以下に、本発明による電源システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により、この発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による電源システムの構成図であり、図2は図1の電力変換装置の構成を示す図である。図3は図1の第一DC/DCコンバータの構成を示す図であり、図4は図1の第二DC/DCコンバータの構成を示す図である。図5は、図1及び図2の制御装置の機能を実現するハードウェア構成を示す図である。図6は、本発明の実施の形態1による電源システムの制御フロー図である。図7は図1の第一DC/DCコンバータの温度と許容損失電力の関係を表す図であり、図8は図1の第一DC/DCコンバータの電送電圧と電送電力の関係を表す図である。図9は、図1の母線電圧Vdcの指令値を決定する方法を説明する図である。図1に示す電源システム100は、モータジェネレータ(電動発電機)5及び電装品2に電力を供給すると共にモータジェネレータ5が発電した電力を充電する電源システムである。モータジェネレータ5は三相電動発電機であり、電装品2は14Vの直流電力で動作する。図1では、モータジェネレータ5を表した円の中にM/G(Motor/Generator)と記載した。
電源システム100は、直流電力と交流電力とを変換する電力変換装置4と、低電圧の電力を充電及び放電する第一蓄電デバイス1と、第一蓄電デバイス1の電圧よりも高い高電圧の電力を充電及び放電する第二蓄電デバイス7、8と、高電位側直流母線21と低電位側直流母線22との間の母線電圧Vdcを降圧する第一DC/DCコンバータ3と、母線電圧Vdcと第二蓄電デバイス7、8の電圧とを変換する第二DC/DCコンバータ6と、電力変換装置4、第一DC/DCコンバータ3、第二DC/DCコンバータ6を制御する制御装置9と、第一蓄電デバイス1の電圧を測定する電圧センサ12と、電装品2の負荷量を計算するための負荷情報を検出する負荷検出器10とを備える。第一蓄電デバイス1は例えば鉛バッテリであり、第二蓄電デバイス7、8は例えばニッケル水素バッテリや、リチウムイオンバッテリである。鉛バッテリの定格電圧は、例えば12Vである。第二蓄電デバイス7、8の定格電圧は、第一蓄電デバイス1の定格電圧よりも高い。
第一蓄電デバイス1は、電装品2の負荷量を計算するための負荷情報を検出する負荷検出器10を介して電装品2の端子2a、2bに接続され、負荷検出器10と反対側にある第一DC/DCコンバータ3の端子3c、3dに接続される。負荷検出器10の端子10aは第一DC/DCコンバータ3の端子3cに接続され、負荷検出器10の端子10bは電装品2の端子2aに接続される。第一蓄電デバイス1は、電装品2と第一DC/DCコンバータ3とを接続する接続線間に接続される。第一DC/DCコンバータ3の端子3aは、電力変換装置4の端子4aと高電位側直流母線21により接続される。第一DC/DCコンバータ3の端子3bは、電力変換装置4の端子4bと低電位側直流母線22により接続される。第二DC/DCコンバータ6の端子6aは高電位側直流母線21に接続され、第二DC/DCコンバータ6の端子6bは低電位側直流母線22に接続される。電力変換装置4の端子4c、4d、4eは、モータジェネレータの端子5a、5b、5cに各々接続される。第二蓄電デバイス7の正極端子、負極端子は第二DC/DCコンバータ6の端子6c、6dに各々接続され、第二蓄電デバイス8の正極端子、負極端子は第二DC/DCコンバータ6の端子6e、6fに各々接続される。
電力変換装置4はモータジェネレータ5を制御する機能及び状態を監視する機能を有しており、電力変換装置4の端子4gはモータジェネレータ5の端子5dに接続される。端子4g及び端子5dは出力及び入力が可能な端子であり、例えば入力端子と出力端子を独立に備えている。また、端子4g及び端子5dは出力及び入力を共用した端子でもよい。図1では、モータジェネレータ5から電力変換装置4に出力されるモータジェネレータの状態情報Smgを記載した。
制御装置9は、電力変換装置4、第一DC/DCコンバータ3、第二DC/DCコンバータ6を各々制御する機能を保有している。制御装置9の機能は、プロセッサ110がメモリ111に記憶されたプログラムを実行することにより、実現される。また、制御装置9の機能は、複数のプロセッサ110および複数のメモリ111が連携して上記機能を実行してもよい。制御装置9は、各コンポーネントに動作状態を指令する制御指令を出力する指令端子と一部のコンポーネントから情報を入力する情報端子を有している。指令端子は端子9c、9f、9gであり、情報端子は端子9a、9b、9d、9eである。制御装置9の端子9c、9f、9gは、それぞれ第二DC/DCコンバータ6の端子6g、第一DC/DCコンバータ3の端子3f、電力変換装置4の端子4hに接続される。制御装置9の端子9a、9b、9d、9eは、それぞれ電力変換装置4の端子4f、第一DC/DCコンバータ3の端子3e、電圧センサ12の出力端子、負荷検出器10の端子10cに接続される。制御装置9は、各コンポーネントの動作状態をモニターしながら各コンポーネントに動作状態の指令を出し、電源システム100の各コンポーネントをコントロールする。
図1では、第一DC/DCコンバータ3、第二DC/DCコンバータ6、電力変換装置4にそれぞれ出力する制御指令F1co、F2co、F3coを記載した。また、図1では、電力変換装置4、第一DC/DCコンバータ3、電圧センサ12、負荷検出器10から入力される各情報、すなわち要求母線電圧Vmg、検出温度Tdcdc、充電電圧Vpb、センサ検出電圧Vloの情報を記載した。電力変換装置4から出力される情報は要求母線電圧Vmgの情報であり、第一DC/DCコンバータ3から出力される情報は検出温度Tdcdcを示す情報である。電圧センサ12から出力される自情報は充電電圧Vpbの情報であり、負荷検出器10から出力される情報はセンサ検出電圧Vloの情報(負荷情報)である。
以上の説明は各コンポーネント間の接続状況を説明した内容であり、各コンポーネント内の一例の回路及び動作について以下に説明する。電力変換装置4は、複数のスイッチング素子41a、41b、41c、41d、41e、41fと、平滑コンデンサ41gと、制御装置42を備える。スイッチング素子41a、41b、41c、41d、41e、41fは、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。図2では、高電位側(端子4a側)から低電位側(端子4b側)に電流を流すスイッチング機能部(半導体素子主要部)と逆並列接続されたダイオードは、MOSFETのボディーダイオードとして示したが、これに限定するものではない。このダイオードはスイッチング機能部と逆方向に電流を流す機能を有していれば良く、MOSFETと逆並列に接続されたSBDやPN接合ダイオードを使用しても良いし、MOSFETの同期整流を使用しても良い。なお、図3のスイッチング素子31b、31c、図4の61c、61d、61f、61gも同様である。
電力変換装置4内では、スイッチング素子41aのソース端子とスイッチング素子41bのドレイン端子が接続され、スイッチング素子41cのソース端子とスイッチング素子41dのドレイン端子が接続され、スイッチング素子41eのソース端子とスイッチング素子41fのドレイン端子が各々接続される。スイッチング素子41aのドレイン端子とスイッチング素子41cのドレイン端子とスイッチング素子41eのドレイン端子が互いに接続され、各ドレイン端子は端子4aに接続される。スイッチング素子41bのソース端子とスイッチング素子41dのソース端子とスイッチング素子41fのソース端子が互いに接続され、各ソース端子は端子4bに接続される。スイッチング素子41aのドレイン端子と平滑コンデンサ41gの一方の端子と端子4aが各々接続され、スイッチング素子41bのソース端子と平滑コンデンサ41gの他方の端子と端子4bが各々接続される。スイッチング素子41aのソース端子と端子4cが接続され、スイッチング素子41cのソース端子と端子4dが接続され、スイッチング素子41eのソース端子と端子4eが接続される。制御装置42は、これらのスイッチング素子41a、41b、41c、41d、41e、41fのON/OFF(オン及びオフ)を制御する。
