JP6419460B2 - ビオチン化合物、ビオチン標識化剤及びタンパク質集合体 - Google Patents
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項4 式(3)又は式(4)で表されるビオチン化合物:
(1)項1〜項4の何れか1項に記載のビオチン化合物とタンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合して接触させる工程(1)、
(2)工程(1)にて得られる混合物を、前記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程(2)、及び
(3)工程(2)にて得られる混合物から、ビオチン標識化タンパク質又はペプチドを回収する工程(3)。
(A)項1〜項4の何れか1項に記載のビオチン化合物を用い、トランスグルタミナーゼの存在下でビオチン標識化されたタンパク質又はペプチドと、アビジン化合物とを混合して接触させる工程(A)及び
(B)工程(A)にて得られる混合物から、タンパク質又はペプチドの集合体を回収する工程(B)。
本発明に係るビオチン化合物は、下記式(1)又は式(2)にて表される。
2)3mLのDMFで一晩震盪し、樹脂の膨潤を行う。
3)3mLのDMFで3回洗浄し、安定剤の除去を行う。
4)3mLの20%PPD/DMFで1回洗浄し、Fmocの脱保護を行う。
5)3mLの20%PPD/DMFで15分震盪し、Fmocの脱保護を行う。
6)3mLのDMFで3回洗浄する。
7)0.5mmolのFmoc−各種アミノ酸及び0.45MのHBTU,2.1mLのHOBt/DMF溶液、0.7mLの0.9M DIEA/DMF溶液を加え、適当な時間で震盪する。
8)3mLのDMFで3回洗浄する。なお、ここでKaiserテストによって未反応樹脂の確認を行ってもよい。テスト結果が陽性の場合、上記の7)に戻りアミノ酸を再伸長させてもよい。テスト結果が陰性の場合、以下の操作を先に進めればよい。
9)3mLのDCMで3回洗浄する。
10)3mLのDMFで3回洗浄する。
11)3mLの20%PPD/DMFで1回洗浄し、Fmocの脱保護を行う。
12)3mLの20%PPD/DMFで15分震盪し、Fmocの脱保護を行う。
13)3mLのDMFで3回洗浄する。
14)上記7)から13)までを繰り返し、目的のビオチン化合物となるようにそれを構成するアミノ酸を伸長させる。例えば、Fmoc−Lys(Fmoc)−OH、Fmoc−Gly等の化合物を、適宜採用して伸長させる。
15)アミノ酸を伸長させた樹脂に、ビオチン、及び0.45MのHBTU、2.1mLのHOBt/DMF溶液、0.7mLの0.9M DIEA/DMF溶液を加え、適当な時間で震盪する。
16)3mLのDCMで5回、3mLのDMFで5回、3mLのメタノールで5回洗浄後、一晩真空乾燥する。
17)TFA、TIS、及び脱イオン水をそれぞれ95:2.5:2.5で混合した2.5mLのカクテルを添加して1時間攪拌し、樹脂からの切り出しを行う。
18)全ての伸長操作の後切り出した溶液に対して、40mLのジエチルエーテルを添加して析出させ、凍結乾燥により粗ペプチドが得られる。
19)得られた粗ペプチドを下記の条件でペプチド由来の230nmの吸収を追跡する事でHPLCによって精製し、生成物に相当するフラクションを回収し、凍結乾燥させる。HPLCの条件は、カラムとして、inertsil ODA−3(10×250mm)を用い、移動相として0.1%のTFA/Milli−Q水(A)及びアセトニトリルを用い、10%の(B)から70%の(B)を30分でグラジエントをかけるか、70%の(B)から10%の(B)を40分でグラジエントをかけるかすればよい。
本発明に係るビオチン標識化剤は、上述の本発明に係るビオチン化合物を含み、タンパク質又はペプチドをビオチン標識することに専ら好適に用いられる。
本発明に係るビオチン標識化キットは、上述のビオチン標識化剤及びトランスグルタミナーゼを含む。
本発明に係るビオチン標識化タンパク質又はペプチドの製造方法は、以下に示す工程(1)〜(3)を含む。
(2)工程(1)にて得られる混合物を、前記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程(2)、及び
