JP6217133B2 - 二次電池多孔膜用スラリー、二次電池用セパレータ、二次電池用電極及び二次電池 - Google Patents

二次電池多孔膜用スラリー、二次電池用セパレータ、二次電池用電極及び二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、二次電池多孔膜用スラリー、並びに、それを用いて製造された多孔膜を備える二次電池用セパレータ、二次電池用電極及び二次電池に関する。
二次電池は、一般に、正極とセパレータと負極とを備える。セパレータを備えることにより、正極と負極との間の短絡を防ぐことができる。また、セパレータの表面には、非導電性粒子を含む多孔膜を形成することが提案されている(特許文献1参照)。
特開2009−199798号公報
多孔膜に用いる非導電性粒子としては、例えばアルミナ粒子等の無機粒子が一般的である。しかし、無機粒子を非導電性粒子として用いた場合には、多孔膜から金属が溶出する可能性がある。そこで、近年では、多孔膜の非導電性粒子として有機粒子を用いることが検討されている。
ところが、有機粒子を用いた従来の多孔膜は、耐熱性に課題がある。また、最近では二次電池に対する性能の要求水準が高くなってきている。そのため、有機粒子を用いた多孔膜を備える従来の二次電池は、最近の高度な要求水準を満たすためには、サイクル特性に課題がある。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたものであって、耐熱性及びサイクル特性に優れる二次電池が得られる二次電池多孔膜用スラリー、二次電池用セパレータ及び二次電池用電極、並びに、耐熱性及びサイクル特性に優れる二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、粒子状結着剤、180℃以下に軟化点を持たないポリアクリロニトリル粒子、水溶性重合体及び水を組み合わせて含む二次電池多孔膜用スラリーを用いて多孔膜を製造することにより、その多孔膜を備えた二次電池の耐熱性及びサイクル特性の両方を改善できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 粒子状結着剤、180℃以下に軟化点を持たないポリアクリロニトリル粒子、水溶性重合体及び水を含む、二次電池多孔膜用スラリー。
〔2〕 窒素含有難燃化剤を含む、〔1〕記載の二次電池多孔膜用スラリー。
〔3〕 前記粒子状結着剤が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を50重量%〜98重量%含む重合体である、〔1〕又は〔2〕記載の二次電池多孔膜用スラリー。
〔4〕 前記重合体が、更にα,β−不飽和ニトリル単量体単位を1.0重量%〜50重量%含む、〔3〕記載の二次電池多孔膜用スラリー。
〔5〕 前記重合体が、更に酸性基を有するビニル単量体単位を0.1重量%〜10重量%含む、〔3〕又は〔4〕記載の二次電池多孔膜用スラリー。
〔6〕 前記ポリアクリロニトリルが、α,β−不飽和ニトリル単量体単位を80重量%〜100重量%含む、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の二次電池多孔膜用スラリー。
〔7〕 有機セパレータ層と、
前記有機セパレータ層上に〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の二次電池多孔膜用スラリーを塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える、二次電池用セパレータ。
〔8〕 集電体及び前記集電体上に設けられた電極合剤層を備える電極板と、
前記電極板上に〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の二次電池多孔膜用スラリーを塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える、二次電池用電極。
〔9〕 正極、負極及び電解液を備え、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、〔8〕記載の二次電池用電極である、二次電池。
〔10〕 正極、負極、セパレータ及び電解液を備え、
前記セパレータが、〔7〕記載の二次電池用セパレータである、二次電池。
本発明の二次電池多孔膜用スラリー、二次電池用セパレータ及び二次電池用電極によれば、耐熱性及びサイクル特性に優れる二次電池を実現できる。
本発明の二次電池は、耐熱性及びサイクル特性に優れる。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のことを表す。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのことを表す。また、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルのことを表す。
さらに、ある物質(重合体を含む。)が水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0.5重量%未満であることをいう。一方、ある物質が非水溶性であるとは、25℃において、その物質0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90重量%以上であることをいう。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
さらに、「極板」とは、剛性のある板状部材だけでなく、可とう性のあるシート及びフィルムも含む。
[1.二次電池多孔膜用スラリー]
本発明の二次電池多孔膜用スラリー(以下、適宜「多孔膜用スラリー」ということがある。)は、ポリアクリロニトリル粒子、粒子状結着剤、水溶性重合体及び水を含む。多孔膜用スラリーにおいて、通常、ポリアクリロニトリル粒子及び粒子状結着剤は水中に分散しており、また、水溶性重合体は水に溶解している。
[1.1.ポリアクリロニトリル粒子]
ポリアクリロニトリル粒子は、多孔膜において非導電性粒子として機能しうる粒子である。ここでポリアクリロニトリルとは、α,β−不飽和ニトリル単量体単位を含む重合体を表す。また、α,β−不飽和ニトリル単量体単位とは、α,β−不飽和ニトリル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を表す。また、前記のポリアクリロニトリル粒子としては、180℃以下に軟化点を持たないポリアクリロニトリル粒子を用いる。このポリアクリロニトリル粒子は、通常、180℃を超える温度に軟化点を有するか、又は、180℃よりも低い温度で分解する。このようなポリアクリロニトリル粒子を用いることにより、耐熱性及びサイクル特性に優れる二次電池を実現することができる。また、ポリアクリロニトリル粒子は有機粒子であるので、通常は、金属イオンの溶出を抑制することができる。
180℃以下に軟化点を持たないポリアクリロニトリル粒子を非導電性粒子として用いることにより耐熱性を向上させられる理由は必ずしも定かでは無いが、本発明者の検討によれば、以下のように推察される。すなわち、180℃以下に軟化点を持たないポリアクリロニトリル粒子は、高温においても軟化をし難い。そのため、二次電池の温度が高温になった場合であっても、多孔膜の機械的強度を高く維持できる。したがって、高温の二次電池において、多孔膜での欠陥の発生の防止、及び多孔膜の変形の防止が可能である。また、特に多孔膜を有機セパレータ層上に形成した場合には、高温での有機セパレータ層の収縮を多孔膜により安定して防止することが可能である。したがって、高温における二次電池の短絡の発生を抑制できるので、耐熱性に優れた二次電池を実現できるものと推察される。
また、180℃以下に軟化点を持たないポリアクリロニトリル粒子を非導電性粒子として用いることによりサイクル特性を向上させられる理由は必ずしも定かでは無いが、本発明者の検討によれば、以下のように推察される。すなわち、ポリアクリロニトリル粒子は、一般に水に対する親和性が低い。そのため、多孔膜に含まれる水分の量を減らすことが可能である。したがって、多孔膜に含まれる水を原因とした集電体等の電池要素の劣化を防止できるので、サイクル特性に優れた二次電池を実現できるものと推察される。
α,β−不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル等のα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル等のα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましい。さらに、重合反応のし易さ、コストパフォーマンス、多孔膜の柔軟性及び可とう性、並びに、電解液への耐膨潤性のバランスの観点で、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリアクリロニトリルにおけるα,β−不飽和ニトリル単量体単位の割合は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。α,β−不飽和ニトリル単量体単位の割合を前記範囲にすることにより、ポリアクリロニトリルの軟化点を安定して180℃超にできる。また、仮に短絡が生じてポリアクリロニトリル粒子が燃焼した場合でも、その燃焼により生じる灰分を多くできるので、灰分によって短絡部分の拡大を防止できるため、二次電池の安全性を高めることができる。また、ポリアクリロニトリルにおけるα,β−不飽和ニトリル単量体単位の割合は、通常100重量%以下であり、中でも99.9重量%以下であることが好ましい。これにより、高温環境におけるポリアクリロニトリル粒子同士の融着を安定して防止できる。そのため、特にセパレータが多孔膜を備える場合に、セパレータの耐熱収縮性を効果的に高めることができる。
ポリアクリロニトリルは、α,β−不飽和ニトリル単量体単位以外に任意の構造単位を含みうる。例えば、ポリアクリロニトリルは、エチレン性不飽和単量体単位を含むことが好ましい。ここで、エチレン性不飽和単量体単位とは、エチレン性不飽和単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を表す。また、エチレン性不飽和単量体とは、炭素−炭素二重結合を含む不飽和炭化水素鎖を有する単量体を表す。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びこれらの塩類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸フエニル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸フエニル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;メチルビニルケトン、メチルフエニルケトン、メチルイソプロペニルケトン等の不飽和ケトン類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル類のビニルエーテル類;アクリル酸アミド及びそのアルキル置換体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン及びそのアルキル又はハロゲン置換体;アリルアルコール及びそのエステル又はエーテル類;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の塩基性ビニル化合物類;アクロレイン、メタクロレイン、シアン化ビニリデン、グリシジルメタクリレート、メタクリロニトリル等のビニル化合物類;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
中でも、エチレン性不飽和単量体としては、カルボキシ基(−COOH基)を有するエチレン性不飽和単量体が好ましい。すなわち、ポリアクリロニトリルは、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体単位を含むことが好ましい。さらにその中でも、アクリル酸及びメタクリル酸が特に好ましい。これにより、ポリアクリロニトリル粒子間の親和性を高めることができる。そのため、ポリアクリロニトリル粒子同士の結着性を高めることができるので、多孔膜の粉落ちを効果的に防止することができる。ここで粉落ちとは、多孔膜からポリアクリロニトリル粒子等の粉が脱落することを表す。
ポリアクリロニトリルにおけるカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の耐粉落ち性を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、ポリアクリロニトリル粒子同士の親和性が過度に高くなることを防止できるので、多孔膜用スラリーにおけるポリアクリロニトリル粒子同士の凝集を防止できる。そのため、凝集した巨大粒子の多孔膜からの脱落を防止できるので、これによっても多孔膜の耐粉落ち性を高めることができる。さらに、多孔膜の水分量を小さくできるので、二次電池のサイクル特性を良好にできる。
ポリアクリロニトリルの重量平均分子量Mwは、好ましくは50万以上、より好ましくは75万以上であり、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下である。また、ポリアクリロニトリルは、分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは13以下、より好ましくは10以下であり、好ましくは3以上である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。
ポリアクリロニトリルの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定しうる。具体的には、GPCの溶離液としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)等の極性溶媒を用い、極性ポリマー用カラムを用いて、温度は30℃〜40℃等で測定を行い、標準ポリスチレンの換算値として求めうる。
ポリアクリロニトリル粒子は、1つの粒子の中に、1種類のポリアクリロニトリルを単独で含むものであってもよく、組成が異なる2種類以上のポリアクリロニトリルを任意の比率で組み合わせて含むものであってもよい。また、ポリアクリロニトリル粒子としては、組成が異なるポリアクリロニトリルで形成された2種類以上の粒子を組み合わせて用いてもよい。
ポリアクリロニトリル粒子の形状は、例えば、球状、楕円球状、多角形状、テトラポッド(登録商標)状、板状、鱗片状などが挙げられる。
ポリアクリロニトリル粒子の体積平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは1.0μm以下である。ポリアクリロニトリル粒子の体積平均粒子径を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜においてポリアクリロニトリル粒子間の空隙を大きくできる。そのため、多孔膜による抵抗を抑えることができるので、二次電池のサイクル特性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、ポリアクリロニトリル粒子の充填密度を高くできるので、多孔膜によって正極と負極とを安定して絶縁させることができるため、内部短絡をより安定して防止することができる。
ここで、体積平均粒子径は、レーザー回折法で測定された粒度分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
ポリアクリロニトリル粒子のBET比表面積は、例えば0.9m/g以上、さらには1.5m/g以上であることが好ましい。また、ポリアクリロニトリル粒子の凝集を抑制し、多孔膜用スラリーの流動性を好適化する観点から、BET比表面積は大き過ぎないことが好ましく、例えば150m/g以下であることが好ましい。
多孔膜用スラリーにおけるポリアクリロニトリル粒子の量は、多孔膜におけるポリアクリロニトリル粒子の量が好ましくは69.0重量%以上、より好ましくは75.8重量%以上となり、また、好ましくは99.8重量%以下、より好ましくは99.4重量%以下となるようにする。多孔膜用スラリーにおけるポリアクリロニトリル粒子の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の耐熱性を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、ポリアクリロニトリル粒子の量が過剰となって多孔膜が脆くなることを防止できるので、多孔膜の機械的強度を効果的に高めることができる。
ポリアクリロニトリル粒子は、例えば、ポリアクリロニトリル粒子を構成するモノマーを用いて、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等の重合法により製造しうる。重合反応としては、例えば、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合等、いずれの反応も用いうる。重合に用いる重合開始剤としては、例えば、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物;α,α’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過硫酸アンモニウム;過硫酸カリウムなどを用いうる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[1.2.粒子状結着剤]
粒子状結着剤は、多孔膜においてポリアクリロニトリル粒子同士を結着させることができる結着剤である。また、粒子状結着剤は、通常、ポリアクリロニトリル粒子と有機セパレータ層又は電極合剤層とを結着させる機能を発揮する。さらに、粒子状結着剤を用いることにより、多孔膜の結着性が向上するので、例えば撒回時及び運搬時等の取扱い時に二次電池用セパレータ(以下、適宜「セパレータ」ということがある。)にかかる機械的な力に対する強度を向上させることができる。
粒子状結着剤としては、重合体の粒子を用いうる。上述したように、粒子状結着剤は多孔膜用スラリーにおいて水に分散しているので、粒子状結着剤として用いうる重合体としては、非水溶性の重合体を用いる。粒子状結着剤として用いうる重合体としては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、水素化SBR、水素化NBR、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、アクリル重合体などが挙げられる。中でも、粒子状結着剤としてはアクリル重合体が好ましい。
アクリル重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体のことを表す。ここで、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を表す。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、CH=CR−COORで表される化合物が挙げられる。ここで、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rはアルキル基またはシクロアルキル基を表す。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むアクリル重合体を用いることにより、多孔膜の柔軟性を高めることができる。また、多孔膜を電解液に膨潤し難くすることができる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例を挙げると、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−エトキシエチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、ベンジルアクリレートなどのアクリレート;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、ベンジルメタクリレートなどのメタアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、アクリレートが好ましく、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが、多孔膜の強度を向上できる点で、特に好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
粒子状結着剤として用いうるアクリル重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、特に好ましくは58重量%以上であり、好ましくは98重量%以下、より好ましくは97重量%以下、特に好ましくは96重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の柔軟性を高めることができる。これにより、二次電池の製造時に多孔膜を加圧しても多孔膜を割れ難くできる。また、上限値以下にすることにより、粒子状結着剤の機械的強度を高くできるので、多孔膜の機械的強度を高くできる。
粒子状結着剤として用いうるアクリル重合体は、更に、α,β−不飽和ニトリル単量体単位を含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とα,β−不飽和ニトリル単量体単位とを組み合わせて含むアクリル重合体は、酸化還元に安定であるので、高寿命の二次電池を得やすい。
α,β−不飽和ニトリル単量体としては、例えば、ポリアクリロニトリル粒子の項において例示したα,β−不飽和ニトリル単量体と同様の例が挙げられる。また、α,β−不飽和ニトリル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
粒子状結着剤として用いうるアクリル重合体において、α,β−不飽和ニトリル単量体単位の割合は、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは2重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。α,β−不飽和ニトリル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、粒子状結着剤の強度を高め、多孔膜を有機セパレータ層又は電極合剤層から剥がれ難くできるので、多孔膜の剥離による電極間距離の増大を防止して、二次電池のサイクル特性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、アクリル重合体の極性を抑えて粒子状結着剤の電解液への膨潤性を低くできるので、多孔膜を有機セパレータ層又は電極合剤層から剥がれ難くできる。
粒子状結着剤として用いうるアクリル重合体は、更に、酸性基を有するビニル単量体単位を含むことが好ましい。酸性基を有するビニル単量体単位とは、酸性基を有するビニル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を表す。通常、酸性基は高い親水性を有する。このため、酸性基を有するビニル単量体単位を含むアクリル重合体を粒子状結着剤として用いることにより、粒子状結着剤と水との親和性を高めることができるので、水中における粒子状結着剤の分散性を高めることができる。また、酸性基の作用により、粒子状結着剤とポリアクリロニトリル粒子との親和性を高めることができるので、粒子状結着剤の結着性を高めることができる。
酸性基としては、例えば、カルボキシ基;スルホ基(−SOH基);−PO基及び−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)等のリン酸基;などが挙げられる。したがって、酸性基を有するビニル単量体としては、例えば、これらの酸性基を有するビニル単量体が挙げられる。また、例えば、加水分解により前記の酸性基を生成しうるビニル単量体を重合して形成される構造単位も、酸性基を有するビニル単量体単位として用いうる。このように加水分解により前記の酸性基を生成しうるビニル単量体の具体例としては、加水分解によりカルボキシ基を生成しうる酸無水物などが挙げられる。
