JP6224376B2 - アスベストの無害化処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アスベスト(石綿)の無害化処理方法に関する。さらに詳しく言えば、アスベストの中でも特に無害化処理が困難であったクロシドライト(青石綿)及びアモサイト(茶石綿)を確実に無害化処理することができ、処理物を再利用可能な資源とすることができるアスベストの無害化処理方法に関する。
従来、天然の鉱物繊維であるアスベストは、耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性に非常に優れ安価であるため、建設資材、電気製品、自動車、家庭用晶等、様々な用途に広く使用されてきた。しかしながら、空中に飛散したアスベスト繊維を肺に吸入すると約20年から40年の潜伏期間を経た後に肺がんや中皮の病気を引き起こす確率が高いため、現在では、その製造、輸入、譲渡及び使用が禁止されている。
このようなアスベストが引き起こす健康被害や環境問題に対し、建築物等でアスベストが外気に露出している部分に樹脂を吹き付けてアスベスト表面を覆って飛散を防止し、アスベストを無害化するといった処置が行われている。
しかし、この飛散防止処置の場合、樹脂の吹き付け時におけるアスベストの飛散の問題があったり、樹脂を用いるため、何らかの原因でこの樹脂部分が燃焼した場合には有害物質が発生し人体に悪影響を与えるという問題がある。このような樹脂吹き付け時によるアスベストの飛散防止処置における問題に対しては、例えば特開平10−323614号公報(特許文献1)や特開2002−137976号公報(特許文献2)に開示される方法が提案されているが、特許文献1及び2にはアスベストを固化して無害化する方法について開示しているものの、大量発生したアスベスト廃棄物の処理方法については何ら有効な提案がなされておらず、そのアスベスト廃棄物を放棄するしかないという問題がある。
また、一般に、建築物等から剥離除去したアスベストを焼却して溶融処理を行い、アスベストの粉塵飛散を防止し無害化する処理法が提案されているが(特開平6−170352号公報;特許文献3)、剥離除去したアスベストを1000℃以上の高熱で溶融しなければならないなど、その溶融処理のための施設の建設、運営、メンテナンス等に莫大な経費がかかるという問題がある。
このような問題に鑑み、本願発明者らはアスベストの無害化について鋭意検討を続けており、建築物等に使用されているアスベスト及びそのアスベスト吹き付けの際の結合剤であるセメントに対して、珪酸アルカリ性水溶液やフッ化カルシウムを加えて無害化した後に剥離し、その剥離したアスベスト及びセメントを粉砕した後に再度、珪酸アルカリ性水溶液を加えて、建築材料等として再利用する方法を提案し(特開2007−216073号公報;特許文献4)、さらにその方法を進め、建築物等に付着しているアスベストとアスベストの結合材(セメント)を珪酸アルカリ水溶液で処理する珪酸アルカリ付加工程後、アスベストとセメントを建築物等から剥離し、剥離したアスベストとセメントを塩酸溶液に溶解させ、前記アスベストとセメントが溶解した溶液をアルカリで中和することにより結晶化し、所望により乾燥する処理法を提案した(特開2012−161714号公報;特許文献5)。
これらの方法は、中性化したコンクリート及び劣化したアスベストを珪酸ナトリウム(SiNa)に含浸させて固化し、強アルカリに戻したものを強酸(塩酸等)と反応させてアスベストを分解しようとしたものであるが、クリソタイル(白石綿;2004年10月の使用禁止)の分解は確認できたものの、1995年から製造及び使用が禁止されている、クロシドライト(青石綿)、及びアモサイト(茶石綿)の分解は不十分であることが細胞磁界測定による細胞障害性測定結果から明らかになった。なお、細胞(傷害を受けた肺胞マクロファージ)の磁界測定により細胞障害性が判定評価できることは、非特許文献1(The Journal of Toxicological Science ,Vol.35, No.6, 807-815 (2010))に記載されている。
