JP6226750B2 - ビオチン化合物、ビオチン標識化剤、タンパク質集合体 - Google Patents

ビオチン化合物、ビオチン標識化剤、タンパク質集合体 Download PDF

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Description

本発明は、ビオチン化化合物、ビオチン標識化剤、及びタンパク質集合体に関する。
タンパク質の自己集合は例えばウィルス、微小管、鞭毛、アクチンファイバーの形成などといった例に代表されるように、自然界において重要な役割を担っている(非特許文献1)。このような自己集合のシステムを解明・確立することは、これまでにない機能を有するバイオ材料の設計への知見を与えるため、バイオテクノロジーの分野においても、ナノテクノロジーの分野において特に注目を浴びている(非特許文献2)。
タンパク質を構成要素(building blocks)として用いる、新規の自己集合構造体の設計というのは未だにチャレンジングな分野ではあるものの、近年の数多くの研究によって、その一端が明らかとなってきている(非特許文献3)。タンパク質の自己集合の分野において、単に集合体化させるだけでなく、酵素や抗体のように構成要素それ自体が機能を持ち、またその機能を発現する事が出来る集合体の構築である(非特許文献4)。機能性集合体の意義としては、例えば局所濃度の上昇、タンパク質固定化の際の固定化量の増加、検出系に用いた時の検出感度の上昇などが挙げられる。異なる機能を有するタンパク質の組み合わせについては、例えば異種酵素の組み合わせにおいて、片方の酵素の生成物がもう片方の酵素の基質になる共役反応に応用できれば、高効率な複合酵素系の構築が可能になる。従って、もし機能性自己集合体の設計が合理的に行えるようになれば、その有用性は計り知れないものになる。
架橋酵素である微生物由来のトランスグルタミナーゼ(以下、本明細書においてMTGと呼ぶ。)は、部位特異的なリガンドラベリング技術に用いられている。MTGはグルタミン(Q)と、リジン(K)又は一級アミンのアシル転移反応を触媒する架橋酵素の一種であり、タンパク質の翻訳後修飾を行う際には極めて有用なツールである。このようなMTGを用いた架橋反応は、タンパク質中のMTG認識配列に対して特異的に進行するため、タンパク質本来の機能を損なう事無く容易に修飾を行う事が出来る。
アルカリホスファターゼ(以下、本明細書でAPと称することがある)は、アルカリ性条件下でリン酸エステルを加水分解する脱リン酸化酵素であり、DNAの末端塩基の脱リン酸化;ELISA、ウエスタンブロッティング等の抗体免疫反応等の標識酵素として汎用されている。
C. Branden and J. Tooze, Introduction to Protein Structure, 2nd ed., Garland Publishing, New York, 1999. T. O. Yeastes and J. E. Padilla, Curr. Opin. Chem. Biol., 2002, 12,464. C. M. Niemeyer, M. Adler, S. Gao and L. Chi, Angew. Chem. Int. Ed., 2000, 39, 3056. T. F. Chou, C. So, B. R. White, J. C. T. Carlson, M. Sarikaya and C. R. Wagner, ASC Nano, 2008, 2, 2519.
タンパク質を自己集合体化させるにあたり最初の問題となるのが、集合体化の為の駆動力の選択である。自己集合には例えばπ−πスタッキングや、水素結合や、ファンデルワールス力といった非共有性の結合が用いられるが、その汎用性、応用性等の高さから、あるレセプターと、それに対するリガンドを用いた自己集合の設計が重用視されている。特に、リガンドをタンパク質にラベリングするプロセスに問題が生じている。なぜなら、タンパク質の狙った部位にリガンドを導入することは一般的に困難なためである。
最も簡易的なラベリングの方法としては化学修飾法が挙げられるが、タンパク質表面の反応点を狙って修飾を行う為、機能の低下は免れず、更に反応の制御も困難でラベルされる場所もランダムな為、制御された自己集合に用いるには適さない。
以上のことから、タンパク質本来の立体構造を損なう事無くリガンドを修飾することは、制御可能な自己集合系の構築には必要不可欠である。
また、このような修飾に適した修飾化剤の開発が求められている。
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定のビオチン化合物が、特定のアミノ酸配列を認識するトランスグルタミナーゼと共に用いることによって、タンパク質又はペプチドをビオチン化することを見出した。また、ビオチン化されたタンパク質又はペプチドは、効率よく集合体とすることができ、斯かる集合体はそのタンパク質又はペプチドが発揮する機能と比べて飛躍的に向上した機能を発揮することを見出した。
本発明は係る知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す態様の発明を広く包含するものである。
項1
下記式(1)
Figure 0006226750
(式中、
nは、1又は2であり、
Xは、O又はNHであり、前記nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよく、
は、直接結合またはアミノ酸残基であり、前記nが2である場合のRのアミノ酸残基は、同一であっても異なっていてもよく
は、nが1の場合、直接結合であり、前記nが2の場合のRのアミノ酸残基は、側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基を有し、且つ該アミノ残基とRのカルボン酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であり、
は、直接結合又はアミノ酸残基であり、
又はRのアミノ酸残基は、それぞれ1個のアミノ酸残基であるか、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である。)
で表わされるビオチン化合物。
項2
前記R又はRのアミノ酸残基が、グリシン残基及びロイシン残基からなる群より選択される少なくとも1つを含む、項1に記載のビオチン化合物。
項3
前記Rのアミノ酸残基が、リジン残基である項1又は2に記載のビオチン化合物。
項4
前記Rのアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基、又はRのアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である、項1〜3の何れか1項に記載のビオチン化合物。
項5
下記式(2)
Figure 0006226750
(式中、
nは、1又は2であり、
Xは、O又はNHであり、前記nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよく、
は、直接結合またはアミノ酸残基であり、前記nが2である場合のRのアミノ酸残基は、同一であっても異なっていてもよく
は、前記nが1の場合、直接結合であり、前記nが2の場合のRのアミノ酸残基は、側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基を有し、且つ該アミノ残基とRのカルボン酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であり、
は、直接結合又はアミノ酸残基であり、
又はRのアミノ酸残基は、それぞれ1個のアミノ酸残基であるか、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である。)で表わされる項1〜4の何れか1項に記載のビオチン化合物。
項6
前記R又はRのアミノ酸残基が、グリシン残基を少なくとも1つ含む、項5に記載のビオチン化合物。
項7
前記Rのアミノ酸残基が、リジン残基である項5又は6に記載のビオチン化合物。
項8
前記Rのアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基、又はRのアミノ酸残基が、5個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である、項5〜7の何れか1項に記載のビオチン化合物。
項9
下記式(3)
Figure 0006226750
(式中、
Xは同一又は異なってO又はNHであり、
、及びRは、それぞれ、同一又は異なって直接結合又はアミノ酸残基であり、
、及びRのアミノ酸残基は、それぞれ1個、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基である。)
で表わされる項1〜8の何れか1項に記載のビオチン化合物。
項10
前記R、R、又はRのアミノ酸残基がグリシン残基を少なくとも1つ含む、項9に記載のビオチン化合物。
項11
前記Rのアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基、Rのアミノ酸残基が、6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基、又はRのアミノ酸残基が、5個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である、項9又は10に記載のビオチン化合物。
項12
下記式(4)
Figure 0006226750
で表わされる、項1に記載のビオチン化合物。
項13
下記式(5)
Figure 0006226750
で表わされる項5に記載のビオチン化合物。
項14
下記式(6)
Figure 0006226750
で表わされる項9に記載のビオチン化合物。
項15
項1〜14の何れか1項に記載のビオチン化合物を含む、タンパク質又はペプチドに対するビオチン標識化剤。
項16
前記タンパク質又はペプチドが、配列番号1〜4の何れかに示されるアミノ酸配列を1つ以上含む、項15に記載のビオチン標識化剤。
項17
項15又は16に記載のビオチン標識化剤と、トランスグルタミナーゼを含む、タンパク質又はペプチドのビオチン標識化キット。
項18
前記トランスグルタミナーゼが微生物由来トランスグルタミナーゼである、項17に記載のビオチン標識化キット。
項19
以下の工程1〜3を含む、タンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法;
(1)項1〜14の何れか1項に記載のビオチン化合物と前記タンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合する工程1、
(2)工程1の混合物を、トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2、
(3)工程2の後、前記混合物からビオチン標識化タンパク質又はビオチン標識化ペプチドを回収する工程3。
項20