第一DC/DCコンバータ3は、平滑コンデンサ31a、31eと、複数のスイッチング素子31b、31cと、平滑インダクタ31dと、温度検出器31fと、制御装置32を備える。第二DC/DCコンバータ6は、平滑コンデンサ61a、61e、61hと、平滑インダクタ61bと、複数のスイッチング素子61c、61d、61f、61gと、制御装置62を備える。スイッチング素子61c、61dは第一ハーフブリッジを構成し、スイッチング素子61f、61gは第二ハーフブリッジを構成する。
第一DC/DCコンバータ3内では、スイッチング素子31bのソース端子とスイッチング素子31cのドレイン端子が接続され、その接続点と平滑インダクタ31dの一方の端子が接続される。平滑インダクタ31dの他方の端子が、平滑コンデンサ31eの一方の端子と端子3cに各々接続される。スイッチング素子31cのソース端子は、平滑コンデンサ31eの他方の端子と端子3dに各々接続される。スイッチング素子31bのドレイン端子は平滑コンデンサ31aの一方の端子と端子3aに各々接続される。スイッチング素子31cのソース端子は、平滑コンデンサ31aの他方の端子と端子3bに各々接続される。温度検出器31fは、第一DC/DCコンバータ3の内外の温度を検出しており、電気的には絶縁されている。ここでは、温度検出器31fが検出する温度検出箇所の温度を、第一DC/DCコンバータ3の置かれている空間温度(設置空間の温度)とする。制御装置32は、複数のスイッチング素子31b、31cのON/OFF(オン及びオフ)を制御する。
第二DC/DCコンバータ6内では、スイッチング素子61cのソース端子とスイッチング素子61dのドレイン端子が接続され、その接続点と平滑インダクタ61bの一方の端子が接続される。スイッチング素子61cのドレイン端子は、第一ハーフブリッジの高電位側の端子であり、平滑コンデンサ61eの一方の端子と端子6cに各々接続される。スイッチング素子61dのソース端子は、第一ハーフブリッジの低電位側の端子であり、平滑コンデンサ61eの他方の端子と端子6dに各々接続される。スイッチング素子61fのソース端子とスイッチング素子61gのドレイン端子は接続され、その接続点とスイッチング素子61dのソース端子が接続される。スイッチング素子61fのドレイン端子は、第二ハーフブリッジの高電位側の端子であり、平滑コンデンサ61hの一方の端子と端子6eに各々接続される。スイッチング素子61gのソース端子は、第二ハーフブリッジの低電位側の端子であり、平滑コンデンサ61hの他方の端子と端子6fに各々接続される。平滑インダクタ61bの他方の端子は、平滑コンデンサ61aの一方の端子と端子6aに各々接続される。スイッチング素子61gのソース端子は、平滑コンデンサ61aの他方の端子と端子6bに接続される。制御装置62は、複数のスイッチング素子61c、61d、61f、61gのON/OFF(オン及びオフ)を制御する。
負荷検出器10は、シャント抵抗11aと、シャント抵抗11aの両端電圧を検出する電圧センサ11bを備える。電圧センサ11bは、シャント抵抗11aの両端に接続される。図1に示した負荷検出器10は、電装品2の負荷電流を算出するための負荷情報を測定する。
次に、電源システム100の制御装置9のフローを、図6を用いて説明する。制御装置9は、高電位側直流母線21と低電位側直流母線22との電圧である母線電圧Vdcの指令値、すなわち母線電圧指令値Vdc*を決定する。母線電圧Vdcは、第一DC/DCコンバータ3の端子3aと端子3bとの間の電圧であり、かつ電力変換装置4の端子4aと端子4bとの間の電圧であり、かつ第二DC/DCコンバータの端子6aと端子6bとの間の電圧である。制御装置9は、各コンポーネントの動作状態をモニターしながら母線電圧Vdcの母線電圧指令値Vdc*を決定し、母線電圧Vdcがこの母線電圧指令値Vdc*になるように各コンポーネントに動作状態の指令を出す。制御指令F2coには、母線電圧Vdcの母線電圧指令値Vdc*が含まれる。
制御装置9は、第一DC/DCコンバータ3の温度検出器31fが出力する検出温度Tdcdcの情報、電圧センサ12が出力する第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbの情報、負荷検出器10が出力するセンサ検出電圧Vloの情報、電力変換装置4が要求する直流母線間(高電位側直流母線21と低電位側直流母線22との間)の電圧である要求母線電圧Vmgの情報、を得る毎に図6のフローを実行する。
検出温度Tdcdcの情報は、第一DC/DCコンバータ3の端子3eから制御装置9の端子9bを通して入力される。充電電圧Vpbの情報は、電圧センサ12から制御装置9の端子9dを通して入力される。センサ検出電圧Vloの情報は、負荷検出器10の端子10cから制御装置9の端子9eに入力される。要求母線電圧Vmgの情報は、電力変換装置4の端子4fから制御装置9の端子9aに入力される。
制御装置9は、後述するステップS009において、センサ検出電圧Vloの情報から、電流値への換算係数Cloを用いて、式(1)で特定期間の平均的な電力値である負荷電力値Ploadを計算する。この負荷電力値Ploadは、電装品2の負荷量の一例である。すなわち、負荷電力値Ploadは、負荷情報(センサ検出電圧Vloの情報)と負荷情報が検出された特定期間(計測時間T)に基づいて、平均化した負荷量である。
ここで、Tはセンサ検出電圧Vloの計測時間である。
要求母線電圧Vmgは、電力変換装置4の制御装置42において、モータジェネレータ5および電力変換装置4の熱成立、効率、電源システム100が搭載されている自動車の走行状態に応じた必要トルク、回生量拡大、を考慮して計算された直流母線間の要求電圧である。すなわち、要求母線電圧Vmgは、モータジェネレータ5の状態に応じて計算された母線電圧Vdcの要求電圧である。制御装置42は図5に示したプロセッサ110、メモリ111を備えており、制御装置42による要求母線電圧Vmgを計算する機能は、プロセッサ110がメモリ111に記憶されたプログラムを実行することにより、実現される。また、制御装置9の機能は、複数のプロセッサ110および複数のメモリ111が連携して上記機能を実行してもよい。モータジェネレータ5および電力変換装置4の熱成立とは、それぞれの温度が設計範囲内にある状態をいう。以下に各ステップを説明する。
ステップS001にて、制御装置9は第一DC/DCコンバータ3の検出温度Tdcdcと基準最大温度Taを比較し、検出温度Tdcdcが基準最大温度Taよりも大きいかを判定する。検出温度Tdcdcが基準最大温度Taより大きい場合にはステップS002へと進む。検出温度Tdcdcが基準最大温度Ta以下の場合にはステップS004に進む。
ステップS002にて、制御装置9は第一DC/DCコンバータ3を停止し、第一蓄電デバイス1と複数の第二蓄電デバイス7、8との接続を電気的に切り離す。制御装置9は、ステップS002で第一DC/DCコンバータ3を停止した後に、ステップS003へ進む。制御装置9は、ステップS003にて、母線電圧指令値Vdc*を電力変換装置4から得られる要求母線電圧Vmgの電圧値に決定する。
この場合、電装品2は、第一蓄電デバイス1のみから電力供給される。また、モータジェネレータ5に関わる電力(駆動電力、発電電力)は、電力変換装置4を介して複数の第二蓄電デバイス7、8が供給及び充電する。すなわち、モータジェネレータ5を駆動するための電力は、電力変換装置4を介して複数の第二蓄電デバイス7、8から放電される。モータジェネレータ5にて発電された電力は、電力変換装置4を介して複数の第二蓄電デバイス7、8に充電される。
ステップS004にて、制御装置9は、第一DC/DCコンバータ3から得られた検出温度Tdcdcから、図7の許容損失電力特性50を用いて許容損失電力PAlossの値を決定し、ステップS005へ進む。図7の許容損失電力特性50の使用方法については後に記載する。