クロシドライト及びアモサイトの分解が不充分なのは、珪酸ナトリウムを前処理として含浸(塗布)することは劣化したシリカ分を加えることになるために、その後の酸との反応を不十分なものとし、すなわち劣化を防止する処理をした上で酸反応分解を行っていたためであり、そもそも酸反応分解に使用した塩酸(HCl)には還元力があり、多くの元素と錯体を形成するが、珪酸塩の結晶格子を完全には分解できないことによると考えられる。
特開平10−323614号公報 特開2002−137976号公報 特開平6−170352号公報 特開2007−216073号公報 特開2012−161714号公報
The Journal of Toxicological Science ,Vol. 35, No.6, 807-815(2010)
2007年に本発明者(鈴木等)が提案した特許文献4の処理法は、クリソタイルには作用するが、クロシドライト、アモサイトに対しては不十分であった。また、特許文献5の処理法も充分な結果に至っていないと考えられた。
本願発明はこのような状況下において、劣化したアスベストを強アルカリ環境下に置いてさらに劣化させることにより、その後の酸による反応の分解効率を高め、アスベストの中でも特に分解されにくいとされているクロシドライト(青石綿)及びアモサイト(茶石綿)を確実に無害化処理することができ、処理物を再利用可能な資源とすることができるアスベストの無害化処理方法を提供することにある。
上記課題に鑑み本発明者らは、ケイ酸ナトリウムによるアスベスト飛散防止を視野に入れた方法ではなく、水(脱金属イオン水)による飛散防止処理を行い、回収したアスベスト建材に劣化促進のため水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリ処理法を加えることでアスベストの劣化が進み、酸に耐性であったクリソタイル、クロシドライトの処理を可能として、本発明を完成した。
すなわち、本明は、下記[1]〜[5]のアスベストの無害化処理方法を提供する。
[1]建築物等に付着したアスベストを無害化処理する方法であって、(a)建築物等に付着したアスベスト及びアスベストの結合材であるセメント(アスベスト含有建材)に水を含浸させるアスベスト含有建材の飛散防止処理工程、(b)前記飛散防止処理したアスベスト含有建材を剥離する工程(剥離工程)、(c)前記剥離したアスベスト含有建材に水酸化ナトリウム水溶液を含浸反応させるアルカリ処理工程、(d)前記アルカリ処理物に塩酸水溶液を加えて反応させる酸処理工程、及び(e)水酸化ナトリウム水溶液または珪酸ナトリウム水溶液で中和する工程(中和工程)を有することを特徴とするアスベストの無害化処理方法。
[2]前記アルカリ処理工程(c)が、前記剥離工程(b)で剥離したアスベスト含有建材100質量部当たり、約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を100〜150質量部含浸させ、2〜12時間放置して反応させる工程である前項1に記載のアスベストの無害化処理方法。
[3]前記酸処理工程(d)において、塩酸水溶液をpHが5以下となる量使用する前項1または2に記載のアスベストの無害化処理方法。
[4]前記酸処理工程の反応を、約1Nの塩酸水溶液を使用し、室温で10〜30分間行う前項1〜3のいずれかに記載のアスベストの無害化処理方法。
[5]前記剥離工程(b)で剥離したアモサイトを主成分とするアスベスト含有建材に約5Nの水酸化ナトリウム水溶液を反応させるアルカリ処理工程、前記アルカリ処理物に約5N塩酸水溶液を加えて反応させる酸処理工程、及び約5N水酸化ナトリウム水溶液または珪酸ナトリウム水溶液で中和する工程を有する前項に記載のアスベストの無害化処理方法。
本発明の方法によれば、建築物等に付着したアスベストの種類を問わず水酸化ナトリウム水溶液の含浸処理、塩酸処理、中和処理を順次行うことによりほぼ完全に無害化することができる。本発明の方法により処理したアスベスト最終処理産物は砂状を呈し、層状構造を有する。また、処理産物は安全な構造となった珪酸成分を含有し、砂状を呈することから、新たな建材の材料として再利用できる。
