JP6223743B2 - Ni基合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、Ni基合金の製造方法に関する。
近年、大気中への二酸化炭素の排出量削減の観点から、火力発電プラントの高効率化が進められている。そのため、火力発電プラントに備えられる蒸気タービンやガスタービンの高効率化が要求されている。また、火力発電プラントに設置可能なCOタービンにおいても高効率化が要求されている。ここで、COタービンは、天然ガスなどの燃料と酸素との燃焼により生成されたCOを作動流体としてタービンを駆動するものである。COタービンにおいては、生成されたCOの大部分を容易に、分離、回収できるため、地球環境保護の観点から注目されている。
上記した各タービンにおける効率を上げるためには、タービンに導入される作動流体の入口温度を高温化することが有効である。例えば、蒸気タービンにおいては、将来的には、作動流体である蒸気の温度が700℃以上での運用が期待されている。ガスタービンやCOタービンにおいても、導入される作動流体の入口温度は、上昇する傾向にある。
そのため、各タービンの高温部を構成する部品は、発電用ガスタービンや航空機用エンジンの部品に使用され、高温場においての使用に実績のあるNi基合金で構成されることが望ましい。
Ni基合金の代表例として、インコネル718やインコネル617(スペシャルメタル社製)が挙げられる。Ni基合金の強化機構は、大きく分けて析出強化型と固溶強化型に分けられる。
析出強化型Ni基合金では、NiにAl、Ti、Ta、Nbを添加することによってγ’(ガンマプライム:Ni(Al,Ti))相、あるいはγ”(ガンマダブルプライム:NiNb)相と呼ばれる析出相を析出させることによって、高温下における機械的強度を向上させている。代表的な析出強化型Ni基合金としては、上記したインコネル718が挙げられる。
一方、固溶強化型Ni基合金では、NiにCo、Mo等を添加することによって、母相そのものを強化している。代表的な固溶強化型Ni基合金としては、上記したインコネル617が挙げられる。
特開平7−150277号公報
上記したように、高温の環境下において使用される、タービンの構成部品の材料として、Ni基合金の適用が検討されている。そして、Ni基合金に対して、高温の環境下における十分な機械的強度が要求され、さらに、大型鍛造部品などを製造する際の製造性などが要求されている。
本発明が解決しようとする課題は、強度特性および鍛造性に優れたNi基合金の製造方法を提供することである。
実施形態のNi基合金の製造方法は、質量%で、C:0.01〜0.07、Cr:16〜20、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.8〜3、Ti:0.8〜3、B:0.001〜0.006を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、10質量%≦Mo+0.176Cr+0.037Co≦15質量%の関係を満たすNi基合金素材を溶融し、所定の形状の構造体を形成する構造体形成工程と、前記構造体を1050〜1200℃の温度で溶体化処理する溶体化処理工程と、前記溶体化処理が施された前記構造体を1000〜1050℃の温度で中間熱処理する中間熱処理工程と、前記中間熱処理が施された前記構造体を700〜800℃の温度で時効処理する時効処理工程とを具備する。そして、前記溶体化処理工程、前記中間熱処理工程および前記時効処理工程を施すことによって、結晶粒内にγ’(Ni (Al,Ti))相からなる析出物を有する結晶の結晶粒界に沿って、平均厚さが250nm以下の炭化物を析出させる。
実施形態におけるNi基合金の金属組織を模式的に示した図である。 時効処理の条件によって結晶粒界に析出する炭化物の析出形態を説明するため、Ni基合金の金属組織の電子顕微鏡写真を示した図である。 時効処理の条件によって結晶粒界に析出する炭化物の析出形態を説明するため、Ni基合金の金属組織の電子顕微鏡写真を示した図である。
以下、本発明に係る実施形態を説明する。
Ni基合金は、Mo、Wなどの固溶強化元素による固溶強化およびAl、Tiなどの添加により得られるγ’(ガンマプライム:Ni(Al,Ti))相の微細析出による析出強化によって、室温および高温における材料強度を向上させている。一方で過剰な強化は、高温における材料の加工性を悪化させ、製造性を低下させる。
例えば、γ’相による析出強化量が軽微であるインコネル617は、γ’相による析出強化量が大きいユーディメット520(スペシャルメタル社製)などに比べ、良好な鍛造性を有する。一方、γ’相の析出量が大きいインコネル738LC(スペシャルメタル社製)においては、鍛造によって成形することはできず、鋳造にて成形されるのが一般的である。