カルボキシ基を有するビニル単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びこれらの誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸などが挙げられる。また、加水分解によりカルボキシ基を生成しうる酸無水物としては、例えば、ジカルボン酸の無水物が挙げられる。ジカルボン酸の酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。これらの中でもモノカルボン酸が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
スルホ基を有するビニル単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(N−アクリロイル)アミノ−2−メチル−1,3−プロパン−ジスルホン酸などが挙げられる。これらの中でも、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましい。
−PO基及び−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)等のリン酸基を有するビニル単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
また、上述したビニル単量体の塩も、酸性基を有するビニル単量体として用いうる。
上述した酸性基を有するビニル単量体の中でも、カルボキシ基を有する単量体及びスルホ基を有する単量体が好ましく、スルホ基を有する単量体が特に好ましい。これらを用いることにより、粒子状結着剤の分散性を効果的に高めることができ、また、粒子状結着剤のポリアクリロニトリル粒子に対する結着性を効果的に向上させることができる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
粒子状結着剤として用いうるアクリル重合体において、酸性基を有するビニル単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。酸性基を有するビニル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、粒子状結着剤の分散性を高めたり、粒子状結着剤の結着性を高めたりすることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の柔軟性を高めることができる。
粒子状結着剤として用いうるアクリル重合体は、架橋性単量体単位を含むことが好ましい。ここで、架橋性単量体単位とは、架橋性単量体を重合して形成される構造を有する構造単位を表す。また、架橋性単量体は、加熱又はエネルギー線照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成しうる単量体を表す。アクリル重合体が架橋性単量体単位を含むことにより、粒子状結着剤の機械的強度を高めたり、粒子状結着剤の電解液に対する膨潤性を抑制したりできる。そのため、二次電池において多孔膜の機械的強度を向上させることができるので、電極活物質が膨張及び収縮を繰り返しても、多孔膜が有機セパレータ層又は電極合剤層から剥離し難くできる。したがって、充放電による電極間距離の増大が生じ難いので、充放電による抵抗の上昇を抑制でき、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
架橋性単量体の例としては、熱架橋性を有する単量体を挙げることができる。より具体的には、例えば、熱架橋性の架橋性基及び1分子あたり1つのオレフィン性二重結合を有する単官能の架橋性単量体;1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能の架橋性単量体が挙げられる。
熱架橋性の架橋性基の例としては、エポキシ基、N−メチロールアミド基、オキセタニル基、オキサゾリン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、エポキシ基が、架橋及び架橋密度の調節が容易な点でより好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
熱架橋性の架橋性基としてエポキシ基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;並びにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類が挙げられる。
熱架橋性の架橋性基としてN−メチロールアミド基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
熱架橋性の架橋性基としてオキセタニル基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、及び2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンが挙げられる。
熱架橋性の架橋性基としてオキサゾリン基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、及び2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンが挙げられる。
1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、アリル(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−トリ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、前記以外の多官能性アルコールのアリルまたはビニルエーテル、トリアリルアミン、メチレンビスアクリルアミド、及びジビニルベンゼンが挙げられる。
これらの中でも、架橋性単量体としては、特に、エチレンジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、及びグリシジルメタクリレートが好ましい。
また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
粒子状結着剤として用いうるアクリル重合体における架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。架橋性単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、粒子状結着剤の機械的強度を高めたり、粒子状結着剤の電解液に対する膨潤性を抑制したりできる。また上限値以下にすることにより、粒子状結着剤を柔軟にできるので、結着性を高めることができる。
粒子状結着剤として用いうるアクリル重合体は、上述した構造単位以外に任意の構造単位を有していてもよい。
また、粒子状結着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
粒子状結着剤を形成する重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。粒子状結着剤を形成する重合体の重量平均分子量が上記範囲にあると、多孔膜の強度及びポリアクリロニトリル粒子の分散性を良好にし易い。
また、粒子状結着剤は、通常、180℃以下に軟化点を有するか、180℃を超える熱分解温度を有する。すなわち、粒子状重合体を形成する重合体は、通常、その軟化点が180℃以下にあるか、その熱分解温度が180℃を超える。さらに軟化点について詳細に説明すると、粒子状結着剤を形成する重合体の具体的な軟化点は、通常180℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。粒子状結着剤を形成する重合体の軟化点をこのような範囲にすることにより、多孔膜の柔軟性を高めることができる。また、軟化点の下限値としては、好ましくは−100℃以上、より好ましくは−90℃以上である。これにより、粒子状結着剤の強度を高め、多孔膜の強度を向上させることができる。
粒子状結着剤は、その形状が粒子状であるので、通常は、ポリアクリロニトリル粒子に対して面ではなく点で結着できる。このため、多孔膜において、ポリアクリロニトリル粒子同士の間の空隙を大きくできるので、多孔膜の空隙率を高くできる。したがって、多孔膜をイオンが通りやすくできるので、二次電池の抵抗を小さくできる。
多孔膜用スラリーにおいて粒子状結着剤の体積平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.8μm以下である。粒子状結着剤の体積平均粒径を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の空隙率を高くできるので、抵抗を小さくでき、二次電池のサイクル特性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、粒子状結着剤とポリアクリロニトリル粒子との結着点を多くできるので、ポリアクリロニトリル粒子を多孔膜に安定して保持できる。そのため、充放電により電極活物質が膨張及び収縮を繰り返して電池内に応力が生じても、ポリアクリロニトリル粒子が多孔膜から脱落し難いので、脱落したポリアクリロニトリル粒子による電極間距離の増大が生じ難い。したがって、充放電による抵抗の上昇が抑制できるので、二次電池のサイクル特性を良好にできる。
粒子状結着剤の量は、ポリアクリロニトリル粒子100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは9重量部以下である。粒子状結着剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、ポリアクリロニトリル粒子を多孔膜に安定して保持できるので、ポリアクリロニトリル粒子の粉落ちを効果的に防止して、二次電池のサイクル特性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の空隙率を高くできるので、抵抗を小さくでき、二次電池のサイクル特性を良好にできる。
粒子状結着剤の製造方法は特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの、いずれの方法を用いてもよい。中でも、水中で重合をすることができ、そのまま多孔膜用スラリーの材料として使用できるので、乳化重合法及び懸濁重合法が好ましい。また、粒子状結着剤を製造する際、その反応系には分散剤を含ませることが好ましい。
[1.3.水溶性重合体]
水溶性重合体は、多孔膜においてポリアクリロニトリル粒子同士を結着して、多孔膜の粉落ちを防止する機能を発揮できる。また、水溶性重合体は、通常、多孔膜用スラリーにおいて増粘剤として機能し、多孔膜用スラリーの粘度を調整する機能を発揮できる。さらに、水溶性重合体は多孔膜用スラリーにおいて水に溶解する。この際、通常、水溶性重合体の一部は水中に遊離するが、別の一部はポリアクリロニトリル粒子の表面に吸着することによって、ポリアクリロニトリル粒子の表面が水溶性重合体の安定な層で覆われる。この安定な層の作用により、ポリアクリロニトリル粒子の分散性を高めることができると推察される。
水溶性重合体としては、水溶性を有する任意の重合体を用いうる。好適な水溶性重合体としては、例えば、水溶性の多糖類;ポリカルボン酸;カルボン酸とスルホン酸の共重合体;(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む水溶性重合体;ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
水溶性の多糖類としては、例えば、セルロース系半合成系高分子化合物が挙げられる。セルロース系半合成系高分子化合物としては、例えば、ノニオン性のセルロース系半合成系高分子化合物、アニオン性のセルロース系半合成系高分子化合物、及び、カチオン性のセルロース系半合成系高分子化合物が挙げられる。
