JP6214188B2 - β−ラクタマーゼ検出方法 - Google Patents

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本発明は、β−ラクタマーゼ検出方法に関する。より詳細には、アシドメトリー法によりβ−ラクタマーゼの基質特異性に基づく詳細な酵素分類の判定を行う方法及びそれに用いる試薬に関する。なお、本明細書では、細菌の学名及び遺伝子名を通常用いられるイタリック体ではなく普通の書体で表記する。
β−ラクタム系抗菌薬(以下、β−ラクタム薬という。)は、その分子構造母核中にβ−ラクタム環を持つ抗菌薬の総称でペニシリンの発見以来、多くのβ−ラクタム薬が開発されている。このβ−ラクタム薬の開発に伴い、その分子構造中のβ−ラクタム環を加水分解して、その抗菌作用を無効化する酵素(β−ラクタマーゼ)を産生する耐性菌(β−ラクタマーゼ産生菌)が出現し、院内感染対策上重要な問題となっている。
β−ラクタマーゼはAmblerらによって酵素タンパクのアミノ酸一次配列の相同性により、クラスA〜D型に分類された。クラスAに属するβ−ラクタマーゼは、活性中心にセリン残基を有するセリンペプチダーゼである。その原型となる酵素はペニシリン系抗菌薬を加水分解するペニシリナーゼであるが、基質特異性が拡張することにより、ペニシリン系抗菌薬のみでなくセファロスポリン系抗菌薬やモノバクタム系抗菌薬に対する加水分解作用も示すようになった基質拡張型β−ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase、以下、ESBLという。)もクラスAのβ−ラクタマーゼに含まれる。また、海外ではクラスAに属するKPC(Klebsiella pneumoniae carbapenemase)型カルバペネマーゼの産生菌が問題となっている。クラスBに属するβ−ラクタマーゼは、活性中心に亜鉛イオンを有しているため、メタロ−β−ラクタマーゼ(metallo-β-lactamase、以下、MBLという。)と呼ばれる。このクラスに属するβ−ラクタマーゼは、ペニシリン系抗菌薬、セフェム系抗菌薬及びカルバペネム系抗菌薬まで幅広く加水分解するものが多い。クラスCに属するβ−ラクタマーゼは、活性中心にセリン残基を有し、主としてセファロスポリン系抗菌薬を加水分解するセファロスポリナーゼである。クラスCに属するβ−ラクタマーゼをコードする遺伝子であるampCは、一部の菌種を除き、腸内細菌科からブドウ糖非発酵菌に属する菌種の染色体に存在しており、そのようなβ−ラクタマーゼを産生する菌株は染色体性AmpC産生株と呼ばれ、セファマイシン系抗菌薬に感受性を示す。一方、プラスミド上にampCがコードされたプラスミド性AmpC(例えば過剰産生型AmpC)は、AmpCが効率的に産生されるために、セファマイシン系抗菌薬、オキサセフェム系抗菌薬に耐性を示す。クラスDに属するβ−ラクタマーゼは、クラスAに属する酵素と同様に活性中心にセリン残基を有し、原型となる酵素は主としてペニシリン系抗菌薬を加水分解する。オキサシリンを分解する効率がペニシリン分解効率よりも高いことがクラスAのβ−ラクタマーゼとの違いであり、クラスDに属するβ−ラクタマーゼはオキサシリナーゼと呼ばれる。クラスDに属するカルバペネマーゼとしてOXA(oxacillinase)型カルバペネマーゼが知られている(非特許文献1)。
前述のように、β−ラクタマーゼはその基質となるβ−ラクタム薬を加水分解して不活化するため、β−ラクタマーゼ産生菌に感染した患者に対してその基質となるβ−ラクタム薬を投与して行う治療を難しくすることが多い。一方、必要以上に抗菌スペクトルの広い抗菌薬を投与することは、新たな耐性菌を出現させる原因にもなる。そのため、感染した細菌がβ−ラクタマーゼを産生するか否か、産生する場合はそのβ−ラクタマーゼがどの抗菌薬を不活化するのかを抗菌薬を投与する前に判定可能な、迅速試験方法が望まれている。
現在、β−ラクタマーゼの迅速検出が可能な方法として、クロモジェニック法、UV法、ヨードメトリー法、アシドメトリー法等が知られている(特許文献1、2及び3)。クロモジェニック法は、β−ラクタマーゼによる加水分解によってβ−ラクタム環が開裂すると変色する基質を使用する方法である。この方法は基質自体が変色するため、感度は高いが、単一の基質と複数のβ−ラクタマーゼ阻害剤を組み合わせることによりβ−ラクタマーゼのクラス分類を行うため、基質特異性を判別することはできない。UV法は、一般的には酵素を菌の細胞中から精製して行う手法であるため、簡易な検査法に用いることができない。
ヨードメトリー法は、β−ラクタマーゼによる基質の加水分解に伴い生じる酸がヨウ素を還元することに基づき、ヨード澱粉反応による色の変化を指標として検出する方法である。一方、アシドメトリー法は、β−ラクタマーゼによる基質の加水分解に伴い生じる酸に由来するpH変化をpH指示薬の色の変化として検出する方法である。しかし、これらの検出原理を利用してβ−ラクタマーゼの詳細な酵素分類の判定ができる方法はこれまでに知られていない。
特開2004−166694号公報 国際公開第2002/024707号 国際公開第2006/043558号
石井良和,臨床検査,54(5),473−480,2010
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、短時間にβ−ラクタマーゼの基質特異性に基づく詳細な酵素分類の判定が可能な方法及びそれに用いる試薬を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために、まず、多種類のβ−ラクタマーゼの基質特異性を判別するための方法を検討した。検出にヨードメトリー法を使用することは可能であるが、オキシダーゼテストで陽性を示す細菌では、その酸化還元反応が呈色に影響を与えてしまい正確な判定ができないことが懸念された。続いて種々の検討を重ねた結果、アシドメトリー法を検出原理として選択することにより、オキシダーゼテストで陽性を示す細菌においても判定への影響を少なくでき、第一の薬剤;ペニシリン系、第二の薬剤;第一世代セフェム系、第三の薬剤;第三世代セフェム系及び/または第四世代セフェム系、第四の薬剤;モノバクタム系、第五の薬剤;セファマイシン系及び/またはオキサセフェム系、並びに第六の薬剤;カルバペネム系からなる少なくとも6種のβ−ラクタム薬の各々を検出対象菌に接触させ、各薬剤の分解の有無をアシドメトリー法により判別することにより、対象菌のβ−ラクタマーゼ産生の有無、ペニシリナーゼ、セファロスポリナーゼ、ESBL、過剰産生型AmpC、MBL、KPC型カルバペネマーゼまたはOXA(oxacillinase)型カルバペネマーゼであるか否かを判定できることを見出した。更に、本発明者らは、反応性が遅く、検出に時間がかかるβ−ラクタマーゼも、ポリミキシンB(PL-B)、コリスチン(CL)、n-オクチル-β-D-グルコシドから選択される反応促進剤を添加することによって短時間で検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のような構成からなるものである。
(1)以下の工程を含むことを特徴とする微生物のβ−ラクタマーゼ検出方法及び判定方法。
(a)第一の薬剤;ペニシリン系、
第二の薬剤;第一世代セフェム系、
第三の薬剤;第三世代セフェム系及び/または第四世代セフェム系、
第四の薬剤;モノバクタム系、
第五の薬剤;セファマイシン系及び/またはオキサセフェム系、並びに、
第六の薬剤;カルバペネム系、
