関連出願の相互参照
本願は、2012年7月5日に提出され、現在係属中である米国仮出願番号61/668,390に基づく優先権主張を伴うものであり、この出願の開示は、参考文献により本願明細書に組み込まれる。
開示内容の分野
本発明は、一般的には感染性疾患の治療の分野に関するものであり、更に特に、抗生物質の作用を増強させる組成物及び方法に関する。
開示内容の背景
抗生物質抵抗性の出現は、主要な健康管理の関心事である。ペニシリンが発見されて以来、少なくとも17の異なる種の抗生物質が製造されてきた。抗生物質の使用は広まり、医学治療の基礎となっており、深刻で命を脅かす疾患から、より平凡で頻繁に起こる非細菌性の疾患に亘る感染症を治療するために用いられている。他の菌株や近接に関連した種からDNAを組み込むために、細菌の活性と組み合わされた、このような恒常的な抗菌薬選択圧(antibiotic pressure)が、耐性形質の進化や取得をもたらしてきた。複合的な抗生物質耐性菌株が現在では広がっており、細菌は、あらゆる単一の抗生物質種に対する少なくとも1種の(そしてしばしばより多くの)耐性の機構を発展させてきている。例えば、メチシリン‐耐性Staphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、MRSA)は、重大な群集体や病院後天性感染症(例えば、皮膚及び軟組織感染症、骨、関節及びインプラント感染症、人工呼吸器関連の肺炎、及び腐敗症)を引き起こす主要な多剤耐性細菌性病原体の一つである。多剤耐性黄色ブドウ球菌感染症は、アメリカにおいて1年間に1万9千人の死をもたらし、これに伴う追加の年間健康管理費が30〜40億USドルかかるものと推定されている。このような高い死亡率にもかかわらず、薬剤製造中の新しい抗菌剤は相対的に少ししかない。その代わりとして、最近10年間に開発されている抗生物質の大部分は、基礎をなす耐性機構が既に存在している現存の抗生物質種から再製作された分子である。それゆえ、引き起こされる感染症、特に多剤耐性細菌によって引き起こされる感染症を治療するための有効な新しい治療選択が緊急に必要である。
開示内容の簡単な要約
本発明は、α‐ラクトアルブミンと脂肪酸の非共有複合体(α‐ラクトアルブミン脂肪酸複合体、以下「ALAFAC」という)が、抗生物質の作用を増強させるという予期しない観察に基づいている。ある面では、本発明は、細菌の成長を抑制するのに使用される組成物を提供する。ある具体例において、当該組成物は、α‐ラクトアルブミン脂肪酸複合体と1種以上の抗生物質を含む。ある具体例においては、当該組成物は、抗生物質を含まずに、それ自体で検出できる殺菌活性を示すのには十分でないが抗生物質の活性のアジュバントとして作用するには十分な量のALAFACを含む。
ある面では、本発明は、細菌をALAFAC及び抗生物質に接触させる工程を含む、細菌の成長を減少させる方法を提供する。細菌は、一緒にALAFACと抗生物質と接触させても、あるいは別々に接触させても良い。細菌は、哺乳動物(人間の体など)の体内、哺乳動物の体の表面に存在していても良いし、体の外側位置であっても良い。
ある面では、本発明は、細菌感染症の治療のためのキットを提供する。このキットは、ALAFACを含み、1種以上の抗生物質を含むあるいは含まない組成物と、当該組成物の使用のための取扱説明書を含む。
本発明の本質及び対象のより完全な理解のために、添付の図面と共に、以下の詳細な説明に言及する。当該図面又は当該開示の他の箇所において、ALAFACが「HAMLET」又は「HL」と表記されている場合がある。
図1は、ALAFAC中に存在する濃度(6%w/w)と同等の濃度で天然型α‐ラクトアルブミン(ALA)、ALAFAC、又はオレイン酸(OA)を用いて処理し、37℃で1時間培養した肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)D39を示すチャートである。生存可能な微生物は、血液寒天培地上に各サンプルの希釈液をプレートした後、一晩成長後のコロニー形成ユニットを数えて評価した。
図2A及び2Bは、ペニシリンGのMICを低下させるALAFAC(HLと表記)を示すチャートである。このペニシリン感応肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)菌株D39(A)及びペニシリン抵抗肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)菌株SP670(B)は、ALAFACの添加有りと無しでペニシリンGを存在させ16時間培養液中で成長させた。これらの図は、いずれの薬剤単独では成長に影響を及ぼすことなく、併用処理による細菌成長を抑制する抗生物質とALAFACの最も低い濃度についての典型的な増殖曲線を示している。
図3A及び3Bは、ALAFAC(HLと表記)の存在でのペニシリンによる短時間肺炎連鎖球菌の殺菌の増強を示すチャートである。(A)ペニシリン(20μg/mL)、ALAFAC(50μg/mL)及び、ALAFACと併用したペニシリンによる4時間の間のペニシリン感応肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)菌株D39の短時間殺菌。(B)ペニシリン(20又は30μg/mL)、ALAFAC(50μg/mL)又は、ALAFACと併用したペニシリンによる4時間の間のペニシリン抵抗菌株SP670の殺菌。破線で示された水平な線は、未処理のサンプルの総細菌接種物を表している。これらの結果は、二重のサンプルを用いた3回の個別の実験に基づくものであり、平均±S.D.として表現されている。統計は片側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。*=P<0.05、**=P<0.01、***=P<0.001、ns=有意性なし。
図4A及び4Bは、生体外のバイオフィルム生存力に関するALAFAC(HLと表記)/抗生物質併用処理の効果を示すチャートである。ペニシリンG(100μg/mL)、ALAFAC(250μg/mL)又は、両方の薬剤の配合物の活性を、NCI‐H292細胞の予め固定した上皮の上に形成したペニシリン感受性菌株D39(A)又はペニシリン抵抗菌株SP670(B)の生体外のバイオフィルム上で試験し、血液寒天上にて一晩、細菌希釈液を培養した後、細菌死(log10で表わす)を決定することによって試験した。破線で示された水平な線は、緩衝液だけを用いて処理されたバイオフィルムの平均の総細菌バイオマスを表している。これらの結果は、二重のサンプルを用いた3回の個別の実験に基づくものである。統計は両側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。*=P<0.05、**=P<0.01、***=P<0.001。
図5A、5B及び5Cは、抗生物質併用処理が、鼻咽腔コロニー化の間に肺炎連鎖球菌とMRSAを根絶することを示すチャートである。(A)マウスに、ペニシリン感応肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)EF3030菌株を用いて48時間コロニー形成させ、ALAFAC(HLと表記)(50μg)の存在下(丸)又は不在下(四角)で6時間、種々の投与量のゲンタマイシンを用いて鼻腔内処理し、鼻咽腔組織と結合した細菌負荷量を決定した。(B)マウスに、ペニシリン抵抗菌株S. pneumoniae SP670(MIC=4μg/mL)を用いて48時間コロニー形成させ、ALAFAC(50μg)の存在下(四角)又は不在下(丸)で12時間、種々の投与量のペニシリンを用いて鼻腔内処理し、鼻咽腔組織と結合した細菌負荷量を決定した。ペニシリン単独では、細菌負荷量に関して効果はなかった。(C)マウスに、メチシリン抵抗菌株S. aureus NRS70を用いて48時間コロニー形成させ、ALAFAC(50μg)の存在下(丸)又は不在下(四角)で12時間、種々の投与量のメチシリンを用いて鼻腔内処理し、鼻咽腔組織と結合した細菌負荷量を決定した。メチシリン単独では、細菌負荷量に関して効果はなかった。このグラフには、平均の回復した細菌及び標準偏差の記載と共に、個々のマウスについてのコロニー形成データが示されている。これらの結果は、6〜10匹のマウスのグループを用いた実験に基づくものである。統計は片側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。*=P<0.05、**=P<0.01、ns=有意性なし。
図6には、ALAFAC(HLと表記)が、どのようにしてゲンタマイシン、エリスロマイシン及びペニシリンのMICを低下させるかについての具体例が示されている。S. pneumoniae D39は、ALAFACの添加有りと無しでペニシリンG(A)又はゲンタマイシン(B)を存在させて16時間培養液中で成長させた。この図は、いずれの薬剤単独では成長に影響を及ぼすことなく、併用処理によって細菌成長を抑制する抗生物質とALAFACの最も低い濃度についての典型的な増殖曲線を示している。
図7には、ALAFAC(HLと表記)の存在下でのゲンタマイシン、ペニシリン及びエリスロマイシンによる短時間肺炎連鎖球菌の殺菌の典型的な増強が示されている。(A)ペニシリンG(20μg/mL)、ALAFAC(50μg/mL)及び、ALAFACと併用したペニシリンによる4時間の間のペニシリン感受性菌株D39の短時間殺菌。(B)ペニシリンG(20又は30μg/mL)、ALAFAC(50μg/mL)又は、ALAFACと併用したペニシリンGによる4時間の間のペニシリン抵抗菌株SP670の殺菌。(C)エリスロマイシン(200μg/mL)、ALAFAC(50μg/mL)及び、ALAFACと併用したエリスロマイシンによる4時間の間のエリスロマイシン感受性菌株D39の殺菌。(D)エリスロマイシン(200μg/mL)、ALAFAC(50μg/mL)及び、ALAFACと併用したエリスロマイシンによる4時間の間のエリスロマイシン抵抗菌株D39誘導体JY53の殺菌。(E)ゲンタマイシン(50μg/mL)、ALAFAC(50μg/mL)及び、ALAFACと併用したゲンタマイシンによる1時間の間のD39の殺菌。これらの結果は、二重のサンプルを用いた3回の個別の実験に基づくものであり、平均±S.D.として表現されている。統計は片側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。*=P<0.05、**=P<0.01、***=P<0.001、ns=有意性なし。
図8には、生体外のバイオフィルム生存力に関するALAFAC(HLと表記)/抗生物質併用処理の典型的な効果が示されている。ペニシリンG(100μg/mL)、ALAFAC(250μg/mL)又は、両方の薬剤の配合物の活性を、NCI‐H292細胞の予め固定した上皮の上に形成したペニシリン感受性菌株D39(A)又はペニシリン抵抗菌株SP670(B)の生体外のバイオフィルム上で試験し、血液寒天上にて一晩、細菌希釈液を培養した後、細菌死(log10で表わす)を決定することによって試験した。同様に、エリスロマイシン感受性菌株D39(C)又はエリスロマイシン抵抗菌株D39-P2A1(D)の生体外バイオフィルム上での、エリスロマイシン(250μg/mL)、ALAFAC(250μg/mL)又は、両方の薬剤の配合物の活性を、200μg/mlゲンタマイシン(E)又は500μg/mlゲンタマイシン(F)単独、又は100μg/mlALAFAC(100μg/mL)と併用した際の、菌株EF3030により形成した事前定着バイオフィルム上での3時間に亘る活性と同様にして試験した。これらの結果は、二重のサンプルを用いた3回の個別の実験に基づくものである。統計は両側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。*=P<0.05、**=P<0.01。処理されたバイオフィルムの形態を視覚化するために、SEM調査を行った。画像(G)は、未処理の48時間EF3030バイオフィルムの構造を示しており、(H)は、500μg/mLゲンタマイシンを単独で用いた3時間後のEF3030バイオフィルム、(I)は、ALAFAC(100μg/mL)を単独で用いた3時間後のEF3030バイオフィルム、(J)は、100μg/mLのALAFACと500μg/mLのゲンタマイシンの配合物を用いた3時間後のEF3030バイオフィルムを示している。バイオフィルム形成前の上皮下層は、対照として含めている(パネルJ中に挿入)。併用処理の増加された殺菌活性は、付着性の細菌及びバイオフィルムマトリックスの密度の減少と関連していた。
図9には、典型的なALAFAC(HLと表記)‐抗生物質併用処理が、鼻咽腔コロニー形成の間に肺炎連鎖球菌を根絶することが示されている。(A及びB)マウスに、S. pneumoniae EF3030を用いて48時間コロニー形成させ、ALAFAC(50μg)の存在下(赤い丸)又は不在下(黒い四角)で6時間、種々の投与量のゲンタマイシンを用いて鼻腔内処理し、鼻洗浄液(A)及び鼻咽腔組織(B)と関連した細菌負荷量を決定した。鼻洗浄液中及び、鼻咽腔組織と関連した細菌は、ゲンタマイシン単独よりもゲンタマイシン/ALAFAC併用療法に対して有意に、より感受性であった。(C及びD)マウスに、ペニシリン抵抗菌株S. pneumoniae SP670(MIC=4μg/mL)を用いて48時間コロニー形成させ、ALAFAC(50μg)の存在下(赤い丸)又は不在下(黒い四角)で12時間、種々の投与量のペニシリンGを用いて鼻腔内処理し、鼻洗浄液(C)及び鼻咽腔組織(D)と関連した細菌負荷量を決定した。ペニシリンG単独では、鼻洗浄液又は上記組織のいずれにおいても細菌負荷量に関して効果はなかった。しかしながら、ALAFACとペニシリンを用いた併用療法は、コロニー形成の根絶をもたらす細菌負荷量において投与量依存の減少を引き起こした。このグラフには、平均の回復した細菌及び標準偏差の記載と共に、個々のマウスについてのコロニー形成データが示されている。これらの結果は、6〜10匹のマウスのグループを用いた実験に基づくものである。統計は片側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。*=P<0.05、**=P<0.01、ns=有意性なし。
図10には、ゲンタマイシン及びボシリンFLの摂取及び結合に関するALAFAC(HAMLETと表記)の影響力の具体例が示されている。(A)S. pneumoniae D39を、Alexa Fluor 488‐ゲンタマイシンを用いてALAFACの存在下又は不在下で培養させた。ALAFACは、ゲンタマイシンの細胞関連レベルをかなり増加させた。(B)ペニシリン抵抗菌株SP670とペニシリン感受性菌株D39を、蛍光性β‐ラクタムボシリンFLを用いてALAFACの存在下又は不在下で培養させた。ALAFACは、いずれの菌株においてもボシリンFLの細胞関連レベルを増加させなかった。これらの結果は、二重のサンプルを用いた3回の個別の実験に基づくものである。統計は片側スチューデントのt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。**=P<0.01、***=P<0.001、ns=有意性なし。
図11には、ゲンタマイシンに対する肺炎連鎖球菌のALAFAC(HAMLET又はHLと表記)誘導された増感に関するカルシウム及びキナーゼ抑制剤の効果の具体例が示されている。(A)S. pneumoniae D39を、抑制剤(HL)の不在下又は、20μMスタウロスポリン(HL+Sts)、又は30μMルテニウムレッド(HL+RuR)の存在下で37℃で1時間、致死濃度のALAFAC(12X MIC)を用いて処理した。処理された細菌を希釈し、血液寒天プレート上に置き、生存可能なCFU/mlを一晩の成長後に測定した。(B及びC)S. pneumoniae D39を、50μg/mLのALAFAC(HL)、50μg/mLゲンタマイシン(Gent)、20μg/mLペニシリンG(PcG)、又はゲンタマイシンとALAFAC又はペニシリンGとALAFACの配合物を用いて、不在下(HL+Gent,HL+PcG)又は、20μMスタウロスポリン(Sts)、又は30μMルテニウムレッド(RuR)の存在下で37℃で1時間処理した。処理された細菌を希釈し、血液寒天プレート上に置き、生存可能なCFU/mlを一晩の成長後に測定した。このグラフには、それぞれの処理によって誘導されたlog10死が記載されており、スタウロスポリンとルテニウムレッドがかなりALAFAC誘導死(A)を減少させ、又、ゲンタマイシン(B)とペニシリンG(C)に対して肺炎連鎖球菌を増感させるALAFACの能力をブロックしたことが示されている。これらの結果は、二重のサンプルを用いた3回の個別の実験に基づくものである。統計は片側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。***=P<0.001。
図12には、ALAFAC(HAMLET又はHLと表記)‐ゲンタマイシン併用療法の間の典型的な自己分解が示されている。(A)接種物の完全な死を生じさせる、致死濃度のALAFAC(250μg/ml;赤い線)、亜致死(sublethal)濃度のALAFAC(50μg/ml;青い線)、亜致死濃度のゲンタマイシン(50μg/mL;緑色の線)又は、亜致死濃度のALAFACとゲンタマイシンの配合物(紫色の線)に曝した後のS. pneumoniae D39(黒い線)の600nmにおける光学濃度。このデータは、典型的な実験を示している。(B)未処理のS. pneumoniae D39、及び、致死濃度のALAFAC(250μg/mL)を用いて4分間処理された細菌、同様に致死濃度のゲンタマイシン(500μg/mL)を用いて1時間、又は、亜致死濃度のALAFAC(50μg/mL)又は、(HL+Gent)と組み合わせて亜致死濃度のゲンタマイシン(50μg/mL)を用いて1時間処理された細胞の典型的な走査型電子顕微鏡写真。2つの薬剤の配合物に曝した後の構造上の無傷の細胞と比較して、ALAFAC又はゲンタマイシン単独に曝した後の肺炎連鎖球菌細胞壁の多数の欠損に注目されたい。
図13には、ALAFAC(HLと表記)が、どのようにしてメチシリンMICを低下させるかについての具体例が示されている。S. aureus菌株11090306(MSSA)(左側)と、NRS 384(MRSA)(右側)を、100μg/mL(6μM)ALAFACの添加有りと無しで2μg/mlメチシリン(5μM)を存在させて16時間培養液中で成長させた。この図は、いずれの薬剤単独では成長に影響を及ぼすことなく、併用処理によって細菌成長を抑制する抗生物質とALAFACの最も低い濃度についての典型的な増殖曲線を示している。
図14には、生体外のバイオフィルム生存力に関するALAFAC(HLと表記)/抗生物質併用処理の典型的な効果が示されている。(A)メチシリン(250μg/mL即ち660μM)、ALAFAC(200μg/mL即ち12μM))又は、両方の薬剤の配合物の活性を、メチシリン抵抗菌株NRS 70(MRSA)又はメチシリン感受性菌株11090306(MSSA)の生体外バイオフィルム上で試験し、血液寒天上にて一晩、希釈液を培養した後、細菌死(log10で表わす)を決定することによって試験した。(B)バンコマイシン抵抗菌株NRS 1(VISA)及びバンコマイシン感受性菌株NRS384(VSSA)の生体外バイオフィルム上での、バンコマイシン(32μg/mL即ち21μM)、ALAFAC(500μg/mL即ち30μM))又は、両方の薬剤の配合物の活性を、(C)50μg/ml(105μM)ゲンタマイシン単独、又は500μg/ml(30μM)ALAFACと併用した際の、上記ゲンタマイシン抵抗菌株に対する活性と同様の方法にて試験した。これらの結果は、二重のサンプルを用いた3回の個別の実験に基づくものである。統計は両側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。ns=有意性なし、*=P<0.05、**=P<0.01。
図15には、ALAFAC(HAMLETと表記)/メチシリン併用処理が、どのようにしてブドウ球菌鼻咽腔コロニー形成を減少させるかについての具体例が示されている。マウスに、S. aureus NRS 70を用いて24時間コロニー形成させ、ALAFAC(100μg)の存在下(青)又は不在下(黒)で12時間、種々の投与量のゲンタマイシンを用いて鼻腔内処理し、鼻洗浄液(A)及び鼻咽腔組織(B)と関連した細菌負荷量を決定した。このグラフには、平均の回復した細菌が線で記載されると共に、個々のマウスについてのコロニー形成データが示されている。これらの結果は、6匹のマウスのグループを用いた実験に基づくものである。統計は片側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。*=P<0.05。