ステップS005にて、制御装置9は、第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbの値と充電電圧基準値Vpb*を比較して、充電電圧Vpbの値が充電電圧基準値Vpb*よりも大きいかを判定する。充電電圧Vpbの値が充電電圧基準値Vpb*より大きい場合はステップS009へ進む。充電電圧Vpbの値が充電電圧基準値Vpb*以下の場合はステップS006へ進む。
ステップS006にて、制御装置9は、第一DC/DCコンバータ3の電送電力Poutの値を設計最大電力値Pmaxに決定し、ステップS007へ進む。ここで、設計最大電力値Pmaxは負荷電力値Ploadより大きい値である。ステップS007にて、制御装置9は、ステップS004で決定した許容損失電力PAlossの値とステップS006で決定した電送電力Poutの値から、図8の電送電力特性マップ、すなわち図8の複数の電送電力特性51、52、53、54を用いて電送電圧Voの値を決定し、ステップS008へ進む。図8の電送電力特性マップの使用方法については後に記載する。なお、電送電圧Voは、第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbを考慮していない、電装品2の負荷量に対応した電圧であり、すなわち第一蓄電デバイス1の充電電力を含まない最大電圧である。
ステップS008にて、制御装置9は、ステップS007で決定した電送電圧Voの値と電力変換装置4から得られる要求母線電圧Vmgの値を比較し、小さい方を母線電圧指令値Vdc*に決定する。
電源システム100の母線電圧VdcがステップS006、S007、S008の処理を経て決定された母線電圧指令値Vdc*に制御される場合は、電送電力Poutの値と負荷電力値Ploadの差分は、第一蓄電デバイス1に充電される。
一方、ステップS005の処理でステップS009へ進んだ場合、すなわちステップS009にて、制御装置9は、第一DC/DCコンバータ3の電送電力Poutの値を負荷電力値Ploadと決定し、ステップS010へ進む。ステップS010にて、制御装置9は、ステップS004で決定した許容損失電力PAlossの値とステップS009で決定した電送電力Poutの値から、図8の電送電力特性マップを用いて電送電圧Voの値を決定し、ステップS011へ進む。ステップS011にて、制御装置9は、ステップS010で決定した電送電圧Voの値と電力変換装置4から得られる要求母線電圧Vmgの値を比較し、小さい方を母線電圧指令値Vdc*に決定する。
次に、ステップS004で使用した図7の許容損失電力特性50について説明する。図7において、横軸は第一DC/DCコンバータ3の温度検出器31fで得られた検出温度Tdcdcであり、縦軸は許容損失電力PAlossである。許容損失電力PAlossは、第一DC/DCコンバータ3の許容損失電力を表す。なお、横軸と縦軸の交点における検出温度Tdcdcの温度は、電源システム100の設計最低温度である。第一DC/DCコンバータ3の温度検出器31fで得られる検出温度Tdcdcは、第一DC/DCコンバータ3の設置空間の温度である。一般的に、設置空間の温度すなわち検出温度Tdcdcが高い場合においては、同一放熱器で放熱できる許容損失電力は減るので、許容損失電力特性50は右肩下がりの特性となる。すなわち、許容損失電力PAlossは、ある温度における放熱可能な電力を示している。基準最大温度Ta以下で第一DC/DCコンバータ3の使用領域を制限すると、許容損失電力特性50の許容損失電力値が、第一DC/DCコンバータ3の温度検出器31fで得られた検出温度Tdcdcの任意の温度における許容損失の値となる。したがって、図7の許容損失電力特性50を用いることで、検出温度Tdcdcから許容損失電力PAlossの許容損失電力値が決定できる。
例として、検出温度TdcdcがT1の場合、許容損失電力PAlossの値が許容損失電力値PA1となる。また、検出温度TdcdcがTx、Ty、Tzの場合は、それぞれ許容損失電力PAlossの値は許容損失電力値PAx、PAy、PAzとなる。図7の許容損失電力特性50は、第一DC/DCコンバータ3の設計値または実際の温度評価結果などから得られる。
次に、ステップS007およびステップS010で使用した図8の電送電力特性マップについて説明する。図8において、横軸はステップS007およびステップS010で決定する電送電圧Voであり、縦軸は電送電力Poutである。電送電力特性51、52、53、54は、各許容損失電力PAlossの等高線を示す。図8では、図7に示した4つの検出温度Tdcdc、すなわち温度Tz、T1、Ty、Txにそれぞれ対応する電送電力特性51、52、53、54を示した。電送電力特性51、52、53、54は、第一DC/DCコンバータ3が出力する電送電力Poutと第一DC/DCコンバータ3が負荷装置である電装品2に供給可能な最大電圧である電送電圧Voとの特性である。図8の電送電力特性マップを用いることで、ステップS004で決定した許容損失電力PAlossの値と、ステップS006またはステップS009で決定した電送電力Poutの値から電送電圧Voの値を決定することができる。なお、図8において、電送電力Poutの最大値である設計最大電力値Pmaxと、電送電圧Voの最大値である設計最大電送電圧値Vmaxを示した。
例として、許容損失電力PAlossの値が許容損失電力値PA1で、すなわち電送電力Poutの特性が電送電力特性52で、かつ電送電力Poutの値が負荷電力値Ploadの場合、電送電圧Voの値は電圧値V1となる。図8の電送電力特性マップは、第一DC/DCコンバータ3の設計値または実際に直流母線の電圧と電力を変えながら得られた損失の結果などから得られる。一般的に、第一DC/DCコンバータ3を図1に示すように降圧型のコンバータとした場合、電送電圧Voの値が大きい領域では損失電力が大きくなる。すなわち、電送電圧Voの値が大きい領域では、電送電力Poutの値が大きくなると第一DC/DCコンバータ3の検出温度が高くなり、許容損失電力PAlossの値が小さくなる。言い換えると、第一DC/DCコンバータ3の検出温度が高くなり、許容損失電力PAlossの値が小さい場合は、既に電送電力Poutの値が大きくなっており、電送電力Poutの調整幅が小さい。つまり、許容損失電力PAlossの値が次の場合、すなわちPAz>PA1>PAy>PAxの場合において、許容損失電力PAlossの値がPAz、PA1、PAy、PAxにおける電送電力特性は、それぞれ電送電力特性51、52、53、54となる。
例えば、第一蓄電デバイス1への充電が必要であり、かつ第一DC/DCコンバータ3の熱成立が厳しい検出温度Tdcdcが基準最大温度Taに近い条件では、母線電圧指令値Vdc*が低くなる。
図7の許容損失電力特性50と図8の電送電力特性マップを用いて図6の制御フローで決定された直流母線間の母線電圧指令値Vdc*を含む制御指令F2coが、制御装置9の端子9cから第二DC/DCコンバータ6の端子6gへ信号が送られる。第二DC/DCコンバータ6はスイッチング素子61cと61dを相補にスイッチングし、スイッチング素子61fとスイッチング素子61gを相補にスイッチングして直流母線間の母線電圧Vdcが母線電圧指令値Vdc*となるように制御する。
また、制御装置9の端子9fから第一DC/DCコンバータ3の端子3fへ電送電力Poutの指令値(負荷電力値Pload)を含む制御指令F1coが送られる。第一DC/DCコンバータ3はこの制御指令F1coを受けて、電送電力Poutの値が負荷電力値Ploadとなるように制御する。
母線電圧指令値Vdc*を決定する方法を、図9を用いて説明する。図9は、許容損失電力PAlossの値が許容損失電力値PA1の場合における母線電圧指令値Vdc*を決定する方法を説明する図である。図9を用いて、まず典型的な母線電圧指令値Vdc*を決定する方法を説明する。なお、図9において、符号が多いので横軸の0(ゼロ)は省略した。
