JP6219711B2 - 吸水性樹脂の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、使用後の吸収性物品が含有する吸水性樹脂の処理方法に関する。
高齢化により、介護用の大人用使い捨て紙おむつを使用する人が増加している。また、世界的にみても、子供用使い捨て紙おむつを使用する人口が増加している。近年、使い捨て紙おむつの使用量が急速に増大している。使用後の紙おむつは、汚物でよごれているため、再利用することなく廃棄される。廃棄された紙おむつは、通常、焼却処理されている。しかし、紙おむつの廃棄量の増大にともなって、環境保護の観点から、紙おむつを構成する材料を再利用することが検討されている。
特許文献1には、使用済み紙おむつをビニールとそれ以外に分離する使用済み紙おむつの分離方法であって、裁断又は破砕された使用済み紙おむつに水と脱水剤を加えて混合し、使用済み紙おむつに含まれる吸水ポリマーを脱水剤と反応させて脱水させる反応工程と、その脱水済みの混合物を回転ドラムに投入して溶解し、ビニール以外の溶解物を沈殿させて回転ドラム外に排出させ、ビニールを回転ドラム内に残留させる分離工程と、その残留したビニールを回転ドラム外に吸引して回収する回収工程とを有することを特徴とする、使用済み紙おむつの分離方法が開示されている。
特許文献2には、裁断された使用済紙おむつと処理用液体とを受け入れて攪拌し、前記紙おむつの母材分及び吸水性物質分を含む再生用物質と、プラスチック分と、を分離する攪拌分離槽と;前記攪拌分離槽から排出された前記再生用物質を含む前記処理用液体を受け入れる第1の回収槽と;前記攪拌分離槽から排出された前記再生用物質を含む前記処理用液体を受け入れる第2の回収槽であって、前記第1の回収槽とは別の第2の回収槽とを備える;使用済紙おむつの処理装置が開示されている。
特許文献3には、使用済み紙おむつを収容する回転ドラムと、この回転ドラムの少なくとも下端部分を収納して内部に水を溜める水槽部と、この水槽部内へ水を供給する水供給手段と、回転ドラムを回転駆動して水に浸漬した紙おむつを水溶物と不溶物と分離解体にする駆動手段と、分離解体された水溶物を汚水とともに下水処理施設側へ排出する排出手段と、を備えたことを特徴とする紙おむつ処理装置が開示されている。
特許文献4には、吸水してゲル状となっている吸水性樹脂を含有する汚れた衛生用品を粉砕し、この粉砕された衛生用品を消毒剤を含有する水中に分散させて、衛生用品に付着していた汚れの一部を前記衛生用品の粉砕物から分離することを特徴とする吸水してゲル状となっている吸水性樹脂を含有する汚れた衛生用品からのその素材の回収方法が開示されている。
特許文献5には、粉状プラスチック材料乾燥物及び吸水した吸水性樹脂から回収された吸水性樹脂を含有して1ミリメートル以上の粒度の粒状物に形成されていることを特徴とする粒状の排泄物処理材が開示されている。
特開2012−81433号公報 特開2012−170918号公報 特開2001−104929号公報 特開2009−73198号公報 特開2005−304506号公報
吸水性樹脂粉末が、吸水することにより凝集してなる吸水性樹脂の凝集物は、多量の水分を吸水し、さらに表面積が小さいために乾燥することが難しいという問題があった。特に、吸水して膨潤している吸水性樹脂に脱水剤(例えば、塩化カルシウム)を添加して脱水処理した場合にも、含水率は少し低下するものの、なお含水率が高く、吸水性樹脂の凝集物を乾燥することが困難であった。そのため、使い捨て紙おむつを再利用する場合に、吸水して凝集した吸水性樹脂の効率的な処理方法が求められている。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、使用後の吸収性物品が含有する吸水性樹脂粉末を再利用するための処理方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決する本発明の吸水性樹脂の処理方法は、吸水性樹脂粉末が、吸水することにより凝集してなる吸水性樹脂の凝集物に、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を加えて混合することを特徴とする。また、吸水性樹脂粉末の凝集物に強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を加える代わりに、強酸と窒素含有塩基性化合物とをそれぞれ加えてもよい。
本発明者が鋭意検討した結果、脱水剤(例えば、塩化カルシウム)によって脱水処理した吸水性樹脂は、吸水性樹脂を構成するアクリル酸のカルボキシル基が、脱水剤の2価金属イオンによって、架橋構造を形成して、強い凝集力によって凝集していることを見い出した。そして、2価金属イオンによって架橋が形成されている吸水性樹脂粉末の凝集物に、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を加えて混合することにより、脱水剤の2価金属イオンと強酸と窒素含有塩基性化合物との塩の一価の陽イオンとがイオン交換する。その結果、2価金属イオンによる架橋が切断される。金属架橋が切断されると、凝集力が低下するので、吸水性樹脂粉末の凝集物は、もとの粒状へと変化する。粒状の吸水性樹脂は、表面積が大きく容易に乾燥できる。
