トリベの予熱には、予熱バーナーが使用される。予熱バーナーは、トリベの頂部開口に着脱可能に設置されるハッチと、ハッチから下方へ延びる燃焼ノズルとを有する。燃焼バーナーでトリベを所定温度に予熱するには、燃焼ノズルをトリベの収容スペースに挿入し、ハッチをトリベの頂部開口に設置した後、燃料に点火して燃焼ガスの炎をノズルの火口からトリベに向かって吹き出し、炎の直火によってトリベの頂底壁や周壁を加熱する。しかし、炎の直火でトリベの頂底壁や周壁を加熱すると、トリベの頂底壁や周壁のうちの炎が直接あたる部分とそれ以外の部分とで温度勾配が生じ、トリベ全域を満遍なく加熱することができない。また、トリベの底壁や周壁のうちの炎が直接あたる部分においてその温度が急上昇して膨張し、炎が直接あたる部分とそれ以外の部分との境界部分の耐熱キャスタにクラックやピンホールが発生する場合がある。トリベの頂底壁や周壁の耐熱キャスタにクラックやピンホールが生じると、トリベの頂底壁や周壁から耐熱キャスタをはつり、新たな耐熱キャスタの層を頂底壁や周壁に形成する改修作業をしなければならず、その間のトリベの使用が不能になるのみならず、トリベの改修作業に時間と費用とを要する。
本発明の目的は、予熱時におけるトリベの部分的な温度の急上昇を防ぐことができ、予熱時のトリベにおけるクラックやピンホールの発生を防ぐことができるトリベ予熱装置を提供することにある。本発明の他の目的は、トリベ全域を満遍なく加熱することができ、トリベ全域の温度を略同一に予熱することができるトリベ予熱装置を提供することにある。
前記課題を解決するための本発明の前提は、溶解した金属の溶湯を収容可能な所定容積の収容スペースと溶湯を注入する頂部開口と溶湯を注湯する注湯口とを有するトリベを事前に予熱するトリベ予熱装置である。
前記前提における本発明の特徴は、トリベ予熱装置が、トリベの頂部開口に着脱可能に設置されるハッチと、ハッチの上部に設置されて所定温度の燃焼ガスを作るバーナーと、燃焼ガスの炎を吹き出す火口を有してハッチの下部から下方へ延びる燃焼ノズルと、ハッチの下部に連接されて燃焼ノズルを包被し、トリベの収容スペースに挿脱可能に挿入される放熱ドラムとを備え、放熱ドラムが、トリベの周壁の内周面から径方向内方に位置し、ハッチの下部からトリベの底壁に向かって延びる放熱周壁と、放熱周壁の下端縁に連接されてトリベの底壁の側に位置し、トリベの底壁から上方へ所定寸法離間する放熱底壁と、放熱周壁と放熱底壁とのうちの少なくとも一方に形成されて炎によって作られた所定温度の燃焼排ガスをトリベに向かって放出する放出孔とを有することにある。
本発明の一例としては、放出孔が、放熱周壁に形成されて燃焼排ガスをトリベの周壁に向かって放出する複数の第1放出孔と、放熱底壁に形成されて燃焼排ガスをトリベの底壁に向かって放出する複数の第2放出孔とである。
本発明の他の一例としては、トリベの周壁と放熱ドラムの放熱周壁とが円筒状に成型され、トリベ予熱装置では、トリベの収容スペースに放熱ドラムを挿入したときに、トリベの周壁の中心軸と放熱ドラムの放熱周壁の中心軸とが略一致し、または、トリベの周壁の中心軸に対して放熱ドラムの放熱周壁の中心軸が径方向へ偏心している。
本発明の他の一例として、トリベ予熱装置では、燃焼ノズルが放熱ドラムの放熱周壁の中央に位置して上下方向へ延び、燃焼ノズルの火口が放熱ドラムの放熱底壁から上方へ所定寸法離間するとともに放熱ドラムの放熱周壁の上下方向の寸法を3等分したときの放熱周壁の下方1/3の範囲内に位置している。
本発明の他の一例として、第1放出孔は、トリベの頂部開口に設置されるハッチの下部からトリベの底壁に向かって上下方向へ延びる放熱周壁のうち、放熱周壁の下端縁に連接された放熱底壁の側に延びる放熱周壁に形成され、放熱周壁の周り方向へ所定寸法離間して並んでいる。
本発明の他の一例として、第1放出孔は、トリベの頂部開口に設置されるハッチの下部からトリベの底壁に向かって上下方向へ延びる放熱周壁のうち、ハッチの側に延びる放熱周壁に形成され、放熱周壁の周り方向へ所定寸法離間して並んでいる。
本発明の他の一例としては、第2放出孔が放熱底壁の周縁部に沿って放熱底壁の周り方向へ所定寸法離間して並んでいる。