図16には、膜ポテンシャルについてのALAFAC(HAMLET又はHLと表記)の典型的な効果が示されている。(A)ALAFACと抑制剤であるルテニウムレッド(RuR)又はアミロライド(Amil)の添加有りと無しで、メチシリンを存在させて16時間(960分)培養液中で成長させたS. aureus菌株NRS 123(MRSA)についての典型的な増殖曲線。(B)PBS単独又はPBS+アミロライド又はルテニウムレッド中で再懸濁された中間対数期増殖(Mid-log phase grown)NRS 123ブドウ球菌を、蛍光指示薬染料DiBAC4(3)を用いて培養し、蛍光発光時間を測定することによって膜分極を検出した。ALAFACを20分の時点で添加した(矢印)。界面活性剤トリトンX−100(0.1%)を、陽性対照(positive control)として含めた。示された結果は、一つの典型的な実験からのものである。(C)中間対数期増殖NRS 384ブドウ球菌を、PBS又はPBS+ルテニウムレッド(30μM)中で放射性同位元素の45Ca2+(2.5μCi/mL)と共に培養した。ベースラインを読み取って記録した後、PBS(未処理)、又はALAFACを上記細菌に添加し(時間=0分)、放射能を時間と共に測定した。典型的な実験からの結果が示されている。(D)NRS 384ブドウ球菌に、pHに感受性のある染料BCECF−AMを添加して洗浄し、PBS+25mMグルコース中で再懸濁させた。ベースラインを読み取って記録した後、最初の矢印の時点で、PBS(未処理)、プロトノフォア(protonophore)CCCP(100μM)、ALAFAC(100μg/mL即ち6μM)、ALAFAC+RuR(30μM)、又はALAFAC+アミロライド(1mM)を上記細菌に添加し、蛍光発光を時間と共に測定した。2番目の矢印の時点で、ニゲリシン(nigericin)及びバリノマイシン(valinomycin)それぞれ20μMを添加し、完全に膜内外のプロトン勾配を消失させた。
図17には、ボシリンFL及びバンコマイシンFLの摂取及び結合に関するALAFAC(HAMLETと表記)の典型的な影響力が示されている。(A)ブドウ球菌を、ボシリンFLを用いて又は、(B)100μg/mL(6μM)ALAFACの存在下又は不在下でバンコマイシンFLを用いて培養させた。これらの結果は、二重のサンプルを用いた3回の個別の実験に基づくものである。統計は片側スチューデントt検定を用いて行った。有意性は以下のように示した。**=P<0.01、***=P<0.001、ns=有意性なし。
図18には、ALAFAC(HLと表記)及び耐性発生の具体例が示されている。メチシリン単独(1〜512μg/mL即ち2.5〜1350μM)又は100μg/mL(6μM)ALAFACと併用したメチシリンの濃度を段階的に増加させて曝した後のMRSA菌株NRS384のメチシリン適応。塗りつぶされた青色の円は、ALAFACを使用しなかった時の各サイクル後のメチシリンMICを示している。100μg/mLのALAFACを添加することによって、メチシリン誘導抵抗は減少した(塗りつぶされていない青色の丸)。塗りつぶされていない緑色の丸は、抗生物質の効果を増強させるためのMIC評価分析の間にALAFACも存在した時の、ALAFACの存在下で成長した細菌のメチシリンのMICを示している。これらの分離物へのALAFACの再導入によって、メチシリンMICは、塗りつぶされていない緑色の丸により示されているレベルにまで再び戻った。
開示内容の詳細な説明
人間のミルク中にあるα‐ラクトアルブミンと脂肪酸の新規な複合体が以前に同定された(Hakansson等、1995, Proc Natl Acad Sci USA 92:8064-8068;Svensson等、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97:4221-4226)。以下、α‐ラクトアルブミンと脂肪酸の非共有複合体をα‐ラクトアルブミン脂肪酸複合体又はALAFACという。人間のミルクのカゼイン画分から精製されたこの複合体は、オレイン酸とリノール酸を含有するヒト由来脂肪酸画分によって生理学的状態で安定化できる部分的に広がった構造のα‐ラクトアルブミンで構成されていることがわかった。この蛋白質‐脂質複合体は、いくつかの気道病原体に対してのみ限られた殺菌効果を有していることが見出された(Hakansson等、2000, Mol Microbiol 35:589-600)。例えば、ALAFACは、気道病原体であるStreptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、及びMoraxella catarrhalisのいくつかの菌株に対して殺菌効果を有しているが、ブドウ球菌やBacillus subtilisのようなグラム陽性微生物に対して、及びグラム陰性微生物であるEscharichia coli及びPseudomonas aeruginosaに対して、5mg/mlまでの濃度でさえも検出可能な活性を示さなかった。
本発明の開示内容は、ALAFACが抗生物質の抗細菌活性を増強できるという予期しない発見に基づく。このような相乗効果の増強は、ALAFACに感受性のある細菌に対してはもちろん、ALAFACに感受性のない細菌にも見られる。更に、抗生物質の抗細菌効果の増強は、抗生物質に感受性のある細菌に対しても抗生物質に耐性のある細菌にも見られる。
ALAFACは、生物学的材料から分離することができ、あるいは、脂肪酸とα‐ラクトアルブミンを複合化することによって製造できる。例えば、ALAFACは、ヒトを含む霊長類動物のミルクから分離することができる。又、ALAを脂肪酸と複合化することによっても製造できる。例えば、米国特許番号6,808,930、7,053,185及び7,524,932参照、これらは参照文献としてここに組み入れられる。α‐ラクトアルブミンは、あらゆる哺乳動物起源のもの(ミルクなど)から得られ、霊長類、牛、齧歯動物などが含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、人間、牛、犬、山羊、羊、馬などから得られる。又、α‐ラクトアルブミンは、(Sigma Aldrichなどから)市販されているものも利用できる。ある具体例においては、α‐ラクトアルブミンは、組み換え法によっても製造できる。例えば、Svensson等、2000, Proc Natl Acad Sci USA 97:4221-4226を参照。ヒトALAについてのGenbank accession 番号は、NP_ 002280.1;GI:4504947)。他の種からのALAについてのGenbank accession 番号は、以下のとおりである;牛:NP_776803.1 GI:27805979;馬:P08334.2 GI:125991、ロバ:AAB24573.1 GI:262063、羊:NP_001009797.1 GI:57526478、山羊:CAA28797.1 GI:980、豚:NP_999525.1 GI:47523778、及び犬:NP_001003129.1 GI:50978848。
ALAFAC複合体を作製するのに有用な脂肪酸には、不飽和cisC14〜C20脂肪酸が含まれる。ある具体例では、この脂肪酸はC16〜C18脂肪酸である。ある具体例では、この脂肪酸はオレイン酸及び/又はリノール酸である。ある具体例において、オレイン酸及び/又はリノール酸を含有するミルク画分は、人間等の霊長類のミルクから得られる。このようなミルクは、オレイン酸とリノール酸の濃度が高いことが知られている。他の哺乳動物からのミルクは、より小さな脂肪酸(例えばC14以下)の量が多いことが知られており、かなりの量のC18又はC16脂肪酸を含むことは知られていない。ある具体例では、市販で利用可能なC18又はC16脂肪酸を使用することもできる。更に、いくつかの植物油(オリーブ油など)は、オレイン酸とリノール酸を多く含むものであることが知られている。
ある具体例では、ALAFACは、米国特許番号6,808,930、7,053,185及び7,524,932に記載されるようにして分離することができ、これらの開示内容は、ALAFACの分離に関し参照文献として、ここに組み込まれる。例えば、これは、(遠心分離などによって)脂肪を除去し、(酸析出などによって)カゼインとホエーに分けることでミルクから精製することができる。このようにして分離されたカゼインは、(遠心分離などによって)集められて洗浄される。このカゼイン画分は、(イオン交換クロマトグラフィー等によって)分別することができ、塩(1MのNaCl等)を用いて溶出することができる。この溶出液は、その後、蒸留水に対して脱塩することができる。ある具体例では、ALAFACは、人間のミルクから分離することができ、あるいは、高速蛋白質液体クロマトグラフィーを用いたDEAEマトリックスに結合したオレイン酸に、ミルク由来の又は組み換えアポ‐ALA(EDTA処理されたもの)を曝すことによって、あるいは、アルカリ条件下で蛋白質に脂質を添加することによって製造されても良い。
ある具体例において、前記のALAFAC複合体は、ALAの分子に複合化された1〜40(そしてこれらの間の全ての整数)の脂肪酸分子を有している。種々の具体例では、このALAFAC複合体は、ALAの分子に複合化された35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下の脂肪酸分子を有している。ある具体例では、このALAFACは、ALAの分子に複合化された5〜10の脂肪酸分子が存在している。ある具体例では、ALAの分子に複合化された10以下の脂肪酸分子が存在している時のALAFACの毒性は、許容可能であることがわかった。種々の具体例において、ALAFAC複合体は、ALAの分子に複合化された1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15のオレイン酸及び/又はリノール酸分子を含んでいる。
ALAFACは、冷蔵庫内に貯蔵することができ、あるいは冷凍されても良い。例えば、ALAFACは、生理学的緩衝液(0.9%塩水又はリン酸塩緩衝塩水など)内に4℃で少なくとも3か月保存することができ、安定性は、1年以上に亘って溶液にて維持される。室温において少なくとも3週間保存することも可能である。
ある具体例では、ALAFACを生成させるための成分は、別々に供給されても良い。例えば、α‐ラクトアルブミンと脂肪酸は別々に供給されても良く、複合体の生成を行うために適した緩衝液(生理学的緩衝液など)中で混合されても良い。一般的には、広がった形態のALAは、脂肪酸に対して非共有的に結合する。ある具体例では、脂肪酸とALAは、1〜40、1〜30、1〜20又は1〜10の脂肪酸が各ALA分子を結合するように供給される。
「殺菌効果なし」又は「抗細菌効果」なる用語は、成長に対する検出可能な効果が観察されないこと、又は、細菌の生存が観察されることを意味している。抗生物質に対する抵抗性が考慮される細菌については、生体外で試験された際に5mg/mlまで殺菌効果は観察されない。代わりに、細菌は、抗生物質に対して抵抗性があると思われる。なぜなら、抗生物質の十分な養生法の投与時における患者の状態に改良が臨床的に見られないからである。逆に、細菌は、殺菌活性が治療的に効果のある範囲で検出することができる時、又は、抗生物質の十分な養生法の投与時における患者の状態に改良が見られる時に、抗生物質に対して感受性であると考えられる。
ある具体例では、本発明の開示内容は、抗生物質耐性であることが知られている細菌に対する抗生物質の効果を増強させるための組成物及び方法を提供する。この具体例においては、増強は、細菌が以前は耐性であった抗生物質に感受性を付与する形態をとっている。当業者は、種々の細菌に対して抗生物質が効果的である濃度が、細菌の種類に左右されることを認識するであろう。このような範囲を決定することは、当業者の予測の範囲である。例えば、ペニシリン感受性は0.1μg/mlにおいて見られる。ある具体例では、感受性菌株に対して効果のある抗生物質の量は0.2〜250μg/mlの範囲である。種々の具体例では、ALAFACと共に使用される際の抗生物質の濃度は0.1〜1.0mg/ml及び、これらの間にある少数第1位の全ての濃度である。いくつかの具体例では、この濃度は1〜500μg/ml及びこれらの間にある少数第1位の全ての値である。
更に別の具体例では、本発明の開示内容は、抗生物質に過敏である細菌に対する抗生物質の効果を増強させるための組成物及び方法を提供する。この具体例においては、増強は、ALAFACなしで必要とされる量に比べて感染症を治療するのに必要な抗生物質の量を減少させる形態をとっている。種々の具体例では、ALAFACと共に使用される際の抗生物質の濃度は0.1〜1.0mg/ml及び、これらの間にある少数第1位の全ての濃度である。いくつかの具体例では、この濃度は1〜500μg/ml及びこれらの間にある少数第1位の全ての値である。いくつかの具体例では、感染症を治療するのに必要な抗生物質は、ALAFACなしで必要とされる量よりも少なく、1/2〜1/300(及び、これらの間にある全ての整数)である。
抗生物質の効果の増強は、MIC又は生体外研究についての短期殺菌アッセイ(short-kill assay)時間における減少として観察されることがある。又、このような増強は、例えば、臨床医により決定されるような個々の状態の改良の形態で見られる。ALAFAC複合体と抗生物質の配合物は、MICを減少させ、ALAFAC及び/又は抗生物質に感受性のある又は耐性のある細菌についての短期殺菌時間を減少させることができる。MICの決定は、当業者が十分予測できる範囲内である。更に、種々の抗生物質及び種々の細菌についてのMIC値は、http://antibiotics.toku-e.comにて抗菌性インデックスから得られる。種々の具体例においては、抗生物質についてのMICは、ALAFACと共に使用した時に1/2〜1/300(及び、これらの間にある全ての整数)に減少される。
例えば、ALAFACが、ALAFAC耐性細菌にて抗生物質の作用を増強させること、及び、肺炎連鎖球菌に対して同程度に十分に又はより一層作用すること(ALAFAC感応)が観察された。ALAFACと、ゲンタマイシン、ペニシリン又はエリスロマイシンの配合物は、生体内及び生体外において抗生物質感応の微生物と抗生物質耐性の微生物の両方に対して細菌死をかなり高めることが観察された。例えば、ゲンタマイシンへのALAFACの添加は、動物モデルにおける洗浄‐及び組織関連のゲンタマイシン‐耐性肺炎連鎖球菌の両方を根絶させるのに必要な投与量で1/10の減少をもたらし、そして、ペニシリンへのALAFACの添加は、ペニシリンに対して単独で全く感受性のないペニシリン耐性菌株SP670によるコロニー形成を根絶させるのに必要な投与量で1/33の減少をもたらした。又、グラム陰性の気道微生物であるA. baumanii及びM. catarrhalisは両方ともβ‐ラクタム及び他の種類の抗生物質に対して高いレベルの抗生物質耐性を示し、ALAFACにも抵抗性を有するが、これらは、ペニシリン及びゲンタマイシンに対するMICがかなり減少したことを示すこともわかった。従って、ALAFACは、現存する薬剤の有用性を増加させる方法を提供することができ、ALAFAC抵抗微生物においても抵抗性のある現行の治療蓄積抗生物質の生存期間を延ばすことができる。
細菌に対してALAFAC自体が殺菌活性を示す細菌の具体例としては以下のものがある。Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、及びMoraxella catarrhalisのいくつかの菌株、しかしながら、Moraxella catarrhalisに対する効果は一般的に低く、90%以下の減少は2mg/mlで起こる。細菌に対して5mg/mlまでの濃度であっても検出可能な活性を示さない細菌の具体例は、ブドウ球菌やBacillus subtilis等のグラム陽性微生物、及びEscherichia coliやPseudomonas aeruginosa等のグラム陰性微生物である。本発明の組成物及び方法は、全てのグラム陽性及びグラム陰性細菌に対しても、抗生物質耐性並びに抗生物質感受性の細菌に対しても有用である。グラム陽性細菌の具体例としては、Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Streptococcus sanguis、Streptococcus mutans、Streptococcus pyogenes(グループA)、Streptococcus agalactiae(グループB)、及びEnterococcus faecalisが挙げられるが、これに限定されるものではない。グラム陰性細菌の具体例としては、Escherichia coli、Haemophilus influenza、Haemophilus parainfluenzae、Moraxella catarrhalis、Acinetobacter baumanii、Klebsiella pneumonia、Pseudomonas aeruginosa、及びEnterobacter cloacheが挙げられるが、これに限定されるものではない。
ある面では、本発明の開示内容は、アジュバントとしての使用のための組成物を提供する。ある具体例では、このアジュバント組成物は、アジュバントとして作用するのに十分な量のALAFACを含むか、あるいは、本質的にALAFACから成る。細菌に対してALAFAC自体が殺菌効果を有する細菌(ALAFAC感受性細菌)については、その補強効果が発揮できる量は、殺菌効果を発揮する量よりも低い。ある具体例では、この組成物は、アジュバントとして作用するのに十分な量でALAFACを含み、この組成物は殺菌活性を有することができる。
ある具体例では、抗生物質の作用を増強させるためのアジュバントとして使用するための組成物は、個体に投与するのに適している。ある具体例では、この組成物は殺菌されて、殺菌包装体又は容器内に包装される。ある具体例では、この組成物は、他の蛋白質又はアミノ酸を含まない。ある具体例では、この組成物は、血清アルブミン及び/又は必須アミノ酸を含まない。ある具体例では、この組成物はビタミン類を含まない。ある具体例では、この組成物は成長因子又はホルモンを含まない。ある具体例では、この組成物は、血清アルブミン及び他の血清蛋白質、必須アミノ酸、成長因子、ホルモン、及びビタミン類を含まない。
ALAFACの濃度は、0.1μg/ml〜10.0mg/ml及び、これらの間にある少数第1位の全ての濃度であれば良い。いくつかの具体例では、ALAFAC感受性細菌と共に使用するためのALAFACの濃度は、0.1μg/ml〜100μg/ml及び、これらの間にある少数第1位の全ての濃度であれば良い。いくつかの具体例では、ALAFACに抵抗性のある細菌と共に使用するためのALAFACの濃度は、0.1μg/ml〜5.0mg/ml及び、これらの間にある少数第1位の全ての濃度であれば良く、ALAFACに感受性のある細菌と共に使用するためのALAFACの濃度は、0.1μg/ml〜1.0mg/ml及び、これらの間にある少数第1位の全ての濃度であれば良い。
ある具体例では、このアジュバント組成物は、各投薬量又は一回分が個体への投与に十分な投与量となるように投薬又は服用薬に分けられ、この際、(完全な投薬療法のための)分割物又は一回分の中の総量は、抗生物質の活性に対しアジュバントとして作用するのに十分なものであるが、それ自体、即ち抗生物質なしでは殺菌活性を有しない。治療療法のために必要とされる総投与量を、ここでは「治療セット」と呼ぶ。例えば、多くの抗生物質についての治療療法は、典型的には5〜10日の期間に亘って服用される投与量を含む。従って、ALAFACが同じ期間に亘って投与される場合、ALAFACについての治療セットは5〜10日の期間に亘って服用される投与量を含むことができる。各一回分又は投薬は、局所、経口、静脈又はあらゆる他の投与形態であってもよい。各一回分又は投薬は、分離した区画内に包装されても良く(ブリスター包装内のタブレット、又は密封体内の局所パッチ/絆創膏など)、あるいは、塊状物として包装されても良い(チューブ内の軟膏又は瓶内の懸濁液など)。種々の具体例では、このようなアジュバントの量は、感受性細菌に対して殺菌性となる量よりも1/2〜1/300(及び、これらの間にある全ての整数)に少なくなる。ある具体例では、この量は、感受性細菌に対して殺菌性となる量よりも低く、1/2〜1/100又は1/2〜1/10である。
