JP6214377B2 - 信号処理装置 - Google Patents
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スパース信号処理は、高分解能なスペクトラムを得るために、スペクトラムが格納されているベクトルを反復計算によって求めるものである。
以下の非特許文献1では、様々な値のスパースパラメータを用いて、スパース信号処理を実施し、所定の評価式に基づいて、各々のスパース信号処理結果の中から、最適なスパース信号処理結果を選択するLカーブ法と呼ばれる手法を用いている。
このLカーブ法を用いる場合、ユーザがスパースパラメータを設定する手間を省くことができるが、何度もスパース信号処理を実施する必要がある。
図1はこの発明の実施の形態1による信号処理装置を適用するレーダ装置を示す構成図である。
また、図2はこの発明の実施の形態1による信号処理装置のスパース信号処理部4を示す構成図である。
図1及び図2において、アレー受信装置1は複数のアンテナ素子から構成されており、各アンテナ素子の受信信号をA/D変換器2に出力する。
この実施の形態1では、アレー受信装置1が複数のアンテナ素子から構成されており、複数のアンテナ素子が、例えば、放射源(例えば、移動体などの目標)からの電波の直接波又は反射波を受信するものを想定しているが、これに限るものではなく、例えば、アレー受信装置1が複数のマイクロホン(素子)から構成されており、複数のマイクロホンが、放射源からの音波の直接波又は反射波を受信するものであってもよい。
なお、アレー受信装置1を構成する素子(例えば、アンテナ素子、マイクロホン)の種類や、素子の配置は任意でよい。
積分処理部3は例えばCPUを実装している半導体集積回路(あるいは、ワンチップマイコン)や、各アンテナ素子に対応するメモリ領域を有する記憶装置などから構成されており、A/D変換器2から出力された各アンテナ素子に対応するデジタルデータを、各アンテナ素子に対応するメモリ領域に時系列順に格納する処理を実施する。
また、積分処理部3は予め設定されたサンプル数Nsのデジタルデータを格納すると、サンプル数Nsのデジタルデータであるアレーデータをサンプル時間方向(観測時間方向)及び空間方向(複数のアンテナ素子の配列方向)にコヒーレント積分する処理を実施する。なお、積分処理部3は信号積分手段を構成している。
なお、パラメータ計算部6及びスペクトラムベクトル推定部7は、スペクトラムベクトルが収束するまで反復計算を実施する。
初期値計算部5は積分処理部3によるコヒーレント積分後のアレーデータから、スペクトラムベクトルの初期値x(0)として、到来波を含む受信信号の空間スペクトラムwを算出する処理を実施する。なお、初期値計算部5は初期値算出手段を構成している。
表示器9は例えばGPU(Graphics Processing Unit)を搭載している液晶ディスプレイなどから構成されており、収束判定部8により収束していると判定されたスペクトラムベクトル推定部7の推定結果であるスペクトラムベクトルx(n)を画面に描画することで、スパース信号処理による測角結果である測角値や波源の数などをユーザに提示する。
積分処理部3及びスパース信号処理部4をコンピュータで構成する場合、積分処理部3及びスパース信号処理部4の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
アレー受信装置1は、L本のアンテナ素子が放射源(例えば、移動体などの目標)からの電波(到来波)の直接波又は反射波を受信すると、その受信信号をA/D変換器2に出力する。
A/D変換器2は、アレー受信装置1を構成しているL本のアンテナ素子の受信信号を、同期されたタイミングでサンプリングし、そのサンプリングした受信信号をA/D変換してデジタルデータを積分処理部3に出力する。
積分処理部3は、予め設定されたサンプル数Nsのデジタルデータを格納すると、サンプル数Nsのデジタルデータであるアレーデータz1をサンプル時間方向及び空間方向にコヒーレント積分する。
図3は積分処理部3の処理内容を示す説明図である。以下、図3を参照しながら、積分処理部3の処理内容を具体的に説明する。
ここで、Aは到来波の方向情報θを有するステアリングベクトルa(θ)が列方向に並べられているL×Kの行列、Sは到来波の数と時間に応じた変化情報を有するK×Nsの信号行列である。
次に、積分処理部3は、アレーデータz2の一部又は全部の列に対して、行方向のフーリエ変換等によるコヒーレント積分を実施し(図3の(2))、積分後の値を保持する(図3の(3))。
