[実施の形態1] 以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の打撃工具を示す斜視図を、図2は図1の打撃工具の主要部分の拡大断面図を、図3は図2の破線円B部の拡大断面図をそれぞれ示している。
図1および図2に示すように、打撃工具としてのインパクトドライバ10は、充電および放電が可能な電池セルを収容した電池パック11と、この電池パック11から電力が供給されて駆動される電動モータ12とを有している。電動モータ12は、電気エネルギを運動エネルギに変換する駆動源である。インパクトドライバ10は、プラスチック等よりなるケーシング13を備えており、電動モータ12はケーシング13の内部に設けられている。
電動モータ12は、軸線Aを中心に回転する回転軸14を備えている。この回転軸14は、トリガスイッチ15を操作することで正方向または逆方向に回転される。つまり、トリガスイッチ15を操作することで、電池パック11から電動モータ12に電力が供給される。なお、回転軸14の回転方向は、トリガスイッチ15の近傍に設けられた切替スイッチ16を操作することで切り替えられる。
インパクトドライバ10は、ドライバビット等の先端工具17を支持するアンビル(出力部材)18を備えている。アンビル18は、SCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)等を鍛造成形または鋳造成形することで形成されている。アンビル18は、ケーシング13の内側に装着されたスリーブ19によって回転自在に支持されている。そして、アンビル18は軸線Aを中心に回転し、アンビル18の先端部分には、着脱機構20を介して先端工具17が着脱自在に設けられている。
スリーブ19は本発明における軸受部材を構成しており、スリーブ19には、軸線Aを中心に対向する一対の油溜め部19aが設けられている。そして、これらの油溜め部19aには、アンビル18の回転をスムーズにする潤滑剤としてのグリス(図示せず)が充填されている。油溜め部19aは、それぞれアンビル18の周囲に向けて開口されており、これにより、アンビル18の回転に伴って、アンビル18の周囲にグリスが供給される。
ケーシング13の内部で、かつ軸線Aに沿う方向の電動モータ12とアンビル18との間には、減速機21が設けられている。この減速機21は、電動モータ12の回転力をアンビル18に伝達する動力伝達装置であり、減速機21は、所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。減速機21は、回転軸14と同軸に配置されたサンギヤ22と、サンギヤ22の周囲を取り囲むように配置されたリングギヤ23と、サンギヤ22およびリングギヤ23の双方に噛み合わされた複数のプラネタリギヤ24と、各プラネタリギヤ24を自転可能、かつ公転可能に支持するキャリヤ25とを有している。そして、リングギヤ23はケーシング13に固定され、回転不能となっている。
キャリヤ25には、当該キャリヤ25とともに軸線Aを中心に回転するスピンドル(回転部材)26が一体に設けられている。つまり、電動モータ12の回転軸14,減速機21,スピンドル26,アンビル18は、軸線Aを中心としてそれぞれ配置されている。スピンドル26は、アンビル18と同様に、SCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)等を鍛造成形または鋳造成形することで形成されている。スピンドル26は、軸線Aに沿う方向のアンビル18と減速機21との間に設けられており、スピンドル26のアンビル18側とアンビル18のスピンドル26側とは、互いに相対回転可能に凹凸係合されている。この凹凸係合の詳細構造については後述する。
ケーシング13の内部で、かつ軸線Aに沿う方向の電動モータ12と減速機21との間には、略椀状に形成されたホルダ部材27が設けられている。ホルダ部材27の中心部分には軸受28が装着され、この軸受28は、スピンドル26における電動モータ12側の基端部分を回転自在に支持している。また、スピンドル26におけるアンビル18側の周囲には、一対の(2つの)溝状のスピンドルカム26aが設けられている。これらのスピンドルカム26aの内部には、スチールボール(鋼球)29の一部がそれぞれ入り込んでいる。
スピンドル26の周囲には、略環状に形成されたハンマ(打撃部材)30が設けられている。ハンマ30は、軸線Aに沿う方向の減速機21とアンビル18との間に配置されている。ハンマ30は、スピンドル26に対して相対回転可能であり、かつ軸線Aに沿う方向に相対移動可能となっている。ハンマ30の径方向内側には、軸線Aに沿う方向に延ばされた一対の(2つの)溝状のハンマカム30aが形成されている。これらのハンマカム30aの内部には、スチールボール29の一部がそれぞれ入り込んでいる。