本発明の他の一例として、トリベ予熱装置では、トリベの収容スペースに放熱ドラムを挿入したときに、放熱ドラムの放熱底壁がトリベの収容スペースの上下方向の寸法を3等分したときの収容スペースの下方1/3の範囲内に位置する。
本発明の他の一例として、トリベ予熱装置では、トリベの収容スペースに放熱ドラムを挿入したときに、放熱ドラムの放熱周壁がトリベの周壁の内周面とトリベの周壁の中心軸との間の径方向の寸法を二等分したときのトリベの周壁の内周面の側の1/2の範囲内に位置する。
本発明にかかるトリベ予熱装置によれば、それがトリベの収容スペースに挿脱可能に挿入される放熱ドラムを有し、燃焼ノズルの火口から吹き出す燃焼ガスの炎が放熱ドラムに遮られ、予熱時に炎がトリベの周壁や頂底壁に直接あたることはなく、トリベの周壁や頂底壁の部分的な温度の急上昇および膨張を防ぐことができ、トリベの周壁や頂底壁におけるクラックやピンホールの発生を防ぐことができる。トリベ予熱装置は、予熱時にトリベの周壁や頂底壁にクラックやピンホールが発生することはないから、トリベの改修作業を行う必要はなく、改修作業にかかる時間や費用を省くことができ、耐用年数の期間、トリベを連続して使用することができる。トリベ予熱装置は、燃焼ガスの炎によって加熱された放熱ドラムの全域からトリベの周壁や頂底壁に向かって熱エネルギーが放出されるとともに、放熱周壁と放熱底壁とのうちの少なくとも一方に形成された放出孔からトリベに向かって所定温度の燃焼排ガスが放出されるから、放熱ドラムを介して燃焼ガスの熱エネルギーをトリベに効率よく伝えることができ、トリベ全域を所定の温度に予熱することができる。
放出孔が放熱周壁に形成された複数の第1放出孔と放熱底壁に形成された複数の第2放出孔とであるトリベ予熱装置は、放熱周壁に形成された第1放出孔からトリベの周壁に向かって所定温度の燃焼排ガスが放出され、放熱底壁に形成された第2放出孔からトリベの底壁に向かって所定温度の燃焼排ガスが放出されるから、トリベに加熱ムラが生じることはなく、放熱ドラムを介して燃焼ガスの熱エネルギーをトリベに効率よく伝えることができるとともに、トリベ全域を満遍なく均一に加熱することができ、トリベ全域を略同一の温度に予熱することができる。
トリベの周壁と放熱ドラムの放熱周壁とが円筒状に成型され、トリベの収容スペースに放熱ドラムを挿入したときに、トリベの周壁の中心軸と放熱ドラムの放熱周壁の中心軸とが略一致し、または、トリベの周壁の中心軸に対して放熱ドラムの放熱周壁の中心軸が径方向へ偏心しているトリベ予熱装置は、トリベの収容スペースに放熱ドラムを挿入したときに中心軸どうしが略一致する場合、トリベの周壁のすべての箇所においてトリベの周壁と放熱ドラムの放熱周壁との離間寸法が略同一となり、トリベの周壁のすべての箇所に放熱ドラムの放熱周壁から同一の熱エネルギーを伝えることができ、トリベの周壁に加熱ムラが生じることはなく、トリベの周壁全域を満遍なく均一に加熱することができ、トリベ全域を略同一の温度に予熱することができる。また、トリベの周壁の中心軸に対して放熱ドラムの放熱周壁の中心軸が径方向へ偏心する場合、トリベの周壁と放熱ドラムの放熱周壁との離間寸法が異なるが、放熱ドラムの全域からトリベの周壁や頂底壁に向かって熱エネルギーが放出されるとともに、放出孔からトリベに向かって所定温度の燃焼排ガスが放出されるから、放熱ドラムを介して燃焼ガスの熱エネルギーをトリベに効率よく伝えることができ、トリベ全域を所定の温度に予熱することができる。
燃焼ノズルが放熱ドラムの放熱周壁の中央に位置して上下方向へ延び、燃焼ノズルの火口が放熱ドラムの放熱底壁から上方へ所定寸法離間するとともに放熱ドラムの放熱周壁の上下方向の寸法を3等分したときの放熱周壁の下方1/3の範囲内に位置しているトリベ予熱装置は、燃焼ノズルの火口から吹き出す燃焼ガスの熱エネルギーが放熱ドラムの下方から上方に向かってドラムの全域に満遍なく伝わり、燃焼ガスによって放熱ドラムの全域が略均一に加熱されるから、トリベの周壁の全域に放熱ドラムの放熱周壁から熱エネルギーを伝えることができるとともに、トリベの底壁の全域に放熱ドラムの放熱底壁から熱エネルギーを伝えることができ、トリベ全域を満遍なく均一に加熱することができる。