からなる6系統のβ−ラクタム薬の各々を検出対象微生物に接触させ、各薬剤の分解の有無をアシドメトリー法により判別する工程、
(b)工程(a)における各薬剤の分解有無の判別結果に基づいて検出対象微生物の酵素分類の判定を行う工程。
(2)工程(a)において、
ペニシリナーゼ産生菌は、第一の薬剤が分解有りと判別され、第二の薬剤は分解有りまたは分解無しと判別され、第三の薬剤、第四の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤は分解無しと判別され、
セファロスポリナーゼ産生菌(染色体性)は、第一の薬剤及び第二の薬剤が分解有りと判別され、第三の薬剤、第四の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤は分解無しと判別され、
ESBL産生菌は、第一の薬剤及び第二の薬剤が分解有りと判別され、第五の薬剤及び第六の薬剤は分解無しと判別され、第三の薬剤及び第四の薬剤は分解有りまたは分解無しと判別され、
過剰産生型AmpC産生菌は、第一の薬剤、第二の薬剤、第三の薬剤、第四の薬剤及び第五の薬剤が分解有りと判別され、第六の薬剤は分解無しと判別され、
MBL産生菌は、第一の薬剤、第二の薬剤、第三の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤が分解有りと判別され、第四の薬剤は分解無しと判別され、
KPC型カルバペネマーゼ産生菌及びOXA型カルバペネマーゼ産生菌は、6系統の薬剤すべてが分解有りと判別される、(1)に記載の方法。
(3)工程(a)において、pH指示薬を含有する媒体中でβ−ラクタム薬を検出対象微生物に接触させる、(1)または(2)に記載の方法。
(4)工程(a)において検出対象微生物と接触させる媒体が、ポリミキシンB、コリスチン、n-オクチル-β-D-グルコシドから選択される反応促進剤を更に含有する(3)に記載の方法。
(5)pH指示薬が、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、ニトラジンイエロー、フェノールレッドから選択される(3)または(4)に記載の方法。
(6)第一の薬剤がペニシリンGまたはピペラシリンであり、第二の薬剤がセファゾリン、セファロチン、セファピリン、セファレキシンまたはセフロキサジンであり、第三の薬剤がセフォタキシム、セフトリアキソン、セフチゾキシム、セフスロジン、セフテラムまたはセフメノキシムであり、第四の薬剤がアズトレオナムであり、第五の薬剤がフロモキセフまたはセフメタゾールであり、第六の薬剤がイミペネムまたはパニペネムである(1)から(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)工程(a)において検出対象微生物と接触させる媒体が、液体、半流動状物質、ディスクまたはろ紙である、(3)から(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8)工程(a)において検出対象微生物と接触させる媒体が液体であり、β−ラクタム薬と検出対象微生物を多ウェルプレートのウェル内で、20〜40℃において接触させる、(3)から(7)のいずれか1項に記載の方法。
(9)1種類のβ−ラクタム薬、pH指示薬を含有するβ−ラクタマーゼ検出用処方を液体、乾燥状態または凍結状態で各ウェル内に備えた多ウェルプレートであって、β−ラクタム薬が、
第一の薬剤;ペニシリン系、
第二の薬剤;第一世代セフェム系、
第三の薬剤;第三世代セフェム系及び/または第四世代セフェム系、
第四の薬剤;モノバクタム系、
第五の薬剤;セファマイシン系及び/またはオキサセフェム系、並びに、
第六の薬剤;カルバペネム系、
からなる6系統である多ウェルプレート。
(10)β−ラクタマーゼ検出用処方が、ポリミキシンB、コリスチン、n-オクチル-β-D-グルコシドから選択される反応促進剤を更に含有する(9)に記載の多ウェルプレート。
(11)pH指示薬が、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、ニトラジンイエロー、フェノールレッドから選択される(9)または(10)に記載の多ウェルプレート。
(12)第一の薬剤がペニシリンGまたはピペラシリンであり、第二の薬剤がセファゾリン、セファロチン、セファピリン、セファレキシンまたはセフロキサジンであり、第三の薬剤がセフォタキシム、セフトリアキソン、セフチゾキシム、セフスロジン、セフテラムまたはセフメノキシムであり、第四の薬剤がアズトレオナムであり、第五の薬剤がフロモキセフまたはセフメタゾールであり、第六の薬剤がイミペネムまたはパニペネムである(9)から(11)のいずれか1項に記載の多ウェルプレート。
本発明のβ−ラクタマーゼ検出方法、判定方法及びそれに用いる試薬は、6種のβ−ラクタム薬の各々を検出対象菌に接触させて、各薬剤の分解の有無をアシドメトリー法で判別するという簡易な操作で短時間に、β−ラクタマーゼの基質特異性に基づく詳細な酵素分類の判定が可能であるという、従来法にない効果を有する。また、従来、反応が遅く、検出に時間がかかっていたスタフィロコッカス属菌等のβ−ラクタマーゼも含めて、反応促進剤の使用によってより迅速な判定が可能となる。判定時間を短縮することは、接触時間が長引くことで反応系中のpHが変化することによる陽性呈色の陰性色化や、陰性菌の陽性呈色の問題を回避し、結果としてより正確な判定が可能となるという効果ももたらす。
図1は、反応促進剤のスクリーニング検討を行った結果を示す図である。(実施例2)
本発明では、第一の薬剤;ペニシリン系、第二の薬剤;第一世代セフェム系、第三の薬剤;第三世代セフェム系及び/または第四世代セフェム系、第四の薬剤;モノバクタム系、第五の薬剤;セファマイシン系及び/またはオキサセフェム系、並びに第六の薬剤;カルバペネム系から選択されるβ−ラクタム薬を検出対象微生物に接触させ、各薬剤の分解の有無をアシドメトリー法により判別し、基質特異性に基づき酵素分類を判定する。より詳細な酵素分類の判定を行うためには選択する薬剤を前記の第一の薬剤、第二の薬剤、第三の薬剤、第四の薬剤、第五の薬剤、及び第六の薬剤からなる6系統のβ−ラクタム薬とすることが好ましい。
本発明で使用するβ−ラクタム薬は、第一の薬剤;ペニシリン系、第二の薬剤;第一世代セフェム系、第三の薬剤;第三世代セフェム系及び/または第四世代セフェム系、第四の薬剤;モノバクタム系、第五の薬剤;セファマイシン系及び/またはオキサセフェム系、並びに第六の薬剤;カルバペネム系から選択される抗菌薬であれば特に限定されない。ペニシリン系抗菌薬は、例えば、ペニシリンG(PCG)、オキサシリン(MPIPC)、メチシリン(DMPPC)、フルクロキサシリン(MFIPC)、ナフシリン(NFPC)、フェネチシリン(PEPC)、クロキサシリン(MCIPC)、ジクロキサシリン(MDIPC)、アンピシリン(ABPC)、シクラシリン(ACPC)、アモキシシリン(AMPC)、レナンピシリン(LAPC)、アスポキシシリン(ASPC)、ピペラシリン(PIPC)、スルベニシリン(SBPC)、スルタミシリン(SBTPC)、タランピシリン(TAPC)、バカンピシリン(BAPC)、ピブメシリナム(PMPC)、カリンダシリン(CIPC)、カルフェシリン(CFPC)、ヘタシリン(IPABPC)である。
第一世代セフェム系抗菌薬は、例えば、セファロチン(CET)、セファロリジン(CER)、セファピリン(CEPR)、セファゾリン(CEZ)、セフテゾール(CTZ)、セファセトリル(CEC)、セファレキシン(CEX)、セフラジン(CED)、セファトリジン(CFT)、セフロキサジン(CXD)、セファドロキシル(CDX)、セファゼドン、セフロダキシンである。