このようにNi基合金の製造方法は、主としてγ’相の析出量によって決定される。例えば、鍛造用のNi基合金の場合、鍛造時にγ’相の過剰な析出が生じないような合金組成を設定している。
火力発電プラントに備えられる蒸気タービンやCOタービンのタービンロータなどの大型部材は、従来Ni基合金が使用されるガスタービンやジェットエンジンなどの鍛造部材に比べて大型である。そのため、これらの大型部材を製造するためには、例えば、10トンを超える鍛造部材が必要となる。
このような大型鍛造部材の鍛造においては、鍛造プレスの容量不足などの要因によって、これまで鍛造可能と考えられていたインコネル617などにおいても健全な鍛造品が得られない場合がある。このように、大型部材に使用するためのNi基合金においては、γ’相の析出量だけではなく、高温での変形抵抗に影響をおよぼす固溶強化量についても考慮する必要がある。
固溶強化は、母相を構成する溶媒原子に異なる溶質原子が溶け込み(固溶)、その際に生じた内部ひずみが転位の運動を妨げることによって得られる。固溶強化は、転位が溶質原子の障害を外しながら運動するモデルにて理論的な解釈がなされている。Friedelらによれば、希薄固溶体の固溶強化量は、溶質原子濃度の1/2乗に比例し、原子サイズ差によるミスフィットひずみの3/2乗に比例するとされている(Advances in Physics, vol. 3, Issue 12, p.446−507)。また、Labuschらによれば、高濃度固溶体において、固溶強化量は、溶質原子濃度の2/3乗に比例し、原子サイズ差によるミスフィットひずみの4/3乗に比例するとされている(Physica status solidi (b). Volume 41, Issue 2, p. 659−669)。
また、金属材料の特性に強い影響を及ぼす因子として、材料のミクロ組織が挙げられる。Ni基合金においては、結晶粒内のみならず、結晶粒界の組織においても材料の特性が左右される。特に、結晶粒界上に膜状に析出するM23型の炭化物は、材料の靭性を低下させることが知られている。したがって、材料の信頼性を確保するためには、熱処理条件の最適化によって、金属組織を適切に制御することが必要となる。
これらのことから本発明者らは、Ni基合金に及ぼす各添加元素の固溶量とミスフィットひずみについて定量的に評価することで、固溶強化量を示すパラメータを見出した。また、化学組成を変化させた材料について種々の材料試験を実施し、十分な材料強度を維持しながら優れた鍛造性を有する化学組成を見出した。
さらに、種々の熱処理を施したNi基合金について結晶粒界組織を調査した結果、Ni基合金の靭性を支配する因子として「結晶粒界上の炭化物の平均厚さ」を見出し、靭性を確保できる粒界上の炭化物厚さの範囲を明らかにした。
次に、実施形態の鍛造用Ni基合金を具体的に説明する。
図1は、実施形態におけるNi基合金の金属組織を模式的に示した図である。なお、以下の説明において組成成分を表す%は、特に明記しない限り質量%とする。
実施の形態のNi基合金は、C:0.01〜0.07%、Cr:14〜26%、Co:10〜15%、Mo:5〜12%、Al:0.8〜3%、Ti:0.8〜3%、B:0.001〜0.006%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、10質量%≦Mo+0.176Cr+0.037Co≦15質量%の関係を満たす。
また、実施形態のNi基合金は、図1に示すように、結晶粒界10に沿って、炭化物11が析出している。この炭化物11の平均厚さtは、250nm以下であることが好ましい。炭化物11は、結晶粒界10に沿って、連続して析出している。また、結晶粒12内には、粒状に析出物13が析出している。
炭化物11は、Cr、Moを主成分とする炭化物であり、具体的には、M23型の炭化物である。炭化物11の平均厚さtが250nm以下であることが好ましいのは、例えば、靭性が低下することなく、適切にタービン部品を製造するための靭性を確保することができるからである。
析出物13は、γ’(ガンマプライム:Ni(Al,Ti))相で構成されている。γ’相の直径は、析出強化の観点から、小さいことが好ましい。γ’相の平均直径は、例えば、150nm以下であることが好ましい。
ここで、実施形態におけるNi基合金は、前述した化学組成に加え、さらに、Taを0.05〜0.7%含有してもよい。また、実施形態におけるNi基合金は、前述した化学組成に加え、さらに、Nbを0.1〜0.7%含有してもよい。また、実施形態におけるNi基合金は、前述した化学組成に加え、さらに、Taを0.05〜0.7%およびNbを0.1〜0.7%含有してもよい。
なお、不可避的不純物としては、例えば、Si、Mn、N、Cu,Fe、Sなどが挙げられる。これらの不可避的不純物は、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが好ましい。
