上記従来技術では、担架に被介助者を載せた状態で当該担架を浴槽に浸漬して入浴する際は、ロック/ロック解除レバーを操作して担架の上半身側の載置部を水平の倒伏状態から起立状態にロックしておくか、浴槽に浸漬する際に浴槽の一部が上半身の載置部を起立させる機構を作動させながらリクライニングさせて入浴する。また、被介助者の中には、載置部の起立角度が小さいと、浴槽内で体が下腿方向にずれ落ちて溺れる危険がある人もいる。その場合は、担架を起立状態でロックさせた状態で入浴させることが好ましいので、入浴時に、ロック/ロック解除レバーで担架を起立状態でロックすることを省略できない。以上のような入浴においては、上半身側の載置部を起立状態にロックした状態で担架を上昇させて浴槽外に退浴し、退浴後に、被介助者の身体から水滴を拭き取るなどの作業を行う際には、被介助者を仰臥位から側臥位に体位変換するために、わざわざロック/ロック解除レバーを操作して上半身側の載置部のロックを解除し、担架全体を水平姿勢にしてから各種介助作業を行う必要があり、煩わしい。
さらに、従来のリクライニング機構は、概ね、多種多様なニーズに対応できるよう多段階でリクライニング角度を調整してロックできる構成になっており、浴槽に浸漬する際に浴槽の一部が上半身の載置部を起立させる機構が作動すると、利用者の意図に関わらず、退浴時に必ず載置部が起立状態にロックされてしまうケースもあり、その場合は、担架全体を水平姿勢にする手間が特に煩わしかった。
また、手動でリクライニング操作を行う際には、介助者は、担架に載置された被介助者を片手で支えつつ、もう片方の手ではロック解除レバーを操作して、背凭れである上半身側の載置部を起立させたり倒伏させたりする。さらに、背凭れである上半身側の載置部のロックを解除する際には、一度、背凭れ等のロックを外すために、一度背凭れ等を持ち上げ保持した状態で、ロック解除レバーを操作する必要があり、操作が面倒で煩雑であった。特に、介助者が女性であると、被介助者と背凭れの重量を片手で支えることは負担が大きく、安全性確保や介助負担軽減の観点からも問題がある。
特許文献2や3の従来技術は、ラチェット機構によりリクライニングするが、かかるラチェット機構は、大型化とコストアップとを回避するため、一般的には、ロック対象の回転軸付近にコンパクトに内蔵される。しかし、背凭れ等の比較的長尺の回転物の軸に近い位置で回転を規制すると、長さの差が大きければ大きいほど、寸法精度が要求されると同時に、モーメントの増大により強度確保が困難となる。また、担架は、一般的な椅子とは異なって寝位での使用を主としており、ラチェット機構には恒常的に過大な負荷がかかり続けるため、ラチェット機構の歯の摩耗や座屈によるロック性能の低下も懸念される。更に、従来のラチェット機構は、通常回転軸の両端に2つ設ける必要があり、この2つの機構を同期させることが技術的に困難であった。そのため、動作不良により片側しかロックされず担架の載置面が大きく傾いて転落事故の原因になったり、上記同期を確保するために担架のフレームの剛性が強く要求され、担架のフレーム構造が複雑化すると共に、重量が嵩んで更にリクライニングや移動の操作性が損なわれる、といった問題点もあった。
そのうえ、上記のような入浴装置は、被介助者の上半身及び下半身のいずれにも対応できるようにするために、リクライニング機構を上半身側と下半身側それぞれの載置部に設けられている。上記マニュアル操作が必要なレバーが設けられて構造が複雑になると、清掃がしづらくなるばかりでなく、コストや故障頻度、清掃などの作業負担もリクライニング機構を2つ設けている分増大する、といった問題があった。
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、従来のロック/ロック解除レバーに代えて、載置部を所定角度以上に起立させると自動ロックするロック機構を設け、これにより、載置部を所定角度以下で起立する状態では、載置部をロックすることなく起立姿勢にして入浴させることができ、退浴時には、ロックされていないことにより自動的に載置部全体を水平姿勢の状態にできて、退浴後の被介助者の身体からの水滴拭き取り作業を容易にでき、リクライニング操作の安全性と操作性を改善しつつ、介助者の介助作業の手間の削減と、コストの低減等ができる入浴装置を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、人体を載置する載置