第三世代セフェム系抗菌薬は、例えば、セフテラム(CFTM)、セフメノキシム(CMX)、セフチゾキシム(CZX)、セフォペラゾン(CPZ)、セフォタキシム(CTX)、セフピラミド(CPM)、セフタジジム(CAZ)、セフトリアキソン(CTRX)、セフォジジム(CDZM)、セフスロジン(CFS)、セフィキシム(CFIX)、セフチブテン(CETB)、セフポドキシムプロキセチル(CPDX-PR)、セフカペンピボキシル(CFPN-PI)、セフチゾキシムアラピボキシル(CZX-AP)である。
第四世代セフェム系抗菌薬は、例えば、セフェピム(CFPM)、セフピロム(CPR)である。
モノバクタム系抗菌薬は、例えば、アズトレオナム(AZT)、カルモナム(CRMN)である。
セファマイシン系抗菌薬は、例えば、セフォキシチン(CFX)、セフメタゾール(CMZ)、セフォテタン(CTT)、セフブペラゾン(CBPZ)、セフミノクス(CMNX)である。
オキサセフェム系抗菌薬は、例えば、ラタモキセフ(LMOX)、フロモキセフ(FMOX)である。
カルバペネム系抗菌薬は、例えば、イミペネム(IPM)、パニペネム(PAPM)、メロペネム(MEPM)、ビアペネム(BIPM)、ドリペネム(DRPM)、テビペネム(TBPM)、エルタペネムである。
なお、後に示す実施例においては、略称を使用した。より迅速かつ正確な判定を行うためには、反応強度が強く、安定した成績が得られる薬剤、すなわち、第一の薬剤としてペニシリンGまたはピペラシリン、第二の薬剤としてセファゾリン、セファロチン、セファピリン、セファレキシンまたはセフロキサジン、第三の薬剤としてセフォタキシム、セフトリアキソン、セフチゾキシム、セフスロジン、セフテラムまたはセフメノキシム、第四の薬剤としてアズトレオナム、第五の薬剤としてフロモキセフまたはセフメタゾール、第六の薬剤としてイミペネムまたはパニペネムを選択することが特に好ましい。本発明は、少なくとも第一の薬剤、第二の薬剤、第三の薬剤、第四の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤から選択されるβ−ラクタム薬を使用する方法であり、前記のβ−ラクタム薬の他に別の薬剤を使用することも可能である。例えば、第七の薬剤として第二世代セフェム系の抗菌薬も使用できる。第二世代セフェム系抗菌薬の具体例としては、セフロキシム(CXM)、セファマンドール(CMD)、セフォニシド、セフォチアム(CTM)、ロラカルベフ(LCBF)、セフプロジル(CFPZ)、セフォラニドが挙げられる。
本発明で使用する各β−ラクタム薬の濃度は、薬剤を分解するβ−ラクタマーゼを産生する菌に接触させた時に、β−ラクタム薬の加水分解をアシドメトリー法によって検出できる濃度である。そのような濃度は、β−ラクタム薬と検出対象微生物を接触させる媒体の種類、すなわち、β−ラクタム薬の加水分解反応を溶液あるいは半流動状物質中で行うか、またはディスクや試験片のような担体を使用して行うかを考慮し、更に接触時間等の条件も考慮して適量に設定する。例えば、溶液中で反応させる場合は、β−ラクタマーゼ検出反応液の最終濃度としてペニシリン系抗菌薬を0.1〜100mg/mL、第一世代セフェム系抗菌薬を0.1〜100mg/mL、第三世代セフェム系抗菌薬を0.1〜100mg/mL、第四世代セフェム系抗菌薬を0.1〜100mg/mL、モノバクタム系抗菌薬を0.1〜100mg/mL、セファマイシン系抗菌薬を0.1〜100mg/mL、オキサセフェム系抗菌薬を0.1〜100mg/mL、カルバペネム系抗菌薬を0.1〜100mg/mLとすることが好ましく、ペニシリン系抗菌薬をペニシリンG 0.5〜50mg/mLまたはピペラシリン0.5〜50mg/mL、第一世代セフェム系抗菌薬をセファゾリン0.5〜50mg/mL、セファロチン0.5〜50mg/mL、セファピリン0.5〜50mg/mL、セファレキシン0.5〜50mg/mLまたはセフロキサジン0.5〜50mg/mL、第三世代セフェム系抗菌薬をセフォタキシム0.5〜50mg/mL、セフトリアキソン0.5〜50mg/mL、セフチゾキシム0.5〜50mg/mL、セフスロジン0.5〜50mg/mL、セフテラム0.5〜50mg/mLまたはセフメノキシム0.5〜50mg/mL、モノバクタム系抗菌薬をアズトレオナム0.5〜50mg/mL、オキサセフェム系抗菌薬をフロモキセフ0.5〜50mg/mL、セファマイシン系抗菌薬をセフメタゾール0.5〜50mg/mL、カルバペネム系抗菌薬をイミペネム0.5〜25mg/mLまたはパニペネム0.5〜25mg/mLとすることがより好ましい。
本発明の検出対象微生物は、β−ラクタマーゼを産生する可能性のある菌である。具体例として、エシェリヒア・コリー(Escherichia coli)(以下、大腸菌という。)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、モルガネラ・モルガニ(Morganella morganii)、シトロバクター・フロインディ(Citrobacter freundii)、シトロバクター・コゼリ(Citrobacter koseri)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(以下、緑膿菌という。)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas multophilia)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)等のグラム陰性菌及びグラム陽性菌であるスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus、以下、黄色ブドウ球菌という。)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)等が挙げられるが、これらに限定されない。
検出対象微生物は特に限定されないが、ヒト、他の動物の生体由来、環境、食品由来の検体中に含まれている可能性があるため、本発明では、これらの検体に由来する試料を使用することができる。検体を生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、蒸留水、精製水等の溶媒に溶解させて調製することができる試料液は、該液に含まれる検出対象微生物の濃度を3.0×104〜3.0×1010CFU/mLとして使用することができるが、検体を溶解させる溶媒や試料液中の検出対象微生物濃度は以上の記載に限定されるものではない。
本発明では、β−ラクタム薬を検出対象微生物に接触させた後、各薬剤の分解の有無をアシドメトリー法により判別する。β−ラクタム薬と検出対象微生物を接触させる媒体は、検出対象微生物が産生するβ−ラクタマーゼによってβ−ラクタム薬が分解されうるものであれば特に限定されない。半流動状物質、ディスク、ろ紙等の固形状物質にβ−ラクタマーゼ検出用処方液を含浸させたものを媒体とするか、あるいは媒体を液体とすることができる。媒体を液体とする場合は、β−ラクタマーゼ検出用処方液そのものを媒体として使用するか、調製したβ−ラクタマーゼ検出用処方液を凍結させて保存した後に融解して液体に戻して使用するか、あるいはβ−ラクタマーゼ検出用処方液を自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥といった一般的な方法で乾燥させた後、溶解液を添加して溶解後、媒体として使用できる。