本発明の方法は何処でも入手可能な一般薬品を低濃度で使用するため、非常に安価に処理できる。また、操作が簡略であり、解体現場ではアルカリ液と酸性液を混和するだけの操作で実施できため、ミキサーのみで処理が行える。処理過程で出る廃棄物は中和された水分だけである。解体現場で処理された無害化アスベスト処理産物は、通常の砂として移動可能である。
本発明の方法は、年間100万トン、10年にわたる処理期間が想定されている2020年問題の有力な解決方法となるものである。
(A)〜(D)は、クロシドライト針状結晶の水酸化ナトリウム水溶液含浸前(A)、含浸後6時間(B)、12時間(C)、及び24時間(D)の電子顕微鏡写真(×3000)である。 本発明によるクロシドライトの処理前(A)及び処理後(B)の超深度マルチアングル観察システムを用いた電子顕微鏡写真(×2500)である。 本発明によるクリソタイルの処理前(A)及び処理後(B)の超深度マルチアングル観察システムを用いた電子顕微鏡写真(×2500)である。 本発明によるアモサイトの処理前(A)及び処理後(B)の超深度マルチアングル観察システムを用いた電子顕微鏡写真(×2500)である。 クロシドライト表面からアルカリ(NaOH)が浸透する様子を示す模式図である。 水酸化ナトリウム水溶液を含浸反応温度を20℃、40℃及び60℃と変えたときのクロシドライト結晶残存率の経時変化を示すグラフである。 未処理クロシドライト80μg/well、処理クロシドライト80μg/well及び160μg/well縣濁肺胞マクロファージ液の培養後20分間の残留磁界の測定結果を示すグラフである。□はりん酸緩衝生理食塩水(PBS)(陰性対照)、●は未処理クロシドライト80μg/well(陽性対照)、△は処理クロシドライト80μg/well、▲は同160μg/well懸濁培養液を表す。 PBS(陰性対照)、未処理クロシドライト80μg/well(陽性対照)、処理クロシドライト80μg/well、同160μg/wellの懸濁肺胞マクロファージ培養液の磁界測定による緩和係数(×10-3/s)を示す。 本発明のアスベスト無害化処理方法を実施する装置例の概略構戎図である。 実施例2で用いたズリ(茶石綿、アモサイト)の写真である。 実施例2で得られた処理物の写真である。
以下、添付図面を参照し、本発明のアスベストの無害化処理方法の具体例を挙げながら詳細に説明する。
(a)飛散防止処理工程:
建築物等に付着したアスベスト(クリソタイル、クロシドライト及びアモサイト)及びアスベストの結合材(以下、アスベスト含有建材という。)を剥離する際に、アスベストを含む建材粉が飛散しないように水を噴霧または吹きつけ処理する。ここで使用する水としては金属イオンを含まない脱金属イオン水が好ましい。
(b)剥離工程:
前記工程で飛散防止処理したアスベスト含有建材を建築物等から剥離する。具体的な手段については特に限定されない。
(c)アルカリ処理工程:
前記剥離除去したアスベスト含有建材にアルカリ水溶液、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液を含浸させ、所定の時間放置してアスベストと反応させてアスベストを劣化させる。含浸させる水酸化ナトリウム水溶液の濃度としては、1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%であり、例えば約1N(1.0mol/L,4質量%)の水酸化ナトリウム水溶液を前記剥離したアスベスト含有建材100質量部当たり100〜150質量部含浸させる。
水酸化ナトリウムを含浸させて放置する時間(反応時間)は特に限定されないが、1時間〜48時間、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは2〜12時間である。反応温度も特に限定されないが、温度を上げることにより反応速度を上げることができる。通常は室温で一昼夜(12〜24時間)放置すればよい。
図1(A)〜(D)に水酸化ナトリウム濃度1.0mol/L、保管温度25℃の含浸条件のクロシドライト針状結晶の劣化状態(含浸前、含浸後6時間、12時間、及び24時間)の顕微鏡(×3000)写真を示す。含浸前(A)のクロシドライトの表面は滑らかであるのに対し、含浸後は経時経過とともにNaOH溶液による溶解(劣化)が認められる。これは、クロシドライトの結晶分子構造のシリカ成分がアルカリ(NaOH)と反応することによって溶解(破壊)することによるものである。