このようにして、2つあるうちの一方のスピンドルカム26aと一方のハンマカム30aとを1組として、2つあるうちの一方のスチールボール29が保持されている。また、2つあるうちの他方のスピンドルカム26aと他方のハンマカム30aとを1組として、2つあるうちの他方のスチールボール29が保持されている。ここで、スチールボール29は金属製の転動体であるため、ハンマ30はスピンドル26に対して、スチールボール29が転動可能な範囲で軸線Aに沿う方向に移動可能となっている。また、ハンマ30はスピンドル26に対して、スチールボール29が転動可能な範囲で軸線Aを中心として円周方向に移動可能となっている。
スピンドル26の周囲であって、かつ軸線Aに沿う方向の減速機21とハンマ30との間には、鋼板よりなる環状プレート31が設けられている。また、軸線Aに沿う方向の環状プレート31とハンマ30との間には、コイルばね32が圧縮された状態で設けられている。キャリヤ25は、軸受28およびホルダ部材27に接触することで、軸線Aに沿う方向への移動が規制され、コイルばね32の押圧力はハンマ30に加えられている。これによりハンマ30は、コイルばね32の押圧力により、軸線Aに沿う方向でアンビル18に向けて押されている。
スピンドル26の周囲であって、かつ環状プレート31の径方向内側には、環状のストッパ33が設けられている。このストッパ33は、ゴム等の弾性体により形成され、スピンドル26に取り付けられている。そして、ストッパ33は、ハンマ30の軸線Aに沿う減速機21側への移動量を規制するようになっている。
ここで、先端工具17に打撃力を与える打撃機構SMは、スピンドル26,ハンマ30,アンビル18,スチールボール29およびコイルばね32により形成されている。そして、アンビル18の回転方向への負荷が大きくなると、ハンマ30の第1係合爪30bとアンビル18の第2係合爪18a(図3参照)とが、開放および係合を高速で繰り返して、これにより先端工具17に打撃力が発生する。ここで、ハンマ30の重量はアンビル18の重量よりも大きく設定され、ハンマ30は、スピンドル26の回転力をアンビル18の回転方向の打撃力に変換する。また、第1係合爪30bおよび第2係合爪18aは、軸線Aを中心にそれぞれ対向するよう2つずつ設けられている。ただし、ハンマ30の重量をアンビル18の重量より小さくしても良い。
次に、スピンドル26の先端側、つまりスピンドル26の軸線Aに沿う方向のアンビル18側と、アンビル18の基端側、つまりアンビル18の軸線Aに沿う方向のスピンドル26側との凹凸係合の詳細構造について、図3を用いて詳細に説明する。
スピンドル26の先端側には係合凹部26bが設けられている。この係合凹部26bは、軸線Aに沿う方向の減速機21側(図中左側)に向けて窪んでおり、軸線Aと交差する方向の断面が略円形に形成されている。係合凹部26bは、スピンドル26の先端側を軸線Aに沿うようドリル加工(切削加工)することで形成されている。したがって、係合凹部26bの底部には、底部側に向かうにつれて徐々に縮径する円錐面26cが形成されている。一方、係合凹部26bの開口部には、開口部側に向かうにつれて徐々に拡径する環状テーパ面26dが形成されている。なお、係合凹部26bはスピンドル26の径方向内側に形成されるため、係合凹部26bを設けるためにスピンドル26を予め大径に形成しておく必要は無い。
ここで、円錐面26cには、第1部材としてのスチールボール40が、環状線CLによって「線接触」されている。なお、環状テーパ面26dは、打撃機構SMを組み立てる際に、アンビル18の係合凸部18bを係合凹部26bに挿入し易くするための案内として機能するものである。
アンビル18の基端側には係合凸部18bが設けられている。この係合凸部18bは、有底の略円筒形に形成され、係合凸部18bの径方向内側には、軸線Aに沿う方向の先端工具17側(図中右側)に向けて窪んだ収容部18cが形成されている。この収容部18cの軸線Aと交差する方向の断面は略円形に形成され、収容部18cの底部側には平坦面18dが設けられている。ここで、収容部18cは、刃先が平坦のザグリ加工用のドリル(図示せず)を用いて切削加工を施すことにより形成される。
係合凸部18bの先端側(図中左側)で、かつ径方向外側には、先端側に向かうにつれて徐々に縮径する外側環状テーパ面18eが形成されている。また、係合凸部18bの先端側で、かつ径方向内側には、先端側に向かうにつれて徐々に拡径する内側環状テーパ面18fが形成されている。