β−ラクタム薬と検出対象微生物を接触させる媒体は、少なくともpH指示薬を含有する。ただし、pH指示薬の至適pHを安定させる目的で、更に媒体に緩衝剤を添加することができる。その他に、微生物の発育を支持する成分を添加することもできるが、本発明では検出原理としてアシドメトリー法を使用するため、β−ラクタマーゼによるβ−ラクタム薬の加水分解反応以外の要因によってpHが変動することは好ましくない。微生物が発育したとき、その代謝する成分によってpHが変動するため、本発明における加水分解反応のアシドメトリー法による正確な判別を妨げる要因となる。そのため、本発明の媒体は、微生物の発育を支持する成分、すなわちペプトン、エキス類、炭水化物、ミネラル等、微生物が発育するための栄養源となる成分を含有しないことが好ましい。
本発明で使用するpH指示薬の種類及び濃度は特に限定されない。例えば、pH指示薬としてブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、ニトラジンイエロー、フェノールレッド等を使用できるが、後に記載するように反応促進剤としてポリミキシンBを使用する場合は、溶解性の相性の良いフェノールレッドを使用することが好ましい。媒体を液体とする場合には、β−ラクタマーゼ検出反応液の最終濃度としてフェノールレッドの濃度を0.01〜10ng/mLとすることが好ましい。
本発明では、緩衝剤を使用せずにβ−ラクタム薬と検出対象微生物を接触させ、β−ラクタマーゼの検出、判定を行うことも可能であるし、pH指示薬の至適pHを安定させる目的で媒体に緩衝剤を添加することも可能である。本発明において、緩衝剤を使用する場合、その種類及び濃度は、検出対象微生物が産生するβ−ラクタマーゼによるβ−ラクタム薬の加水分解に伴うpH変化をpH指示薬の色の変化として正確に検出しうるものである。緩衝剤を使用することにより、pH指示薬の至適pHを安定させることができるが、一方、緩衝剤の濃度が増す程pH変動が起こりにくくなる。そのため、緩衝剤の種類及び濃度は、pH指示薬の種類、対象微生物の菌数、検出感度、微生物の発育を支持する成分を含有させるか否か等を考慮して条件設定する。β−ラクタマーゼによる基質の加水分解が開始するまでの間はpHを安定に保ち、かつ、β−ラクタム薬の加水分解に伴う酸の産生に基づいて敏感にpHを変化させうるものであれば特に限定されないが、例えば、pH指示薬としてフェノールレッドを使用する場合はpH6.8ないし8.0付近で緩衝能が最大となる緩衝剤が好ましい。そのような緩衝剤とβ−ラクタマーゼ検出反応液の最終濃度として、例えば、3-モルホリノプロパンスルホン酸(以下、MOPSという。)0.01〜100mM、リン酸緩衝液0.01〜100mM、Tris-HCl緩衝液0.01〜100mM、酢酸緩衝液0.01〜100mM、クエン酸緩衝液0.01〜100mM等を使用することができる。
本発明では、第一の薬剤;ペニシリン系、第二の薬剤;第一世代セフェム系、第三の薬剤;第三世代セフェム系及び/または第四世代セフェム系、第四の薬剤;モノバクタム系、第五の薬剤;セファマイシン系及び/またはオキサセフェム系、並びに第六の薬剤;カルバペネム系から選択されるβ−ラクタム薬を検出対象微生物に接触させ、各薬剤の分解の有無をアシドメトリー法により判別し、それにより得られた基質特異性のデータに基づいて詳細な酵素分類の判定を行う。一度に全ての薬剤の分解の有無を試験することも可能であるし、複数回に分けて試験することも可能である。複数回に分けて試験する場合には、例えば、先に3系統の薬剤の試験を行い、必要に応じて更に残りの3系統の薬剤の試験を行うことも可能である。ただし、短時間に詳細な酵素分類を行うためには、一度の試験で6系統の薬剤の試験を行うことが好ましい。表1に酵素の分類判定表を示したが、代表的な酵素の判定例を記すと、ペニシリナーゼ産生菌は、第一の薬剤が分解有りと判別され、第二の薬剤は分解有りまたは分解無しと判別され、第三の薬剤、第四の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤は分解無しと判別され、セファロスポリナーゼ産生菌(染色体性)は、第一の薬剤及び第二の薬剤が分解有りと判別され、第三の薬剤、第四の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤は分解無しと判別され、ESBL産生菌は、第一の薬剤及び第二の薬剤が分解有りと判別され、第五の薬剤及び第六の薬剤は分解無しと判別され、第三の薬剤及び第四の薬剤は分解有りまたは分解無しと判別され、過剰産生型AmpC産生菌は、第一の薬剤、第二の薬剤、第三の薬剤、第四の薬剤及び第五の薬剤が分解有りと判別され、第六の薬剤は分解無しと判別され、MBL産生菌は、第一の薬剤、第二の薬剤、第三の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤が分解有りと判別され、第四の薬剤は分解無しと判別され、KPC型カルバペネマーゼ産生菌及びOXA型カルバペネマーゼ産生菌は、6系統の薬剤すべてが分解有りと判別される。しかし、本発明で判定できる酵素は以上に限定されない。
β−ラクタム薬の分解反応の温度、時間は、検出対象微生物や媒体の種類に応じて適切な条件に設定すれば良いが、例えば、嫌気性菌では、より長い接触時間を必要とする。条件設定としては、反応温度を20〜40℃とすることが好ましく、30〜37℃とすることがより好ましい。また、接触時間を1秒〜48時間とすることが好ましく、5分〜24時間とすることがより好ましい。
本発明のβ−ラクタム薬の分解の有無の判別は、適切な温度、時間で接触させた後、媒体の色調の変化の有無を目視あるいは装置により測定可能である。例えば、pH指示薬としてブロモクレゾールパープルを使用する場合には、黄色;分解有り、青紫色;分解なしと判別し、pH指示薬としてブロモチモールブルーを使用する場合には、黄色;分解有り、青色;分解なしと判別し、pH指示薬としてニトラジンイエローを使用する場合には、黄色;分解有り、青色;分解なしと判別し、pH指示薬としてフェノールレッドを使用する場合には、黄色;分解有り、赤色;分解なしと判別する。装置を使用する場合は、加水分解反応前後の特定波長における吸光度の変化、RGB(Red, Green, Blue)の変化あるいは輝度の変化を測定することにより分解の有無を判別できる。吸光度の測定波長は、使用するpH指示薬に応じて適切な波長を設定すれば良いが、例えば、pH指示薬としてフェノールレッドを使用する場合には、赤色の吸収極大波長である500nm付近あるいは黄色の吸収極大波長である400nm付近を測定波長とすることが好ましい。
本発明の、β−ラクタム薬と検出対象微生物を接触させる媒体は、ポリミキシンB、コリスチン、n-オクチル-β-D-グルコシドから選択される少なくとも1種類の反応促進剤を含有することができる。これらの反応促進剤を使用することにより、検出対象微生物の膜透過性が上昇し、β−ラクタマーゼによるβ−ラクタム薬の加水分解反応に要する時間の短縮が可能となる。その結果、反応が遅いスタフィロコッカス属菌等のβ−ラクタマーゼも短時間で検出可能となる他、接触時間が長引くことで培地のpHが変化することにより陽性呈色が陰性色化する問題や陰性菌の陽性呈色の問題を回避することも可能となる。本発明において反応促進剤は、検出対象微生物の細胞膜及び/または細胞壁の透過性を高めるために使用する。例えば、媒体が液体である場合、β−ラクタマーゼ検出反応液の最終濃度として、ポリミキシンBを単独で1〜40000U/mLとすることが好ましい。ただし、本発明では、6系統のβ−ラクタム薬の分解の有無をアシドメトリー法により短時間で判別可能である限り、ポリミキシンB、コリスチン、n-オクチル-β-D-グルコシドから選択される1種類の反応促進剤の他に、更に反応促進剤を添加することも可能である。