部が、腰部近傍を載置する基体と、上半身側または下半身側を載置する可動載置部とで構成され、前記可動載置部が前記基体に対し起立倒伏可能に設けられる入浴用機器と、前記載置部が浸漬される浴槽と、を備えた入浴装置において、前記入浴用機器は、前記可動載置部が水平姿勢の状態から所定角度を超えて起立すると前記可動載置部の倒伏回動を規制する起立倒伏規制部材と、前記基体と前記可動載置部とにわたり設けられ、前記可動載置部を前記倒伏方向に付勢する付勢部材とを備え、前記起立倒伏規制部材は、前記可動載置部が倒伏位置から規定した起立位置にあるときは起立倒伏回動を許容し、前記可動載置部が前記規定した起立位置に達すると倒伏回動を規制し、前記可動載置部を前記規定した起立位置から更に起立操作すると、前記倒伏回動の規制を解除し、前記浴槽は、入浴時に前記載置部が前記浴槽内に浸漬されるに伴い前記可動載置部を起立倒伏させる当接部を有し、前記当接部は、前記所定角度以下で傾斜した浴槽側壁により構成されている、ことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記起立倒伏規制部材は、前記可動載置部の起立倒伏に係る回転軸から所定の距離をおいて前記可動載置部の幅方向の略中央付近に単体で設けられる。
請求項3に記載の発明は、前記起立倒伏規制部材が前記基体と前記可動載置部との内の一方にカム部とロック片とを有し、また、前記基体と前記可動載置部との内の他方に前記カム部に当接して当該カム部を回転させる段部と前記ロック片が当接するロック片当接部とをそれぞれ具備し、前記可動載置部の倒伏状態から起立状態への回動に伴い、前記カム部が前記段部に当接して一方向に回転され、これにより前記ロック片が回転し、次いで前記可動載置部が前記起立状態から倒伏状態へ回動する途中で前記ロック片が前記ロック片当接部に干渉して当該可動載置部のそれ以上の倒伏が規制されてロックされ、再度、前記規制の状態から前記可動載置部を起立状態へ回動させると前記カム部が前記段部で前記一方向と同方向に回転されて前記ロック片が回転し、これにより前記ロック片による前記ロックの状態が解除されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記可動載置部は、前記基体の長手方向両側に対称構造に設けられる。
この発明によれば、可動載置部を水平姿勢に倒伏させて載置部全体を水平姿勢の状態にして載置部を浴槽に近接させると、前記可動載置部が浴槽の当接部に当接する。そして、この当接状態で担架をさらに浴槽に浸漬させていくと、前記可動載置部がその当接部との当接で起立させられていく。この際、当接部は前記所定角度以下で傾斜した浴槽側壁により構成されているから当該可動載置部は所定角度まで起立せず、当該可動載置部がロック機構(起立倒伏規制部材)でロックされない状態で被介助者を入浴させることができる。その後、入浴を終えて載置部を浴槽から退出させて退浴する時には、可動載置部がロックされていないことにより、載置部の上昇に伴い可動載置部が倒伏するので、自動的に載置部全体を水平姿勢の状態にできる。
したがって、退浴後は、従来のようなロック/ロック解除レバーを操作することもなく、被介助者の身体に対しての水滴拭き取り作業が容易にできる。また、この発明によれば、従来の高価でかつ故障頻度も高く、清掃等の面倒な手入れが必要なロック/ロック解除レバーやラチェット機構を備える必要がなくなる。
また、可動載置部を起立させる際に、従来のようにロック解除レバーを操作することなく、可動載置部を介助者が両手でしっかり保持した状態で当該可動載置部を起立操作することができ、安全に可動載置部の起立姿勢を調節することができる。したがって、介助者が女性であっても、また、被介助者の体重が重い場合であっても、容易に前記可動載置部を起立倒伏させることができる。
さらに、起立倒伏規制部材は、従来のラチェット機構のように回転軸の両端に2つ設ける必要はなく、可動載置部の回転軸から所定の距離をおいて、可動載置部の起立倒伏の回動を効率的かつ確実に規制でき、かつバランスよく支持できる可動載置部の幅方向の略中央付近に単体で設けることができるので、2つの機構を同期させたり、過大なモーメントが作用するために、高精度、高強度の部品を使用したりする必要はなく、簡易かつ安価な構成で可動載置部の起立倒伏の回動を効率的かつ確実に規制できる。