図9は、ステップS004にて許容損失電力PAlossの値が許容損失電力値PA1に決定された場合を示している。図9では充電電圧基準値Vpb*と充電電圧Vpbの2つの電圧値Vpb1、Vpb2と要求母線電圧Vmgの値を示した。それぞれの電圧値の大小関係は、Vmg>Vpb1>Vpb*>Vpb2である。また電圧値Vpb1と充電電圧基準値Vpb*との電圧差(Vpb1−Vpb*)と、充電電圧基準値Vpb*と電圧値Vpb2との電圧差(Vpb*−Vpb2)は等しい場合を示している。充電電圧Vpbの値がVpb1の場合をまず説明する。充電電圧Vpbの電圧値Vpb1は充電電圧基準値Vpb*よりも大きいので、すなわちステップS005におけるVpb1>Vpb*の関係が成立しているので、制御装置9は判定条件が成立、すなわち正(Y)と判定しステップS009、ステップS010へ進む。ステップS010にて、電送電力Poutの値がPloadである交点65の電圧値V1を電送電圧Voの値に決定する。ステップS011にて、電圧値V1は要求母線電圧Vmgの値よりも小さいので、母線電圧指令値Vdc*は電圧値V1に決定される。
この場合、制御装置9が制御指令F1co、F2coをそれぞれ第一DC/DCコンバータ3、第二DC/DCコンバータ6に送出するので、直流母線間の母線電圧Vdcの値が電圧値V1になり、第一DC/DCコンバータ3の電送電圧Voの値が電圧値V1になる。この場合、電送電圧Voの値が負荷電力値Ploadにより決定されており、第一DC/DCコンバータ3が出力する電送電力Poutは電装品2により消費されるので、第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbは変化しない。なお、第一DC/DCコンバータ3の電送電圧Voの値が電圧値V1になるのは、制御指令F1coが電送電力Poutの指令値(負荷電力値Pload)を含んでいるからである。
次に、充電電圧Vpbの値がVpb2の場合を説明する。充電電圧Vpbの電圧値Vpb2は充電電圧基準値Vpb*よりも小さいので、すなわちステップS005におけるVpb1>Vpb*の関係が成立していないので、制御装置9は判定条件が不成立、すなわち否(N)と判定しステップS006、ステップS007へ進む。ステップS007にて、電送電力Poutの値がPmaxである交点66の電圧値V2を電送電圧Voの値に決定する。ステップS008にて、電圧値V2は要求母線電圧Vmgの値よりも小さいので、母線電圧指令値Vdc*は電圧値V2に決定される。
この場合、制御装置9が制御指令F1co、F2coをそれぞれ第一DC/DCコンバータ3、第二DC/DCコンバータ6に送出するので、直流母線間の母線電圧Vdcの値が電圧値V2になり、第一DC/DCコンバータ3の電送電圧Voの値が電圧値V2になる。この場合、電送電圧Voの値が設計最大電力値Pmaxにより決定されており、電送電力Poutの値である設計最大電力値Pmaxと負荷電力値Ploadとの差分である差分電力が第一蓄電デバイス1に充電される。したがって、第一蓄電デバイス1は充電されるので、第一蓄電デバイス1の干上がりを防止することができる。なお、第一DC/DCコンバータ3の電送電圧Voが電圧値V2になるのは、制御指令F1coが電送電力Poutの指令値(設計最大電力値Pmax)を含んでいるからである。
実施の形態1の電源システム100は、第一DC/DCコンバータ3に設けられた温度検出器31fにより検出した空間温度に基づいて、直流母線間の母線電圧Vdcの値を制御装置9が制御するので、空間温度を考慮せずに熱設計が厳しくなってしまう従来と異なり、第一DC/DCコンバータ3が熱成立する温度領域で動作させるこができ、第一DC/DCコンバータ3の熱設計が緩和でき、放熱器が小型化できる。実施の形態1の電源システム100は、第一DC/DCコンバータ3が放熱器の小型化に伴い小型にできるので、サイズを小さくすることができる。
実施の形態1の電源システム100は、第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbが充電電圧基準値Vpb*以下の場合に、制御装置9が、第一DC/DCコンバータ3に設けられた温度検出器31fにより検出した空間温度に基づいて、直流母線間の母線電圧Vdcの値を制御すると共に、第一DC/DCコンバータ3の電送電圧Voの値を負荷電力値Ploadより大きい設計最大電力値Pmaxになるように制御するので、第一蓄電デバイス1の干上がりを防止しつつ、第一DC/DCコンバータ3の放熱器を簡素化でき、第一DC/DCコンバータ3を小型化することができる。
また、実施の形態1の電源システム100は、第一DC/DCコンバータ3の検出温度Tdcdcにより決定される許容損失電力PAlossの値と第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbの値に基づいて、直流母線間の母線電圧Vdcと第一DC/DCコンバータ3の電送電力Pout及び電送電圧Voを制御するので、頻繁にDC/DCコンバータの入り切りが行われる従来と異なり、検出温度Tdcdcが基準最大温度Taを超えない限り第一DC/DCコンバータ3が動作するので、第一蓄電デバイス1と第二蓄電デバイス7、8との充電バランスを最適にすることができる。したがって、実施の形態1の電源システム100は、従来と異なり、第一蓄電デバイス1と第二蓄電デバイス7、8との充電バランスを最適にすることができるので、電源システム100が搭載された車の燃費を向上することができる。
実施の形態1の電源システム100は、検出温度Tdcdcが低く、許容損失電力PAlossの値が大きい場合には、電送電力特性51のように電送電圧Voの選択範囲及び電送電力Poutの選択範囲が広いので、電送電圧Voの電圧値V1が要求母線電圧Vmgよりも高くなる場合がある。この場合は、ステップS011にて、制御装置9は、母線電圧指令値Vdc*を要求母線電圧Vmgの電圧値(電圧値Vmg)に決定する。適宜、要求母線電圧Vmgの電圧値を電圧値Vmgと呼ぶ。ここで要求母線電圧Vmgの値は、前述したように、電力変換装置4の制御装置42において、モータジェネレータ5および電力変換装置4の熱成立、効率、電源システム100が搭載されている自動車の走行状態に応じた必要トルク、回生量拡大、を考慮して計算された直流母線間の要求電圧値である。したがって、実施の形態1の電源システム100は、ステップS011にて、制御装置9が、母線電圧指令値Vdc*を電圧値Vmgの値に決定した場合には、要求母線電圧Vmgの値の決定した際の考慮項目の効果が得られ、すなわち電源システム100を搭載した車の燃費改善効果を最大限に得つつ、第一DC/DCコンバータ3を小型化することができる。
次に、検出温度Tdcdcが高く、許容損失電力PAlossの値が小さい場合における、母線電圧指令値Vdc*を決定する方法を説明する。この場合も図9を用いて説明したのと同様である。ただし、検出温度Tdcdcが高く、許容損失電力PAlossの値が小さい場合、例えば許容損失電力PAlossの値が許容損失電力値PAxの場合には、充電電圧基準値Vpb*、充電電圧Vpbの2つの電圧値Vpb1、Vpb2、要求母線電圧Vmgの値をそれぞれ右側にシフトさせて考える。さらに、充電電圧基準値Vpb*、充電電圧Vpbの2つの電圧値Vpb1、Vpb2、要求母線電圧Vmgの大小関係は、図9と同じである。したがって、電送電圧Voの電圧値V1、V2を求める際に電送電力特性54を用いることで、図9を用いて説明したように、母線電圧指令値Vdc*を決定することができる。
実施の形態1の電源システム100は、温度検出器31fにより検出した空間温度と負荷検出器10により検出された負荷情報を用いて計算された電装品2の負荷量(負荷電力値Pload)とに基づいて、直流母線間の母線電圧Vdcの値を制御装置9が制御するので、第一DC/DCコンバータ3の空間温度及び電装品2の負荷量に応じて電送電力Poutを変更でき、第一DC/DCコンバータ3の温度上昇を緩和することができる。実施の形態1の電源システム100は、第一DC/DCコンバータ3の温度上昇を緩和することができるので、第一DC/DCコンバータ3の熱設計が緩和でき、放熱器が小型化できる。実施の形態1の電源システム100は、第一DC/DCコンバータ3が放熱器の小型化に伴い小型にできるので、サイズを小さくすることができる。