ノニオン性のセルロース系半合成系高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、マイクロクリスタリンセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、アルキルヒドロキシエチルセルロース、ノノキシニルヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;などが挙げられる。
アニオン性のセルロース系半合成系高分子化合物としては、例えば、上記のノニオン性のセルロース系半合成系高分子化合物を各種誘導基により置換したアルキルセルロース並びにそのナトリウム塩及びアンモニウム塩などが挙げられる。具体例を挙げると、セルロース硫酸ナトリウム、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びそれらの塩等が挙げられる。
カチオン性のセルロース系半合成系高分子化合物としては、例えば、低窒素ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム−4)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム−10)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム−24)等が挙げられる。
セルロース系半合成系高分子化合物のエーテル化度は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下である。ここで、エーテル化度とは、セルロース中の無水グルコース単位1個当たりの水酸基(3個)の、カルボキシメチル基等への置換体への置換度のことをいう。エーテル化度は、理論的には0〜3の値を取りうる。エーテル化度が上記範囲にある場合は、セルロース系半合成系高分子化合物がポリアクリロニトリル粒子の表面に吸着しつつ水への相溶性も見られることから、分散性に優れ、ポリアクリロニトリル粒子を高度に分散させることができる。
前記のセルロース系半合成系高分子化合物のなかでも、カルボキシメチルセルロース及びその塩が特に好ましい。
ポリカルボン酸としては、例えば、カルボキシ基を有するビニル単量体単位(すなわち、カルボキシ基を有するビニル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位)を含む重合体が挙げられる。このポリカルボン酸は、例えば、カルボキシ基を有するビニル単量体を重合することにより得られる。カルボキシ基を有するビニル単量体の例としては、粒子状結着剤の項において挙げた例示物と同様の例が挙げられる。カルボキシ基を有するビニル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリカルボン酸は、カルボキシ基を有するビニル単量体単位以外の任意の構造単位を含みうる。また、任意の構造単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、ポリカルボン酸においてカルボキシ基を有するビニル単量体単位の割合は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。
カルボン酸とスルホン酸の共重合体としては、例えば、カルボキシ基を有するビニル単量体単位とスルホ基を有するビニル単量体単位(すなわち、スルホ基を有するビニル単量体を重合して形成される構造を有する構造単位)を含む重合体が挙げられる。この共重合体は、例えば、カルボキシ基を有するビニル単量体とスルホ基を有するビニル単量体とを共重合することにより得られる。カルボキシ基を有するビニル単量体の例としては、粒子状結着剤の項において挙げた例示物と同様の例が挙げられる。また、スルホ基を有するビニル単量体の例としては、粒子状結着剤の項において挙げた例示物と同様の例が挙げられる。カルボキシ基を有するビニル単量体及びスルホ基を有するビニル単量体は、それぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
カルボン酸とスルホン酸の共重合体において、「スルホン酸基を有する単量体単位/カルボン酸基を有する単量体単位」で表される重量比は、好ましくは1/999以上、より好ましくは0.01以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.3以下である。前記の重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜用スラリーの粘度の経時的な上昇を抑制して、安定性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、ポリアクリロニトリル粒子の分散性を高めることができる。
また、カルボン酸とスルホン酸の共重合体は、カルボキシ基を有するビニル単量体単位及びスルホ基を有するビニル単量体単位以外の任意の構造単位を含みうる。また、任意の構造単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、カルボン酸とスルホン酸の共重合体においてカルボキシ基を有するビニル単量体単位及びスルホ基を有するビニル単量体単位の合計割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む水溶性重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、粒子状結着剤の項において例示した(メタ)アクリル酸エステル単量体と同様の例が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む水溶性重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜と有機セパレータ層との結着性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の電解液への膨潤性を抑制でき、電池の抵抗を小さくできる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む水溶性重合体は、カルボキシ基を有するビニル単量体単位を含みうる。カルボキシ基を有するビニル単量体としては、例えば、粒子状結着剤の項において挙げた例示物と同様の例が挙げられる。また、カルボキシ基を有するビニル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む水溶性重合体において、カルボキシ基を有するビニル単量体単位の割合は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、特に好ましくは30重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。カルボキシ基を有するビニル単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、水溶性重合体の水への溶解性を高くできる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜と有機セパレータ層との結着性を高めることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む水溶性重合体は、架橋性単量体単位を含みうる。架橋性単量体としては、例えば、粒子状結着剤の項において挙げた例示物と同様の例が挙げられる。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む水溶性重合体において、架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。架橋性単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、水溶性重合体の分子量を高め、水溶性重合体の電解液による膨潤を抑制し、多孔膜の膨らみを抑制できる。一方、上限値以下にすることにより、水溶性重合体の水に対する可溶性を高め、分散性を良好にすることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む水溶性重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、カルボキシ基を有するビニル単量体単位及び架橋性単量体単位以外の任意の構造単位を含みうる。また、任意の構造単位は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む水溶性重合体の製造方法に特段の制限は無い。例えば、当該水溶性重合体の単量体を含む単量体組成物を、水系溶媒中で重合して製造しうる。重合方法は、特に限定されず、例えば溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いてもよい。また、重合方法としては、例えばイオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの方法も用いてもよい。中でも、重合物がそのまま水に溶解した状態で得られるので再溶解の処理が不要であり、そのまま多孔膜用スラリーの製造に供することができるという、製造効率の観点から、溶液重合法が特に好ましい。
上述した製造方法により、水溶性重合体を含む反応液が得られる。得られた反応液は通常は酸性であり、水溶性重合体は水系溶媒に分散していることが多い。このように水溶性溶媒に分散した水溶性重合体は、通常、その反応液のpHを、例えば7〜13に調整にすることにより、水系溶媒に可溶にできる。アルカリ化する方法としては、例えば、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水溶液;水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液等のアルカリ土類金属水溶液;アンモニア水溶液;などのアルカリ水溶液を混合する方法が挙げられる。前記のアルカリ水溶液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルアルコールとしては、例えば、ビニルアルコールを重合して形成される構造を有する構造単位を含む重合体が挙げられる。このポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。ただし、ポリビニルアルコールの重合度は700以上が好ましい。また、ポリビニルアルコールのケン化度は75%以上が好ましい。
ポリビニルアルコールは、例えば、変性されていてもよい。さらに、ポリビニルアルコールは、例えば、アクリル酸、アクリル酸塩、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の任意の単量体との共重合体であってもよい。この場合、任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、ポリビニルアルコールにおいてビニルアルコールを重合して形成される構造を有する構造単位の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上である。
水溶性重合体は、1重量%水溶液とした場合の粘度が、好ましくは0.1mPa・s以上、より好ましくは0.5mPa・s以上、特に好ましくは1mPa・s以上であり、好ましくは20000mPa・s以下、より好ましくは15000mPa・s以下、特に好ましくは10000mPa・s以下である。水溶性重合体の1重量%水溶液の粘度を上記範囲の下限値以上にすることにより、水溶性重合体の強度を高くして多孔膜の耐久性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜用スラリーの塗布性を良好にできる。前記の粘度は、例えば、水溶性重合体の分子量によって調整できる。また、前記の粘度は、E型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