前記タンパク質又はペプチドが、配列番号1〜4の何れかに1つに示されるアミノ酸配列を1つ以上含むことを特徴とする、項19に記載の方法。
項21
前記トランスグルタミナーゼが微生物由来トランスグルタミナーゼである、項19又は20に記載の方法。
項22
配列番号1〜4の何れか1つに示されるアミノ酸配列の1つ以上が挿入又は置換されたタンパク質又はペプチド変異体。
項23
配列番号8〜13の何れかに示されるアミノ酸配列を含む項22に記載のタンパク質又はペプチド変異体。
項24
以下の、工程1〜3を含む、タンパク質又はペプチド集合体の製造方法;
(1)項22又は23に示すタンパク質又はペプチド変異体、項1〜14の何れか1項に記載のビオチン化合物、アビジン化合物、及びトランスグルタミナーゼを混合する工程1、
(2)工程1の混合物を、前記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2、
(3)工程2の後、前記混合物からタンパク質又はペプチド集合体を回収する工程3。
項25
前記トランスグルタミナーゼが、微生物由来トランスグルタミナーゼである、項24に記載の方法。
項26
項24又は25に記載の方法によって得られるタンパク質又はペプチド集合体。
以下に、本発明をより詳細に説明する。
本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学及び分子生物学的技術であれば、Sambrook and Russell,“Molecular Cloning A LABORATORY MANUAL”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,(2001);Ausubel,F.M.et al.“Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley&Sons,New York,.NY等の文献を参照すればよい。
ビオチン化合物
本発明のビオチン化合物は、式(1)にて表される。
Figure 0006226750
式(1)において、nは1又は2である。
式(1)において、XはO又はNHであり。また、nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよい。
式(1)において、Rは直接結合またはアミノ酸残基である。また、nが2である場合、Rのアミノ酸残基は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)において、Rは、直接結合又はアミノ酸残基である。
式(1)において、R又はRのアミノ酸残基はそれぞれ1個、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基である。
式(1)において、アミノ酸残基とは、アミノ酸のアミド基から1つの水素原子が取り除かれ(本明細書において、このような基をアミノ残基と称する。)、カルボキシル基から1つのOHが取り除かれたものである(本明細書において、このような基をカルボキシ残基と称する。)。ここで、アミノ酸とは、生体内に存在するアミノ酸に限定はされず、アミド基及びカルボキシル基を有する化合物である。
なお、上述のアミノ酸には、プロリンも含まれる。すなわち、アミノ酸残基がプロリン残基である場合は、上述したアミノ基から1つの水素原子が取り除かれたアミノ残基を有するのではなく、ピロリジン環構造中のイミノ基から1つの水素原子が取り除かれたものを有する。
また、2個以上のアミノ酸がペプチド結合したアミノ酸残基とは、上述のアミノ酸残基がペプチド結合しているタンパク質又はペプチドの主鎖のN末端のアミド基から1つの水素原子が取り除かれ、C末端のカルボキシル基から1つのOHが取り除かれたものである。これらの基も、本明細書においてそれぞれアミノ残基及びカルボキシ残基と称する。
式(1)において、Rがアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、Rに隣接する(C=O)基とがペプチド結合している。
式(1)において、nが1の場合において、Rは直接結合である。このとき、Rがアミノ酸残基である場合で、且つ、Rがアミノ酸残基である場合は、Rのアミノ酸残基のカルボン酸残基と、Rのアミノ残基のカルボン酸残基がペプチド結合している。また、Rが直接結合である場合は、Rのアミノ酸残基のカルボン酸残基と、Rに隣接している(NH)基がペプチド結合している。
式(1)において、nが1の場合であって、Rが直接結合であり、且つRがアミノ酸残基である場合は、Rに隣接する(C=O)基と、Rのアミノ残基のアミノ残基がペプチド結合している。
式(1)において、nが2の場合のRは、側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基を有するアミノ酸残基である。
ここで、Rがアミノ酸残基である場合、上述の側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基と、Rのアミノ酸残基のカルボン酸残基がペプチド結合している。このようなペプチド結合の他に、Rのアミノ酸残基におけるカルボン酸残基と、Rが有するアミノ酸残基にて定義したアミノ残基とペプチド結合している。
なお、Rが直接結合である場合には、上述の側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基も、Rが有するアミノ酸残基にて定義したアミノ残基も、Rに隣接する(C=O)基と結合している。
すなわち、上記式(1)において、nが2である場合、Rは、Rと2箇所でペプチド結合している。
式(1)において、nが2である場合、Rのカルボン酸残基は、Rのアミノ酸残基のアミノ残基とペプチド結合している。Rが直接結合である場合は、Rのカルボン酸残基と、Rに隣接する(NH)基がペプチド結合している。
式(1)において、上記nが2である場合の上記Rとしては、特に限定はされないが、好ましくはリジン残基である。
式(1)において、R又はRのアミノ酸残基は、特に限定はされないが、例えば、グリシン残基又はロイシン残基からなる群より選択される少なくとも1つを含むアミノ酸残基が挙げられる。
が2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
が2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
式(1)にて示されるビオチン化合物の中でも、最も好ましいビオチン化合物の1つとして、式(4)にて表されるビオチン化合物が挙げられる。式(4)にて表されるビオチン化合物は、式(1)において、nが1であり、且つR及びRが直接結合であるビオチン化合物である。以後、本明細書において、式(4)にて表されるビオチン化合物を、biotin−QGと称することがある。
Figure 0006226750
式(1)にて表されるビオチン化合物の別の態様として、式(2)にて示すビオチン化合物が挙げられる。
Figure 0006226750
式(2)は、式(1)において、Rが2以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であって、該アミノ酸残基のカルボキシ末端側にロイシン残基を含むビオチン化合物である。
式(2)において、nは1又は2である。
式(2)において、XはO又はNHであり。また、nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよい。
式(2)において、Rは直接結合またはアミノ酸残基である。また、nが2である場合、Rのアミノ酸残基は同一であっても異なっていてもよい。
式(2)において、Rは、直接結合又はアミノ酸残基である。
式(2)において、R又はRのアミノ酸残基はそれぞれ1個、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基である。
式(2)におけるアミノ酸残基及び2個以上のアミノ酸がペプチド結合したアミノ酸残基とは、式(1)と同様に説明されるものである。
式(2)において、Rがアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、Rに隣接する(C=O)基とがペプチド結合している。
式(2)において、nが1の場合において、Rは直接結合である。このとき、Rがアミノ酸残基である場合で、且つ、Rがアミノ酸残基である場合は、Rのアミノ酸残基のカルボン酸残基と、Rのアミノ残基のカルボン酸残基がペプチド結合している。また、Rが直接結合である場合は、Rのアミノ酸残基のカルボン酸残基と、Rに隣接している(NH)基がペプチド結合している。
式(2)において、nが1の場合であって、Rが直接結合であり、且つRがアミノ酸残基である場合は、Rに隣接する(C=O)基と、Rのアミノ残基のアミノ残基がペプチド結合している。
式(2)において、nが2の場合のRは、側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基を有するアミノ酸残基である。
ここで、Rがアミノ酸残基である場合、上述の側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基と、Rのアミノ酸残基のカルボン酸残基がペプチド結合している。このようなペプチド結合の他に、Rのアミノ酸残基におけるカルボン酸残基と、Rが有するアミノ酸残基にて定義したアミノ残基とペプチド結合している。
なお、Rが直接結合である場合には、上述の側鎖の末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基も、Rが有するアミノ酸残基にて定義したアミノ残基も、Rに隣接する(C=O)基と結合している。
すなわち、上記式(2)において、nが2である場合、Rは、Rと2箇所でペプチド結合している。
式(2)において、nが2である場合、Rのカルボン酸残基は、Rのアミノ酸残基のアミノ残基とペプチド結合している。Rが直接結合である場合は、上記Rのカルボン酸残基と、Rに隣接する(NH)基がペプチド結合している。
式(2)において、nが2である場合の上記Rとしては、特に限定はされないが、好ましくはリジン残基である。
式(2)において、R又はRのアミノ酸残基は、特に限定はされないが、例えば、少なくとも1つのグリシン残基を含むアミノ酸残基が挙げられる。
が2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
が2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば5個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
式(2)にて示されるビオチン化合物の中でも、最も好ましいビオチン化合物の1つとして、式(5)にて表されるビオチン化合物が挙げられる。式(5)にて表されるビオチン化合物は、式(2)において、nが1であり、且つ、Rが6個のグリシン残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である、ビオチン化合物である。以後、本明細書において、式(5)にて表されるビオチン化合物を、biotin−GGG−GGLQGと称することがある。