本発明のβ−ラクタム薬と検出対象微生物を接触させる媒体が液体または半流動状物質である場合には、各ウェル内に1種類のβ−ラクタム薬、緩衝剤、pH指示薬等を含有する媒体を備えた多ウェルプレートとすることができる。多ウェルプレート内で検出対象微生物を接触させる媒体が液体である場合は、使用するまで乾燥固定化状態または凍結状態で保存し、使用時に適宜、液体に戻すこともできる。更に、必要に応じて、β−ラクタム薬を含まず緩衝剤、pH指示薬を含有するコントロール用のウェルを備えた多ウェルプレートとすることも可能であるし、微生物を含有しない陰性コントロール液、β−ラクタマーゼを含有する陽性コントロール液、検体希釈液、前処理液等をセットにすることも可能である。一方、β−ラクタム薬と検出対象微生物を接触させる媒体がディスク、ろ紙等の担体である場合も、同様に、陰性コントロール液、陽性コントロール液、検体希釈液、前処理液等をセットにすることができる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
なお、各実施例で使用した供試菌株一覧を以下の表2に示す。
(β−ラクタマーゼの酵素分類の判定)
大腸菌(β−ラクタマーゼ非産生株及びESBL産生株)、黄色ブドウ球菌(ペニシリナーゼ産生株)、緑膿菌(セファロスポリナーゼ産生株)、セラチア・マルセッセンス(MBL産生株)、クレブシエラ・ニューモニエ(カルバペネマーゼ産生株)を対象とし、酵素分類判定を行った。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製とプレートの作製
液体100μLを加えて溶解した時に、以下に示した基本試薬組成においてβ−ラクタム薬の濃度及び緩衝液の濃度が、(1)4mg/mL PCG、0.5mM リン酸緩衝液、(2)4mg/mL CEZ、0.5mM リン酸緩衝液、(3)4mg/mL CFTM、0.5mM リン酸緩衝液、(4)4mg/mL CMX、0.5mM リン酸緩衝液、(5)4mg/mL AZT、0.25mM リン酸緩衝液、(6)4mg/mL FMOX、1mM リン酸緩衝液、(7)2mg/mL IPM、1.25mM リン酸緩衝液、(8)β−ラクタム薬なし、0.25mM リン酸緩衝液(陰性コントロール)となるように、β−ラクタマーゼ検出用処方液(1)〜(8)を調製し、96穴マイクロプレートに適量分注し、45℃で60分間乾燥し、β−ラクタマーゼ検出用処方液を固定化乾燥したプレートを作製した。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で15、60、180分間インキュベーションし、フェノールレッドの赤色から黄色への変化を目視で判別し、β−ラクタム薬分解の有無の判定を行った。
3.結果
15、60、180分後の分解の有無の判別結果を表4〜6に示す。β−ラクタム薬の分解有りと判別された場合はその程度に応じて+、2+、3+と段階的に表示し、β−ラクタム薬の分解無しと判別された場合は−と表示している。
上記の表中で灰色に網がけしている欄は、試験した検出対象菌株が産生することが予め判明していたβ−ラクタマーゼの予想されるβ−ラクタム薬分解性(表1の酵素分類判定表から予想)と本実施例の結果が異なったケースである。表4から6の結果から、15分間のインキュベーション後には、CEZ、CFTM、CMX、IPMの分解の有無を正しく判別可能であること、60分間のインキュベーション後には、PCG以外のすべての薬剤の分解の有無を正しく判別可能であること、180分間のインキュベーション後には、PCG、CEZ、CMX、IPMの分解の有無を正しく判別可能であることが示された。
(反応促進剤のスクリーニング)
抗菌薬、界面活性剤等、β−ラクタム薬の加水分解反応を促進する可能性がある物質について、大腸菌(ESBL産生株)を対象とし、加水分解反応への影響を調べた。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製とプレートの作製
液体100μLを加えて溶解した時に、以下に示した基本試薬組成において反応促進作用スクリーニング物質が(1)0.125万〜8万U/mL ポリミキシンB、(2)0.325万〜24万U/mL コリスチン、(3)0.625〜40mg/mL n-オクチル-β-D-グルコシド、(4)0.625〜40mg/mL CHAPS、(5)0.625〜40mg/mL MYS-45(日光ケミカルズ(株)製)、(6)0.625〜40mg/mL アデカトールN-1000((株)ADEKA製)、(7)0.625〜40mg/mL アデカトールN-1100((株)ADEKA製)、(8)0.625〜40mg/mL ノニオンNS-270(日油(株)製)、(9)0.625〜40mg/mL プルロニックF-68(Sigma社製)、(10)0.625〜40mg/mL プルロニックF-127(Sigma社製)、(11)0.625〜40mg/mL コール酸ナトリウムとなるように、β−ラクタマーゼ検出用処方液(1)〜(11)を調製し、また、コントロールとして反応促進剤なしのβ−ラクタマーゼ検出用処方液(12)を調製し、96穴マイクロプレートに適量分注し、45℃で60分間乾燥し、β−ラクタマーゼ検出用処方液を固定化乾燥したプレートを作製した。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で24時間までインキュベーションし、輝度測定装置にて接触開始時から24時間後まで15分間隔で測定した。この測定値は、フェノールレッドの赤色から黄色への変化に従い数値が減少するため、測定値200をカットオフとし、測定値が200に達するまでの時間によって加水分解反応への影響を評価した。
3.結果
各物質において、高い反応促進作用を示した最少濃度における、「測定値が200に達するまでの時間」をまとめたグラフを図1に示す。コール酸ナトリウム以外の物質は、多少なりとも反応促進作用を示したが、特にポリミキシンB、コリスチン、n-オクチル-β-D-グルコシドは顕著な反応促進作用を示した。反応促進剤なしの場合、200に達するまでの時間が6.75時間であったのに対して、ポリミキシンB、コリスチン、n-オクチル-β-D-グルコシドでは、0.5時間まで短縮された。
(反応促進剤の効果1)
大腸菌(ESBL産生株)、黄色ブドウ球菌(ペニシリナーゼ産生株)、緑膿菌(セファロスポリナーゼ産生株)、セラチア・マルセッセンス(MBL産生株)、クレブシエラ・ニューモニエ(カルバペネマーゼ産生株)を対象とし、反応促進剤としてのポリミキシンBの作用を調べた。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製とプレートの作製