(3)工程(2)にて得られる混合物から、ビオチン標識化タンパク質又はペプチドを回収する工程(3)。
本発明に係るビオチン標識化タンパク質又はペプチドの製造方法における工程(1)は、本発明に係るビオチン化合物とタンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合して接触させる工程である。
本発明に係るビオチン標識化タンパク質又はペプチドの製造方法における工程(2)は、上記工程(1)にて得られる混合物を、前記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程である。
本発明に係るビオチン標識化タンパク質又はペプチドの製造方法における工程(3)は、上記工程(2)にて得られる混合物から、ビオチン標識化タンパク質又はペプチドを回収する工程である。
本発明に係るタンパク質又はペプチドの集合体の製造方法は、以下の工程(A)及び(B)を含む。
(B)工程(A)にて得られる混合物から、タンパク質又はペプチドの集合体を回収する工程(B)。
本発明に係るタンパク質又はペプチドの集合体の製造方法における工程(A)は、本発明に係るビオチン化合物を用い、トランスグルタミナーゼの存在下でビオチン標識化されたタンパク質又はペプチドと、アビジン化合物とを混合して接触させる工程である。
本発明に係るタンパク質又はペプチドの集合体の製造方法における工程(B)は、工程(A)にて得られる混合物から、タンパク質又はペプチドの集合体を回収する工程である。
エンドグルカナーゼ(EG)の触媒ドメイン(CDEG)とセルロース結合ドメイン(CBM)からなる人工セルロソーム系を構築し、異種タンパク質からなる1次元タンパク質集合体の形成が可能なこと、それによる集合体の機能向上が可能なことを明らかにした。
化学式(3)に示すtetra−biotin化基質ペプチドbis(bis(biotin−GGG)−K)−KGLQG(以下Q−biotin4と呼ぶこともある。)は、Fmoc固相合成法の手順に従って合成した。
今回合成したQ−biotin4がMTGによって認識されるのかどうかを、MTGのK側(一級アミン)基質であるdansyl cadaverine(DC)を用いて確認した。酵素反応はTBS緩衝液(25mMのTris−HCl、137mMのNaCl、2.37mMのKCl、pH7.4)中に、最終濃度が1μM、20μM、0.1U/mLとなるようにDC、Q−biotin4、MTGを加え、それらを良く攪拌し、25°Cで30分間静置させることで行った。反応後のサンプルを表1に示す条件でRP−HPLCを用いた分析を行い、このときDC由来の333nmの吸収を追跡する事によってMTGの架橋反応を確認した。
4−1.試薬の調製
24.2mgの4−hydroxy−azobenzene−2’−carboxylic acid(HABA)を9.9mLの超純水に溶解させ、100μLの1MのNaOHを添加した(HABA溶液)。10mgの卵白由来avidinを20mLのメスフラスコに入れ、先に調製したHABA溶液を600μL加えた後、PBSでメスアップした(HABA−avidin溶液)。
1mL石英セルにHABA−avidin溶液を900μLとり、500nmに於ける吸収を測定した。この時の値をAbs(A)とした。次に10μMb4−CDEG溶液100μL添加し、吸光度が安定した時の500nmの吸収を測定した。この値をAbs(B)とした。吸光度を下記の数式に当てはめ、サンプル中のビオチン濃度からビオチンのラベル化率を算出した。
ビオチン化率=[ビオチン]/[各種タンパク質]
酵素糖化反応は、50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中に、最終濃度が0.5wt%のAvicel(結晶性セルロース基質)若しくは0.05wt%のcarboxymethyl cellulose(CMC:可溶性セルロース基質)と、100nMのb4−CDEG、b4−EGとなるように調製したサンプルを混合し、50°Cで攪拌させることで行った。糖化反応の評価は、3,5,−dinitrosalicylic acid(DNS)法を用いて生成した還元末端の定量にて行った。0、1、3、6、12、24、及び48時間の時点で100μLサンプリングを行い、それぞれについて100μLのDNS試薬を加え、攪拌後99°Cで5分間加熱した。加熱後すぐにヴォルテックスにて撹拌し、氷浴上で2分間静置することで常温まで冷却した。150,000rpmで1分間遠心分離を行い、得られた上清を96穴プレートに100μL/wellの量で添加し、プレートリーダーで540nmの吸収を測定することで還元末端量の定量を行った。