そして、可動載置部が倒伏方向、すなわち、ロック片がロック片当接部に当接してロックする方向に付勢するので、担架運搬中の担架の揺れなどの慣性力や、搬送機器が障害物に衝突することによる衝撃力、或いは担架上の被介助者が担架上で動いて作用する力などが加わっても、前記ロックが外れにくく、安全である。また、可動載置部が背凭れの場合、移動中の振動が低減され、被介助者が快適となるほか、担架を浴槽内の湯水に浸漬させて使用する場合、前記可動載置部が被介助者の下半身側を載置する場合であれば、下半身側の可動載置部が浮力で浮いてしまう不都合も解消することができる。
本発明によれば、被介助者がより安全に使用でき、介助者の負担が軽減できる入浴用機器を提供することができる。
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る入浴装置を説明する。
図1〜図3を参照して、入浴用機器1は、ストレッチャー2と、人体を載置する載置部11を有する担架3とから構成される。ストレッチャー2は、台車部4と、担架昇降機構5とを有する。
台車4は、4つのフレーム6〜9が矩形状に枠組みされると共に、フレーム6〜8の下面に車輪6a,6b,7a,8aが設けられて構成されている。担架昇降機構5は、フレーム6の中央部に垂直に立設された昇降ガイド柱部5aと、該昇降ガイド柱部5aに外挿された昇降筒部5bとを有する。昇降筒部5bは、昇降ガイド柱部5aに沿って昇降することができる。
昇降筒部5bはモータ(図示省略)を含む駆動装置により昇降ガイド柱部5aに沿って昇降駆動される。昇降筒部5bの上端側に取付用部材5cが担架3方向に突出して設けられている。取付用部材5cには水平方向平行に一対の手摺5dが移動中や入浴中に被介助者が掴まる事ができるように延設されている。また、取付用部材5cには担架3方向とは反対方向にL形状の入浴用機器操作部材5eが設けられている。入浴用機器1は、前記操作部材5eを操作することにより、台車4を任意の方向に移動させることができる。
担架3には、支持フレーム10が固定されている。支持フレーム10は、一対のL形状のフレーム部10a、10bと、水平フレーム部10cとからなる。一対のL形状のフレーム部10a、10bはその上端側が水平フレーム部10cで連結されると共に、その下端側が担架3の下部に入り込むことで、担架3を支持している。
支持フレーム10は、ストレッチャー2の一対の取付用部材5cに固定され、これにより、担架3はストレッチャー2に支持される。担架3は、担架昇降機構5により、図中矢印A方向に昇降する。位置P1から位置P2に下降することで、位置P2にある浴槽(図示省略)に担架3を浸漬させて被介助者を入浴させることができる。
担架3は、長手方向に延びる載置部11と、載置部11の一方の側部に設けられた第1及び第2サイドガード12a,12bと、載置部11の他方の側部において該他方の側部とは別体とされた第3及び第4サイドガード13a,13bとを具備する。
載置部11は、長手方向両側の第1及び第2可動載置部14a,14bと、両第1及び第2可動載置部14a,14bの長手方向中間の非可動載置部(基体)14cとから構成される。第1、第2可動載置部14a,14bは共に非可動載置部(基体)14cに対して起立倒伏、つまり、リクライニングが可能である。第1、第2可動載置部14a,14bそれぞれの一方の側部には、第1、第2可動載置部14a,14bの起立倒伏のリクライニング動作と共に回転する前記第1及び第2サイドガード12a,12bが設けられている。第1、第2可動載置部14a,14bの他方の側部側には、前記第3及び第4サイドガード13a,13bが設けられている。
第1及び第2可動載置部14a,14bは、それぞれ、非可動載置部(基体)14cの両側に設けられた載置部回転軸14d,14eに回転可能にその一端側で軸支され、載置部回転軸14d,14eを回転中心として矢印B,C方向に起立倒伏してリクライニングできるようになっている。図示される担架3は、第1可動載置部14aに枕部15が設置されて、被介助者(図示省略)の頭部が枕部15上に載置されると共に、該被介助者の上半身側が第1可動載置部14aに、下半身側が第2可動載置部14bに、また、腰部近傍が非可動載置部(基体)14cに載置され、第1可動載置部14aの起立倒伏により被介助者は上半身がリクライニングされる。
尚、第1可動載置部14aと第2可動載置部14bは対称構造になっており、枕部15を第2可動載置部14bに取り付ければ、上半身側と下半身側を入れ替えて使用することができるようになっている。