水溶性重合体の量は、ポリアクリロニトリル粒子100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上、特に好ましくは0.05重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。水溶性重合体の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、ポリアクリロニトリル粒子同士の結着性を高めて、ポリアクリロニトリル粒子の粉落ちを効果的に防止できるので、二次電池のサイクル特性を良好にできる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の空隙率を高くできるので、抵抗を小さくでき、二次電池のサイクル特性を良好にできる。
[1.4.水]
水は、多孔膜用スラリーにおいて溶媒又は分散媒として機能する。水の量は、多孔膜用スラリーの固形分濃度が、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、特に好ましくは10重量%以上となり、また、好ましくは50重量%以下、より好ましくは48重量%以下、特に好ましくは45重量%以下となる量にする。水の量をこのような範囲に収めることにより、多孔膜用スラリーにおけるポリアクリロニトリル粒子の分散性を特に良好にすることができる。ここで組成物の固形分とは、その組成物を乾燥させて溶媒を除去した場合に、蒸発せずに残る成分のことをいう。
[1.5.任意の成分]
多孔膜用スラリーは、上述したポリアクリロニトリル粒子、粒子状結着剤、水溶性重合体及び水以外に、任意の成分を含みうる。このような任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
例えば、多孔膜用スラリーは、難燃化剤を含むことが好ましい。難燃化剤を用いることにより、二次電池の燃焼を抑制できるので、安全性を向上させることができる。中でも、難燃化剤として、窒素含有難燃化剤を用いることが好ましい。窒素含有難燃化剤は、水及びポリアクリロニトリル粒子の両方との親和性が高い。そのため、窒素含有難燃化剤がポリアクリロニトリル粒子同士の間に入り込むことにより、多孔膜用スラリーにおけるポリアクリロニトリル粒子の分散性を高めることができる。したがって、多孔膜において成分の偏りを効果的に抑制できるので、サイクル特性等の電池特性を良好にできる。
窒素含有難燃化剤としては、分子内に窒素原子を含有する難燃化剤を用いうる。その例を挙げると、ホスフィニックアミド化合物、ホスホノジアミド化合物、ホスホラミド化合物、ホスホラミデート化合物、ホスホロアミデート化合物、ホスファゼン化合物などが挙げられる。中でも、ホスファゼン化合物が好ましく、ホスファゼン及び国際公開第2009/055993号に記載のホスファゼン化合物がより好ましい。また、難燃化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
通常、難燃化剤は、多孔膜用スラリーにおいて粒子となって分散している。難燃化剤の粒子の体積平均粒子径は、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1500nm以下、特に好ましくは1000nm以下である。これにより、難燃効果を高めることができる。また、難燃化剤の粒子の体積平均粒子径の下限値に制限は無いが、通常50nm以上である。
難燃化剤の量は、ポリアクリロニトリル粒子100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。難燃剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜の難燃性を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、難燃化剤によるポリアクリロニトリル粒子間の結着性の低下を抑制できるので、ポリアクリロニトリル粒子の粉落ちを効果的に防止して、二次電池のサイクル特性を良好にできる。
また、例えば、多孔膜用スラリーは、キレート剤を含みうる。キレート剤は、金属イオンと結合してキレート化合物を形成できる配位子(通常は、多座配位子)を含む化合物である。キレート剤は多孔膜用スラリー中の遷移金属イオンを捕捉することができるので、多孔膜用スラリーの鉄イオン濃度を容易に低下させることができる。
キレート剤としては、例えば、アミノカルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸が挙げられる。これらの中でも特に、リチウムイオンを捕捉することなく、遷移金属イオンを選択的に捕捉可能なキレート剤が好ましく、アミノカルボン酸系キレート化合物及びホスホン酸系キレート化合物が特に好ましい。
アミノカルボン酸系キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸(CyDTA)、ジエチレン−トリアミン五酢酸(DTPA)、ビス−(アミノエチル)グリコールエーテル−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸(HEDTA)及びジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)等が挙げられる。
ホスホン系キレート化合物としては、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1,−ジホスホン酸(HEDP)が挙げられる。
また、キレート剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
キレート剤の量は、ポリアクリロニトリル粒子100重量部に対して、好ましくは0重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。キレート剤の量を前記範囲の上限値以下にすることにより、キレート剤による高温サイクル特性の低下を防止できる。
また、例えば、多孔膜用スラリーは、界面活性剤を含みうる。多孔膜用スラリーが界面活性剤を含むことにより、多孔膜用スラリーの塗布性を高めることができるので、多孔膜用スラリーを塗布する時のはじきを防止したり、多孔膜の平滑性を向上させたりすることができる。
界面活性剤としては、例えば、アルキル系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などが挙げられる。中でも、アルキル系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が好ましく、アルキル系界面活性剤がより好ましく、ノニオン性のアルキル系界面活性剤が特に好ましい。
また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤の量は、ポリアクリロニトリル粒子100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、特に好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは3重量部以下、より好ましくは2重量部以下、特に好ましくは1重量部以下である。界面活性剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、多孔膜用スラリーの塗布性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、多孔膜の耐熱性を高めることができる。
さらに、多孔膜用スラリーは、例えば、イソチアゾリン系化合物、ピリチオン化合物、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、電解液分解抑制の機能を有する電解液添加剤などを含みうる。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[1.6.多孔膜用スラリーの製造方法]
多孔膜用スラリーは、例えば、ポリアクリロニトリル粒子、粒子状結着剤、水溶性重合体及び水、並びに、必要に応じて用いられる任意の成分を任意の順番で混合することにより、製造しうる。
[2.多孔膜]
上述した本発明の多孔膜用スラリーを用いることにより、多孔膜を製造できる。この多孔膜は、基材上に多孔膜用スラリーを塗布して多孔膜用スラリーの膜を形成することと、この多孔膜用スラリーの膜を乾燥することを含む製造方法により、得られる。こうして得られる多孔膜は、ポリアクリロニトリル粒子、粒子状結着剤及び水溶性重合体を含む。多孔膜においてポリアクリロニトリル粒子間の空隙は孔を形成しているので、多孔膜は多孔質構造を有する。このため、イオンは多孔膜を透過できる。したがって、二次電池において、多孔膜によっては電池反応は阻害されない。また、ポリアクリロニトリル粒子は導電性を有さないので、多孔膜に絶縁性を発現させることができる。さらに、この多孔膜では180℃以下に軟化点を持たないポリアクリロニトリル粒子を用いているので、この多孔膜を備えた二次電池の耐熱性及びサイクル特性を良好にすることができる。
多孔膜用スラリーの塗布方法に制限は無い。塗布方法の例を挙げると、ドクターブレード法、ディップ法、ダイコート法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などが挙げられる。多孔膜用スラリーの塗布量は、通常、所望の厚みの多孔膜が得られる範囲にする。多孔膜用スラリーを基材上に塗布することにより、多孔膜用スラリーの膜が基材上に形成される。
基材上に多孔膜用スラリーの膜を形成した後で、その膜を乾燥させる。乾燥により、多孔膜用スラリーの膜から水が除去されて、多孔膜が得られる。乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風等の風による乾燥;真空乾燥;赤外線、遠赤外線、電子線などの照射による乾燥法;などが挙げられる。
乾燥の際の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、特に好ましくは70℃以下である。乾燥温度を前記範囲の下限以上にすることにより多孔膜用スラリーからの水及び低分子化合物を効率よく除去できる。また、上限以下とすることにより基材の熱による収縮を抑えることができる。
乾燥時間は、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、特に好ましくは15秒以上であり、好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、特に好ましくは1分以下である。乾燥時間を前記範囲の下限以上にすることにより、多孔膜から水を十分に除去できるので、電池の出力特性を向上させることができる。また、上限値以下とすることにより、製造効率を高めることができる。
多孔膜の製造方法においては、上述した以外の任意の操作を行ってもよい。例えば、金型プレス及びロールプレス等のプレス方法によって、多孔膜に加圧処理を施してもよい。加圧処理を施すことにより、基材と多孔膜との結着性を向上させることができる。そのため、基材として有機セパレータ層又は電極板を用いた場合に、有機セパレータ層又は電極板と多孔膜との結着性を高めることができる。ただし、多孔膜の空隙率が損なわれないようにするために、圧力及び加圧時間を適切に制御することが好ましい。
また、多孔膜に残留する水分を除去するため、例えば真空乾燥又はドライルーム内での乾燥を行うことが好ましい。
さらに、例えば加熱処理を施すことが好ましい。これにより多孔膜中の重合体に含まれる熱架橋基を架橋させて、結着力の強化をすることができる。
多孔膜の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。多孔膜の厚みを前記範囲の下限値以上とすることにより、多孔膜の耐熱性を高くすることができる。また上限値以下とすることにより、多孔膜によるイオン伝導性の低下を抑制することができる。
[3.二次電池用セパレータ]
本発明のセパレータは、有機セパレータ層と多孔膜とを備える。
[3.1.有機セパレータ層]
有機セパレータ層としては、例えば、微細な孔を有する多孔性基材を用いうる。このような有機セパレータ層を用いることにより、二次電池において電池の充放電を妨げることなく短絡を防止することができる。有機セパレータ層の具体例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などを含む微孔膜または不織布などが挙げられる。