実施の形態1の電源システム100は、第二DC/DCコンバータ6が互いに電気絶縁された複数の第二蓄電デバイス7、8の充放電により直流母線間の母線電圧Vdcを制御するので、第二DC/DCコンバータ6を小型化することができる。
実施の形態1の電源システム100は、ステップS007又はステップS010にて決定された電送電圧Voの値が要求母線電圧Vmgの値よりも大きい場合は、電力変換装置4に設けられた制御装置42が出力する要求母線電圧Vmgの情報に基づいて、直流母線間の母線電圧Vdcを制御装置9が制御するので、要求母線電圧Vmgの値が決定された際の考慮項目の効果が得られる。実施の形態1の電源システム100は、電源システム100を搭載した車の燃費改善効果が得られ、電力変換装置4の熱成立が緩和できる。
実施の形態1の電源システム100は、電圧センサ12により検出した、低電圧系のバッテリである第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbの値に基づいて、直流母線間の母線電圧Vdc及び第一DC/DCコンバータ3の電送電力Poutを制御装置9が制御するので、第一蓄電デバイス1の干上がりを防止することができる。
実施の形態1の電源システム100は、負荷検出器10により検出された電装品2の負荷情報から計算された負荷量である、特定時間の平均的な電力値である負荷電力値Ploadに基づいて、直流母線間の母線電圧Vdc及び第一DC/DCコンバータ3の電送電力Poutを制御装置9が制御するので、瞬間的な負荷急変の際に母線電圧Vdc及び電送電力Poutを安定させることができる。
なお、実施の形態1において、第一DC/DCコンバータ3の回路構成として、非絶縁型の降圧チョッパ回路で説明を行ったが、直流から直流へ電圧変換することができればよく、同業者が推測できる非絶縁型、絶縁型の回路方式であれば他の回路方式でもよい。実施の形態1において、モータジェネレータ5および電力変換装置4は1組の三相回路方式で説明を行ったが、2組以上の三相回路方式でも同様の効果が得られることはいうまでもない。実施の形態1において、第二DC/DCコンバータ6はLCフィルタ(平滑インダクタ61b、平滑コンデンサ61a)を有している場合で説明を行ったが、直流母線の配線の寄生インダクタンスと電力変換装置4の平滑コンデンサ41g、第一DC/DCコンバータ3の平滑コンデンサ31aで構成されるLCフィルタを用いても同様の効果が得られる。
また、第二DC/DCコンバータ6は、相補にスイッチングせず、スイッチング素子61c、61d、61f、61gのオンオフ制御を次の3種類のようにして、直流母線間の母線電圧Vdcを制御する方式としてもよい。第一の場合は、スイッチング素子61c、61d、61f、61gのオンオフの状態がそれぞれ、オン、オフ、オフ、オンである。第二の場合は、スイッチング素子61c、61d、61f、61gのオンオフの状態がそれぞれ、オフ、オン、オン、オフである。第三の場合は、スイッチング素子61c、61d、61f、61gのオンオフの状態がそれぞれ、オン、オフ、オン、オフである。この場合、第二蓄電デバイス7の電圧値V7と第二蓄電デバイス8の電圧値V8から、次に示す3種類の電圧((A)〜(C))を直流母線間に出力することが可能である。図6の制御フローにより決定された直流母線間の母線電圧指令値Vdc*を(A)〜(C)の最も近い電圧値に置き換えることも可能である。
(A)電圧値V7
(B)電圧値V8
(C)電圧値V7と電圧値V8の合計電圧値、すなわちV7+V8の電圧値
このように、直流母線間の母線電圧Vdcを数種類の電圧値、例えば3種類で制御する場合には、第二DC/DCコンバータ6のスイッチング回数を減らすことができ、第二DC/DCコンバータ6の効率を上げることができる。なお、電圧値の種類数は、第二蓄電デバイスの数により変動し、設定可能な組み合わせの数だけ存在する。
なお、実施の形態1において、複数の第二蓄電デバイスを2つの第二蓄電デバイス7、8として説明したが、2個以上の複数の第二蓄電デバイスと、第二DC/DCコンバータ6のスイッチング素子61c、スイッチング素子61d、平滑コンデンサ61eのペアの数を、第二蓄電デバイスと同数する構成でもよい。この場合、第二DC/DCコンバータ6のスイッチング素子61c、61dを頻繁にスイッチング制御することなく一定のオンオフ制御のみで複数の電圧を作ることが可能であり、スイッチング回数を減らして効率を上げつつ、より燃費改善の効果をえることができる。
なお、実施の形態1において、負荷検出器10はシャント抵抗11aと電圧センサ11bで電流を検出する例を示したが、ホール式の電流センサやクランプ式の電流センサなどで構成される電流センサを用いても同様の効果が得られる。
なお、実施の形態1において、スイッチング素子31b、31c、41a、41b、41c、41d、41e、41f、61c、61d、61f、61gとしてMOSFET(電界効果型トランジスタ)を用いて説明を行ったが、バイポーラトランジスタ、または絶縁型バイポーラトランジスタ(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))でも構わない。スイッチング素子がバイポーラトランジスタまたはIGBTの場合は、MOSFETのソース、ドレインがエミッタ、コレクタに変更される。
スイッチング素子31b、31c、41a〜41f、61c、61d、61f、61gは、珪素によって形成されてもよい。また、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体材料によって形成されてもよい。ワイドバンドギャップ半導体材料としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドがある。
このようなワイドバンドギャップ半導体材料によって形成されたスイッチング素子31b、31c、41a〜41f、61c、61d、61f、61gは、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、スイッチング素子31b、31c、41a〜41f、61c、61d、61f、61gの小型化が可能である。これら小型化されたスイッチング素子31b、31c、41a〜41f、61c、61d、61f、61gを用いることにより、これらの素子を組み込んだ第一DC/DCコンバータ3、電力変換装置4、第二DC/DCコンバータ6の小型化が可能となる。
また、ワイドバンドギャップ半導体材料によって形成されたスイッチング素子は耐熱性も高いため、放熱器の小型化や、放熱器の空冷化が可能であるので、第一DC/DCコンバータ3、電力変換装置4、第二DC/DCコンバータ6の一層の小型化が可能になる。小型の第一DC/DCコンバータ3、電力変換装置4、第二DC/DCコンバータ6を搭載することで、電源システム100も小型にできる。
以上のように、実施の形態1の電源システム100は、定格電圧が異なる複数の蓄電デバイス(第一蓄電デバイス1、第二蓄電デバイス7、8)を備えた電源システムであって、モータジェネレータ5を駆動する駆動電力を供給する電力変換装置4と、電力変換装置4の高電位側直流母線21及び低電位側直流母線22に接続され、一つの蓄電デバイスである第一蓄電デバイス1及び負荷装置(電装品2)に電力を供給する第一DC/DCコンバータ3と、定格電圧が第一蓄電デバイス1よりも高く、複数の電気的に絶縁された第二蓄電デバイス7、8に接続され、高電位側直流母線21と低電位側直流母線22との間の電圧である母線電圧Vdcを可変する第二DC/DCコンバータ6と、電力変換装置4、第一DC/DCコンバータ3及び第二DC/DCコンバータ6を制御する制御装置9を備える。電源システム100の第一DC/DCコンバータ3は、当該第一DC/DCコンバータ3の温度を検出する温度検出器31fを有し、電源システム100の制御装置9は、温度検出器31fにより検出された検出温度Tdcdcに基づいて母線電圧Vdcを制御することを特徴とする。実施の形態1の電源システム100は、この特徴により、第一DC/DCコンバータ3の熱設計が緩和でき、第一DC/DCコンバータ3の放熱器が小型化できる。