上記した実施形態のNi基合金は、例えば、650℃以上の温度下において使用される、例えば発電用タービンなどの鍛造によって構成されるタービン部品を構成する材料として好適である。タービン部品として、例えば、タービンロータ、動翼、静翼、螺合部材、配管などが挙げられる。これらの鍛造部品は、いずれも高温高圧の環境に設置されるものである。
ここで、螺合部材として、例えば、タービンケーシングやタービン内部の各種構成部品を固定するボルトやナットなどを例示することができる。また、配管として、例えば、発電用タービンプラントなどに設置され、高温高圧の作動流体が通過する配管などを例示することができる。
なお、上記した発電用タービンのタービン部品のすべての部位を上記したNi基合金で構成してもよいし、また、特に高温となるタービン部品の一部の部位を上記したNi基合金で構成してもよい。
上記した実施形態の鍛造用Ni基合金は、従来の鍛造用Ni基合金よりも強度特性に優れ、かつ鍛造性に優れている。そのため、実施形態の鍛造用Ni基合金を用いて作製された、タービンロータ、動翼、静翼、螺合部材、配管などのタービン部品は、高温環境下においても高い信頼性を有する。
次に、上記した実施形態の鍛造用Ni基合金における各組成成分範囲の限定理由を説明する。
(1)C(炭素)
Cは、強化相である炭化物の構成元素として有用であるとともに、結晶粒界の移動を阻止する、炭化物のピン止め効果によって、高温下における結晶粒の粗大化を抑制する働きがある。Cの含有率が0.01未満の場合には、炭化物による強化が十分でないとともに、炭化物の十分な析出量を確保できないことにより、結晶粒の粗大化を引き起こす恐れがある。一方、Cの含有率が0.07%を超えると、鍛造性が低下する。そのため、Cの含有率を0.01〜0.07%とした。また、より好ましいCの含有率は、0.03〜0.07%である。
(2)Cr(クロム)
Crは、Ni基合金の耐酸化性、耐食性および高温強度特性を高めるのに不可欠な元素である。Crの含有率が14%未満の場合には、耐酸化性および耐食性が低下する。一方、Crの含有率が26%を超えると、クリープ強度の低下を引き起こすσ相の析出が顕著になるとともに、鍛造性が悪化する。そのため、Crの含有率を14〜26%とした。また、より好ましいCrの含有率は、16〜20%である。
(3)Co(コバルト)
Coは、Ni基合金において、母相内に固溶し、クリープ強度および引張強度を向上させる。Coの含有率が10%未満の場合には、十分な機械的強度が得られない。一方、Coの含有率が15%を超えると、鍛造性が低下する。そのため、Coの含有率を10〜15%とした。また、より好ましいCoの含有率は、11〜14%である。
(4)Mo(モリブデン)
Moは、Ni母相中に固溶し、クリープ強度および引張強度を向上させる。また、Moの一部が、M23型炭化物中に置換することによって炭化物の安定性を高める。Moの含有率が12%を超えると、熱間加工性が低下する。一方、Moの含有率が5%未満の場合には、機械的強度の向上が得られない。そのため、Moの含有率を5〜12%とした。また、より好ましいMoの含有率は、7〜10%である。
(5)Al(アルミニウム)
Alは、Niとともにγ’(NiAl)相を生成し、析出によるNi基合金の機械的強度を向上させる。Alの含有率が0.8%未満の場合には、γ’相の析出による効果が発揮されない。一方、Alの含有率が3%を超えると、σ相の析出が助長され、機械的特性が低下するとともに、熱間加工性が著しく低下する。そのため、Alの含有率を0.8〜3%とした。また、より好ましいAlの含有率は、1〜2%である。
(6)Ti(チタン)
Tiは、Alと同様、Niとともにγ’(Ni(Al,Ti))相を生成し、Ni基合金の機械的強度を向上させる。Tiの含有率が0.8%未満の場合には、γ’相の析出による効果が発揮されない。一方、Tiの含有率が3%を超えると、σ相やη相の析出が助長され、機械的特性が低下するとともに、熱間加工性が低下する。そのため、Tiの含有率を0.8〜3%とした。また、より好ましいTiの含有率は、1〜2%である。
(7)B(ホウ素)
Bは、粒界に偏析して高温強度特性を向上させる。Bの含有率が0.001%未満の場合には、この高温強度特性を向上させる効果が発揮されない。一方、Bの含有率が0.006%を超えると、粒界脆化を招く。そのため、Bの含有率を0.001〜0.006%とした。また、より好ましいBの含有率は、0.002〜0.004%である。
(8)Ta(タンタル)