ある具体例では、この組成物は、ALA、脂肪酸及び、ALAと脂肪酸との複合化によってALAFACが形成されるように配合に適した量の適した緩衝剤を含むか、あるいは、これらから本質的に成る。ある具体例では、脂肪酸の量は、1〜40(及び、これらの間にある全ての整数)の脂肪酸分子が各ALAと複合化できる量である。
もう一つの具体例においては、本発明の開示内容は、ALAFACと1以上の抗生物質を含む組成物を提供する。ある具体例では、この組成物は、ALA、脂肪酸(類)、及び1以上の抗生物質を含む。この抗生物質は、感染症を治療するのに有用な、いかなる抗生物質であっても良い。例えば、この抗生物質は、幅広いスペクトルの抗生物質であっても良く、特殊な細菌に対して効果的であっても良い。種々の具体例では、この組成物は、i)ALAFAC、及び/又はii)脂肪酸とALA、及びiii)1以上の抗生物質を含むか、あるいはこれらから本質的に成り、全て、適したキャリア又は緩衝液中に存在する。
適した抗生物質としては、下位分類がペニシリン(例:ペニシリンG、メチシリン、オキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン)、グリコペプチド(例 バンコマイシン)、カルバペネム(例 イミペネム及びメロペネム)、ポリミキシン及びバシトラシン(例 バシトラシン、ネオマイシン)又はリポペプチド(例 ダプトマイシン)等であるβ‐ラクタム抗生物質、下位分類がアミノグリコシド(例 ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン)、テトラサイクリン(例 テトラサイクリン、ドキシサイクリン、及びチゲサイクリン)、オキサジロジノン(リネゾリド)、ペプチジルトランスファラーゼ(例 クロラムフェニコール)、マクロライド(例 エリスロマイシン、アジスロマイシン、テリスロマイシン)、リンコサミド(例 クリンダマイシン)、及びストレプトグラミン(例 プリシンタマイシン)等である蛋白質合成抑制剤、メトロニダゾール及び下位分類フルオロキノロン(例 シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、モリフロキサシン)等のDNA合成抑制剤、リファムピン等のRNA合成抑制剤、イソニアジド等のミコール酸合成抑制剤、トリメソプリム及び下位分類スルホンアミド(例 スルファメトキサゾール、スルファドキシン)等の葉酸合成抑制剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある具体例では、配合組成物中のALAFACと抗生物質は、単独で投与された場合に殺菌効果を示さない量で存在している。別の具体例では、ALAFACは、それ自体で殺菌効果を示さない量であり、抗生物質は、それ自体で投与された場合に最小限の効果を有する量であり、これは、臨床医によって治療とは思われないであろう。別の具体例では、ALAFACは、それ自体で殺菌効果を示さない量であり、抗生物質は、それ自体で投与された場合に治療効果を示す量である。
別の面では、本発明の開示内容は医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、ALAFAC、含むか含まれない抗生物質、及び適したキャリア及び他の添加物を含むか、あるいはこれらから本質的に成る。ALA及び脂肪酸もまた、当該組成物中に存在していても良い。例えば、この組成物は、治療に効果的な量のALAFACを含んでもよく、任意に医薬的に許容可能なキャリア中に1以上の抗生物質を含んでも良い。このようなキャリアとしては、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は他のベヒクルが挙げられ、これらと一緒に医薬が投与される。医薬的に許容可能なキャリアとして機能し得る物質のいくつかの具体例は、以下のものである。ラクトース、グルコース及びスクロース等の糖;コーンスターチ及びポテトスターチ等のスターチ;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及びセルロースアセテート等のセルロース;粉末化されたトラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバター及び座薬ワックス等の賦形剤;ピーナッツオイル、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油等の油;プロピレングリコール等のグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール等のポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等浸透圧塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸塩緩衝溶液;及び医薬製剤において使用される他の非毒性適合性物質。要望される場合、この組成物は、少量の湿潤又は乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。上記薬剤と混合するのに適した組成物のいくつかの具体例が以下に見られる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy (2005) 21st Edition, Philadelphia, PA. Lippincott Williams & Wilkins。ある具体例では、この薬剤は、(例えば、その効果を限定したり、あるいは望ましくない副作用を生じさせる物質を実質的に含まないように)十分に精製される。
ある具体例では、上記組成物は、局所、経皮、又は粘膜使用に適するように製剤化される。局所、経皮又は粘膜投与に適した投薬形態としては、パウダー、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入薬が挙げられる。本発明の組成物は、製薬的に許容可能なキャリアと、必要とされ得るあらゆる保存剤、緩衝剤、又は推進剤と一緒に滅菌条件下で混合することができる。軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、動物及び植物脂肪、オイル、ワックス、パラフィン、スターチ、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物等の追加の賦形剤を含有しても良い。又、局所パウダー及びスプレーも、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物等の追加の賦形剤を含有しても良い。スプレーは更に、クロロフルオロ炭化水素及び、ブタン及びプロパン等の、置換されていない揮発性炭化水素等の一般的な推進剤を含有することができる。ある具体例では、経皮パッチ類が使用できる。これらは、体に制御された放出をもたらすという追加の利点を有する。このような投薬形態は、適当な媒体中に薬剤を溶解又は分散させることによって製造することができる。又、皮膚を通る活性成分の流入を増加させるために、吸収向上剤を使用することもできる。このような流入速度は、速度制御膜を設けるか、あるいはポリマーマトリックス又はゲル中に活性成分を分散させるかによって制御することができる。ある具体例では、上記の組成物は、病気に侵された領域に直接適用できる経皮パッチ、絆創膏、ガーゼ又は他の同様の材料に塗布される。
ある具体例では、上記組成物は、エアゾールとして投与されても良い。これは、活性剤を含有する水性エアゾール、リポソーム製剤又は固体粒状物を調製することによって達成できる。非水性(例えばフルオロカーボン推進剤)懸濁液も使用可能であった。水性エアゾールは、一般的な医薬的に許容可能なキャリア及び安定剤と一緒になった薬剤の水溶液又は懸濁液を調剤することによって製造されても良い。このキャリア及び安定剤は、特殊な化合物の必要条件により異なるが、典型的なものとしては、非イオン性界面活性剤(ツウィーン、プルロニクス、又はポリエチレングリコール)、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシン、緩衝剤、塩、糖又は糖アルコール等が挙げられる。エアゾールは、一般的に等浸透圧塩水から製造される。音波噴霧器は、化合物の分解を生じさせることがあるせん断に薬剤が曝されるのを最小化するために使用できる。
ある具体例では、前記組成物は、非経口、静脈内、又は筋肉内供給のために製剤化されても良い。これらは、典型的には水性組成物である。塩溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、液体キャリアとして使用することができる。
前記組成物は、治療的効果量にて投薬される。本発明の治療剤についての特殊な投与療法の形態及び特徴は、治療される個体の大きさ、性別、健康状態及び年齢等の因子、及び職業、習慣又は家系関連のパラメーター等の個体についての癌発生に関連した危険因子を考慮に入れて、投与の経路及び他の良く知られた変化により少なくとも一部規定されることになるのは当業者によって認められるであろう。このような基準に基づいて、当業者は、個体に投与する有効量を決定することができる。
前記組成物は、いかなる経路によって供給されても良い。例えば、この組成物は、粘膜表面への塗布のための局所製剤として供給されても良い。ある具体例では、前記組成物は、局所又は粘膜以外の経路により供給されても良い。例えば、前記組成物は、消化管を経由して(経口製剤として)又は、循環器系を経由して(静脈内、筋肉内など)又は、関連する位置に直接供給されても良い。
いかなる特別な理論に拘束されることを意図しないが、我々は、ALAFACがその増強活性を実行するに違いない機構を解明するデータを提供する。S. pneumoniaeは、試験した中で最もALAFAC過敏な細菌種であり、16μg/mlというゲンタマイシンのMICに匹敵する液体培養物中に=20μg/mlというALAFACについての最小阻止濃度(MIC)を示した。時間‐死評価分析については、かなり高い濃度が必要であった(1時間に108肺炎連鎖球菌の接種物を根絶させるために300μg/ml)。これらの数はまた、同じ時間枠にて他の抗生物質を用いて肺炎連鎖球菌を殺すのに必要な数に匹敵し、牛乳中のALA濃度が高い(2000μg/ml)であることを考慮した生理学的範囲内であって良い。ALAFACは、試験された全ての肺炎連鎖球菌抗生物質‐抵抗菌株(ペニシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、及びクロラムフェニコール‐抵抗)を殺し、これは、ALAFACが一般の抗生物質とは異なる経路を経て作用することを示唆している。モデル微生物としてS. pneumoniaeを用いて、我々は、ALAFACがプロトン原動力の消失、ナトリウム依存機構によるカルシウムの流入、及びセリン/トレオニンキナーゼ活性の活性化を引き起こし、細菌膜の脱分極(depolarization)をもたらすことを示す。更に、ALAFACに抵抗性のある自発性変異体又は、ALAFACの濃度増加にゆっくり適合した後に抵抗性となる変異体を生産する試みは、不成功に終わった。このことは、活性化された成分が細菌には必須であるか、あるいは点突然変異を用いてだけでは不活性化できないこと、又は、ALAFACによって活性化される複合的な代償経路が存在していることのいずれかを示唆している。
本発明の開示内容のある具体例は、種々の細菌種を殺すために必要とされる抗生物質の濃度を低くするための、アジュバントとしての現行の抗生物質の使用を目的とする。本発明の開示の一つの適用は、治療効力を高めるために抵抗性細菌種を処理して根絶させるのに必要な抗生物質の濃度を低くすること、及び、臨床において同様の抗生物質の長期使用を可能とすることである。種々の具体例において、抗生物質とALAFACの配合物を使用することにより、抗生物質単独の場合に比べて、細菌に対するMICにおいて1/2〜1/300の減少が観察される。又、一般に使用される抗生物質の濃度を低下させることにより、ALAFACアジュバント療法は、ALAFAC自体が幼児により摂取される天然分子であるので副作用を少なくし、更なる抵抗性が発生するリスクを減らす可能性を有している。
ある具体例では、C16又はC18の脂肪酸との複合体になったヒトα‐ラクトアルブミンは、いろいろな種の細菌(Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、Acenitobacter baumanii、Moraxella catarrhalis、及びHaemophilus influenzaeが挙げられるが、これらに限定されない)の抗生物質感受性、及び/又は抗生物質耐性菌株を、種々のクラスの抗生物質に対して感受性にすることができる。この方法では、ALAFACと抗生物質を用いた併用処理は、少なくとも(1)使用される抗生物質の臨床的に有用な濃度を低くし、抗生物質の使用を減らすことができ、(2)同じ抗生物質に対する抗生物質耐性菌株を感受性にすることによって細菌感染症に対する現行の治療実績の有用性を伸ばすことができ、(3)現在治療できない感染症を治療するために現行の抗生物質を使用することができる。
本発明の特徴は、抗生物質感受性菌株による感染症(皮膚感染症、肺炎、耳感染症等)を治療するために、いろいろな種類の従来からの抗生物質を用いた併用処理にて使用することができ、これにより、副作用を最小限にするための投薬量を少なくすることができるだけでなく、細菌が耐性である同じ抗生物質を用いて、抗生物質耐性細菌(MRSAやVRE等)により引き起こされる感染症の治療も可能であり、現在の治療実績の有用性が高められる。
従来からの抗生物質のALAFAC‐増強は、少なくとも(1)抗生物質の低量投薬の使用を可能とすることにより、更なる抗生物質耐性についてのリスクを低くし、(2)多くの異なる細菌種におけるいくつかの抗生物質の種に対して高いレベルの増感をもたらし、(3)実験室にてALAFAC耐性を誘導することが可能であったので、ALAFACの使用がより安全になることが期待され、臨床環境において容易に不活性化されない、という利点を有する。
別の面では、本発明の開示内容は、前記組成物を使用するための方法を提供する。この方法は、分離された製剤又は同じ製剤中にALAFAC又はその成分と、1以上の抗生物質を含むか、本質的に成る組成物を、個体(人間の患者又は別の人間でない対象)に投与する工程を含み、この際、抗生物質の作用が、ALAFAC又はその成分の投与時に増強される。ある具体例では、本発明は、細菌の成長を抑制する方法を提供する。ある具体例では、当該方法は、ALAFACと抗生物質の配合物を準備し、ALAFACと抗生物質を細菌に供給する工程を含み、この際、細菌の成長が抑制される。ALAFACと抗生物質の配合物は、単一の組成物又は分離された組成物の形態で供給することができる。細菌は、前記配合物と細菌の成長位置にて接触し得る。このような位置は、生体系の外側であって良く、あるいは、(感染症の場合のように)生体系の内側であって良い。
ある具体例において、本発明の開示内容は、ALAFACの投与の前、投与と同時に又は投与の後に、前記抗生物質を個体に投与することによって抗生物質の作用を増強させる方法を提供する。このALAFACは、補強効果だけ、又は補強効果及び殺菌効果を示し得る量にて投与することができる。抗生物質活性の増強は、抗生物質に対して感受性の細菌又は、抗生物質に対して耐性のある細菌にて達成することができる。前記個体は、人間、牛、犬、馬などのあらゆる哺乳動物であって良いが、これらに限定されない。ある具体例では、前記個体は人間の患者である。ある具体例では、前記個体は、細菌感染症にかかっていると診断された、かかっていることが疑われる、又はかかるリスクのある人間の患者である。ある具体例では、この人間の患者は、抗生物質耐性の感染症にかかっていると診断された、かかっていることが疑われる、又はかかるリスクのある患者である。ある具体例では、この人間の患者は、MRSA感染症にかかっていると診断された、かかっていることが疑われる、又はかかるリスクのある患者である。
ある具体例では、本発明の開示内容は、皮膚及び粘膜表面(胃腸管、気道など)の感染症、内部感染症、腐敗症などの感染症を治療するための方法を提供するが、これらに限定されるものではない。ある具体例では、本発明の開示内容は傷感染症の治療方法を提供する。ある具体例では、この傷感染症は、メチシリン耐性Staphylococcus aureusによって引き起こされる。この方法は、ALAFACと抗生物質を個体に投与することを含む。ある具体例では、ALAFACが、傷の位置に局所製剤として供給される。抗生物質は、ALAFACと同じ製剤にて、異なる製剤にて同じ位置に供給されて良いし、あるいは、異なる製剤にて異なる位置に、又は、異なる様式(全身的など)を経て供給されても良い。ある具体例では、前記抗生物質はペニシリン、オキサシリン、バンコマイシン、エリスロマイシン等である。
ある具体例では、本発明の開示内容は、しばしば傷感染症、特にMRSA感染症を伴うコロニー形成を減少させるための方法を提供する。コロニー形成は一般的に、皮膚及び粘膜表面上、特に鼻の領域に見られる。鼻のコロニー形成は、繰り返し感染が原因であるとよく考えられている。従って、ある具体例では、前記方法は、傷のない領域(皮膚の傷ついていない領域、及び鼻孔などの他の粘膜表面など)に、ALAFACと抗生物質を含む製剤(粘膜製剤など)を投与することを含む。このALAFACと抗生物質は、一緒に供給されても別々に供給されても良い。
ある具体例では、傷感染症と外傷コロニー形成の両方は、ALAFAC(傷に供給される)と抗生物質の配合物を個体に投与し、予想されるコロニー形成領域にALAFACと抗生物質の配合物を供給することによって減少及び/又は治療することができる。コロニー形成が鼻孔内である場合には、ALAFACと抗生物質を一緒に又は別々に、鼻孔に供給できるスプレー製剤又は他の製剤が使用できる。
本発明はまた、抗生物質治療に耐性を有するようになる細菌感染症を治療する方法を提供する。細菌感染症が特定の抗生物質に対して耐性があるかどうかの決定は、抗生物質を投与した後の臨床観察から行うことができ、あるいは、個体から細菌を培養し、種々の細菌に対する感受性について細菌を試験することによって行える。感染症が耐性となるALAFACと抗生物質の配合物は、別々にあるいは一緒に、同じ経路又は異なる経路を経て、同時に又は異なる時間に投与される。
ある具体例では、本発明は、感染症にかかった個体に、ALAFACの経口製剤と抗生物質を投与することによる胃腸管感染症の治療のための方法を提供する。ある具体例では、この経口製剤は、ALAFACの代わりに、又は追加して、ALAと脂肪酸が生体外又は生体内で結合してALAFACを生成するように、ALA及び脂肪酸を含むことができる。前記の抗生物質は、経口的に、あるいは他の経路(静脈内など)を経て供給されても良い。
ある具体例では、本発明は、感染症にかかった個体に、気道への供給に適した製剤を(ポンプ吸入器又は加圧吸入器などを経て)投与することによる気道感染症の治療のための方法を提供する。
ある面では、本発明の開示内容は、感染症の治療のために有用なキットを提供する。ある具体例では、このキットは治療セットを含み、この際、当該治療セットは、a)1以上の容器で、各容器がALAFACを、任意に医薬的に許容可能なキャリア中に含有し、前記治療セットが、細菌自体を殺すのに有効ではないが、抗生物質の効果を増強させるためのアジュバントとして有効な量になっているもの、及び、b)前記治療セットの使用のための取扱説明書を含む。この取扱説明書には、当該治療セットを使用するのに適している細菌(例えば、MRSA、S. pneumoniae等)、及び/又は使用できる感染症の種類(例えば、皮膚、粘膜表面、気道、胃腸管、耳など)が指示されていても良い。又、前記取扱説明書には、投与の詳細及び養生法が含まれても良い。それぞれの容器内の用量又は1回分は、液体、粉末、タブレット等のプレスされた材料、ゲルタブ等の可溶化された材料の形態であって良い。ある具体例では、ALAFACを含有する容器の代わりに、その中身が混合されてALAFACを生成する複合的な容器であっても良い。例えば、ALA、脂肪酸、及び適した緩衝剤を含有する分離した容器であっても良い。これらの容器の内容物は、ALAFACを生成するように混合することができる。例えば、前記治療セットを含めた取扱説明書は、ALAと脂肪酸を混合して複合体を生成させるための使用法を含んでいても良い。又、この取扱説明書は、ALAFACが生体内又は生体外で生成できるようにALAと脂肪酸を個体に投与することを使用者に指示できる。