前記第1放出孔が、トリベの頂部開口に設置されるハッチの下部からトリベの底壁に向かって上下方向へ延びる放熱周壁のうち、放熱周壁の下端縁に連接された放熱底壁の側に延びる放熱周壁に形成され、放熱周壁の周り方向へ所定寸法離間して並んでいるトリベ予熱装置は、放熱ドラムの放熱底壁の側であって放熱周壁の周り方向へ所定寸法離間して並ぶそれら第1放出孔からトリベの周壁に向かって所定温度の燃焼排ガスが放出され、燃焼排ガスの熱がトリベの周壁全域に確実に伝わるから、トリベの周壁に加熱ムラが生じることはなく、放熱ドラムを介して燃焼ガスの熱エネルギーをトリベの周壁全域に効率よく伝えることができるとともに、トリベの周壁全域を満遍なく均一に加熱することができる。
第1放出孔が、トリベの頂部開口に設置されるハッチの下部からトリベの底壁に向かって上下方向へ延びる放熱周壁のうち、ハッチの側に延びる放熱周壁に形成され、放熱周壁の周り方向へ所定寸法離間して並んでいるトリベ予熱装置は、ハッチの側であって放熱周壁の周り方向へ所定寸法離間して並ぶそれら第1放出孔からトリベの周壁に向かって所定温度の燃焼排ガスが放出され、燃焼排ガスの熱がトリベの周壁全域に確実に伝わるから、トリベの周壁に加熱ムラが生じることはなく、放熱ドラムを介して燃焼ガスの熱エネルギーをトリベの周壁全域に効率よく伝えることができるとともに、トリベの周壁全域を満遍なく均一に加熱することができる。
第2放出孔が放熱底壁の周縁部に沿って放熱底壁の周り方向へ所定寸法離間して並んでいるトリベ予熱装置は、放熱底壁の周縁部の周り方向へ所定寸法離間して並ぶそれら第2放出孔からトリベの底壁に向かって所定温度の燃焼排ガスが放出されるから、トリベの底壁に加熱ムラが生じることはなく、放熱ドラムを介して燃焼ガスの熱エネルギーをトリベの底壁全域に効率よく伝えることができるとともに、トリベの底壁全域を満遍なく均一に加熱することができる。
トリベの収容スペースに放熱ドラムを挿入したときに、放熱ドラムの放熱底壁がトリベの収容スペースの上下方向の寸法を3等分したときの収容スペースの下方1/3の範囲内に位置するトリベ予熱装置は、トリベの収容スペースに放熱ドラムを挿入したときに、放熱ドラムの放熱底壁がトリベの底壁から上方へ大きく離間すると、放熱ドラムの放熱底壁から放出される熱エネルギーや第2放出孔から放出される燃焼排ガスの熱がトリベの周壁の下部や底壁に伝わり難いが、放熱ドラムの放熱底壁が収容スペースの下方1/3の範囲内に位置するから、放熱ドラムの放熱底壁から放出される熱エネルギーや第2放出孔から放出される燃焼排ガスの熱をトリベの周壁や底壁に確実に伝えることができ、放熱ドラムを介してトリベの周壁全域や底壁全域を満遍なく均一に加熱することができる。
トリベの収容スペースに放熱ドラムを挿入したときに、放熱ドラムの放熱周壁がトリベの周壁の内周面とトリベの周壁の中心軸との間の径方向の寸法を二等分したときのトリベの周壁の内周面の側の1/2の範囲内に位置するトリベ予熱装置は、トリベの収容スペースに放熱ドラムを挿入したときに、放熱ドラムの放熱周壁がトリベの周壁から大きく離間すると、放熱ドラムの放熱周壁から放出される熱エネルギーや第1放出孔から放出される燃焼排ガスの熱がトリベの周壁に伝わり難いが、放熱ドラムの放熱周壁がトリベの周壁の内周面の側の1/2の範囲内に位置するから、放熱ドラムの放熱周壁から放出される熱エネルギーや第1放出孔から放出される燃焼排ガスの熱をトリベの周壁に確実に伝えることができ、放熱ドラムを介してトリベの周壁全域を満遍なく均一に加熱することができる。
一例として示すトリベ予熱装置10Aの斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかるトリベ予熱装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、放熱ドラム27の放熱底壁の平面図であり、図3は、トリベ11の収容スペース16へのトリベ予熱装置10Aの挿入を説明する図である。図4は、トリベ予熱装置10Aによるトリベ11の予熱を説明する図である。図1では、上下方向を矢印Aで示し、周り方向を矢印Bで示す。図1では、トリベ予熱装置10Aがクレーン(図示せず)で吊り上げられた状態で示す。図3,4では、トリベ11およびトリベ予熱装置10Aを断面図として示す。図3,4は、トリベ11から蓋を取り外した状態で示す。