有機セパレータ層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。この範囲であると二次電池内での有機セパレータ層による抵抗が小さくなり、また、電池製造時の作業性に優れる。
[3.2.二次電池用セパレータが備える多孔膜]
本発明のセパレータは、前記の有機セパレータ層上に、上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明のセパレータは、有機セパレータ層と、前記有機セパレータ層上に本発明の多孔膜用スラリーを塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える。このようなセパレータは、基材として有機セパレータ層を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、有機セパレータ層の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。
本発明のセパレータは、本発明の多孔膜用スラリーを用いて製造された多孔膜を備えるので、このセパレータを用いることにより耐熱性及びサイクル特性に優れる二次電池を実現することができる。
[4.二次電池用電極]
本発明の二次電池用電極(以下、適宜「電極」ということがある。)は、集電体及び電極合剤層を備える電極板と、多孔膜とを備える。
[4.1.集電体]
集電体は、電気導電性を有し且つ電気化学的に耐久性のある材料を用いうる。中でも、耐熱性に優れるとの観点から、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料が好ましい。その中でも、正極用集電体としてはアルミニウムが特に好ましく、負極用集電体としては銅が特に好ましい。
集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001mm以上0.5mm以下のシート状のものが好ましい。
集電体は、電極合剤層との接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、例えば、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、例えば、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用されうる。
また、電極合剤層との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
[4.2.電極合剤層]
電極合剤層は、集電体上に設けられた層であり、電極活物質を含む。電極活物質の種類は二次電池の種類に応じて様々であり、ここでは、特にリチウムイオン二次電池用の電極活物質について説明する。ただし、電極活物質は以下で挙げるものに限定されない。
リチウムイオン二次電池の電極活物質は、電解液中で電位をかけることにより可逆的にリチウムイオンを挿入又は放出できるものを用いうる。電極活物質は、無機化合物を用いてもよく、有機化合物を用いてもよい。
正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。無機化合物からなる正極活物質としては、例えば、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、例えば、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVO等のリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13等の遷移金属酸化物などが挙げられる。一方、有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性重合体が挙げられる。
さらに、無機化合物及び有機化合物を組み合わせた複合材料からなる正極活物質を用いてもよい。
また、例えば、鉄系酸化物を炭素源物質の存在下において還元焼成することで、炭素材料で覆われた複合材料を作製し、この複合材料を正極活物質として用いてもよい。鉄系酸化物は電気伝導性に乏しい傾向があるが、前記のような複合材料にすることにより、高性能な正極活物質として使用できる。
さらに、前記の化合物を部分的に元素置換したものを正極活物質として用いてもよい。
これらの正極活物質は、1種類だけを用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、前述の無機化合物と有機化合物との混合物を正極活物質として用いてもよい。
正極活物質の粒子径は、二次電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択される。負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、正極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。正極活物質の体積平均粒子径がこの範囲であると、充放電容量が大きい電池を得ることができ、かつ電極用スラリーおよび電極を製造する際の取扱いが容易である。
負極活物質は、例えば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維等の炭素質材料;ポリアセン等の導電性重合体;などが挙げられる。また、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄およびニッケル等の金属並びにこれらの合金;前記金属又は合金の酸化物;前記金属又は合金の硫酸塩;なども挙げられる。また、金属リチウム;Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金;リチウム遷移金属窒化物;シリコン等を使用してもよい。さらに、電極活物質は、機械的改質法により表面に導電材を付着させたものを使用してもよい。これらの負極活物質は、1種類だけを用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
負極活物質の粒子径は、二次電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択される。初期効率、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、負極活物質の体積平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは15μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
電極合剤層は、電極活物質の他に、電極用結着剤を含むことが好ましい。電極用結着剤を含むことにより、電極中の電極合剤層の結着性が向上し、電極の撒回時等の工程上においてかかる機械的な力に対する強度が上がる。また、電極中の電極合剤層が集電体及び多孔膜から剥がれにくくなることから、剥れた脱離物による短絡の危険性が小さくなる。
電極用結着剤としては、例えば重合体を用いうる。例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などを用いてもよい。さらに、例えば多孔膜用の粒子状結着剤と同様の重合体を用いてもよい。電極用結着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
電極合剤層における電極用結着剤の量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは4重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。電極用結着剤の量が前記範囲であることにより、電池反応を阻害せずに、電極から電極活物質が脱落するのを防ぐことができる。
電極合剤層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、電極活物質及び電極用結着剤以外にも、任意の成分が含まれていてもよい。その例を挙げると、導電材、補強材などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボン;黒鉛等の炭素粉末;各種金属のファイバー及び箔;などが挙げられる。導電材を用いることにより、電極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、サイクル特性等の電池特性を改善できる。
補強材としては、例えば、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。
導電材及び補強材の使用量は、電極活物質100重量部に対して、それぞれ、通常0重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
電極合剤層の厚みは、正極及び負極のいずれも、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。
電極合剤層の製造方法は特に制限されない。電極合剤層は、例えば、電極活物質及び溶媒、並びに、必要に応じて電極用結着剤及び任意の成分を含む電極用スラリーを集電体上に塗布し、乾燥させて製造しうる。溶媒としては、水及び有機溶媒のいずれも使用しうる。
[4.3.二次電池用電極が備える多孔膜]
本発明の電極は、前記の集電体及び電極合剤層を備える電極板上に、上述した多孔膜を備える。すなわち、本発明の電極は、電極板と、電極板上に本発明の多孔膜用スラリーを塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える。このような電極は、基材として電極板を用いて上述した多孔膜の製造方法を行うことにより、製造することができる。この際、多孔膜は、電極板の片方の面だけに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。ただし、通常は、多孔膜が電極合剤層上に設けられるので、本発明の電極は、集電体、電極合剤層及び多孔膜をこの順に備える。
本発明の電極は、本発明の多孔膜用スラリーを用いて製造された多孔膜を備えるので、この電極を用いることにより耐熱性及びサイクル特性に優れる二次電池を実現することができる。
[5.二次電池]
本発明の二次電池は、正極、負極及び電解液を備える。また、本発明の二次電池は、下記の要件(A)を満たすか、要件(B)を満たすか、要件(A)及び(B)の両方を満たす。
(A)正極及び負極の少なくとも一方が、本発明の電極である。
(B)セパレータを備え、且つ、そのセパレータが本発明のセパレータである。
[5.1.電極]
本発明の二次電池は、原則として、正極及び負極の一方又は両方として、本発明の電極を備える。ただし、本発明の二次電池がセパレータとして本発明のセパレータを備える場合には、正極及び負極の両方として本発明の電極以外の電極を備えていてもよい。
[5.2.セパレータ]
本発明の二次電池は、原則として、セパレータとして本発明のセパレータを備える。ただし、本発明の二次電池が正極及び負極の少なくとも一方として本発明の電極を備える場合には、セパレータとして本発明のセパレータ以外のセパレータを備えていてもよい。また、本発明の電極が備える多孔膜はセパレータとしての機能を有するので、本発明の電極を備える二次電池においてはセパレータを省略してもよい。
[5.3.電解液]
電解液としては、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものを使用しうる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiは好適に用いられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
支持電解質の量は、電解液に対して、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。支持電解質の量をこの範囲に収めることにより、イオン導電度を高くして、二次電池の充電特性及び放電特性を良好にできる。