もう一つの具体例においては、前記の治療セットは、ALAFACと抗生物質を含む容器を含む。ある具体例では、抗生物質とALAFACの量は、投与されるべき配合物の1又は複数の投与量を意味する。ある具体例では、1回の投与量に相当する抗生物質の量は、感染症を治療するのに通常使用される投与量よりも少ない。例えば、図5Aに示されるように、抗生物質がALAFACと共にS. pneumoniae EF3030に対して使用された時には1/30の少ない投与量が必要であった。別の具体例では、前記治療セットは、ALAFACと抗生物質についての、又はALAFAC成分(ALAと脂肪酸)と抗生物質についての分離した容器を含む。
ある具体例では、投与量に相当する抗生物質の量は、感染症を治療するのに使用されてきた通常の投与量よりも少なく、1/2〜1/100又は1/2〜1/10である。ある具体例では、この投与量は、感染症を治療するのに通常使用される投与量よりも少なくとも1/2は少ない。
種々の具体例において、本発明は、以下のものを提供する。個体に投与するのに適した組成物であって、i)αラクトアルブミン脂肪酸複合体、この際、当該複合体における脂肪酸は、cis、不飽和C14、C16、C18及び/又はC20脂肪酸を含む、及び、ii)抗生物質を含み、前記α‐ラクトアルブミン脂肪酸複合体と抗生物質は、医薬キャリア中に存在しており、この際、i)が、個体における感染症の治療のための抗生物質の作用を増強させるもの。前記個体は、人間の患者又は人間でない対象であって良い。
抗生物質の効能を増強させる、及び/又は個体における細菌感染症を治療するための方法は、以下の工程a)〜c):a)脂肪酸に複合化されたαラクトアルブミンを含む組成物を準備する工程で、この際、前記脂肪酸はcis、不飽和C14、C16、C18及び/又はC20脂肪酸を含む;b)a)からの前記組成物を個体に投与する工程;及び、c)別々に、あるいはb)と一緒に、前記個体に抗生物質を投与する工程で、この際、脂肪酸に複合化された前記αラクトアルブミンが、個体における感染症の治療のために前記抗生物質の作用を増強させる、を含む。前記個体は、人間の患者又は人間でない対象であって良い。
感染症の治療のためのキットは、以下のa)〜c):a)抗生物質の抗菌活性を増強させるのに適した量のαラクトアルブミン脂肪酸複合体;b)a)の存在下で感染症を治療するのに適した量の抗生物質;c)a)とb)の投与に関する取扱説明書、を含み、この際、a)とb)は、同じ経路又は異なる経路を経て、別々に又は一緒に投与される。このキットは、1回の使用の包装形態であっても、多数回の使用の包装形態であっても良い。前記の製剤a)及びb)は、同じ組成物中に存在していても、別々の組成物中に存在していても良い。又、このキットには、人間用又は家畜用のどちらであるのかが示されていても良い。
抗生物質の効能を増強させるためのキットは、a)1以上の容器を含む治療セットで、各容器がαラクトアルブミン脂肪酸複合体を含む製剤を含み、この際、当該治療セットにおけるα‐ラクトアルブミン脂肪酸複合体の量が、抗生物質の効能を増強させるのに十分である;及びb)a)の使用に関する取扱説明書、を含み、この際、前記取扱説明書は、以下のi)〜iii):i)抗生物質の効能をa)が増強する抗生物質についての表示、ii)a)と抗生物質の配合物を用いて治療することが可能な感染症についての表示、及び、iii)投与の詳細についての表示、の1以上を含む。例えば、この取扱説明書には、このキットがMRSA感染症の治療における使用に適していることが表示されても良く、及び/又は、MRSAの治療のためのALAFACと共に使用するのに有用な抗生物質が表示されても良い。同様に、このキットには、呼吸器感染症、胃腸内感染症、耳感染症、腐敗症又は他の感染症の治療に適していることが表示されても良く、前記感染症の治療のためにALAFACと共に使用するのに適した抗生物質が表示されても良い。又、このキットは、抗生物質を含有する1以上の容器を含んでも良い。各容器からの製剤は、1回の適用又は複数回の適用のために使用できる。又、このキットには、人間用又は家畜用のどちらであるのかが示されていても良い。
以下の実施例は、本発明を説明するために提示されている。これらは、いかなる方法によっても限定を意図するものではない。
実施例1
この実施例は、ALAFACのアジュバント活性を例示するものである。初期精製のために、ミルクをホエーとカゼイン分画に分離し、カゼイン分画の後に続く殺菌活性を有するものを、イオン交換及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、さらに精製した。最終殺菌性分画をタンパク質の内容物に関して分析し、αラクトアルブミン(ALA)を唯一の同定可能なタンパク質として含有することが見出された。ALAは、人間のミルク中の最も一般的なタンパク質である(およそ2g/l濃度)。その天然型において、ヒトALA(ホエータンパク質)は殺菌活性を有さず(図1、破線)、αラクトアルブミンの殺菌型がいくつかの点で変化していることが示唆された。オレイン酸及びリノール酸は両方ともそれ自体が殺菌活性を有するが、細菌を殺すために必要とされる濃度(図1、点線)はALAFAC−複合体に関連した濃度(図1、実線よりも大幅に高い。脂肪酸が殺菌活性に必要であることが観察されたが、脂質が結合しない限り活性は観察されない。さらに、ヒトALAはウシ、ウマ、ブタ及びヤギのALA(75−79%の配列同一性)と交換可能である。この実験は、肺炎連鎖球菌(S. pneumonia)に対して実施した。
ALAFAC及び一般的抗生物質を試験して、ALAFAC及び一般的抗生物質が相乗効果を発揮して、肺炎球菌を生体外及び生体内で殺すことができるかどうかを決定した。結果は予想外に有望であり、ALAFAC単独では殺すことができない細菌種に対するALAFACの相乗効果の調査につながった。
方法論:最小阻止濃度(MIC)を、96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、再現可能なMIC結果をもたらす、0.5%の酵母エキスを添加したTodd-Hewitt培地を肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)に対する試験培地として使用したこと除いて、微量希釈法をCLSIの承認基準に従って使用して決定した。残りの種に対しては、Mueller-Hinton培地をCLSI基準により示されたように使用した。各ウェルは抗生物質の2倍希釈液を含有し、最終細菌濃度105CFU/mLが播種され、18時間、37℃においてSynergy IIマイクロプレートリーダー(Biotek、ウィヌースキー、バーモント)中でインキュベートされ、このマイクロプレートリーダーは、OD600を5分ごとに記録し、細菌成長をモニターした。MICを、OD600において増加が検出されなかった抗微生物剤溶液の最も低い濃度として定義した。
図2は、MICを、ペニシリンGを抗生物質として使用して測定した場合の結果を示すが、同様の結果がエリスロマイシン及びゲンタマイシンにより得られ、これらは抗生物質の2種の個別のクラスを代表する(それぞれマクロライド系及びアミノグリコシド系;表1)。ペニシリンに関しては、ALAFACとの同時処理により、ペニシリン感受性株の最小阻止濃度は1/5に減少し(図2A)、ペニシリン耐性株におけるMICはさらに大きく1/20以上の減少を示す(図2B)。このMICの減少は、ペニシリン耐性株をペニシリン感受性範囲に到達させる。
同じパターンがマクロライド系のエリスロマイシンに対しても当てはまった。ALAFACの不在下において、感受性株D39に対するエリスロマイシンのMICは0.03μg/mLであり、PspA遺伝子座にエリスロマイシン耐性カセットを担持する、D39由来のエリスロマイシン耐性株JY53に対しては、3μg/mlで100倍高かった(表1)。0.75×MICのALAFACの存在下で、エリスロマイシンのMICは、感受性株において1/3の0.01μg/mlに減少し、耐性株においてはより著しく、0.01μg/mlに減少し(1/300;P<0.001)、この菌株をこの抗生物質に対して高度の感受性にさせ、ALAFACの存在下における非耐性D39株と同等の感受性にさせる(表1)。
最終的に、アミノグリコシド系のゲンタマイシンのMICは、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)D39及びEF3030の両方に対して16μg/mLであった。0.75×MICのALAFAC存在下で、ゲンタマイシンのMICは、両方の株において1/4の4μg/mLに減少した(表1)。
ALAFACは、それ自体ではブドウ球菌(Staphylococci)及び大腸菌(E. coli)などの細菌種を殺さないが、両方の種において起こる膜の脱分極及びイオン輸送が、1,000μg/mlを超える濃度でさえ死を誘発する程度ではないが、観察された。従って、この効果が、他の抗生物質のMICを低下させる助けになり得るかどうかを試験した。表1を見て分かるように、新興病原体であるアシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanni)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella cartarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の菌株は、さまざまな抗生物質に対して高い耐性を有する3種であるが、すべてペニシリン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン及びメチシリンに対するそれらのMICを、1/4から1/160の間に減少させることが示された。本質的かつ高度にペニシリン耐性であるモラクセラ(Moraxella)の菌株が、ALAFACの存在下で中程度にペニシリン感受性になり得るという事実、及びALAFACが、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MRSA)株をメチシリンに感受性にし得るという事実は大いに興味深いことであった。
短期殺菌アッセイ:MICアッセイにおいて見られる効果が、静菌効果又は溶菌効果のためであるかどうかをさらに分析するために、抗生物質単独又はALAFACとの併用で短期殺菌アッセイを実施した。
方法論:後期対数増殖期において、細菌を12,000×gにおいて10分間遠心分離により回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;30mMのNa2HPO4、10mMのKH2PO4、120mMのNaCl、pH7.4)に再懸濁した。細菌の適切な希釈液をPBSに懸濁し、表示濃度のALAFAC及び/又は抗生物質によりさまざまな時間処理した。細菌生存率に対する効果を、細菌試料の段階希釈液を5%の羊血を含有するトリプシン大豆寒天プレートにプレーティングして(生存数)、37℃において一晩成長後の生存コロニー形成単位を決定することによって評価した。殺菌活性を、少なくとも3log10CFUの減少として定義した。
結果:肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)を用いて開始し、これらの各実験に関して、ALAFAC及び各抗生物質を、インキュベーション時間にわたって、感受性株において1log10未満の殺菌を生み出すようにそれぞれ滴定し、次いでそれらの濃度を使用して併用処理を実施した。
ペニシリンGに関しては、最も良好な併用効果は、50μg/mlのALAFAC及び20μg/mlのペニシリンGを4時間にわたって使用することで見られ、この量はそれぞれD39肺炎球菌の1log10未満の死単独で引き起こす、又はD39肺炎球菌を殺さない量であり、4時間は、この静菌性抗生物質の殺菌活性を得るために必要とされる時間である。しかし、2種の薬剤の併用処理により、各薬剤単独の相加的殺菌より有意に高い殺菌がもたらされ(P<0.05)、7.5log10の細菌接種材料がほぼ根絶された(図3A)。ALAFAC単独により同様の活性を得るためには、5倍を超える高い濃度が必要であり、ペニシリンGは、250倍高い濃度(5,000μg/ml)において4時間かけたとしても、それ自体では2.6log10を超える殺菌はできなかった。この増強効果は、D39株より20倍高いMICを有するペニシリン耐性株SP670においても存在した。50μg/mLのALAFAC及び20μg/mLのペニシリンGによる併用処理により、7.6log10の接種材料の4.0log10が殺菌され、これは、いずれの薬剤単独又は2種の薬剤の相加効果よりも有意に高かった(P<0.001;図3B)。ペニシリン濃度を30μg/mL(それ自体では殺菌活性を有さなかった)に増加することにより、ALAFACと併用した場合、5.0log10の殺菌がもたらされ、これもまた、各薬剤単独の相加的殺菌よりも有意に高かった(P<0.001;図3B)。
亜致死濃度のALAFACをエリスロマイシンと併用した場合、同様及びより強力な効果が見られた。50μg/mlのALAFAC及び200μg/mlのエリスロマイシンにより、感受性株D39に対してそれら自体では有意な殺菌活性が示されず、一方、2種の薬剤の併用により、各薬剤単独の相加的殺菌より殺菌の有意な増加がもたらされ(P<0.001)、7.2log10の接種材料がほぼ根絶された(表2)。100倍高いMICを示すエリスロマイシン耐性株JY53を使用した場合、同じ濃度の2種の薬剤の併用(200μg/mLのエリスロマイシンと50μg/mLのALAFACを一緒に)により、4.1log10の肺炎球菌の死が4時間後に引き起こされ(各薬剤単独の相加的殺菌と比較してP<0.05)、300μg/mLのエリスロマイシンを50μg/mLのALAFACと一緒に使用した場合、これは、細菌接種材料の完全な根絶まで増加可能であり(各薬剤単独の相加的殺菌と比較してP<0.001)、エリスロマイシン耐性肺炎球菌の殺菌が高度に有意に増強され得た(表2)。
最後に、50μg/mlのALAFAC又は50μg/mlのアミノグリコシド系ゲンタマイシン単独を使用することにより、D39肺炎球菌の有意な殺菌が引き起こされず、一方、2種の薬剤の併用により、2種の薬剤の相加的殺菌と比較して有意に強化された殺菌活性がもたらされ(P<0.001)、全細菌接種材料(7.7log10)がわずか1時間のインキュベーション後に根絶された。ゲンタマイシンはそれ自体では、たとえ最大1,000μg/mlの濃度においても1.4log10を超える殺菌は不可能なので、このことには価値がある。
肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)による結果は黄色ブドウ球菌(S. aureus)株により確認され、1/10の濃度のゲンタマイシンにより、ALAFACの存在下で黄色ブドウ球菌(S. aureus)接種材料の根絶が達成された(表2)。同様のメチシリンの1/32から1/2までの低下が、菌株に依存してALAFACの存在下で得られ、上記のMIC値と同様、最も耐性の高い菌株が感受性の最も大きな変化を示した。
これらの結果は、ALAFACが抗生物質のいくつかのクラスの強力な殺菌増強剤として作用し、肺炎球菌の死を誘導するために必要な抗生物質濃度を有意に低下させ得ることを示唆している。
バイオフィルムの生体外アッセイ:上記のすべての被験生物はコロニーを形成し、それらの抗生物質耐性をさらに増加させる細菌集団又はバイオフィルムにおいて体内で感染するので、見られた相乗効果が、バイオフィルムフォーマット中の細菌成長に対しても妥当であることの検証が対象となる。宿主の粘膜表面にコロニー形成する、又は感染する肺炎球菌は、凝集性集団又はバイオフィルム中でまず成長し、抗生物質及び他の抗微生物剤に対して実質的に増加した耐性を示すことが公知である。
方法論:肺炎球菌をCDM中で静的に成長させ、黄色ブドウ球菌(S. aureus)をトリプシン大豆培地中で対数増殖期半ば(OD600=0.5)まで成長させ、洗浄し、新鮮なあらかじめ温めた培地に500μlの体積中2×104CFUの密度まで再懸濁し、懸濁液を使用して、集密なH292上皮細胞の基層を含む又は含まないポリスチレンの24ウェルプレートの底の滅菌円形ガラスカバースリップに播種した。バイオフィルムを34℃において5%CO2中で、培養培地を12時間ごとに換えながら表示時間培養し、生菌数によりバイオマス及び抗生物質耐性を(記載のように)評価した。
あらかじめ形成されたバイオフィルムをPBSで洗浄して、浮遊細菌を除外し、表示濃度のALAFAC及び/又は抗生物質を含むPBSに3時間、34℃において5%CO2中で曝露した。次いでバイオフィルムをPBSで洗浄して、100μLのPBSの存在下で表面を削り取ることによって取り外し、次いで100μLのPBSですすいだ。収集した細胞を超音波ウォーターバスにおいて2秒間超音波処理して、その後高速で20秒間、2回ボルテックスにより混合し、分散したバイオフィルム細胞を使用して、生存CFU/mlを、血液寒天にプレーティングし、成長させた希釈試料から決定した。結果を、コロニー形成単位の総数/バイオフィルムとして報告し、殺菌活性を少なくとも3log10CFUの減少として定義した。
結果:上皮細胞上にバイオフィルムとして成長させた細菌は、ALAFAC及び抗生物質の両方に対して非常に増加した耐性を有し、高濃度においても死は限定されたが、ペニシリン感受性肺炎球菌株D39(図4A)及び耐性株SP670(図4B)の両方に対して、ALAFAC/ペニシリンの併用処理はバイオフィルムの根絶をもたらし(図4AB、中央のバー)、殺菌効果を生みたすために使用されたペニシリンG濃度は1/50より小さく低減された(表3)。本発明者らは1,000μg/mlを超える単剤療法を試験していないので、これらの結果を倍数として示さないが、さらにより著しい結果がエリスロマイシンに関して見られた。エリスロマイシンと250μg/mlのALAFACとの併用により、抗バイオフィルム活性の相乗的増加がもたらされ、併用処理後にバイオフィルムはほぼ根絶され(8.7log10中8.5log10が殺された)、これは、各薬剤の相加効果よりも有意に高かった(P<0.05)。エリスロマイシン−耐性株JY53に対する効果はあまり著しくなく、500μg/mLのエリスロマイシンと250μg/mlのALAFACの併用処理後に4.3log10CFUの根絶がもたらされた。
EF3030肺炎球菌により48時間で形成された肺炎球菌のバイオフィルムを、100μg/mLのALAFAC及び200μg/mlのゲンタマイシン、単独又は併用で3時間処理した。ゲンタマイシン処理単独により、総EF3030バイオフィルムバイオマス(7.5log)のうち1.1が殺され、一方、100μg/mLのALAFAC単独では殺菌活性を示さなかった。対照的に、両方の薬剤による3時間のバイオフィルムの併用処理は、殺菌を3.8logに有意に増加させ、これは、各薬剤両方の相加効果より有意に高く(P<0.05)、殺菌活性を誘導するために使用されたゲンタマイシン濃度は1/3に減少した。
最終的に、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(S. aureus)の1つの株(MSSA;11090306)及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)の1つの株(MRSA;NRS70)により形成されたバイオフィルムは、最大1,000μg/mlの濃度のメチシリンに非感受性であり、この濃度のメチシリンは、単剤療法においてそれぞれ1log10及び0.16log10の死しかもたらさなかった。しかし、それ自体は死をもたらさない100μg/mlALAFACとの併用で、併用処理は、バイオフィルムバイオマスにおいてそれぞれ4.8及び3.4log10の減少をMSSA及びMRSA株に対してもたらし(表3)、殺菌活性に必要とされるメチシリン濃度を少なくとも1/4に減少させた。
生体内処理アッセイ:併用処理の効力を、バイオフィルムを生体内で産生することが公知であるマウスコロニー形成モデルにおいて、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)及び黄色ブドウ球菌(S. aureus)のコロニー形成に関して決定した。