液体100μLを加えて溶解した時に、以下に示した基本試薬組成においてβ−ラクタム薬の濃度及び緩衝液の濃度が、(1)4mg/mL PCG、0.5mM リン酸緩衝液、(2)4mg/mL CEZ、0.5mM リン酸緩衝液、(3)4mg/mL CFTM、0.5mM リン酸緩衝液、(4)4mg/mL CMX、0.5mM リン酸緩衝液、(5)4mg/mL AZT、0.25mM リン酸緩衝液、(6)4mg/mL FMOX、1mM リン酸緩衝液、(7)2mg/mL IPM、0.25mMリン酸緩衝液、(8)β−ラクタム薬なし、0.25mM リン酸緩衝液(陰性コントロール)となるように、β−ラクタマーゼ検出用処方液(1)〜(8)を調製し、更に、比較用として実施例1と同様の、ポリミキシンBを含有しない8種類のβ−ラクタマーゼ検出用処方液を調製し、96穴マイクロプレートに適量分注し、45℃で60分間乾燥し、β−ラクタマーゼ検出用処方液を固定化乾燥したプレートを作製した。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で15、30、60、180分間インキュベーションし、フェノールレッドの赤色から黄色への変化を目視で判別し、β−ラクタム薬分解の有無の判定を行った。なお、陰性コントロールとして滅菌生理食塩水を使用した。
3.結果
15、30、60、180分後の分解の有無の判別結果を表9〜12に示す。β−ラクタム薬の分解有りと判別された場合はその程度に応じて+、2+、3+と段階的に表示し、β−ラクタム薬の分解無しと判別された場合は−と表示している。
上記の表中で灰色に網がけしている欄は、試験した検出対象菌株が産生することが予め判明していたβ−ラクタマーゼの予想されるβ−ラクタム薬分解性(表1の酵素分類判定表から予想)と本実施例の結果が異なったケースである。表9から12の結果に示すとおり、β−ラクタマーゼ検出用処方液にポリミキシンBを添加することにより、β−ラクタム薬の加水分解反応が促進され、30分間のインキュベーション後には、PCG以外のすべての陽性呈色が2+以上になり判定までに要するインキュベーション時間が短縮するとともに判定のしやすさが向上した。60分間のインキュベーション後には、すべての薬剤の分解の有無を正しく判別可能となり、特に反応が遅く、ポリミキシンB無しでは180分かかっていた黄色ブドウ球菌によるPCGの分解反応に要する時間も60分に短縮された。また、180分後には、陰性コントロールを含めた、本来、陰性となるべきものが、複数の薬剤において陽性の呈色を示した一方で、大腸菌(ESBL産生株)によるAZTの分解反応の呈色やセラチア・マルセッセンス(MBL産生株)によるFMOXの分解反応の呈色は、60分後の黄色い呈色に比べて180分後には橙色になり、陽性色が弱まる傾向が認められた。今回のようにMcFarland No. 1の菌液を試料として使用する場合、180分後には、偽陽性、偽陰性呈色が現れる可能性が高まると考えられることから、ポリミキシンBの添加により判定までの時間を短縮できるとともに、判定時間を短く設定(本実施例の場合は60分に設定)することにより偽陽性呈色、偽陰性呈色に基づくβ−ラクタマーゼ誤判定を低減できることが示唆された。
(反応促進剤の効果2)
大腸菌(ESBL産生株)、緑膿菌(セファロスポリナーゼ産生株)、セラチア・マルセッセンス(MBL産生株)を対象とし、試料中の菌量が少ない場合におけるポリミキシンBの反応促進作用を調べた。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製とプレートの作製
実施例3と同様とした。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、滅菌生理食塩水で10倍希釈し、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で15、30分間インキュベーションし、フェノールレッドの赤色から黄色への変化を目視で判別し、β−ラクタム薬分解の有無の判定を行った。なお、陰性コントロールとして滅菌生理食塩水を使用した。
3.結果
15、30分後の分解の有無の判別結果を表13及び14に示す。β−ラクタム薬の分解有りと判別された場合はその程度に応じて+、2+、3+と段階的に表示し、β−ラクタム薬の分解無しと判別された場合は−と表示している。
上記の表中で灰色に網がけしている欄は、試験した検出対象菌株が産生することが予め判明していたβ−ラクタマーゼの予想されるβ−ラクタム薬分解性(表1の酵素分類判定表から予想)と本実施例の結果が異なったケースである。表13及び14の結果に示すとおり、試料中の菌量が少ない場合にもポリミキシンBによるβ−ラクタム薬の分解反応促進が認められ、ポリミキシンB無しでは30分後でも判定できないPCGの分解が、15分のインキュベーション後に正しく判別可能であることが示された。
(酵素基質としてのペニシリン系抗菌薬の検討)
β−ラクタム薬PCG、MPIPC、ABPC、AMPC、ASPC、PIPCを大腸菌(β−ラクタマーゼ非産生株、ペニシリナーゼ産生株及びESBL産生株)、黄色ブドウ球菌(β−ラクタマーゼ非産生株)、緑膿菌(β−ラクタマーゼ非産生株及びセファロスポリナーゼ産生株)、セラチア・マルセッセンス(MBL産生株)に接触させ、加水分解反応を調べた。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製とプレートの作製
液体100μLを加えて溶解した時に、以下に示した基本試薬組成においてβ−ラクタム薬が、(1)PCG、(2)MPIPC、(3)ABPC、(4)AMPC、(5)ASPC、(6)PIPCとなるように、β−ラクタマーゼ検出用処方液(1)〜(6)を調製し、96穴マイクロプレートに適量分注し、45℃で60分間乾燥し、β−ラクタマーゼ検出用処方液を固定化乾燥したプレートを作製した。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で15分、60分、180分、24時間インキュベーションし、フェノールレッドの赤色から黄色への変化を目視で判別し、β−ラクタム薬分解の有無の判定を行った。
3.結果
15分、60分、180分、24時間後の分解の有無の判別結果を表16〜19に示す。β−ラクタム薬の分解有りと判別された場合はその程度に応じて+、2+、3+と段階的に表示し、β−ラクタム薬の分解無しと判別された場合は−と表示している。
β−ラクタマーゼ非産性株であることが判明している大腸菌(EKN4496)、黄色ブドウ球菌(EKN2088)、緑膿菌(EKN3089)では分解無し、それ以外の菌株では分解有りと判別できるようになるまでの時間は、試験した中ではPCGが最も短く、次いでPIPCが短かった。このことから、PCGとPIPCは迅速検出に適していることが示唆された。
(酵素基質としての第一世代セフェム系抗菌薬の検討)
β−ラクタム薬CEZ、CET、CEPR、CEX、CXDを大腸菌(β−ラクタマーゼ非産生株、ペニシリナーゼ産生株及びESBL産生株)、緑膿菌(β−ラクタマーゼ非産生株)に接触させ、加水分解反応を調べた。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製とプレートの作製
液体100μLを加えて溶解した時に、以下に示した基本試薬組成においてβ−ラクタム薬が、(1)CEZ、(2)CET、(3)CEPR、(4)CEX、(5)CXDとなるように、β−ラクタマーゼ検出用処方液(1)〜(5)を調製し、96穴マイクロプレートに適量分注し、45℃で60分間乾燥し、β−ラクタマーゼ検出用処方液を固定化乾燥したプレートを作製した。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で15分、60分、180分、24時間インキュベーションし、フェノールレッドの赤色から黄色への変化を目視で判別し、β−ラクタム薬分解の有無の判定を行った。
3.結果