Figure 0006226750
式(1)にて表されるビオチン化合物の別の態様として、式(3)にて示すビオチン化合物が挙げられる。
Figure 0006226750
式(3)は、式(1)において、nが2であり、Rが、それぞれR及びRに対応し、Rがリジン残基であり、且つ、Rが2以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であって、該アミノ酸残基のカルボキシ末端側にロイシン残基を含むビオチン化合物である。
また、リジン残基の側鎖のε位末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基が、式(3)にてRに対応する、式(1)のRのカルボン酸残基とペプチド結合しており、且つリジン残基のアミノ残基と式(3)にてRに対応する、Rのカルボン酸残基とペプチド結合している。
なお、R又はRが直接結合である場合は、それぞれ式(1)のRに隣接する、(C=O)基とペプチド結合している。
式(3)において、XはO又はNHであり、これらは同一であっても異なっていてもよい。
式(3)において、R、R、又はRは、直接結合又はアミノ酸残基である。
式(3)において、R、R、又はRのアミノ酸残基はそれぞれ1個、又は2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基である。
式(3)におけるアミノ酸残基及び2個以上のアミノ酸がペプチド結合したアミノ酸残基とは、上記式(1)或いは上記式(2)と同様に説明されるものである。
式(3)において、Rがアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、Rに隣接する(C=O)基がペプチド結合しており、該アミノ酸残基のカルボン酸残基と、上記リジン残基の側鎖のε末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基とペプチド結合している。
式(3)において、Rが直接結合である場合、Rに隣接する(C=O)基と、上記リジン残基の側鎖のε末端のアミノ基から1つの水素原子が除かれたアミノ残基がペプチド結合している。
式(3)において、上記Rがアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、Rに隣接する(C=O)基がペプチド結合しており、該アミノ酸残基のカルボン酸残基と、上記リジン残基アミノ残基とペプチド結合している。
式(3)において、Rが直接結合である場合、Rに隣接する(C=O)基と、上記リジン残基のアミノ残基がペプチド結合している。
式(3)において、上記Rがアミノ酸残基である場合、該アミノ酸残基のアミノ残基と、上記リジン残基のカルボン酸残基がペプチド結合しており、該アミノ酸残基のカルボン酸残基と、Rに隣接する(NH)基とペプチド結合している。
上記Rが直接結合である場合、上記リジン残基のアミノ残基と、Rに隣接する(C=O)基と、がペプチド結合している。
、及びRにおけるアミノ酸残基は、特に限定はされないが、例えば、少なくとも1つのグリシン残基を含むアミノ酸残基が挙げられる。
又はRが、2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば6個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは5個以下、更に好ましくは4個以下、最も好ましくは3個以下である。
が、2個以上のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である場合、その個数についての上限値は限定的ではないが、例えば5個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基とすればよい。より好ましくは4個以下、更に好ましくは3個以下である。
式(3)にて示されるビオチン化合物の中でも、最も好ましいビオチン化合物として、式(6)にて表されるビオチン化合物が挙げられる。式(6)にて表されるビオチン化合物は、式(3)において、R及びRが3個のグリシン残基がペプチド結合しているアミノ酸残基であり、且つ、Rが1個のグリシン残基である、ビオチン化合物である。以後、本明細書において、式(6)にて表されるビオチン化合物を、bis−(biotin−GGG)−KGLQGと称することがある。
Figure 0006226750
本発明のビオチン化合物は、ビオチン、各種構成アミノ酸残基に基づくアミノ酸を原料にし、例えば固相合成法のような一般的なFmocペプチド合成方法を採用すれば製造すればよい。具体的なペプチド合成方法として、以下の手順による方法が挙げられる。
1)PD−10カラムを組み立て、その中に0.1mmol分のFmoc−Gly−Alkoresinを添加する。
2)3mLのDMFで一晩震盪し、樹脂の膨潤を行う。
3)3mLのDMFで3回洗浄し、安定剤の除去を行う。
4)3mLの20%PPD/DMFで1回洗浄し、Fmocの脱保護を行う。
5)3mLの20%PPD/DMFで15分震盪し、Fmocの脱保護を行う。
6)3mLのDMFで3回洗浄する。
7)0.5mmolのFmoc−各種アミノ酸及び0.45MのHBTU,2.1mLのHOBt/DMF溶液、0.7mLの0.9M DIEA/DMF溶液を加え、適当な時間で震盪する。
8)3mLのDMFで3回洗浄する。なお、ここでKaiserテストによって未反応樹脂の確認を行ってもよい。テスト結果が陽性の場合、上記の7)に戻りアミノ酸を再伸長させてもよい。テスト結果が陰性の場合、以下の操作を先に進めればよい。
9)3mLのDCMで3回洗浄する。
10)3mLのDMFで3回洗浄する。
11)3mLの20%PPD/DMFで1回洗浄し、Fmocの脱保護を行う。
12)3mLの20%PPD/DMFで15分震盪し、Fmocの脱保護を行う。
13)3mLのDMFで3回洗浄する。
14)上記7)から13)までを繰り返し、目的のビオチン化合物となるようにそれを構成するアミノ酸を伸長させる。例えば、Fmoc−Lys(Fmoc)−OH、Fmoc−Gly等の化合物を、適宜採用して伸長させる。
15)アミノ酸を伸長させた樹脂に、ビオチン又はイミノビオチン、及び0.45MのHBTU、2.1mLのHOBt/DMF溶液、0.7mLの0.9M DIEA/DMF溶液を加え、適当な時間で震盪する。
16)3mLのDCMで5回、3mLのDCMで5回、3mLのメタノールで5回洗浄後、一晩真空乾燥する。
17)TFA、TIS、及び脱イオン水をそれぞれ95:2.5:2.5で混合した2.5mLのカクテルを添加して1時間攪拌し、樹脂からの切り出しを行う。
18)全ての伸長操作の後切り出した溶液に対して、40mLのジエチルエーテルを添加して析出させ、凍結乾燥により粗ペプチドが得られる。
19)得られた粗ペプチドを下記の条件でペプチド由来の230nmの吸収を追跡する事でHPLCによって精製し、生成物に相当するフラクションを回収し、凍結乾燥させる。HPLCの条件について、表1に示す。
Figure 0006226750
上記式(4)、(5)、及び(6)にて示すビオチン化合物のMSスペクトルによる解析結果の一例を表2に示す。
Figure 0006226750
ビオチン標識化剤
本発明のビオチン化合物は、他の試薬又はそのままで、アミノ酸又はタンパク質をビオチン化する際に特に有用である。従って、本発明では、上述のビオチン化合物を含む、タンパク質又はペプチドに対するビオチン標識化剤が提供される。
また、本発明のビオチン化合物の他に、N−BIOTINYL−3, 6, 9−TRIOXAUNDECANE−1, 11−DIAMINE、biotin cadaverine等のビオチン化合物も本発明のビオチン標識化剤として有用である。これらは、Molecular Biosciences社等より入手することが可能である。
本発明のビオチン標識化剤は、上述の本発明のビオチン化合物の他に、アミノ酸又はタンパク質へのビオチン化を妨げない範囲において、通常、試薬に含有させる公知の物質を含んでいてもよい。このようなビオチン化標識剤において、上述のビオチン化合物は、0.001重量部〜99.9重量部含まれていればよい。
本発明のビオチン標識化剤の対象とするタンパク質又はペプチドは、特に限定はされないが、例えば
配列番号1〜4に示されるアミノ酸配列の何れか1つ以上を含むものであることが好ましい。これらのアミノ酸配列の中でも、プロリン残基及びリジン残基の存在及びその位置については重要であり、より好ましくは、配列番号5〜7に示されるアミノ酸配列の何れか1つ以上である。
このようなアミノ酸配列は、タンパク質又はペプチドのN末端又はC末端に含まれていても、それ以外の部位に含まれていてもよい。また、タンパク質又はペプチドの立体構造において、その内部ではなく外側に近い位置の部位に、アミノ酸配列が、含まれていることが好ましい。
例えば、タンパク質がアルカリホスファターゼである場合、91番目のリジン残基と93番目のスレオニン残基の間の部位に代えて挿入されて含まれる場合、219番目のリジン残基と221番目のグルタミン残基の間の部位に代えて挿入されて含まれる場合などが挙げられる。
また、タンパク質がEGFPである場合にはC末端に挿入されて含まれる場合等が挙げられる。
本発明のタンパク質又はペプチドに対するビオチン修飾化剤は、転移酵素の一種であるトランスグルタミナーゼと共に用いることが好ましい。トランスグルタミナーゼは、グルタミンと、リジン又は一級アミン基を有する化合物との間でのアシル転移反応を触媒する酵素であれば特に限定はされないが、例えば微生物由来のトランスグルタミナーゼが好ましい。より具体的には、Streptomyces mobaraensis由来のトランスグルタミナーゼであり、NCBI Accession No.Q8KRJ2P81453に示されるアミノ酸配列を有するトランスグルタミナーゼである。
本発明では、上述のタンパク質又はペプチドに対するビオチン修飾化剤と上述のトランスグルタミナーゼを含むビオチン標識化キットも提供する。
本発明のビオチン標識化キットには、更に公知の構成物品、試薬等が含まれていてもよい。
本発明のタンパク質又はペプチド変異体
本発明の変異体は、配列番号1〜4の何れかに示されるアミノ酸配列の1つ以上が挿入又は置換されたタンパク質又はペプチド変異体である。
挿入とは、タンパク質又はペプチドのN末端、C末端、或いはそれ以外の部位に挿入されていてもよい。
置換とは、タンパク質又はペプチドのN末端、C末端、或いはそれ以外の部位のアミノ酸配列と置換されていてもよい
例えば、タンパク質又はペプチドがアルカリホスファターゼであれば、91番目のリジン残基と93番目のスレオニン残基の間の部位に代えて挿入又は置換される場合、219番目のリジン残基と221番目のグルタミン残基の間の部位に代えて挿入又は置換される場合等が挙げられる。
また、タンパク質又はペプチドがEGFPであれば、C末端の5アミノ酸の部位に代えて挿入又は置換される場合などが挙げられる