方法論:Jackson Laboratories(バーハーバー、メイン、米国)による6週齢の雌BALB/cByJマウスをフィルター・トップ・ケージにおいて、標準的な実験動物試料及び水の自由摂取で使用まで飼育した。マウスに、前記のようにコロニー形成させた。簡潔には、PBS中5×l06CFUのEF3030肺炎球菌、1×108CFUのSP670肺炎球菌又は5×107のNRS70メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)を含有する20μlの細菌懸濁液を、麻酔をかけていないマウスの鼻孔にピペットで注入した。48時間後、マウスを、20μlのゲンタマイシン(0−5,000μg/mL)、20μlのペニシリン(0−5,000μg/mL)又は20μlのメチシリン(0−5,000μg/ml)により、50又は100μgのALAFACの存在下又は不在下で鼻孔中に6時間、単回用量として処理した。その後、コロニー形成の負担を、動物を安楽死させた後で、鼻の洗浄後に回収した鼻咽頭組織から生菌を数え上げることによって評価した。鼻咽頭組織を、記載のように上部頭蓋骨を除去し、鼻甲介に存在する組織を鉗子により回収することによりバラバラにした。細菌負荷を、ホモジネートされた組織から生存プレートカウントを求めることによって測定した。
結果:ALAFAC単独で処理したマウスは、安定なコロニー形成を、50μgのALAFACの単回用量を使用して48時間誘導された後で、細菌負担の低下を示さなかった。しかし、殺菌抗生物質であるゲンタマイシン単独により、10μg/マウスの用量で鼻咽頭組織において開始して、肺炎球菌の細菌負担の緩慢な減少が引き起こされた。さらに、組織に関連する細菌は、ゲンタマイシンに高度に耐性であり、実質成長は100μg(5,000μg/ml)の用量後であっても検出され、生体外の殺菌用量の10倍であった(図5A)。しかし、ALAFACの存在下で、組織に関連する細菌負荷の同等の低下が、1/33低用量(3μg)のゲンタマイシンを使用して得られた(150μg/ml)(図5A)。
ペニシリン濃度を増加させた、ペニシリン耐性株SP670の鼻咽頭のコロニー形成の処理は、100μg(5,000μg/ml)の用量を鼻腔内に加えた場合であってもコロニー形成レベルに対する効果を有さなかった。ALAFAC単独を加えた場合でも、同じことが当てはまった。しかし、ALAFAC及びペニシリンを一緒に使用した場合、細菌負担の1/100の減少が、1μgのペニシリン(50μg/ml)ですでに見られ、細菌は、100μgの局所用量で鼻咽頭から根絶された(図5B)。
同様に、メチシリン単独でのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)株NRS70によるコロニー形成の処理は、100μg(5000μg/ml)の単回用量でさえコロニー形成負担に対して効果はなく、これは同用量のALAFACの処理に関しても当てはまった。しかし、メチシリンをALAFACと併用して処理した場合、コロニー形成の有意な減少が観察され、10μgの用量でほぼ根絶された。このモデル系において黄色ブドウ球菌(S. aureus)に関して通常そうであるように、コロニー形成速度が比較的低いので、正確な3log10の低下の殺菌効力は検出できなかった。しかし、細菌負荷の有意な減少が、1μgのメチシリンにおいてすでに観察され、使用した最も高い濃度の1/100であり、この濃度はそれ自体では細菌のコロニー形成に対して活性を有さなかった。
実施例2
この実施例は、ALAFACの亜致死濃度が、一般的抗生物質(ペニシリン、マクロライド系及びアミドグリコシド系)の効果を増強することを実証するものである。MICアッセイ及び短期殺菌アッセイを使用して、本発明者らは、肺炎球菌を殺すのに著しく減少した抗生物質濃度で済むことを観察した。抗生物質耐性株は、ALAFACの使用により臨床的感受性範囲に至らせることができる。生体外のバイオフィルムモデル及び生体内の鼻咽頭コロニー形成を使用して、ALAFAC及び抗生物質の併用により、抗生物質感受性株及び耐性株の両方の、マウスにおけるバイオフィルム及びコロニー形成の両方が完全に根絶され、これは各薬剤単独ではできなかったことである。いずれの特定の理論にも縛られる意図のものではないが、抗生物質のALAFACによる増強は、部分的には抗生物質の細菌への接近可能性の増加によるものであるが、さらにカルシウム輸送及びキナーゼ活性化に頼っていると考えられる。感作効果は、ALAFACに感受性の種に限定されなかった。ALAFAC耐性呼吸器系種、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanii)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を、ALAFACの存在下で抗生物質のさまざまなクラスに対してすべて感作し、肺炎球菌と同じメカニズムを活性化させた。これらの結果を組み合わせると、細菌中の抗生物質耐性を回避する保存されたALAFAC活性化経路の存在が示唆される。この経路を活性化する能力は、現在の処理の蓄積の存続期間を拡張し得る。
抗生物質の効果を増強するALAFACの能力を、3種の抗生物質、ゲンタマイシン、エリスロマイシン及びペニシリンについて、感受性及び耐性両方の肺炎球菌株に対して試験した。併用療法の活性の増加が、肺炎球菌のバイオフィルムについて生体外及び鼻咽頭コロニー形成のマウスモデル両方において観察された。ALAFACの増強効果は非常に強く、抗生物質耐性株のバイオフィルム中で成長させた、又はマウス鼻咽頭にコロニー形成する抗生物質耐性株を、感受性株に対して有効な濃度でのALAFACの存在下で有効に根絶できた。
材料及び方法。試薬。細胞培養試薬、Bocillin FL及びAlexa Fluor 488標識キットは、生体外gen、カールスバッド、カリフォルニアから入手した。細菌及び細胞培養培地及び試薬は、VWR Inc、ラドナー、ペンシルバニアから入手した。既知組成細菌成長培地(CDM)は、JRH Biosciences、レクセラ、カンザスから入手した。羊血はBioLink, Inc、リヴァプール、ニューヨークから購入した。すべての抗生物質及び残りの試薬は、Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリから購入した。
ALAFACの生成。ALAFACは、天然のαラクトアルブミンをオレイン酸(C18:l)の存在下で記載の通りに転換することによって生成された。ALAFACは、Dr. Catharina Svanborg. Lund University、ルンド、スウェーデン国のご厚意により提供された。
細胞及び細菌株。NCI−H292気管支がん細胞(ATCC CCL−1848)を、さまざまな表面において記載の通りに成長させた。肺炎球菌株は、合成培地(CDM)又は0.5%の酵母エキスを含有するTodd Hewitt培地(THY)において、記載の通りに成長させた。本研究は、血清型19F株EF3030、血清型2株D39、その非被包性誘導体AM1000、エリスロマイシン含有耐性カセットの挿入によりPspAを欠いたD39誘導体(JY53)及び臨床的ペニシリン耐性肺炎球菌の血清型6株SP670を使用した。アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanii)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株は、Dr. Anthony Campagnari、University at Buffalo、SUNYのご厚意により提供された。A.バウマニ(A. baumanii)株AB307及びAB979ならびにM.カタラーリス(M. catarrhalis)株7169及びBC8は、Mueller-Hinton(MH)培地で37℃において225rpmで回転振とうさせながら培養し、−80℃において50%MHブロス及び50%グリセロール中で保存した。
生体外感受性試験。最小阻止濃度(MIC)を、96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、再現可能なMIC結果をもたらす0.5%の酵母エキスを添加したTodd-Hewitt培地を肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)に対する試験培地として使用したこと除いて、微量希釈法をCLSIの承認基準に従って使用して決定した。A.バウマニ(A. baumanni)及びM.カタラーリス(M. catarrhalis)に関するMICは、MH培地において決定した。出発抗生物質濃度の2倍希釈液を、マイクロタイタープレートのウェル(96ウェルプレート中)に三連に加え、約105コロニー形成単位(CFU)/mLの最終細菌濃度を播種し、18時間、周囲空気中で37℃においてSynergy IIマクロプレートリーダー(Biotek、ウィヌースキー、バーモント)中でインキュベートし、このマイクロプレートリーダーは、OD600を5分ごとに記録し、細菌成長をモニターした。MICを、OD600において増加が検出されなかった、抗微生物剤溶液の最も低い濃度として定義した。
短期殺菌アッセイ。後期対数増殖期において、細菌を、12,000×gにおいて10分間遠心分離によって回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;30mMのNa2HPO4、10mMのKH2PO4、120mMのNaCl、pH7.4)に再懸濁した。適切な濃度の細菌(およそ108コロニー形成単位/ml)をPBSに懸濁し、表示濃度のALAFAC及び/又は抗生物質によりさまざまな時間処理した。細菌生存率に対する効果を、細菌試料の段階希釈液を5%の羊血を含有するトリプシン大豆寒天プレートにプレーティングして(生存数)、37℃において一晩成長後の生存CFUを決定することによって評価した。殺菌活性を、元々の接種材料の少なくとも3log10の減少として定義した。
静的バイオフィルムモデル。肺炎球菌をCDM中で対数増殖期半ば(OD600=0.5)まで成長させ、洗浄し、新鮮なあらかじめ温めた培地に、500μlの体積中に2×l04CFUの密度まで再懸濁し、懸濁液を使用して、上記のとおり集密なH292上皮細胞の基層を含むポリスチレンの24ウェルプレートの底の滅菌円形ガラスカバースリップに播種した。バイオフィルムを34℃において5%CO2中で、培養培地を12時間ごとに換えながら表示時間培養し、SEM研究又は生菌プレートカウントによるバイオマス及び抗生物質耐性の評価に使用した。
バイオフィルムの抗生物質感受性を試験するために、あらかじめ形成されたバイオフィルムをPBSで洗浄して、浮遊細菌を除外し、表示濃度のALAFAC及び/又は抗生物質を含むPBSに3時間、34℃において5%CO2中で曝露した。次いでバイオフィルムをPBSで洗浄して、超音波処理により分散させ、ピペッティングにより100μLのPBS中に収集し、次いで100μLのPBSですすいだ。収集した細胞をその後高速で20秒間、2回ボルテックスにより混合し、分散したバイオフィルム細胞を使用して、生存CFU/mlを、血液寒天にプレーティングし、成長させた希釈試料から決定した。結果を、CFUの総数/バイオフィルムとして記録した。
ゲンタマイシン及びペニシリンの生体内におけるALAFACによる増強。Jackson Laboratories(バーハーバー、メイン、米国)による6週齢の雌BALB/cByJマウスをフィルター・トップ・ケージにおいて、標準的な実験動物試料及び水の自由摂取で使用まで飼育した。
マウスに、記載の通りにコロニー形成させた。簡潔には、PBS中5×l06CFUのEF3030肺炎球菌又はPBS中1×108CFUのSP670肺炎球菌を含有する20μlの細菌懸濁液を、麻酔をかけていないマウスの鼻孔にピペットで注入した。48時間後、マウスを、20μlのゲンタマイシン(0−5,000μg/mL)又は20μlのペニシリン(0−5,000μg/mL)により、100μg(5,000μg/mL)のALAFACの存在下又は不在下で鼻孔中で6時間処理した。その後、コロニー形成負担を、動物を安楽死させた後で、100μLのPBSをマウスの気管に注入し、鼻孔から流れ出たものを収集することによって得られた鼻咽頭洗浄液中及び鼻洗浄後に回収された鼻咽頭組織由来の両方の生菌を数え上げることによって評価した。鼻咽頭組織を、記載のように上部頭蓋骨を除去し、鼻甲介に存在する組織を鉗子により回収することによりバラバラにした。細菌負荷を、鼻洗浄液又はホモジネートされた組織から生存プレートカウントを決定することによって測定した。
走査電子顕微鏡法。生体外で成長させた浮遊細菌又はバイオフィルム(上記を参照されたい)を、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液、pH7.2中2.5%のグルタルアルデヒド、0.075%のルテニウムレッド及び0.075Mのリジン酢酸塩を使用して、1時間室温において固定した。この手順は、炭水化物構造を保持し、バイオフィルム形態の保存を改善することが示されている。試料を、0.2Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中の0.075%ルテニウムレッド中室温において15分間、振とうせずに3回洗浄し、その後、連続段階のエタノール(10、30、50、75、95及び100%)により、室温において、各ステップに15分間かけて脱水した。試料を、100%ヘキサメチルジシラザン中に移し、スタブに取り付ける前に風乾させ、カーボンコーティングして、South Campus Instrumentation Center、University at Buffalo、ニューヨークによって利用可能なSU70 Scanning Electron Microscopeを加速電圧5.0kVで使用して分析した。
ゲンタマイシンとAlexa Fluor 488のコンジュゲーション。ゲンタマイシンとAlexa Fluor 488のコンジュゲーションを、Alexa Fluor 488コンジュゲーションキット(生体外gen)を使用して、製造業者の取扱説明書から適合させて実施した。Alexa Fluor 488エステルを、0.1Mの重炭酸ナトリウム、pH8.3及び10mg/mLのゲンタマイシンの迅速に撹拌した溶液に加え、5時間、4℃においてインキュベートした。ゲンタマイシン/Alexa Fluorはモル比10:1で使用して、多置換のAlexa-Fluor 488−ゲンタマイシンコンジュゲートの形成を最小化した。コンジュゲーション後、コンジュゲートされたゲンタマイシンを、備え付けの脱塩樹脂を使用して未反応の色素から分離した。最終生成物の濃度は、Alexa Fluor 488のモル吸光係数を使用して推定した。488がコンジュゲートされたゲンタマイシンは、コンジュゲート型においてその抗微生物活性を保持することが示され、使用まで4℃において保存された。
ゲンタマイシン及びBocillin FLの結合。本発明者らは、Alexa Fluor 488−ゲンタマイシン及びBocillin FLをレポーター抗生物質として使用する前記方法を適合させ、これらの化合物と肺炎球菌細胞との会合を調査した。簡潔には、表示の菌株を、THY培地において600nmにおける光学密度が0.5になるまで成長させた。抗生物質を下記の濃度:ゲンタマイシンが50μg/mL、Bocillin FLが2μg/mL、又はゲンタマイシン50μg/mL及びALAFAC50μg/mLの併用、又はBocillin FL2μg/mL及びALAFAC15μg/mLの併用で加えた。
30分後、培養液を、9000×gで4分間遠心分離にかけ、PBSで4回洗浄し、0.2μmのガラスビーズを用いて15分間、Mini bead beater(Biospec Products Inc)を使用して破砕した。その後、培養液を少量の生理食塩水に再懸濁した。Bocillin FL又は488−ゲンタマイシンの濃度を、破砕の前後で、Synergy IIマイクロプレートリーダー(Biotekk、ウィヌースキー、バーモント)において励起波長及び放射波長をそれぞれ485及び530nmに設定して蛍光材料の量を測定することによって決定した。Alexa Fluor 488−ゲンタマイシンに関しては、2及び800μg/mLの間で線形性が得られ;(R2=0.9983)、結合値を試料タンパク質含有量の比率として表した。Bocillin FLに関しては、0.5及び100μg/mLの間で線形性が得られ;(R2=0.9928)、結合を、各試料の蛍光を試料タンパク質含有量で割った比率として表した。
統計分析。すべてのデータを、必要に応じて、対応のある、又は対応のないデータに関する両側スチューデントt検定により、統計的有意性に関して分析した。P値<0.05を有意と見なした。
結果。ALAFACは、ペニシリン、エリスロマイシン及びゲンタマイシンの最小阻止濃度を特に耐性株において低下させる。本発明者らは、いくつかのクラスの抗生物質に耐性がある肺炎球菌が、ALAFACによる死に対して同等に感受性であり、ALAFACが、これらの薬剤とは異なる作用メカニズムを使用することを示唆していることを、早期に示していた。この実施例に含まれたすべての菌株は、抗生物質に対して感受性であっても、又は耐性であっても、ALAFACに対して同じ最小阻止濃度(MIC)を有したので、このことはこの実施例において確認された。従って、感染性疾患における併用療法の漸増する使用に基づき、本発明者らは、ALAFACと一般的抗生物質との間の潜在的相乗効果の調査に興味を持った。
ALAFACの不在下で、ペニシリン化合物であるペニシリンGのMICは、ペニシリン感受性株の肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)株D39(血清型2)及びEF3030(血清型19F、中耳炎の小児由来)の両方に対して0.01μg/mlであった(表5)。ALAFAC亜阻止濃度(このバッチに対して15μg/ml又は0.75×そのMIC)の同時存在は、ペニシリンGのMICを1/5の0.002μg/mlに減少させた(図6A)。ALAFACによる増強が、ペニシリンGに対して耐性の肺炎球菌株においても当てはまるかどうかを調査するために、MICが4μg/mlであるペニシリン耐性血清型6A中耳炎株SP670を、同様の方法で試験した。0.75×MICのALAFACの存在下で、この菌株はペニシリンに対して感受性になり、1/20に低下した0.2μg/mlのMICを示し、これはペニシリン感受性株よりも有意なさらなる低下であった(P<0.05;表5)。
重要なことには、ALAFACによる増強は、この菌株をペニシリン感受性範囲に配置する能力を有し、この範囲においてペニシリンは、重ねて潜在的に有用な治療薬となる。
同じパターンが、マクロライド系エリスロマイシンに関しても当てはまった。0.75×MICのALAFACの添加は、感受性株D39に対するエリスロマイシンのMICを1/3に減少させ、エリスロマイシン耐性株JY53(pspA遺伝子座にエリスロマイシン耐性カセットを担持する)のMICを劇的に1/300(P<0.001)の0.01μg/mlに減少させ、この菌株をこの抗生物質に対して高度に感受性にし、ALAFACの存在下で非耐性D39株と同等に感受性させた(表5)。
最後に、肺炎球菌が比較的耐容性を示すアミドグリコシド系ゲンタマイシンのMICは、0.75×MICのALAFACの存在下で、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)D39及びEF3030の両方に対して1/4に減少した(図6B及び表5)。さらに、17μg/mlのALAFAC(MICの85%)の添加により、両方の菌株に対するゲンタマイシンのMICは1/8に低下し、亜阻止濃度のALAFACが、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)を、濃度依存的様式でゲンタマイシンに対して感作し得ることを示していた(表5)。これらの結果を組み合わせると、ALAFACが、さまざまなクラスの抗生物質の抗肺炎球菌効果を増強し、抗生物質耐性株において有意により優れた増強が起こることを示唆している。
ALAFACは、ゲンタマイシン、ペニシリン及びエリスロマイシンによる短期肺炎球菌殺菌を増強する。一般的抗生物質に対するALAFACの増強効果をさらに検証するために、本発明者らは短期殺菌アッセイを実施した。MIC値と同様に、抗生物質感受性とは関係なく、すべての菌株がALAFACに対して同等に感受性であり、各接種材料を1時間で根絶するためにMIC濃度のおよそ15倍の濃度を必要とし、ALAFACが、この実施例に使用した抗生物質とは異なる活性化メカニズムを使用することがさらに裏付けられた。
高濃度のゲンタマイシンは、接種材料を1時間のインキュベーション後に1.4log10減少させ、一方、ペニシリンG及びエリスロマイシンは両方とも、感受性株D39及びEF3030に対してそれぞれ5,000μg/ml及び1,000μg/mlの高濃度であっても、その期間にわたって単独では殺菌活性を欠いていた。従って、これらの抗生物質による処理は4時間にわたって実施した。これらの各実験に関して、ALAFAC及び各抗生物質を、インキュベーション時間にわたって、感受性株において1log10未満の殺菌を生み出すようにそれぞれ滴定し、次いでそれらの濃度を使用して併用処理を実施した。