15分、60分、180分、24時間後の分解の有無の判別結果を表21〜24に示す。β−ラクタム薬の分解有りと判別された場合はその程度に応じて+、2+、3+と段階的に表示し、β−ラクタム薬の分解無しと判別された場合は−と表示している。
β−ラクタマーゼ非産性株であることが判明している大腸菌(EKN4496)、緑膿菌(EKN3089)とペニシリナーゼ産生株であることが判明している大腸菌(EKN3737)では分解無し、ESBL産生株であることが判明している大腸菌(EKN7133)では分解有りと判別できるようになるまでの時間は、試験した中ではCEZが最も短かったが、試験したいずれのβ−ラクタム薬も15分後にはβ−ラクタム薬分解の有無を判別可能であることが示された。ただし、データは示していないが、CET、CEPRは陰性コントロール(滅菌生理食塩水)でも偽陽性となる場合があり、安定した結果が得られなかった。
(酵素基質としての第三世代セフェム系抗菌薬の検討)
β−ラクタム薬CTX、CTRX、CAZ、CZX、CMX、CDZM、CPZ、CFIX、CETB、CFS、CFTMを大腸菌(β−ラクタマーゼ非産生株、ペニシリナーゼ産生株及びESBL産生株)、緑膿菌(β−ラクタマーゼ非産生株)に接触させ、加水分解反応を調べた。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製とプレートの作製
液体100μLを加えて溶解した時に、以下に示した基本試薬組成においてβ−ラクタム薬が、(1)CTX、(2)CTRX、(3)CAZ、(4)CZX、(5)CMX、(6)CDZM、(7)CPZ、(8)CFIX、(9)CETB、(10)CFS、(11)CFTMとなるように、β−ラクタマーゼ検出用処方液(1)〜(11)を調製し、96穴マイクロプレートに適量分注し、45℃で60分間乾燥し、β−ラクタマーゼ検出用処方液を固定化乾燥したプレートを作製した。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で15分、60分、180分、24時間インキュベーションし、フェノールレッドの赤色から黄色への変化を目視で判別し、β−ラクタム薬分解の有無の判定を行った。
3.結果
15分、60分、180分、24時間後の分解の有無の判別結果を表26〜29に示す。β−ラクタム薬の分解有りと判別された場合はその程度に応じて+、2+、3+と段階的に表示し、β−ラクタム薬の分解無しと判別された場合は−と表示している。
予め判明しているβ−ラクタマーゼ産生の性質から、大腸菌ESBL産生株(EKN7133)のみが分解有りで他の菌株では分解無しと判別できるようになるまでの時間は、CTX、CTRX、CZX、CMX、CFS、CFTMで15分以内であった。中でも、CZX、CMX、CFS及びCFTMは15分後に3+という強陽性を示しており、反応の迅速性において優れた結果を示した。一方、CPZは、分解無しと判別されるはずの大腸菌ペニシリナーゼ産生株(EKN6677)が60分後に分解有りと判別されており、他の薬剤と比較して安定性において劣る結果であった。
(酵素基質としてのセファマイシン系抗菌薬及びオキサセフェム系抗菌薬の検討)
セファマイシン系抗菌薬であるCFX 、CMZ、CMNX、オキサセフェム系抗菌薬であるLMOX、FMOXを大腸菌(ESBL産生株)、クレブシエラ・ニューモニエ(カルバペネマーゼ産生株)、セラチア・マルセッセンス(MBL産生株)、緑膿菌(セファロスポリナーゼ及びMBL産生株)、黄色ブドウ球菌(ペニシリナーゼ産生株)に接触させ、加水分解反応を調べた。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製とプレートの作製
液体100μLを加えて溶解した時に、以下に示した基本試薬組成においてβ−ラクタム薬が、(1) CFX、 (2) CMZ、(3) CMNX、(4) LMOX、(5) FMOXとなるように、β−ラクタマーゼ検出用処方液(1)〜(5)を調製し、96穴マイクロプレートに適量分注し、45℃で60分間乾燥し、β−ラクタマーゼ検出用処方液を固定化乾燥したプレートを作製した。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で15分、60分、180分、24時間インキュベーションし、フェノールレッドの赤色から黄色への変化を目視で判別し、β−ラクタム薬分解の有無の判定を行った。
3.結果
15分、60分、180分、24時間後の分解の有無の判別結果を表31〜34に示す。β−ラクタム薬の分解有りと判別された場合はその程度に応じて+、2+、3+と段階的に表示し、β−ラクタム薬の分解無しと判別された場合は−と表示している。
予めESBL産生株であることが判明している大腸菌(EKN7133)、ペニシリナーゼ産生株であることが判明している黄色ブドウ球菌(EKN3088)では分解無し、カルバペネマーゼ産生株であることが判明しているクレブシエラ・ニューモニエ(EKN9491)、MBL産生株であることが判明しているセラチア・マルセッセンス(EKN4636)、セファロスポリナーゼ及びMBL産生株であることが判明している緑膿菌(EKN7170)では分解有りと判別できるようになるまでの時間は、試験した中ではFMOXが最も短く、次いでCMZが短かった。このことから、FMOXとCMZは迅速検出に適していることが示唆された。
(酵素基質としてのカルバペネム系抗菌薬の検討1)
β−ラクタム薬IPM、MEPM、BIPM、TBPMをセラチア・マルセッセンス(MBL産生株)に接触させ、加水分解反応を調べた。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製
液体100μLを加えて溶解した時に、以下に示した基本試薬組成においてβ−ラクタム薬が、(1)IPM、(2)MEPM、(3)BIPM、(4)TBPMとなるように、β−ラクタマーゼ検出用処方液(1)〜(4)を調製し、96穴マイクロプレートに適量分注し、45℃で60分間乾燥し、β−ラクタマーゼ検出用処方液を固定化乾燥したプレートを作製した。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で1時間、3時間、20時間インキュベーションし、ブロモクレゾールパープルの青紫色から黄色への変化を目視で判別し、β−ラクタム薬分解の有無を調べた。
3.結果
IPMは1時間、3時間のインキュベーション後に陽性色(黄色)を呈し、20時間後には弱陽性色を呈した。MEPMとBIPMはともに、1時間のインキュベーション後に陰性色(青紫色)を呈し、3時間後、20時間後に陽性色(黄色)を呈した。更に、TBPMは1時間、3時間のインキュベーション後に陰性色(青紫色)を呈し、20時間後には弱陽性色を呈した。この結果から、試験した中で最も加水分解反応の速いIPMは本発明の使用に適していることが示唆された。
(酵素基質としてのカルバペネム系抗菌薬の検討2)
β−ラクタム薬IPM、PAPM、MEPM、BIPM、DRPM、TBPMを大腸菌(ESBL産生株)、クレブシエラ・ニューモニエ(カルバペネマーゼ産生株)、セラチア・マルセッセンス(MBL産生株)、緑膿菌(セファロスポリナーゼ及びMBL産生株)、黄色ブドウ球菌(ペニシリナーゼ産生株)に接触させ、加水分解反応を調べた。
1.β−ラクタマーゼ検出用処方液の調製とプレートの作製
液体100μLを加えて溶解した時に、以下に示した基本試薬組成においてβ−ラクタム薬が、(1) IPM、 (2) PAPM、(3) MEPM、(4) BIPM、(5) DRPM、(6) TBPMとなるように、β−ラクタマーゼ検出用処方液(1)〜(6)を調製し、96穴マイクロプレートに適量分注し、45℃で60分間乾燥し、β−ラクタマーゼ検出用処方液を固定化乾燥したプレートを作製した。