トリベ予熱装置10Aは、トリベ11の予熱に使用される。なお、図示のトリベ11は、土瓶式吊り上げ取鍋であるが、このトリベ予熱装置10Aによって予熱可能なトリベ11には、土瓶式吊り上げ取鍋の他に、杓取鍋や連台式取鍋、ギヤー付き吊り上げ傾注取鍋、円筒式取鍋、ストッパー式取鍋が含まれる。
トリベ11は、鋳型への溶湯の鋳込み作業に使用される。トリベ11は、事前に所定温度に予熱された後、溶解した金属(たとえば、アルミや亜鉛等)の溶湯を収容し、その溶湯を鋳型まで搬送する。トリベ11は、図3に示すように、円形状の頂壁12および円形状の底壁13と、円筒状の周壁14と、円形状の蓋(図示せず)と、注湯筒15とから形成されている。トリベ11は、頂底壁12,13や周壁14に囲繞されて溶湯を収容可能な所定容積の収容スペース16と、頂壁12に作られた円形状の頂部開口17と、注湯筒15の先端に作られて溶湯を鋳型に注湯する注湯口18とを有する。
頂壁12および蓋は、所定の厚みを有する耐熱キャスタ19(不定形耐火物)から作られている。底壁13や周壁14、注湯筒15は、所定の厚みを有する耐熱キャスタ19と所定の厚みを有する断熱キャスタ20(不定形耐火物)とから作られ、耐熱キャスタ19が収容スペース16の側(内側)に位置し、断熱キャスタ20が外側に位置する2層構造である。底壁13には、断熱キャスタ20から作られた台座21が取り付けられている。注湯口18には、耐熱キャスタ19から作られて注湯口18を開閉可能な口蓋22が設置されている。トリベ11では、溶湯が頂部開口17から収容スペース16に注入された後、蓋によって頂部開口17が気密に密閉される。
トリベ予熱装置10Aは、トリベ11の頂部開口17(頂壁12)に着脱可能に設置されるハッチ23と、ハッチ23の上部に取り付けられたバーナー24と、ハッチ23の下部に取り付けられた燃焼ノズル25および断熱スリーブ26と、ハッチ23の下部に取り付けられた放熱ドラム27とを備えている。ハッチ23は、所定の厚みを有する耐熱キャスタ19から作られ、その平面形状が円形に成形されている。ハッチ23は、それがトリベ11の頂部開口17(頂壁12)に設置された場合、固定手段(図示せず)を介してトリベ11の頂壁12に強固に固定され、頂部開口17を気密に密閉する。ハッチ23の周縁部にはフック28が固定され、それらフック28に吊りワイヤー29が取り付けられている。
バーナー24は、気体燃料(天然ガスや石油分解ガス、液化石油ガス、水素ガス等)または液体燃料(軽油や灯油、重油等)に点火し、それら燃料を燃焼させて所定温度(高温)の燃焼ガスを作る。バーナー24には、図示はしていないが、燃焼用空気を給気する給気口と、バーナー24の上流側に設置されてバーナー24に燃焼用空気を給気するとともに燃焼ガスを燃焼ノズル25に送る給気ファンとを備えている。気体燃料を使用する場合、ガス栓に連結されたガス供給ホース(図示せず)からバーナー24に気体燃料(ガス)が供給される。液体燃料を使用する場合、バーナー24に燃料タンク(図示せず)が設置され、燃料タンクからバーナー24に液体燃料(油)が供給される。
燃焼ノズル25は、ステンレスやセラミック、耐熱合金から作られ、円筒状に成形されている。燃焼ノズル25は、ハッチ23を貫通してバーナー24につながるとともに、ハッチ23の下部から下方へ延びている。燃焼ノズル25は、ハッチ23の中央に位置し、その中心軸がハッチ23の中心に一致している。燃焼ノズル25は、バーナー24から送られた燃焼ガスの炎を吹き出す火口30を有する。
断熱スリーブ26は、耐熱キャスタ19から作られ、円筒状に成形されている。断熱スリーブ26は、ハッチ23の下部から下方へ延び、燃焼ノズル25の外周面の全域を包被している。ハッチ23から下方へ延びる断熱スリーブ26の長さ寸法は、ハッチ23から下方へ延びる燃焼ノズル25のそれよりも長い。断熱スリーブ26は、燃焼ノズル25から放出される燃焼ガスの熱が直接ノズル25に伝わるのを防ぎ、燃焼ガスの熱によるノズル25の損傷を防ぐ。
放熱ドラム27は、ハッチ24の下部に連接されて燃焼ノズル25の全体および断熱スリーブ26の全体を包被している。放熱ドラム27は、トリベ11の頂部開口17から収容スペース16に挿脱可能に挿入される。放熱ドラム27は、ハッチ24の下部からトリベ11の底壁13に向かって延びる放熱周壁31と、トリベ11の底壁13から上方へ所定寸法離間する放熱底壁32とを有する。