集合体の形成はTBS緩衝液中に、最終濃度が2μMのb4−CDEG若しくはb4−EG及び1、2、4、8、若しくは16μMとなるようにストレプトアビジン(以下、SAと呼ぶことがある。)を加えたサンプルを激しく攪拌した後、30分間室温で静置し集合体の形成を行った。このとき、サンプル中の混合比は[SA monomer(mSA)]/[biotin]=1/8、1/4、1/2、1、又は2である。集合体形成後のサンプルについてサイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)にて分画し、集合体形成の挙動を追跡した。SECによる分析は20mMのTris−HCl、200mMのNaCl(pH8.0)、流速0.5mL/minにて280nmの吸収を追跡することにより行った。
酵素糖化反応は、50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中に、最終濃度が0.5wt%のAvicel、及び100nMのb4−CDEG又はb4−EGを含む酵素集合体:(CDEG−SA)n集合体、(EG−SA)n集合体、(EG/CBM−SA)n集合体となるように調製したサンプルについて、50°Cで攪拌させることで行った。生成還元末端の定量については実験項5と同様にして行った。
1.新規テトラビオチン化基質のペプチド合成
Q−biotin4をRP−HPLCにより精製した後のMALDI−TOF MS解析結果を行った。図2に示すように、理論分子量によく一致した単一ピークが観察され、RP−HPLCにおいても単一のピークが観察されたことから、Q−biotin4の合成に成功したと判断し、以降の実験はこのサンプルを用いて検討を行った。
白色粉末、MALDI−Tof MS;m/z:calculated for C97H155N31O29S4Na([M+Na]+)2370.6,found2370.1
Q−biotin4がMTGによって認識されるか評価する為に、MTGのリジン残基側の基質であるDCとの架橋反応を試みた。評価はRP−HPLCによって、DC由来の333nmの吸収を追跡し、比較する事によって行った。結果を図3に示す。DC由来のピークが17.057minにおいて観察され、Q−biotin4存在下でもピーク位置はほぼ変化しなかった。これに対し、MTGによる架橋化反応を行ったサンプルにおいては、新たに28.285minにピークが出現した。PR−HPLCにおけるピーク面積から算出された反応率は86%であった。このピークに相当するフラクションを回収し、MALDI−TOF MSによる分析を行った所、Q−biotin4とDCの架橋体に相当する分子量であったことから、よって今回新規に合成したビオチン化基質であるQ−biotin4はMTGによって認識されることを確認した。
MALDI−Tof MS;m/z:calculated for C114H177N33O31S5Na([M+Na]+)2689.1,found 2689.4
Q−biotin4を用いてMTGによるビオチン化反応を行ったサンプルについてSDS−PAGEによる分析を行った。32kDa付近にCDEG由来のバンドが、48kDa付近にEG由来のバンドが、13kDa付近にCBM由来のバンドが、そして37kDa付近にMTG由来のバンドが観察された。MTG反応後のレーンにおいて、修飾されたQ−biotin4に由来する高分子量側へのバンドシフトが観察された。このことから、MTGによってQ−biotin4が目的タンパク質に導入されたことが示唆された。同様に、反応時間の最適化を行った所、反応開始3時間でほぼ全てのK−tag proteinが反応している様子が観察された。また、HABA法を用いてビオチン化率を測定した。結果を表3に示す。
