JP6217932B2 - Cu金属材中に含有されるSiO2量の定量方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、当該Cuの製造工程において、微量のSiO2によるコンタミネーションが発生する場合がある。当該コンタミネーションが発生すると、微量のSiO2が不純物としてCu中に含まれることとなる。このような場合、当該微量不純物のSiO2がCuの電気的特性等に悪影響を与える可能性がある。この結果、Cu中におけるSiO2の含有量を把握することが極めて重要である。
まず、非特許文献1に記載された銅及び銅合金中のケイ素定量方法のモリブドケイ酸青吸光光度法やICP発光分光法は、銅及び銅合金試料を、硝酸または混酸、および、フッ化水素酸で分解し、ケイ素量を定量する方法である。そして、銅及び銅合金試料中において、ケイ素濃度が0.002質量%程度以上含有されるときは、有効な方法である。
しかし、ケイ素濃度が0.002質量%未満の場合のような微量のケイ素定量については適用外である。この為、Cu中にSiO2が0.002〜0.0001質量%の濃度で含有されているような場合、当該Cu中に含有されているSiO2濃度を定量することは困難であった。
しかしながら、非特許文献2に記載された高純度銅中における微量全ケイ素の定量方法は、超微量ケイ素を高感度に定量できる反面、高純度銅中に含有される溶解性ケイ素を含む全ケイ素を定量してしまうため、不溶性であるSiO2のみを選択的に定量できないといった問題がある。
そして、Cu中におけるSiO2以外のメタル分を選択的に溶解する酸を用いて当該メタル分を溶解除去し、不溶性のSiO2を残渣として残す。そして、当該残された不溶性のSiO2由来の残渣をろ過して捕集する。次に、当該捕集物を、アルカリ性を示すアルカリ系の融剤で溶解して溶液化したもののSi濃度を測定することによって、Cu中に含有されるSiO2量を定量できることを知見し、本発明に至った。
SiO 2 を含有するCu金属材を秤量したのち、硝酸、硝酸と塩酸との混酸、硫酸と硝酸との混酸から選択されるいずれかの酸を加えてメタル分を溶解除去し、残渣を捕集材により捕集する工程と、
前記捕集した残渣を含む捕集材を、灰化する工程と、
前記捕集材を灰化して得られた残渣へ、アルカリ性を示す融剤として炭酸ナトリウムを添加し加熱して融解塩とする工程と、
前記融解塩を酸性溶液により溶解し、融解塩の酸性溶液とする工程と、
前記融解塩の酸性溶液に含有されるSiO 2 濃度を測定し、前記SiO 2 を含有するCu金属材におけるSiO 2 の含有率を算出する工程とを有する、ことを特長とするCu金属材中に含有されるSiO 2 量の定量方法である。
第2の発明は、
前記融解塩の酸性溶液におけるSi濃度の測定方法としてICP−OES法を用いることを特長とする第1の発明に記載のCu金属材中に含有されるSiO 2 量の定量方法である。
以下に本発明に係るCu中のSiO2の定量方法の手順について説明する。
1)Cu試料の秤量
被測定対象であるCu試料の所定量を、適宜な容器へ秤量する。
ここで、容器にはSiを含有せず耐熱性のあるものが好ましく、例えばテフロン(登録商標)製ビーカーが好ましい。また、Cu試料の秤量や後述するアルカリ系融剤の秤量には、0.1mgまで秤量可能な天秤を用いることが好ましい。
被測定対象であるCu試料のメタル分を酸により溶解し、含有されるSiO2を残渣に残して分離する工程である。
まず、Cu試料のメタル分を溶解する酸について説明する。
当該酸としては、Cuのメタル分を溶解可能な酸化力のある酸であれば、特に限定することはないが、硝酸、硝酸と塩酸との混酸、硫酸と硝酸との混酸、等を使用することが出来る。例えば、塩酸と硝酸との混酸であれば、塩酸(3容量部)と、硝酸(1容量部)との混合物である混酸を用いることが出来、硫酸と硝酸との混酸であれば、硫酸(1容量部)と、硝酸(1容量部)との混合物である混酸を用いることが出来る。
尚、本発明において、「塩酸」とは12mol/Lの塩酸であり、「硝酸」とは14mol/Lの硝酸であり、「硫酸」とは9mol/Lの硫酸である。