放熱周壁31は、ステンレスやセラミック、耐熱合金から作られ、円筒状に成形されている。放熱周壁31には、それを貫通する円形の複数の第1放出孔33(放出孔)が作られている。それら第1放出孔33は、放熱ドラム27の放熱底壁33の側に延びる放熱周壁31に形成され、放熱周壁31の周り方向へ略等間隔離間(所定寸法離間)して並んでいる。第1放出孔33は、燃焼ガスの炎によって作られた所定温度の燃焼排ガスを放熱ドラム27の外側に放出する。第1放出孔33は、放熱周壁31の上下方向の寸法L1を2等分したときの放熱周壁31の下方1/2の範囲内に形成されている。
放熱底壁32は、ステンレスやセラミック、耐熱合金から作られている。放熱底壁32は、円形に成形され、放熱周壁31の下端縁に連接されている。放熱底壁32には、それを貫通する円形の複数の第2放出孔34(放出孔)が作られている。それら第2放出孔34は、放熱底壁31の周縁部に沿って形成され、放熱底壁の周り方向へ略等間隔離間(所定寸法離間)して並んでいるとともに、放熱底壁31の中心を取り囲むように放熱底壁31の周り方向へ略等間隔離間(所定寸法離間)して並んでいる。したがって、第2放出孔34は放熱底壁31の中心部に形成されていない。なお、燃焼ノズル25の火口30は、放熱ドラム27の放熱底壁32から上方へ所定寸法離間するとともに、放熱ドラム27の放熱周壁31の上下方向の寸法L1を3等分したときの放熱周壁31の下方1/3の範囲内に位置している。なお、放熱周壁31に複数の第1放出孔33が作られ、放熱底壁32に第2放出孔34が作られていない場合がある。また、放熱底壁32に複数の第2放出孔34が作られ、放熱周壁31に第1放出孔33が作られていない場合がある。
トリベ予熱装置10Aをトリベ11の収容スペース16に挿入する手順の一例は、以下のとおりである。トリベ11から蓋を取り外すとともに、口蓋22を旋回させて注湯口18を開放する。次に、クレーンのフックに吊りワイヤー29を引っ掛け、クレーンによってトリベ予熱装置10Aを吊り上げる。なお、トリベ11から蓋が取り外されることで、トリベ11の頂部開口17が開放されているが、蓋が蝶番を介してトリベ11の頂壁12に取り付けられている場合は、蓋を旋回させてトリベ11の頂部開口17を開放する。
トリベ予熱装置10Aを吊り上げた後、クレーンによって予熱装置10Aをトリベ11の頂部開口17の直上に移動させる。次に、図3に矢印X1で示すように、予熱装置10Aを次第に下降させ、トリベ11の収容スペース16に放熱ドラム27を徐々に挿入する。放熱ドラム27を収容スペース16に挿入する過程において、トリベ予熱装置10Aのハッチ23がトリベ11の頂壁12に当接すると、予熱装置10Aのそれ以上の下降が停止するとともに、図4に示しように、放熱ドラム27全体(燃焼ノズル25および断熱スリーブ26)が収容スペース16に位置する。この状態で固定手段(図示せず)によって予熱装置10Aのハッチ23をトリベ11の頂壁12に強固に固定する。ハッチ23を頂壁12に固定すると、トリベ11の頂部開口17が気密に密閉される。
トリベ11の収容スペース16に放熱ドラム27を挿入すると、放熱ドラム27がトリベ11の周壁14の内周面36から径方向内方に位置し、放熱周壁31がハッチの下部からトリベ11の底壁13に向かって上下方向へ垂直に延びるとともに、放熱底壁32がトリベ11の底壁13の近傍に位置して底壁13から上方へ所定寸法離間する。また、トリベ11の周壁14の中心軸と放熱ドラム27の放熱周壁31の中心軸とが略一致する。
なお、図示はしていないが、トリベ11の収容スペース16に放熱ドラム27を挿入したときに、トリベ11の周壁14の中心軸に対して放熱ドラム27の放熱周壁31の中心軸が径方向へ偏心し、トリベ11の周壁14の中心軸と放熱ドラム27の放熱周壁31の中心軸とがずれる場合がある。
トリベ予熱装置10Aでは、トリベ11の収容スペース16に放熱ドラム27を挿入したときに、ドラム27の放熱底壁32がトリベ11の収容スペース16の上下方向の寸法L2を3等分したときの収容スペース16の下方1/3の範囲内に位置する。また、放熱ドラム27の放熱周壁32がトリベ11の周壁14の内周面36とトリベ11の周壁14の中心軸との間の径方向の寸法L3を二等分したときのトリベ11の周壁14の内周面36の側の1/2の範囲内に位置する。