本発明によれば、使用後の吸収性物品が含有する吸水性樹脂粉末を再資源化することができる。得られた吸水性樹脂粉末は、土壌改良剤、固形燃料などとして好適に利用しうる。
吸収性物品の処理工程を示す工程図。 吸水性樹脂粉末の凝集状態の変化を示す図。 吸水性樹脂粉末の凝集状態を示す図面代用写真。 吸水性樹脂粉末の凝集状態を示す図面代用写真。 吸水性樹脂粉末の凝集状態を示す図面代用写真。
本発明の吸水性樹脂の処理方法は、吸水性樹脂粉末が、吸水することにより凝集してなる吸水性樹脂粉末の凝集物に、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を加えて混合することを特徴とする。
まず、吸収性物品の処理工程について図面を参照しながら説明するが、本発明は図面に示した処理工程に限定されない。図1には、吸収性物品の処理工程の一例を示した。第1工程は、汚物が付着した吸収性物品の洗浄工程である。まず、裁断した使用後の吸収性物品を、処理液体に投入する。処理液体としては、水が好適に用いられる。処理液体中で、撹拌処理することにより、吸収性物品に付着した汚物を洗浄することができる。また、吸収性物品を構成する材料の比重による分離が可能となる。
第2工程は、吸水性樹脂の脱水処理である。この脱水処理により、吸水性樹脂の吸水性が失われる。脱水剤としては、2価金属塩が好適に使用され、塩化カルシウムがより好適に使用される。2価金属塩で処理することによって、吸水性樹脂粉末を構成するアクリル酸のカルボキシル基が架橋される。その結果、吸水性樹脂粉末の凝集物の体積が縮小する。凝集物の体積変化により、凝集物から水が排出される。この脱水処理により、吸水性樹脂粉末の含水率が、約98質量%から約70質量%に低下する。
第3工程は、プラスチック成分回収工程である。吸収性物品に使用されていた不織布、フィルムなどのプラスチック成分が回収される。回収されたプラスチック成分は、さらに洗浄されて、油化・炭化原料などとして再利用されることが好ましい。第4工程は、パルプ回収工程である。第4工程では、吸収体を構成していたパルプが回収される。回収されたパルプは、さらに洗浄されて、再利用されることが好ましい。
第5工程は、パルプ回収後の汚水の処理工程である。この汚水には、吸収性物品として使用されていた吸水性樹脂粉末が多く含まれ、パルプの残渣、し尿などが含まれている。汚水の沈降物や汚水の濃縮物は、汚泥として扱われる。汚泥には、吸水性樹脂粉末が凝集物として存在している。しかしながら、汚泥中には、吸水性樹脂粉末の凝集物が多量に含まれているため、汚泥を乾燥しにくいという問題がある。特に、そのまま乾燥しても、表面のみが乾燥され凝集物の内部は乾燥されないという問題がある。本発明の処理方法では、この汚泥に対して、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を加える。強酸と窒素含有塩基性化合物との塩は、汚泥中に含まれる吸水性樹脂粉末の凝集物に作用する。強酸と窒素含有塩基性化合物との塩で処理することにより、2価金属イオンと窒素含有塩基性化合物の1価の陽イオンとの間で、イオン交換反応が起こる。その結果、金属架橋が切断されることにより、吸水性樹脂粉末の凝集物を容易に粒状化できる。粒状化された吸水性樹脂は、表面積が増加するので、容易に乾燥できる。
図2は、吸水性樹脂粉末の凝集状態の変化を示す図である。図2(a)は、吸水性樹脂粉末1の凝集物を示している。吸水性樹脂粉末1は、脱水剤の2価金属イオンにより金属架橋(−COO-・M2+-OOC−)により凝集している。2価金属イオンM2+と強酸と窒素含有塩基性化合物との塩の1価の陽イオンXとがイオン交換することによって、金属架橋が切断される(−COO-++-OOC−)。その結果、吸収性樹脂粉末の凝集物は、粒状へと変化する(図2(b))。
前記強酸と窒素含有塩基性化合物との塩の添加量は、脱水剤で処理した含水状態の吸水性樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、100質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
吸水した吸水性樹脂粉末の凝集物と、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩との混合は、特に限定されないが、愛知電機株式会社製ロッキングミキサーBHR型などを用いて行うことができる。前記混合は、特に限定されないが、5℃以上、130℃以下の温度範囲で、5分間〜6時間行うことが好ましい。混合するとともに、脱水を同時に行ってもよい。混合脱水は特に限定されないが80℃以上、130℃以下の温度範囲で、5分間〜6時間行うことが好ましい。常圧、減圧、加圧いずれの条件で行ってもよい。