図2にクロシドライトの処理前(A)及び処理後(B)のVHX−D510超深度マルチアングル観察システムを用いた電子顕微鏡写真(×2500)を示し、図3にクリソタイルについて、また図4にアモサイトについて、それぞれの処理前(A)及び処理後(B)のVHX−D510超深度マルチアングル観察システムを用いた電子顕微鏡写真(×2500)を示す。クリソタイル及びアモサイトの反応はクロシドライトよりも著しい。
水酸化ナトリウム水溶液の含浸反応は、処理温度を上げ、また所望により同時に加圧することによって劣化(溶解)時間を短縮することができる。
水酸化ナトリウム水溶液によるクロシドライトの溶解層(NaOHとクロシドライトとの反応層)は時間とともに表面から内部へと増加し、分子構造を破壊していくことにより、後工程の酸(塩酸)による反応分解を効率的に向上させる。
水酸化ナトリウムは図5の模式図に示すようにクロシドライトの表面から内部方向に浸透し反応が進行する。図5において、Rは未反応部を示し、Pはアルカリ反応生成部を示す。
クロシドライト表面からの完全反応層の厚さはステファン式(1)によって求めることができる。
式中、tは含浸時間(hr)、rはクロシドライト中心から未反応層厚さ(mm)、Cはクロシドライト表面のアルカリ濃度(mol/1)、Dはアルカリの拡散係数(mm2/hr)、
F(r.t:C)はアルカリの消費に伴う反応(関数)である。
式(1)の関数Fは、アルカリとクロシドライト中のシリカの反応によるアルカリの消費を表す。実際、シリカ成分が単位体積当たり消費し得るアルカリ量は、単位クロシドライト中のシリカ量Sc(mol/1)にアルカリとシリカの反応比を乗じた値が上限となることから、時間ステップ毎にクロシドライトの各断面に蓄積されるアルカリ量が有効消費アルカリ容量を超過すればアルカリ反応層を形成することになる。式(1)によりアルカリ濃度及び含浸時間の調整が可能となる。
図6は1N水酸化ナトリウム水溶液をクロシドライトに含浸させる温度を20℃、40℃及び60℃と変えたとき、48時間までの含浸時間に対してクロシドライト結晶分子構造の破壊率(反応率)をプロットしたグラフものである。図6において縦軸は破壊されず残存している結晶の割合(残存率)(%)を表す。含浸温度を上げることにより劣化(溶解)時間を短縮できることが分かる。
このように劣化促進(反応速度)は含浸温度の変化に大きく影響を受ける。温度の反応速度に与える影響は、下記式(1)中の拡散係数の温度依存性に起因する。この劣化促進(反応速度)の温度変化と拡散係数は、図6に示す結果から下記のアレニウス式(2)によって算出できる。
式中、Kは反応速度定数、Fは頻度因子、Rは気体定数、Tは絶対温度、Eは活性化エネルギー(6.1Kcal/mol)を表す。
その結果、算出された各温度における拡散係数(×10-9mm2/hr)は、20℃が1.02、40℃が9.98、60℃が18.14であった。
(d)酸処理工程:
前記アルカリ処理工程の処理物に無機酸の水溶液、好ましくは塩酸水溶液を加えて反応させる。
塩酸としては市販の濃塩酸を水で希釈した水溶液、例えば1Nの塩酸水溶液が用いられる。添加する塩酸の量はアスベスト含有建材懸濁液のpHが約5以下となる量である。反応温度及び時間は特に限定されないが、例えば室温(20〜25℃)では、10〜30分程度である。
(e)中和工程:
酸処理後の処理物をアルカリ水溶液、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液または珪酸ナトリウム水溶液で中和する。なお、実際には水酸化ナトリウム水溶液または珪酸ナトリウム水溶液を中和点を超え、アルカリpH域となる量使用する態様も本発明に含まれる。中和後は、室温あるいは加熱条件下で乾燥することにより砂状のアスベスト無害化処理物が得られる。砂状の無害化処理物は珪酸成分を含有し層状構造を有しており、新たな建材の材料などの分野で再利用可能な資源として利用できる。また、珪酸ナトリウム水溶液で中和した処理物はセシウムイオンなどの金属イオンを吸着する性質を有していることが確認されており、放射性セシウム吸着剤としての用途も期待できる。