電解液の溶媒としては、支持電解質を溶解させられるものを用いうる。溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートが好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、電解液は必要に応じて添加剤を含有しうる。添加剤としては、例えばビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系の化合物が好ましい。添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[5.4.二次電池の製造方法]
本発明の二次電池の製造方法としては、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて、巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。また、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、リード板、エキスパンドメタルなどを入れ、過充放電の防止、電池内部の圧力上昇の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
〔粒子の体積平均粒子径の測定方法〕
粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製「SALD−2000」)で測定した。
〔電極又はセパレータの粉落ち性の評価方法〕
多孔膜を備える電極又はセパレータを、幅1cm×長さ5cmの矩形に切って試験片とした。この試験片を、多孔膜側の面を上にして水平な机上に置いた。この試験片の長さ方向の中央(端部から2.5cmの位置)の、集電体又は有機セパレータ層側の面に、直径1mmのステンレス棒を短手方向に横たえて設置した。このステンレス棒を中心にして、試験片を多孔膜が外側になるように180°に2回折り曲げた。
以上の試験を10枚の試験片について行い、各試験片の多孔膜の折り曲げた部分について、ひび割れ又は粉落ちの有無を観察し、下記の基準により判定した。ひび割れ又は粉落ちが少ないほど、多孔膜が粉落ち性に優れることを示す。
(ひび割れ又は粉落ちの評価基準)
A:試験片10枚中全てに、ひび割れ及び粉落ちがみられない。
B:試験片10枚中1〜3枚に、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
C:試験片10枚中4〜6枚に、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
D:試験片10枚中7〜9枚に、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
E:試験片10枚中全てに、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
〔釘刺し試験の試験方法〕
二次電池を、25℃環境下で上限電圧4.25Vで充電を行った後、分解することなく60℃の恒温槽内に入れ、電池温度が60℃に達するまでキープした。その後、加圧子としての鉄製の釘(直径3mm)を、前記の二次電池に突き刺した。この際、釘の加圧条件は1mm/秒、最大圧力を30kNとした。そして、短絡によって二次電池の電圧が4.0V以下となった後、さらに釘を200μm移動させた後に停止させた。熱電対を用いて二次電池の表面を測定し、短絡発生後5秒間での二次電池の温度上昇量を測定した。この操作を10個の二次電池で行い、その温度上昇量の平均値を求め、下記の基準で評価した。温度上昇量の平均値が小さいほど、耐熱性に優れることを示す。
(釘刺し試験の評価基準)
A:温度上昇量の平均値が、25℃以下(発熱なし)。
B:温度上昇量の平均値が、25℃超50℃以下(やや発熱)。
C:温度上昇量の平均値が、50℃超120℃以下(強い発熱)。
D:温度上昇量の平均値が、120℃超、又は発火。
〔二次電池のサイクル特性の評価方法〕
二次電池について、温度20℃において、0.2Cで3Vから4.3Vまで充電し、次いで0.2Cで4.3Vから3Vまで放電する充放電を、100サイクル繰り返した。2サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の割合を百分率で算出した値を容量維持率とし、下記の基準で判断した。この容量維持率が大きいほど、放電容量の低下が少なく、サイクル特性に優れていると判断できる。
(容量維持率の評価基準)
A:容量維持率が、95%以上。
B:容量維持率が、90%以上、95%未満。
C:容量維持率が、85%以上、90%未満。
D:容量維持率が、80%以上、85%未満。
E:容量維持率が、80%未満。
[実施例1]
(1−1.ポリアクリロニトリル粒子の製造)
攪拌機、温度計及び冷却管を装着した1.0リットルのセパラブルフラスコ内に、窒素雰囲気下、α,β−不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリル(和光純薬社製)47.5g、任意の単量体としてメタクリル酸(Aldrich社製)2.5g、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム(和光純薬社製)0.235mg、分子量調整剤としてα−メチルスチレンダイマー(和光純薬社製)135mg、及び、溶媒として精製水(和光純薬社製)450mlを加えて、反応液を調製した。反応液を激しく攪拌しながら、60℃で3時間、及び80℃で8時間攪拌し、反応を終了した。これにより、ポリアクリロニトリル49g(収率98%)を得た。その後、未反応モノマーを60℃、133hPa(100Torr)で30分かけて減圧蒸留により除去した。さらに、反応液を室温に冷却して、ポリアクリロニトリル粒子の水分散液(固形分濃度10%)を得た。この水分散液からポリアクリロニトリル粒子の体積平均粒子径を測定した。
(1−2.粒子状結着剤の製造)
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製「エマール2F」)0.15部、及び過硫酸アンモニウム0.5部をそれぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体として、ブチルアクリレート94.8部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸0.6部及びアリルグリシジルエーテル0.6部、並びにキレート剤(キレスト社製「キレスト400G」)0.15部を混合して、単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記の反応器に連続的に添加して、重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、粒子状結着剤の水分散液(固形分濃度45%)を製造した。この水分散液から粒子状結着剤の体積平均粒子径を測定した。
(1−3.多孔膜用スラリーの製造)
前記のポリアクリロニトリル粒子の水分散液100部(ポリアクリロニトリル粒子換算量で10部)、前記の粒子状結着剤の水分散液0.88部(粒子状結着剤換算量で0.4部)、イオン交換水1.9部、カルボキシメチルセルロースの4%水溶液をカルボキシメチルセルロース換算量で0.15部、窒素含有難燃化剤としてホスファゼン(体積平均粒子径300nm)0.5部、および脂肪族ポリエーテル型の非イオン性界面活性剤の水溶液(サンノプコ社製「ノプテックスE−D052」)0.04部を混合し、多孔膜用スラリーを得た。
(1−4.セパレータの製造)
前記の多孔膜用スラリーを、バーコーターを使用して、単層のポリプロピレン製の有機セパレータ層(セルガード社製「セルガード2500」)上に、厚さ3μmで塗布し、60℃で10時間乾燥させて、有機セパレータ層及び多孔膜を備えるセパレータシートを得た。そのセパレータシートを、5cm×5cmの正方形に切り抜いて、セパレータを用意した。
このセパレータを用いて、上述した方法で粉落ち性を評価した。
(1−5.負極用スラリーの製造)
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質として比表面積5.5m/gの人造黒鉛(体積平均粒子径:24.5μm)100部、導電材として比表面積75m/gのアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)2部、水溶性重合体としてカルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカル社製「MAC−200HC」;1重量%水溶液の粘度1880mPa・s)の2%水溶液をカルボキシメチルセルロース換算量で1部を加え、イオン交換水で固形分濃度60%に調整した。その後、25℃で60分間混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度を55%に調整した。その後、さらに25℃で15分間混合し、混合液を得た。この混合液に、粒子状の負極用の結着剤(スチレンブタジエンゴム)を含む水分散液を結着剤換算量で2.0部加えた。これに更にイオン交換水を加え、最終固形分濃度が53%となるように調整し、10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリーを得た。
(1−6.負極の製造)
前記の負極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に塗布し、乾燥させた。この際、負極用スラリーの塗布量は、その負極用スラリーを塗布し乾燥した後に集電体上に残る負極用スラリーの固形分の量が16mg/cmとなるように設定した。また、乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前負極を得た。また、このプレス前負極をロールプレスで圧延して、厚み80μmの負極合剤層を備える負極を得た。
(1−7.正極用スラリーの製造)
正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoOを100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、及び、正極用の結着剤としてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製「#7208」)のN−メチルピロリドン溶液をポリフッ化ビニリデン換算量で2部混合し、さらにN−メチルピロリドンを加えて固形分濃度を70%に調製した。これをプラネタリーミキサーにより更に混合して、正極用スラリーを得た。
(1−8.正極の製造)
前記の正極用スラリーを、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウム箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極を得た。
(1−9.リチウムイオン二次電池の製造)
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。上記工程で得た正極を、4cm×4cmの正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように配置した。正極の正極合剤層の面上に、上記工程で得た正方形のセパレータを配置した。さらに、上記工程で得たプレス後の負極を、4.2cm×4.2cmの正方形に切り出し、これをセパレータ上に、負極合剤層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。アルミニウム包材内に電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5体積比、電解質:濃度1MのLiPF)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをして、アルミニウム包材外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。
得られたリチウムイオン二次電池について、上述した方法で、釘指し試験及びサイクル特性の評価を行った。
[実施例2]
前記工程(1−2)において、過硫酸アンモニウムの量を1.0部に変更した。