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2による電源システム100を説明する。本発明の実施の形態2による電源システム100の構成図は、実施の形態1で示した図1と同様であるため、回路構成についての説明は割愛する。
実施の形態2による電源システム100は、制御装置9の制御フローが実施の形態1と異なる。図10は、本発明の実施の形態2による電源システムの制御フロー図である。図11は本発明の実施の形態2による電源システムの第一DC/DCコンバータの温度と許容損失電力の関係を表す図であり、図12は図10のステップS025の閾値電圧を示す図である。図13は、本発明の実施の形態2による電源システムの第一DC/DCコンバータの電送電力と損失電力の関係を表す図である。
次に、実施の形態2の電源システム100の制御装置9のフローを、図10を用いて説明する。制御装置9は、高電位側直流母線21と低電位側直流母線22との電圧である母線電圧Vdcの指令値、すなわち母線電圧指令値Vdc*を決定する。制御装置9は、第一DC/DCコンバータ3の温度検出器31fが出力する検出温度Tdcdcの情報、電圧センサ12が出力する第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbの情報、負荷検出器10が出力するセンサ検出電圧Vloの情報、電力変換装置4が要求する直流母線間(高電位側直流母線21と低電位側直流母線22との間)の電圧である要求母線電圧Vmgの情報、を得る毎に図10のフローを実行する。ここでは、第一DC/DCコンバータ3が停止しない場合における第一DC/DCコンバータ3の電送電圧Voの値を所定数の電圧値、例えば3つの電圧値Vt1、Vt2、Vt2の内から1つ決定する例を説明する。実施の形態1の電源システム100におるステップS007及びステップS010では、許容損失電力特性50、電送電力特性51、52、53、54を用いて、多数の電送電圧Voの値が算出されていた。実施の形態2の電源システム100は、限定した所定数の電圧値、例えば3つの電圧値から電送電圧Voの電圧値を決定する例である。
ステップS021にて、制御装置9は第一DC/DCコンバータ3の検出温度Tdcdcと所定の閾値温度Tthを比較し、検出温度Tdcdcが閾値温度Tthよりも大きいかを判定する。検出温度Tdcdcが閾値温度Tthより大きい場合にはステップS022へと進む。検出温度Tdcdcが閾値温度Tth以下の場合にはステップS024に進む。所定の閾値温度Tthは図11の許容損失電力特性55を用いて決定する。所定の閾値温度Tthの決定方法は後に記載する。
ステップS022にて、制御装置9は第一DC/DCコンバータ3を停止し、第一蓄電デバイス1と複数の第二蓄電デバイス7、8との接続を電気的に切り離す。制御装置9は、ステップS022で第一DC/DCコンバータ3を停止した後に、ステップS023へ進む。制御装置9は、ステップS023にて、母線電圧指令値Vdc*を電力変換装置4から得られる要求母線電圧Vmgの電圧値に決定する。
この場合、電装品2は、第一蓄電デバイス1のみから電力供給される。また、モータジェネレータ5に関わる電力(駆動電力、発電電力)は、電力変換装置4を介して複数の第二蓄電デバイス7、8が供給及び充電する。すなわち、モータジェネレータ5を駆動するための電力は、電力変換装置4を介して複数の第二蓄電デバイス7、8から放電される。モータジェネレータ5にて発電された電力は、電力変換装置4を介して複数の第二蓄電デバイス7、8に充電される。
次に図11の第一DC/DCコンバータ3の温度と許容損失の関係図に関して説明する。図11において、横軸は第一DC/DCコンバータ3の温度検出器31fで得られた検出温度Tdcdcであり、縦軸は許容損失電力PAlossである。なお、横軸と縦軸の交点における検出温度Tdcdcの温度は、電源システム100の設計最低温度である。図11では、許容損失電力PAlossの値が0を除いて3つある3段階形状の許容損失電力特性55の例を示した。許容損失電力PAlossの3つの値は、許容損失電力値PAc、PAd、PAeである。ここで、許容損失電力値PAcが許容損失電力PAlossの最大値である。
図11において、3つの基準温度Tc、Td、Teと各基準温度に温度幅Δだけ変化(±Δの変化)させた閾値温度Tc1、Tc2、Td1、Td2、Te1、Te2を示した。温度幅Δは、検出誤差やノイズの影響を受けても、図11に示した温度の順番が変化しない所定の温度幅である。温度の順番は、大きい順に並べると、Te1、Te、Te2、Td1、Td、Td2、Tc1、Tc、Tc2である。温度幅Δは、少なくとも、|Te−Td|/2よりも小さい値であり、かつ|Td−Tc|/2よりも小さい値である。なお、基準温度Tc、Td、Teをそれぞれ、適宜、第一基準温度、第二基準温度、第三基準温度と呼んで区別する。図11において最大の温度である閾値温度Te1は、実施の形態1で説明した基準最大温度Ta以下の温度である。第三基準温度Teは、第一DC/DCコンバータ3が動作可能かを判断する温度であり、基準最大温度Taから温度幅Δを引いた温度以下に設定された温度である。
ステップS021における所定の閾値温度Tthは、閾値温度Te1、Te2の2つである。閾値温度Te1はTe+Δ、すなわち第三基準温度Teに温度幅Δを加えた温度であり、閾値温度Te2はTe−Δ、すなわち第三基準温度Teから温度幅Δを引いた温度である。ステップS021において、制御装置9は、検出温度Tdcdcの値が前回の検出温度Tdcdcの値から増加して閾値温度Te1を超えた場合は、検出温度Tdcdcの値が閾値温度Tthよりも大きいと判定する、すなわち判定条件が成立する(Y)と判定する。また、ステップS021において、制御装置9は、検出温度Tdcdcの値が前回の検出温度Tdcdcの値から減少して閾値温度Te2以下になった場合は、検出温度Tdcdcの値が閾値温度Tthよりも大きくないと判定する、すなわち判定条件が成立しない(N)と判定する。なお、初回の場合は、前回の検出温度Tdcdcの値を第三基準温度Teとする。
実施の形態2の電源システム100は、第一DC/DCコンバータ3の動作状態を変化させる判定温度である閾値温度Tthを2つ備えている。第一DC/DCコンバータ3を稼働状態から停止状態にする停止用の閾値温度Te1は、停止状態から稼働状態にする稼働用の閾値温度Te2よりも大きくなっている。このように、閾値温度Tthが、検出温度Tdcdcが上昇している状態か又は低下している状態により変化するので、閾値温度と対象装置の制御状態との関係がヒステリシス特性に似ている。そこで、ここでは、閾値温度Tthがヒステリシスを備えていると表現することにする。実施の形態2の電源システム100は、第一DC/DCコンバータ3の動作状態を変化させる閾値温度Tthがヒステリシスを備えているので、第三基準温度Te付近に検出温度Tdcdcの値が留まった際に第一DC/DCコンバータ3の稼働と停止が連続して発生すること、すなわち稼働状態と停止状態とが短時間のうちに変化することを防ぐことができる。
次に、図10のフロー図におけるステップS024での処理について説明する。ステップS024の処理を、ステップS021の処理の説明と同様に、図11を用いて説明する。検出温度Tdcdcの値に応じて許容損失電力PAlossの値を切り替える遷移領域は、第一基準温度Tcを含む第一領域と第二基準温度Tdを含む第二領域である。第一領域は閾値温度Tc2〜閾値温度Tc1の領域であり、第二領域は閾値温度Td2〜閾値温度Td1の領域である。閾値温度Tc1はTc+Δ、すなわち第一基準温度Tcに温度幅Δを加えた温度であり、閾値温度Tc2はTc−Δ、すなわち第一基準温度Tcから温度幅Δを引いた温度である。閾値温度Td1はTd+Δ、すなわち第二基準温度Tdに温度幅Δを加えた温度であり、閾値温度Td2はTd−Δ、すなわち第二基準温度Tdから温度幅Δを引いた温度である。