本発明のタンパク質又はペプチド変異体として、例えば、
配列番号8〜13に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質変異体又はペプチドが挙げられる。
本発明のタンパク質又はペプチド変異体の製造方法は、特に限定はされず、公知の生化学的手法を用いればよい。例えば、本発明のタンパク質変異体又はペプチドをコードする核酸を製造し、これを用いて適当な宿主を形質転換し、斯かる宿主を培養することで生合成させて、最後に得られた培養後の宿主からタンパク質変異体又はペプチドを、回収、必要に応じて精製すればよい。
このようなタンパク質又はペプチド変異体には、それらが有する機能を損なわない範囲において、さらに変異が導入されていてもよい。このような変異体と、本発明の変異体との相同性は、85%程度、より好ましくは90%程度、更に好ましくは、95%程度、最も好ましくは99%程度である。相同性とは同一性ともよばれる。
アミノ酸配列の同一性とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列又は塩基配列の、お互いに対する同一のアミノ酸配列又は塩基配列の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列又は塩基配列の同一性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。アミノ酸配列又は塩基配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメーターを用いて決定される。
若しくは、アミノ酸配列を解析する場合はBLASTXを用いればよく、パラメーターとしては、例えば、score= 50、wordlength= 3とすればよい。
BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いればよい。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)
を参照すればよい。
また、本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体には、後述する本発明の効果を損なわない範囲において、公知のタグ配列を有していてもよい。タグ配列は、例えば、タンパク質又はペプチド変異体のアミノ酸配列の内部、N末端、又はC末端のいずれに有していてもよい。
本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体は、アミノ酸配列を基にそれをコードする塩基配列を含む核酸を作製し、斯かる核酸を大腸菌、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞等といったタンパク質合成に適した宿主細胞へ導入して製造することができる。具体的な方法は、特に限定されず、公知の方法を用いればよい。
本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体は、適宜、精製工程を経て製造してもよい。具体的な製造方法は特に限定はされないが、例えばカラムクロマトグラフィー、アセトン沈殿法、硫酸アンモニウム沈殿法等の公知の手段を用いて精製すればよい。
具体的なカラムクロマトグラフィーとしては、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティカラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、疎水性カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて採用すればよい。
本発明のビオチン標識化方法
本発明のビオチン標識化方法は、タンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法、すなわちタンパク質又はペプチドに対するビオチン化する方法であり、以下の工程1〜3を含むものである。
<工程1>
上述の本発明のビオチン化合物とタンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合する工程1。
<工程2>
工程1の混合物を、トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2。
<工程3>
工程2の後、前記混合物からビオチン標識化タンパク質又はビオチン標識化ペプチドを回収する工程3。
工程1について
本発明のタンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法における工程1は、上述の本発明のビオチン化合物と、タンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合する工程である。
工程1は適当な溶媒中にて混合すればよく、その種類は特に限定はされないが、例えば生化学実験にて多用される周知の緩衝液を用いればよく、例えば20mMのTris−HCl(pH8.0)等が挙げられる。
タンパク質又はペプチドは、上述した本発明のビオチン標識化剤の対象とするアミノ酸又はタンパク質と同様とすればよい。このようなタンパク質又はペプチドは、上述した本発明のタンパク質又はペプチド変異体の製造方法等によって得られる。
トランスグルタミナーゼは、特に限定されることは無いが、例えば上述した本発明のタンパク質又はペプチドに対するビオチン修飾化剤と共に用いられるトランスグルタミナーゼを採用すればよい。
トランスグルタミナーゼの使用量は、混合物中の最終濃度が、通常0.01〜1U/ml程度となる量とすればよい。
また、ビオチン化合物とタンパク質又はペプチドは、モル比で通常1:1〜1:20程度となる量で混合すればよい。
工程2について
本発明のタンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法における工程2は、工程1の混合物を、トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程である。
上述のように工程1にて用いるトランスグルタミナーゼは、アシル転移反応を触媒する酵素であるため、工程2における条件とは、斯かる反応が首尾よく進行する条件とすることである。
具体的には、4〜50℃程度の温度及び5〜9程度のpHとすればよい。反応時間は、特に限定はされないが5分〜24時間程度とすればよい。この反応時間が、工程2での「至適活性条件下におく」時間となる。
工程3について
本発明のタンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法における工程3は、工程2の後、前記混合物からビオチン標識化タンパク質又はビオチン標識化ペプチドを回収する工程である。この工程において、必要に応じてビオチン標識化タンパク質又はビオチン標識化ペプチドを精製する工程が含まれていてもよい。
具体的な製造方法は、特に限定はされず、工程2にて得られた混合物中から、本発明のビオチン化合物、及び未修飾のタンパク質或いはペプチドを除去するための手段であればよい。例えば、上述の本発明のタンパク質又はペプチド変異体の製造において採用する精製方法か、これを適宜改変した方法が挙げられる。
タンパク質又はペプチド集合体
本発明に係るタンパク質又はペプチド集合体は、以下に示す工程1〜工程3を含む方法によって製造する。
≪工程1≫
タンパク質又はペプチド変異体、ビオチン化合物、アビジン化合物及びトランスグルタミナーゼを混合する工程1、
≪工程2≫
上記工程1の混合物を、前記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2。
≪工程3≫
上記工程3の後、アルカリホスファターゼ集合体を回収する工程3。
工程1について
本発明のタンパク質又はペプチド集合体の製造方法における工程1は、タンパク質又はペプチド、ビオチン化合物、アビジン化合物、及びトランスグルタミナーゼを混合する工程である。
工程1にて用いるタンパク質又はペプチドは、上記の本発明のビオチン標識化方法の工程1にて用いるものと同様にすればよい。
工程1にて使用するビオチン化合物は、上述の本発明のビオチン標識化方法と同様のものを採用すればよい。
工程1にて用いるアビジン化合物は、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンなどが挙げられ、特に限定はされないが、対象タンパク質との相互作用、等電点の違いによる静電的相互作用等の観点からストレプトアビジンを用いることが好ましい。
工程1にて用いるトランスグルタミナーゼは、上記の本発明のビオチン標識化方法の工程1にて用いるものと同様にすればよい。
具体的な精製方法は、特に限定はされないが混合物中から、ビオチン化合物、トランスグルタミナーゼ、ビオチン化合物、並びに未修飾のタンパク質又はペプチドを除去するための手段であれば、特に限定されることは無く、上述した本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体の製造方法と同様にすればよい。
また、予めタンパク質又はペプチド、ビオチン化合物、及びトランスグルタミナーゼを混合する場合には、混合後にトランスグルタミナーゼの至適活性条件下に置くことが好ましい。具体的な条件については、工程2に記載の条件と同様にすればよい。
工程1におけるタンパク質又はペプチド、ビオチン化合物、及びアビジン化合物の混合量は、通常モル比でタンパク質又はペプチド:ビオチン化合物=1:1〜1:20程度とすればよい。
また、工程1が複合体の形成までを含むと仮定したときにはビオチン化合物:アビジン化合物=1:0.1〜1:1程度とすればよい。
さらに、ビオチン化合物が、2つのビオチニル基を有する場合、ビオチン化合物:アビジン化合物=1:0.1〜1:2程度とすればよい。
工程1におけるトランスグルタミナーゼの混合量は、特に限定はされないが、混合物中の最終濃度が0.01〜1U/ml程度となるようにすればよい。
工程1において、タンパク質又はペプチド、ビオチン化合物、アビジン化合物、及びトランスグルタミナーゼは、適当な溶媒中にて混合すればよい。具体的な溶媒は特に限定されないが、生化学的実験にて用いられる周知の緩衝液を用いればよい。
工程2について
工程2では、工程1にて示される混合物を、上記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程である。上述のように工程1にて用いるトランスグルタミナーゼは、アシル転移反応を触媒する酵素であるため、工程2における条件とは、斯かる反応が首尾よく進行する条件とすることである。
具体的には、4〜50℃程度の温度及び5〜9程度のpHとすればよい。反応時間は、特に限定はされないが5分〜24時間程度とすればよい。この反応時間が、工程2での「至適活性条件下におく」時間となる。
工程3について
工程3は、工程2の後にタンパク質又はペプチド集合体を回収する工程である。この工程において、回収とは、精製する工程が含まれていても良い。