前記混合により、吸収樹脂粉末の凝集物は、粒状若しくは粉末状の吸水性樹脂に変化する。粒状若しくは粉末状の吸水性樹脂粉末は、表面積が大きいので、容易に乾燥させることができる。
前記強酸と窒素含有塩基性化合物との塩の強酸成分としては、吸水性樹脂粉末の構成成分であるアクリル酸より強い酸であることが好ましい。すなわち、強酸成分として、アクリル酸の酸解離定数未満の酸解離定数を有する酸を用いることが好ましい。アクリル酸より強い酸と窒素含有塩基性化合物との塩を使用することにより、脱水剤として使用する2価金属塩とのイオン交換反応が容易に起こりやすくなる。アクリル酸の水・25℃での酸解離定数は、4.26である。すなわち、本発明では、強酸成分として、水・25℃での酸解離定数が、4.26未満の酸を用いることが好ましく、4.2以下の酸を用いることがより好ましく、4.0以下の酸を用いることがさらに好ましい。強酸の酸解離定数の下限は、特に限定されない。
酸(Hn−)の酸解離定数pKaは、以下の式で表される。
pKa=−log(1/Ka), Ka=[H+・[Xn−]/[Hn−
多段で解離する酸の場合、すくなくとも1段の酸解離定数が、4.26未満の範囲にあることが好ましく、4.2以下の範囲にあることがより好ましく、4.0以下の範囲にあることがさらに好ましい。また、すべての段の解離定数が4.26未満の範囲にあることが好ましく、4.2以下の範囲にあることがより好ましく、4.0以下の範囲にあることがさらに好ましい。
水・25℃での酸解離定数が4.26未満の酸の具体例としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、ニリン酸、トリポリン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、クエン酸、乳酸などをあげることができる。
前記窒素含有塩基性化合物としては、窒素を含有する塩基性化合物であれば特に限定されないが、強酸との反応により、1価の塩を形成するものが好ましい。前記窒素含有塩基性化合物は、例えば、アミン化合物およびピリジン化合物よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。前記アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、または、脂肪族芳香族アミンのいずれであっても良い。
前記アミン化合物の具体例としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、フェニルアミン(アニリン)、トルイジン、2,4,6−トリメチルアニリン、2,4,6−トリブロモアミン、ベンジルアミンなどの1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、エチルメチルアミン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン(N−メチルアニリン)、フェニルエチルアミンなどの2級アミン;または、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、エチルジメチルアミン、トリフェニルアミン、フェニルジメチルアミン(N,N−ジメチルアニリン)などの3級アミンを挙げることができる。
前記ピリジン化合物としては、ピリジンまたはピリジン骨格を有するピリジンの誘導体を挙げることができる。ピリジン誘導体としては、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、ベンジルピリジンなどが挙げられる。
前記強酸と窒素含有塩基性化合物との塩は、1価の塩であることが好ましい。前記強酸と窒素含有塩基性化合物との塩としては、例えば、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩;塩化アルキルアンモニウム、硝酸アルキルアンモニウム、硫酸アルキルアンモニウムなどのアルキルアンモニウム塩;塩化ジアルキルアンモニウム、硝酸ジアルキルアンモニウム、硫酸ジアルキルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウム塩;塩化トリアルキルアンモニウム、硝酸トリアルキルアンモニウム、硫酸トリアルキルアンモニウムなどのトリアルキルアンモニウム塩;塩化テトラアルキルアンモニウム、硝酸テトラアルキルアンモニウム、硫酸テトラアルキルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウム塩;塩化ピリジニウム、硝酸ピリジニウム、硫酸ピリジニウムなどのピリジニウム塩;塩化アルキルピリジニウム、硝酸アルキルピリジニウム、硫酸アルキルピリジニウム塩などのアルキルピリジニウム塩を挙げることができる。前記アルキル基は、炭素数が0〜22であることが好ましく、1〜18であることが好ましい。また前記アルキル基は、ハロゲンなどの置換基により置換されていてもよい。