2.菌の接種とインキュベーション
前培養した各菌株を滅菌生理食塩水に懸濁し、McFarland No. 1に調製した後、1.で作製したプレートに100μLずつ分注した。その後、35℃で15分、60分、180分、24時間インキュベーションし、フェノールレッドの赤色から黄色への変化を目視で判別し、β−ラクタム薬分解の有無の判定を行った。
3.結果
15分、60分、180分、24時間後の分解の有無の判別結果を表37〜40に示す。β−ラクタム薬の分解有りと判別された場合はその程度に応じて+、2+、3+と段階的に表示し、β−ラクタム薬の分解無しと判別された場合は−と表示している。
予めESBL産生株であることが判明している大腸菌(EKN7133)、ペニシリナーゼ産生株であることが判明している黄色ブドウ球菌(EKN3088)では分解無し、カルバペネマーゼ産生株であることが判明しているクレブシエラ・ニューモニエ(EKN9491)、MBL産生株であることが判明しているセラチア・マルセッセンス(EKN4636)、セファロスポリナーゼ及びMBL産生株であることが判明している緑膿菌(EKN7170)では分解有りと判別できるようになるまでの時間は、試験した中ではIPMが最も短く、次いでがPAPM短かった。このことから、IPMとPAPMは迅速検出に適していることが示唆された。
本発明のβ−ラクタマーゼ検出方法、判定方法及びそれに用いる試薬は、6種のβ−ラクタム薬の各々を検出対象菌に接触させ、各薬剤の分解の有無をアシドメトリー法で判別するという簡易な操作で短時間に、β−ラクタマーゼの基質特異性に基づく詳細な酵素分類の判定が可能となる。従来の迅速検出法では判定できないKPC型やOXA型のカルバペネマーゼの判定も含めた簡易迅速で正確な判定が可能であるため、臨床現場や疫学研究その他の幅広い領域において有用である。

Claims (12)

  1. 以下の工程を含むことを特徴とする微生物のβ−ラクタマーゼ検出方法及び判定方法。
    (a)第一の薬剤;ペニシリンGまたはピペラシリン
    第二の薬剤;第一世代セフェム系、
    第三の薬剤;第三世代セフェム系及び/または第四世代セフェム系、
    第四の薬剤;モノバクタム系、
    第五の薬剤;セファマイシン系及び/またはオキサセフェム系、並びに、
    第六の薬剤;カルバペネム系、
    からなる6系統のβ−ラクタム薬の各々を検出対象微生物に接触させ、各薬剤の分解の有無をアシドメトリー法により判別する工程、
    (b)工程(a)における各薬剤の分解有無の判別結果に基づいて検出対象微生物の酵素分類の判定を行う工程。
  2. 工程(a)において、
    ペニシリナーゼ産生菌は、第一の薬剤が分解有りと判別され、第二の薬剤は分解有りまたは分解無しと判別され、第三の薬剤、第四の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤は分解無しと判別され、
    セファロスポリナーゼ産生菌(染色体性)は、第一の薬剤及び第二の薬剤が分解有りと判別され、第三の薬剤、第四の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤は分解無しと判別され、
    ESBL産生菌は、第一の薬剤及び第二の薬剤が分解有りと判別され、第五の薬剤及び第六の薬剤は分解無しと判別され、第三の薬剤及び第四の薬剤は分解有りまたは分解無しと判別され、
    過剰産生型AmpC産生菌は、第一の薬剤、第二の薬剤、第三の薬剤、第四の薬剤及び第五の薬剤が分解有りと判別され、第六の薬剤は分解無しと判別され、
    MBL産生菌は、第一の薬剤、第二の薬剤、第三の薬剤、第五の薬剤及び第六の薬剤が分解有りと判別され、第四の薬剤は分解無しと判別され、
    KPC型カルバペネマーゼ産生菌及びOXA型カルバペネマーゼ産生菌は、6系統の薬剤すべてが分解有りと判別される、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(a)において、pH指示薬を含有する媒体中でβ−ラクタム薬を検出対象微生物に接触させる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 工程(a)において検出対象微生物と接触させる媒体が、ポリミキシンB、コリスチン、n-オクチル-β-D-グルコシドから選択される反応促進剤を更に含有する請求項3に記載の方法。
  5. pH指示薬が、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、ニトラジンイエロー、フェノールレッドから選択される請求項3または4に記載の方法。
  6. 第二の薬剤がセファゾリン、セファロチン、セファピリン、セファレキシンまたはセフロキサジンであり、第三の薬剤がセフォタキシム、セフトリアキソン、セフチゾキシム、セフスロジン、セフテラムまたはセフメノキシムであり、第四の薬剤がアズトレオナムであり、第五の薬剤がフロモキセフまたはセフメタゾールであり、第六の薬剤がイミペネムまたはパニペネムである請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 工程(a)において検出対象微生物と接触させる媒体が、液体、半流動状物質、ディスクまたはろ紙である、請求項3から6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 工程(a)において検出対象微生物と接触させる媒体が液体であり、β−ラクタム薬と検出対象微生物を多ウェルプレートのウェル内で、20〜40℃において接触させる、請求項3から7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 1種類のβ−ラクタム薬、pH指示薬を含有するβ−ラクタマーゼ検出用処方を液体、乾燥状態または凍結状態で各ウェル内に備えた多ウェルプレートであって、β−ラクタム薬が、
    第一の薬剤;ペニシリンGまたはピペラシリン
    第二の薬剤;第一世代セフェム系、
    第三の薬剤;第三世代セフェム系及び/または第四世代セフェム系、
    第四の薬剤;モノバクタム系、
    第五の薬剤;セファマイシン系及び/またはオキサセフェム系、並びに、
    第六の薬剤;カルバペネム系、
    からなる6系統である多ウェルプレート。
  10. β−ラクタマーゼ検出用処方が、ポリミキシンB、コリスチン、n-オクチル-β-D-グルコシドから選択される反応促進剤を更に含有する請求項9に記載の多ウェルプレート。
  11. pH指示薬が、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、ニトラジンイエロー、フェノールレッドから選択される請求項9または10に記載の多ウェルプレート。
  12. 第二の薬剤がセファゾリン、セファロチン、セファピリン、セファレキシンまたはセフロキサジンであり、第三の薬剤がセフォタキシム、セフトリアキソン、セフチゾキシム、セフスロジン、セフテラムまたはセフメノキシムであり、第四の薬剤がアズトレオナムであり、第五の薬剤がフロモキセフまたはセフメタゾールであり、第六の薬剤がイミペネムまたはパニペネムである請求項9から11のいずれか1項に記載の多ウェルプレート。
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