処理装置:
上記で説明した本発明のアスベスト無害化処理方法を実施するための装置例の概略構成を図9に示す。
図9の装置(10)は、横長の反応槽(1)と、反応槽(1)内の物質を移動させるためのスクリュー(2)とで構成されている。反応槽(1)の一端には、水酸化ナトリウム水溶液含浸処理後のアスベスト含有建材を反応槽(1)内に導入するための導入口(3)が設けられており、反応槽(1)の他端には、アスベスト由来の種々の物質を取り出すための取り出し口(4)が設けられている。
また、反応槽(1)には、塩酸処理するための塩酸水溶液を注入するための酸溶液注入口(5)、及び中和用の水酸化ナトリウム水溶液または珪酸ナトリウム水溶液を注入するための中和剤注入口(6)、及び中和後の無害化処理されたアスベストを含有する建材由来物質を乾燥させるヒーター(7)がこの順で設けられている。
この装置によれば、水酸化ナトリウム水溶液含浸処理により結晶構造を劣化させたアスベスト含有建材をの導入口(3)から反応槽(1)に導入し、スクリュー(2)の回転によって撹拝しつつ反応槽(1)内を移動させ、この移動とともに塩酸処理工程、中和工程、乾燥工程を予め設定したタイミングで順次行うことができる。このような一体型装置(10)によれば、アスベスト処理をすべき建築物内、もしくは当該建築物の近傍で、アスベストの処理を行うことができ、アスベストを搬送することによる危険を回避することができる。
なお、装置例の別の態様として、別途アルカリ投入口を設けた装置とし、反応槽に投入したアスベスト含有建材にアルカリ投入口から供給した水酸化ナトリウム水溶液を含浸させて所定時間放置した(反応させた)後に、図9と同じ構成により処理を行う装置とすることも可能である。
[試験例]
本発明の方法で処理したアスベストの安全性を、電子顕微鏡観察による形状変化(結晶構造の変化)、X線回折の測定、磁界測定による肺胞マクロファージに対する作用効果の評価により確認した。
形状観察:
クロシドライト、クリソタイル及びアモサイトの各々の標準結晶純品1gに対して、1N水酸化ナトリウムを5ml加え、室温で2時間放置し自然乾燥した。次いで、乾燥品に1N塩酸を10ml加えた。これを3.8%珪酸ナトリウム水溶液100mlで中和し測定試料とした。クロシドライト、クリソタイル及びアモサイトの各々の標準品と処理試料について、形状変化をVHX−D510超深度マルチアングルシステムを用いて電子顕微鏡観察した(×2500)。それらの写真を図2(クロシドライト)、図3(クリソタイル)、及び図4(アモサイト)に示した。いずれも(A)が処理前の標準品、(B)が処理試料である。いずれの場合も処理試料にはガラス様の塊が認められ、処理前のアスベストの針状結晶が消失し、大型の太い柱状の結晶が認められた。
X線回折:
島津製のXD−610を用いて測定したX線回折図形から標準クリソタイル及びクロシドライトに相応する処理試料の定性・定量分析を行った。標準品を100%とした時の定量値は、クリソタイルは平均9.1%、クロシドライトは平均12.5%であった。
細胞磁界測定:
9〜12週齢、雄ラット(F344)を用い肺胞マクロファージを回収し、1.0×106cell/wellに調整した。未処理クロシドライト80μg/well、処理クロシドライト80μg/well及び160μg/wellとなるように添加した縣濁液を調整し、各々37℃、5%CO2の条件下で培養し培養後20分間の残留磁界(%)を測定し、肺胞マクロファージの傷害指標とした。測定結果を図7に示し、緩和係数(×10-3/s)を図8に示した。図7中、□は対照のりん酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline;PBSと略記)、●は未処理クロシドライト80μg/well、△は処理クロシドライト80μg/well、▲は同160μg/well懸濁培養液を表す。