具体的な精製方法は、特に限定はされず、工程2にて得られた混合物中から、タンパク質又はペプチド変異体、ビオチン化合物、トランスグルタミナーゼ、並びに、ビオチン化合物を除去するための手段であれば、特に限定されることは無く、上述した本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体の製造方法と同様にすればよい。
以下、本発明のタンパク質又はペプチドが、アルカリホスファターゼ集合体である場合について詳述する。
アルカリホスファターゼ集合体は、4量体以上を形成する。そして、集合体形成する原料である、アルカリホスファターゼが2量体を形成していることから、アルカリホスファターゼ集合体は、4量体、6量体、8量体等のように、偶数の単量体によって形成されることが好ましい。
アルカリホスファターゼ集合体の分子径は、特に限定はされないが、通常13nm以上が好ましい。また、分子量も特に限定はされないが、通常は、通常200kDa以上が好ましい。
以下に、本発明のビオチン化合物が有する効果について列挙する。なお、本発明のビオチン化合物は、以下の全ての効果を有するものに限定されないのは言うまでもない。
本発明のビオチン化合物は、トランスグルタミナーゼと共に用いることによって、特定のアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチドに対して、特異的に結合することができる。従って、本発明のビオチン化合物は、ビオチン修飾化剤として好適である
以下に、本発明のタンパク質又はペプチド変異体が有する効果について列挙する。なお、本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体は、以下の全ての効果を有するものに限定されないのは言うまでもない。
本発明に係るタンパク質又はペプチド変異体は、トランスグルタミナーゼによって認識される配列を有しており、このような配列付近のアミノ酸を特異的に修飾することができる。
上述のような修飾が施されたタンパク質又はペプチド変異体の酵素活性は、野生型のタンパク質又はペプチドと比較して顕著に低下するものではなく、修飾の目的を達成しながら酵素活性をも発揮することができるので、多機能分子とすることができる。
本発明のタンパク質又はペプチド変異体は、野生型の立体構造に影響を与えないように修飾を施すことができるので、集合体化することが可能であり、このような集合体化したタンパク質又はペプチドは、顕著に優れた機能を有する集合体とすることが可能である。
各種アルカリホスファターゼ変異体のFITC修飾実験結果を示す図。(A)FITC修飾した各種アルカリホスファターゼ変異体の実験条件。(B)FITC修飾した各種アルカリホスファターゼ変異体のSDS−PAGE後、CBB染色した像。(C)FITC修飾した各種アルカリホスファターゼ変異体のSDS−PAGE後の蛍光写真像。 各種アルカリホスファターゼ変異体のFITC修飾実験結果を示す図。(A)FITC修飾した各種アルカリホスファターゼ変異体の実験条件。(B)FITC修飾した各種アルカリホスファターゼ変異体のSDS−PAGE後、CBB染色した像。(C)FITC修飾した各種アルカリホスファターゼ変異体のSDS−PAGE後の蛍光写真像。 各種アルカリホスファターゼ変異体のFITC修飾実験結果を示す図。(A)FITC修飾した各種アルカリホスファターゼ変異体の実験条件。(B)FITC修飾した各種アルカリホスファターゼ変異体のSDS−PAGE後、CBB染色した像。(C)FITC修飾した各種アルカリホスファターゼ変異体のSDS−PAGE後の蛍光写真像。 AP(219−221)−K2変異体のビオチン修飾実験結果を示す図。(A)biotin−QCを用いた場合のCBB染色像。(B)biotin−GGG−GGLQGを用いた場合のCBB染色像。(C)bis(biotin−GGG)−KGLQGを用いた場合のCBB染色像。 AP(219−221)−Q変異体のビオチン修飾実験結果を示す図。(A)実験条件。(B)CBB染色像。 ビオチン修飾アルカリホスファターゼ変異体(AP(219−221)−K2)の複合体のDLS実験結果を示す図。(A)biotin−QGによって修飾したアルカリホスファターゼを用いた場合。(B)biotin−GGG−GGLQGによって修飾したアルカリホスファターゼを用いた場合。(C)bis (biotin−GGG)−KGLQGによって修飾したアルカリホスファターゼを用いた場合。 ビオチン修飾アルカリホスファターゼ変異体(AP(219−221)−K2)の集合体の分子排斥クロマトグラフィー実験結果を示す図。(A)biotin−QGによって修飾したアルカリホスファターゼを用いた場合。(B)biotin−GGG−GGLQGによって修飾したアルカリホスファターゼを用いた場合。(C)bis (biotin−GGG)−KGLQGによって修飾したアルカリホスファターゼを用いた場合。 アルカリホスファターゼ集合体(219−221)−Qの複合体形成実験結果を示す図。(A)DLS実験結果を示す図。(B)分子排斥クロマトグラフィー実験結果を示す図。 アルカリホスファターゼ集合体の形状を示す模式図。 アルカリホスファターゼ複合体の機能を間接ELISAによって確認した実験結果。(A)AP(219−221)−K2変異体を用いた場合。(B)AP(219−221)−Q変異体を用いた場合。(C)化学修飾ビオチン化APを用いた場合。 ストレプトアビジン被覆プレート上でのアルカリホスファターゼ集合体の形成実験結果を示す図。 EGFP集合体の形成実験結果を示す図。
以下に本発明をより詳細に説明するための実施例を記載する。なお、本発明が以下に示す実施例に記載の内容に限定されないのは言うまでもない。
<実施例>
実験例1:アルカリホスファターゼ変異体の作製
下記の表3に示すアルカリホスファターゼ変異体を作製した。具体的には、角変異体のN末端に、MDIGINSDPHHHHHH(NHis−AP:配列番号14)からなるアミノ酸配列を付加した各種アルカリホスファターゼ変異体をコードする塩基配列を、大腸菌発現用のベクター(pET22b(+))に組み込んだアルカリホスファターゼ変異体発現ベクターを作製した。斯かるベクターで、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
この形質転換体を適当な培地で培養した後に回収し、次いで破砕工程に供して形質転換体の細胞溶解液を得た。その後、常法に従って細胞溶解液から各種アルカリホスファターゼ変異体を単離及び精製した。なお、精製工程においてNi−NTAカラムを用いた。
Figure 0006226750
実験例2:各種アルカリホスファターゼ変異体の活性測定
実験例1にて作製した各種アルカリホスファターゼの活性を測定した。変異を施すことによって活性に影響があるかどうかを確認するためである。アルカリホスファターゼの基質として、p−ニトロフェニルリン酸(p−NPP)を用いた。活性測定は25°Cで行い、10μlの各種アルカリホスファターゼ溶液(濃度2μM)を、990μlの1mM p−NPP/1M Tris−HCl(pH8.0)溶液に加え、410nmの吸収を追跡することにより求めた。結果を表4に示す。
Figure 0006226750
表4から明らかなように、実験例1にて作製した各種アルカリホスファターゼ変異体の活性は、野生型と殆ど変わらないことが明らかとなった。従って、上記変異導入は、アルカリホスファターゼそのものが有する活性に殆ど影響しないことが言える。
実験例3:各種アルカリホスファターゼ変異体のFITC修飾
上記実験例1にて作製した各種アルカリホスファターゼ変異体のうち、E219K、W220K、Q221K、AP(91−93)−K1、AP(91−93)−K2、AP(219−221)−K1、及びAP(219−221)−K2をFITC−β−Ala−QG(Org.Biomol.Chem.,2009,7,3407−3412参照)にて修飾した。これは、Ala−Gln−GlyのトリペプチドのN末端にFITCが共有結合した化合物であり、トランスグルタミナーゼの基質として知られる。
25mM Tris−HCl(pH8.0)、137mM NaCl、2.68mM KClのTBSバッファー中に、最終濃度がそれぞれ200μM、0.5mg/ml(10μM)、及び0.5U/mlとなるようにFITC−β−Ala−QG、上記3種類のアルカリホスファターゼ変異体、及びMTG(Org.Biomol.Chem.,2009,7,3407−3412参照)を加えて良く攪拌し、25°Cで3時間静置させることで行った。また、MTGを加えない比較実験も行った。
その後、反応開始後0、60、180分後のサンプルについてSDS−PAGEを行った。電気泳動後のゲルについて蛍光イメージャーを用いて、FITC由来の蛍光を観察した。
さらに、観察後にCBB染色も行った。そして比較実験として、上記6種類のアルカリホスファターゼ変異体に代えて、配列番号10に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド(NHis)を用いた。これらの結果を図1−1及び図1−2に示す。
また、上記実験例1にて作製したアルカリホスファターゼ変異体であるAP(219−221)−Qは、一級アミンであるFluorescein cadaverine([5−((5−Aminopentyl)thioureidyl)fluorescein]:AnaSpec社)にて修飾した。これは、トランスグルタミナーゼの基質として知られる。
25mM Tris−HCl(pH8.0)、137mM NaCl、2.68mM KClのTBSバッファー中に、最終濃度がそれぞれ200μM、0.5mg/ml(10μM)、及び0.5U/mlとなるようにFluorescein cadaverine、AP(219−221)−Q、及びMTGを加えて良く攪拌し、25°Cで3時間静置させることで行った。また、MTGを加えない比較実験も行った。
その後、反応開始後0、10、30、60、120、及び180分後のサンプルについてSDS−PAGEを行った。電気泳動後のゲルについて蛍光イメージャーを用いて、FITC由来の蛍光を観察した。さらに、観察後にCBB染色も行った。これらの結果を図1−3に示す。
さらに、上記7種類のFITC修飾が施されたアルカリホスファターゼ変異体の活性測定を行った。FITCによる修飾を完追させるため、上記の全ての変異体に対する反応の時間を24時間として得られたFITC化アルカリホスファターゼ変異体を活性測定実験に供した。具体的なアルカリホスファターゼ活性測定は、上記実験例2と同の方法にて行った。この結果は表5にて示す。
Figure 0006226750
図1−1及び図1−2から、約50kDaに各種アルカリホスファターゼ変異体が、そして約38kDaにMTGのバンドが観察された。
特に、図1−1からは、W220K、つまりアルカリホスファターゼの220番目のトリプトファン残基をリジンに変異させた変異体で、且つMTGが存在するもののみについて、若干のバンドの上昇が見られた。また、CBBによる染色位置と同じ位置にFITCに由来する蛍光が観察された。これより、一残基変異を行うだけでも、MTGによって認識されうるという事が分かった。