次に、積分処理部3は、保持している積分後の値の中で、値が最も大きくなっている積分処理を行っているアレーデータz2の列要素を抽出し(図3の(4))、その抽出した列要素であるL×1のアレーデータz(要素数Lのデータベクトル)をスパース信号処理部4に出力する。
ここでは、積分処理部3がアレーデータz1をサンプル時間方向及び空間方向(複数のアンテナ素子の配列方向)にコヒーレント積分することで、信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)を改善するようにしているが、アレーデータz1をサンプル時間方向又は空間方向にコヒーレント積分するだけでも、ある程度、信号対雑音比は改善する。
即ち、初期値計算部5は、積分処理部3からL×1のアレーデータzを受けると、そのアレーデータzと、事前に設定されている辞書行列Adと呼ばれるL×N行列(ステアリングベクトルa(θ)が列方向に並べられている行列)を用いて、到来波を含む受信信号の空間スペクトラムwを算出する。
辞書行列Adが含むステアリングベクトルa(θ)の数Nは任意に決めてよい。また、辞書行列Adが含むステアリングベクトルa(θ)の並べ方は、初期値の空間スペクトラムwに対応するものとする。
ここで、図4は初期値計算部5による空間スペクトラムwの正規化処理を示す説明図である。
この正規化処理は、到来波の電力の大きさの違いによるスパースパラメータλの変動を抑制するように作用するため、計算の安定化に寄与する。
この正規化処理も、空間スペクトラムwの正規化処理と同様に、計算の安定化に寄与する。
2回目以降のスパース信号処理(n=2,3,・・・)では、収束判定部8からスパース信号処理の反復指令を受けていれば、スペクトラムベクトル推定部7による前回の推定結果であるスペクトラムベクトルx(n-1)と閾値βを用いて、スペクトラムベクトルx(n)の推定処理に用いるスパースパラメータλ(n)を算出する。
スペクトラムベクトルx(n)の推定処理に用いるスパースパラメータλ(n)は、下記の式(8)のように表される。
パラメータ計算部6は、下記の式(10)で表されるΛv(x)が最小になるときのスパースパラメータλ(n)をスペクトラムベクトル推定部7に出力する。Λv(x)は後述する評価式Je(x)の勾配の計算によって現れるベクトルである。
ここで、θtは更新過程のスペクトラムベクトルの最大値が対応する方位、βは閾値である。閾値βの決定方法は後述する。
εは0除算を防止するためのスムージングパラメータと呼ばれる値であり、非常に小さな値が設定される。この値はスペクトラムベクトルをプロットした際のノイズフロアに相当する。
これに対して、αは到来波の有無を判定する役割を有し、ピーク電力を基準にして、βdB以下のスペクトラムベクトルの要素が反復を重ねる毎に抑圧されるように機能する。
図5はパラメータ計算部6により算出されたスパースパラメータλ(n)をスペクトラムベクトルx(n)の推定処理に用いることによる効果を示す説明図である。
即ち、パラメータ計算部6は、下記の式(11)を満足する閾値βを事前に決定する。
上記のように閾値βを決定することで、閾値βの値が小さ過ぎることに伴って、電力が低い到来波のピークが反復計算の過程で抑圧されることを防止することができる。また、閾値βの値が大き過ぎることに伴って、雑音によってスプリアスピークが生じることを防止することができる。
この実施の形態1では、評価式J(x)を勾配法によって最小化するが、勾配法でスペクトラムベクトルx(n)を算出するに際し、評価式J(x)に対して、以下のような近似を行う。
したがって、スペクトラムベクトル推定部7は、式(14)の評価式Je(x)が最小化するようなスペクトラムベクトルx(n)を反復計算する。
以下、スペクトラムベクトル推定部7によるスペクトラムベクトルx(n)の推定処理を具体的に説明する。
2回目以降のスパース信号処理(n=2,3,・・・)では、収束判定部8からスパース信号処理の反復指令を受けていれば、前回の推定結果であるスペクトラムベクトルx(n-1)とパラメータ計算部6により算出されたスパースパラメータλ(n)を用いて、スペクトラムベクトルx(n)を推定する。
スペクトラムベクトル推定部7により推定されるスペクトラムベクトルx(n)は、下記の式(15)のように表される。
式(15)に示すスペクトラムベクトルx(n)を推定することは、式(14)の評価式Je(x)が最小化するようなスペクトラムベクトルx(n)を計算することに相当する。