ここで、平坦面18dには、第2部材としての円柱形状のニードルローラ41の軸方向に沿う一端面41aが、接触面CSによって「面接触」されている。また、外側環状テーパ面18eは、打撃機構SMを組み立てる際に、係合凸部18bをスピンドル26の係合凹部26bに挿入し易くするための案内として機能するものである。さらに、内側環状テーパ面18fは、収容部18cの内部に、ニードルローラ41およびスチールボール40を収容し易くするための案内として機能するものである。
このように、スピンドル26の軸線上において、スピンドル26のアンビル18側にスチールボール40を設け、アンビル18のスピンドル26側にニードルローラ41を設けている。これにより、打撃機構SMを組み立てた状態にすると、軸線Aに沿う方向のスチールボール40とニードルローラ41との間に部材接触部CPが設けられる。この部材接触部CPは、スチールボール40とニードルローラ41の軸方向に沿う他端面41bとの「点接触」により形成される。
つまり、部材接触部CPの「点接触」による接触面積は、スチールボール40とスピンドル26との「線接触」による接触面積よりも小さく、かつニードルローラ41とアンビル18との「面接触」による接触面積よりも小さくなっている。これにより、3つある接触部分のうちの部材接触部CPにおける摩擦係数μが最も小さくなるため、部材接触部CPにおいてスピンドル26とアンビル18との相対回転が支持される。
ここで、スチールボール40およびニードルローラ41は、汎用のボールベアリングやニードルベアリングに用いられる安価な汎用部品となっている。また、スチールボール40およびニードルローラ41の材質はいずれも同じであって、スピンドル26およびアンビル18を形成するSCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)よりも高い硬度のSUJ材(高炭素クロム軸受鋼鋼材)となっている。よって、スチールボール40とニードルローラ41とは同じ硬度となっている。このように、スチールボール40およびニードルローラ41は、インパクトドライバ10のために設計された専用部品では無く汎用部品であるため、インパクトドライバ10のコスト低減に有利となっている。
スチールボール40およびニードルローラ41には、インパクトドライバ10の使用時において、特に打撃力を発生している時には、大きな軸力が掛かり、さらには当該状態のもとで互いに相対回転を行う。しかし、スチールボール40およびニードルローラ41はいずれも高い硬度で、かつ同じ硬度として硬度差を無くしているため、従前のように接触する物同士のいずれか一方が早期に摩耗するようなことが発生しない。
以上詳述したように、実施の形態1に係るインパクトドライバ10によれば、スピンドル26のアンビル18側に、スピンドル26およびアンビル18よりも高い硬度のスチールボール40を設け、アンビル18のスピンドル26側に、スピンドル26およびアンビル18よりも高い硬度のニードルローラ41を設け、スチールボール40とニードルローラ41との間に設けられる部材接触部CPにより、スピンドル26およびアンビル18を互いに相対回転自在に支持させた。
これにより、スチールボール40とニードルローラ41との硬度を同じにして硬度差を無くし、かつスチールボール40とニードルローラ41との間に設けられる部材接触部CPにより軸力を受けることができる。したがって、スチールボール40およびニードルローラ41よりも硬度が低いスピンドル26やアンビル18の摩耗を防止することができる。よって、長期に亘ってスムーズな動作を可能として、作業能力の向上および長寿命化を図ることができる。
また、実施の形態1に係るインパクトドライバ10によれば、スチールボール40の硬度とニードルローラ41の硬度とが同じ硬度であるため、硬度差に起因した摩耗を無くすことができる。また、スチールボール40とニードルローラ41を汎用部品で構成できるので、インパクトドライバ10の低廉化を実現できる。
さらに、実施の形態1に係るインパクトドライバ10によれば、部材接触部CPが「点接触」で形成されるため、スピンドル26とアンビル18との相対回転をスムーズに行わせることができ、作業能力をより向上させつつ大幅な消費電力の低減を実現できる。
また、実施の形態1に係るインパクトドライバ10によれば、部材接触部CPの接触面積(点接触)が、スチールボール40とスピンドル26との接触面積(線接触)よりも小さく、かつニードルローラ41とアンビル18との接触面積(面接触)よりも小さいため、部材接触部CPにおいて、スピンドル26およびアンビル18の相対回転を確実に支持させることができる。