しかしながら、反応性がかなり低く殆ど未反応のアルカリホスファターゼが残っており、同じように一残基変異を行ったE219K、Q221KについてはMTGに認識されず、バンドの上昇並びにFITC由来の蛍光を観察する事は出来なかった。
この結果から、W220KがMTGによって上手く認識されたが、本来MTGの認識にはリジン残基前後のアミノ酸残基の性質に依存するため、一残基変異によって新たなMTG認識サイトを構築するというのは、タンパク質本来の機能活性の低下は少ないが、認識されるか否かはやってみないと分からないといった、博打的要素が含まれるため、汎用性の観点から好ましくない。
また、図1−2からは、13アミノ酸残基からなるK−loopを挿入した各種アルカリホスファターゼ変異体において、MTGが存在する場合において若干のバンドシフトと、FITC由来の蛍光が観察された。
また斯かる反応はアルカリホスファターゼに対して、基質20等量で反応時間60は60分程度でほぼ反応が飽和していると予測された。これより、挿入したK−loopが狙い通りMTGによって認識されることを確認した。また、FITC由来の蛍光のバンド強度から考えて、K−loopのKR(IRINKGPGRAFVT)よりもRK(IRINRGPGKAFVT)の配列が、そして挿入部位は91−93番目よりも219−221番目の方が、反応性が高いことも明らかである。
前者についてはMTG認識においてリジン残基前後の配列が、RK配列の方が適していたからであると考える。挿入部位については、91−93番目の位置よりも219−221番目の位置の方が、立体障害が低く、MTGが接近し易いためであると考える。
以上の2点から、今回調製した各種アルカリホスファターゼ変異体の中でも、RKの並びのK−loopを219−221番目の位置に挿入したAP(219−221)−K2が最もMTGに対する反応性が高いと言える。
この結果から考えて、今までMTGに対して認識される配列の挿入はタンパク質のN又はC末端への挿入が主であったが、上記RK並びのK−loopを使えば、MTGに対して認識される配列の導入部位の選択肢が大きく広がったと言える。
また図1−3から、上記K−loopを挿入した変異体と同様に、アミノ酸番号219−221に挿入したQ−loop挿入AP変異体であるAP(219−221)−Qも、MTGによって高効率にラベル化されることも明らかである。
そして、表5に記載の結果から、AP(91−93)−K1及びAP(91−93)−K2の活性が著しく低下していることが明らかである。これはAP(91−93)−K1及びAP(91−93)−K2に対するFITCの修飾位置がアルカリホスファターゼの活性中心近傍に存在していた為であると予想される。一方で、AP(219−221)−K1、AP(219−221)−K2、及びAP(219−221)−RはFITCによる修飾後も高い活性を維持していたため、219−221はアルカリホスファターゼ活性中心から遠隔に位置するといえる。
実験例4:各種アルカリホスファターゼ変異体のビオチン修飾
〔AP(219−221)−K2変異体について〕
MTGのビオチン化基質であるbiotin−QG、biotin−GGG−GGLQG並びにbis(biotin−GGG)−KGLQGを用いて、AP(219−221)−K2のビオチン化を行った。
酵素反応はTBS buffer中に、最終濃度が0.5mg/ml(10μM)、200μM、0.5U/mlとなるようにAP(219−221)−K2、ビオチン化基質、及びMTGを加え、それらを良く攪拌し、25°Cで静置させることで行った。
その後、Ni−NTAカラムを用いたHis−tag精製により、過剰の未反応のビオチン化基質とビオチン化アルカリホスファターゼ変異体を単離し反応を終了させた。反応後のサンプルについてSDS−PAGEを行い、CBB染色した。
また、ビオチン化の程度を確認するために、HABAアッセイを行った。24.2mgの4−hydroxy−azobenzene−2’−carboxylic acid(HABA)を9.9mlのMilli−Q水に溶かし、個々に100mlの1N NaOHを入れて激しく攪拌した。20mlの卵白由来アビジン溶液(10mg)をメスフラスコにいれ、次いでHABA溶液を600ml入れた後、PBSでメスアップしてHABA−Avidin溶液を調整した。
1mlセルに上記HABA−Avidin溶液を900μlとり、500nmの吸光度を測定し、この値をAbs.Aとした。次いで、セルの中に上記10μMのビオチン化アルカリホスファターゼ変異体を100μl入れ、よくピペッティングし、吸光度が安定したら値を測定し、この値をAbs.Bとした。吸光度を下記の式1に当てはめ、サンプル中のビオチン濃度をからビオチンのラベル化率を算出した。
[ビオチン化率]=10−3×(0.9×Abs.A−Abs.B)/34
(式1)
最後に、上記ビオチン化アルカリホスファターゼの測定を2種類の方法にて実施した。
(活性測定A)…上記実験例1〜3と同様の方法。
(活性測定B)…0.1μMの上記ビオチン化アルカリホスファターゼ変異体を25mMのTris−HCl(pH8.0)で調製し、予め96穴マイクロプレート固層化されたストレプトアビジンにそれぞれ100μL/wellずつとなるように添加し、4°Cで一時間固定化させた。その後各ウェルを、TBST(25mM TBS+0.05%Tween20)により洗浄した。固定化されたアルカリホスファターゼ変異体の活性測定は、各ウェルに上記のp−NPP溶液を添加し、同様の反応条件で反応させた後、同様の方法にて測定した。これらの結果を図2−1及び表6に示す。
Figure 0006226750
biotin−QG、biotin−GGG−GGLQG、bis(biotin−GGG)−KGLQGにてビオチン化した全てのアルカリホスファターゼ変異体において、1時間の反応時間の後、高分子量側へのわずかなバンドシフトが見られた。修飾前後のバンドが重なって見えるために正確ではないが、かなり高効率にビオチン化されていることが分かる。このようなビオチン化は、HABAアッセイを用いて測定されるビオチン化率にて定量的な評価ができる。
biotin−QG、biotin−GGG−GGLQGは100%の反応率でビオチン化率1.00、bis(biotin−GGG)−KGLQGはビオチン化率2.00となる。測定の結果、全てのビオチン化アルカリホスファターゼ変異体において、ほぼ定量的なビオチン化反応を達成した。よって今回の新規合成ビオチン化基質は確かにMTGによって認識され、かつ定量的なビオチン化反応が可能な基質であることが確認された。
また、ビオチン化アルカリホスファターゼ変異体の活性測定(活性測定A)の結果から、ビオチン修飾によるアルカリホスファターゼ変異体の活性の低下はほぼ見られなかった。
最後に、アルカリホスファターゼ変異体に修飾したビオチン基がストレプトアビジンとの結合能を維持しているかを確認するために、アビジンコートプレート上に添加し固定化し、更にその場合の活性測定も行った(活性測定B)。
その結果、プレート上でアルカリホスファターゼの活性が確かに見られたことからアルカリホスファターゼに修飾されたビオチンのストレプトアビジンへの結合能を確認し、同時にストレプトアビジンに結合した場合でもアルカリホスファターゼ変異体は活性を維持していることを確認した。
〔AP(219−221)−R変異体について〕
ビオチン化基質としてbiotin−(PEO)4−amineを用いて、AP(219−221)−QのMTGによるビオチン化を行った。酵素反応はTBS buffer中に、最終濃度がそれぞれ、0.5mg/ml(10μM)、200μM、及び0.5U/mlとなるようにAP(219−221)−Q、biotin−(PEO)4−amine、及びMTGを加え、それらを良く攪拌し、25°Cで静置させることで行った。
次いで、Ni−NTAカラムを用いたHis−tag精製により、過剰の未反応のビオチン化基質とビオチン化アルカリホスファターゼ変異体を単離し、反応を終了させた。反応後のサンプルについてSDS−PAGEを行い、CBB染色した。また、ビオチン化率測定と活性測定は〔AP(219−221)−K2変異体について〕に記載の方法と同様にして行った。結果を図2−2に示す。
SDS−PAGE後のCBB染色の結果から、MTGとbiotin−(PEO)4−amine存在化のサンプルにおいて僅かにバンドの上昇が確認された。活性測定の結果から、ビオチン化前のAP(219−221)−Qの酵素活性を1.00とした場合、ビオチン化AP(219−221)−Qの比活性は0.96±0.01であり、ほぼ元の活性を維持したままのビオチン化に成功した。
また、HABAアッセイを用いたビオチン化率の測定結果からAP(219−221)−Qのビオチン化率は0.97±0.04であり、ほぼ定量的なビオチン化が達成されたと言える。また、AP(219−221)−Qのストレプトアビジンプレート上への固定化を試みた結果(活性測定B)から、プレート上でも問題なくアルカリホスファターゼの活性が維持されていることが明らかとなった。
実験例5:ビオチン修飾各種アルカリホスファターゼ変異体の複合体形成
各種ビオチン化アルカリホスファターゼ変異体を0.2μmのフィルター濾過処理後のTBSにより2μMに調製した。ストレプトアビジン溶液を(ストレプトアビジンのビオチン結合サイト)/(APのbiotin基)(以下、[mSA]/[mAP]と表記する。)[mSA]/[mAP]=1/4、1/2、1となるように加え、30分間静置した後、動的光散乱(DLS)を用いて酵素集合体の粒子径測定を行った。
使用したストレプトアビジンの最終濃度を、biotin−QG並びにbiotin−GGG−GGLQGにてビオチン化したAP(219−221)−K2及びbiotin−PEO4−amineにてビオチン化したAP(219−221)−Qの場合は2μMとし、bis(biotin−GGG)−KGLQGにてビオチン化したAP(219−221)−K2の場合は4μMとした。
DLS測定後の溶液を、サイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)にて分画し、ストレプトアビジンとアルカリホスファターゼ変異体の比による、形成された集合体形成の挙動を行った。SECは20mM TBS buffer(pH7.4)、流速0.5ml/minにて分析を行った。
各種ビオチン修飾AP(219−221)−K2変異体について結果を図3−1、図3−2、及び表7に示す。
Figure 0006226750
〔biotin−QG修飾AP(219−221)−K2について〕
biotin−QGは今回調製したビオチン化基質の中で一番短いため立体障害が大きく、これにより集合体の自己環化反応を防ぎ、集合体の成長が期待された。DLSの測定の結果、ストレプトアビジンの添加に伴い粒子径が増大し、[mSA]/[mAP]=1の時点で直径50.3nmの集合体が観察された。図5(A)の模式図にて示されるような、集合体の成長が起きたことが期待される。