ここで、Hは複素共役転置の演算子である。
即ち、収束判定部8は、下記の式(18)に示す収束判定式を満足していれば、スペクトラムベクトルx(n)が収束していると判定し、その収束判定式を満足していなければ、スペクトラムベクトルx(n)が収束していないと判定する。
ここで、thresholdは予め設定された閾値である。
一方、スペクトラムベクトルx(n)が収束していないと判定すると、スペクトラムベクトル推定部7によるスペクトラムベクトルx(n)の推定結果をパラメータ計算部6に出力して、スパース信号処理の反復指令をパラメータ計算部6及びスペクトラムベクトル推定部7に出力する。
これにより、パラメータ計算部6、スペクトラムベクトル推定部7及び収束判定部8における先に示した処理が反復され、スペクトラムベクトルx(n)が収束するまで繰り返される。
図6はこの発明の実施の形態2による信号処理装置を適用するレーダ装置を示す構成図であり、図6において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
受信装置11は1個のアンテナ素子から構成されており、そのアンテナ素子の受信信号をA/D変換器2に出力する。
この実施の形態1では、受信装置11が1個のアンテナ素子から構成されており、そのアンテナ素子が、例えば、放射源(例えば、移動体などの目標)からの電波の直接波又は反射波を受信するものを想定しているが、これに限るものではなく、例えば、受信装置11が1個のマイクロホン(素子)から構成されており、そのマイクロホンが、放射源からの音波の直接波又は反射波を受信するものであってもよい。
なお、A/D変換器2は、データ保持部12からサンプル数Nsのデジタルデータがスパース信号処理部13に出力された後、スパース信号処理部13のスパース信号処理が終了するまでの間、受信信号をA/D変換する処理を停止するようにしてもよい。
ただし、初期値計算部5やスペクトラムベクトル推定部7で用いられるステアリングベクトル及び辞書行列が、図1のスパース信号処理部4と相違している。
データ保持部12及びスパース信号処理部13をコンピュータで構成する場合、データ保持部12をコンピュータのメモリ上に構成するとともに、スパース信号処理部13の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
受信装置11は、1本のアンテナ素子が放射源(例えば、移動体などの目標)からの電波(到来波)の直接波又は反射波を受信すると、その受信信号をA/D変換器2に出力する。
A/D変換器2は、受信装置11を構成している1本のアンテナ素子の受信信号を一定の間隔でサンプリングし、そのサンプリングした受信信号をA/D変換してデジタルデータをデータ保持部12に出力する。
データ保持部12は、予め設定されたサンプル数Nsだけデジタルデータを格納すると、サンプル数Nsのデジタルデータをスパース信号処理部13に出力する。
サンプル数Nsのデジタルデータは、下記の式(19)に示すように、時系列データが格納されているNs×1のデータベクトルzaとして表すことができる。
即ち、初期値計算部5は、周波数スペクトラムに対するスパース信号処理を実現するために、上記実施の形態1と異なるNs×Nの辞書行列Ad2が設定されており、Ns×1のデータベクトルzaとNs×Nの辞書行列Ad2を用いて、到来波を含む受信信号の空間スペクトラムwを算出する。
辞書行列Ad2の列数であるNは離散フーリエ変換のポイント数であり、求める周波数分解能に応じて任意に設定することができる。
不要な周波数成分を0とすることにより、スペクトラムのスパース性が高まるため収束特性が改善する。
不要な周波数成分を0とする処理を行った場合、データ保持部12から出力されたNs×1のデータベクトルzaは、フィルタリング後の空間スペクトラムwを逆離散フーリエ変換したものとする。
スパース信号処理部13から表示器9に出力されるスペクトラムベクトルx(n)は、周波数スペクトラムの高分解能化が完了しており、短い観測時間で高い周波数分解能が実現する。
図7はこの発明の実施の形態3による信号処理装置を適用するレーダ装置を示す構成図であり、図7において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
周波数掃引部21は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、受信装置11におけるアンテナ素子の受信信号を周波数成分毎に取得して、Nf×1のデータベクトルzbを生成する処理を実施する。