Taは、γ’(Ni(Al,Ti))相に固溶して、このγ’相を安定させる。Taの含有率が0.05%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Taの含有率が0.7%を超えると、鍛造性が低下する。そのため、Taの含有率を0.05〜0.7%とした。また、より好ましいTaの含有率は、0.08〜0.12%である。
(9)Nb(ニオブ)
Nbは、Taと同様に、γ’(Ni(Al,Ti))相に固溶して、このγ’相を安定させる。Nbの含有率が0.1%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Nbの含有率が0.7%を超えると、溶解や鋳造時において偏析を招くとともに、鍛造性が低下する。そのため、Nbの含有率を0.1〜0.7%とした。また、より好ましいNbの含有率は、0.2〜0.5%である。
(10)Mo+0.176Cr+0.037Co
前述したとおり、高濃度固溶体における固溶強化量は、溶質原子濃度の2/3乗に比例し、原子サイズ差によるミスフィットひずみの4/3乗に比例するとされている。そこで本実施の形態においては、固溶強化に寄与すると考えられる、Mo、Cr、Coについて、1質量%あたりの原子の数とそれぞれの原子半径から固溶強化を表すパラメータを定義する。なお、本実施の形態においてはC(炭素)の含有率が小さいため、Cについてはパラメータから除外した。
Mo、Cr、Coの原子量は、それぞれ、95.9、52.0、58.9である。それぞれの元素を同量添加した場合の原子数の比は、Moを1とすると、Cr、Coはそれぞれ1.84、1.62となる。これらの比の2/3乗は、それぞれ1、1.50、1.38となる。
また、各元素を添加した際に生じるミスフィットひずみは、Ni原子との原子サイズ差から決定される。Ni原子と、Mo、Cr、Co原子との原子半径差は、それぞれ0.15Å(オングストローム)、0.03Å、0.01Åである。そのため、各元素を添加した場合のミスフィットひずみ量の比は、Moを1とすると、Cr、Coはそれぞれ0.200、0.067となる。これらの比の4/3乗は、それぞれ1、0.117、0.027となる。
したがって各元素の1質量%あたりの固溶強化量の比は、Moを1とすると、Crが0.176(1.50×0.117=0.176)、Coが0.037(1.38×0.027=0.037)となる。これらの結果から固溶強化量を表現するパラメータとして「Mo+0.0176Cr+0.037Co」を設定した。
このパラメータの値(含有率)が15%を超えると、固溶強化量が過剰となり、鍛造時の変形能を悪化させる。一方、パラメータの値が10%未満の場合には、固溶強化量が著しく低くなり、十分な強度が得られない。そのため、上記パラメータの値を10%〜15%とした。また、より好ましい上記パラメータの値は、11〜13.5%である。
なお、元素添加によるミスフィットひずみは、厳密には単に原子サイズのみではなく、Niやその他原子との相互作用などが影響を与えると考えられる。しかし、ここでは、簡便のため、各溶質原子とNi原子との差からミスフィットひずみ値を一義的に決定している。さらに、Mo、Crは、Cと結合して炭化物を形成すること知られているが、Cの含有率が低いため、炭化物によるMo、Crの消費は無視している。
(11)Si(ケイ素)、Mn(マンガン)、N(窒素)、Cu(銅)、Fe(鉄)およびS(硫黄)
Si、Mn、N、Cu、FeおよびSは、実施形態の鍛造用Ni基合金においては、不可避的不純物に分類されるものである。これらの不可避的不純物は、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが望ましい。また、これらの不可避的不純物のうち、少なくとも、SiおよびMnは、0.1%以下、およびNは、0.01%以下に抑制されることが好ましい。
Siは、普通鋼の場合、耐食性を補うため添加される。しかしながら、Ni基合金はCr含有量が多く、十分に耐食性を確保できる。そのため、Siの残存含有率を0.1%以下とし、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが望ましい。
Mnは、普通鋼の場合、脆性に起因するS(硫黄)をMnSとして脆性を防止する。しかしながら、Ni基合金におけるSの含有量は極めて少なく、Mnを添加する必要はない。そのため、Mnの残存含有率を0.1%以下とし、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが望ましい。
Nは、材料中のTiと反応することでTiNを形成し、γ’相の生成に寄与するTiを減少させる。その結果として、機械的強度が低下する。そのため、Nの残存含有率を0.01%以下とし、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが望ましい。
ここで、実施形態の鍛造用Ni基合金、およびこの鍛造用Ni基合金を用いて製造されるタービン部品の製造方法について説明する。