前記強酸と窒素含有塩基化合物との塩の具体例としては、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルピリジウム塩酸塩などを挙げることができる。
また、前記強酸と窒素含有塩基性化合物との塩は、固体状であることが好ましい。固体状の強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を加えて混合することにより、浸透圧により吸水性樹脂粉末の凝集物から水が排出されやすくなるからである。
前記処理方法により得られた粒状の吸水性樹脂を乾燥することにより、粒状の吸水性樹脂粉末を再生できる。再生した吸水性樹脂粉末は、吸収性能にも優れる。例えば、再生吸水性樹脂粉末の吸収倍率は、15g/g以上である。
再生された吸水性樹脂粉末は、例えば、土壌改良剤として利用する、あるいは、固形燃料として利用することができる。そのため、本発明には、前記処理方法により得られた粒状の吸収性樹脂粉末を乾燥することを特徴とする再生吸水性樹脂粉末の製造方法、土壌改良剤の製造方法、および、固形燃料の製造方法が含まれる。
本発明の処理対象となる吸水性樹脂粉末は、特に限定されないが、アクリル酸を構成成分とする架橋重合体であって、そのカルボキシル基の少なくとも一部が中和されているものが好ましい。架橋重合体を構成するアクリル酸成分の含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がさらに好ましい。
架橋重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオンなどを挙げることができる。これらの中でも、架橋重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が、ナトリウムイオンで中和されていることが好ましい。なお、架橋重合体のカルボキシル基の中和は、重合して得られる架橋重合体のカルボキシル基を中和するようにしてもよいし、予め、中和された単量体を用いて架橋重合体を形成するようにしてもよい。
架橋重合体のカルボキシル基の中和度は、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましい。中和度が低すぎると、得られる吸水性樹脂粉末の吸収性能が低下する場合があるからである。また、中和度の上限は、特に限定されず、カルボキシル基のすべてが中和されていてもよい。なお、中和度は、下記式で求められる。
中和度(モル%)=100×「架橋重合体の中和されているカルボキシル基のモル数」/「架橋重合体が有するカルボキシル基の総モル数(中和、未中和を含む)」
本発明の処理対象となる吸収性物品は、吸水性樹脂粉末が使用されているものであれば特に限定されず、例えば、使い捨て紙おむつ、失禁パッド、軽失禁パッド、生理用ナプキン、母乳パッドなどを挙げることができる。これらの中でも、吸水性樹脂粉末の使用量が多い使い捨て紙おむつが好適である。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[処理例1〜9]
使用後の市販の使い捨て紙おむつを破砕したものを、脱水剤として塩化カルシウムを含有する処理水に投入し、吸水性樹脂の脱水処理を行った。処理水中から、吸収性物品に使用されていた不織布、フィルムなどのプラスチック成分を分離回収し、次いで、パルプを分離回収した。分離回収後の汚水を脱水機で脱水して、汚泥(吸水性樹脂の凝集物)を回収した。
[処理例10〜12]
フラッフパルプ100質量部と吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製アクアパールDS560:アクリル酸を構成成分とする架橋重合体)60質量部とを気流型混合装置(株式会社オーテック社製パッドフォーマー)で混合し、得られた混合物を目付約500g/mとなるように均一にアクリル板(厚み4mm)上に積層し、5kg/cmの圧力で30秒間プレスし、吸収体を得た。この吸収体を14cm×36cmの長方形に裁断し、各々の上下に吸収体と同じ大きさの吸水紙(目付15.5g/m、アドバンテック社製、フィルターペーパー2番)を配置し、さらにポリエチレンシート(タマポリ社製ポリエチレンフィルムUB−1)を裏面に、不織布(目付20g/m、旭化成社製エルタスガード)を表面に配置することにより、吸収性物品を作製した。
生理的食塩水に前記吸収性物品を60分間浸漬し、その後、60分間金網の上に載せて水切りを行った。水切り後の吸収性物品を高速粉砕機RSC−500(株式会社リーイング)を用いて粉砕した。前記粉砕物を5質量%の塩化カルシウム液に浸漬して脱水処理を行った。脱水処理後、沈降物(吸水性樹脂の凝集物)を回収した。脱水処理前の吸水性樹脂の含水率は、98質量%であり、沈降物(吸水性樹脂の凝集物)の含水率は、72質量%であった。
<吸水した吸水性樹脂の凝集物の処理>