以前調製した両末端のNQ−AP−CQの場合、直径が最大31.9nmであったの(Y.Mori,K.Minamihata,H.Abe,M.Goto,N.Kamiya,2011,Org.Biomol.Chem.,9,5641.)で、今
回はそれを上回る大きさの集合体の形成に成功した。
よって(i)アルカリホスファターゼの対角線上に架橋点であるビオチン基を調製すること、更に(ii)短いリンカー長により自己環化反応を抑えたことの二点によって、大きな集合体の形成に成功した。
次にDLS測定後のサンプルについてSECにより検討したところ、溶出体積12.3 mLでbiotin−QG修飾AP(219−221)−K2変異体由来のピークが見られた。このピークはストレプトアビジンの添加に伴って減少し、代わりにそれ以上の分子量の集合体を形成した。
溶出体積9.8mLのピークは分子量が440kDaと見積もられ、系中に存在するbiotin−QG修飾AP(219−221)−K2変異体とストレプトアビジンの比から、ストレプトアビジンの4つの結合サイトに対して、biotin−QG修飾AP(219−221)−K2変異体がそれぞれ結合したものと思われる。
更に高分子両側の8.4mLのピークは先ほどの集合体に更にストレプトアビジン1つとbiotin−QG修飾AP(219−221)−K2変異体3つが結合したものが考えられた。また、[mSA]/[mAP]=1においては今回用いたカラムのサイズ排除体積で出るほどの大きな集合体を形成しており、DLSで測定した通り、今回巨大な集合体の形成に成功している。
これより、立体障害/モノマーの剛直性により、集合体の粒子径は大きいが、フレキシビリティが乏しく、密に詰まることが出来ず、密度が低くなっているのではないかと予想された。
〔biotin−GGG−GGLQG修飾AP(219−221)−K2変異体〕
次にビオチン化基質として検討したbiotin−GGG−GGLQGはbiotin−QGと同じく直鎖型ビオチン化基質であるが、リンカー長がbiotin−QGの約2倍である。リンカーが長くなることによって、自己環化反応がbiotin−QGに比べて起こり易くなることが予想された。DLSで粒子径を測定した所、ストレプトアビジンの添加によって粒子径は増大したものの、[mSA]/[mAP]=1/2と1の粒子径はほとんど変わらず、直径29.2nm程度の集合体が形成されるに留まった。
即ち、biotin−QG修飾AP(219−221)−K2変異体の結果と比較して、リンカー長の増加によって集合体の粒子径の減少が見られた。
次にSECによる分析を行った所、[mSA]/[mAP]=1/2まではほとんどbiotin−QG修飾AP(219−221)−K2変異体と同じ挙動を示し、形成する集合体も溶出体積が同じことから、同じ集合体を形成していることが示唆された。しかし、[mSA]/[mAP]=1において見られた大きい集合体の形成は確認されず、先述の二つの集合体が比を変えて存在しているだけであった。これよりSECによる解析においても、リンカー長によって自己環化反応が促進される挙動を確認した。
〔bis(biotin−GGG)−KGLQG修飾AP(219−221)−K2変異体〕
最後にbis(biotin−GGG)−KGLQG修飾AP(219−221)−K2変異体とストレプトアビジンを組み合せることで集合体を形成した。集合体の粒子径は、ストレプトアビジンの添加によって段階的に増加し、最終的に直径34.8nmの集合体となった。ストレプトアビジンの添加による粒子径の増加の様子が明らかに前者2つと異なり、段階的に成長している様子が予想された。これは二股構造を有するビオチン基質のため、ストレプトアビジンのペアになっているビオチン結合部位を2つ同時に捕まえている為に、ワイヤー状にストレプトアビジン−bis(biotin−GGG)−KGLQG修飾AP(219−221)−K2変異体の集合体が成長していることが考えられた。
[mSA]/[mAP]=1において、DLS測定結果は粒子径大方向にブロードしたようなものが得られたので、ピークが伸びた部分はワイヤー状集合体の形成を示唆している。
SECにより更なる分析を行った所、明らかに前者2つとは異なる集合体を形成していた。まず、[mSA]/[mAP]=1/2の時点で溶出体積10.5mLと11.1mLに新たなピークが見られた。これらはそれぞれ分子量260kDaと320kDaであり、例えば、図5(B)の模式図にて示されるような、bis(biotin−GGG)−KGLQG修飾AP(219−221)−K2変異体−ストレプトアビジン−bis(biotin−GGG)−KGLQG修飾AP(219−221)−K2変異体の集合体(AP−SA−AP集合体)と、リング状に自己環化した(bis(biotin−GGG)−KGLQG修飾AP(219−221)−K2変異体−ストレプトアビジン)2集合体((AP−SA)2集合体)と予想された。
[mSA]/[mAP]=1においては、上記のAP−SA−AP集合体がメインとして形成され、上記の(AP−SA)2集合体に加え新たに溶出体積9.7mL、推定分子量419kDaのピークが確認された。分子量から考えると、(AP−SA)2集合体に更にbis(biotin−GGG)−KGLQG修飾AP(219−221)−K2変異体を含む集合体であると思われた。
最後に、[mSA]/[mAP]=2においては、溶出時間9.7mLと11.1mLのものに加え、新たに8.2mLにピークが観察された。推定分子量は691kDaであり、(AP−SA)4−AP集合体と予想された。以上の結果より、推定分子量から考えるとワイヤー状の集合体の形成が示唆される結果となった。
次に、biotin−PEO4−amine修飾AP(219−221)−Q変異体について結果を図4及び表8に示す
Figure 0006226750
biotin−PEO4−amine 修飾AP(219−221)−Q変異体に対して、[mSA]/[mAP]=1/4、1/2並びに1となるように加え、ストレプトアビジン− biotin−PEO4−amine 修飾AP(219−221)−Q変異体の集合体を形成した。その結果、ストレプトアビジンの添加によって確かに粒子径の増大が観察された。
しかし集合体の粒子径は、[mSA]/[mAP]=1/2で34.9nmと最大となり、更にストレプトアビジンを添加して[mSA]/[mAP]=1の条件では、26.0nmと粒子径は減少してしまった。
ストレプトアビジンの添加による粒子径の減少挙動についてより深い検討を行う為に、DLS測定後のサンプルをSECで流し、ストレプトアビジンとbiotin−PEO4−amine修飾AP(219−221)−Q変異体の比による集合体の形成挙動を追跡した。
得られたチャートより、溶出体積14.2mLと16.2mLにそれぞれbiotin−PEO4−amine修飾AP(219−221)−Q変異体とストレプトアビジンのピークが観察された。biotin−PEO4−amine修飾AP(219−221)−Q変異体に対してストレプトアビジンを添加するに伴い、biotin−PEO4−amine修飾AP(219−221)−Q変異体のピークが減少し、より溶出時間の早い=分子量の大きな集合体の形成が確認された。[mSA]/[mAP]=1/2の時点で集合体のほぼ全てが排除体積で溶出される様な大きな集合体が観察されたが、[mSA]/[mAP]=1の条件においては集合体一個当りの分子量が減少し、DLSの測定結果を補完する形となった。
[mSA]/[mAP]=1/4から1/2の順に1で粒子径が増加、減少、増加という挙動より、ストレプトアビジンとbiotin−PEO4−amine修飾AP(219−221)−Q変異体を用いた集合体の形成は、ストレプトアビジンの添加によって際限なく成長していくのではなく、ある安定化状態(安定な直径・分子量の粒子)が存在するのではないかと考察された。AP(219−221)−K2変異体における結果と合わせて、ビオチン化基質のリンカー長による立体障害が粒子径に大きく影響しているこが推察された。
実験例6:各種アルカリホスファターゼ変異体の複合体の機能解析
上記実験例5にて作製したbiotin−QG修飾AP(219−221)−K2変異体並びにbiotin−PEO4−amine修飾AP(219−221)−Q変異体と、ストレプトアビジンとの複合体の機能解析を行った。
両変異体とストレプトアビジンとの混合量を、それぞれ上述したような[mSA]/[mAP]=1/4、1/2並びに1として得られた複合体について機能解析を行った。コントロールとして、ストレプトアビジンを含まない、単にbiotin−QG修飾AP(219−221)−K2変異体並びにbiotin−PEO4−amine修飾AP(219−221)−Q変異体を用いた。
また、更なる比較実験として、アルカリホスファターゼに対してビオチンを化学的に修飾した化学修飾アルカリホスファターゼを用いた。具体的な製造方法は以下の通りである。
5μMのアルカリホスファターゼに対し、biotin−(AC)2−OSuをそれぞれ500若しくは50μM(100mMのホウ酸緩衝液 pH9.0)になるように調製し、25°Cで5時間、化学修飾ビオチン化反応を行った。反応後のサンプルを10kDaのフィルターを用いて、遠心ろ過並びにTBS緩衝液の添加を繰り返し、未反応の試薬を取り除くと共に反応を終了させた。
次に、ELISA測定用のプレートを作製した。0、0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000μg/mlとなるように調製した抗原であるオブアルブミン(OVA)を100μl/wellとなるように各ウェルに加え、4°Cで12時間静置することで固相化を行った。次いで、TBSTで5回洗浄後、2%BSA/TBSを200μl/well加え、37°Cで2時間静置することでブロッキングを行った。洗浄後、一次抗体である抗OVA mouse抗体の10000倍希釈溶液を100μl/well加え、37°Cで2時間静置した。洗浄後、二次抗体であるビオチン化した抗mouseIgG rabbit抗体の10000倍希釈溶液を100μl/well加え、37°Cで2時間静置した。洗浄後、上述した各種アルカリホスファターゼ集合体、並びに化学修飾アルカリホスファターゼ溶液を100μl/well加え、37°Cで2時間静置した。
最後に、上記作成したプレートを洗浄後、p−ニトロフェニルリン酸(p−NPP)を基質として用いた活性測定を行った。活性測定は、5mMのp−NPPを含む1MのTris−HCl(pH8)の条件下、37°Cで行い、410nmの吸収を追跡する上述の方法に従って活性測定を行った。なお、本実験では、ストレプトアビジンなしの条件の吸光度をNoiseとし、各吸光度からS/N比を算出している。結果を図6に示す。
先ず、2つのビオチン修飾化アルカリホスファターゼ変異体を用いた場合について、[mSA]/[mAP]=1/4においてはシグナルが見られなかったが、これらはアルカリホスファターゼ集合体を形成する溶液中にビオチン基が過剰に存在するサンプルであるからである。ストレプトアビジンのビオチン結合サイトが全て占有されていたため、ビオチン化抗体と結合出来なかったものと予想された。