このトリベ予熱装置10Aによるトリベ11の予熱は、以下のとおりである。なお、トリベ11の収容スペース16には、溶湯として溶解したアルミが収容されるものとする。また、図示はしていないが、注湯口18から収容スペース16に温度センサが挿入されている。温度センサやバーナー24は、コントローラ(図示せず)に接続されている。温度センサは、トリベ11の予熱中に収容スペース16の温度を計測し、計測した実測温度をコントローラに送信する。コントローラは、温度センサから送信された実測温度とあらかじめ設定された設定温度(たとえば、700〜800℃)とを比較し、実測温度が設定温度の範囲内に入った場合、予熱が完了したと判断し、バーナー24のスイッチをOFFにする。
トリベ予熱装置10A(放熱ドラム27)をトリベ11の収容スペース16に挿入した後、コントローラのテンキーユニットからバーナー24のスイッチをONして、バーナー24を起動させる。バーナー24が起動すると、点火された燃料が燃焼して燃焼ガスが作られ、その燃焼ガスが給気ファンによって燃焼ノズル25に送られる。燃焼ガスが燃焼ノズル25を通って火口30に達し、図4に示すように、火口30から炎37が吹き出す。
トリベ予熱装置10Aでは、燃焼ガスの炎37によって放熱ドラム27が加熱され、放熱ドラム27全体の温度が約750〜850℃に上昇する。燃焼ガスの炎37によって所定温度に加熱された放熱ドラム27の放熱周壁31全域からトリベ11の周壁14に向かって熱エネルギーが放出されるとともに、放熱ドラム27の放熱底壁32全域からトリベ11の底壁13に向かって熱エネルギーが放出される。さらに、図4に矢印X2で示すように、燃焼ガスの炎37によって作られた高温の燃焼排ガスが放熱周壁31に形成された第1放出孔33からトリベ11の周壁14に向かって放出されるとともに、図4に矢印X3で示すように、燃焼ガスの炎37によって作られた高温の燃焼排ガスが放熱底壁32に形成された第2放出孔34からトリベ11の底壁13に向かって放出される。
トリベ11の周壁14や頂壁12は、放熱ドラム27の放熱周壁31から放出された熱によって次第に加熱されるとともに、第1放出孔33から放出された燃焼排ガスによって次第に加熱される。トリベ11の底壁13は、放熱ドラム27の放熱底壁32から放出された熱によって次第に加熱されるとともに、第2放出孔34から放出された燃焼排ガスによって次第に加熱される。なお、燃焼排ガスは、放熱ドラム27とトリベ11の底壁13や周壁14との間の収容スペースを流動した後、図4に矢印X4で示すように、注湯筒15に流入し、注湯筒15を通って注湯口18からトリベ11の外部に放出される。実測温度が設定温度の範囲内に入ると、コントローラがバーナー24のスイッチをOFFにし、トリベ11の予熱が完了する。
トリベ予熱装置10Aによって、トリベ11を予熱した後、図3に矢印X5で示すように、クレーンによって予熱装置10Aを次第に上昇させ、放熱ドラム27をトリベ11の収容スペース16から徐々に引き抜く。放熱ドラム27をトリベ11の頂部開口17の上方へ吊り上げた後、トリベ予熱装置10Aをトリベ11の外側に移動させ、トリベ11の収容スペース16に溶解したアルミ(溶湯)を注入し、蓋によって頂部開口17を密閉し、トリベ11を鋳型まで搬送する。
図5は、他の一例として示すトリベ予熱装置10Bの斜視図であり、図6は、トリベ予熱装置10Bによるトリベ11の予熱を説明する図である。図5では、上下方向を矢印Aで示し、周り方向を矢印Bで示す。図5では、トリベ予熱装置10Bがクレーン(図示せず)で吊り上げられた状態で示す。図6では、トリベ11およびトリベ予熱装置10Bを断面図として示す。図6は、トリベ11から蓋を取り外した状態で示す。
このトリベ予熱装置10Bが図1のそれと異なるところは、第1放出孔33aが放熱ドラム27の放熱底壁32の側に延びる放熱周壁31に形成されているのみならず、第1放出孔33bがハッチ23の側に延びる放熱周壁31に形成されている点にある。なお、トリベ予熱装置10Bのその他の構成は、図1のトリベ予熱装置10Aのそれらと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1のトリベ予熱装置10Aの説明を援用することで、このトリベ予熱装置10Bにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。