非可動載置部(基体)14cには、支持フレーム10が固定されている。
図4〜図16を参照して本発明の実施形態を説明する。
入浴用機器1は、第1可動載置部14a及び第2可動載置部14bそれぞれを、効率的かつバランスよく支持すると共に、所望の起立倒伏位置でロックでき、また、そのロックを解除できるロック/ロック解除機構(起立倒伏規制部材)を第1可動載置部14a及び第2可動載置部14bそれぞれの幅方向の略中央裏面に有する。また、図3に示すように、第1及び第2可動載置部14a,14bは、それぞれ、非可動載置部(基体)14cに付勢部材14a1,14b1で倒伏方向に付勢され、使用中に何らかの力が可動載置部14a,14bに作用して不用意にロックが解除されることを防止すると共に、移動中の可動載置部14a,14bの振動による不快感や入浴中に浮力で可動載置部14a,14bが浮いてしまうような不都合を解消している。
これらロック機構は第1可動載置部14a及び第2可動載置部14bそれぞれで同様に設けられているので、第1可動載置部14aのロック機構を説明する。
前記ロック/ロック解除機構は、第1可動載置部14aが倒伏位置から規定した起立位置にあるときは起立倒伏回動を許容し、第1可動載置部14aが規定した起立位置に達すると倒伏回動をロックし、第1可動載置部14aを規定した起立位置から更に起立操作すると、倒伏回動のロックが解除されるようになっている。従って、第1可動載置部14aを起立させる際に、従来のロック/ロック解除用の操作レバーを操作する必要がなく、第1可動載置部14aを介助者が両手でしっかり支持しながら起立倒伏させることができるようにしたものであり、介助者が女性であっても、また、被介助者の体重が重い場合であっても、容易に第1可動載置部14aを起立倒伏してリクライニングさせることができるようにしている。
以下、図4〜図14を参照して、第1可動載置部14aの下面に、下側が開放した断面「コ」の字で一方向に長手の取付部材30が固定されている。
取付部材30の内側に、当該取付部材30を貫通した回転軸31によりガイドレール32の基端側が枢支されている。ガイドレール32は、第1可動載置部14aの起立に伴い、前記基端側を支点にして第1可動載置部14aの下面に対して垂直方向に回転し、第1可動載置部14aをその起立位置で支持する。ガイドレール32の基端側を枢支する位置は、前記ロック/ロック解除機構に過大な負荷が作用しないこと、無駄な湯量が増大しないように浴槽内容積を極力小さくすることなどの制約条件を考慮しつつ、入浴時に浴槽と前記ロック/ロック解除機構が干渉するのを避けるように決定される。具体的には、第1可動載置部14a又は第2可動載置部14bの中央より載置部回転軸14d,14e側の位置が好ましく、第1可動載置部14a又は第2可動載置部14bがロックした状態で第1可動載置部14a又は第2可動載置部14bとガイドレール32が略直角になるように配置される。ガイドレール32は、強度上、載置部回転軸14d,14eからなるべく離れた位置に設けるのが好ましいが、その反面、部材が大きく大掛かりとなるため、ガイドレール32の取付位置の距離は、載置部回転軸14d,14eから200mm以上で40mm以下とすると好ましく、100mm以上かつ200mm以下とすると最適である。実施態様のガイドレール32の取付位置の距離は、載置部回転軸14d,14eから150mmとなっている。
ガイドレール32は、主壁部32aとこれの両側の側壁部32bとで断面「コ」の字形状をなしている。ガイドレール32の主壁部32aの基端側に前記した回転軸31が貫通している。両側壁部32bにおける自由側端部の端面は、ロック片当接面32cをなしている。ガイドレール32の主壁部32aには、基端側から自由端側に長いガイド穴部(長穴部)33が形成されている。
ガイド穴33は、第1穴部として直線状ガイド穴部33aと、第2穴部として曲線状のガイド穴部33bとからなる。直線状ガイド穴部33aは、幅一定で前記基端側から自由端側に長手状に設けられている。曲線状のガイド穴部33bは、ガイドレール32の自由端側に連成されている。
曲線状のガイド穴部33bは、穴部上部側の直角な段部形状の段部33cと、穴部下部側の曲線状の壁部33dとで形成された穴内壁面形状を有する。