さらに、実施の形態1に係るインパクトドライバ10によれば、スチールボール40およびスピンドル26が、アンビル18の収容部18cに収容されるので、打撃機構SMの組み立て作業性を向上させ、ひいてはインパクトドライバ10を容易に組み立てることができる。また、収容部18cは係合凹部26bに凹凸係合されるため、打撃機構SMの径方向寸法が大きくなることが無く、よって、インパクトドライバ10の大型化を避けることができる。
[実施の形態2] 次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図4は実施の形態2に係る打撃機構の図3に対応した断面図を示している。
図4に示すように、実施の形態2においては、実施の形態1に比して、スピンドル26のアンビル18側にニードルローラ41を設け、アンビル18のスピンドル26側にスチールボール40を設けた点が異なっている。つまり、軸線Aに沿う方向のスチールボール40とニードルローラ41との配置位置が、実施の形態1に対して逆になっている。これに伴い、収容部18cの底部にドリル加工を施して円錐面18gを形成し、係合凹部26bの底部にドリル加工の後にザグリ加工を施して環状の平坦面26eを形成している。
これにより、実施の形態2においては、円錐面18gとスチールボール40とが、環状線CLによって「線接触」され、環状の平坦面26eとニードルローラ41の他端面41bとが環状の接触面CSによって「面接触」されている。なお、スチールボール40とニードルローラ41の一端面41aとの間には、「点接触」により形成された部材接触部CPが設けられる。
以上のように形成した実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。なお、実施の形態2においては、ニードルローラ41が本発明における第1部材を構成し、スチールボール40が本発明における第2部材を構成している。
[実施の形態3] 次に、本発明の実施の形態3について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図5は実施の形態3に係る打撃機構の図3に対応した断面図を示している。
図5に示すように、実施の形態3においては、実施の形態1に比して、スピンドル26とアンビル18との凹凸係合の関係が逆の関係になっている。つまり、スピンドル26の先端側に係合凸部26fが設けられ、アンビル18の基端側に係合凹部18hが設けられている。
係合凸部26fの径方向内側には、軸線Aに沿う方向の減速機21側(図中左側)に向けて窪んだ収容部26gが形成されている。この収容部26gの底部には、ドリル加工により形成された円錐面26hが形成されている。一方、係合凹部18hは、軸線Aに沿う方向の先端工具17側(図中右側)に向けて窪んでおり、係合凹部18hの底部には、ドリル加工の後にザグリ加工を施すことで環状の平坦面18iが形成されている。
なお、係合凸部26fの先端側(図中右側)で、かつ径方向外側には、先端側に向かうにつれて徐々に縮径する外側環状テーパ面26iが形成されている。また、係合凸部26fの先端側で、かつ径方向内側には、先端側に向かうにつれて徐々に拡径する内側環状テーパ面26jが形成されている。さらに、係合凹部18hの開口部には、開口部側に向かうにつれて徐々に拡径する環状テーパ面18jが形成されている。
これらの外側環状テーパ面26i,内側環状テーパ面26j,環状テーパ面18jは、実施の形態1と同様に、スピンドル26とアンビル18との凹凸係合を案内したり、収容部26gの内部に、スチールボール40およびニードルローラ41を収容し易くしたりするものである。
ここで、スピンドル26およびスチールボール40は環状線CLによって「線接触」され、アンビル18およびニードルローラ41の一端面41aは環状の接触面CSによって「面接触」されている。また、スチールボール40とニードルローラ41の他端面41bとは、「点接触」により形成された部材接触部CPが設けられる。
以上のように形成した実施の形態3においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
[実施の形態4] 次に、本発明の実施の形態4について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態3と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図6は実施の形態4に係る打撃機構の図3に対応した断面図を示している。