上記した実施形態の鍛造用Ni基合金は、例えば、次のように製造される。
まず、Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、その溶湯を所定の型枠に注入して鋳塊を形成する。そして、その鋳塊をソーキング処理し、熱間鍛造し、溶体化処理、時効処理などを施すことで作製される。
タービン部品であるタービンロータは、例えば、次のように作製される。
例えば、1つの方法(ダブルメルト)として、実施形態の鍛造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、エレクトロスラグ再溶解(ESR)し、所定の型に流し込む。続いて、ソーキング処理、鍛造処理、溶体化処理、時効処理などを施し、タービンロータを作製する。
他の方法(ダブルメルト)として、実施形態の鍛造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、真空アーク再溶解(VAR)し、所定の型に流し込む。続いて、ソーキング処理、鍛造処理、溶体化処理、時効処理などを施し、タービンロータを作製する。
さらに、他の方法(トリプルメルト)として、実施形態の鍛造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、エレクトロスラグ再溶解(ESR)し、真空アーク再溶解(VAR)し、所定の型に流し込む。続いて、ソーキング処理、鍛造処理、溶体化処理、時効処理などを施し、タービンロータを作製する。
上記したタービンロータの製造方法によって、タービンロータの少なくとも所定部位が製造される。所定部位として、タービンロータのうち、例えば、700℃以上の高温に曝される部位などが挙げられる。この場合、タービンロータのうち、例えば、600℃程度の温度に曝される部位は、従来の耐熱合金によって製造する。そして、上記した製造方法によって製造された実施形態の鍛造用Ni基合金からなる部品と、従来の耐熱合金からなる部品とを、例えば、溶接により接合してタービンロータが構成される。なお、実施形態の鍛造用Ni基合金からなる部品と、従来の耐熱合金からなる部品との接合方法は、溶接に限らず、例えばボルトおよびナットによって締結してもよい。
このように、タービンロータを構成する部品を分割して作製することで、小鋼塊のNi基合金においても、700℃以上の高温環境中で使用可能なタービンロータを製造することができる。なお、使用される温度条件によっては、タービンロータのすべてを上記したタービンロータの製造方法によって製造してもよい。
タービン部品である動翼、静翼、螺合部材は、例えば、次のように作製される。
まず、実施形態の鍛造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、エレクトロスラグ再溶解(ESR)し、減圧雰囲気で所定の型に流し込み鋳塊を作製し、ソーキング処理を施す。そして、この鋳塊を上記タービン部品の形状に対応する型に配置して鍛造処理、溶体化処理、時効処理などを施すことで動翼、静翼、螺合部材が作製される。すなわち、動翼、静翼、螺合部材は、型鍛造によって作製される。
また、他の方法(ダブルメルト)として、例えば、実施形態の鍛造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、真空アーク再溶解(VAR)し、減圧雰囲気で所定の型に流し込み鋳塊を作製する。そして、鋳塊にソーキング処理を施し、上記同様に、鍛造処理、溶体化処理、時効処理などを施し、動翼、静翼、螺合部材を作製してもよい。
さらに、他の方法(トリプルメルト)として、実施形態の鍛造用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、エレクトロスラグ再溶解(ESR)し、真空アーク再溶解(VAR)し、減圧雰囲気で所定の型に流し込み鋳塊を作製する。そして、鋳塊にソーキング処理を施し、上記同様に、鍛造処理、溶体化処理、時効処理などを施し、動翼、静翼、螺合部材を作製してもよい。
実施形態の鍛造部品である配管は、例えば、次のように作製される。
まず、実施形態の鍛造用Ni基合金を構成する組成成分を電気炉溶解(EF)し、アルゴン−酸素脱炭(AOD)を行い、鋳塊を作製し、ソーキング処理を施す。この鋳塊を縦型プレスで穿孔しコップ状の素管を作製し、横型プレスでマンドレルとダイスによる加工と再加熱を繰り返し、配管の形状に成型する。この加工方法は、エルハルト−プッシュベンチ製管法である。そして、溶体化処理、時効処理などを施し、配管を作製する。
なお、タービンロータ、動翼、静翼、螺合部材、配管を作製する方法は、上記した方法に限定されるものではない。また、上記した、タービンロータ、動翼、静翼、螺合部材、配管などの鍛造部品は、例えば、蒸気タービン、ガスタービン、COタービンなどの発電用タービンに適用することができる。
