を行うパッククッキングが誤って行われることで貯留装置80が内蓋30の側に押し上げられて、プレート台部58の上面59が下端リブ40Cの下端面40Dに接した場合でも、第1切欠部40Eによる蒸気通路を確保することができる。
図16乃至20を参照しながら、第4実施形態を説明する。該第4実施形態は、上述した実施形態との比較で、弁座ベース板40それ自身が内蓋側の内側隙間G3を有することが相違している。
第4実施形態では、図16,17,20に示すように、弁座ベース板40それ自身が内蓋側の内側隙間G3を有している。内蓋30の弁座ベース板40が、下方に突出する外周下壁部61を有する。外周下壁部61は、弁座ベース板40の周縁部分に沿って形成され、トラック形状をしている。
弁座ベース板40の上壁部と外周下壁部61とが交わる直線状の境界部分には、外周下壁部61を貫通する貫通部が形成されている。該貫通部は、上下方向に或る内側間隙高さを持った直線状の内蓋側の内側隙間G3を構成する。内蓋側の内側隙間G3の或る内側間隙高さというのは、前記蒸気の通過を許容するものの、前記泡状物質の通過を規制する高さである。内蓋側の内側隙間G3により、貯留空間86と内部貯留空間66とが連通して、貯留空間86にある吹き出し物のうち、蒸気だけが内部貯留空間66に流れることができる。弁座ベース板40の外周下壁部61に形成された内蓋側の内側隙間G3の或る内側間隙高さは、内蓋30に対する貯留装置80の取り付けとは無関係に、或る一定値を取る。
また、外周下壁部61の下端面62には、外周下壁部61の直線部分が部分的に切り欠かれて下端面62よりも凹んでいる第2切欠部63が形成されている。第2切欠部63により、貯留空間86と内部貯留空間66とが連通して、液状物質が流通することができる。
貯留装置80は、その外周部に配設される大略円環状の貯留枠部材82と、貯留枠部材82の外径サイズよりもわずかに小径の大略円板形状をしたプレート84と、を備えている。プレート84は、全体として平坦面で構成されている。図19に示すように、プレート84の上端突片が貯留枠部材82の下壁部82Aの穴部に嵌入されて、プレート84の平坦部分が、貯留装置80における底面部分を実質的に成している。図20に示すように、貯留装置80が内蓋30に取り付けられた内蓋セット90では、外周下壁部61の下端面62とプレート84の上面84Aとは、微小な隙間を持って離間するように寸法構成されている。
外周下壁部61の内周面とプレート84の上面84Aとで囲まれた空間は、液状物質を貯留する内部貯留空間66として用いられる。内部貯留空間66を備えることにより、貯留装置80を大型化することなく、貯留装置80における貯留容量をアップさせることができる。なお、例えば、同心円状の複数の外周下壁部61によって、ある幅を持った線状の内蓋側の内側隙間G3が、弁座ベース板40の外周下壁部61よりも径方向内側と、外周壁部85に最も近い側にある通気孔35C,36Cよりも径方向外側との間においては、径方向に複数段にわたって形成されていてもよい。この場合、内蓋側の内側隙間G3が、径方向においては複数個形成されている。複数個の内側隙間G3は、相似的形状であっても、非相似的形状であってもよい。
第4実施形態の内蓋セット90では、内蓋側の内側隙間G3が、弁座ベース板40の上壁部と外周下壁部61とが交わる境界部分に形成されている。内蓋側の内側隙間G3によって、或る一定の内側間隙高さが確保され、前記蒸気の通過を許容するものの、前記泡状物質の通過を規制することができる。また、外周下壁部61には第2切欠部63が配設されていることにより、別の調理物をパック内に入れて炊飯と同時に調理を行うパッククッキングが誤って行われることで貯留装置80が内蓋30の側に押し上げられて、プレート台部58の上面59が下端リブ40Cの下端面40Dに接した場合でも、液状物質が貯留空間86と内部貯留空間66との間で流通することができる。
なお、この発明の理解を容易にするために、具体的な構成や数字を用いて説明したが、この発明は、上述した各実施形態の具体的な構成や数字に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない範囲で考えられる各種の変形例を含むことができる。例えば、第1調圧弁35,第1調圧弁35という2つの調圧弁が内蓋30に搭載されているが、第1調圧弁35,第1調圧弁35のうちの、いずれか一方の調圧弁だけが内蓋30に搭載された構成とすることもできる。上述した外側隙間G1と内側隙間G2との間の径方向の中間領域において、外側隙間G1及び内側隙間G2と同様の上下方向に或る間隙高さを持った中間隙間を複数個配設することもできる。また、上記実施形態では、加熱調理器としてお米を炊飯する圧力炊飯器を例に挙げて説明したが、加熱により煮汁を生じさせて煮汁の粘度が高まって泡状物質を発生させるような、ジャムや煮豆、きのこの佃煮などのお米以外の調理物を加熱して調理する加熱調理器にも適用可能であり、同様の作用及び効果を奏することができる。