また、前記工程(1−3)において、ホスファゼンの使用量を1部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例3]
前記工程(1−2)において、過硫酸アンモニウムの量を0.25部に変更した。
また、前記工程(1−3)において、ホスファゼンの使用量を1部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例4]
前記工程(1−2)において、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の代わりにアクリル酸を0.6部用いた。
また、前記工程(1−3)において、ホスファゼンの使用量を1部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例5]
前記工程(1−3)において、粒子状結着剤の水分散液の量を粒子状結着剤換算量で0.8部に変更し、また、ホスファゼンの使用量を1部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例6]
前記工程(1−3)において、粒子状結着剤の水分散液の量を粒子状結着剤換算量で0.05部に変更し、また、ホスファゼンの使用量を1部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例7]
前記工程(1−1)において、α−メチルスチレンダイマーの量を67.5mgに変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例8]
前記工程(1−1)において、α−メチルスチレンダイマーの量を270mgに変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例9]
前記工程(1−1)において、アクリロニトリルの量を42.5gに変更し、メタクリル酸の量を7.5gに変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例10]
前記工程(1−1)において、アクリロニトリルの量を50gに変更し、メタクリル酸を用いなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例11]
前記工程(1−3)において、カルボキシメチルセルロースの4%水溶液の代わりに、ポリカルボン酸(サンノプコ社製「SNディスパーサント5027」)を0.15部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例12]
還流冷却器を備えた内容積1リットルの4口フラスコに純水142部を仕込み、90℃にて撹拌しながら、アクリル酸ナトリウムの30%水溶液600部、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムの60%水溶液38部及び過硫酸アンモニウムの3%水溶液200部をそれぞれ3.5時間で滴下して共重合反応させ、カルボン酸−スルホン酸共重合体としての酸性重合体の水溶液(固形分濃度20.7%)を得た。
前記工程(1−3)において、カルボキシメチルセルロースの4%水溶液の代わりに、この酸性重合体の水溶液を酸性重合体換算量で0.15部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例13]
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製「エマール2F」)0.15部、及び過硫酸アンモニウム0.5部をそれぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体として、アクリル酸エチル35部、アクリル酸ブチル34.2部、メタクリル酸30部、及びエチレングリコールメタクリル酸ジエステル0.8部、並びに、キレート剤(キレスト社製「キレスト400G」)0.15部を混合して、単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して、重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、さらに70℃で3時間撹拌して反応を終了し、粒子状重合体の水分散液を製造した。この水分散液を、pH8となるよう水酸化ナトリウム水溶液を添加し、粒子状重合体を水に可溶化させて、水溶性重合体の水溶液を得た。
前記工程(1−3)において、カルボキシメチルセルロースの4%水溶液の代わりに、この実施例13で製造した水溶性重合体の水溶液を、水溶性重合体換算量で0.15部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例14]
前記工程(1−3)において、カルボキシメチルセルロースの4%水溶液の代わりに、ポリビニルアルコール(クラレ製「ポバール102」)を0.15部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例15]
前記工程(1−3)において、カルボキシメチルセルロースの4%水溶液の量をカルボキシメチルセルロース換算量で0.4部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例16]
前記工程(1−3)において、カルボキシメチルセルロースの4%水溶液の量をカルボキシメチルセルロース換算量で0.01部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例17]
前記工程(1−3)において、ホスファゼンの代わりに2,2′−オキシビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン2,2′−ジスルフィド]を0.5部用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例18]
前記工程(1−3)において、ホスファゼンを使用しなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例19]
前記工程(1−3)において、ホスファゼンの量を1.5部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[実施例20]
(20−1.多孔膜を備える正極の製造)
前記工程(1−3)で製造した多孔膜用スラリーを、バーコーターを使用して、前記工程(1−8)で製造した正極(電極板に相当)上に、厚さ3μmで塗布し、乾燥させて、多孔膜を備える正極を得た。
多孔膜を備えるこの正極を用いて、上述した方法で粉落ち性を評価した。
(20−2.リチウムイオン二次電池の製造)
セパレータとして有機セパレータ層(セルガード社製「セルガード2500」)自体を用いた。また、正極として前記工程(20−1)で製造した多孔膜を備える正極を用いた。さらに、多孔膜を備える正極の向きは、多孔膜側の表面がセパレータに向かい合うようにした。
以上の事項以外は実施例1の前記工程(1−9)と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[比較例1]
バイヤー法で得られた体積平均粒子径2.8μmの水酸化アルミニウムを、0.61g/cmの仕込み密度で箱型匣鉢に仕込んだ。この箱型匣鉢を定置型電気炉(シリコニット高熱工業社製「シリコニット炉」)の炉内に設置し、焼成温度1180℃で10時間焼成した。その後、生成したαアルミナ粒子を炉内から取り出した。
6リットルのポット内に直径15mmのアルミナボール7.8kgが収容された振動ボールミル(中央化工機社製「振動ミル」)を用意した。この振動ボールミルのポット内に、前記αアルミナ粒子1.0kgとエタノール15gとを充填し、36時間粉砕して、体積平均粒子径0.6μmのαアルミナ粒子を得た。
前記工程(1−3)において、ポリアクリロニトリル粒子の水分散液の代わりに前記αアルミナ粒子10部を用い、また、イオン交換水の量を91.9部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[比較例2]
前記工程(1−3)において、カルボキシメチルセルロースの4%水溶液を用いなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[比較例3]
ポリアクリロニトリル粒子の水分散液の代わりに比較例1と同様のαアルミナ粒子10部を用い、また、イオン交換水の量を91.9部に変更したこと以外は前記工程(1−3)と同様にして、多孔膜用スラリーを製造した。
このように比較例3で製造した多孔膜用スラリーを、実施例1の前記工程(1−3)で製造した多孔膜用スラリーの代わりに用いたこと以外は実施例20と同様にして、二次電池を製造し、評価した。
[ポリアクリロニトリル粒子の軟化点の確認]
実施例1〜20及び比較例2で得たポリアクリロニトリル粒子の軟化点を測定したところ、いずれの実施例及び比較例で得たポリアクリロニトリル粒子も、180℃以下に軟化点を持たないことが確認された。
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表1〜表5に示す。また、下記の表において、略称の意味は以下の通りである。
粒子状結着剤の量:非導電性粒子(ポリアクリロニトリル粒子又はαアルミナ粒子)100重量部に対する粒子状結着剤の量
CMC:カルボキシメチルセルロース
水溶性重合体の量:非導電性粒子(ポリアクリロニトリル粒子又はαアルミナ粒子)100重量部に対する水溶性重合体の量
Figure 0006217133
Figure 0006217133
Figure 0006217133
Figure 0006217133
Figure 0006217133
[検討]
前記の実施例では、いずれも、釘指し試験において、温度上昇量の平均値が小さい。これは、釘を二次電池に突き刺して強制的に短絡を生じさせた場合でも、多孔膜の耐熱性が優れることにより短絡部分の拡大を抑制できるので、発熱量を抑えることができたことを表す。したがって、釘刺し試験において良好な結果が得られた前記の実施例では、耐熱性に優れた二次電池が実現できたことが確認された。
また、前記の実施例で製造された二次電池は、いずれもサイクル特性に優れる。
したがって、本発明により、耐熱性及びサイクル特性の両方に優れる二次電池が得られることが確認された。

Claims (7)

  1. (メタ)アクリル酸エステル単量体単位を50重量%〜98重量%含み、更にα,β−不飽和ニトリル単量体単位を1.0重量%〜50重量%含む粒子状結着剤、α,β−不飽和ニトリル単量体単位を80重量%〜99.9重量%含み、更にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体単位を0.1重量%〜20重量%含む180℃以下に軟化点を持たないポリアクリロニトリル粒子、水溶性重合体及び水を含む、二次電池多孔膜用スラリー。
  2. 窒素含有難燃化剤を含む、請求項1記載の二次電池多孔膜用スラリー。
  3. 前記粒子状結着剤が、更に酸性基を有するビニル単量体単位を0.1重量%〜10重量%含む、請求項1又は2記載の二次電池多孔膜用スラリー。
  4. 有機セパレータ層と、
    前記有機セパレータ層上に請求項1〜のいずれか一項に記載の二次電池多孔膜用スラリーを塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える、二次電池用セパレータ。
  5. 集電体及び前記集電体上に設けられた電極合剤層を備える電極板と、
    前記電極板上に請求項1〜のいずれか一項に記載の二次電池多孔膜用スラリーを塗布及び乾燥して得られる多孔膜とを備える、二次電池用電極。
  6. 正極、負極及び電解液を備え、
    前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、請求項記載の二次電池用電極である、二次電池。
  7. 正極、負極、セパレータ及び電解液を備え、
    前記セパレータが、請求項記載の二次電池用セパレータである、二次電池。
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