図6に示すように、実施の形態4においては、実施の形態3に比して、スピンドル26のアンビル18側にニードルローラ41を設け、アンビル18のスピンドル26側にスチールボール40を設けた点が異なっている。つまり、軸線Aに沿う方向のスチールボール40とニードルローラ41との配置位置が、実施の形態3に対して逆になっている。これに伴い、収容部26gの底部に、ドリル加工の後にザグリ加工を施して環状の平坦面26kを形成している。一方、係合凹部18hの底部のザグリ加工を省略してドリル加工による円錐面18kのみを形成している。
これにより、実施の形態4においては、円錐面18kとスチールボール40とが、環状線CLによって「線接触」され、環状の平坦面26kとニードルローラ41の他端面41bとが環状の接触面CSによって「面接触」されている。なお、スチールボール40とニードルローラ41の一端面41aとの間には、「点接触」により形成された部材接触部CPが設けられる。
以上のように形成した実施の形態4においても、上述した実施の形態3と同様の作用効果を奏することができる。なお、実施の形態4においては、ニードルローラ41が本発明における第1部材を構成し、スチールボール40が本発明における第2部材を構成している。
[実施の形態5] 次に、本発明の実施の形態5について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図7は実施の形態5に係る打撃機構の図3に対応した断面図を示している。
図7に示すように、実施の形態5においては、実施の形態1に比して、アンビル18のニードルローラ41側とスリーブ19側との間に連通路18mを設け、当該連通路18mにグリス(図示せず)を入れた点が異なっている。ここで、収容部18cの底部には、ドリル加工の後にザグリ加工を施すことで、円錐面18nと環状の平坦面18pとが形成されている。また、ニードルローラ41の一端面41aと円錐面18nとの間には、油溜め部18qが形成されている。
そして、連通路18mの一端側(図中右側)は、スリーブ19の油溜め部19aに連通され、連通路18mの他端側(図中左側)は、収容部18cの油溜め部18qに連通されている。連通路18mに充填されたグリスは、各油溜め部19a,18qに供給されるとともに、収容部18cとニードルローラ41との間の隙間を介して、スチールボール40側にも供給される。
実施の形態5においては、円錐面26cとスチールボール40とが、環状線CLによって「線接触」され、環状の平坦面18pとニードルローラ41の一端面41aとが環状の接触面CSによって「面接触」されている。なお、スチールボール40とニードルローラ41の他端面41bとの間には、「点接触」により形成された部材接触部CPが設けられる。
以上のように形成した実施の形態5においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態5においては、連通路18mに入れたグリスが、スチールボール40およびニードルローラ41を収容する収容部18cにも供給されるので、スチールボール40およびニードルローラ41の相対回転をよりスムーズにして、インパクトドライバ10の寿命をさらに延ばすことができる。
[実施の形態6] 次に、本発明の実施の形態6について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態5と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図8は実施の形態6に係る打撃機構の図3に対応した断面図を示している。
図8に示すように、実施の形態6においては、実施の形態5に比して、収容部18cにニードルローラ41を圧入によって固定し、油溜め部18qの容積を大きくした点が異なっている。なお、油溜め部18qの容積増大に伴い、軸方向の長さ寸法が若干短いニードルローラ41を採用している。
そして、実施の形態6においては、円錐面26cとスチールボール40とが、環状線CLによって「線接触」され、ニードルローラ41の外周面41cと収容部18cの内周面18rとの圧入による接触面CSによって「面接触」されている。なお、スチールボール40とニードルローラ41の他端面41bとの間には、「点接触」により形成された部材接触部CPが設けられる。
以上のように形成した実施の形態6においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態6においては、油溜め部18qの容積が大きく、かつ連通路18mを有するため、実施の形態1に比して用いるグリスの量を多くすることができる。よって、スリーブ19に対するアンビル18のスムーズな相対回転を、より長期に亘って維持することができ、ひいてはインパクトドライバ10の寿命をさらに延ばすことができる。