前記ガイドレール32のガイド穴33には、ロック部材34のカム部34aが係入される。ロック部材34は、回転軸35に回転自在に取り付けられている。ロック部材34は、前記カム部34aと、一対のロック片34bとから構成される。カム部34aは、平面視形状が正方形であり、回転軸35の先端に設けられている。各ロック片34bは、ピン形状で正方形のカム部34aの対向する二辺それぞれに垂直に設けられており、回転軸35から突出している。
図4に示すように、第1可動載置部14aが水平姿勢に倒伏している状態において、ロック部材34のカム部34aは、ガイドレール32のガイド穴33において、直線状ガイド穴部33aの基端側(図4で左側)に位置している。
図4の水平姿勢の倒伏状態から第1可動載置部14aが起立されていくと、図5〜図7に示すように、ロック部材34のカム部34aは、ガイドレール32の直線状ガイド穴部33aをガイドレール32の自由端側方向に移動する。この状態では、カム部34aは、曲線状のガイド穴部33bに入り込んでいない。また、ロック部材34の一対のロック片34bは、直線状ガイド穴部33aの長手方向に平行になっていて、ロック部材34はロックされていないので、第1可動載置部14aは起立されていても、ロックされていない。
次に、図5〜図7の状態から第1可動載置部14aがさらに起立されていくと、図8〜図10に示すように、ロック部材34のカム部34aは、ガイドレール32の直線状ガイド穴部33aから曲線状のガイド穴部33bに入り込む。この場合、図4〜図7までの第1可動載置部14aの水平姿勢からの起立角度は所定角度以下であり、ロック部材34のカム部34aは、ガイドレール32の直線状ガイド穴部33b内にとどまり、図8〜図10では、第1可動載置部14aの水平姿勢からの起立角度は所定角度を超えて曲線状のガイド穴部33bに入り込んでいる。
そして、ロック部材34のカム部34aは、曲線状ガイド穴部33bに入り込む際、曲線状ガイド穴部33bを形成する上部側の直角段形状の段部33cに当接し、この当接により90度分だけ反時計回り方向に回転駆動される。ロック部材34のカム部34aは、回転軸35に固定されているので、回転軸35に固定されているロック部材34のロック片34bも、90度だけ同方向に回転駆動され、その後、カム部34aは、曲線状のガイド穴部33b内に収納される。図4〜図7はカム部34aが回転駆動される前のロック片34bの状態を示し、図8〜図10は、カム部34aが90度反時計回り方向に回転駆動された後のロック片34bの状態を示す。
すなわち、ロック片34bは、図4〜図7に示すようにカム部34aが直線状長穴33a内にあるときは、その両端は直線状長穴33aの長手方向に向いているが、カム部34aが、図8〜図10に示すように、曲線状長穴33b内にあるときは、その両端は、ガイドレール32の両側壁部32bのロック片当接面32cに対向している。
そして、図8〜図10に示すように、ロック片34bの両端が、ガイドレール32の両側壁部32bのロック片当接面32cに対向している状態で、第1可動載置部14aの起立操作が解除されると、第1可動載置部14aは自重で倒伏してくるが、この倒伏と共に、一対のロック片34bそれぞれは、図11〜図13に示すように、ガイドレール32の両側の側壁部32bそれぞれのロック片当接面32cに当接する。これにより、第1可動載置部14aは、一対のロック片34bによりロックされて前記起立状態を維持される。
第1可動載置部14aを図11〜図13のロック状態から解除するには、第1可動載置部14aを図11〜図13に示す位置から一旦起立操作する。そうすると、ロック部材34のカム部34aが、直線状ガイド穴部33aから曲線状ガイド穴部33b内に戻される。そして、この直線状ガイド穴部33aから曲線状ガイド穴部33b内に戻される際に、曲線状ガイド穴部33b内の上部側の段部形状の段部33cによりカム部34aは前記と同方向にさらに90度回転駆動される。
これにより、ガイドレール32のロック片34bが、同方向に90度回転駆動されて曲線状のガイド穴部33b内に収納される。そうすると、図14に示すように、ロック片34bは、その両端が直線状長穴33aの長手方向を向いたロック解除の状態になっている。
前記ロック解除の状態で第1可動載置部14aの起立操作を停止し第1可動載置部14aを倒伏させると、ロック部材34のロック片34bはロック片当接面32cと当接せず通り抜けて図14の状態から図4の状態に復帰する。この場合、第1可動載置部14aが急激に倒伏して被介助者に衝撃が加わることを回避するため、第1可動載置部14aと当該入浴用機器の他の部位との間に衝突の衝撃を緩和するゴム等の緩衝材を介装してもよい。