ステップS024において、制御装置9は、検出温度Tdcdcの値が前回の検出温度Tdcdcの値から増加している場合には、閾値温度Tc1、閾値温度Td1、閾値温度Te1を基準として許容損失電力PAlossの値を切り替え、検出温度Tdcdcの値が前回の検出温度Tdcdcの値から減少している場合には、閾値温度Tc2、閾値温度Td2、閾値温度Te2を基準として許容損失電力PAlossの値を切り替える。制御装置9は、ステップS024では許容損失電力PAlossの値として3つの値、すなわち許容損失電力値PAc、PAd、PAeのいずれかに決定する。
検出温度Tdcdcの値が前回の検出温度Tdcdcの値から上昇している場合には、制御装置9は、次のように許容損失電力PAlossの値を決定する。この場合、許容損失電力PAlossの値を決定する判定温度は、第一領域の上限値、第二領域の上限値及び第三領域の上限値である閾値温度Tc1、Td1、Te1である。したがって、検出温度Tdcdcの値が最小温度から閾値温度Tc1以下の場合に許容損失電力PAlossの値を許容損失電力値PAcに決定し、検出温度Tdcdcの値が閾値温度Tc1超から閾値温度Td1以下の場合に許容損失電力PAlossの値を許容損失電力値PAdに決定し、検出温度Tdcdcの値が閾値温度Td1超から閾値温度Te1以下の場合に許容損失電力PAlossの値を許容損失電力値PAeに決定する。
検出温度Tdcdcの値が前回の検出温度Tdcdcの値から減少している場合には、制御装置9は、次のように許容損失電力PAlossの値を決定する。この場合、許容損失電力PAlossの値を決定する判定温度は、第一領域の下限値、第二領域の下限値及び第三領域の下限値である閾値温度Tc2、Td2、Te2である。したがって、検出温度Tdcdcの値が最小温度から閾値温度Tc2以下の場合に許容損失電力PAlossの値を許容損失電力値PAcに決定し、検出温度Tdcdcの値が閾値温度Tc2超から閾値温度Td2以下の場合に許容損失電力PAlossの値を許容損失電力値PAdに決定し、検出温度Tdcdcの値が閾値温度Td2超から閾値温度Te2以下の場合に許容損失電力PAlossの値を許容損失電力値PAeに決定する。
なお、許容損失電力PAlossの3つの値、すなわち許容損失電力値PAc、PAd、PAeのいずれかを決定する際に許容損失電力PAlossの値を切り替える遷移領域が2つある場合を説明したが、この例に限定されず、さらに多くの許容損失電力PAlossの値から1つを選択する場合でもよい。許容損失電力PAlossのn個(nは4以上の自然数)の値から1つを選択する場合は、遷移領域がn−1個あればよい。なお、第三領域は、実質的に許容損失電力値PAeとこれより小さい値とが切り替わるが、ステップS024の処理において、制御装置9が許容損失電力値PAeより小さい値に切り替えることはないので、ステップS024の処理の遷移領域は2つである。
ステップS025において、制御装置9は、第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbの値と所定の閾値電圧Vthを比較し、充電電圧Vpbの値が閾値電圧Vthよりも大きいかを判定する。充電電圧Vpbの値が閾値電圧Vthより大きい場合にはステップS027へと進む。充電電圧Vpbの値が閾値電圧Vth以下の場合にはステップS026に進む。所定の閾値電圧Vthは図12の状態判定図を用いて決定する。
図12において、横軸は第一蓄電デバイス1の充電電圧Vpbであり、縦軸は充填要と充電不要の状態である。図12では、第一蓄電デバイス1の充電電圧基準値Vpb*とこの値に電圧幅δだけ変化(±δの変化)させた閾値電圧Vpb1*、Vpb2*を示した。電圧幅δは、検出誤差やノイズの影響を受けても、図12に示した電圧の順番が変化しない所定の電圧幅である。電圧値の順番は、大きい順に並べると、Vpb1*、Vpb*、Vpb2*である。ステップS025における所定の閾値電圧Vthは、閾値電圧Vpb1*、Vpb2*の2つである。閾値電圧Vpb1*はVpb1*+δ、すなわち充電電圧基準値Vpb*に電圧幅δを加えた電圧値であり、閾値電圧Vpb2*はVpb*−δ、すなわち充電電圧基準値Vpb*から電圧幅δを引いた温度である。
ステップS025において、制御装置9は、充電電圧Vpbの値が前回の充電電圧Vpbの値から増加して閾値電圧Vpb1*を超えた場合は、充電電圧Vpbの値が閾値電圧Vthよりも大きいと判定する、すなわち判定条件が成立する(Y)と判定する。判定条件が成立する(Y)場合は、充電不要である。また、ステップS025において、制御装置9は、充電電圧Vpbの値が前回の充電電圧Vpbの値から減少して閾値電圧Vpb2*以下になった場合は、充電電圧Vpbの値が閾値電圧Vthよりも大きくないと判定する、すなわち判定条件が成立しない(N)と判定する。判定条件が成立しない(N)場合は、充電要である。なお、初回の場合は、前回の充電電圧Vpbの値を充電電圧基準値Vpb*とする。
ステップS026にて、制御装置9は、第一DC/DCコンバータ3の電送電力Poutの値を設計最大電力値Pmaxに決定し、ステップS028へ進む。ここで、設計最大電力値Pmaxは負荷電力値Ploadより大きい値である。ステップS027にて、制御装置9は、第一DC/DCコンバータ3の電送電力Poutの値を負荷電力値Ploadに決定し、ステップS028へ進む。
制御装置9は、ステップS028〜ステップS032の処理を実行し、電送電圧Voの値を所定の電圧値Vt1、Vt2、Vt3のいずれかに決定する。ここで、電圧値Vt1、Vt2、Vt3の大小関係は、Vt1<Vt2<Vt3である。電圧値Vt1、Vt2は、第二蓄電デバイス7の電圧値V7、第二蓄電デバイス8の電圧値V8の小さい方の電圧値である。例えば、電圧値V7が電圧値V8より小さければ、すなわちV7<V8の場合は、電圧値Vt1、Vt2がそれぞれ電圧値V7、V8である。電圧値Vt3は電圧値Vt2よりも大きい値で、かつ設計最大電送電圧値Vmaxの値以下にあらかじめ設定された電圧値である。
ステップS028にて、制御装置9は、ステップS026またはステップS027で決定した電送電力Poutの値及び所定の損失電力特性Fvt3により算出された損失電力値Plo3と、ステップS024で決定した許容損失電力PAlossの値を比較して、損失電力値Plo3が許容損失電力PAlossの値よりも小さい場合に、判定条件成立(Y)と判定しステップS029へ進む。ステップS029にて、制御装置9は、電送電圧Voの電圧値を電圧値Vt3に決定し、ステップS033へ進む。なお、所定の損失電力特性Fvt3は後述する。
また、ステップS028にて、制御装置9は、損失電力値Plo3が許容損失電力PAlossの値以上である場合に、判定条件不成立(N)と判定しステップS030へ進む。ステップS030にて、制御装置9は、ステップS026またはステップS027で決定した電送電力Poutの値及び所定の損失電力特性Fvt2により算出された損失電力値Plo2と、ステップS024で決定した許容損失電力PAlossの値を比較して、損失電力値Plo2が許容損失電力PAlossの値よりも小さい場合に、判定条件成立(Y)と判定しステップS031へ進む。ステップS031にて、制御装置9は、電送電圧Voの電圧値を電圧値Vt2に決定し、ステップS033へ進む。なお、所定の損失電力特性Fvt2は後述する。
また、ステップS030にて、制御装置9は、損失電力値Plo2が許容損失電力PAlossの値以上である場合に、判定条件不成立(N)と判定しステップS032へ進む。ステップS032にて、電送電圧Voの電圧値を電圧値Vt1に決定し、ステップS033へ進む。