[実施の形態7] 次に、本発明の実施の形態7について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態5と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図9は実施の形態7に係る打撃機構の図3に対応した断面図を示している。
図9に示すように、実施の形態7においては、実施の形態5に比して、スピンドル26のアンビル18側にニードルローラ41を設け、アンビル18のスピンドル26側にスチールボール40を設けた点が異なっている。つまり、軸線Aに沿う方向のスチールボール40とニードルローラ41との配置位置が、実施の形態5に対して逆になっている。これに伴い、係合凹部26bの底部に、ドリル加工の後にザグリ加工を施して環状の平坦面26mを形成している。一方、収容部18cの底部のザグリ加工を省略してドリル加工による円錐面18nのみを形成している。
これにより、実施の形態7においては、円錐面18nとスチールボール40とが、環状線CLによって「線接触」され、環状の平坦面26mとニードルローラ41の他端面41bとが環状の接触面CSによって「面接触」されている。なお、スチールボール40とニードルローラ41の一端面41aとの間には、「点接触」により形成された部材接触部CPが設けられる。
以上のように形成した実施の形態7においても、上述した実施の形態5と同様の作用効果を奏することができる。なお、実施の形態5においては、ニードルローラ41が本発明における第1部材を構成し、スチールボール40が本発明における第2部材を構成している。
[実施の形態8] 次に、本発明の実施の形態8について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態7と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図10は実施の形態8に係る打撃機構の図3に対応した断面図を示している。
図10に示すように、実施の形態8においては、実施の形態7に比して、スピンドル26のアンビル18側に第2のスチールボール40aを設け、アンビル18のスピンドル26側に設けたスチールボール40と、第2のスチールボール40aとの間に、軸方向の長さ寸法が短いニードルローラ41を設けた点が異なっている。これに伴い、係合凹部26bの底部のザグリ加工を省略してドリル加工による円錐面26nのみを形成している。
ここで、第2のスチールボール40aは、スチールボール40と同じものが用いられている。このように、実施の形態8においては、第2のスチールボール40aが、本発明における第1部材を構成しており、スチールボール40と第2のスチールボール40aとの間に設けられたニードルローラ41が、本発明における第3部材を構成している。
これにより、実施の形態8においては、円錐面18nとスチールボール40とが、環状線CLによって「線接触」され、円錐面26nと第2のスチールボール40aとが、第2の環状線CL2によって「線接触」されている。そして、スチールボール40とニードルローラ41の一端面41aとの間には、「点接触」により形成された部材接触部CPが設けられ、第2のスチールボール40aとニードルローラ41の他端面41bとの間には、「点接触」により形成された第2の部材接触部CP2が設けられる。このように、実施の形態8においては、第2のスチールボール40aとスチールボール40との間に、2つの部材接触部CP,CP2が設けられる。
以上のように形成した実施の形態8においても、上述した実施の形態7と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態8においては、ニードルローラの座面を形成するためのザグリ加工が不要となるため、製造工程の簡素化を図ることができる。また、スピンドル26およびアンビル18の軸力を、2つの部材接触部CP,CP2に分散することができるので、各スチールボール40,40aおよびニードルローラ41の摩耗を抑えて、インパクトドライバ10の寿命をさらに延ばすことができる。
ただし、第2のスチールボール40aとスチールボール40との間に、例えば、2つのニードルローラと1つのスチールボールとを交互に並べて設けも良く、この場合、合計4つの部材接触部が設けられることになる。ここで、第2のスチールボール40aとスチールボール40との間に設けられるニードルローラやスチールボールは、本発明における第3部材を構成する。
[実施の形態9] 次に、本発明の実施の形態9について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態3と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図11は実施の形態9に係る打撃機構の図3に対応した断面図を示している。