ここで、上記した、鍛造用Ni基合金およびタービン部品を製造する際における、各熱処理について説明する。なお、各熱処理における温度は、処理される鍛造用Ni基合金やタービン部品などに応じて、以下に示すそれぞれの範囲内において設定される。また、各処理の時間も処理される鍛造用Ni基合金やタービン部品などに応じて適宜設定される。
ソーキング処理においては、熱拡散によって化学成分の偏析を減少させるために、合金を高温で十分な時間加熱する必要がある。そのため、ソーキング処理は、1000〜1200℃の温度範囲で実施されることが好ましい。
鍛造は、材料の十分な変形能を得られる温度からゼロ延性温度までの範囲で行う必要があるため、950〜1100℃の温度範囲で行われることが好ましい。
溶体化処理では、1050〜1200℃の温度範囲で、1〜24時間維持することが好ましい。ここで、溶体化処理は、合金元素を母相に十分に固溶させ、固溶強化の効果を十分に得るとともに、その後の熱処理による析出物の析出制御を可能にするためになされる。また、溶体化処理は、結晶粒径を調整する目的でも行われることもある。
溶体化処理の温度が1050℃を下回る場合には、合金元素が母相に完全に固溶せず、固溶強化元素による強化が十分に行われない。さらに、溶体化処理後の熱処理による析出相の析出形態の制御も困難となる。一方、溶体化処理の温度が1200℃を超える場合、結晶粒径の粗大化を引き起こし、機械的強度が低下する。そのため、溶体化処理の温度を1050〜1200℃とした。また、溶体化処理の温度を1050〜1150℃とすることがさらに好ましい。なお、溶体化処理されたNi基合金やタービン部品は、例えば、水冷や強制空冷などによって室温まで冷却される。
次に、溶体化処理後に室温まで冷却されたNi基合金やタービン部品に施される時効処理について説明する。
時効処理では、700〜800℃の温度範囲で5〜50時間維持することが好ましい。この時効処理は、多段に行うものであってもよい。なお、時効処理後、Ni基合金やタービン部品は、例えば、水冷や炉冷によって室温まで冷却される。
ここで、時効処理における温度および時間を上記した範囲とした理由について説明する。
時効処理の主たる目的は、結晶粒内に析出するγ’相の析出形態の制御にある。また、時効処理は、結晶粒界の性状にも影響を及ぼす。したがって、時効処理については、結晶粒内および結晶粒界の組織を考慮して、温度、時間条件を選定する必要がある。
図2および図3は、時効処理の条件によって結晶粒界に析出する炭化物の析出形態を説明するため、Ni基合金の金属組織の電子顕微鏡写真を示した図である。ここで示されたNi基合金の組成は、Cが0.04%、Crが18%、Coが12%、Moが9%、Alが1.3、Tiが1.4%、Bが0.003%、Taが0.1%、Nbが0.3%、残部がNiである。図2には、850℃の温度で10時間、時効処理がなされた金属組織が示され、図3には、750℃の温度で10時間、時効処理がなされた金属組織が示されている。また、ソーキング処理および溶体化処理は、上記した範囲内で行われている。なお、図2および図3には、析出物13(γ’相)も示されている。
通常の時効処理では、図2に示すように、Ni基合金の結晶粒界を覆うように膜状の炭化物11が析出する。この膜状の炭化物11は、Cr、Moを主成分とする脆い炭化物(M23型の炭化物)であり、結晶粒界の破壊を助長し、材料の靭性を著しく低下させる。そのため、このような、結晶粒界を覆う膜状の炭化物11の析出を防止する時効処理を行う必要があると考えられていた。
しかしながら、図3に示すように、時効処理の条件によっては、結晶粒界を覆う膜状の炭化物の厚さが薄くなる。なお、炭化物は、結晶粒界に沿って連続して析出している。材料試験の結果、発明者らは、この炭化物の厚さが十分に薄い場合、延靱性の低下が生じないことを明らかにした。上記した温度および時間は、γ’相の微細析出と結晶粒界を覆う炭化物の粗大化抑制の両者を満足する範囲に規定されている。
時効処理の温度が700℃よりも低い場合、結晶粒界を覆う炭化物の粗大化は抑制できるが、γ’相の成長が著しく遅い。そのため、γ’相が析出することによる機械的強度の向上が得られない。一方、時効処理の温度が800℃を超える場合、γ’相の微細析出は達成され、十分な強度が得られる。しかしながら、結晶粒界を覆う炭化物の粗大化が著しく、靭性が低下する。
このようなことから、時効処理の温度を700〜800℃とした。ここで、γ’相の早期析出のため、時効処理を、例えば2段などの多段で熱処理してもよい。この場合においても、温度は、上記した時効処理の温度範囲で設定され、多段における全熱処理時間も、上記した時効処理の時間範囲で設定される。例えば、800℃の温度で10時間維持し、その後、750℃の温度で20時間維持する処理などが例示できる。なお、800℃から750℃への温度低下は、例えば、炉冷によって行われる。
