JP6215575B2 - 開口部の補強部材 - Google Patents
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Description
その場合に、表面のコンクリートと躯体の内部のコンクリートの乾燥収縮の勾配による内部拘束、他部材の外部拘束、および隅角部の応力集中が原因となって、隅角部にひび割れが生じる場合がある。
そのために、開口部の隅角部にひび割れ防止を目的とした開口部補強筋を配置したり、特許文献1や図5に示すように開口部bの隅角部に高強度のコーナー部材を補強材aとして配置してコンクリートを打設するような方法が知られている。
<1> 開口部の隅角部の付近の躯体内部に補強筋を配置する方法は、隅角部とは離れた位置に補強筋を配筋するものであるから、その配置する位置や鉄筋の直径次第で抑制効果が異なり、不確定なものである。
<2> また、この補強筋は隅角部にひび割れが生じて、初めて効果があらわるものであり、ひび割れの発生を抑制するものではない。
<3> 特許文献1、および図5に示す構造は、発明の名称は「開口部」となっているが、実際の発明の内容は建築物の壁に開口した窓や扉を対象としている。
また本発明の開口部の補強部材の背面には、高さ約5mm、下部の直径15mm、上部の直径13mmの円錐台形を突起として30mm間隔で配置して構成し、背面の直線部の長さを、261mm以上に設定したことを特徴とするものである。
<1> 隅角部に平面視がL字型の部材であって、コンクリートに接する背面には、一定の高さを備えた円柱突起を複数突設して構成し、L字型の直線部の背面の長さを、コンクリートと補強部材との付着強度が得られる範囲に特定したので、隅角部に発生しやすいひび割れの発生を抑制することができる。
<2> 開口部に配置する従来の埋設型枠と同様に設置してその背面にコンクリートを打設することができ、使用方法が簡単である。
<3> 躯体コンクリートと接触する直線部の背面には円柱突起が突設してあるので、コンクリートとの付着強度を向上させることができ、補強部材の剥離、脱落の危険性がない。
<4> 躯体コンクリートと接触する直線部の長さを一定値以上に設定したので、スラブの開口部の隅角部の補強部材に大きな荷重が作用しても十分な剥離、脱落に対する抵抗性を有する。
<5> 躯体コンクリートを打設したのちには、本発明の補強部材はそのまま埋め込まれるから、外観を損ねることがない。
<6> 補強部材は、躯体コンクリートよりも高強度であり、かつ高靱性なコンクリートで構成してあるため、地震や交通荷重などの大きな荷重に対して十分な強度を有している。
<7> 外気に接する開口部のコンクリート表面積を小さくすることができ、開口部の乾燥収縮を抑制できる。
本発明の補強部材1は、図4に示すようなコンクリート構造物Aのスラブに開口した開口部Bの隅角部B1に使用して補強するための部材である。
本発明の補強部材1は、平面視がL字型の部材である。
その補強部材1の背面11がスラブ側のコンクリートに接し、内面12が開口部Bに向けて位置するように配置して使用する。
本発明の補強部材1は、コンクリート製の部材であるが、特に高強度コンクリートであってかつ高靱性コンクリートで製造する。
ここで、高強度コンクリートとは、圧縮強度が50N/mm2であり、高靱性コンクリートは、高靱性繊維補強セメント複合材料にて構成される材料である。
補強部材1において、コンクリートに接する背面11には、一定の高さを備えた円柱突起13を複数突設する。
この円柱突起13を複数突設した背面11が、打設したコンクリートと接する面となる。
前記の背面11には、複数の円柱突起13が突設しているが、その円柱突起13は、特に高さ約5mm、下部の直径15mm、上部の直径13mmの円錐台形であり、これを上下左右30mm間隔で配置して構成する。この円柱突起13は、千鳥に配置すると良い。
補強部材1の背面11は、2辺の直線部11bと、それが交わる部分の曲線部11aとによって構成する。
すなわち、2辺直線部が直交してL字型を形成するが、その交差する部分の背面11、すなわちコンクリートの接する面は半径80mm程度の曲面よりなる曲線部11aとして構成する。
このように構成することによって補強部材1の曲線部11aに応力の集中が発生することを避けることができる。
本発明の補強部材1は、背面11の直線部11bの長さを、付着強度が得られる範囲に特定したことを特徴としたものである。
L字型の部材にあっては直線部11bの厚さを30mm以上として、長さを261mm以上に設定した。
本発明の補強部材1は、前記したように高強度かつ高靱性コンクリートにより設計されているため、自重や外力により、変形、破壊することがなく部材厚は30mm以上とすればよい。
図4に示すようなコンクリート構造物Aにおいて開口部Bを開設する場合に、その隅角部B1の位置に本発明の補強部材1を設置する。
ひとつの補強部材1の直線部11bの端と、隣接する補強部材1の直線部11bの端とに間隔が生じる場合には、その間隔の開口部B側には桟木2を配置して打設するコンクリート3と開口部Bとの仕切りとする。