SECによる分析を行った結果を図4に示す。b4−CDEG及びSA単体では、溶出時間15.6mL及び16.0mLの位置にピークが観察された。次に、b4−CDEGの濃度を一定にして、SAを加えた場合、b4−CDEGのピーク強度が減少し、新たに溶出時間の早い高分子量側にブロードなピークが観察された。[mSA]/[biotin]=1/8及び1/4においては、まず13.1mL及び14.0mLにピークが観察されたが、検量線から分子量を算出した所、これらはそれぞれ分子量約140kDa及び90kDaに相当した。b4−CDEG及びSA4量体の分子量がそれぞれ約50kDaであることと、混合比から考えると、13.1mL及び14.0mLのピークはそれぞれ、(CDEG)−SA−(CDEG)、(CDEG)−SA集合体であることが推察された。更にSAを添加した[mSA]/[biotin]=1/2の条件においては集合体の一部が排除体積で溶出されるほど大きな集合体(分子量>1.3MDa)を形成し、系中のSAとbiotinの個数が等しくなる[mSA]/[biotin]=1の条件においては、CDEG由来のピークが完全に消失し、ほぼ全てが排除体積で溶出されるほどの大きな集合体となった。
最後に調製した(CDEG−SA)n集合体を用いて糖化反応を行った。結果を図7に示す。反応開始48時間後のCDEGのみ遊離状態における比活性を1.0とする。その結果、遊離のb4−CDEGと比較して、集合体を形成することによって糖化効率の向上が見られた。更に、SA添加量を[mSA]/[biotin]=1/2及び1と増加させることで糖化効率は更に増大し、全てのb4−CDEGが集合体を形成する条件のサンプルについて、最大で1.7倍の糖化効率の向上を得た。
(目的)
本検討では、新規テトラビオチン化基質であるQ−biotin4を用いることにより、単量体型酵素を簡便に集合体化できることを生かし、抗原抗体反応を用いた一般的な検出系であるELISAへの応用を検討した。モデル酵素として単量体型酵素であるThermobifida fusca由来β-グルコシダーゼ(BGL)を用い、バイオセンサー構築および評価を行った。比較検討として、特許文献1に記載された直鎖型ビオチン化基質biotin−GGG−GGLQG、分岐型ビスビオチン化基質bis(biotin−GGG)−KGLQG、及び化学修飾によりビオチン化を行ったBGLを用いた。
1.K−tag BGLの発現および精製
K−tag BGLとして野生型BGLのC末端にK−tag配列(−(GGGS)2−MRHKGS−HHHHHH)を遺伝子工学的に挿入し、pET22b(+)を発現ベクターとして用いて大腸菌BL21(DE3)株内に形質転換を行った。LB培地で培養、およびIPTGによる誘導発現を行った菌体について細胞破砕を行った。遠心分離後の上清についてNi−NTAカラムを用いた精製を行い、PD−10カラムを用いて10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に置換した後、以降の検討に用いた。
K−tag BGLとQ−biotin4を用いて、MTG架橋反応によるタンパク質のビオチン化を行った。酵素反応はTBS緩衝液中に、最終濃度が10μM、200μM、0.5U/mLとなるように、K−tag BGL、Q−biotin4、MTGを加え、37°Cで3時間静置させることで行った。反応後のサンプルについてNi−NTAカラムを用いたHis−tag精製により、過剰の未反応の基質とビオチン化タンパク質(b4−BGL)を単離し反応を終了させた。PD−10カラムを用いて10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に置換した後、以降の検討に用いた。
K−tag BGLと化学修飾ビオチン化基質であるNHS−PEO4−biotinを用いて、化学修飾によるタンパク質のビオチン化を行た。反応は50mMのホウ酸緩衝液(pH9.0)中に、最終濃度が10μM又は200μMとなるようにK−tag BGLとNHS−PEO4−biotin加え、それらを良く攪拌し、37°Cで3時間静置させることで行った。反応後のサンプルについてNi−NTAカラムを用いたHis−tag精製により、過剰の未反応の基質とビオチン化タンパク質(chem−BGL)を単離し反応を終了させた。PD−10カラムを用いて10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に置換した後、以降の検討に用いた。抗OVA抗体についても同様の検討を行い、ビオチン修飾抗OVA抗体を得た。
4−1.試薬の調製
実施例1に記載の方法と同様に調製した。
実施例1に記載の方法と同様に行った。