ただし、初期値計算部5やスペクトラムベクトル推定部7で用いられるステアリングベクトル及び辞書行列が、図1のスパース信号処理部4と相違している。
周波数掃引部21及びスパース信号処理部22をコンピュータで構成する場合、周波数掃引部21及びスパース信号処理部22の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
受信装置11は、1本のアンテナ素子が放射源(例えば、移動体などの目標)からの電波(到来波)の直接波又は反射波を受信すると、その受信信号を周波数掃引部21に出力する。
周波数掃引部21は、受信装置11におけるアンテナ素子の受信信号を周波数成分毎に取得して、各周波数成分に対応するメモリに格納し、Nf個の周波数成分を並べているNf×1のデータベクトルzbを生成する。
なお、Nf×1のデータベクトルzbを生成する際、A/D変換後の時系列データの離散フーリエ変換結果を用いるようにしてもよい。
即ち、初期値計算部5は、周波数スペクトラムに対するスパース信号処理を実現するために、上記実施の形態1と異なるNf×Nの辞書行列Ad3が設定されており、Nf×1のデータベクトルzbとNf×Nの辞書行列Ad3を用いて、到来波を含む受信信号の空間スペクトラムwを算出する。
スパース信号処理部13から表示器9に出力されるスペクトラムベクトルx(n)は、周波数スペクトラムの高分解能化が完了しており、短い観測時間で高い周波数分解能が実現する。
本発明は、スパース信号処理の演算負荷の軽減のために、スペクトラムの最大値に着目したパラメータ設定を行うパラメータ計算部6を設けることが要点であり、辞書行列や観測信号への制約はない。したがって、本発明は、スパース信号処理が適用可能な信号モデルであれば、辞書行列や観測信号ベクトルによらずに適用が可能である。このように、用途に応じてスパース信号処理部で用いる辞書行列と観測信号の組み合わせを変更した構成も本発明の範囲内である。
Claims (4)
- 到来波を含む受信信号の空間スペクトラムをスペクトラムベクトルの初期値として算出する初期値算出手段と、
前記初期値算出手段により算出されたスペクトラムベクトルの初期値又は前回の算出結果であるスペクトラムベクトルと予め設定された閾値を用いて、前記スペクトラムベクトルの算出処理に用いるスパースパラメータの算出処理を実施するスパースパラメータ算出手段と、
前記初期値算出手段により算出されたスペクトラムベクトルの初期値又は前回の算出結果であるスペクトラムベクトルと前記スパースパラメータ算出手段により算出されたスパースパラメータを用いて、前記スペクトラムベクトルの算出処理を実施するスペクトラムベクトル算出手段と、
前記スペクトラムベクトル算出手段により算出されたスペクトラムベクトルの収束判定を実施し、未だ収束していなければ、前記スペクトラムベクトルの算出結果を前記スパースパラメータ算出手段に出力して、算出処理の反復を前記スパースパラメータ算出手段及び前記スペクトラムベクトル算出手段に指示する収束判定手段と
を備えた信号処理装置。 - 前記スパースパラメータ算出手段は、前記受信信号に含まれている複数の到来波の中で電力が最大の到来波の信号雑音比と、電力が最大の到来波と電力が最小の到来波間の電力差とから前記閾値を決定することを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
- 前記初期値算出手段は、前記受信信号の空間スペクトラムを算出した後、前記空間スペクトラムにおける各要素の最大値で前記各要素を正規化し、要素正規化後の空間スペクトラムを前記スペクトラムベクトルの初期値として前記スパースパラメータ算出手段及び前記スペクトラムベクトル算出手段に出力することを特徴とする請求項1または請求項2記載の信号処理装置。
- 前記到来波を含む受信信号がアレー受信装置を構成している複数の素子の受信信号である場合、
前記複数の素子の受信信号の一定時間分のサンプリングデータを観測時間方向又は前記複数の素子の配列方向にコヒーレント積分、あるいは、前記観測時間方向及び前記配列方向にコヒーレント積分する信号積分手段を備え、
前記初期値算出手段は、前記信号積分手段によるコヒーレント積分後のサンプリングデータから前記スペクトラムベクトルの初期値を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の信号処理装置。
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