ペニシリンGに関しては、1から100μgの濃度範囲を試験し、単独では殺菌活性を引き起こさない50μg/mlのALAFAC及び20μg/mlのペニシリンGを使用することで、最も良好な併用効果が見られた(図7A)。しかし、2種の薬剤の併用処理は、各薬剤単独の相加的殺菌よりも有意に高い殺菌をもたらし(P<0.05)、7.5log10の細菌接種材料のほぼ根絶をもたらした(図7A)。ALAFAC単独で同様の活性を得るためにはさらに5倍の高濃度が必要であり、ペニシリンはそれ自体では、50倍高い濃度(1,000μg/ml)でさえ4時間かけても2.6log10を超える殺菌はできなかった。増強効果は、D39株よりも20倍高いMICを有するペニシリン耐性株SP670においてもまた、同じ濃度のペニシリンG及びALAFACを使用して存在した(両方の薬剤単独の相加殺菌効果と比較してP<0.001;図7B)。ペニシリン濃度を30μg/mL(それ自体では殺菌活性を有さなかった)に増加することで、さらにより有効な相乗殺菌をもたらした(P<0.001;図7B)。
亜致死濃度のALAFACをエリスロマイシンと併用した場合、同様及びさらにより強力な効果が見られた。ペニシリンGと同様に、エリスロマイシン濃度(1−1,000μg/ml)の範囲を試験し、単独では殺菌活性を生み出さないが、ALAFACとの相乗効果を生み出す濃度を使用した。50μg/mlのALAFAC及び200μg/mlのエリスロマイシンの併用により、4時間後、各薬剤単独の相加的殺菌よりも有意に増加された殺菌がもたらされ(P<0.001)、接種材料のほぼ根絶がもたらされた(図7C)。100倍高いMICを表すエリスロマイシン耐性株JY53を使用した場合、同じ濃度での2種の薬剤による併用処理はいくらか有効性が低かったが、それでも各薬剤単独の相加的殺菌より有意に高い殺菌活性を引き起こし(P<0.05)、300μg/mlのエリスロマイシン(P<0.001)を、50μg/mLのALAFACと一緒に使用した場合、殺菌活性は細菌接種材料の完全な根絶まで高められ、エリスロマイシン耐性肺炎球菌の殺菌において非常に有意に相乗的であった(図7D)。
最後に、50μg/mlのALAFAC又は50μg/mlのアミドグリコシド系ゲンタマイシンを使用するALAFAC及びゲンタマイシンによる併用処理の効果は、2種の薬剤の相加的殺菌と比較して有意に強化された殺菌活性を誘導し(P<0.001)、細菌接種材料全体が、わずか1時間のインキュベーション後に根絶された(図7E)。ゲンタマイシンはそれ自体では、たとえ最大1,000μg/mlの濃度においても1.4log10を超える殺菌は不可能なので、このことには価値があった。
これらの結果を組み合わせると、ALAFACが抗生物質のいくつかのクラスと相乗効果を生み出す強力な殺菌増強剤として作用し、肺炎球菌の死を誘導するために必要な抗生物質濃度を有意に低下させ得ることを示唆している。
ALAFAC/抗生物質併用処理は、生体外のバイオフィルムの殺菌を増強する。生理的条件下で抗生物質機能に対するALAFACの増強効果の役割に取り組むために、本発明者らは、まず、バイオフィルムとして成長している肺炎球菌を、ALAFAC及び抗生物質による併用処理に供した。本発明者たちは、宿主の粘膜表面にコロニー形成する、又はこれに感染する肺炎球菌が、凝集性集団又はバイオフィルム中で主として成長し、凝集性集団又はバイオフィルムが抗生物質及び他の抗微生物剤に対して実質的に増加した耐性を示すことが公知であることを示した。
肺炎球菌のバイオフィルムを、あらかじめ固定された上皮基層の上に48時間、D39肺炎球菌により形成させた。本発明者らは、上皮細胞表面におけるバイオフィルムの成長が、非生物的表面で成長させたバイオフィルムより、高いバイオマス、高い抗微生物剤耐性及び生体内の鼻咽頭コロニー形成の間に観察されたバイオフィルムとのより高い構造的類似性を有するバイオフィルムもたらすことを示しているため、本発明者らは、非生物的基層ではなく上皮基層を使用した。さまざまな濃度のALAFAC及びペニシリン単独、又は併用を試験して、最適な相乗性を見出した。成熟したバイオフィルムを、それ自体では殺菌性でない250μg/mlのALAFAC及び100μg/mlのペニシリンで処理した場合、少なくとも3log10の細菌死により定義したとおり、効果は、8.3log10総バイオフィルムバイオマスのうち5.2log10肺炎球菌が殺菌されたことで有意に強化されており、これは2種の薬剤の相加効果より有意に高かった(P<0.05;図8A)。
ALAFACの抗バイオフィルム増強は、ペニシリン耐性株SP670を使用した場合より明らかであった。あらかじめ固定された上皮基層上に、この菌株により形成された成熟バイオフィルムは、ALAFAC(250μg/mL)又はペニシリン(100μg/mL)のいずれか単独による処理に対してほとんど完全な耐性を示した。しかし、ALAFAC及びペニシリンの併用により、2種の薬剤の相加効果より有意に高い、劇的かつ相乗的な殺菌効果が実証された(P<0.01;図8B)。
さらにより著しい結果が、エリスロマイシンに対して見られた。48時間形成され、エリスロマイシン単独(500μg/ml)で処理されたD39バイオフィルムは、殺菌効果を示さなかった(図8C)。対照的に、エリスロマイシンと250μg/mlのALAFACの併用は、抗バイオフィルム活性の相乗的増加をもたらし、バイオフィルムバイオマスのほぼ根絶をもたらし、これは両方の薬剤の相加効果より有意に高かった(P<0.05;図8C)。エリスロマイシン耐性株JY53に対する効果はそれほど著しいものではなく、500μg/mLのエリスロマイシンと250μg/mlのALAFACの併用による処理後により相加的な効果が観察され、各薬剤の相加効果と有意には異ならなかった(P=0.12;図8D)。
最後に、EF3030肺炎球菌により48時間形成された肺炎球菌のバイオフィルムを、100μg/mLのALAFAC及び200μg/mlもしくは500μg/mLいずれかのゲンタマイシン単独、又は併用で、3時間処理した。いずれのゲンタマイシン濃度も殺菌性ではなく、一方、両方の薬剤による3時間のバイオフィルムの併用処理は殺菌活性を誘導し、殺菌活性は、両薬剤の相加効果より、両方とも有意に高かった(それぞれ200及び500μg/mlのゲンタマイシンに関してP<0.05及びP<0.01;図8E及びF)。ALAFAC及びゲンタマイシン両方の併用による処理後3時間のEF3030バイオフィルムの走査電子顕微鏡法はまた、バイオフィルムの外観の著しい変化を実証し、上皮細胞基層由来のすべての付着細胞はほぼ根絶した(図8J)。対照的に、いずれかの薬剤単独による処理は、未処理のバイオフィルム(図8G)と比較して、付着細菌及びマトリックスの密度の最小の減少しか得られなかった(図8H及びI)。
抗生物質−ALAFAC併用処理を使用するマウスにおける鼻咽頭コロニー形成の根絶の増加。肺炎球菌は、無症候性コロニー形成の間に鼻咽頭において、抗菌処理に対して高度に耐性である複合バイオフィルムを生成する。従って、本発明者らは、生体内のマウスコロニー形成モデルにおいて従来の抗生物質の活性を増強するALAFACの能力を評価した。
肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)EF3030の細菌を、48時間鼻腔内に接種し、その後確立された細菌コロニー形成を、漸増用量のゲンタマイシン単独、又は50μgのALAFACとの併用で鼻孔において局所的に6時間、1回処理した。鼻洗浄液及び鼻咽頭組織の両方の細菌の生存率を、生菌数により測定した。ビヒクル単独(リン酸緩衝生理食塩水)により処理した、コロニー形成されたマウスは、4×106CFU/組織のコロニー形成率を示し、鼻洗浄液中における細菌の存在はおよそ1/10低かった(7×105CFU/ml)。ALAFAC単独で処理したマウスは、組織又は鼻洗浄液のいずれにおいても細菌負担の低下を示さず、一方、ゲンタマイシン単独は、鼻洗浄液において3μg/マウス及び鼻咽頭組織において10μg/マウスの用量で開始して、細菌負担の緩慢な減少を引き起こした(図9A及びB)。
しかし、2種の薬剤の併用により処理したマウスは、ゲンタマイシン単独により処理したマウスと比較して、鼻洗浄液により除去された細菌の有意に増加した死を示した(図9A)。ALAFACの存在下の細菌負担の統計的に有意な減少は、3μgのゲンタマイシン(150μg/ml)の用量で既に明らかであり、一方、ゲンタマイシン単独による鼻洗浄液関連細菌の根絶には10倍高い用量(1,500μg/ml)が必要であった。組織関連細菌はゲンタマイシンに対して高度に耐性であり、実質成長が、生体外の短期殺菌アッセイにおける殺菌用量の10倍である100μg(5,000μg/ml)の用量の後であっても検出された(図9B)。しかし、ALAFACの存在下では、組織関連細菌負担の同様の低下が1/33の用量のゲンタマイシン(3μg;図9B)を使用して得られた。
同じ手順、マウスを使用して、本発明者らは、鼻腔内に48時間、ペニシリン耐性株SP670によりコロニー形成させ、その後漸増用量のペニシリン単独、又は50μgのALAFACとの併用で、鼻孔において局所的に処理し、鼻洗浄液及び鼻咽頭組織中の細菌生存率を12時間後に評価した。未処理マウスは、各鼻咽頭組織に関連する約1×105CFUのコロニー形成率を示し、100μlの鼻洗浄液当たりわずかおよそ2×102CFUの存在を示した。ALAFAC処理単独は、肺炎球菌負担の低下をもたらさなかった。ペニシリン単独の用量を増加させて処理したマウスにおいて、組織関連細菌及び洗浄液関連細菌の両方が、最大100μgの鼻腔内用量(5,000g/ml)でペニシリン処理に対して完全に耐性であった(図9C及びD)。
対照的に、50μgのALAFACの存在下で、すべての洗浄液関連細菌のほぼ完全な根絶が、10μgペニシリンを使用して観察され(P<0.05)、10未満のコロニー形成単位/洗浄液が100μgペニシリンにおいて検出され、これは10μgの処理の効果と統計的に異ならなかった(図9C)。同様に、鼻咽頭組織のコロニー形成において有意な低下(2log10)が、1μgのペニシリン(50μg/ml)においてすでに見られ、同じ処理期間にわたってペニシリン単独で処理されたマウスと比べ1/100の用量であり、100μg/mlにおいてすべての細菌がALAFACの存在下で根絶され、ペニシリンG単独により観察されたコロニー形成に変化はなかった(図9D)。
これらの結果は、抗生物質活性に対するALAFACの増強効果が、生体内条件下で機能し、同じ抗生物質に対して耐性の株に対する抗生物質の効果を増強可能であるという事実を裏付けている。
肺炎球菌へのゲンタマイシンの取込み及び肺炎球菌とベータラクタム系抗生物質との結合に対するALAFACの効果。抗生物質活性のALAFACによる増強のメカニズムに取り組む最初の試みにおいて、本発明者らは、蛍光標識ゲンタマイシン及びベータラクタム系抗生物質Bocillin FL(ペニシリンVの蛍光性誘導体)の結合/取込み又は細胞会合に対する亜致死ALAFAC処理の効果を評価した。感受性D39肺炎球菌の細菌培養液を、レポーター抗生物質と一緒に亜阻止濃度のALAFACの存在下又は不在下でインキュベートした。抗生物質を細菌と会合させた後で、それらを洗浄し、ビーズビーティングにより溶菌させ、溶菌液の蛍光を決定して標準曲線と比較した。0.75×MICのALAFACの添加は、ゲンタマイシンの細胞会合レベルを2.58倍に有意に増加させた(P<0.001;図10A)。
対照的に、亜致死レベルのALAFACは、ベータラクタム系抗生物質Bocillin FLと感受性D39肺炎球菌との結合に対してほとんど影響を与えなかった。15μg/mLのALAFACの添加は、Bocillin FL単独により処理した細菌と比較して、Bocillin FLの結合を1.07倍に増加させ、これは有意に高かったが、生物学的に関連はなかった。結合のより劇的な増加は、ペニシリン耐性株SP670に対して見られ、ALAFACの添加がBocillin単独で処理した培養液と比較して結合を1.75倍に増加させたが、これは統計的に有意ではなかった(図10B)。
肺炎球菌の抗生物質に対するALAFAC誘導性感作は、カルシウム流入及びキナーゼ活性化を必要とする。抗生物質の接近の増加が、ALAFACが抗生物質の殺菌活性を増強する唯一の様式であるとは思われなかったので、本発明者らは、公知のALAFACのエフェクター機能をさらに分析した。ルテニウムレッドによるカルシウム輸送の阻害、アミロライド及びジクロロベンザミル(DCB)によるナトリウム/カルシウム交換の阻害及びスタウロスポリンによるキナーゼ阻害が、膜電位の喪失を減少させ、致死濃度のALAFACに応答した肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)におけるカルシウム流入を減少させ、肺炎球菌をALAFAC誘導性死から保護することがすべて示されている(図11A)。非致死濃度のALAFACを使用した場合、同じ活性化経路が、肺炎球菌におけるALAFAC誘導性抗生物質感作と関連があるかどうかを評価するために、本発明者らは、短期殺菌アッセイ(インキュベーション時間1時間)を、ゲンタマイシン及びALAFAC、又はペニシリンG及びALAFACの併用処理を使用して、スタウロスポリン(20μΜ)又はルテニウムレッド(30μΜ)の存在下で実施した。両方の阻害剤は、ゲンタマイシン及びペニシリンGの両方に対するALAFACの抗生物質増強効果を、完全に無効にした(図11B及びC)。これらの結果は、ALAFACが単独で殺菌活性を誘導した場合に使用した同じ経路が、ALAFACの抗生物質増強効果にとって重要な役割を果たすことを示唆している。
ALAFAC−抗生物質併用療法は、肺炎球菌の溶菌をもたらさない。ALAFAC及び細胞壁作用性抗菌剤を含む、肺炎球菌を殺す大部分の薬剤は、主要な自己溶菌酵素LytAを活性化させ、細菌の溶菌を誘導し、この溶菌は、処理時に細菌懸濁液が清澄化するので眼により容易に検出可能であり、OD600nmの継時的低下により測定できる。比較として、細菌のDNA、RNA又はタンパク質合成に作用する抗生物質は、未だ有意ではあるが低下した細胞溶菌レベルを示す。しかし、上記のALAFAC及びゲンタマイシンによる本発明者らの併用処理の間、本発明者らは、検出可能な溶菌を観察しなかった。この現象を定量化するために、肺炎球菌D39株の自己溶菌を、ALAFAC単独、又はALAFAC及びゲンタマイシン(各50μg/mL)による併用処理に応じて、光学密度を使用して定量化した。致死濃度(250μg/ml)のALAFAC単独は、接種材料の急速な溶菌を生み出し、一方、亜致死濃度のALAFAC及びゲンタマイシンの併用は、高濃度のALAFAC単独と同等レベル又は死を誘導するが、OD600に変化がなかった(図12A)。非殺菌濃度のALAFAC(50μg/ml)単独であっても、600nmにおける光学密度(OD600)にわずかな低下しかもたらさなかったが、一方、低濃度のゲンタマイシンは細菌を溶菌できなかった(図12A)。いずれかの薬剤単独、又は併用で処理後の肺炎球菌の走査電子顕微鏡法により、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)のALAFAC誘導性殺菌は、細菌細胞の自己溶菌をもたらしたが、ALAFAC及び別の抗生物質による併用処理は溶菌をもたらさず、無傷の細胞だけが観察されることが確認された(図12B)。併用処理による溶菌の欠如は、溶菌後の細菌成分に関連する宿主の炎症の減少において、宿主にとって有益であり得る。
ALAFAC併用処理は、ALAFAC誘導性死に耐性の種に対しても活性である。ALAFACの殺菌活性の研究の間に、本発明者らは、ALAFACに耐性の種が、ALAFAC処理に応答して細菌膜の脱分極を起こしたが、この脱分極が細菌の死を誘発しないことを観察した。脱分極及びイオン輸送もまた、死を誘発しないALAFACの濃度により処理された肺炎球菌において観察される。従って、本発明者らは、ALAFAC耐性種において誘導される膜のシグナル伝達が、抗生物質活性も増強できるかどうかの検査に興味を持った。従って、本発明者らは、抗生物質に対して高レベルの自然耐性を有する2種のグラム陰性呼吸器病原体、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)及びアシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanii)に関するMIC値を調査した。
M.カタラーリス(M. catarrhalis)7169株及びBC8株は両方とも、750μg/mlを超えるALAFACに関するMIC及び50μg/mlを超えるペニシリンに関するMICを有した。50μg/mlのALAFACの存在下で、ペニシリンに関するMICは7169株に関して1/32以下の1.56μg/mlに減少し、BC8に関して1/4以下の12.5μg/mLに減少した(表5)。ゲンタマイシンに関するMICは、両方の菌株において25μg/mlであった。50μg/mlのALAFACの存在下で、これらの菌株におけるゲンタマイシンのMICの減少もまた有意であるが、それほど著しくはなかった(約1/4;表5)。同様に、1,000μg/mlを超えるALAFACに関するMIC及び100μg/mlを超えるペニシリンに関するMICを有するA.バウマニ(A. baumanii)AB307及びAB979の処理は、50μg/mlのALAFACの存在により、両方の菌株に関するペニシリンのMICが1/4に減少した(表5)。ゲンタマイシンに関するMICは、AB307株及びAB979株に関してそれぞれ36μg/ml及び2.5μg/mlであり、50μg/mlのALAFACの存在下でそれぞれ1/8及び1/2に低下した(表5)。ゲンタマイシンに対するすべての種のALAFACの増強効果は、30μΜのRuRの存在下で無効になり、肺炎球菌においてALAFACにより活性化される同じメカニズムが、他の細菌種においても活性化されることを示唆していた。
これらの結果を組み合わせると、ALAFACが、ALAFACの殺菌効果に耐性である菌株において抗生物質の効果を増強できることを示しており、肺炎球菌における細菌の死及び抗生物質の増強の両方にとって重要な初期脱分極及びイオン輸送事象が、他の生物において活性化されることを示唆している。
この実施例において、本発明者らは、亜致死レベルのHAMLETが、肺炎球菌及びHAMLET耐性種の両方に対する、3種の異なるクラスに属する広域抗生物質の効力を劇的に増加させ、それらのMICを減少させ、短期殺菌活性を増加させ、ならびにバイオフィルム成長及び鼻咽頭のコロニー形成に対する効果を増加させ、抗生物質耐性株に対して最も高い効力を有することを示した。
本研究は、報告されているよりもより強力な併用処理の増強効果を示し、さらにタイム・キル・アッセイ(time-kill assay)における有意な相乗効果を得るために必要な時間が、他の研究者により報告される時間より著しく短いという有利性を有し、急速な相乗効果が、HAMLETとゲンタマイシンとの併用においてわずか1時間程度、HAMLETと、エリスロマイシン又はペニシリンとの併用に関して4時間以内に検出されたことを示した。病原体の不活性化に必要な時間の短縮により、さらなる感染症の確立の可能性が低減される。
現在の推定により、すべてのヒト細菌感染症の65%より多くが、バイオフィルムとしての微生物成長の結果であることが示唆されている。優れた生体外活性を有する抗微生物剤の可用性にもかかわらず、肺炎球菌バイオフィルム感染症の治療は不確実なままである。肺炎球菌のバイオフィルムは感染症及びコロニー形成の両方に現在関連付けられており、感染症及びコロニー形成において、肺炎球菌のバイオフィルムは生体外及び生体内の両方において抗生物質に対して10から100倍の耐性になる。従って、結果は、HAMLETが耐性集団に対するβ−ラクタム系及びマクロライド系抗生物質の有効性を取り戻す可能性を有し、それらの有用な寿命及び範囲を拡大し、集団中の耐性の広がりについての選択圧を低くする、抗生物質感受性種の治療用量を潜在的に低下させることを示唆している。
従来の抗生物質と毒性副作用をまったく示さない抗癌療法としてマウス、ラット及びヒトにおいて既に使用されている母ミルク天然成分を組み合わせること、従って、別々のメカニズムにより細菌を同時に標的化することにより、各活性化合物を個別に使用した場合よりも大きな抗微生物活性が相乗的に生み出される。これは、HAMLET又はHAMLETの活性化経路を使用して、抗生物質治療を増強し、さまざまな疾患の原因である種の抗生物質耐性株を潜在的に治療し、現在の治療の蓄積の使用を拡大する可能性を開く。