時効処理後の冷却は、例えば、炉冷および空冷で行なう。時効処理を多段で行う場合、各時効処理間の冷却は、上記したように、例えば炉冷によって行われ、室温まで冷却されることなく連続的に行う。
ここで、溶体化処理後、室温まで冷却された、Ni基合金やタービン部品に対して、時効処理を行う前に、中間熱処理を行ってもよい。この中間熱処理では、結晶粒界を覆う膜状の炭化物の析出や粗大化を抑制するために、時効処理前に、まず、結晶粒界に沿って塊状の炭化物を断続的に形成することを目的とする。この炭化物も、Cr、Moを主成分とする炭化物(M23型の炭化物)である。
中間熱処理は、1000〜1050℃の温度範囲で実施されることが好ましい。中間熱処理温度が1000℃を下回る場合および1050℃を超える場合には、塊状の炭化物が析出しない。中間熱処理の時間は、処理されるNi基合金やタービン部品などに応じて適宜設定される。
なお、C(炭素)の含有率が十分に少ない場合には、結晶粒界上の膜状の炭化物の析出は顕著でないため、この中間熱処理を省略してもよい。Cの含有率が十分に少ない場合とは、結晶粒径などによって異なるが、Cの含有率が、例えば0.04%以下のときをいう。中間熱処理後の冷却は、例えば、炉冷、水冷または強制空冷などで行われ、Ni基合金やタービン部品は、室温まで冷却される。
(化学組成の影響)
以下に、実施形態の鍛造用Ni基合金が、強度特性および鍛造性に優れていることを説明する。
表1は、強度特性、鍛造性などの評価に用いられた試料1〜試料21の化学組成を示す。なお、表1に示された試料1〜試料13は、実施形態の鍛造用Ni基合金の化学組成範囲にあるNi基合金であり、試料14〜試料21は、その組成が実施形態の鍛造用Ni基合金の化学組成範囲にないNi基合金であり、比較例である。
Figure 0006223743
強度特性を引張試験、靭性をシャルピー衝撃試験によって評価し、鍛造性を目視観察によって評価した。また、結晶粒界を覆う膜状の炭化物の厚さを金属組織観察によって測定した。
各試験に使用する試験片を次のように作製した。
表1に示す化学組成を有する試料1〜試料21のNi基合金をそれぞれ真空誘導溶解炉にて溶解し、鋳塊を作製した。
続いて、この鋳塊に対して、1050℃で5時間ソーキング処理を施した。その後、950〜1100℃(再加熱温度が1100℃)の温度範囲で500kgfハンマー鍛造機にて鍛造した。鍛造後、1100℃の温度で4時間溶体化処理を施し、その後、空冷により室温まで冷却した。冷却後、1025℃の温度で10時間の中間熱処理を施し、その後、炉冷により室温まで冷却した。冷却後、800℃の温度で10時間、続いて750℃の温度で20時間の2段階の時効処理を連続して施した。その後、空冷により室温まで冷却して鍛造材とした。
そして、この鍛造材から、引張試験用およびシャルピー衝撃試験用の所定のサイズの試験片を作製した。
引張試験は、JIS Z 2241に準拠して実施し、室温における、0.2%耐力、引張強さの測定を行った。シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242に準拠して実施し、シャルピー衝撃値の測定を行った。
鍛造性の評価は、上記したソーキング処理後の試料を、500kgfハンマー鍛造機にて鍛造し、直径が125mm、長さが210mmの中実円柱状の試験片を作製した。また、鍛造処理は、鍛造比(JIS G 0701(鋼材鍛錬作業の鍛錬成形比の表わし方)に基づく鍛造比)が3となるまで行った。なお、鍛造処理は、950〜1100℃の範囲で行い、鍛造被対象物である試験片の温度が低下したとき、すなわち鍛造被対象物が硬化してきたときには、再加熱温度1100℃まで再度加熱して鍛造処理を繰り返し行った。鍛造性の評価は、試験片を冷却後に、鍛造割れの有無を目視観察することで行った。
ここで、鍛造比とは、鍛造処理を施す前における、鍛造被対象物が伸長される方向に垂直な鍛造被対象物の断面積を、鍛造処理後における、鍛造被対象物が伸長された方向に垂直な鍛造被対象物の断面積で除したものである。
結晶粒界を覆う膜状の炭化物の厚さの測定では、時効処理後に室温まで冷却された鍛造材を用いた。電界放出形走査電子顕微鏡を使用して20000倍の倍率で撮影した電子顕微鏡写真を画像解析することで、炭化物の厚さを求めた。各鍛造材において、代表的な5つの結晶粒界を選択し、それぞれについて20点の炭化物の厚さを計測し、算術平均して炭化物の平均厚さを得た。
試験結果および観察結果を表2に示す。表2において、鍛造割れがない場合には「無」と示し、さらに、鍛造性が優れていることを示すため、鍛造性の評価を「○」で示している。一方、鍛造割れがある場合には「有」と示し、鍛造性が劣ることを示すため、鍛造性の評価を「×」で示している。