得られた汚泥または沈降物(吸水性樹脂粉末の凝集物)10gに所定量の処理剤を200mLビーカーに入れて、薬さじを用いて60分間混合した。得られた混合物をアルミ標準バット(幅:276mm、奥行:211mm、高さ:35mm)に均一に敷き詰めた。アルミ標準バットを、送風恒温器(ヤマト科学株式会社DKM600)に入れて、100℃×30分間の条件で混合物を乾燥させた。得られた結果を表1にまとめた。表中の乾燥性において、「○」は、乾燥が容易にできたことを意味し、「×」は、表面のみ乾燥し、内部は未乾燥であったことを意味する。吸収倍率は、乾燥した吸水性樹脂粉末を取り出し、250μm〜500μmの粒度に調整して吸収倍率を測定した。吸収倍率は、以下の方法により測定した。
(吸収倍率の測定方法)
吸収倍率の測定は、JIS K 7223(1996)に準拠して行う。目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801−1:2000)を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製する。測定試料1.00gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れる。試料の入ったナイロン袋を、生理食塩水に浸漬させる。浸漬開始から60分後にナイロン袋を生理食塩水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後、試料の質量(F1)を測定する。また、試料を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量F0(g)を測定する。そして、これら質量F1、F0および試料の質量から、次式に従って、目的とする吸収倍率を算出する。
吸収倍率(g/g)=(F1−F0)/試料の質量
表1の結果から、明らかなように、吸水性樹脂粉末が、吸水することにより凝集してなる吸水性樹脂粉末の凝集物に、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を加えて混合すると、吸水性樹脂粉末の凝集物が粒状になる。そして、粒状の吸水性樹脂粉末は、含水率を約3質量%以下に乾燥し得ることが分かる。一方、ゲル状の吸水性樹脂は、表面のみ乾燥するが、内部は未乾燥のままであった。
図3は、脱水処理後の沈降物(吸水性樹脂の凝集物)を表す図面代用写真である。図4は、脱水処理後の沈降物(吸水性樹脂の凝集物)を、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩として、塩化アンモニウム(処理例1)で処理した例を示している。図5は、脱水処理後の沈降物(吸水性樹脂の凝集物)を、塩化カリウムを用いて処理した例を示している。図4から、明らかなように、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を用いた場合、吸水性樹脂の凝集物は、粒状になっていることがわかる。一方、図5のように塩化カリウムを用いた場合、浸透圧により、吸水性樹脂から水が排出しているが、凝集物のままであり乾燥が困難であった。
本発明の吸収体は、例えば、人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品に好適に使用でき、特に失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、母乳パッドなどの吸収性物品に好適に利用できる。
1:吸水性樹脂粉末

Claims (9)

  1. 吸水性樹脂粉末が吸水することにより凝集してなる吸水性樹脂粉末の凝集物であって、脱水剤として、2価金属塩を用いて脱水処理されている吸水性樹脂粉末の凝集物に、強酸と窒素含有塩基性化合物との塩を加えて混合することを特徴とする吸水性樹脂の処理方法。
  2. 得られた混合物をさらに乾燥する請求項1に記載の吸水性樹脂の処理方法。
  3. 前記吸水性樹脂粉末は、アクリル酸を主たる構成成分とする吸水性樹脂粉末である請求項1または2に記載の吸水性樹脂の処理方法。
  4. 前記2価金属塩は、塩化カルシウムである請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂の処理方法。
  5. 前記強酸は、水・25℃の酸解離定数が4.26未満の酸である請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂の処理方法。
  6. 前記窒素含有塩基性化合物は、アミン化合物およびピリジン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸水性樹脂の処理方法。
  7. 請求項1、3〜6の処理方法により得られた粒状の吸水性樹脂を乾燥することを特徴とする再生吸水性樹脂粉末の製造方法。
  8. 請求項1、3〜6の処理方法により得られた粒状の吸水性樹脂を乾燥することを特徴とする土壌改良材の製造方法。
  9. 請求項1、3〜6の処理方法により得られた粒状の吸水性樹脂を乾燥することを特徴とする固形燃料の製造方法。
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