ステップS033にて、制御装置9は、ステップS029〜ステップS032で決定した電送電圧Voの値と電力変換装置4から得られる要求母線電圧Vmgの値を比較し、小さい方を母線電圧指令値Vdc*に決定する。
図10の制御フローで決定された直流母線間の母線電圧指令値Vdc*を含む制御指令F2coが、制御装置9の端子9cから第二DC/DCコンバータ6の端子6gへ信号が送られる。第二DC/DCコンバータ6は、スイッチング素子61cと61dを相補にスイッチングし、スイッチング素子61fとスイッチング素子61gを相補にスイッチングして直流母線間の母線電圧Vdcが母線電圧指令値Vdc*となるように制御する。また、制御装置9の端子9fから第一DC/DCコンバータ3の端子3fへ電送電力Poutの指令値を含む制御指令F1coが送られる。第一DC/DCコンバータ3はこの制御指令F1coを受けて、電送電力Poutの値が電送電力Poutの指令値となるように制御する。
実施の形態2の電源システム100は、電圧センサ12で検出した充電電圧Vpbの値から第一蓄電デバイス1の充電要否を判定する閾値電圧Vthを、2つ備えている。第一蓄電デバイス1の充電要否を判定する閾値電圧Vthは、充電電圧が上昇している状態か又は低下している状態により変化するので、閾値電圧Vthと第一蓄電デバイス1の充電要否との関係がヒステリシス特性に似ている。そこで、ここでは、閾値電圧Vthがヒステリシスを備えていると表現することにする。
実施の形態2の電源システム100は、第一蓄電デバイス1の充電要否を判定する閾値電圧Vthがヒステリシスを備えているので、充電電圧Vpbが充電電圧基準値Vpb*付近に留まった際に、第一蓄電デバイス1への供給電圧値(電送電圧Voの値)及び第一蓄電デバイス1への供給電力値(電送電力Poutの値)を連続して変更すること、すなわち電送電圧Voの値及び電送電力Poutの値が短時間のうちに変化することを防ぐことができる。また、実施の形態2の電源システム100は、第一蓄電デバイス1の充電電圧を変更する際に、直流母線間の母線電圧Vdcの値を変更するので、第一蓄電デバイス1の充電要否を判定する閾値電圧Vthがヒステリシスを備えることにより、直流母線間の母線電圧Vdcの値が短時間のうちに変化することを防ぐことができる。
次にステップS028およびステップS030で用いた、所定の損失電力特性Fvt3、Fvt2について、図13を用いて説明する。
図13において、横軸は第一DC/DCコンバータ3の電送電力Poutであり、縦軸は第一DC/DCコンバータ3の損失電力Plossである。図13では、直流母線間の母線電圧Vdcの値が前述した3種類の電圧値Vt1、Vt2、Vt3をとる場合の関係を示している。損失電力特性56は、直流母線間の母線電圧Vdcが電圧値Vt3となる場合の特性、すなわち前述した所定の損失電力特性Fvt3である。図13では、損失電力特性56、すなわち損失電力特性Fvt3が、電送電力Poutの値をパラメータとした関係式Fvt3(Pout)として表した例を示した。また、図13において、損失電力Plossの値が図11に示した許容損失電力PAlossの3つの許容損失電力値PAc、PAd、PAeと同じ値を示した。
損失電力特性57は、直流母線間の母線電圧Vdcの値が電圧値Vt2となる場合の特性、すなわち前述した所定の損失電力特性Fvt2である。図13では、損失電力特性57、すなわち損失電力特性Fvt2が、電送電力Poutの値をパラメータとした関係式Fvt2(Pout)として表した例を示した。また、損失電力特性58は、直流母線間の母線電圧Vdcの値が電圧値Vt1となる場合の特性である。図13では、損失電力特性58が、電送電力Poutをパラメータとした関係式Fvt1(Pout)として表した例を示した。また、電送電力Poutの値が電力値P1の場合における関係式Fvt1(Pout)の値、すなわち損失電力値Plo1も示した。なお、図10の制御フローでは、損失電力特性58、すなわち関係式Fvt1(Pout)を用いていない。これらの損失電力特性56、57、58、すなわち関係式Fvt3(Pout)、Fvt2(Pout)、Fvt1(Pout)は、実物を測定することで得られた結果でもよいし、設計結果でも良い。電送電力Poutと損失電力Plossとの特性は、いずれの電送電力Poutの値においてもFvt3(Pout)>Fvt2(Pout)>Fvt1(Pout)の大小関係が成立している。
図13には、電送電力Poutが電力値P1であり、ステップS024にて決定された許容損失電力PAlossが許容損失電力値PAdである判定対象点71を示した。この判定対象点71を例にして電送電圧Voの値の決定方法を説明する。制御装置9は、ステップS024にて許容損失電力PAlossの値を許容損失電力値PAdと決定し、ステップS025を経由してステップS027にて電送電力Poutの値を電力値P1(負荷電力値Ploadの一例)と決定した場合を考える。損失電力値Plo3>許容損失電力値PAdの関係が成立するので、ステップS028にて判定条件不成立(N)と判定される。次に、損失電力値Plo2<許容損失電力値PAdの関係が成立するので、ステップS030にて判定条件成立(Y)と判定される。この場合、電送電圧Voの値は電圧値Vt2に決定される。電送電圧Voの値は電圧値Vt2に決定された場合における電送電力Poutの指令値は、電力値P1である。
実施の形態2の電源システム100は、ステップS028及びステップS030において、電送電力Poutから得られる損失電力Plossの値とステップS024にて決定した許容損失電力PAlossの値とを比較して第一DC/DCコンバータ3の電送電圧Voの値を決定し、ステップS033で電送電圧Voの値と電力変換装置4から得られる要求母線電圧Vmgの値を比較し、小さい方を母線電圧指令値Vdc*に決定する。実施の形態2の電源システム100は、実施の形態1の電源システム100と同様の効果を奏する。
実施の形態2の電源システム100は、設定した複数の許容損失電力PAlossの値における最大値が許容損失電力値PAcなので、常に許容損失電力以下で第一DC/DCコンバータ3を動作できる。また、実施の形態2の電源システム100は、実施の形態1の電源システム100が図8に示した電送電力特性マップを用いて電送電圧Voの値を決定するのに対して、図8に示した電送電力特性マップは不要なので、図8に示した電送電力特性マップを記憶する記憶容量は不要である。したがって、実施の形態2の電源システム100は、実施の形態1の電源システム100よりも記憶容量を削減できる。
また、本発明は、矛盾のない範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。例えば、実施の形態1の基準最大温度Taに実施の形態2の所定の閾値温度Tthを用いることもでき、実施の形態1の充電電圧基準値Vpb*に実施の形態2の所定の閾値電圧Vthを用いることもできる。実施の形態1の基準最大温度Taに実施の形態2の所定の閾値温度Tthを用いる場合は、具体的には閾値温度Te1(上限閾値温度)と閾値温度Te1(上限閾値温度)より小さい閾値温度Te2(下限閾値温度)を用いる。すなわち、制御装置9は、検出温度Tdcdcが前回判定時よりも上昇している場合に、基準最大温度Taとして閾値温度Te1(上限閾値温度)を用い、検出温度Tdcdcが前回判定時よりも下降している場合に、基準最大温度Taとして閾値温度Te2(下限閾値温度)を用いる。
実施の形態1の充電電圧基準値Vpb*に実施の形態2の所定の閾値温度Tthを用いる場合は、具体的には閾値電圧Vpb1*(上限閾値電圧)と閾値電圧Vpb1*(上限閾値電圧)より小さい閾値電圧Vpb2*(下限閾値電圧)を用いる。すなわち、制御装置9は、充電電圧Vpbの値が前回判定時よりも上昇している場合に、充電電圧基準値Vpb*として閾値電圧Vpb1*(上限閾値電圧)の値を用い、充電電圧Vpbの値が前回判定時よりも下降している場合に、充電電圧基準値Vpb*として閾値電圧Vpb2*(下限閾値電圧)の値を用いる。