トリベ予熱装置10Bは、図1のそれと同様に、トリベ11の頂部開口17(頂壁12)に着脱可能に設置されるハッチ23と、ハッチ23の上部に取り付けられたバーナー24と、ハッチ23の下部に取り付けられた燃焼ノズル25および断熱スリーブ26と、ハッチ23の下部に取り付けられた放熱ドラム27とを備えている。放熱周壁31には、それを貫通する円形の複数の第1放出孔33aと第1放出孔33bとが作られている。
第1放出孔33aは、放熱ドラム27の放熱底壁33の側に延びる放熱周壁31に形成され、放熱周壁31の周り方向へ略等間隔離間して並び、第1放出孔33bは、ハッチ23の側に延びる放熱周壁31に形成され、放熱周壁31の周り方向へ略等間隔離間して並んでいる。第1放出孔33a,33bは、燃焼ガスの炎によって作られた所定温度の燃焼排ガスを放熱ドラム27の外側に放出する。第1放出孔33aは、放熱周壁31の上下方向の寸法L1を2等分したときの放熱周壁31の下方1/2の範囲内に形成されているとともに、第1放出孔33bは、放熱周壁31の上下方向の寸法L1を2等分したときの放熱周壁31の上方1/2の範囲内に形成されている。なお、放熱周壁31に複数の第1放出孔33bが作られ、放熱周壁31に第1放出孔33aが作られていない場合がある。また、放熱周壁31に複数の第1放出孔33bが作られ、放熱周壁31に第1放出孔33aが作られておらず、さらに、放熱底壁32に第2放出孔34が作られていない場合がある。
トリベ予熱装置10Bをトリベ11の収容スペース16に挿入する手順は、トリベ予熱装置10Aのそれと同一である。トリベ11の収容スペース16に放熱ドラム27を挿入すると、放熱ドラム27がトリベ11の周壁14の内周面36から径方向内方に位置し、放熱周壁31がハッチの下部からトリベ11の底壁13に向かって上下方向へ垂直に延びるとともに、放熱底壁32がトリベ11の底壁13の近傍に位置して底壁13から上方へ所定寸法離間する。また、トリベ11の周壁14の中心軸と放熱ドラム27の放熱周壁31の中心軸とが略一致する。
トリベ予熱装置10Bでは、トリベ11の収容スペース16に放熱ドラム27を挿入したときに、ドラム27の放熱底壁32がトリベ11の収容スペース16の上下方向の寸法L2を3等分したときの収容スペース16の下方1/3の範囲内に位置する。また、放熱ドラム27の放熱周壁32がトリベ11の周壁14の内周面36とトリベ11の周壁14の中心軸との間の径方向の寸法L3を二等分したときのトリベ11の周壁14の内周面36の側の1/2の範囲内に位置する。
トリベ予熱装置10B(放熱ドラム27)をトリベ11の収容スペース16に挿入した後、バーナー24が起動すると、点火された燃料が燃焼して燃焼ガスが作られ、その燃焼ガスが給気ファンによって燃焼ノズル25に送られる。燃焼ガスが燃焼ノズル25を通って火口30に達し、図6に示すように、火口30から炎37が吹き出す。燃焼ガスの炎37によって放熱ドラム27が加熱され、放熱ドラム27全体の温度が約750〜850℃に上昇する。
燃焼ガスの炎37によって所定温度に加熱された放熱ドラム27の放熱周壁31全域からトリベ11の周壁14に向かって熱エネルギーが放出されるとともに、放熱ドラム27の放熱底壁32全域からトリベ11の底壁13に向かって熱エネルギーが放出される。さらに、図6に矢印X2で示すように、燃焼ガスの炎37によって作られた高温の燃焼排ガスが放熱周壁31に形成された第1放出孔33a,33bからトリベ11の周壁14に向かって放出されるとともに、図6に矢印X3で示すように、燃焼ガスの炎37によって作られた高温の燃焼排ガスが放熱底壁32に形成された第2放出孔34からトリベ11の底壁13に向かって放出される。
トリベ11の周壁14や頂壁12は、放熱ドラム27の放熱周壁31から放出された熱によって次第に加熱されるとともに、第1放出孔33a,33bから放出された燃焼排ガスによって次第に加熱される。トリベ11の底壁13は、放熱ドラム27の放熱底壁32から放出された熱によって次第に加熱されるとともに、第2放出孔34から放出された燃焼排ガスによって次第に加熱される。実測温度が設定温度の範囲内に入ると、コントローラがバーナー24のスイッチをOFFにし、トリベ11の予熱が完了する。トリベ11を予熱した後、トリベ予熱装置10Aと同様に、クレーンによってトリベ予熱装置10Bを次第に上昇させ、放熱ドラム27をトリベ11の収容スペース16から徐々に引き抜く。