Figure 0006223743
表2に示すように、試料1〜試料13は、試料14に比べて、0.2%耐力および引張強さともに高い。試料1〜試料13において、0.2%耐力および引張強さが高い値となったのは、十分な固溶強化と析出強化が図られたためと考えられる。また、試料1〜試料13は、鍛造性にも優れ、炭化物の厚さが250nm以下である。また、シャルピー衝撃値の結果から、試料1〜試料13は、いずれも50J/cm以上の値を示しており、実用上十分な靭性を有することが確認された。
一方、試料21のように、「Mo+0.176Cr+0.037Co」の値が10質量%を下回る場合は、各合金成分を本実施の形態で規定した化学組成範囲とした場合においても十分な0.2%耐力および引張強さが得られていない。試料15〜試料20では、0.2%耐力および引張強さが高い値を示したが、鍛造性が劣っている。これは、過剰に強化元素を添加した結果であると考えられる。
このように、本実施の形態で規定した、化学組成範囲または「Mo+0.176Cr+0.037Co」の範囲から逸脱したNi基合金においては、強度特性および鍛造性の双方に優れた結果は得られていない。
(熱処理の影響)
ここでは、試料1において、中間熱処理、時効処理条件を変化させ、引張試験、シャルピー衝撃試験、鍛造性の評価および結晶粒界を覆う膜状の炭化物の厚さの測定を行った。なお、各試験、鍛造性の評価、炭化物の厚さの測定の方法は、前述した方法と同じとした。
表1に示した試料1を使用し、表3に示した、中間熱処理、時効処理の各条件で熱処理を施した。なお、中間熱処理および時効処理以外の工程は、前述した、試験片の作製方法と同じである。表3において、例えば、「800℃×10h」は、800℃の温度に10時間維持して熱処理したことを意味する。また、時効処理において、2段熱処理した場合には、1段目および2段目の欄に熱処理条件を示している。
Figure 0006223743
表3に示された試料1、試料22〜試料31は、本実施形態の熱処理条件で熱処理されたものであり、その他の試料は、本実施形態の熱処理条件の範囲にない条件で熱処理された、比較例である。試験結果および観察結果を表4に示す。
Figure 0006223743
試料1および試料22〜試料31は、試料32〜試料39に比べて、0.2%耐力および引張強さともに高い。試料1および試料22〜試料31における結晶粒界を覆う膜状の炭化物の平均厚さは、いずれも250nm以下である。試料1および試料22〜試料31は、炭化物の平均厚さが薄いため、試料34〜試料37および試料39に比べて、高いシャルピー衝撃値を示している。
このように、本実施の形態において規定した時効処理条件においては、結晶粒内のγ’相の微細析出と結晶粒界を覆う炭化物の粗大化の抑制とを同時に達成することができる。これによって、引張強度およびシャルピー衝撃値の両者において高い値が得られている。
一方、本実施の形態において規定した時効処理条件から逸脱した試料においては、引張強度およびシャルピー衝撃値の双方に優れた結果は得られていない。
以上説明した実施形態によれば、優れた強度特性および鍛造性を有することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…結晶粒界、11…炭化物、12…結晶粒、13…析出物。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.07、Cr:16〜20、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.8〜3、Ti:0.8〜3、B:0.001〜0.006を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、10質量%≦Mo+0.176Cr+0.037Co≦15質量%の関係を満たすNi基合金素材を溶融し、所定の形状の構造体を形成する構造体形成工程と、
    前記構造体を1050〜1200℃の温度で溶体化処理する溶体化処理工程と、
    前記溶体化処理が施された前記構造体を1000〜1050℃の温度で中間熱処理する中間熱処理工程と、
    前記中間熱処理が施された前記構造体を700〜800℃の温度で時効処理する時効処理工程と
    を具備し、
    前記溶体化処理工程、前記中間熱処理工程および前記時効処理工程を施すことによって、結晶粒内にγ’(Ni (Al,Ti))相からなる析出物を有する結晶の結晶粒界に沿って、平均厚さが250nm以下の炭化物を析出させることを特徴とするNi基合金の製造方法。
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