以上の実施形態では、両手で第1可動載置部14aを起立倒伏させることで、当該第1可動載置部14aを所望の位置にロックさせたり、ロック解除したりすることができる。これにより、介助者が女性であっても、また、被介助者の体重が重い場合であっても、容易に第1可動載置部14aを起立倒伏させることができる。
次に、図15及び図16を参照して、担架3を浴槽40に矢印D方向に下降させて浸漬させて入浴し、それから退浴する場合を説明する。図15において、担架3の第1及び第2可動載置部14a,14bは水平姿勢の倒伏状態であり、担架3全体は水平姿勢状態で浴槽40に浸漬する前の状態にある。
浴槽40は、底壁41a、長手方向の両側壁41b,41c及び図示略の短手方向の両側壁とで囲まれて担架3に対応した長手状の浴湯貯留部42を有する。浴湯貯留部42内の浴湯の図示は省略している。両側壁41b,41cのうち、一方の側壁41bすなわち被介助者の下半身側が浸漬される側の側壁41bは、垂直壁になっているが、他方の側壁41c、すなわち被介助者の上半身側が浸漬される側の側壁41cの上部側は、所定角度で傾斜した側壁部41dに形成されている。なお、側壁部41dは所定角度で形成されているが、所定角度以下で形成されてよい。一方、担架3の第1可動載置部14aは、図4の倒伏状態から図5〜図7の所定角度の起立状態までは、ロック機構でロックされていない。第1可動載置部14aが、前記所定角度を超えて起立され、図8〜図10の状態から図11〜図14の状態になると、第1可動載置部14aは、ロック機構でロックされる。前記所定角度は、ロック部材34のカム部34aが、ガイドレール32の曲線状ガイド穴部33bの段部33cに当接する前での第1可動載置部14aの起立角度を最大角度とし、その最大角度以下の任意の起立角度である。
担架3が図15の水平姿勢状態で矢印D方向に浴槽40の浴湯貯留部42内に下降する。そして担架3が所定位置まで下降すると、第1可動載置部14aの下面が、側壁部41dに当接する。そして、この当接した前記所定位置からさらに担架3が下降していくと、第1可動載置部14aは側壁部41dにより載置部回転軸14dを回転中心として起立されていき、図16に示す状態になる。
図16に示す下降位置は入浴位置であり、この入浴位置で、担架3の第1可動載置部14aは、側壁部41dの傾斜角度に対応して起立しているが、この起立状態は、図5〜図7の起立状態にあるので、第1可動載置部14aはロック機構でロックされていない。
図16で示す下降位置で、第1可動載置部14aがロック機構でロックされていない状態で、担架3に載置している被介助者を入浴させて被介助者を洗身し、この洗身後に、矢印Eの方向に担架3を上昇させて退浴させていくと、第1可動載置部14aは、ロック機構でロックされていないので、自重で図16の所定角度での起立状態から倒伏していき、図15の水平姿勢の状態になる。
したがって、担架3の第1可動載置部14aが図16に示すように所定角度で起立した状態、つまり、第1可動載置部14aがロックされていない状態で被介助者を入浴させることができ、また、図16から図15に示すように浴槽40から退浴した時には、第1可動載置部14aがロックされていないことにより担架3は自動的にその全体が水平姿勢状態になり、その状態で被介助者の体位変換を行いながら水滴拭き取りなどの介助作業ができる。
以上説明したように、この実施形態では、入浴を終えて担架3を上昇させて退浴する時には、第1可動載置部14aがロックされていないことにより、担架3の上昇に伴い第1可動載置部14aが水平姿勢に自動的に倒伏するので、退浴後は、従来のようなロック/ロック解除レバーを操作することもなく、水平姿勢状態で被介助者の体位変換を行いながら水滴拭き取りなどの介助作業ができる。
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々適宜に変更可能である。例えば、入浴用機器は、上述の実施形態で説明をした昇降式のストレッチャーに限定されるものではなく、非昇降式のストレッチャーであっても構わない。また、担架をストレッチャーに載せて搬送し、ストレッチャーを浴槽に横付けした後、担架のみを担架支持台の上方に移動させて、浴槽を昇降機構により上昇させて被介助者を浴湯に浸漬し入浴させる介護用入浴装置の担架であってもよい。