酵素糖化反応は、50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中に、最終濃度が100nM、10mMとなるようにビオチン修飾BGLと基質である4−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(p−NPG)を加え、50°Cで静置させることで行った。酵素反応の評価は、UV−vis分光高度計で410nmの吸収を追跡する事で行った。
集合体の形成はTBS緩衝液中に、最終濃度が2μMのビオチン化BGL(b−BGL、b2−BGL及びb4−BGL)と2、4、及び8μMとなるようにSAを加えたサンプルについて、激しく攪拌した後30分間室温で静置し、サイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)にて分画し、集合体の分子量を分析した。このとき、サンプル中のSA単量体とビオチンの濃度比は[mSA]/[biotin]=1である。SECによる分析は20mMのTBS緩衝液(pH7.4)、流速0.5mL/minにて280nmの吸収を追跡することにより行った。
まず100−106ng/mLとなるように調製した抗原であるOVAを100μL/well加え、4°Cで12時間静置することで固相化を行った。200μL/wellのPBSTで5回洗浄後、2%BSA/PBSを200μL/well加え、37°Cで2時間静置することでブロッキングを行った。200μL/wellのPBSTで5回洗浄後、ビオチン化anti−OVAマウス由来抗体の10,000倍希釈溶液を100μL/well加え、37°Cで2時間静置した。200μL/wellのPBSTで5回洗浄後、1.0(b4−BGL及びchem−BGL)、0.5(b2−BGL)、及び0.25μM(b−BGL)の各濃度のSA溶液を50μL/wellで加え、37°Cで30分静置した後、1.0μMのビオチン化BGL溶液をそれぞれ加え、37°Cで30分静置した。このとき、サンプル中のSA単量体とビオチンの濃度比は[mSA]/[biotin]=1である。
1.ビオチン修飾BGLの特性評価
ビオチン修飾BGLについて活性測定およびビオチン修飾数の算出を行った結果を以下に示す;ビオチン修飾BGL(比活性,ビオチン修飾数):b4−BGL(0.94±0.03,3.87±0.09)、b−BGL(0.97±0.02,0.97±0.04)、b2−BGL(1.01±0.03,1.92±0.08)、chem−BGL(0.75±0.03,6.87±0.59)。この結果MTGを用いて、BGLのK−tag特異的にビオチン修飾を行ったサンプルについては、ほぼ定量的かつ活性を維持したままでのビオチン修飾が達成された。これに対し、化学修飾を行ったサンプルは、ランダムな修飾による活性の低下が見られ、またビオチン修飾数の制御も困難であった。上記検討により、単量体型モデル酵素であるBGLに対してビオチン修飾が確認されたため、以後の検討に用いた。
上記操作によりビオチン修飾が得られたため、次にSAと混合することによって、アビジン−ビオチン相互作用による集合体の形成を試みた。形成した集合体についてSECを用いて集合体の分子量を分析した結果を図9に示す。SECにおいては大きな分子量を持つ集合体が早く溶出される。まずK−tagBGLのみを流した所、溶出時間15.8mL付近にBGL由来のピークが観察された。直鎖型ビオチン化基質を修飾したb−BGLについて集合体形成を試み、SECにより分析すると、12mL付近にピークが得られた。4量体を形成しているSAとb−BGLの組み合わせの場合、形成される集合体は4分子のBGLがSAに結合した集合体BGL4−SA集合体と推察された。次に分岐型ビスビオチン化基質を修飾したb2−BGLの集合体は溶出時間14mLにピークが観察され、形成される集合体としてはBGL1分子で2分子のビオチン基を持つことになるため、BGL2−SA集合体を形成していると考えられた。これに対し、4分岐型新規テトラビオチン化基質Q−biotin4を修飾したb4−BGL集合体を形成させた場合、用いたカラムの排除体積で溶出される程の超巨大酵素集合体を形成しており、分子量は1.3MDa以上と推定された。以上より、単量体型酵素に対してビオチン修飾を行い、集合体の形成を試みる場合には、テトラビオチン化基質を用いた場合においてのみ、超巨大酵素集合体の形成が可能となると言える。