図11に示すように、実施の形態9においては、実施の形態3に比して、アンビル18のニードルローラ(第2部材)41側とスリーブ19側との間に連通路18sを設け、当該連通路18sにグリス(図示せず)を入れた点が異なっている。そして、ニードルローラ41の軸方向に沿う一端面41a側の周囲には、油溜め部18tが形成されている。
連通路18sの一端側(図中右側)は、スリーブ19の油溜め部19aに連通され、連通路18sの他端側(図中左側)は、係合凹部18hの油溜め部18tに連通されている。連通路18sに充填されたグリスは、各油溜め部19a,18tに供給されるとともに、収容部26gとニードルローラ41との間の隙間を介して、スチールボール40側にも供給される。
以上のように形成した実施の形態9においても、上述した実施の形態3と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態9においては、連通路18sに入れたグリスが、スチールボール40およびニードルローラ41を収容する収容部26gにも供給されるので、スチールボール40およびニードルローラ41の相対回転をよりスムーズにして、インパクトドライバ10の寿命をさらに延ばすことができる。
[実施の形態10] 次に、本発明の実施の形態10について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態4と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図12は実施の形態10に係る打撃機構の図3に対応した断面図を示している。
図12に示すように、実施の形態10においては、実施の形態4に比して、アンビル18のスチールボール(第2部材)40側とスリーブ19側との間に連通路18uを設け、当該連通路18uにグリス(図示せず)を入れた点が異なっている。そして、スチールボール40の周囲には、油溜め部18wが形成されている。
連通路18uの一端側(図中右側)は、スリーブ19の油溜め部19aに連通され、連通路18uの他端側(図中左側)は、係合凹部18hの油溜め部18wに連通されている。連通路18uに充填されたグリスは、各油溜め部19a,18wに供給されるとともに、収容部26gとスチールボール40との間の隙間を介して、ニードルローラ41側にも供給される。
以上のように形成した実施の形態10においても、上述した実施の形態4と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態10においては、連通路18uに入れたグリスが、スチールボール40およびニードルローラ41を収容する収容部26gにも供給されるので、スチールボール40およびニードルローラ41の相対回転をよりスムーズにして、インパクトドライバ10の寿命をさらに延ばすことができる。
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、スチールボール40,40aおよびニードルローラ41を、同じ材質(SUJ材)のもので構成するに限らない。硬度が近ければ摩耗を抑制できる。よって、硬度が近い材質であれば互いに異なる材質のものを採用できる。また、部材接触部CP,CP2を「点接触」で形成したものに限らず、スピンドル26およびアンビル18を互いに相対回転自在に支持できるのであれば、「点接触」よりも接触面積が大きい「面接触」で部材接触部を形成しても良い。
さらに、本発明の打撃工具は、上述したインパクトドライバ10の他に、例えば、インパクトレンチ等を包含する。また、本発明の打撃工具は、交流電源の電力を、電池パック11を介さずに電動モータ12に供給し得る構造を包含する。さらに、本発明の打撃工具は、電池パック11の電力、交流電源の電力を切り替えて電動モータ12に供給可能な構造を包含する。
また、本発明の駆動源は、上述した電動モータ12の他に、エンジン,空気圧モータ,油圧モータ等を包含する。エンジンは、燃料を燃焼させて発生した熱エネルギを運動エネルギに変換する動力源であって、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン,さらには液化石油ガスエンジンを包含する。電動モータ12は、ブラシ付きモータやブラシレスモータ等を包含する。さらに、本発明の打撃工具は、アンビル18に先端工具17が直接取り付けられる構造に加えて、アンビルにソケットやアダプタ等を介して先端工具が取り付けられる構造も包含する。