しかしながら[mSA]/[mAP]=1/2ではどちらにおいてもシグナルが観察され、サンプル条件的には先ほどと同様ビオチン基過剰であるにも関わらず結合していることになる。ここでもう一度[SA]/[AP]=1/4のS/N比を見ると、2には至らないものの、確かに[mSA]/[mAP]=0μg/mlと比較してシグナル強度の増強が見て取れた。
よって、アルカリホスファターゼ集合体はアビジン―ビオチン間の平衡反応によって抗mouse IgG抗体と結合するのではないかと推察された。[mSA]/[mAP]=1/4のシグナルが弱いのは、系中に存在するビオチンと相互作用可能な集合体量が少ないことが示唆される。
一方、[mSA]/[mAP]=1においては強いシグナルが観察され、確かにビオチン化抗体へのAP集合体の結合を確認した。以上の結果は、上記表に示した[mSA]/[mAP]の比を変えることによる集合体の成長と相関していると考えられる。即ち、より大きな集合体の形成が、ELISAにおけるシグナル強度の増大に寄与していることが示唆された。
また、[mSA]/[mAP]=2のシグナルが弱いのは、今度は逆に系中にストレプトアビジンが
過剰に存在しているため、フリーなストレプアビジンの結合が増えた為と思われる。また粒子径にはある最適な値が存在し、それ以上のストレプトアビジンを添加すると集合体1つ当りの粒子径が減少するという仮説が正しいとすれば、ストレプトアビジン過剰によりOVA1つ当りに結合しているアルカリホスファターゼの量が減ってしまったことも原因であると考えられた。
AP(219−221)−K(b)とAP(219−221)−Q(b)で[mSA]/[mAP]=1/2,1間のシグナル強度の傾向が違うのもそれが要因となっていると考えられた。
化学修飾アルカリホスファターゼについては全ての場合において微弱なシグナルの上昇が観測されるだけであった。これは化学修飾のためにビオチン化率が高くなってしまい、系中に酵素修飾ビオチン化アルカリホスファターゼと比べてビオチン基が過剰量存在したためであると考えられる。また、化学修飾によるアルカリホスファターゼの活性自体の低下も懸念された。
実験例7:各種アルカリホスファターゼ変異体の複合体形成能について
上記実験例4にて作製したビオチン修飾されたアルカリホスファターゼの集合体形成能について実験した。具体的には、AP(219−221)−K2変異体に対して、biotin−QG、biotin−GGG−GGLQG並びにbis(biotin−GGG)−KGLQGを用い、更にMTGを用いてビオチン化したものである。
これらのビオチン化アルカリホスファターゼを、ストレプトアビジンで被覆されたプレート上に添加し、これらのビオチン化アルカリホスファターゼのプレート上への固定化を試みた。
固定化は、ストレプトアビジンによってコーティングされたプレートに、1μMに調製した各ビオチン化アルカリホスファターゼを100μLずつプレートに添加し、4℃で30分静置した後、200μlのTBS bufferにて洗浄した。次いで、アルカリホスファターゼの活性測定を上述の方法で行った。その結果を図7に示す。
図7中、ビオチン化基質としてbiotin−QGを用いたものを(1)、biotin−GGG−GGLQGを用いたものを(2)、そしてbis(biotin−GGG)−KGLQGを用いたものを(3)とする。また、図7中のWTとは、AP(219−221)−K2変異体に代えて野生型のアルカリホスファターゼを用いたものである。
以上より先ほどと同様に、今回合成した新規のビオチン化基質はMTGによって認識され、またアルカリホスファターゼがビオチン化された状態でもストレプトアビジンとの結合能を維持していることが明らかとなった。
従って、プレート上にてアルカリホスファターゼ集合体が形成していることも明らかとなった。
実験例8:EGFP変異体の複合体形成能について
配列番号15に示すアミノ酸配列(MHHHHHH)のHisタグをN末端に有する、配列番号13に示すEGFP変異体を作製した。具体的な作製方法は、上述のアルカリホスファターゼ変異体と同様にして行った。配列番号13に示すEGFP変異体は、そのC末端に配列番号4に示すアミノ酸配列が含まれている。
次いで、ビオチン化合物としてbis(biotin−GGG)−KGLQGを用い、EGFP変異体をビオチン化した。ビオチン化の条件としては、10μMのEGFP変異体、200μMのビオチン化合物、0.5U/mLのMTGをTBS buffer中で混合して25℃で1時間反応させた。反応後にゲル濾過カラム(G−25)を用いてビオチン化EGFP変異体を精製した。
得られたビオチン化EGFPを、ストレプトアビジンで被覆されたプレート上に添加し、これらのビオチン化アルカリホスファターゼのプレート上への固定化を試みた。
固定化は、上述の実施例7のアルカリホスファターゼのストレプトアビジンによってコーティングされたプレートへの固定化と同様にして行った。固定化の後、蛍光イメージング装置を用いてプレートを観察した。その結果を図8に示す。
図8(A)はイメージング像、(B)はイメージング像から得られた蛍光強度を算出したグラフである。図中のK tag EGFPが変異体を示し、WTがEGFP変異体に代えて野生型を用いたものである。
図8の結果から、アルカリホスファターゼ変異体と同様に、今回合成した新規のビオチン化基質はMTGによって認識され、またEGFP変異体に対してビオチン化できることが明らかとなった。EGFPはビオチン化された状態でもストレプトアビジンとの結合能を維持していることが明らかとなった。
従って、プレート上にてEGFP集合体が形成していることも明らかとなった。

Claims (21)

  1. 下記式(1)
    Figure 0006226750
    (式中、
    nは、1又は2であり、
    Xは、O又はNHであり、前記nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよく、
    は、直接結合またはアミノ酸残基であり、前記nが2である場合のRのアミノ酸残基は、同一であっても異なっていてもよく、
    は、nが1の場合、直接結合であり、前記nが2の場合のRは、リジン残基であり、RはRとペプチド結合し、
    は、直接結合又はアミノ酸残基であり、
    又はRのアミノ酸残基は、それぞれ1個のアミノ酸残基であるか、又は2個以上3個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である。)
    で表わされるビオチン化合物。
  2. 前記R又はRのアミノ酸残基が、グリシン残基及びロイシン残基からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のビオチン化合物。
  3. 下記式(2)
    Figure 0006226750
    (式中、
    nは、1又は2であり、
    Xは、O又はNHであり、前記nが2である場合のXは、同一であっても異なっていてもよく、
    は、直接結合またはアミノ酸残基であり、前記nが2である場合のRのアミノ酸残基は、同一であっても異なっていてもよく
    は、前記nが1の場合、直接結合であり、前記nが2の場合のRは、リジン残基であり、RはRとペプチド結合し、
    は、直接結合又はアミノ酸残基であり、
    又はRのアミノ酸残基は、それぞれ1個のアミノ酸残基であるか、又は2個以上3個以下のアミノ酸残基がペプチド結合しているアミノ酸残基である。)で表わされるビオチン化合物。
  4. 前記R又はRのアミノ酸残基が、グリシン残基を少なくとも1つ含む、請求項3に記載のビオチン化合物。
  5. 下記式(3)
    Figure 0006226750
    (式中、
    Xは同一又は異なってO又はNHであり、
    、及びRは、それぞれ、同一又は異なって直接結合又はアミノ酸残基であり、
    、及びRのアミノ酸残基は、それぞれ1個、又は2個以上3個以下のアミノ酸残基がペプチド結合したアミノ酸残基である。)
    で表わされるビオチン化合物。
  6. 前記R、R、又はRのアミノ酸残基がグリシン残基を少なくとも1つ含む、請求項5に記載のビオチン化合物。
  7. 下記式(4)
    Figure 0006226750
    で表わされるビオチン化合物。
  8. 下記式(5)
    Figure 0006226750
    で表わされるビオチン化合物。
  9. 下記式(6)
    Figure 0006226750
    で表わされるビオチン化合物。
  10. 請求項1〜9の何れか1項に記載のビオチン化合物を含む、タンパク質又はペプチドに対するビオチン標識化剤。
  11. 前記タンパク質又はペプチドが、配列番号5〜7の何れかに示されるアミノ酸配列を1つ以上含む、請求項10に記載のビオチン標識化剤。
  12. 請求項10又は11に記載のビオチン標識化剤と、トランスグルタミナーゼを含む、タンパク質又はペプチドのビオチン標識化キット。
  13. 前記トランスグルタミナーゼが微生物由来トランスグルタミナーゼである、請求項12に記載のビオチン標識化キット。
  14. 以下の工程1〜3を含む、配列番号5〜7の何れかに示されるアミノ酸配列を1つ以上含むタンパク質又はペプチドのビオチン標識化方法;
    (1)請求項1〜9の何れか1項に記載のビオチン化合物と前記タンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合する工程1、
    (2)工程1の混合物を、トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2、
    (3)工程2の後、前記混合物からビオチン標識化タンパク質又はビオチン標識化ペプチドを回収する工程3。
  15. 前記トランスグルタミナーゼが微生物由来トランスグルタミナーゼである、請求項14に記載の方法。
  16. 配列番号5〜7の何れかに示されるアミノ酸配列の1つ以上が挿入又は置換されたタンパク質。
  17. 配列番号8〜12の何れかに示されるアミノ酸配列を含む、請求項16に記載のタンパク質。
  18. 2量体である、請求項17に記載のタンパク質。
  19. 以下の、工程1〜3を含む、タンパク質のビオチンーアビジン複合体の製造方法;
    (1)請求項16〜18の何れかに示すタンパク質、請求項1〜9の何れか1項に記載のビオチン化合物、アビジン化合物、及びトランスグルタミナーゼを混合する工程1、
    (2)工程1の混合物を、前記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程2、
    (3)工程2の後、前記混合物からタンパク質のビオチンーアビジン複合体を回収する工程3。
  20. 前記トランスグルタミナーゼが、微生物由来トランスグルタミナーゼである、請求項19に記載の方法。
  21. 請求項1〜9の何れかに記載のビオチン化合物がペプチド結合した請求項16〜18の何れかに記載のタンパク質、およびアビジン化合物からなり、前記タンパク質中のビオチン化合物と、前記アビジン化合物が結合してなる、タンパク質のビオチン−アビジン複合体。
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