秤量されたCu試料へ、上述した混酸を添加し、十分に撹拌後200℃程度の温度で加温し、当該試料中のメタル分が完全に溶解するまで加温し、Cuの溶解液を得る。
このとき、Cu試料は粉状または粒状であることが好ましい。
当該溶解の際、Cuへの混酸の添加量は、Cuを十分に溶解できる量であれば良い。
また加熱には、サンドバスやホットプレート等の使用が便宜である。
当該試料溶液を室温まで放冷したのち、フィルターを用いて当該試料溶液を濾過し、SiO2由来の残渣を捕集する。引き続き、フィルターと残渣とを超純水で十分に洗浄する。
当該濾過工程において、フィルターとしては、テフロン(登録商標)製等のふっ素を含まないフィルターであれば、特に限定することはなく使用可能であるが、孔径が0.2μm〜0.5μmのセルロースフィルターが好ましく使用できる。
SiO2由来の残渣を捕集した定量濾紙を坩堝に移入したのち、フィルターが黒く炭化するまで加熱する。引き続き坩堝を強熱し、フィルターが完全に燃焼し灰化するまで加熱する。
当該灰化工程において、坩堝としては、炭酸ナトリウムに不溶なPt製坩堝を使用することが好ましい。
前記フィルターが完全に燃焼し灰化したら、残渣を含む坩堝を放冷する。その後、坩堝へ融剤を添加し、坩堝を強熱しながら残渣を撹拌し、当該残渣が融剤へ完全に融解して、融解塩となるまで加熱する。
ここで、融剤としてはアルカリ性を示しSiを含まない、高純度のアルカリ系の融剤を用いることが好ましいが、炭酸ナトリウムを好ましく挙げることができる。
また、当該工程でアルカリ炭酸系の融剤を用いた融解を行う為、当該観点からも、当該アルカリ系炭酸の融剤に不溶なPt製坩堝を使用することが好ましい。
融解塩が生成した坩堝を室温まで放冷したのち、坩堝に超純水と酸とを添加して加温し、融解塩を完全に溶解する。得られた溶解液を放冷したのち、20mlのメスフラスコに移入して定容する。
尚、融解塩の溶解に使用する酸については、融解塩が溶解できれば特に限定することはないが、塩酸や硝酸を好ましく挙げることができる。坩堝の加熱には、サンドバスやホットプレート等が便宜である。
測定試料溶液のSi濃度測定には、ICP−OES装置を用いるのが便宜である。そこで以下、ICP−OES装置によるSi濃度の測定を例として説明する。
生成した融解塩を溶解した酸水溶液を、当該酸水溶液中のSiO2濃度に応じて、適宜希釈して測定試料溶液を調製する。
一方、測定試料溶液中のSi濃度に応じて、Si測定検量線溶液を調製する。このとき、測定試料溶液とSi測定検量線溶液とにおける、酸濃度や融剤濃度は同程度の濃度になるように調製することが好ましい。
ICP−OES装置によるSi濃度の測定波長は、共存元素の妨害がなければ、特に限定することはないが、最も感度の良い215.687nmの波長を用いることが好ましい。また、その他の測定条件については、メーカー推奨の条件を使用することが望ましい。当該ICP−OES装置を用いて測定試料溶液とSi測定検量線溶液とのSi濃度を測定し、当該測定値から試料溶液中のSiの含有量(g)を算出する。
尚、測定試料溶液中におけるSiの含有量測定に使用するICP−OES装置は、特に限定することはないが、例えば(株)日立ハイテクサイエンス社製のSPS3520UVや(株)島津製作所製のICPE−9000等が適用可能である。
本法の定量下限は、被測定対象であるCuにおけるSiO2の含有率を0.0001質量%程度まで定量可能である。
ICP−OESで測定したSiの含有量(g)を元に以下の式1を用いて、当該試料中のSiO2の含有率を算出する。
A1=(A2/W)×F×100・・・式1
但し、A1:被測定対象であるCuにおけるSiO2の含有率、
A2:測定試料溶液中におけるSi含有量(g)、
W:測定試料の試料採取量(g)、
F:Siの酸化係数(2.139)
以上説明したように、本発明に係るCu中のSiO2の定量方法を用いれば、Cu中における0.002〜0.0001質量%のSiO2を選択的に高感度で検出でき、且つ、精度良く定量可能である。したがって、本発明は、金属加工分野や半導体分野等で使用されるCu中のSiO2濃度のモニター方法として、好適に用いることが出来る。
また、本発明は、各種合金中の不溶性SiO2の定量にも応用可能である。