実施例3
この実施例は、ALAFACの増強能力の別の例示である。この実施例において、本発明者らは、ALAFACが、抗生物質(メチシリン、バンコマイシン、ゲンタマイシン及びエリスロマイシン)の多剤耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する広域活性を増加させ得る抗微生物アジュバントとして作用し、従って、浮遊及びバイオフィルムの細菌に対する抗微生物アッセイ及び鼻咽頭コロニー形成の生体内モデルの両方において、多剤耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)がそれらの同じ抗生物質に対して感受性になることを実証する。いずれの特定の理論にも縛られることを意図するものではないが、本発明者らの結果は、ALAFACが、プロトン勾配を消散させ、細胞膜を部分的に脱分極させるナトリウム依存性カルシウム流入を誘導することによって、これらの効果を特異的に発揮することを示している。これらの効果は、ペニシリン、ゲンタマイシン及びバンコマイシンの細胞会合型の結合及び/又は取込みの増加を、特に耐性株においてもたらす。最後に、ALAFACは、抗生物質による選択圧(antibiotic pressure)下で見られる増加したメチシリンの耐性を阻害し、細菌はアジュバントに対して耐性にはならず、これは、この分子の主要な有利な特長である。これらの結果は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)の薬剤耐性株に対する抗生物質の臨床的有用性を増加させる可能性を持つ、新規な抗微生物アジュバントとしてのALAFACを強調している。
この実施例において、本発明者らは、メチシリン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン及びバンコマイシンを含む広域の抗生物質を、多剤耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して生体外及び生体内で使用した。本発明者らはまた、MRSA集団を漸増濃度の抗生物質に曝露した場合、ALAFACがメチシリン耐性が増加したクローンの発生を阻止すること、及び細菌がALAFACの阻害効果を克服できないことを示す。
材料及び方法。試薬。細胞培養試薬、Bocillin FL及びAlexa Fluor 488標識キットは生体外gen、カールスバッド、カリフォルニアから入手した。細菌及び細胞の培養培地ならびに備品はVWR Inc、ラドナー、ペンシルベニアから入手した。羊血は、BioLink, Inc、リヴァプール、ニューヨークから購入した。全ての抗生物質及び残りの試薬は、Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリから購入した。メチシリン及びゲンタマイシンのストックは水に懸濁し、エリスロマイシン及びバンコマイシンのストックはエタノールに溶解した。抗生物質のストックを、アッセイに使用する前にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4で少なくとも100倍に希釈した。
ALAFACの生成。ALAFACを、EDTA処理された、部分的にフォールドされていないαラクトアルブミンを、記載の通りに、オレイン酸(C18:1)の存在下でアニオン交換マトリックスにおいて安定なタンパク質−脂質複合体に変換することによって生成して、すべての実験のためにPBSに再懸濁した。
細菌株。ブドウ球菌株を、トリプシン大豆ブロス(TSB)において記載の通りに成長させた。黄色ブドウ球菌(S. aureus)のMRSA及びVISA株の使用は、the Biosafety Committee at the University at Buffalo、SUNYにより承認された。Network on Antimicrobial Resistance in Staphylococcus aureus(NARSA)株NRS1、70、71、100、123、384(すべてMRSA株)、MRSA株10307570及びMSSA株11090306は、Dr. Alan Lesse、University at Buffalo、SUNYのご厚意により提供された。
生体外感受性試験。最小阻止濃度(MIC)を、96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、微量希釈法を前記のようにCLSIの承認基準に従って使用して決定した。しかし、Mueller-Hintonブロスではなく、トリプシン大豆ブロス(TSB)を感受性試験に使用したが、それはTSBがブドウ球菌の成長に使用される一般的培地であり、ブドウ球菌に対して試験した場合、さまざまな抗微生物剤に対してより一貫した結果を示すためである。従来のMueller Hintonブロスを使用した場合、およそ20%多くのALAFACがTSBにおいて見られるのと同等のアジュバント活性に必要であるため、このことはALAFACに対しても当てはまった。抗生物質の2倍段階希釈液を3連で、ALAFACの存在下又は不在下で96ウェルマイクロタイタープレートに調製し、各ウェルに最終細菌濃度105CFU/mLを播種し、24時間、37℃においてSynergy2マイクロプレートリーダー(Biotek、ウィヌースキー、バーモント)中でインキュベートし、このマイクロプレートリーダーは、600nmにおける光学密度(OD600)を5分ごとに記録し、細菌成長をモニターした。MICを、OD600において増加が検出されなかった抗微生物剤溶液の最も低い濃度として定義した。イオン阻害剤に関するMICアッセイに関しては、ルテニウムレッド(RuR;30μΜ)又はアミロライド(1mM)を、ALAFAC(100μg/mL又は6μΜ)との併用においてのみ成長を完全に阻止するメチシリン濃度(4μg/mL又は10μΜ)と一緒に使用した。
最小殺菌濃度(MBC)を、目に見える成長が無いすべてのウェル及び最も高い抗微生物剤濃度であるが依然として眼に見える成長を示すウェルから、10μLのブロスを羊血寒天プレート上にプレーティングすることによって、MICアッセイプレートから記載のように決定した。MBCを、記載のように、(接種直後の成長対照ウェル由来のコロニー数により決定した)初期接種材料のコロニー数の0.1%未満(3log10の減少)をもたらす抗微生物剤の最も低い濃度として定義した。
静的バイオフィルムモデル。ブドウ球菌をTSB中で中期対数増殖期(OD600=0.5)まで成長させ、洗浄し、新鮮なあらかじめ温めた培地に、500μl体積中2×l04CFUの密度に再懸濁し、懸濁液を使用して、ポリスチレンの24ウェルプレートに播種した。細菌を37℃において12時間培養し、その後バイオフィルムをPBSで洗浄し、浮遊細菌を除去して、表示濃度のALAFAC及び/又は抗生物質を含むTSBに、24時間、37℃において曝露した。その後、バイオフィルムをPBSで洗浄し、超音波処理し、100μLのPBSの存在下で表面を削り取ることによって取り外し、次いで100μLのPBSですすいだ。収集した細胞を高速で20秒間、2回ボルテックスにより混合し、分散したバイオフィルム細胞をまず顕微鏡により確実に適切に分散していることを観察して、その後、10倍希釈系列で希釈して、100μlの各希釈液を血液寒天プレートにプレーティングして、37℃において一晩成長させた後、生存CFU/mlを決定した。20−200のコロニーを有するプレートからのコロニー数を使用して、生存数を決定し、コロニー形成単位の総数/バイオフィルムとして報告する。
ゲンタマイシン及びペニシリンの生体内におけるALAFACによる増強。Jackson Laboratories(バーハーバー、メイン、米国)による6週齢の雌のBALB/cByJマウスを、フィルター・トップ・ケージにおいて、標準的な実験動物試料及び水の自由摂取で使用まで飼育した。
マウスに、記載の通りにコロニー形成させた。簡潔には、PBS中5×l07CFUのNRS70ブドウ球菌を含有する10μlの細菌懸濁液を、麻酔をかけていないマウスの鼻孔にピペットで注入した。24時間後、マウスを、20μlのメチシリン(0−100μg又は0−5,000μg/mL)により、20μl(100μg)のALAFACの存在下又は不在下で鼻孔中12時間処理した。その後、コロニー形成負担を、動物を安楽死させた後で、100μLのPBSをマウスの気管に注入し、鼻孔から流れ出たものを収集することによって得られた鼻咽頭洗浄液中及び鼻洗浄後に回収された鼻咽頭組織由来の両方の生菌を数え上げることによって評価した。鼻咽頭組織を、記載のように上部頭蓋骨を除去し、鼻甲介に存在する組織を鉗子により回収することによりバラバラにした。細菌負荷を、鼻洗浄液又はホモジネートされた組織から、上記のように生存プレートカウントを決定することによって測定した。
膜電位の評価。TSB中で対数後期まで成長させたブドウ球菌を、2,400×gにおいて10分間遠心分離によってペレット化し、PBSに再懸濁することによって2回洗浄した。細菌ペレットを、元の体積の半量までPBSに再懸濁して、50mMのグルコースにより、15分間、37℃においてエネルギーを与えた。ブドウ球菌膜の膜電位を測定するために、500nMのDiBAC4(3)(ビス−(1,3−ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール;Molecular Probes、ユージーン、オレゴン、米国)を加えた。96ウェルプレートにおいて、次いで、100μLの体積のこの細菌懸濁液を、ビヒクル単独又はALAFAC及び抗生物質併用を含有する100μLのPBSに、特定のイオン輸送阻害化合物の存在下又は不在下で加え、最終濃度25mMのグルコース及び250nMのiBAC4(3)/ウェルを得た。Triton X-100(0.1%;Sigma-Aldrich)を膜の脱分極及び破壊に関する陽性対照として使用した。次いで、プレートを、あらかじめ温めた(37℃)Synergy2 Multi-Mode Microplate Reader(BioTek)に迅速に配置し、このプレートリーダーは、DiBAC4(3)(485/20nm励起、528/20nm放射)からの蛍光読み取り値を、1分ごとに1時間記録した。未処理対象とALAFAC処理試料との間の蛍光強度の差を、「阻害剤非含有」試料及び「阻害剤」試料に関して60分後の値を使用して計算した。その後、「阻害剤」試料に関する蛍光強度の差を、ALAFAC単独(「阻害剤非含有」)試料と比較した強度の倍率変化として表して、「ALAFAC単独」試料と比較した脱分極の程度を提供した。
放射性同位元素45Ca2+輸送アッセイ。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を対数期まで成長させ、3回洗浄し、0.5mMのCaCl2(CaPBS)を含有する1×PBSに再懸濁した。ATPアーゼポンプによるCa2+の押出しにより生み出される干渉を最小化するためにグルコースは添加しなかった。45CaCl2(PerkinElmer;ウォルサム、マサチューセッツ、米国)を最終濃度2.5μCi/mLで細胞に加え、次いで、阻害化合物を加え、添加ごとに2分の平衡時間を与えた。未処理のベースライン試料を、この時点で測定した。その後試料を分割して、ALAFACをチューブの1つに加え、45Ca2+の取込みを様々な間隔で測定した。各試料に関して、CaPBSに予浸したMillipore 0.3μmのPHWPフィルター(EMD Millipore;ビレリカ、マサチューセッツ、米国)に100μLを分注して、9mLのCaPBSにより、Millipore Swinnex(登録商標)フィルターホルダーを介したシリンジろ過によって直ちに洗浄した。フィルターを、5mLのシンチレーション流体を含むシンチレーションバイアルに配置し、CPMをWallac 1409液体シンチレーションカウンター(Wallac Oy、トゥルク、フィンランド国)において検出した。上記の結果は、ALAFAC処理試料と未処理試料との間の差として、各試料に関する表示時点において計算されたΔCPMとして表した。
細胞内pH測定。細胞内pH(pHi)測定に関して報告されたプロトコルを、様々な染料濃度及び染色時間の効果を対数中期に成長させた黄色ブドウ球菌(S. aureus)分離株NRS384の測定された蛍光に対して試験することによって、黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して修正し、最適化した。細胞試料を、漸増濃度の、二重励起レシオメトリックpH指示染料BCECF(2’,7’−ビス−(2−カルボキシエチル)−5−(及び6)−カルボキシフルオレセイン)の膜浸透性アセトキシメチル(AM)エステル誘導体に、30分間、30℃において供した。蛍光を、530nmにおける蛍光と、490及び440nmにおける2重の波長励起との比として測定し、較正曲線を、独立した実験それぞれに関して確立した。数多くのローディング濃度を試験後、本発明者らは、20μΜより高い濃度を使用した場合、蛍光比が、概して一定のままであることを観察した。従って、25μΜのBCECF−AMを、すべての実験に対して使用した。最適化された染色時間である30分を、同じ基準を使用して決定し、すべての実験に対して使用した。ローディング後、細胞を、遠心分離によりPBSで2回洗浄し、得られたペレットをもとの体積までPBSに再懸濁し、ALAFAC及びALAFAC/抗生物質の併用を加えた。CCCPを陽性対照として加えた。CCCPは、プロトン化型及び脱プロトン化型の両方において膜の脂質ドメインに可溶性である、親油性の弱酸である。このことが、CCCPを、H+の細胞質への流入を引き起こし、内膜全域にわたる電位及びH+勾配の両方を消散させる、プロトノフォアとして作用可能にする。各実験に関して、細胞を、6.5から8.0の範囲のさまざまなpH値で高[K+]バッファーに再懸濁して、較正を実施した。ナイジェリシン(20μΜ;両方のイオンに対していくらかのイオノフォア活性を有するカリウム/水素の逆輸送)及びバリノマイシン(20μΜ;カリウムのイオノフォア)を、試料に組み合わせて加え、較正の間及び各実験の終了時の両方の標準曲線の作製のために、記載のように細胞のpHiと周囲のバッファーのpHとを平衡させ、実験バッファーのpHを明らかにした。
膜完全性アッセイ。膜完全性に対するALAFACの効果を評価するために、ブドウ球菌を、表示濃度のALAFAC及び抗菌剤に50分間、37℃においてPBS中で曝露した。広範囲の膜破壊を引き起こすことが公知である洗浄剤のTriton X-100(0.1%)を対照として使用した。処理後、可溶性成分(DNA RNA及びタンパク質)の漏出を、細胞懸濁液を13,000×gにおいて5分間、遠心分離した後に得られる上清から、BioTek Synergy2プレートリーダー及びTake3 microdrop addition(Biotek)において260nmにおける吸光度を測定することによって測定した。小分子ATP(MW507)の細胞性放出をATP測定キット(生体外gen)を使用して、同じ上清から測定し、このキットは、ATPの分解を必要とする工程である、ルシフェラーゼによるルシフェリンの酸化から生成されるオキシルシフェリンの発光を測定する。膜不浸透性DNA結合染料のヨウ化プロピジウム(MW668)の取込みを、Synergy2マイクロプレートリーダー(BioTek;528/20nm励起、605/20nm放射)における50分後の細菌懸濁液全体の蛍光強度により測定した。適用可能な場合、抗菌剤単独の存在下で独立した読み取り値も採取して、電位のバックグラウンド漏出の補正を可能にした。
ゲンタマイシンとAlexa Fluor 488とのコンジュゲーション。ゲンタマイシンとAlexa Fluor 488とのコンジュゲーションを、Alexa Fluor 488−コンジュゲーションキット(生体外gen)を使用して実施し、製造業者の取扱説明書に記載の通りに適合させた。簡潔には、Alexa Fluor 488エステルを、0.1Mの重炭酸ナトリウム、pH8.3及び10mg/mLのゲンタマイシンの急速に撹拌された溶液に加え、5時間、4℃においてインキュベートした。ゲンタマイシン/Alexa Fluorはモル比10:1で使用し、多置換のAlexa-Fluor 488−ゲンタマイシンコンジュゲートの形成を最小化した。コンジュゲートされたゲンタマイシンを、備え付けの脱塩樹脂を使用して未反応の色素から分離した。コンジュゲーションの効率を、染料のモル/モル ゲンタマイシンを測定することによって決定した。コンジュゲートされた抗生物質の吸光度を494nmにおいて決定し、494nmにおけるAlexa Fluor 488のモル吸光係数である71,000M−1cm−1及び試料中のゲンタマイシンの濃度(樹脂により精製後80%の最小保持率に基づき推定)で割った。コンジュゲーション効率は、使用したバッチにおいて1.2モルAlexa Fluor 488/モル ゲンタマイシンであった。コンジュゲートされたゲンタマイシンは、その抗微生物活性を保有していることが示され、使用まで4℃において保存された。
ゲンタマイシン、バンコマイシン及びBocillin FLの結合。本発明者らは、Alexa Fluor 488−ゲンタマイシン、バンコマイシンFL及びBocillin FLをレポーター抗生物質として使用する前記方法を適合させ、これらの化合物とブドウ球菌細胞の会合を調査した。簡潔には、表示の菌株を、TSBにおいてOD600nmが0.5になるまで成長させた。抗生物質を下記の濃度:ゲンタマイシンが50μg/mL、バンコマイシンFLが20μg/mL、Bocillin FLが25μg/mLを単独で、又は100μg/mLのALAFACと併用して加えた。
30分後、培養液を9,000×gにおいて4分間遠心分離にかけ、PBSで4回洗浄し、少量のPBSに再懸濁した。細胞を、それぞれ記載のように、−80℃及び37℃、5分間の5回連続の凍結解凍サイクルにより溶菌した。Bocillin FL、バンコマイシンFL又はAlexa Fluor 488−ゲンタマイシンの濃度は、Synergy2マイクロプレートリーダー(Biotek)において、励起及び放射波長をそれぞれ485及び530nmに設定して、蛍光材料の量を測定することによって決定した。Alexa Fluor 488−ゲンタマイシンに関しては2及び800μg/mLの間で;(R2=0.9983)、Bocillin FLに関しては0.5及び100μg/mLの間;(R2=0.9928)及びバンコマイシンFLに関しては0.25及び50μg/mLの間;(R2=0.9919)で線形性が得られ、結合は各試料の蛍光を、BioTek Synergy2プレートリーダー及びTake3 microdrop addition(Biotek)を使用して、280/260nmの比により決定した、試料のタンパク質含有量で割った比として表した。
ALAFAC及びメチシリン耐性の発現。液体培養中のメチシリンへのMRSAの適合に対するALAFACの影響を試験し、抗生物質選択圧の間の耐性の増加を阻害するALAFACの潜在力を試験する実験を設計した。ALAFAC(100μg/ml又は6μΜ)の不在下又は存在下で2倍漸増濃度のメチシリン(1−512μg/ml又は2.5−1,350μΜ)を含有する一連のチューブを、MRSA(NRS384;107−108cfu/ml接種材料)と一緒に、上記のMICの決定に関して記載したようにインキュベートした。12時間のインキュベーション後、最も高い抗生物質濃度を含有するが未だに濁りを示すチューブからの0.1mLの試料を用いて、ALAFACの存在下及び不在下で、同じ抗生物質の1組の段階希釈系列を含有する、新しい一連のチューブに接種した。実験は、10サイクルにわたって実施した。各サイクル後、最も高い抗生物質濃度を含有するが未だに濁りを示すチューブ由来のさらなる0.1mLの細菌を、PBSで2回洗浄し、抗生物質及びALAFACを取り除いた。その後、これらの細菌を使用して、6μΜのALAFACの不在下又は存在下で、別々のアッセイにおいて上記のようにMICを決定した。これらのアッセイは図18のMIC値を提供し、本発明者らが、メチシリンへの適合に対するALAFACの効果及びALAFACのアジュバント活性に対するこれらの細菌の応答を評価することを支援した。
統計分析。データを、対応のないデータのための両側スチューデントt検定により、統計的有意性に関して分析した。P値<0.05を有意と見なした。