最後に調製したBGL集合体を用いて、バイオセンサーへの応用を試みた。抗原タンパク質としてはOvallbumin(OVA)を選択し、OVAを固層化したプレートに対し、ビオチン修飾抗OVA抗体、SA、ビオチン化BGLと順に添加した後、BGLの酵素反応によってOVAの検出を行った。結果を図10に示す。
テトラビオチン化基質を用いて調製した単量体型モデル酵素を用いることで、超巨大集合体の形成とそれを用いた高感度検出を達成した。
実施例1にて作製したQ−biotin4、すなわちbis(bis(biotin−GGG)−K)−KGLQGのGGGにおける二番目のG(グリシン残基)に代えてE(グルタミン酸)としたビオチン化合物を作製した。具体的には化学式(4)にて示されるビオチン化合物であり、本明細書においてbis(bis(biotin−GEG)−K)−KGLQGとも呼ぶ。
Claims (15)
- R1〜R7に示されるアミノ酸残基が、同一又は異なってグリシン残基、グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、アルギニン残基、リジン残基、ヒスチジン残基、アスパラギン残基、グルタミン残基、プロリン残基、及びセリン残基からなる群より選択される1種である、請求項1に記載のビオチン化合物。
- R1〜R7に示されるペプチド残基が、グリシン残基、グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、アルギニン残基、リジン残基、ヒスチジン残基、アスパラギン残基、グルタミン残基、プロリン残基、及びセリン残基からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のビオチン化合物
- 請求項1〜4の何れか1項に記載のビオチン化合物を含む、タンパク質又はペプチドに対するビオチン標識化剤。
- 前記タンパク質又はペプチドが、配列番号1〜4の何れかに示されるアミノ酸配列を少なくとも一つ含む請求項5に記載のビオチン標識化剤。
- 請求項5又は6に記載のビオチン標識化剤とトランスグルタミナーゼを含む、タンパク質又はペプチドのビオチン標識化キット。
- トランスグルタミナーゼが微生物由来である、請求項7に記載のビオチン標識化キット。
- 以下の工程1〜3を含む、ビオチン標識化タンパク質又はペプチドの製造方法:
(1)請求項1〜4の何れか1項に記載のビオチン化合物とタンパク質又はペプチドを、トランスグルタミナーゼの存在下で混合して接触させる工程(1)、
(2)工程(1)にて得られる混合物を、前記トランスグルタミナーゼの至適活性条件下におく工程(2)、及び
(3)工程(2)にて得られる混合物から、ビオチン標識化タンパク質又はペプチドを回収する工程(3)。 - 前記タンパク質又はペプチドが、配列番号1〜4の何れかに示されるアミノ酸配列を少なくとも一つ含む請求項9に記載の製造方法。
- トランスグルタミナーゼが微生物由来である、請求項8又は9に記載の製造方法。
- 以下の工程(A)及び(B)を含む、タンパク質又はペプチドの集合体の製造方法:(A)請求項1〜4の何れか1項に記載のビオチン化合物を用い、トランスグルタミナーゼの存在下でビオチン標識化されたタンパク質又はペプチドと、アビジン化合物とを混合して接触させる工程(A)及び
(B)工程(A)にて得られる混合物から、タンパク質又はペプチドの集合体を回収する工程(B)。 - 前記タンパク質又はペプチドが、配列番号1〜4の何れかに示されるアミノ酸配列を少なくとも一つ含む請求項12に記載の製造方法。
- トランスグルタミナーゼが微生物由来である、請求項12又は13に記載の製造方法。
- アビジン化合物が、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、AVRタンパク質、ブラダビジン、リザビジン、タマビジンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項12〜14の何れか1項に記載の製造方法。
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JP2015229672A (ja) | 2015-12-21 |
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