実施例1に係るCu粉試料として、A社製Cu粉〈1〉を準備した。300mlテフロン(登録商標)製ビーカー(n=5)へ、各々、当該Cu粉試料5gを秤量し投入した。
当該ビーカーへ、各々純水20mlと硝酸10mlとを注入し、時計皿で蓋をしてよく撹拌した。そして、当該ビーカーへ、さらに硝酸10mlを注入した。
当該ビーカーを室温まで放冷した後、0.45μmのセルロースフィルターを用いてビーカーの内容物を濾過し、さらにビーカーの内壁等に付着したSiO2由来の残渣を超純水で洗い流しながら、セルロースフィルターに捕集した。そして引き続き、当該セルロースフィルターと捕集された残渣とを、超純水で十分に洗浄した。
当該室温まで放冷された融解塩が入ったPt製の坩堝へ、超純水7mlと塩酸5mlとを添加し、引き続き、当該坩堝をホットプレートにより100℃の温度で加温し、融解塩を完全に酸中へ溶解した。そして、得られた融解塩を溶解した酸を、20mlのメスフラスコへ移入してメスアップし、実施例1に係る測定試料溶液を得た。
尚、当該検量線溶液調製の際、検量線溶液の粘性と測定試料溶液の粘性とを一致させる為、検量線溶液へ、測定試料溶液に含まれる融解塩と混酸とを、測定試料溶液と同濃度で添加する。これは、ICP−OESの測定においては、試料溶液中に含まれる融解塩濃度、混酸濃度に起因する粘性によって、当該試料溶液の装置への吸入量が変化して分析値に影響を受けることがあり、これを回避する為である。
尚、ICP−OES測定装置は、(株)日立ハイテクサイエンス社製のSPS3520UVを用いた。そして、当該ICP−OES測定装置の測定条件を表2に記載した。
実施例2に係るCu粉試料としてA社製Cu粉〈2〉を準備した。実施例1と同様にして、実施例2に係るCu粉試料中のSiO2含有率の定量値を測定した。これらの値、「定量値−1、2」の平均値も表1に記載した。
実施例3に係るCu粉試料としてA社製Cu粉〈3〉を準備した。実施例1と同様にして、実施例3に係るCu粉試料中のSiO2含有率の定量値を測定した。これらの値、「定量値−1、2」の平均値も表1に記載した。
実施例4に係るCu粉試料としてA社製Cu粉〈4〉を準備した。実施例1と同様にして、実施例4に係るCu粉試料中のSiO2含有率の定量値を測定した。これらの値、「定量値−1、2」の平均値も表1に記載した。
実施例5に係るCu粉試料としてB社製Cu粉〈1〉を準備した。実施例1と同様にして、実施例5に係るCu粉試料中のSiO2含有率の定量値を測定した。これらの値、「定量値−1、2」の平均値も表1に記載した。
実施例6に係るCu粉試料としてB社製Cu粉〈2〉を準備した。実施例1と同様にして、実施例6に係るCu粉試料中のSiO2含有率の定量値を測定した。これらの値、「定量値−1、2」の平均値も表1に記載した。
表1に示す結果から、実施例1から6において、SiO2含有率の各「定量値−1、2」の値、およびその平均値は、定量下限の付近で、併行値が良く一致しており、正確に定量可能であることが理解出来る。このことは、定量精度もRSD(相対標準偏差)の値で1.2〜5.4%であり、精度良く定量できていることからも理解出来る。また、添加回収率が102%であることからも、精度良く定量できることが理解出来る。
Claims (2)
- SiO2を含有するCu金属材を秤量したのち、硝酸、硝酸と塩酸との混酸、硫酸と硝酸との混酸から選択されるいずれかの酸を加えてメタル分を溶解除去し、残渣を捕集材により捕集する工程と、
前記捕集した残渣を含む捕集材を、灰化する工程と、
前記捕集材を灰化して得られた残渣へ、アルカリ性を示す融剤として炭酸ナトリウムを添加し加熱して融解塩とする工程と、
前記融解塩を酸性溶液により溶解し、融解塩の酸性溶液とする工程と、
前記融解塩の酸性溶液に含有されるSiO2濃度を測定し、前記SiO2を含有するCu金属材におけるSiO2の含有率を算出する工程とを有する、ことを特長とするCu金属材中に含有されるSiO2量の定量方法。 - 前記融解塩の酸性溶液におけるSi濃度の測定方法としてICP−OES法を用いることを特長とする請求項1に記載のCu金属材中に含有されるSiO2量の定量方法。
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