図8の通り、細胞障害性を示す緩和は、未処理クロシドライト(80μg/well)(陽性対照)では認められなかったが、クロシドライト処理懸濁液80μg/well及び160μg/wellではPBS(陰性対照)と同様の迅速な緩和が認められたことから、処理クロシドライトは肺胞マクロファージへの傷害性がなく、本発明の処理法によりアスベストが無害化されることが確認された。
煙突の内装などの建材にはズリと呼ばれる茶石綿(アモサイト)が使用されている。
アモサイトとしては、(Fe)7Si822(OH)2(グリューネル閃石)及び(Mg)7Si822(OH)2(カミントン閃石)が知られており、標準のアスベスト(クリソタイル及びクロシドライト)よりも太くて長い結晶構造を有している。アスベスト結晶繊維の発ガン性は、スタントン・ポットの仮説によれば直径が0.25μm以下で、8μm以上の繊維が問題とされるが(M.F.Stanton, IARC Sci Publ,8,289(1973) F. Pott Exp. Pathol. 32, 129 (1987))、アルカリ反応を通して結晶を破壊し無害化するためには標準のアスベストよりも反応条件を強化する必要がある。
そこで、本実施例2では、実際の建材として用いられた、木片及び少量のコンクリート成分を含むグリューネル閃石を主成分とするズリを高濃度のアルカリ(5N水酸化ナトリウム水溶液)で処理する実験を行った。
図10に写真を示すズリ1gに対して、5N水酸化ナトリウム水溶液32mlを加え、磁石回転子を持つスターラーで室温に48時間処理した。48時間後には、アスベストは消化されミルク状に分散し、ズリに含まれる木片その他の他の不純物は塊として視認された。アスベスト結晶構造の崩壊により磁石回転子に鉄(Fe)成分が0.027g付着した。以降は、5N水酸化ナトリウム水溶液に対応して、酸化液として5N 塩酸水溶液及び中和液として5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて後処理し、乾燥したところ、図11の写真に示す粉状に崩壊し固化したアスベスト処理産物が得られた。共存雑居物(木片等)は酸処理により消化され消失していた。
1 反応槽
2 スクリュー
3 導入口
4 取り出し口
5 酸溶液注入口
6 中和剤注入口
7 ヒーター
10 アスベスト無害化処理装置

Claims (5)

  1. 建築物等に付着したアスベストを無害化処理する方法であって、(a)建築物等に付着したアスベスト及びアスベストの結合材であるセメント(アスベスト含有建材)に水を含浸させるアスベスト含有建材の飛散防止処理工程、(b)前記飛散防止処理したアスベスト含有建材を剥離する工程(剥離工程)、(c)前記剥離したアスベスト含有建材に水酸化ナトリウム水溶液を含浸反応させるアルカリ処理工程、(d)前記アルカリ処理物に塩酸水溶液を加えて反応させる酸処理工程、及び(e)水酸化ナトリウム水溶液または珪酸ナトリウム水溶液で中和する工程(中和工程)を有することを特徴とするアスベストの無害化処理方法。
  2. 前記アルカリ処理工程(c)が、前記剥離工程(b)で剥離したアスベスト含有建材100質量部当たり、約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を100〜150質量部含浸させ、2〜12時間放置して反応させる工程である請求項1に記載のアスベストの無害化処理方法。
  3. 前記酸処理工程(d)において、塩酸水溶液をpHが5以下となる量使用する請求項1または2に記載のアスベストの無害化処理方法。
  4. 前記酸処理工程の反応を、約1Nの塩酸水溶液を使用し、室温で10〜30分間行う請求項1〜3のいずれかに記載のアスベストの無害化処理方法。
  5. 前記剥離工程(b)で剥離したアモサイトを主成分とするアスベスト含有建材に約5Nの水酸化ナトリウム水溶液を反応させるアルカリ処理工程、前記アルカリ処理物に約5N塩酸水溶液を加えて反応させる酸処理工程、及び約5N水酸化ナトリウム水溶液または珪酸ナトリウム水溶液で中和する工程を有する請求項1に記載のアスベストの無害化処理方法。
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