したがって補強部材1の内面12と、桟木2のコンクリート接触面とは同一平面を構成することになる。
そして突起13が突出した背面11がコンクリート3と接する状態でコンクリート3を打設する。
本発明の補強部材が、打設したコンクリートと付着する付着強度の計算の根拠は次のとおりである。
高強度コンクリート枠にひび割れが生じるとき、曲線部11a以外の直線部11bが定着体となると仮定して定着長を検討する。
園木らの研究*1によれば図3(a)に示す形状の高強度コンクリート枠と普通コンクリートとのせん断強度fcvは、以下の式(1)で表すことができるとしている。
fcv=0.372f’ck0.610・・・(1)
=0.372×240.610=2.59
ここでf’ck:コンクリートの圧縮強度≦80N/mm2
高強度コンクリート枠のひび割れ発生時の単位幅あたりの引張力Tは、
T=ft×t
=22.5×30
=675N/mm
fcv=T/Lより、
L≧T/fcv
≧675/2.59
≧261mm
ここで ft:高強度コンクリート枠の許容曲げ強度22.5(N/mm2)(メーカー資料)
t:高強度コンクリート枠厚さ(mm)
L:単位幅あたりの定着長(mm)
以上より、表面に凸形状の突起13を突設した高強度コンクリート枠を使用した場合には、定着長となる直線部11bは261mm以上であればよい。
また本発明の部材は、取りつけるスラブ厚とほぼ同等であれば良い。
高強度コンクリート枠にひび割れが生じるとき、曲線部11a以外の直線部11bが定着体となると仮定して定着長を検討する。
園木らの研究*1によれば図3(b)(c)に示す形状の高強度コンクリート枠と普通コンクリートとのせん断強度fcvは、以下の式(1)で表すことができるとしている。
なお図3(b)(c)に示す形状の高強度コンクリート枠と普通コンクリートとのせん断強度fcvは、図3(a)に示す形状のせん断強度fcvとほぼ同等である。
fcv=0.248f’ck0.610・・・(2)
=0.248×240.610=1.72
ここでf’ck:コンクリートの圧縮強度≦80N/mm2
高強度コンクリート枠のひび割れ発生時の単位幅あたりの引張力Tは、
T=ft×t
=22.5×30
=675N/mm
fcv=T/Lより、
L≧T/fcv
≧675/1.72
≧392mm
ここで ft:高強度コンクリート枠の許容曲げ強度=22.5(N/mm2)(メーカー資料)
t:高強度コンクリート枠厚さ(mm)
L:単位幅あたりの定着長(mm)
以上より、表面に凹形状の凹部を形成した高強度コンクリート枠を使用した場合には、定着長となる直線部11bは392mm以上であればよい。
(*1園木聡他:付着面を改善したUFC埋め込み型枠RC床版の耐荷力性能および押し抜きせん断耐力:土木学会第65回年次学術講演会pp.1069〜1070.2010.9)
高強度コンクリート枠にひび割れが生じるとき、曲線部11a以外の直線部11bが定着体となると仮定して定着長を検討する。
園木らの研究*1によれば図3(a)に示す形状の高強度コンクリート枠と普通コンクリートとのせん断強度fcvは、以下の式(1)で表すことができるとしている。
fcv=0.372f’ck0.610・・・(1)
=0.372×240.610=2.59
ここでf’ck:コンクリートの圧縮強度≦80N/mm2
高強度コンクリート枠のひび割れ発生時の単位幅あたりの引張力Tは、
T=ft×t
=22.5×30
=675N/mm
fcv=T/Lより、
L≧T/fcv
≧675/2.59
≧261mm
ここで ft:高強度コンクリート枠の許容曲げ強度22.5(N/mm2)(メーカー資料)
t:高強度コンクリート枠厚さ(mm)
L:単位幅あたりの定着長(mm)
以上より、表面に凸形状の突起13を突設した高強度コンクリート枠を使用した場合には、定着長となる直線部11bは261mm以上であればよい。
11:背面
11a:曲線部
11b:直線部
13:突起
2:桟木
3:コンクリート
Claims (2)
- コンクリート構造物のスラブに開口した開口部の隅角部を補強する材料であって、
背面がコンクリートに接し、内面が開口部に向けて位置する、平面視がL字型の部材であり、
このL字型の部材を高強度かつ高靱性コンクリートで構成し、
L字型の部材のコンクリートに接する背面には、一定の高さを備えた円柱突起を複数突設して、
L字型の直線部の交差する部分の背面は曲線部として構成し、
背面の直線部の長さを、L字型の部材とコンクリートとの付着強度が得られるように構成したことを特徴とする、開口部の補強部材。 - 前記の背面の直線部を、
高さ約5mm、下部の直径15mm、上部の直径13mmの円錐台形を30mm間隔で配置して構成し、
さらにその直線部の長さを、261mm以上に設定したことを特徴とする、請求項1記載の開口部の補強部材。
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