結果。抗生物質に対するALAFACによる生体外の感作活性。標準的なチェッカーボード法によるブロス微量希釈アッセイを使用して、ALAFACが、細胞壁合成を標的とする抗生物質(メチシリン及びバンコマイシン)ならびにタンパク質合成を標的とする抗生物質(エリスロマイシン及びゲンタマイシン)に対する細菌の感受性に干渉するかどうかを試験した。ALAFAC単独では、5,000μg/mlを超える濃度においても被験黄色ブドウ球菌(S. aureus)株のいずれに対しても活性は有さなかった。しかし、100μg/mL(6μΜ)程度の低い濃度のALAFACの存在下で、すべての被験黄色ブドウ球菌(S. aureus)株はメチシリン(図13、表6)、バンコマイシン、エリスロマイシン及びゲンタマイシン(表6)の成長を阻止する最小濃度(MIC)が1/2から1/16までに減少し、これらの同じ抗生物質の最小殺菌濃度(MBC)が1/2から1/32までに減少(表6)することを示した。このアッセイはそれぞれ128及び256μg/mlを超えて行わず、その濃度においてもいくつかの菌株は未だ正常に成長したので、MIC及びMBCの減少のいくつかはより大きかった可能性が十分ある。このアッセイにおける6μΜのALAFACの添加は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)のメチシリン感受性株(MSSA)と比較して、耐性株においてより大幅にメチシリンに対するMICを低下させた。さらに、MRSA及びMSSA株両方に関して、ALAFACの存在下のMBCの倍率低下は、概してMIC濃度の低下より著しかった(表6)。これは、ALAFACを、ゲンタマイシンを除く他の抗生物質と併用して加えた場合にも観察され、ゲンタマイシンはALAFACの存在下でMICのより著しい減少を示し、MBCに対しては効果が低かった(表6)。
6μΜのALAFACは、3種の菌株を、メチシリン及びゲンタマイシンに対して感受性にすることができたが(表6)、この濃度は、残りの菌株を感受性にするためには不十分であった。しかし、漸増濃度のALAFAC(多くても54μΜが必要)を使用して、すべての抗生物質耐性株を、メチシリン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン及びバンコマイシン感受性に変換することができた(表6、最後の列)。
MIC及びMBCアッセイと同様に、対数中期(およそ108CFU/ml)まで成長させた細菌の、抗生物質単独、又はALAFACとの併用による処理は同じ表現型をもたらし、その表現型は即時静菌効果、次いで、ALAFACが存在する場合、より低濃度の抗生物質で6時間のインキュベーション後に殺菌活性を伴った。これらの結果を組み合わせると、ALAFACが、さまざまなクラスの抗生物質の抗ブドウ球菌効果を増強し、抗生物質耐性株において有意により優れた増強が見られることを示唆している(表6)。
ALAFACは、生体外でバイオフィルムのメチシリン及びバンコマイシンによる殺菌を増強する。より生理学的な条件下で抗生物質機能に対するALAFACの効果の役割に取り組むために、本発明者らは、黄色ブドウ球菌(S. aureus)のバイオフィルムに対する抗生物質活性へのALAFACの増強効果をまず調査した。黄色ブドウ球菌(S. aureus)のバイオフィルムを、MRSA株NRS70及びMSSA株11090306により、一晩ポリスチレンプレートに形成させた。ブドウ球菌バイオフィルムを含む細菌バイオフィルムは、大部分の抗微生物剤に本質的に耐性なので、各薬剤のより高い濃度が、殺菌効果を見るために必要であった。200μg/mL(12μΜ)のALAFA又は250μg/mL(660μΜ)のメチシリン単独のいずれかを使用しても、24時間にわたって殺菌活性を誘導できず(図14A)、一方これらの薬剤を併用した場合、殺菌効果(>3log10の生菌数減少)が、MRSA及びMSSA両方のバイオフィルムに対して観察された(図14A)。
ALAFACは、バンコマイシンと併用した場合、バンコマイシン非感受性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(VISA)株NRS1又はバンコマイシン感受性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(VSSA)株NRS384により形成されたバイオフィルムに対してあまり活性ではなかった。これらの菌株により形成されたバイオフィルムは、32μg/mL(21μΜ)のバンコマイシン単独による処理に対してほぼ完全に非感受性を示し、公開されているデータと同様であったが、ALAFAC及びバンコマイシンの併用により、24時間にわたるブドウ球菌のバイオフィルム細菌の死の増加が実証され、NRS1に関しては有意であったが(P<0.05)、NRS384に関しては有意でなかった(図14B)。
最後に、本発明者らはゲンタマイシン耐性株NRS1及びゲンタマイシン−感受性株NRS384に対する、ゲンタマイシンとALAFACとの併用効果を試験した。ALAFAC(500μg/ml;30μΜ)もゲンタマイシン(50μg/ml;105μΜ)も単独ではいずれの菌株の生存率にも効果がなかったが、併用により、細菌の生存率の喪失の有意な増加を生み出した(両方の菌株に関してP<0.05;図14C)。
ALAFAC及びメチシリンによる生体内における鼻MRSAコロニー形成の減少。生体内におけるMRSAコロニー形成に対するALAFAC/抗生物質併用処理の効力を決定するために、マウスに、MRSA NRS70により24時間コロニー形成させ、ALAFACの存在下又は不在下で、バッファー(PBS)又はメチシリンいずれかの単回用量により処理した(図15)。100μgのメチシリンを投与しても、バッファー単独により処理した対照群と比較して、鼻粘膜に関連する細菌負担を有意に減少できなかった。対照的に、同様の量のメチシリンを100μgのALAFACと併用して投与すると、鼻咽頭組織におけるMRSAのコロニー形成に有意な低下を引き起こした(P<0.05)。この効果は、100μgのALAFACの存在下で、より低用量のメチシリン(10μg)を試験した場合にも検出された(P<0.05)。
ALAFACのアジュバント活性は、ナトリウム依存性カルシウム流入を必要とする。肺炎球菌に対するALAFACの殺菌活性はナトリウム依存性カルシウム流入と関係があり、この流入が細菌死の活性化をもたらさない、ブドウ球菌を含むある範囲の細菌種においても誘導される。従って、本発明者らは、このイオン輸送メカニズムが、黄色ブドウ球菌(S. aureus)におけるALAFAC誘導性感作においてある役割を果たし得るという仮説を立てた。
本発明者らは、カルシウム輸送阻害剤のルテニウムレッド(RuR)及びALAFACに応答して肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)におけるカルシウム流入を減少させ、膜電位を喪失させるナトリウム輸送阻害剤のアミロライドの存在下でMICアッセイをまず実施した。本発明者らは、いずれの阻害剤を添加してもブドウ球菌に対するALAFAの抗生物質増強効果を完全に無効にし(図16A)、ALAFACによる増強に関係する膜の脱分極も完全に無効にする(図16B)ことを見出した。ALAFAC誘導性膜脱分極がCa2+輸送に関係することを確認するために、本発明者らは、Ca2+の取込みを放射性同位元素の45Ca2+を使用して直接モニターした。細胞内Ca2+は、ALAFACの添加により直ちに上昇し、RuR処理細胞においてほぼ完全に阻止された(図16C)。
ALAFACが膜の損傷を引き起こさなかったことが、細胞内の細菌DNAのヨウ化プロピジウム染色又は培養上清へのATP、DNA又はRNAの漏出の欠如(それぞれ、ルシフェラーゼアッセイ、又は260nmにおける上清の吸光度により、材料の項に記載のように測定した、データ未掲載)により示されるので、この効果は膜完全性に対していずれの効果とも無関係であった。ALAFACは、これらのアッセイに使用した濃度より50倍高い濃度であっても黄色ブドウ球菌(S. aureus)を殺すことはできないので、このことは驚くことではなかった。これらの結果は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)のALAFAC誘導性感作が、ブドウ球菌膜の膜貫通電位の急速な脱分極をもたらすナトリウム依存性カルシウム流入を必要とし、膜の破壊には関係しないことを示唆している(図16C)。
ALAFACは、プロトン輸送力の消散を誘導する。膜電位に対するALAFACの観察された効果は、抗生物質耐性に関係する膜機能の他の態様の検査に、本発明者らを駆り立てた。プロトン輸送力は、上で測定された膜貫通電位及び膜貫通化学的プロトン勾配の両方により構成され、これらは両方とも薬剤排出にとって重要である。膜貫通プロトン勾配に対するALAFACの効果を評価するために、本発明者らは、ALAFAC曝露後の細胞の細胞内pHを測定した。代表的実験を図16Dに示す。陽性対照として、水素−イオノフォアのCCCPを加えた(1番目の矢印−青色のライン)。ALAFACの添加(1番目の矢印−赤色のライン)は、急速な細胞内の酸性化及びpH勾配の消散を同様にもたらした。ルテニウムレッド(紫色のライン)又はアミロライド(緑色のライン)との細胞の予備インキュベーションは、pH勾配のALAFAC誘導性消散を完全には阻害せず(1番目の矢印)、ナトリウム依存性カルシウム輸送及びプロトン勾配の消散が、部分的に平行又は連続している可能性を示唆している。各実験の終了時に(2番目の矢印)に、pH勾配は、ナイジェリシン及びバリノマイシンの組み合わせを使用して完全に消散され、外部バッファーのpHiを誘導した(プロトン輸送力の完全な消散)。結果は、ALAFACがプロトン勾配を有効に消散したことを示す。
ALAFACは、ゲンタマイシン、バンコマイシン及びベータラクタム系抗生物質とブドウ球菌細胞との会合を増加させる。ALAFACはプロトン輸送力を消散させ、プロトン輸送力は多剤排出ポンプ機能と緊密に関係しているので、本発明者らは、蛍光標識したゲンタマイシン、バンコマイシン及びベータラクタム系抗生物質のBocillin FL(ペニシリンVの蛍光性誘導体)の結合/取込みに対するALAFAC処理の効果を評価した。MICアッセイの結果を踏まえて、本発明者らは、100μg/mLのALAFACの添加が、Bocillin FLとメチシリン感受性株との会合の有意な増加をもたらさなかったが、一方、ALAFACのメチシリン−耐性株NRS384への添加は、Bocillin FLの会合を、Bocillin FL単独により処理した培養液と比較して有意に増加させることを見出した(P<0.01;図17A)。
同様に、ALAFACの添加は、バンコマイシン感受性株においてバンコマイシンの細胞会合レベルを増加させなかったが、VISAのNRS1株との会合を有意に増加させた(P<0.01;図17B)。ALAFACの添加はさらに、ゲンタマイシンの細胞会合レベルをNRS384株において2.6倍増加させたが、有意な程度ではなかった(データ未掲載、P=0.09)。これらの結果を組み合わせると、膜機能に対するALAFACの効果が、抗生物質と細菌細胞の会合を、特に耐性株に関して増加させたことが示唆される。
ALAFACは、黄色ブドウ球菌(S. aureus)においてメチシリン耐性の発現を抑制し、黄色ブドウ球菌(S. aureus)はALAFACのアジュバント活性に対する耐性を発現しない。抗生物質耐性は、漸増濃度の抗生物質に繰り返し曝露されることにより誘導及び強化され、このことは臨床治療中に大きな意味を有し得る。従って、繰り返し曝露時に耐性の発現を減少させることにより、有意な臨床的有益性がもたらされる。耐性発現に対するALAFACの増強効果を評価するために、MRSAのメチシリンに対する耐性発現に関するALAFACの影響を、液体培養において試験する実験を設計した。
ALAFACの不在下で成長させたNRS384培養液に関して、漸増濃度のメチシリンと8サイクル連続インキュベーションした後で、メチシリンのMICは16μg/mlから512μg/mLに増加した(図18−青色のライン)。驚くべきことに、低濃度のALAFAC(100μg/mL;6μΜ)の添加は、この菌株のメチシリン耐性の増加を大幅に減少させた。10サイクルの後、この培養液は、わずか64μg/mLのメチシリンMICを有した(図18−青色の斜線)。ALAFACがMIC試験の間に存在した場合、この菌株が成長できた最も高いメチシリン濃度は8μg/mlであり、漸増濃度の抗生物質のサイクルにこの菌株を暴露する前に観察されたのと同じ倍率減少(1/8)であり、10サイクルを超える100μg/mLのALAFAC中での連続インキュベーション後であっても、ALAFACのアジュバント活性に対して耐性が起こらないことを実証していた(図18−緑色の斜線)。このことは、ALAFACがメチシリン曝露時にメチシリン耐性の増加を阻害すること、及び黄色ブドウ球菌(S. aureus)がALAFACのアジュバント活性に対して耐性を発現できないことを両方とも示唆している。
これらの研究は、ALAFACが、使用した黄色ブドウ球菌(S. aureus)株のいずれに対しても抗微生物活性を示さないとしても、ALAFACはメチシリン、バンコマイシン、エリスロマイシン及びゲンタマイシンを含む広範囲の一般的に使用される抗生物質の効力を増加させる能力を有する、有効な抗微生物アジュバントとして作用し、従って、薬剤耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)が、生体外においてこれらの両抗生物質に再度感受性になり得ることを実証している。同様に、本発明者らは、さまざまな抗生物質のALAFAC誘導性増強のメカニズムが、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)及び黄色ブドウ球菌(S. aureus)の間で類似していることを示した。このことは、ALAFACがアジュバントとして作用して、その殺菌性である能力とは関係なく抗生物質の活性を増強する能力を有し、従って、治療の選択肢が急速に制限されてきている幅広い多剤耐性を有する種を含む、広範囲の細菌種に対してアジュバントとして作用し得ることを示している。
MRSA感染症の治療は、臨床状況、投与経路及び生物の耐性パターンに依存するが、通常、バンコマイシン、リネゾリド、ダプトマイシン、クリンダマイシン及びムピロシンなどの薬剤の使用を伴う。生体外試験により、タイム・キル・アッセイにおいてダプトマイシン及びオキサシリンの間にいくらかの相乗性が示され、リファンピシン及びチゲサイクリンの存在下でバンコマイシンによるMRSAバイオフィルムの根絶がわずかに増加したことが示された。さらに、排出ポンプの非殺菌性阻害剤が、黄色ブドウ球菌(S. aureus)において抗生物質のMICを低下させるそれらの能力に関して試験され、いくらか成功している。ダプトマイシン/オキサシリンの相乗性は、メチシリンに対するALAFACの増強効果と同等であったが、ALAFACは、比較的低濃度であっても(6−30μΜ、ALAFACはタンパク質複合体なので、これは100−500μg/mLに等しい。これらの濃度は、ミルク中に見出される生理学的範囲(2,000μg/mL)内に十分おさまる)、バイオフィルムの根絶においてかなりより強力な増強を有する。生体内治療は、主要な補助療法としてバンコマイシンと、リネゾリド及びクリンダマイシンとの使用に主に基づき、ダプトマイシンは、バンコマイシン非感受性の場合に選択される抗生物質であるが、生体外アッセイ及び生体内治療の両方が、MRSAの抗生物質の併用処置が、使用した薬剤の耐性の増加を常にもたらし、多剤耐性株を次第に生み出し、これによりMRSA治療の問題が連続して段階的に増大することを示す。
本研究で提示されたALAFACのアジュバント活性は、この点で少なくとも3つの有益性を有する。第1に、本発明者らは、MRSAによる鼻咽頭コロニー形成を、12時間のALAFACの存在下でメチシリンのわずか1回の投与で有意に低下させることができた。局所脱コロニー形成モデルは、MRSAが粘膜感染症の主要な原因であり、またALAFACが、全身的に投与されたとき、血清タンパク質が脂質成分の結合について競合する場合に有効性が低い、共役的に会合したタンパク質−脂質複合体であるため、感染症を予防するために臨床的に脱コロニー形成を達成する、両方の難しさに基づき選択した。メチシリンを、ALAFACがこの薬剤の耐性を逆転できること、ペニシリンと一緒に、その調査歴の早期に局所的に安全に用いられたことを主に検証するために本研究に使用した。残念ながら、そのとき以来、メチシリン耐性ブドウ球菌の急速な出現がこの価値及び実用性をほぼ完全に否定し、かつては広く局所使用されたエリスロマイシン又はゲンタマイシンなどの他の抗生物質も同じような運命にあった。従って、これらの結果は、ALAFACが、メチシリン及びおそらく他の現在使用できない抗生物質を、粘膜表面の治療に有用にすることができ、局所使用のためにこれらのより安全な薬剤への回帰をもたらす可能性を有することを示している。
第2に、エリスロマイシン、カナマイシン、リファンピシン及び他の抗生物質に対する耐性の平行した増加を伴う増え続けるレベルのオキサシリンに対するMRSAの適合の増加に関するメカニズムの一部は、CCCPなどのプロトン輸送力を消散させる薬剤に対して感受性である排出ポンプの活性化と関連があることが、近年示された。CCCPは、プロトン輸送力により駆動される排出ポンプのその不活性化のため、フルオロキノロン、テトラサイクリン及び他の抗生物質のMICを低下させることが公知であるが、CCCPは非常に毒性なので、エネルギー阻害剤のこのファミリーに属している分子は臨床使用のために開発されたことがない。ALAFACはCCCPと同じように有効にプロトン輸送力を消散させるが、健康なヒト細胞又は黄色ブドウ球菌(S. aureus)細胞に対して毒性を示さず、ALAFACの効果がより標的化され、薬剤開発に有用であることを示しているので、ALAFACはこの点に関して大きな有利性を有する。ALAFACは、他の潜在的アジュバントがするように、排出ポンプ機能に直接干渉しないが、膜貫通プロトン勾配の急速かつ持続的な消散及び生物を殺さずに電気的勾配の消散を誘導するナトリウム依存性メカニズムによるカルシウムの流入の両方を引き起こし、これらは両方ともALAFAC増強効果に必要であったので、ALAFACはさらに大きな有利性を有する。この二重の膜効果は、排出ポンプの活性に必要な膜イオン勾配及び黄色ブドウ球菌(S. aureus)以外の広範囲の種における広範囲の抗生物質の耐性を逆転させるALAFACの能力を説明できる他の耐性メカニズムを改変する。従って、ALAFACは、標的部位の改変、抗生物質化合物の酵素的不活性化、ペニシリン結合タンパク質に対するベータラクタム系抗生物質の活性に影響を及ぼすことができ、しかも、薬剤を細胞の外にポンプで運ぶためのATP結合カセットタイプの多剤輸送体に必要なATP産生に間接的に影響を及ぼすことができ、これらは全て細胞膜の化学的環境に感受性である。従って、化学的膜環境のALAFAC誘導性変化は、驚くべきことではないが、ゲンタマイシン、バンコマイシン及びベータラクタム系抗生物質のBocillin FLと、より多くの抗生物質を蓄積する耐性株との細菌性会合の増加に付随していた。このことは、プロトン輸送力及びイオン勾配のALAFAC誘導性破壊もまた、抗微生物剤の浸透及び結合の増加により作用することを示唆している。
細菌の膜機能に対するALAFACの二重かつ潜在的に平行した作用の第3の有益性は、漸増濃度のメチシリンに曝露後のMRSA耐性の発現を阻害するその能力である。メチシリン選択圧がかかっている間のALAFACの存在は、使用するMRSA株の耐性の発現を有意に低下させた。その上、そして重要なことには、ALAFAC中での連続成長後であっても、黄色ブドウ球菌(S. aureus)は、ALAFACのアジュバント特性に対して非感受性にはならなかった。その代わりに、数多くのサイクルにわたってALAFAC+メチシリン中で連続的に成長させた菌株は、メチシリンに対する耐性増加が劣ること、及び菌株が、それでもALAFACの存在下で同等に感作され得ることの両方を示した。このことは、ALAFACが、耐性の発現に感受性ではなく、排出ポンプ機能又は他の耐性メカニズムの増加と関係がある多剤耐性突然変異体の出現を減少させる可能性を有することを示唆している。これらの結果は、自然突然変異の頻度の試験が、菌株がALAFACに対する耐性を発現できないことを実証しているという、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)における発見と一致する(7)。
本開示は特定の実施形態(これらのうちのいくつかは好ましい実施形態である)に関して具体的に示し、記載しているが、本明細書に開示したように、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細のさまざまな変更が実施可能であることは当業者には理解されるべきである。