トリベ予熱装置10A,10Bは、それらがトリベ11の収容スペース16に挿脱可能に挿入される放熱ドラム27を有し、燃焼ノズル25の火口30から吹き出す燃焼ガスの炎37が放熱ドラム27に遮られ、予熱時に炎37がトリベ11の周壁14や頂底壁12,13に直接あたることはなく、トリベ11の周壁14や頂底壁12,13の部分的な温度の急上昇および膨張を防ぐことができ、トリベ11の周壁14や頂底壁12,13におけるクラックやピンホールの発生を防ぐことができる。トリベ予熱装置10A,10Bは、予熱時にトリベ11の周壁14や頂底壁12,13にクラックやピンホールが発生することはないから、トリベ11の改修作業を行う必要はなく、改修作業にかかる時間や費用を省くことができ、耐用年数の期間、トリベ11を連続して使用することができる。
トリベ予熱装置10A,10Bは、燃焼ガスの炎37によって加熱された放熱ドラム27の全域からトリベ11の周壁14や頂底壁12,13に向かって熱エネルギーが放出されるとともに、放熱周壁31に形成された第1放出孔33(33a,33b)からトリベ11の周壁14に向かって所定温度の燃焼排ガスが放出され、放熱底壁32に形成された第2放出孔34からトリベ11の底壁13に向かって所定温度の燃焼排ガスが放出されるから、トリベ11に加熱ムラが生じることはなく、放熱ドラム27を介して燃焼ガスの熱エネルギーをトリベ11に効率よく伝えることができるとともに、トリベ11全域を満遍なく均一に加熱することができ、トリベ11全域を略同一の温度に予熱することができる。
トリベ予熱装置10A,10Bは、燃焼ノズル25の火口30が放熱ドラム27の放熱周壁31の上下方向の寸法L1を3等分したときの放熱周壁31の下方1/3の範囲内に位置しているから、燃焼ノズル25の火口30から吹き出す燃焼ガスの熱エネルギーが放熱ドラム27の下方から上方に向かってドラム27の全域に満遍なく伝わり、燃焼ガスによって放熱ドラム27の全域を略均一に加熱することができる。
トリベ予熱装置10A,10Bは、トリベ11の収容スペース16に放熱ドラム27を挿入したときに、トリベ11の周壁14の中心軸と放熱ドラム27の放熱周壁31の中心軸とが略一致するから、トリベ11の周壁14のすべての箇所においてトリベ11の周壁14と放熱ドラム27の放熱周壁31との離間寸法が略同一となり、トリベ11の周壁14のすべての箇所に放熱ドラム27の放熱周壁31から同一の熱エネルギーを伝えることができる。
なお、トリベ11の周壁14の中心軸に対して放熱ドラム27の放熱周壁31の中心軸が径方向へ偏心する場合、トリベ11の周壁14と放熱ドラム27の放熱周壁31との離間寸法が異なるが、放熱ドラム27の全域からトリベ11の周壁14や頂底壁12,13に向かって熱エネルギーが放出されるとともに、第1および第2放出孔33(33a,33b),34からトリベ11に向かって所定温度の燃焼排ガスが放出されるから、放熱ドラム27を介して燃焼ガスの熱エネルギーをトリベ11に効率よく伝えることができ、トリベ11全域を所定の温度に予熱することができる。
トリベ予熱装置10A,10Bは、トリベ11の収容スペース16に放熱ドラム27を挿入したときに、放熱ドラム27の放熱底壁32がトリベ11の収容スペース16の上下方向の寸法L2を3等分したときの収容スペース16の下方1/3の範囲内に位置するから、放熱ドラム27の放熱底壁32から放出される熱エネルギーや第2放出孔34から放出される燃焼排ガスの熱をトリベ11の周壁14や底壁13に確実に伝えることができる。また、トリベ11の収容スペース16に放熱ドラム27を挿入したときに、放熱ドラム27の放熱周壁31がトリベ11の周壁14の内周面36とトリベ11の周壁14の中心軸との間の径方向の寸法L3を二等分したときのトリベ11の周壁14の内周面36の側の1/2の範囲内に位置するから、放熱ドラム27の放熱周壁31から放出される熱エネルギーや第1放出孔33(33a,33b)から放出される燃焼排ガスの熱をトリベ11の周壁14に確実に伝えることができる。